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Transcription:

厚生労働省院内感染対策サーベイランス事業 (JANIS) 新規参加医療機関募集に伴う JANIS データ提出 活用のための説明会 2018/7/17 よく分かる! 薬剤感受性検査結果の 読み方と活用方法 順天堂大学医学部附属順天堂医院臨床検査部三澤成毅

本講演の内容 1. 薬剤感受性検査の目的, 方法, 特徴微量液体希釈法, ディスク拡散法 2. 検査結果を理解するために必要な知識 MIC, ブレイクポイント, 解釈 (S, I, R, SDD), 検査の許容誤差, 疫学的カットオフ値 3. 薬剤感受性データの活用アンチバイオグラム, 感染制御の状態把握の指標

薬剤感受性検査の目的 1. 治療抗菌薬選択のための情報提供 2. 抗菌薬治療の最適化 3. 薬剤耐性菌の同定 4. 蓄積データを用いたアンチバイオグラムの作成と感染制御への活用

薬剤感受性検査法の種類 ディスク拡散法 寒天平板希釈法 液体希釈法 : 微量液体希釈法 Eテスト β-ラクタマーゼ検査 遺伝子検査 ( 核酸増幅法 )

特徴 薬剤感受性検査法の特徴 ディスク拡散法 E テスト 寒天平板希釈法 液体希釈法 実施の容易さ容易容易煩雑容易 検査コスト安価高価高価高価 定性的な結果 (S I R) 定量的な結果 (MIC 値 ) 他菌による汚染の検出可能可能可能不可能 ヘテロ耐性の検出可能可能可能不可能 最小殺菌濃度 (MBC) の検査不可能不可能不可能可能 検体を用いる直接法による検査可能不可能不可能不可能 発育が遅い 栄養要求の厳しい菌種への適応 適応不可適応適応適応 検査の自動化不可能不可能不可能可能

最小発育阻止濃度 Minimal Inhibitory Concentration: MIC 菌の発育を阻止する最低の抗菌薬濃度を指し, MIC 値と呼ばれる MIC 値は小さいほど試験管内における抗菌力が強い MIC は抗菌薬の菌に対する抗菌力を示す指標の一つ 抗菌薬の臨床的な効果は,MIC, 体内動態, 感染臓器への移行, 副作用等を総合的に評価

微量液体希釈法による薬剤感受性検査最小発育阻止濃度 (MIC) の測定 PIPC 0.06 0.12 0.25 0.5 1 2 4 8 16 32 64 128 (mg/ml) PIPC/TAZ PIPC/TAZ IPM MEPM DRPM AZT CAZ

ディスク拡散法による薬剤感受性検査黄色ブドウ球菌 (MRSA) 1. ミューラー ヒントン寒天培地上に一定量の菌を接種 2. 抗菌薬を含有したディスク ( 直径約 6 mm の円形濾紙 ) を培地上に配置 3. ディスク中から抗菌薬が培地中へ拡散 4. ディスクを中心に培地中で抗菌薬の濃度勾配ができる 5. 接種菌に対する感受性との関係から, 阻止帯が形成 ( 感受性がない場合は, 阻止帯が形成されない ) 6. 阻止帯 ( 阻止円 ) の直径を測定し, ブレイクポイントから感性, 中間, 耐性を判定 7. MIC 値は得られない

MIC 値と阻止円直径との関係 R I S 同一の MIC 値を示す菌株でも阻止円直径はバラツキがある

希釈法とディスク拡散法の特徴 希釈法 ( 微量液体希釈法 ) 1. 定量的な検査 (MIC 値, 解釈 ) 2. 精密な検査が可能 3. 検査の自動化が可能 ディスク拡散法 1. 定性的な検査 ( 解釈のみ ) 2. 精密な検査が困難 3. 検査の自動化が困難

E テストによる薬剤感受性検査黄色ブドウ球菌のダプトマイシン感受性 1. ディスク拡散法と同じ手順でミューラー ヒントン寒天培地に菌を接種し, ストリップを配置 2. 楕円形の阻止円の縁がストリップと接する点を読みとる 3. 接点の数字が MIC 値 0.5 μg/ml と判定

薬剤感受性検査法に関する国際標準機関 米国 Clinical and Laboratory Standard Institute (CLSI) Formerly, National Committee for Clinical Laboratory Standards (NCCLS) https://clsi.org/ 欧州 The European Committee on Antimicrobial Susceptibility Testing (EUCAST) http://www.eucast.org/ 全世界 International Organization for Standardization (ISO) https://www.iso.org/home.html

