Freak wave estimation by WAVEWATCH III and HOSM

Similar documents
パソコンシミュレータの現状

例 e 指数関数的に減衰する信号を h( a < + a a すると, それらのラプラス変換は, H ( ) { e } e インパルス応答が h( a < ( ただし a >, U( ) { } となるシステムにステップ信号 ( y( のラプラス変換 Y () は, Y ( ) H ( ) X (

Microsoft PowerPoint - 海の波.ppt [互換モード]

数値計算で学ぶ物理学 4 放物運動と惑星運動 地上のように下向きに重力がはたらいているような場においては 物体を投げると放物運動をする 一方 中心星のまわりの重力場中では 惑星は 円 だ円 放物線または双曲線を描きながら運動する ここでは 放物運動と惑星運動を 運動方程式を導出したうえで 数値シミュ

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft PowerPoint - 三次元座標測定 ppt

Probit , Mixed logit

領域シンポ発表

An ensemble downscaling prediction experiment of summertime cool weather caused by Yamase

Microsoft PowerPoint - H22制御工学I-2回.ppt

Microsoft PowerPoint - 物情数学C(2012)(フーリエ前半)_up

0 21 カラー反射率 slope aspect 図 2.9: 復元結果例 2.4 画像生成技術としての計算フォトグラフィ 3 次元情報を復元することにより, 画像生成 ( レンダリング ) に応用することが可能である. 近年, コンピュータにより, カメラで直接得られない画像を生成する技術分野が生

景気指標の新しい動向

Microsoft PowerPoint - 資料04 重回帰分析.ppt

Microsoft PowerPoint 集い横田.ppt [互換モード]

0 部分的最小二乗回帰 Partial Least Squares Regression PLS 明治大学理 学部応用化学科 データ化学 学研究室 弘昌

Microsoft PowerPoint - H21生物計算化学2.ppt

第6章 実験モード解析

数学 t t t t t 加法定理 t t t 倍角公式加法定理で α=β と置く. 三角関数

PowerPoint プレゼンテーション

Microsoft Word - 補論3.2

Microsoft PowerPoint - H22制御工学I-10回.ppt

memo

スライド 1

Microsoft PowerPoint - H17-5時限(パターン認識).ppt

FEM原理講座 (サンプルテキスト)

多次元レーザー分光で探る凝縮分子系の超高速動力学

横浜市環境科学研究所

<4D F736F F F696E74202D20906C8D488AC28BAB90DD8C7689F090CD8D488A D91E F1>

スライド 1

PowerPoint プレゼンテーション

2009 年 11 月 16 日版 ( 久家 ) 遠地 P 波の変位波形の作成 遠地 P 波の変位波形 ( 変位の時間関数 ) は 波線理論をもとに P U () t = S()* t E()* t P() t で近似的に計算できる * は畳み込み積分 (convolution) を表す ( 付録

DVIOUT

以下 変数の上のドットは時間に関する微分を表わしている (ex. 2 dx d x x, x 2 dt dt ) 付録 E 非線形微分方程式の平衡点の安定性解析 E-1) 非線形方程式の線形近似特に言及してこなかったが これまでは線形微分方程式 ( x や x, x などがすべて 1 次で なおかつ

GJG160842_O.QXD

カメラレディ原稿

航空機の運動方程式

PowerPoint Presentation

SAP11_03

14 化学実験法 II( 吉村 ( 洋 mmol/l の半分だったから さんの測定値は くんの測定値の 4 倍の重みがあり 推定値 としては 0.68 mmol/l その標準偏差は mmol/l 程度ということになる 測定値を 特徴づけるパラメータ t を推定するこの手

PowerPoint プレゼンテーション

画像処理工学

3 数値解の特性 3.1 CFL 条件 を 前の章では 波動方程式 f x= x0 = f x= x0 t f c x f =0 [1] c f 0 x= x 0 x 0 f x= x0 x 2 x 2 t [2] のように差分化して数値解を求めた ここでは このようにして得られた数値解の性質を 考

Chap2.key

国土技術政策総合研究所 研究資料

s ss s ss = ε = = s ss s (3) と表される s の要素における s s = κ = κ, =,, (4) jωε jω s は複素比誘電率に相当する物理量であり ここで PML 媒質定数を次のように定義する すなわち κξ をPML 媒質の等価比誘電率 ξ をPML 媒質の

小野測器レポート「振動の減衰をあらわす係数」

Microsoft PowerPoint - 発表II-3原稿r02.ppt [互換モード]

