年 5 月 9 日 ( 水曜 3 限 )/6 5. リンダール メカニズムと公共財の自発的供給 5. リンダール メカニズムとフリーライダー問題 本章では 4 章で導かれた公共財の供給関数や各個人の公共財に対する需要関数などを用い ての議論が進められる すなわち 公共財の供給関数 () (4-3) や 個人 の公共財に対する需要関数 ) (4-3) ( などが用いられる ( ) なお は公共財の量 は公共財の価格 は個人 の 租税価格である < リンダール メカニズム > 効率的な公共財の水準を達成するためのメカニズムとしてどのようなものがあるだろうか 本章では リンダール (nahl) が市場メカニズムから類推して考えたメカニズムについ て検討する なお 単純化のため 人の個人と つの企業からなる経済を考える 想定 5- 政府は個人 に租税価格 ンスする をアナウンスし 企業には公共財の価格 をアナウ 想定 5- 個人 は公共財の需要量 ) を政府に申告し 企業は公共財の供給量 ( ) ( を政府に申告 ( あるいは表明 ) する 想定 5-3 政府( せり人 ) は () 財政収支が均衡し ( ) () 各個人の公 共財の需要量と公共財の供給量が全て一致する ( ) ( ) ( ) ) よ うに ( ) を決定する ( 以上の想定のもとで決まる公共財の水準を 個人 の租税価格を ( ) 公共財 の価格を と置き ( き ( ) は ) を リンダール均衡 と呼ぶことにする そのと (5-) ( ) ( ) ( ) (5-) の条件から求められることになる
年 5 月 9 日 ( 水曜 3 限 )/6 リンダール均衡における公共財の水準 が効率的な公共財の水準 と一致することを サミュエルソン条件 (4-6) を用いて説明しよう 公共財の逆供給関数 MC() と 個人 の公共財に対する逆需要関数 MB () を用いれば (5-) より MB ) MB ) MC( ) (5-3) ( ( である したがって (5-) と (5-3) より MB ) MB ( ) MC( ) (5-4) ( が成立する すなわち サミュエルソン条件 (4-6) より リンダール均衡における公共財の 水準 は効率的な公共財の水準 に一致するのである ( ) ( 問題 5-) リンダール均衡 ( ) を図示しなさい 以下では 生産可能性曲線が Y であるとする そのとき 公共財の供給曲線は 水平 ( 一定 ) になり 企業の利潤はY となる ( 5.3 補論 を参照 ) ( 問題 5-) ( ) ( ) であるとすれば ( ) と のどちらを増加させることでリンダール均衡を実現できるかを検討しなさい
< フリーライダー問題 > 年 5 月 9 日 ( 水曜 3 限 )3/6 フリーライダー ( ただ乗り人 free rer) とは 公共財 ( からの便益を受けているのにそ ) の生産費用の負担を避けようとする人 のことである そして フリーライダー問題 とは フリーライダーの存在により公共財の水準が非効率 ( 過小 ) になること である リンダール メカニズムにおいて フリーライダー問題 が発生する可能性について検討 してみよう これまでは 個人は 真の 需要曲線 ( ) に基づき 公共財の需要量を政府に申告 ( あるいは表明 ) すると想定してきた ( ) それに対して 個人 は 真 の需要曲線 ( ) に基づいて公共財の需要量を政府に申告しているときに 個人 が自分の 真の需要曲線 ( ) と異なる 偽りの需要曲線 に基づいて公共財の需要量を政府に申告することで 個人 の効用を高めることができるケースが存在 することを 次の図を用いて説明しよう なお 生産可能性曲線が Y であるとする また 個人 の株式保有割合を w とすれば 企業の利潤はY なので個人 の所得は w Y である そして 個人 が偽った需要量を表明するときのリンダール均衡における公共財の水準をĜ 個人 の租税価格を ˆ と置くことにする w Y wy w Y I( ) ( 問題 5-3) 上の図に フリーライダー問題 が発生する場合の需要曲線 ( ) を描き加えなさい ( ) また そのときのĜ と ˆ を図示しなさい 3