米国 CLSI による標準法 臨床検査の全領域の標準法を作成 微生物検査は M シリーズ, 薬剤感受性検査は, 実施基準である M が毎年アップデート 日本の検査室は CLSI 標準法に準拠

EUCAST による標準法 欧州で組織された薬剤感受性検査法に関する委員会 検査法は CLSI とほとんど同じ ブレイクポイントやデータベース等の情報が公開

日臨技臨床検査精度管理調査 日本臨床衛生検査技師会) 薬剤感受性検査法の変遷 (%) 年

自動細菌同定 薬剤感受性検査装置 MicroScan WalkAway 96Plus Beckman Coulter Inc. BD Phoenix Becton, Dickinson and Company VITEK 2 biomerieux Ind., RUISUS S4 Nissui Pharmaceutical Co.

日臨技臨床検査精度管理調査 日本臨床衛生検査技師会) 薬剤感受性検査装置の変遷 (%) 年

MicroScan WalkAwayの同定 薬剤感受性検査パネル MDRP 同定検査 に使用 薬剤感受 性検査に 使用

最小発育阻止濃度 (MIC) の分布とブレイクポイント 菌株数 / 頻度 (%) S: susceptible 感性 I: intermediate 中間 R: resistant 耐性 MIC(μg/mL)

最小発育阻止濃度 (MIC) の分布とブレイクポイント EUCAST による大腸菌に対するアンピシリン感受性データ S( 感性 ) 8 μg/ml R( 耐性 ) 32 μg/ml I( 中間 ) 16 μg/ml

ブレイクポイントは菌種や感染症によって異なる CLSI 2014 年版 (M-S24) 菌種 アンピシリンのブレイクポイント (μg/ml) S( 感性 ) I( 中間 ) R( 耐性 ) 腸内細菌科細菌 8 16 32 エンテロコッカス 8-16 ヘモフィルス 1 2 4 菌種 メロペネムのブレイクポイント (μg/ml) S( 感性 ) I( 中間 ) R( 耐性 ) 腸内細菌科細菌 1 2 4 緑膿菌 2 4 8 アシネトバクター 2 4 8

ブレイクポイントは菌種や感染症によって異なる CLSI 2008 年版 (M-S18) 感染症 / 抗菌薬 髄膜炎以外非経口ペニシリン経口ペニシリン CTX,CTRX,CFPM 髄膜炎非経口ペニシリン CTX,CTRX,CFPM 肺炎球菌に対するブレイクポイント (μg/ml) S( 感性 ) I( 中間 ) R( 耐性 ) 2 0.06 1 0.06 0.5 4 0.12-1 2 0.12-1 1 8 2 4 2 2

薬剤感受性結果の解釈 カテゴリー 解釈 S(susceptible) 感性 I(intermediate) 中間 R(resistant) 耐性 推奨される投与方法 投与量で, その抗菌薬が到達しうる体内濃度で菌の増殖を阻止でき, 治療による臨床効果が期待できる. S と R の中間の成績であり, 一般には治療に選択しない. 検査の誤差によるエラーを回避する緩衝帯. 精度からみた許容誤差 :MIC 値 ±1 管 (1/2~2 MIC) その菌の MIC 値が通常到達可能な血中および組織内濃度に近い MIC を示すので, その効果は感性の菌よりも低い. ただし, 抗菌薬が生理的に濃縮される場合 ( 尿中の新キノロン系薬や β- ラクタム系薬 ) や大量投与が可能な抗菌薬 (β- ラクタム系薬等 ) は使用できる可能性がある. 通常の投与スケジュールでは, その抗菌薬が到達しうる体内濃度で菌の増殖を阻止できず, 治療による臨床効果が期待できない.