ディジタル信号処理

工学応用の観点からのデータ同化とその特徴 明治大学 中村和幸 1

Microsoft Word - Chap17

0 スペクトル 時系列データの前処理 法 平滑化 ( スムージング ) と微分 明治大学理 学部応用化学科 データ化学 学研究室 弘昌

画像解析論(2) 講義内容

Microsoft PowerPoint - 時系列解析(11)_講義用.pptx

Microsoft PowerPoint - qcomp.ppt [互換モード]

Microsoft PowerPoint - 卒業論文 pptx

PowerPoint Presentation

Microsoft Word - Time Series Basic - Modeling.doc

Kumamoto University Center for Multimedia and Information Technologies Lab. 熊本大学アプリケーション実験 ~ 実環境における無線 LAN 受信電波強度を用いた位置推定手法の検討 ~ InKIAI 宮崎県美郷

航空機の運動方程式

ଗȨɍɫȮĘർǻ 図 : a)3 次元自由粒子の波数空間におけるエネルギー固有値の分布の様子 b) マクロなサイズの系 L ) における W E) と ΩE) の対応 として与えられる 周期境界条件を満たす波数 kn は kn = πn, L n = 0, ±, ±, 7) となる 長さ L の有限

カイ二乗フィット検定、パラメータの誤差

( 前半 ) 目次 1. 辞書学習の導入と先行研究の紹介. 辞書学習の応用事例 3. 辞書学習のサンプル複雑度とは ( 後半 ) 4. 既存の辞書学習のアルゴリズム 5.Bayes 推定を用いた辞書学習のアルゴリズム /53

図 宇宙論解析の流れ 次元データの CMB の例 宇宙論ゆらぎ場 F (θ) の測定 左上図 ゆらぎ場のフーリエ波数分解 右上図 右下図は パ ワースペクトル推定の結果 灰色点は各波数ビンでの測定値 エラーバーを伴う青点は 複数の波数ビンで測定値を平均した結果 エラーバーとして 有限数のフーリエモー

2018/6/12 表面の電子状態 表面に局在する電子状態 表面電子状態表面準位 1. ショックレー状態 ( 準位 ) 2. タム状態 ( 準位 ) 3. 鏡像状態 ( 準位 ) 4. 表面バンドのナローイング 5. 吸着子の状態密度 鏡像力によるポテンシャル 表面からzの位置の電子に働く力とポテン

スライド 1

Microsoft PowerPoint - CSA_B3_EX2.pptx

Microsoft PowerPoint - 11JUN03

今週の内容 後半全体のおさらい ラグランジュの運動方程式の導出 リンク機構のラグランジュの運動方程式 慣性行列 リンク機構のエネルギー保存則 エネルギー パワー 速度 力の関係 外力が作用する場合の運動方程式 粘性 粘性によるエネルギーの消散 慣性 粘性 剛性と微分方程式 拘束条件 ラグランジュの未

5. 変分法 (5. 変分法 汎関数 : 関数の関数 (, (, ( =, = では, の値は変えないで, その間の に対する の値をいろいろと変えるとき, の値が極地をとるような関数 ( はどのような関数形であるかという問題を考える. そのような関数が求められたとし, そのからのずれを変分 δ と

経済数学演習問題 2018 年 5 月 29 日 I a, b, c R n に対して a + b + c 2 = a 2 + b 2 + c 2 + 2( a, b) + 2( b, c) + 2( a, c) が成立することを示しましょう.( 線型代数学 教科書 13 ページ 演習 1.17)

<4D F736F F F696E74202D208D E9197BF288CF68A4A B8CDD8AB B83685D>

様々なミクロ計量モデル†

Microsoft PowerPoint - 計測工学第7回.pptx

Microsoft Word - 01.doc

第 4 週コンボリューションその 2, 正弦波による分解 教科書 p. 16~ 目標コンボリューションの演習. 正弦波による信号の分解の考え方の理解. 正弦波の複素表現を学ぶ. 演習問題 問 1. 以下の図にならって,1 と 2 の δ 関数を図示せよ δ (t) 2

板バネの元は固定にします x[0] は常に0です : > x[0]:=t->0; (1.2) 初期値の設定をします 以降 for 文処理のため 空集合を生成しておきます : > init:={}: 30 番目 ( 端 ) 以外については 初期高さおよび初速は全て 0 にします 初期高さを x[j]

第 5 章 構造振動学 棒の振動を縦振動, 捩り振動, 曲げ振動に分けて考える. 5.1 棒の縦振動と捩り振動 まっすぐな棒の縦振動の固有振動数 f[ Hz] f = l 2pL である. ただし, L [ 単位 m] は棒の長さ, [ 2 N / m ] 3 r[ 単位 Kg / m ] E r

Microsoft PowerPoint - ロボットの運動学forUpload'C5Q [互換モード]

今後の予定 6/29 パターン形成第 11 回 7/6 データ解析第 12 回 7/13 群れ行動 ( 久保先生 ) 第 13 回 7/17 ( 金 ) 休講 7/20 まとめ第 14 回 7/27 休講?