5. 公共財の自発的供給とフリーライダー問題 < 公共財の自発的供給 (voluntary rovon)> 年 5 月 9 日 ( 水曜 3 限 )4/6 公共財が自発的に生産 ( 供給 ) されるときに 公共財の供給水準がどのように決定される かについて検討しよう 個人 の公共財の生産量を 公共財の経済全体での生産量を と する ( ) そして 各個人の公共財の生産量の和 が 経済全体での公共財の生産 量 であるとする つまり (5-5) を仮定する 個人 の公共財の生産可能性曲線は直線であるとする すなわち Y (5-6) と仮定する ここに は私的財と公共財の限界変形率 ( 公共財の限界費用 ) であり Y は 個人 の所得を表している 個人 の効用関数は 4. 節と同様に 公共財が中級財のケースを想定する すなわち u v() (4-) である なお v ( ) v ( ) であり 個人 の限界便益関数を MB MB () と置けば MB ( ) v ( ) である 各個人は他の個人の公共財の生産量が与えられたもとで 自らの効用を最大化するように 自らの公共財の生産量 ( すなわち供給量 ) を決定すると想定する たとえば個人 は が与えられたもとで MB ( ) (5-7) を満たすように 公共財の生産量 ( 供給量 ) を決定することになる (5-7) より 個人 の供給量 は に応じて決まることになり その関係を 個人 の反応 関数 と呼ぶ すなわち 個人 の反応関数は max( ) (5-8) である ここに は相手の公共財の生産量がゼロのときの 個人 の公共財の供給量で あり MB ( ) より求められる ( ) なお を仮定する (5-9) ( 問題 5-4)(5-8) で個人 の反応関数が求められることを 横軸に 縦軸 MB をとった 図を用いて説明しなさい 4
年 5 月 9 日 ( 水曜 3 限 )5/6 同様にして 個人 の反応関数は max( ) (5-) と求められる 個人 と個人 の戦略的な行動の結果として Nah 均衡が実現すると想定する すなわち Nah 均衡 ( における供給量の組み合わせ ) を N N ) と表すことにすれば N が与えら ( れたもとでの個人 の供給量が N であるとともに N が与えられたもとでの個人 の供 給量が N である つまり N N max( ) (5-) N N max( ) (5-) より N N ) は求められる ( < フリーライダー問題 > (5-) と (5-) と の仮定より Nah 均衡は ( N N ) ( ) と求められる (5-3) ( 問題 5-5) 個人 と個人 の反応曲線を 横軸に 縦軸 をとった図に描きなさい そして Nah 均衡が (5-3) で求められることを 図を用いて説明しなさい (5-3) より Nah 均衡において 個人 は公共財を全く供給しておらず 個人 の公共財 供給にただ乗り ( フリーライド ) していることになる Nah 均衡における公共財の供給量が効率的であるかどうかを検討しよう まず 効率的な 公共財の水準 は 公共財の限界費用 ( 限界変形率 ) が なので サミュエルソン条件 MB ( ) MB ( ) (5-4) より求められる (5-9) (5-3) (5-4) より 公共財の自発的供給のもとでの供給量は 効率性の観点から過 小供給であることが導かれる すなわち N N N (5-5) である なお (5-5) で等号が成立するのは MB ( ) のときである ( 問題 5-6)(5-5) が成立することを 横軸に 縦軸 MB MB MB をとった図に 集計限界便益関数 MB MB ) MB ( ) などを描いて説明しなさい ( 5
5.3 補論 : 水平な公共財の供給曲線 年 5 月 9 日 ( 水曜 3 限 )6/6 生産可能性曲線が下の 平面に図示されているように直線 Y であるとする ( Y ) そして その生産曲線 Y のもとでの供給曲線をその下の 平面に図示することにしよう Y 公共財の価格を その供給量を であるとする そのとき 供給曲線が階段状の形状になる すなわち ならば Y / ならば 3 ならば は Y / の範囲で不定である ( 問題 5-7) 平面に Y と を図示しなさい また 上述の 3の成立することを 図を用いて説明しなさい また 供給曲線を 平面に図示しなさい ( 問題 5-8) 最大化された利潤 を と の つのケースに分けて求めなさい また 平面にそれぞれのケースの を図示しなさい 公共財の価格 が与えられたもとで 供給量 の集合 が決まるときその 対応関係 は 供給対応 と呼ばれ その集合の要素が必ず つである特殊ケースは 供給関数 と呼ばれる したがって 供給曲線 は 供給対応 として表すことができるが 供給関数 として表すことができるとは限らない ここでは 3の に対応する 供給量 の集合 が { Y / } であり その要素が つではないので 供給関数 ではない 6