第 3 章 鉄筋コンクリート工学の復習 鉄筋によるコンクリートの補強 ( 圧縮 ) 鉄筋で補強したコンクリート柱の圧縮を考えてみよう 鉄筋とコンクリートの付着は十分で, コンクリートと鉄筋は全く同じように動くものとする ( 平面保持の仮定 ) l Δl 長さの柱に荷重を載荷したときの縮み量をとする 鉄筋及びコンクリートの圧縮ひずみは同じ量なのでで表す = Δl l 鉄筋及びコンクリートの応力はそれぞれの弾性定数を用いて次式で与えられる A A コンクリートの応力 = E 鉄筋の応力 = E Δl kn m ただし, E : コンクリートの弾性定数 kn m E : 鉄筋の弾性定数 l 鉄筋及びコンクリートが分担している力は外力に等しいので ( A + A = E A + E A = 上式より = E A 上式の分母を E で除すと ここに, + E A = = = EA+ EA E E A+ A E A + A ) ( ) E は鉄筋とコンクリートの弾性定数の比で, 鉄筋コンクリート工学の中で最も重要 な係数です ( 鉄筋コンクリートの教科書には余り述べていないようですが ) 静的荷重が載荷しているときはの値を取るものと考えます すなわち鉄筋の面積が15 倍の断面積を持っていると考えるわけです この面積を ( コンクリート ) 換算断面積とと定義しておきます ひずみは コンクリート換算断面積 = EA A = A + A
次にコンクリートと鉄筋の応力を求めてみよう コンクリートの応力鉄筋の応力 すなわち, コンクリートの応力は荷重 倍というわけです = E = E = EA A = E = E = EA を等価断面積で除した値であり, 鉄筋の応力はその 鉄筋によるコンクリートの補強 ( 曲げ ) 次に鉄筋コンクリートはりの曲げについて考えてみることにしましょう 右のようなはりを考えると下側に引張が生じるので当然鉄筋は下側に配置します 鉄筋コンクリートの仮定を思い出してみましょう 1) 平面保持の仮定が成立する ) コンクリート及び鉄筋の弾性定数は一定とす =15 る ( ) 3) コンクリートの応力は無視する 以上の3つです 平面保持の仮定とは元々平面であった変形前の平面は, 変形後も平面を保持するという仮定です 右図を見て創造してみてください 変形前も変形後も長さが変わらない軸がどこかにあるはずですからその軸を中立軸とすると, ひずみは中立軸からの距離に比例することになります 変形前の平面 変形後の平面 圧縮
例題 1 右図の単鉄筋長方形ばりが, の曲げモーメントを 受けるときのコンクリートの縁応力と, 鉄筋の応力を求め よ M = 48kN m 460mm 圧縮 x 400mm 6 D16 鉄筋コンクリートの教科書に掲載されている教科書を用いて求めてみよう 別解 鉄筋の断面積は 鉄筋比 k の値 A = 6 198.6 = 119mm A 119 p = = = 0.0065 bd 460 400 ( ) ( ) k = p+ p p= 15 0.0065 + 15 0.0065 15 0.0065 = 0.355 中立軸は x = kd = 0.355 400 = 14mm k 0.355 j = 1 = 1 = 0.88 3 3 M 48000000 = = = 114.1N mm Ajd 119 0.88 400 鉄筋の応力は コンクリートの縁応力は M 48000000 = = = 4.1 N mm kbjd 0.355 460 0.88 400 上の方法は, 公式の誘導を丁寧に追っかけていれば別だが, 公式に値を代入しただけでどのような意味があるかが理解しにくい 手間はかかるが, 原理が分かりやすい別の方法で追っかけてみよう まず, 中立軸位置 x = 00mm と仮定してみる 460mm 軸回り コンクリート換算断面 1 次モーメントを計算する ( 上側プラス ) G = 00 460 100 15 119 100 = 900000 1788000 3 = 741000mm プラスの側, すなわち圧縮側が大きすぎる 中立軸はもっと上にあるはずである x = 00 6 D16 400mm
まず, 中立軸位置 x = 00mm と仮定してみる 軸回り コンクリート換算断面 1 次モーメントを計算する ( 上側プラス ) G = 140 460 70 15 119 60 = 4508000 4648800 3 = 140800mm 今度はマイナスの方が大きくなりすぎたようなので, 少しだけ引張が 倭に移動させます G = 14 460 71 15 119 58 = 463770 4613040 3 = 4680mm x = 141.70mm 本当の中立軸位置はになるようですが, これくらいで止めて良いと思います 中立軸位置を ( x =14) x = 14mm メントを求めてみましょう I としたときのコンクリート換算断面 次モー 3 460 14 = + 14 460 71 + 15 119 58 1 = 109800000 + 39300000 + 119000000 = 169300000 460mm x =140 6 D16 460mm x =14 6 D16 400mm 400mm コンクリートの縁応力は M 48000000 = y b = 14 = 4.18 N mm I 169300000 有効数字の問題で少しだけずれが出ている 鉄筋位置のコンクリートの応力は M 48000000 = y b = 58 = 7.60 N mm I 169300000 その 15 倍が鉄筋の応力なので = 15 7.60 = 114.0 N mm これまで構造力学で学習した知識だけで, 鉄筋コンクリートの曲げ応力を求めることができた
