数学 出題のねらい 数と式, 図形, 関数, 資料の活用 の 4 領域について, 基礎的な概念や原理 法則の理解と, それらに基づき, 数学的に考察したり, 表現したり, 処理したりする力をみることをねらいとした () 数と式 では, 数の概念についての理解の程度, 文字を用いた式を処理したり, 文字を用いて式に表現したりする力, 目的に応じて式を変形する力をみるものとした () 図形 では, 平面図形や空間図形についての理解の程度, 見通しをもって論理的に考察し表現する力をみるものとした () 関数 では, グラフの特徴についての理解の程度, 関数関係を見いだし表現する力, 関数と図形を関連付けて考察する力をみるものとした (4) 資料の活用 では, 目的に応じて収集した資料を整理し, その資料の傾向を読み取るために必要な力, 具体的な事柄について起こり得る場合を順序よく整理して正しく数え上げ, 不確定な事象の確率を求める力をみるものとした 結果の概要 () 平均点 (50 点満点 ) の推移 平均点.8 7.9 8.5. 0. () 問題数の推移 数と式 7 0 0 図形 9 6 6 5 5 関数 4 4 5 5 5 資料の活用 4 () 正答率の推移 数と式 67.5 4. 54.6 6. 47.4 図形 4.7 0.0. 7.4 0.6 関数 56.7 40.6 4. 4. 50.8 資料の活用 7.4 5. 4.7 48.9 9.5
結果の分析 () 平均点は.8 点で, 昨年度より.9 点上がった 数と式 の正答率は 67.5%, 関数 の正答率は 56.7% で, それぞれ昨年度より上がったが, 依然として課題がみられる また, 図形 の正答率は 4.7%, 資料の活用 の正答率は 7.4% であり, 課題が大きい () 分析の詳細 数と式 の () は, 次式と分数の除法の問題であったが, 正答率は 7.5% であり, 十分理解できているとは言えない 誤答の約 8% が 9x-4, 約 6% が x-4 としており, 除法を乗法に直すことはできているものの, 分配法則を使って正しく計算することができていない の () は, 文字を含む等式の変形の問題であったが, 正答率は 46.5% と低かった 誤答では, 60-4a が約 8% と最も多く, b を a の式で表せ という問いに対する答 え方と解法の手順が理解できていない また, b= の形まで変形できているものの, 最も簡単な形まで処理していない 60-4a が誤答の約 % あり, 分母と分子の共通 因数で約分できていない ( 指導事例 参照 ) の (4) は, 平方根について述べられた 4 つの文から, 内容が正しいものをすべて選ぶ問題であったが, 正答率は 5.% であった 選択肢別の選択率をみると, ア から順に 87.5%,.4%,7.%,.0% であり, 選択肢ごとの正誤を判断する力は一定みられるものの,4 つ全ての正誤を正しく判断することは不十分であり, 正答率は下がる傾向がみられた 図形 の (9) の作図の正答率は,5.9% であり, 昨年度 (0.7%) に比べて上がったが, 十分ではない 誤答の約 7% が, 線分 AD ではなく線分 AB の垂直二等分線を作図しており, 問題文から条件を正確に読み取り, 順序立てて考え, 作図することができていない の () は, 問題文から読み取った中心や半径, 中心角をもとに, おうぎ形の面積を求める問題で, 正答率は 7.% であった () は半径の異なる つのおうぎ形の弧の長さを求める過程を言葉と式で説明する問題で, 正答率は 9.8% と低かった 問題文で示された手順を読み取って, 描かれた曲線を半径の異なるおうぎ形の弧としてとらえることができていない 6 の () の証明問題の正答率は 7.% であり, 昨年度と同等の低い結果となった 部分点率は 6.5% であり, 合同を証明するための つの条件のうち, 問題文から等しいことが分かる 組の辺と, 同じ弧に対する円周角から等しいことが分かる 組の角については, 一定記述することはできている しかし, 円周角の性質や与えられた平行条件をもとに, 等しい角を考えることや, 等しい理由を正しく記述することに課題がみられる 関数 の (5) は, 関数 y=ax において, 与えられた x の変域に対応する y の変域を求める 9 問題であったが, 正答率は 5.% と低い結果となった 誤答の約 4% が a=8,b=, 9 約 6% が a=,b=8 であり,x の値に対応する y の値を求めることはできているも のの, 関数 y=ax のグラフの形をもとにして y の変域を考えることができていない グラフをもとに,y の変域を考える視点をもたせることが必要である 資料の活用 4 は, つのさいころを投げて出た目の数を,O を原点とする平面上に 点 P,Q の座標としてとり, 点 O,P,Q を頂点とする三角形の形状をもとに確率を求める問題であった () の正答率は 7.0%,() の正答率は 48.8%,() の正答率は.8% と, それぞれ低い結果となった それぞれのさいころの出た目の数によって, 点 P,Q の位置がどのように変わるのか, また, 三角形 OPQ の形状がどのように変わるのかを考えるとともに, 起こり得るすべての場合の組み合わせを, 順序よく整理して正しく数え上げることが大切である
