Microsoft Word - 02肉牛研究室

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乳牛の繁殖技術と生産性向上

H25.18

2) 飼養管理放牧は 5 月から 11 月の期間中に実施した 超音波検査において受胎が確認された供試牛は 適宜退牧させた 放牧開始時および放牧中 3 週間毎に マダニ駆除剤 ( フルメトリン 1 mg/kg) を塗布した 放牧には 混播永年草地 2 区画 ( 約 2 ha 約 1 ha) を使用し

岡山農総セ畜研報 6: 55 ~ 59 (2016) < 研究ノート > 黒毛和種における繁殖性向上を目指した飼料給与体系の検討 福島成紀 木曽田繁 滝本英二 Examination of the Feeding Method Aiming at Improving reproductive Per

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現在 本事業で分析ができるものは 1 妊娠期間 2 未経産初回授精日齢 3 初産分娩時日齢 / 未経産妊娠時日齢 4 分娩後初回授精日 5 空胎日数 6 初回授精受胎率 7 受胎に要した授精回数 8 分娩間隔 9 供用年数 / 生涯産次 10 各分娩時月齢といった肉用牛繁殖農家にとっては 極めて重要

褐毛和種(熊本系)の遺伝的能力の推移について

6-1 指定食肉 ( 豚肉及び牛肉 ) の安定価格肉用子牛の保証基準価格等算定概要 生産局 平成 27 年 1 月

資料 6-1 指定食肉 ( 豚肉及び牛肉 ) の安定価格肉用子牛の保証基準価格等算定概要 生産局 平成 27 年 12 月

分析にあたり 血統情報については 導入市場が 北海道 東北および九州と離れ 繁殖牛の母集団の血統情報に大きな差異が予測されるため 種雄牛のみを取り入れることとした ただし 遺伝的要因として取り上げた種雄牛に関して 後代産子牛が 2 頭以下の種雄牛については 本分析からは除外した すなわち 血液成分お

材料及び方法 1. 方法発情および発情直後を避けて プロジェステロンとエストロジェン徐放剤 (PRID TEIZO: あすか製薬株式会社 ) を挿入した (0 日目とする ) 4 日目に生理食塩水 ( 大塚生食注 : 大塚製薬株式会社 )50ml を溶媒とした FSH( アントリン R10: 共立製

Taro-④H24成績書『(イ)肉用牛への給与技術の確立 ①繁殖雌牛・子牛への給与技術の確立』【校正済み】

たまみつしげ 2 黒毛和種 琴照重 及び褐毛和種 球光重 ETI が優秀な成績を収めて 種雄牛として選抜される 鳥取牧場で作出した黒毛和種の種雄牛 琴照重 が 産子の肥育成績を調べる現場後代検定により選抜され 精液の供給が始まりました 琴照重 は 同時期に検定を実施した種雄牛 23 頭中 脂肪交雑

焼酎粕飼料を製造できることを過去の研究で明らかにしている ( 日本醸造協会誌 106 巻 (2011)11 号 p785 ~ 790) 一方 近年の研究で 食品開発センターが県内焼酎もろみから分離した乳酸菌は 肝機能改善効果があるとされる機能性成分オルニチンを生成することが分かった 本研究では 従来

Microsoft Word - 宮崎FMDマニュアル⑦ 指針別紙(評価)

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農業高校における繁殖指導とミニ講座による畜産教育支援 大津奈央 中島純子 長田宣夫 飯田家畜保健衛生所 1 はじめに 管内の農業高校では 教育の一環とし て 繁殖雌牛4頭を飼育し 生徒が飼養 いた また 授業外に班活動として8名が畜 産部に所属していた 管理を担うとともに 生まれた子牛を県 飼養管理

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( 図 7-A-1) ( 図 7-A-2) 116

れた。

子牛育成の参考書 ~ 子牛育成プロジェクトの調査結果から ~ 平成 26 年 3 月 東松浦農業改良普及センター唐津農業協同組合上場営農センター北部家畜保健衛生所