カテゴリー SDD (Susceptible- Dose Dependent) 用量依存的感性 用量依存的感性 (SDD) 解釈 分離株の感受性が患者に用いられる投与計画に依存することを意味する. 感受性検査結果 (MIC あるいはディスク拡散法 ) が SDD 区分にある分離株に対し, 臨床的に効果的と思われるレベルを達成するためには, 感性ブレイクポイントを定めるために用いられる投与より高い薬剤暴露となる投与計画 ( すなわち, より高い投与量, 投与頻度, あるいはその両方 ) を実施することが必要である. より高い薬剤暴露は,SDD 分離株の十分な補償範囲となる可能性が高いので, 最大限に許容される投与計画が考慮されるべきである. 日本国内で承認されている抗菌薬の中では, 腸内細菌科細菌に対する CFPM と酵母に対する FLCZ と ITCZ に設定している. CLSI では,CFPM による治療の臨床的な失敗は, 分離株の MIC 値が I( 中間 ) である 4~8 μg/ml で, 特に投与量が少ない場合であるというエビデンスをもとに再検討された その結果,S( 感性 ) を保証する投与量よりも多い投与が臨床的に許容されること, それを裏付ける十分な臨床データがあることを条件に治療のオプションとして位置づけた CFPM のブレイクポイントは,S( 感性 ) が 2 μg/ml 以下で,12 時間ごと 1 g の投与が前提となっている SDD は MIC 値が 4~ 8 μg/ml と設定され, この範疇の結果が得られた場合の治療は 12 時間ごと 1 g よりも高用量の投与が前提となる この新しい解釈を現場へ導入するには, 臨床側への十分な説明が必要と記述されている

薬剤感受性結果を耐性へ変換する場合がある CLSI 標準法 2014 年版 (M-S24) 薬剤感受性結果 オキサシリンまたはセフォキシチン耐性 メチシリン耐性ブドウ球菌 オキサシリン感性の黄色ブドウ球菌およびコアグラーゼ陰性ブドウ球菌 (CNS) は, 他の β- ラクタム系薬, すなわちペニシリン系薬,β- ラクタマーゼ阻害薬配合薬, セフェム系薬 ( 抗 MRSA 活性のあるセファロスポリンは除く ), およびカルバペネム系薬に耐性であると考えられる これは, 確認されたメチシリン耐性ブドウ球菌による感染症のほとんどの場合において,β- ラクタム系薬による治療が不完全であることや, それらの薬剤の臨床効果が立証された確かな臨床データが示されていないことによる メチシリン耐性 ( オキサシリンまたはセフォキシチン耐性 ) と判定された場合, 全ての β- ラクタム系薬感受性結果を R( 耐性 ) へ変換

成人および小児におけるMRSA感染症の治療に関する 米国IDSAのガイドライン 2011年 Liu C, et al, Clin Infect Dis, 52: e18-e55, 2011 69 VCM 2 μg/ml 患者の臨床経 過がVCM治療の継続を決定 70 VCM 2 μg/ml 他の抗菌薬で 治療すべき MIC測定では ±1管は許容誤差であり 1と2μg/mlの区別は困難 E テ ス ト MicroScan Phoenix は 標準法に比べてMIC値が高い傾向

薬剤感受性結果の PK-PD による治療薬の臨床的効果予測へ与える影響 VCM による治療効果の評価に AUC/MIC が用いられる MIC 値が 1 2 μg/ml により, AUC/MIC は半分となる

黄色ブドウ球菌に対するのVCM感受性測定の精度 標準法によるMIC値との比較 Rybak MJ, et al, J Clin Microbiol, 51: 2077-2081, 2013 VCMのMIC値は測定機器によって分布に傾向がある

緑膿菌に対するイミペネムの MIC 分布と疫学的カットオフ (Epidemiological cut-off: ECOFF)EUCAST ECOFF は耐性因子を保有しない株 ( 野生株 ) の MIC 分布から設定 4 μg/ml

CLSI 標準法における腸内細菌科細菌, 緑膿菌, アシネトバクターに対するカルバペネム系薬のブレイクポイント変更 腸内細菌科細菌 2010 年 (M-S20) 2010 年 (M-S20-U) 抗菌薬 S I R S I R IPM 4 8 16 1 2 4 MEPM 4 8 16 1 2 4 DRPM - - - 1 2 4 緑膿菌 * アシネトバクター ** 2011 年 (M-S21) 2012 年 (M-S22)* 2014 年 (M-S24)** 抗菌薬 S I R S I R IPM 4 8 16 2 4 8 MEPM 4 8 16 2 4 8 DRPM - - - 2 4 8 ブレイクポイントを引き下げることにより,1 耐性菌の検出感度を上げ, 2S を保証 アンチバイオグラムによる評価に影響

腸内細菌科細菌主要4菌種のメロペネム感受性と 疫学的カットオフ値 ECOFF とブレイクポイント EUCAST 2018/2/17 E. coli 8,011株 K. pneumoniae 16,999株 E. cloacae 8,178株 S. marcescens 6,918株

IMP-1 型メタロ -β- ラクタマーゼ産生グラム陰性桿菌の薬剤感受性三澤, 他 : 日本化学療法学雑誌 55: 211-219, 2007

薬剤感受性からみた CRE と CPE の関係 Giske CG: J Intern Med 277: 501-512, 2015 を改変 CPE CRE MIC(μg/mL)