単柱橋脚の曲げモーメント- 曲率曲線 ( 実力曲線 ) を求める橋梁の設計を行う際に最も重要なものが橋脚の曲げモーメント - 曲率曲線です 自重で鉛直方向に圧縮されている鉄筋コンクリート橋脚に水平方向を与えて曲げを発生させる その時の橋脚の動きを考えてみよう G W H h 1. 強度まで ( 全断面有効 ) 橋脚基部左側の端が強度の達するまでを考えてみよう 1) 自重により均等な圧縮応力が生じている ) 水平力 H を増加させると, 右側断面では圧縮応力が増加し, 右側断面では圧縮応力が次第に減少し, ついには左端が強度に達する ここまでは何処にも応力が生じないので, 全断面が応力を分担している 3) 橋脚基部に作用する軸力を N, ひび割れ時の曲げモーメントを M, 曲率を φ とする 圧縮力による圧縮ひずみ量は N = EA ただし, はコンクリー換算断面積であることに注意してください 曲げモーメントが作用したときの段歩のひずみ量は ただし, = M M M b y EI = = W A b I EW E y b はコンクリート換算断面係数と呼ばれる 圧縮後 (b) 橋軸直角方向 y b 圧縮 + 曲げ 変形前 つのひずみの和が, コンクリートの強度時のひずみに達したとき, ひび割れが起こる 圧縮 コンクリートの応力 - ひずみ曲線 鉄筋の応力 - ひずみ曲線
bt = b + 圧縮軸力を負に取るのであれば, 上式となるが, 軸力 Nを正と考えると bt = b 上式にそれぞれ値を代入する 変形して bt M = N E EW E A M N = W + A bt ただし, bt : コンクリートの曲げ強度 設計では, 次式を用いる bt = 18. k k : コンクリートの設計基準強度 曲率は次式で与えられる M φ = E I i 構造力学で次のような式が登場したのを覚えていますか d y dx EI d y dx = M が曲率を表しているのです 曲率に中立軸からの距離をかけるとその位置のひずみが求まります. ひび割れ後の計算法 中立軸位置 引張側の鉄筋が最初に降伏するとき ( 初降伏時 ) の曲げ モーメントの値及び圧縮側の一番外側の鉄筋の位置のコンクリートが終局強度のなったときの曲げモーメントを求める 前にも述べたように, ひび割れ後は引張側のコンクリートは作用していないと考えるので, 計算が複雑になる 近似的な解を求める方法を考えよう コンピューターを使うのであれば相当正確な計算が可能である 初降伏時 側 圧縮 + 曲げ 1) 側鉄筋が降伏ひずみに達したものと考える ) 中立軸位置を仮定する 3) 平面保持の仮定から, ひずみは直線変化するので全ての点のひずみが計算可能となる 4) 圧縮側断面を短冊形に分割し, 短冊毎にひずみと応力を求める 5) 鉄筋の応力を計算する 圧縮側 変形前
各要素が受け持っている軸方向力を, 応力の正負を考慮して和をとる N = Δ A + ΔA j j j j j= 1 j= 1 ここに j, j :j 番目の微小要素内のコンクリートおよび鉄筋の応力度 ( N ΔA, ΔA :j 番目の各微小要素内のコンクリートおよび鉄筋の断面積 ( m j 曲げモーメントおよび曲率を求める j ( 解 9.3.4) ここで得られた軸力がその断面の軸力 N に等しければ, 中立軸の仮定が正しかったことになる もし, 等しくなければ中立軸を仮定し直して同様の計算を行い, 収束させる コンピューターにやらせるのであれば, 門田はない 中立軸が求まってしまえば, 後は図心軸回りの曲げモーメントを求めればよい ( 中立軸回りでないことに注意してください 私たちの研究室ではそのことに気がつかなくて1 年間を棒に振った苦い経験があります ) m ) ) M i = x ΔA + j j j j= 1 j= 1 x j j ΔA j φi x M i φ i x j 0 x 0 = 0 0 : 上下部構造の重量により上部構造の慣性力の作用位置から数えてi 番目の断面に作用する曲げモーメント ( N m) : 上部構造の慣性力の作用位置から数えてi 番目の断面の曲率 ( 1 m) ( m) :j 番目の各微小要素内のコンクリートまたは鉄筋から断面の図心位置までの距離 : コンクリートの縁ひずみ : コンクリートの圧縮縁から中立軸までの距離 ( m) 断面の外側に配置された軸方向引張鉄筋に生じるひずみが降伏ひずみ y に達したときの曲げモーメントおよび曲率を求め これらを初降伏モーメント M 初降伏曲率 φ y0 y 0 とする 終局時 また 最外縁の軸方向圧縮鉄筋位置におけるコンクリートのひずみが終局ひずみ したときの曲げモーメントおよび曲率を それぞれ終局曲げモーメント とする M u u 終局曲率 に達 φ u
宿題右図のT 型はりについて以下の問に答えよ 鉄筋は d = 800 の位置に全断面があると考えて良い 1) 中立軸位置を求めよ M = 700kN m a = 7 N mm 容応力を = 180 N mm ) が作用するときコンクリート上 端の応力及び鉄筋の応力を求めよ 3) 鉄筋の許容応力, 鉄筋の許 a とするとき, この 断面を有するはりが耐えられる最大曲げモーメントの大きさを求めよ b =1100 10 D3 t = 00 d = 800