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スライド 1

毎回紙と電卓で計算するより パソコンの表計算ソフトを利用して計算されることをすすめます パソコンは計算と記録が同時にできますから 経営だけでなく飼養管理や繁殖の記録にも利用できます 2) 飼料設計項目ア.DMI TDN CP NFC a.dmi( 乾物摂取量 ) 水分を除いた飼料摂取量のことです 飼

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通常 繁殖成績はなかなか乳量という生産性と結びつけて考えることが困難なのですが この平均搾乳日数という概念は このように素直に生産性 ( 儲け ) と結びつけて考えることができます 牛群検定だけでなく色々な場面で非常に良く使われている数値になりますので覚えておくと便利です 注 1: 平均搾乳日数平均

平成24年度自給飼料利用研究会資料|酪農生産における暑熱の影響とその対応

( 図 2-A-2-1) ( 図 2-A-2-2) 18


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BUN(mg/dl) 分娩後日数 生産性の良い牛群の血液データを回収 ( 上図は血中尿素窒素の例 ) 各プロットが個々の牛のデータ BUN(mg/dl) BUN(mg/dl)

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「牛歩(R)SaaS」ご紹介

愛媛畜研セ研報 2:(2014) Bull. Ehime Livestock Res. Cen 県内産黒毛和種肥育牛の脂肪酸組成の状況 岡幸宏 今岡豊 * 要約県内産黒毛和種肥育牛 210 頭 ( 去勢牛 117 頭 雌牛 93 頭 ) の胸最長筋について脂肪酸組成を測定し 性 生

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The Journal of Farm Animal in Infectious Disease Vol.2 No DELAYED PARTURITON AND INFLUENCE OF INDUCED PARTURITION ON CALVES 総 説 黒毛和種繁殖雌牛の分娩遅延の要

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Taro-H26.18

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

薬株式会社 ) を挿入した (0 日目とする ) 4 日目に生理食塩水 ( 大塚生食注 : 大塚製薬株式会社 )50ml を溶媒とした FSH( アントリン R10: 共立製薬株式会社 ) 20AU を皮下 1 回投与し プロスタグランジン F2α 製剤を同時投与した 前報より ecg( 動物用セロ

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参考1中酪(H23.11)

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ふくしまからはじめよう 農業技術情報 ( 第 39 号 ) 平成 25 年 4 月 22 日 カリウム濃度の高い牧草の利用技術 1 牧草のカリウム含量の変化について 2 乳用牛の飼養管理について 3 肉用牛の飼養管理について 福島県農林水産部 牧草の放射性セシウムの吸収抑制対策として 早春および刈取

肉牛生産管理ご紹介

部屋に収容した (40 羽 /3.3 平方メートル ) 表 1 試験区分 区 ( 性別 ) 羽数 飼 料 対照区 ( ) 52 通常 ( 市販飼料 ) 対照区 ( ) 52 通常 ( 市販飼料 ) 試験区 ( ) 52 高 CP(4~6w 魚粉 4% 添加 ) 試験区 ( ) 52 高 CP(4~6

徳島県畜試研報 No.14(2015) 乾乳後期における硫酸マグネシウム添加による飼料 DCAD 調整が血液性状と乳生産に及ぼす影響 田渕雅彦 竹縄徹也 西村公寿 北田寛治 森川繁樹 笠井裕明 要 約 乳牛の分娩前後の管理は産後の生産性に影響を及ぼすとされるが, 疾病が多発しやすい時期である この時

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平成14年度研究報告

澤香代子 坂本洋一 岡﨑尚之 山本裕美 長谷川清寿 : 経腟採卵と過剰排卵処理の併用による和牛胚の生産効率化に関する検討 ( 第 3 報 ) 実験 1 材料および方法 当センター繋養の黒毛和種経産牛 20 頭を供試し 各供試牛に対して3つの胚生産手法を産次ごとに任 1 3) 意の順序ですべて適用した

報告書

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農研機構畜産草地研究所シンポジウム|世界的なルーメンバイパスアミノ酸の利用

2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

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はじめに 現在 国内酪農を取り巻く情勢は 飼料価格の上昇 後継者不足および飼養頭数の減少などの大きな変化によって 生産基盤の弱体化が懸念されており 一方で 消費者の需要の多様化や国際環境の変化等により 今後の酪農経営の発展に向けた好機となっています 近年 人口減少等により国内需要の減少が見込まれる中