薬剤感受性検査によるカルバペネマーゼ産生のスクリーニングおよび同定アルゴリズム EUCAST(Ver. 2, 2017 年 7 月 )

腸内細菌科細菌に対するIPMとMEPMのMIC分布と 2012年版CLSI標準法による感性率 山口 他:Jpn. J. Antibiotics, 67: 73-107, 2014から改変 菌種 菌株数 E. coli (146) K. pneumoniae (139) E. cloacae (91) E. aerogenes (37) S. marcescens (122) P. mirabilis (93) P. vulgaris (51) M. morganii (107) 薬剤 0.015 0.03 0.06 0.12 0.25 0.5 1 IPM 77 64 4 1 MEPM 96 46 2 6 120 11 38 72 26 40 34 11 26 49 8 3 1 1 1 18 18 17 15 4 IPM MEPM 43 57 18 IPM MEPM 31 34 22 6 Providencia spp. IPM (48) MEPM 99.3 1 98.9 89.0 1 98.9 97.8 51.4 70.5 1 2 1 99.2 2 19 37 22 13 62.4 98.0 37.3 2.8 47.9 6 14 24 7 2 25 79 37 53 14 5 9 4 3 3 27 12 128 >128 CLSI S19 CLSI S22 30 52 32 IPM MEPM 64 4 5 13 30 32 1 IPM MEPM 1 16 1 6 IPM MEPM 8 2 IPM MEPM 4 4 IPM MEPM 2 18 23 2 1

薬剤感受性データの活用 1. アンチバイオグラム作成 1 自施設における薬剤感受性の監視 ( 緑膿菌など ) 2 初期治療における抗菌薬選択の情報提供 3 他施設との比較 (JANIS など ) 2. 薬剤耐性菌の監視薬剤感受性検査により同定可能な耐性菌の監視 (MRSA,VRE,ESBL,CRE,CPE) 3. 感染制御の状態に対する評価手指衛生の遵守状況と MRSA 検出カルバペネム系薬使用量と緑膿菌の薬剤感受性

アンチバイオグラム作成のポイント CLSI document: M39-A3,2009 更新頻度 : 最低, 毎年 1 回更新 データ : エラー等を除外した最終データ, 感染症検査検体由来とし, 保菌検査や監視培養によるものは含めない 菌株数 :30 株以上 ( 稀または特殊な菌種は例外的に使用,30 株に満たない場合は複数年の合計から作成 ) 重複例の削除 : 一定期間内における同一患者の同一検体からの同一感受性の複数検出は, 初回データを採用 抗菌薬 : 日常的に検査しているもの ( 薬剤耐性菌にのみ追加的に検査したものは含めない ) 感性率 :S のみの占める割合 (S%) で, 中間 (I%) は含めない 菌種別の注意点肺炎球菌 :CTX と CTRX は髄膜炎と髄膜炎以外の 2 種類で集計 PCG は経口ペニシリン用を含む 3 通りで集計 Viridans group streptococci:pcg の S% と I% の両者を示す黄色ブドウ球菌 :MRSA を含む場合と,MRSA のみの両者で集計

厚生労働省院内感染対策サーベイランス JANIS 2016年 集計対象施設1,653施設 Pseudomonas aeruginosaのアンチバイオグラム ペニシリン系薬の感性率 PIPC 79.0% TAZ/PIPC 82.6% カルバペネム系薬の感性率 IPM 78.1% MEPM 81.9%

MRSA 分離患者数と分離率 JANIS 検査部門報告 (2008 年 ~2016 年 )

まとめ 検査結果の解釈 抗菌力は MIC 値が低いほど強い ( 試験管内の評価であることに注意 ) MIC 値が低くても解釈を R へ変更する場合がある ( メチシリン耐性ブドウ球菌に対する β- ラクタム系薬の解釈 ) 検査の限界 MIC は ±1 管差の誤差を含んでいる カルバペネマーゼ産生腸内細菌科細菌は, 日常検査では検出できない場合がある 米国 CLSI 標準法は毎年アップデートブレイクポイントが変更されることがある日常検査では 2014 年版が使用されている 蓄積データの活用 アンチバイオグラムは,1 施設内における感受性の動向監視,2 治療抗菌薬選択の基礎データ,3 他施設や全国との比較に活用 薬剤耐性菌の検出は, 抗菌薬使用量や手指消毒薬の使用量と組合せ, 感染対策の評価に活用