Microsoft PowerPoint - 第3回2.ppt

Microsoft PowerPoint - 2_6_shibata.ppt [互換モード]

位相最適化?

ベイズ統計入門

大気環境シミュレーション

Microsoft Word - thesis.doc

多変量解析 ~ 重回帰分析 ~ 2006 年 4 月 21 日 ( 金 ) 南慶典

航空機の運動方程式

Microsoft PowerPoint - シミュレーション工学-2010-第1回.ppt

工業数学F2-04(ウェブ用).pptx

PowerPoint Presentation

Microsoft PowerPoint - ›žŠpfidŠÍŁÏ−·“H−w5›ñŒÚ.ppt

構造力学Ⅰ第12回

OpenFOAM(R) ソースコード入門 pt1 熱伝導方程式の解法から有限体積法の実装について考える 前編 : 有限体積法の基礎確認 2013/11/17 オープンCAE 富山富山県立大学中川慎二

Microsoft Word - note02.doc

PowerPoint プレゼンテーション

 

音情報処理I

(Microsoft PowerPoint - \221\34613\211\361)

09.pptx

Transcription:

2017 年 9 月 25 日第 2 回理研データ同化ワークショップ アンサンブル 4 次元変分法を活用した巨大波浪の再現 藤本航 早稲田卓爾 東京大学新領域創成科学研究科海洋技術環境学専攻 1

導入 : フリーク波とは 海洋に突発的に生じる巨大波 波浪場の平均的な振幅 (H s : 有義波高 ) を大きく超える波 H > 2 or η crest > 1.3 H s H s (Dysthe et al. http://folk.uio.no/karstent/waves/index_en.html) 工学的 : 船舶 海洋構造物の安全 Taylor, P. 2005. The Draupner wave of 1 st January 1995 ICMS 北海石油プラットホームでの観測 日本近海でも観測 2

観測データからの波形再構成 フリーク波の推定 物理の研究 船舶 海洋構造物 発電機の事故解析 逆問題 データ同化 再解析 津波インバージョンの深海波 ver. フリーク波インバージョン 想定する観測データ ブイ 波高計 レーダー LIDAR など 津波インバージョン藤井 佐竹 (2011) 建築研究所 HP Nouguier and Guerin (2014) 船舶からの LIDAR 波浪計測 3

本研究の概要 1. フリーク波を再構成するには 非線形性を考慮する必要がある 2. 波浪の非線形時間発達を解ける手法があるが 通常の 4 次元変分法 ( アジョイント法 ) を適用するには課題が多い 3. アンサンブル 4 次元変分法を用いて フリーク波を再構成する 4

波浪の非線形性とフリーク波の関係 連続の式 水底境界条件 運動学的自由境界条件 力学的自由境界条件 基礎方程式系 (Euler 方程式 ) 2 φ z 2 = 2 φ Φ z = 0 d z η at z = η t = Φ η + 1 + η 2 W at z = η Φ t = 1 2 Φ 2 + gη + 1 2 1 + η 2 W 2 at z = η O z 自由表面 z = η(x, y) z = x, y 表面上の速度ポテンシャル Φ = φ(x, y, z = η, t) 表面上の鉛直速度 W = z φ(x, y, z = η, t) 水平方向のナブラ = ( x, y ) 非線形性によって振幅が局所的に増大 = 変調不安定 フリーク波のモデル (Benjamin & Feir 1967) 水槽実験 Chabchoub et al. (2012) 5