技術研究会報告集の書き方

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和牛開始マニュアル

肉用牛 _ 生産コスト縮減に向けた主な取り組み 2 放牧 放牧は 放牧に取り組む前と比べて 飼料費を約 25% 労働費を約 35% 削減できることから 肉用牛繁殖農家の所得向上に有効な手段である また 放牧に取り組むことで 増頭につながった事例もある バヒアグラス草地への放牧 水田放牧 矮性ネピアグ

を残すことになります あいこ は 質量兼備の繁殖雌牛として ひみかねふく の能力を受け継いだ娘牛 です その産子 11 頭の枝肉成績は 枝肉重量が平均 532kg ロース芯面積が平均 62.1cm 2 BMSNo. の平均が 9.0 上物率が 100% と肉量及び肉質に優れた成績を収め これまでに

牛体温監視システム

埼玉県調査研究成績報告書 ( 家畜保健衛生業績発表集録 ) 第 57 報 ( 平成 27 年度 ) 9 牛白血病ウイルス感染が生産性に及ぼす影響 中央家畜保健衛生所 畠中優唯 Ⅰ はじめに牛白血病は散発性と地方病性 ( 成牛型 ) の2つに分類される 牛白血病ウイルス (BLV) 感染を原因とする地

和歌山県農林水産試験研究機関研究報告第 1 号 20AU を皮下に 1 回投与するワンショット区と生理食塩水に溶解した合計 20AU の FSH を 3 日間にわたり減量投与する減量投与区の 2 区を設定し, 当場で飼養している分娩後 日後の黒毛和種経産牛 3 頭を用いて, 各処理を 3

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学位論文要旨 牛白血病ウイルス感染牛における臨床免疫学的研究 - 細胞性免疫低下が及ぼす他の疾病発生について - C linical immunological studies on cows infected with bovine leukemia virus: Occurrence of ot

1. はじめに肉用牛の飼養管理は, 頭数増加や飼育技術の進歩により変化する. たとえば, 農家当たりの飼養頭数増加は, 作業者数や 1 人当たりの作業時間に変化がなければ,1 頭当たりの作業時間を短縮させる. こうした状況は, 作業者数の増加や, 機械化による省力化を進めることで, 補うことが行われ

地域における継続した総合的酪農支援 中島博美 小松浩 太田俊明 ( 伊那家畜保健衛生所 ) はじめに管内は 大きく諏訪地域と上伊那地域に分けられる 畜産は 両地域とも乳用牛のウエイトが最も大きく県下有数の酪農地帯である ( 表 1) 近年の酪農経営は 急激な円安や安全 安心ニーズの高まりや猛暑などの


平成 30 年度アグリ技術シーズセミナー in 沖縄 沖縄産資源を活用したヤギ用飼料の開発と 沖縄肉用ヤギのブランド化へ向けた研究 取組 琉球大学農学部長嶺樹

解 説 一方 乳成分にも違いが見られた 分娩後30日以内 産牛100頭規模の農場としている 損失額の計算は で乳脂肪率が5 を超える場合は栄養不足で体脂肪の ①雄子牛の出生頭数減少 雄子牛の売却減 ②雌子 過剰な動員が起こっていると判断できる この時期に 牛の出生頭数減少 更新牛購入コスト ③出荷乳

メスの配偶子 ヒトの優性 優性 劣性 目の色 黒色 青色 髪の色 黒色 金色 耳垢 濡れている 乾いている 瞼 二重 一重 舌 巻ける 巻けない つむじ 右巻き 左巻き 額 富士額 富士額ではない この中で一つの遺伝子で説明できるのは耳垢だけらしい 家畜の優性 形質 優性 劣性 ウシの角 有角 ヤギ

11 ウシガラス化保存時のストロー内希釈液の種類と胚の生存性

(2) 牛群として利活用 MUNを利用することで 牛群全体の飼料設計を検討することができます ( 図 2) 上述したようにMUN は 乳蛋白質率と大きな関係があるため 一般に乳蛋白質率とあわせて利用します ただし MUNは地域の粗飼料基盤によって大きく変化します 例えば グラスサイレージとトウモコシ