数学指導事例 実際の問題 () 本 a 円の鉛筆 4 本と 本 b 円のボールペン 本を買ったときの代金の合計は,60 円で 結果分析 あった このとき,b を a の式で表せ 正答例は b=80-a であったが, 正答率は 46.5%, 誤答率 49.0%, 無答率 4.5% であった 誤答では, 文字 b 以外の 4 a と 60 のみで立式したと考えられる 60-4a が約 8% と 最も多く, b を a の式で表せ という問いに対する答え方とその答えに至るまでの解法の手順が 理解できていないと考えられる また, b= の形まで変形できているものの, 最も簡単な形ま 60-4a で処理していない が誤答の約 % あり, 分母と分子の共通因数で約分できていない 指導方法 ( 指導の改善 ) 問題の特徴 この問題は, 数量及び数量の関係を問題文から読み取り, 文字を用いて式に表現したうえで, 目的に応じてきまりに従って変形することを求めた問題であった 文字を用いた式については, 数量やその関係を簡潔 明瞭かつ一般的に表現でき, それを目的 に合うように形式的に処理できることが求められる その際, 文字は数を表していることと, 数 についての計算法則がそのまま適用され, 数と同じように計算できることを十分理解させておく ことが必要である 具体的な指導事例 () 事柄や数量の関係を捉え, その関係を文字を用いた式で表すことの理解 問題文を読んで, どのような数量を, どのような文字を用いてどのように表せばよいのか を考え, それらの数量の関係を読み取り, その関係を文字を用いた式で表現させる そのた めには, 関係を図に表したり, 具体的な数や言葉を使った式を利用したりして関係を捉え, 文字を用いた式で表す活動を取り入れることが考えられる () 文字を用いた式を, 目的に応じて変形することと, 変形する意味の理解 ある文字について解くことの意味を理解させ, 等式を変形できるように指導する そのた めに, つ以上の文字を含む等式の変形では, 式を変形する目的を明確にした上で, 等式の性 質などの根拠に基づいて正しく変形する場面を設定する 具体的には, 本 b 円のボールペン 本の代金は, どう表せるか などの場面を設定し, b=60-4a などの同値の式を考えることを通して, 等式の性質が成り立つことを確認す る そして, ボールペン 本の代金 b 円を求めることは, 式では b= の形で表すことを 理解できるようにする このような理解を踏まえ, 目的をもって b=80-a などと変形 できるようにすることが大切である () 多項式を共通因数で処理することの理解 多項式を含む分数の形で表された式は, 多項式を共通因数でまとめることによって, より 簡単に表せる場合があることに気付かせる 具体的には, 分母と分子が同じもので割れるか どうかを判断できることが必要である その際には, 分母と分子に同じ因数が含まれている ことを確認させるとともに, 分母と分子が約分できる根拠となっていることを理解させる 授業においても, 数学における 最も簡単な形 とはどのようなことかを, 常に意識させる ことが大切である
数学抽出答案による正答率等 問題 正 答 正答率 誤答率 無答率 () - 9.9 7. 0 () 6x-4 7.5 6.7.8 () -ab 86.. 0.7 (4) 9 8.9.8. () b=80-a 46.5 49.0 4.5 () (-,) 4.4 7.9 0.7 () y=- x 60.6.0 6.4 (4) ア, ウ 5. 48.6 0. (5) a=0,b=8 5. 6.8 0.0 (6) 56 度 5.7 4.9.4 (7) cm 4.0 5.4 5.6 (8) 0 % 6.7. 6. ( 例 ) A 5.9 46.5 (9) P 6.5 B D C 部分点. 4 64 () πcm 7. 54. 8.7 () ( 例 ) 曲線 DE は, 半径 a, 中心角 0 の 0 π a 60 =πa(cm) 曲線 EFは, 半径 a, 中心角 0 の 0 4 π a 60 = πa(cm) 曲線 FCは, 半径 a, 中心角 0 の 0 π a 60 = πa(cm),,より 4 πa+ πa+ πa=4πa(cm) したがって, 曲線 DEFCの長さは 4πacm である 9.8 8. 部分点 0.7 6. () b=,6 7.0 44. 8.7 () 4 通り 48.8 4. 8.9 7 ().8 66.8.4 ( 次のページに続く )
問題正答正答率誤答率無答率 5 6 () (-, ) 8. 4.7 4. () y= x+6. 4.9 6.0 ( 例 ) () から, 直線 ACの傾きは であり, 直線 ACの傾きと直線 BDの傾きは等し 7.6.7 () いので,AC BDである ABDと CBDにおいて, 辺 BD を底辺とすると,AC BDから, A BDの高さと CBDの高さは等しいことが言える 5. よって, 底辺が同じで高さが等しい三 部分点 8.5 角形の面積は等しいので, ABDの面積と CBDの面積は等しい 証明 ( 例 ) ABGと ACDにおいて 仮定から AB=AC ADに対する円周角は等しいから 7. 40. ABG= ACD BFに対する円周角は等しいから BAG= BCF () CDに対する円周角は等しいから CAD= CBD 4 6. BD FCより, 錯角は等しいから BCF= CBD 5,4,5より BAG= CAD 6 部分点 6.5,,6より 組の辺とその両端の角がそれぞれ 等しい したがって ABG ACD () 8 5 cm.9 56.6 40.5