Higher Order Spectral Method (HOSM) Dommermuth & Yue (1987), West et al (1987) Euler 方程式を解く 海洋波浪の DNS ラプラス方程式の解から 空間微分を FFT で評価 ( スペクトル法 ) 高速高精度 任意の次数の非線形性 広いスペクトル幅を考慮 自由境界条件について Φ, W は z=0 周りにテイラー展開 ( 摂動展開 ) 表面上の速度ポテンシャル Φ = φ(x, y, z = η, t) 表面上の鉛直速度 W = z φ(x, y, z = η, t) 水平方向のナブラ = ( x, y ) η t = w 1 Φ η + w 2 +w 3 +w 1 η 2 Φ t = gη 1 2 Φ 2 + 1 2 w 1 w 1 + w 1 w 2 φ 0 1 = Φ φ 2 0 = η φ 0 1 z φ 3 0 = η φ 0 2 z η2 1 φ 0 2! z w (1) = φ 0 1 z w (2) = φ 2 0 z + η 2 1 φ 0 z 2 w (3) = φ 3 0 z + η 2 2 φ 0 z 2 + η2 3 1 φ 0 2! z 3 HOSM で計算されたフリーク波 6

観測値と波浪予報モデルを用いた波浪場の再構築 WAVEWATCH III などの波浪予報モデル ( パワースペクトルのみ出力 ) 初期波浪場 ηƹ 0 k = A k exp(2πi ψ(k)) パワースペクトルの背景値 S k 観測データ y HOSM データ同化 振幅 A k 位相 ψ(k) 波浪予報モデルは パワースペクトルしか出力しない波浪の DNS と組み合わせることで 観測データから位相も復元する ( 振幅も調整 ) 4 次元変分法を適用 ( 空間的に小量な 時系列データを想定 )

4 次元変分法の適用とコスト関数の定式化 WAVEWATCH III などの波浪予報モデルによるパワースペクトル S k y: 観測時系列 H η 0 : モデル内時系列 パワースペクトルの背景値 S k 観測データ y 制御変数 η 0 : 初期波形のフーリエ係数 L η 0 = λ 2 η 0 D 1 η 0 + 1 2 H η 0 y 2 HOSM HOSMで力学を考慮することで観測演算子を時間方向に拡張 Dは対角行列とすることができ 逆行列 D 1 を容易に計算 メモリの節約 初期波形がフーリエ係数で表されるため ( 異なる成分波は無相関 ) diag D = S k S k を背景誤差共分散とみなしている λはチューニングパラメタ L2 正則化 (Tikhonov 正則化 ) 8

Higher Order Spectral Method (HOSM) Dommermuth & Yue (1987), West et al (1987) Euler 方程式 (NLS と同じ基礎方程式系 ) を解く 海洋波浪の DNS ラプラス方程式の解から 空間微分を FFT で評価 ( スペクトル法 ) 高速高精度 任意の次数の非線形性 広いスペクトル幅を考慮 自由境界条件について Φ, W は z=0 周りにテイラー展開 ( 摂動展開 ) η t = w 1 Φ η + w 2 +w 3 +w 1 η 2 Φ t = gη 1 2 Φ 2 + 1 2 w 1 w 1 + w 1 w 2 φ 0 1 = Φ φ 2 0 = η φ 0 1 z φ 3 0 = η φ 0 2 z η2 1 φ 0 2! z w (1) = φ 0 1 z w (2) = φ 2 0 z + η 2 1 φ 0 z 2 w (3) = φ 3 0 z + η 2 2 φ 0 z 2 アジョイント法を適用するのは困難 摂動展開を多用する (Aragh & Nwogu 2008) フォワード計算に時間がかかるので アジョイント方程式にも時間がかかる アンサンブル 4 次元変分法 + η2 3 1 φ 0 2! z 3 HOSM で計算されたフリーク波 9

アンサンブル 4 次元変分法 (1) η [m] H η 0 は初期波形から観測時系列を出力する ( 力学を考慮し 時間方向に拡張された ) 観測演算子 初期波形 η 0 の摂動ベクトル P = p m が張る空間 ( モデル空間 ) δy = HP H の線形化 H ( ヤコビアン ) 観測値 y の摂動ベクトル δy = δy m が張る空間 ( 観測空間 ) δy m = H η 0 + p m H η 0 Hp m 摂動 p m cos 波 sin 波 モデル予測値の摂動 δy m = H η 0 + p m H η 0 摂動を与えられたアンサンブルラン η 0 m = η 0 + p m 時間発展 モデル予測値 H η 0 m 10