報告書

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分娩後の発情回帰と血液生化学値との関係(第2報)

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

Microsoft Word - 和牛ビジョン( )岡垣改訂版(正式分)

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報告書

25 岡山農総セ畜研報 4: 25 ~ 29 (2014) イネ WCS を主体とした乾乳期飼料の給与が分娩前後の乳牛に与える影響 水上智秋 長尾伸一郎 Effects of feeding rice whole crop silage during the dry period which exp

オレンジとんちゃん研報

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平成24年度農研機構シンポジウム資料|牛肉における放射性セシウムの飼料からの移行について

(1) 乳脂肪と乳糖の生成反芻動物である乳牛にとって最も重要なのはしっかりしたルーメンマットを形成することです そのためには 粗飼料 ( 繊維 ) を充分に与えることが重要です また 充分なルーメンマットが形成され微生物が活発に活躍するには 充分な濃厚飼料 ( でんぷん 糖 ) によりエネルギーを微

2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取

Microsoft Word 武田.doc

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

乳牛の繁殖性低下の現状と子宮環境 ており 産歴にかかわらず黒毛和種の精液を授精した方がホルスタイン種の精液より受胎率が若干高くなる傾向が認められている [5] しかし 人工授精用精液の調整法の違いや雑種強勢の影響を考慮する必要があるため この成績だけで黒毛和種の雄がホルスタイン種の雄より受精能が高い

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

Transcription:

6 黒毛和種繁殖雌牛における分娩前後の適正な栄養水準の解明 担当部署名 : 肉牛研究室担当者名 : 大島藤太 高崎久子 阿久津麗 櫻井由美連絡先 : 電話番号 0287-36-0230 研究期間 : 平成 26 年度 ~30 年度 ( 継続 ) 予算区分 : 県単 ------------------------------------------- 1. 目的黒毛和種繁殖 ( 和牛 ) 農家の経営効率の向上のためには 分娩間隔の短縮が重要である そのためには 適正な栄養管理や適期授精が求められるが 和牛は近年体格が大型化していること 搾乳しないため泌乳量がわからないことなどから 栄養の必要養分量を 的確に判断することが難しくなっている そこで 本研究では繁殖雌牛の分娩前後を中心とした適正な栄養水準を解明する 更に 授精の適期を推定する方法を確立し 適正な栄養管理と適期授精により 分娩間隔の短縮を目指す 2. 方法分娩前後の栄養水準 (TDN) 泌乳量 体格が繁殖成績に及ぼす影響を調査した (1) 調査期間 : 平成 26 年 4 月 ~ 平成 29 年 3 月 (2) 供試牛 : 黒毛和種繁殖雌牛 30 頭 ( 平均産次 5.1 産 体高 132cm 以上 15 頭 132cm 未満 15 頭 ) (3) 試験区分 : 日本飼養標準で示される分娩前後の TDN 要求率と体格により以下の 6 区に設定 体高 132cm 未満 132cm 以上 TDN 要求率分娩前分娩後 供試頭数 試験区分 100% 100% 5 132 未満 100% 区 120% 120% 5 132 未満 120% 区 100% 120% 5 132 未満 100-120% 区 100% 100% 5 132 以上 100% 区 120% 120% 5 132 以上 120% 区 100% 120% 5 132 以上 100-120% 区 (4) 調査項目ア母牛の体尺値 : 体重 体高 胸囲 栄養度 ( 体重 / 体高 ) 栄養度判定イ母牛の泌乳量 : 子牛の体重 ( 哺乳前と哺乳後の差 ) から推定 ウ母牛の血液生化学値 : 総蛋白 アルブミン グルコース 総コレステロール BUN GOT 遊離脂肪酸 ( 分娩 1 ヶ月前 分娩時 分娩 1 2 ヶ月後に測定 ) エ母牛の血液中の黄体ホルモン ( 分娩 30 日後から 60 日後まで 10 日間隔で測定 ) オ繁殖成績 : 分娩後の初回排卵日数 初回発情回帰までの日数 初回授精受胎率 空胎日数 3. 結果の概要 (1) 母牛の分娩後の体重変化は 132cm 以上 100% 区において分娩後の体重減少が大きく 体格に比べエネルギー供給量が少ないことが示唆されたが 132cm 以上 100-120% 区では分娩後の体重増加が顕著となった 132cm 未満 120% 区及び 132cm 以上 120% 区ではともに過肥の傾向がみられた ( 図 1 2) (2) 母牛の泌乳量は平均で 5.4kg で体高 132cm 以上 100-120% 区で一番乳量が多かったが 各区とも 5~5.7kg の範囲内で有意差はなかった ( 図 3) (3) 子牛の日増体重は平均 0.73kg で各区で 6.8~8.1kg の範囲内で有意差はなかったが 子牛の日増体重と母牛の乳量との間に高い相関がみられた ( 図 4) (4) 母牛の繁殖成績では 体高 132cm 未満では 100% 区が初回排卵日数で 120% 区及び 100-120% 区より早く繁殖成績が良好であった 体高 132cm 以上では 100-120% 区で初回排卵日数 - 1 -

が 100% 区及び 120% 区に比べて早く繁殖成績が良好であった 以上のことから 体高が 132cm 未満では TDN 充足状況が繁殖成績に反映していた 132cm 以上においては 100% 区では分娩後の栄養状況が低く 分娩後の体重の減少が卵巣機能の回復の遅れとして現れて 初回排卵を遅らせたと思われた ただし 120% 区では卵巣機能の回復は早いものの 分娩前の過肥が初回発情以降の繁殖成績を低下させたと思われた [ 具体的データ ] 図 1 体高 132cm 未満の母牛の体重変化 図 2 体高 132cm 以上の母牛の体重変化 ( 分娩時を100% とした ) ( 分娩時を100% とした ) 図 3 母牛の日乳量 図 4 母牛の日乳量と子牛の日増体重 表 1 栄養充足状況と繁殖成績 試験区分 初回排卵日数 初回発情日数 初回受精日数 受胎日数 132cm 未満 100% 区 35 60 80 106 132cm 未満 120% 区 47 66 71 105 132cm 未満 100-120% 区 40 63 85 122 132cm 以上 100% 区 40 84 91 131 132cm 以上 120% 区 38 69 81 166 132cm 以上 100-120% 区 32 59 87 106 4. 今後の問題点と次年度以降の計画当センター供試牛における調査期間が終了していないため サンプリング等を継続して行ないデータ蓄積を図る - 2 -