アンサンブル 4 次元変分法 (2) 初期波形 η 0 の摂動ベクトル P = p m が張る空間 ( モデル空間 ) コスト関数の勾配 L = H T H η 0 y P が張る空間上で勾配の残差を最小化する P T L = P T H T 初期値の更新 Ps H η 0 + Ps y = 0 δy = HP ミスフィット y H η 0 観測値 y の摂動ベクトル δy = δy m が張る空間 ( 観測空間 ) H T を解析的に求めるのが通常の 4 次元変分法 ( アジョイント法 ) 次の初期値を摂動 p m の線形和で表す s は重み係数 η 0 + Ps η 0 P T H T H η 0 + HPs y + O( s 2 ) = 0 δy T H η 0 + δys y = 0 δy T δys = δy T y H η 0 各イタレーションで観測演算子 H η 0 のヤコビアンH をアンサンブル摂動計算によって η 0 の周りで線形近似 アジョイント方程式が不要 並列化が容易 11

アンサンブル 4 次元変分法の種類 Maximum Likelihood Ensemble Filter (MLEF, Zupanski 2005) 摂動は ヘッシアン行列のコレスキー分解から与える ヘッシアン行列の固有値が大きいモードを調整する 4DVAR とアンサンブルカルマンフィルター (ETKF) の折衷 摂動から勾配とヘッシアン行列を近似 En4DVAR (Liu et al. 2008, 2009) 摂動を固定する 気象では 発達する擾乱モードを常に追いかけているので それを摂動に与える ヘッシアン行列を直接求めない ( 最急降下法 ) 予報誤差共分散行列に局所化を用いる Adjoint-free 4DVAR (a4dvar, Yaremchuk et al. 2009, 2016) 摂動は モデルデータや観測値の EOF から与える 固有値が大きいモードを与える 発達する擾乱モードについての事前情報が無く 観測がスパースな 海洋の問題に適している 摂動で得られたデータを再利用する 全てのモードを調整する 保存系に近く スペクトルが広い問題に適している GMRES と関係 摂動から勾配とヘッシアン行列を近似 12

1 ミスフィットのパワースペクトルから摂動を選択 本手法では ミスフィット y H η 0 のパワースペクトルを計算し そのピーク付近に相当するフーリエモードを摂動 P として加える ミスフィットパワースペクトル S(ω) 青 : 現在のイタレーション黒 : ひとつ前のイタレーションミスフィットパワースペクトルS(k) 線型分散関係で変換 ω 2 = gk 13

具体的な計算設定 HOSM 3 次非線形 時間 : 50 Tp ( ピーク周期 ) JOSNWAP γ=3.3 波形勾配 : Hs/2*kp=0.11 比較的強い非線形性 周期境界条件の影響 128 λ p の領域で真値を生成 32 λ p 領域内で推定 真値の水位の時空間プロファイル 128 λ p の領域のうち 64λ p の範囲を図示 η crest = 1.51 H m0 ノイズ : 正規乱数標準偏差は真の値の 10% 32 λ p 領域内で同化青 : 線形推定値赤 : 真値特にフリーク波につながる波群の周辺で精度が不足 14

λ=0.005, Nens=50, e TOL = 0.2 の場合の解析値 初期波形のプロファイル真値解析値 (200 イタレーション後 ) 一定の範囲内において 解析値は真値とよく一致 推定可能範囲は 分散関係による群速度によって決まる 時系列の長さがN T p であった場合 推定可能範囲はおよそ N/2 λ p 正則化によって 境界付近は減衰される 特に高波数成分 周期境界条件の影響を緩和 15

並列化とスタッキングの効果 ( λ=0.005 ) 赤 :e TOL = 0 ( 常にスタックしない ) 青 :e TOL = 0.2 黒 :e TOL = ( 常にすべてのアンサンブルをスタックする ) ー実線 :Nens=50 -- 破線 :Nens=10 -- 破線 :Nens=10 ー実線 :Nens=50 e TOL が大きいほどスタックされる摂動が多くなり 収束が早いが不安定になる アンサンブル数を増やすことによってイタレーションを減らせる ( 並列化 ) 初期値の変化 s n が小さいときに摂動がスタックされ s n が大きいときに精度の悪い摂動が消去される ( スタックされた摂動の数がノコギリ状に変化する理由 ) 16

結論 以下の要素により 水位時系列からの波形再構成が可能であり 推定を並列化できることを示した 1 HOSM アンサンブル計算による 4 次元変分法 2 非線形スピンアップによる力学的整合性の確保 3 事前予測パワースペクトルによる正則化 安定性向上 4 ミスフィットのパワースペクトルから摂動を選択 5 過去のイタレーションで得られた摂動の近似精度の確認と 再利用 ( スタッキング ) 今後の課題 多方向のケースについて より広い領域設定の中でインバージョンを行う フリーク波再構成に適した観測システムを提案する 17