7 黒毛和種繁殖雌牛における生殖器の機能的回復状況推定の方法 担当部署名 : 肉牛研究室担当者名 : 髙﨑久子 大島藤太 櫻井由美研究期間 : 平成 28 年度 ~30 年度 ( 完了 ) 予算区分 : 県単 ------------------------------------------- 1. 目的和牛繁殖農家の経営効率の向上のためには 分娩間隔の短縮が重要である そのためには 分娩後にいかに早く繁殖機能の回復した個体の選定と適期授精が必要である 繁殖雌牛の形態的及び機能的評価は主に臨床診断と血中ホルモンの動態から判断されている しかし それらは卵巣機能の回復状況を示すもので 子宮については不明な点が多く その機能的評価方法は少ない そこで 本研究では繁殖雌牛の授精適期推定方法を確立するために 分娩後の子宮の機能的の機構を解明し 分娩間隔を短縮することを目的とした試験を実施した 特に 今回 PGF2α 代謝産物である PGFM が分娩後の子宮修復に伴い分娩後 0 日 ~15 日に有意に低下して 15 日以降は低値を示し また不受胎牛群に対し受胎牛群が有意に高く推移する ( 東北農研伊賀ら ) との報告に基づき 子宮回復の指標として PGFM の産生割合を指標としたオキシトシン負荷試験を行い 子宮回復と受胎性との関係について検討した 2. 方法 (1) オキシトシン (OT) 負荷試験を実施して OT 感受性と受胎率との関係を調査した 1 供試牛 : 黒毛和種繁殖雌牛 (8 頭 ) 2 試験期間 : 平成 28 年 4 月 ~ 平成 29 年 3 月 3 調査項目 : ( ア ) 発情後 18 日目にOT を投与し 投与 30 分後に採血して PGFM を測定 その後の発情で人工授精を行い 受胎性を確認する ( イ ) 母牛の血液生化学値 : 総蛋白 アルブミン グルコース 総コレステロール BUN GOT ( ウ ) 母牛の体尺値 : 体重 体高 胸囲 栄養度指数 ( 体重 / 体高 *100) (2)(1) と併せて 超音波画像診断装置 ( エコー ) を用いて子宮及び卵巣を診断する 1 供試牛 : 黒毛和種繁殖雌牛 (11 頭 ) 2 試験期間 : 平成 29 年 4 月 ~ 平成 29 年 8 月 3 調査項目 : ( ア ) 発情後 18 日目にOT を投与し 投与 30 分後に採血してPGFM を測定 その後の発情で人工授精 ( 以下 AI) を行い 受胎性を確認した ( イ ) 母牛の血液生化学値 : 総蛋白 アルブミン グルコース 総コレステロール BUN GOT ( ウ ) 母牛の体尺値 : 体重 体高 胸囲 栄養度指数 ( 体重 / 体高 *100) ( エ ) 子宮 : 左右子宮角の直径 子宮内膜の腫脹の有無 子宮内貯留物の有無 ( オ ) 卵巣 : 卵胞の有無 大きさ 黄体の有無 3. 結果の概要 (1)OT 負荷試験について 1 OT 負荷試験による PGFM 動態について OT 負荷前 (0 分 ) の PGFM 値を100% とし 負荷後 30 分のPGFM の濃度を百分率で示した 受胎群と不受胎群について比較したところ有意差は認められなかった 2 OT 負荷前 (0 分 )PGFM について 分娩後発情回帰群 ( 以下分娩後群 ) と過剰排卵処置後子宮還流法による採卵実施群 ( 以下採卵群 ) について比較したところ 採卵群で5% 水準に有意に高い値を示した 採卵群については年 4 回の採卵後 経過日数が32 日であったため 採卵が子宮回復状態に影響した可能性が示唆された - 3 -

(2) 超音波画像診断装置 ( エコー ) を用いた子宮及び卵巣の診断について 1 分娩後 30 日に超音波画像診断装置により子宮内貯留が認められた群 ( 以下子宮貯留群 ) は子宮内貯留がない牛群 ( 以下正常群 ) に比べて 初回排卵が遅くなる傾向にあった (5% 水準で有意差あり ) 2 発情回帰後に血液生化学検査を行い 発情回帰と関連があると報告されている GOT BUN TCHO について分娩後 30 日において子宮内貯留群と正常群を比較したところ 有意差は認められなかった [ 具体的データ ] 表 1. 受胎群と不受胎群における AI 前 OT 負荷試験による負荷後 30 分の PGFM 産生割合の比較 牛群 供試頭数 PGFM 産生割合 (%) 1 ( 平均 ± 標準偏差 ) 受胎群 4 頭 158.2±44.3 不受胎群 2 頭 233.8±47.7 1 OT 負荷前 (0 分 ) の PGFM 値を 100% として換算 表 2. 採卵群と分娩後発情回帰群における AI 前 OT 負荷試験による負荷後 30 分の PGFM 産生割合の比較 牛群 供試頭数 1 OT 負荷前 (0 分 ) の PGFM 値を 100% として換算 a-b: 異符号間で有意差有り (p<0.01) PGFM 産生割合 (%) 1 ( 平均 ± 標準偏差 ) 採卵群 2 頭 396.1±105.0 a 分娩後発情回帰群 4 頭 174.4±12.3 b 図 1. 分娩から初回排卵までの日数 4. 今後の問題点と次年度以降の計画 (1) 超音波画像診断装置 ( エコー ) を用いた子宮及び卵巣の診断とあわせてサンプリングを行っている血液データについて PGFM の測定 分析を行う (2) 当センター供試牛における調査期間が終了していないため サンプリング等を継続して行ない データ蓄積を図る - 4 -

8 牛肉の新評価技術基準及び付加価値向上技術の開発 担当部署名 : 企画情報課肉牛研究室担当者名 : 阿久津麗 大島藤太 櫻井由美研究期間 : 平成 28 年度 ~30 年度 ( 継続 ) 予算区分 : 県単 ------------------------------------------- 1. 目的本県産黒毛和種牛肉は 全国の枝肉共励会において毎年上位に入賞するなど 肉量 肉質ともに優れた牛肉として 市場から高い評価を得ている これまで 本県は 脂肪交雑の向上に力を入れて牛肉生産を進めてきたが 第 10 回全国和牛能力共進会において 枝肉の一価不飽和脂肪酸 (MUFA) 含量が肉質審査項目に追加されたことを受け 牛肉の評価に おいしさ を加える動きが各県で進んでおり 本県の生産者や関係団体も関心を寄せている ビタミン B 群に属するビオチンは 牛肉中の飽和脂肪酸不飽和化酵素 (SCD) の活性を高めてオレイン酸を増やし 脂肪交雑を高め ロース芯面積を増大させる効果が報告されている そこで 本研究では ビタミン A 制御下の肥育牛にビオチンを給与することで ビオチンが発育や枝肉成績 脂肪酸組成に及ぼす影響を検証し 県産牛肉の特徴を消費者にアピールできるような高付加価値牛肉生産技術の開発に取組む 2. 方法 (1) 供試牛 : 当センター産黒毛和種去勢牛 6 頭 + 矢板市場導入黒毛和種去勢牛 2 頭 (8 頭 ) (2) 試験期間 :24ヵ月齢から 30ヵ月齢 (23 ヵ月齢まで市販の配合飼料を用いて 全頭とも同じ条件で肥育 ) (3) 試験区分ア試験区 : ビオチン製剤 ( ビオチン含量 2%) を 20g / 日給与する区 :4 頭イ対照区 : ビオチンを給与しない区 :4 頭 (4) 調査項目 :SCD 遺伝子型 飼料摂取量 体尺値 ( 体重 体高 胸囲 ) 血液一般性状 血漿中ビタミン濃度 枝肉成績 官能評価 3. 結果の概要今年度は 10 ヵ月齢に達した供試牛 8 頭について肥育を開始し 23 ヵ月齢まで肥育した 試験区間に偏りが少ないように配置するため SCD 遺伝子型を分析した結果 AA 型 2 頭 VV 型 2 頭 型 4 頭であったため 試験区は 表 1 のように区分した 23 ヵ月齢の体重は 試験区 674.0kg 対照区 676.5kg であった ( 表 2) また 23 ヵ月齡までの 1 頭あたりの日増体量 (D.G) 肥育中期 (15~23 ヵ月齢 ) の飼料摂取量は 試験区間に有意な差は認められなかった ( 表 2) 血漿中ビタミン A 濃度は 両試験区とも同様の推移を示した ( 図 1) - 5 -

[ 具体的データ ] 表 1 供試牛の内訳 区分父 (1 代祖 ) SCD 遺伝子型 試験区 対照区 芳之国芳之国光平照光平照芳之国芳之国光平照光平照 VV AA AA VV 表 2 23 ヵ月齢に達した試験牛における肥育成績 区分 頭数 ( 頭 ) 体重 (kg) D.G(kg) 肥育中期飼料摂取量 (kg) 試験区 4 674.0 0.90 1881 対照区 4 676.5 0.92 1923 図 1 23 ヵ月齢に達した試験牛における血中ビタミン A 濃度の推移 4. 今後の問題点と次年度以降の計画試験供試牛において 24 ヵ月齢以降 ビオチンを給与するとともに ビタミン A コントロールを行い ビオチンが 牛生体や枝肉成績に及ぼす影響を調査する また 既往知見調査の結果 配合飼料多給の実証試験では ビオチンの効果が得られない報告があったことから 肥育後期の粗飼料給与割合を高めるため 配合飼料の一部を稲発酵粗飼料で置き換える給与形態で試験を実施する予定である - 6 -