Bullei of he JSME 日本機械学会論文集 Trasacios of he JSME (i Japaese) Vol.8, No.84, 5 ゴルフスイングのリリースポイントに関する動力学解析 ( ダウンスイング加速パターンの影響 ) 李志偉 *, 井上喜雄 *, 児玉駿太 *3, 劉涛 *4, 芝田京子 *5 Dyamic aalysis for he release poi of he golf swig (Effec of acceleraio paer of dow swig) Zhiwei LI *, Yoshio INOUE *, Shua KODAMA *3,Tao LIU *4 ad Kyoko SHIBATA *5 *,*, *3, *5 School of Sysems Egieerig, Kochi Uiversiy of Techology 85 Miyaokuchi, Tosayamada-cho Kami-shi, Kochi 78-85, Japa *4 Faculy of Egieerig, Zhejiag Uiversiy Hagzhou, 37 Chia Received 3 December 4 Absrac e aim o clarify he mechaism of he release poi of he golf swig ad he effec of he acceleraio paer of he dow swig o he dyamic behavior a he release poi. e cosider ha ucockig begis aurally wihou drivig orque applied o he wris joi whe he agular velociy of he arm ad he cerifugal force become o be sufficiely large compared o he agular acceleraio ad ageial ierial force,. e derive simple approximae equaios which express he relaioship bewee agular velociy ad acceleraio a he release poi. By usig he derived equaios ad he acceleraio paer of he dow swig, we develop calculaio mehods o esimae he effec of he acceleraio paer expressed by he polyomial of ime o he dyamic behavior a he release poi which may affec sigificaly o he head speed. e discuss how he paers affec o he release poi for wo ypes of acceleraio paer which are expressed by he s order fucio of ime. Through he discussio, i ca be see ha acceleraio paer which has posiive gradie gives high agular velociy of he release poi ad laer release poi, ad egaive gradie paer shows low agular velociy ad earlier release poi ad hese resuls ca explai mechaism of so-called lae hiig. Key words : Golf swig, Release poi, Mulibody dyamics,huma dyamics, Spors egierig. 緒言ゴルフスイングの力学的な研究が盛んになりだした 97 年前後には, ゴルフスイングの解析に比較的簡単な計算モデルが用いられ,Jorgese は腕とクラブを剛体の平面 リンク ( 重振子 ) にモデル化し数値積分によりスイングの動力学的現象の検討を行った (Jorgese,97). さらに Jorgese は, 後年, 平面 リンクモデルを用いた計算結果をもとに一般的な読者も対象とした本を出版してゴルフスイングの力学的解釈などを紹介しており (Jorgese,994), その後も, リンクモデルは, 多くの研究に用いられている (Burde, e.al.,998)(pickerig ad Vicker, 999)(Ioue ad Kai, )( 太田他, ). 例えば, ゴルフスイング中のリンク間のエネルギー移動がヘッドスピードの増加に重要な役割を果たすことなどのゴルフスイングを理解するうえでの重要な力学的現象が簡 No.4-678, J-STAGE Advace Publicaio dae : 4 March, 5 * 高知工科大学大学院 ( 78-85 高知県香美市土佐山田町宮ノ口 85) * 名誉員, フェロー, 高知工科大学システム工学群 *3 学生員, 高知工科大学大学院 *4 正員,Faculy of Egieerig, Zhejiag Uiversiy ( Hagzhou 37,Chia) *5 正員, 高知工科大学システム工学群 E-mail of correspodig auhor: ioue.yoshio@kochi-ech.ac.jp
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) 単な リンクモデルでも説明できることが示された (Jorgese,994) (Ioue ad Kai, )( 太田他, ). 以上のようにパラメータを絞った リンクモデルを用いた動力学解析は, 用具の設計の際に見通しを得ながら検討を行う場合や, プレーヤがクラブ選定や練習を行う場合に有効な情報を与えることができると考えられる. 一方, 人体の 3 次元動作やクラブ弾性を考慮したモデルでの詳細な計算も行われており,3 次元動作計測装置での計測結果から作成したモデルにマルチボディダイナミクスの解析プログラムを適用した研究 (Nesbi, 5)(Nesbi ad Serao, 5 ) や,3 次元の 6 セグメントでモデルを用いた計算 (MacKezie ad Sprigs,9) などが報告されている. 細部での詳細な情報を得るには, 自由度の大きいモデルで数値解析を行うことが有効であると考えられるが, モデルの自由度が多くなれば, パラメータも多くなることから, スイング全体としての現象における主要なパラメーラの影響をおおまかに把握したい場合には, むしろ前述のようなパラメータを絞った簡単なモデルのほうが適していると考えられる. 著者らは, 平面 リンクでのゴルフスイングの挙動を, ダウンスイング開始からリストターンが始まるリリースポイントまでの リンクが一体で動くフェーズ と, リリースポイント後の リンクが別々の挙動を示すフェーズ とに分けて考え, リリースポイントは つのフェーズの境界であると定義し, 理論解としてのリストターン開始 ( リリースポイント ) の条件式を導出した (Ioue ad Kai, )( 李他,4). また, ダウンスイング中は腕に加わるトルクが一定の場合について, クラブやプレーヤのパラメータがリリースポイントでの角加速度, 角速度, 角変位, 運動エネルギーなどの状態量にどのように影響するかを明らかにした ( 李他, 4). 一方, 同様の体格のプレーヤが同様のクラブを用いてスイングしても, 上級者と初心者ではかなり異なり, 前述のように上級者ではレイトヒッティングと呼ばれているように比較的おそくリストターンが始まりその時の角速度が大きいのに対して, 初心者は早めにリストターンが始まり角速度も小さいことが多い. そこで, 本報では, そのような差が生じるのは, ダウンスイング開始からリリースポイントまでの加速パターンの差が大きく影響していると考え, 既報 ( 李他, 4) で示したリリースポイントに関する理論を発展させて, 加速パターンがリストターン開始のタイミング, 位置, 角速度, 角加速度などにどのように影響するかを計算する手法を提案する. さらに, 提案した手法を用いて加速パターンとリリースポイントの時間や状態量との関係を明らかにするとともに, どのような加速パターンがレイトヒッティングを実現するかを示す.. スイングのモデル化とリリースポイントの定義 y lik ( xh, y H) N lik ( x, y ) N R N L m J θ J m ( x, y ) θ x y ( x, y ) (, ) R L x O Fig. Mahemaical model of golf swig i he swig plae. Lik ad lik represes he huma arm ad he club, respecively. N,, H shows he posiio of he ceer of roaio, he wris joi, he club head, respecively. クラブの剛性がかなり低い場合にはリリースポイントの状態量はクラブ弾性に影響を受けるが ( 井上他,999), 比較的剛性の高いクラブでは剛体モデルでも十分近似できることが報告されていることから (Jorgese,994), 本研究では, 数学モデルとしては, 図 のような平面の剛体 リンクモデルを用いる. 具体的には, 腕とクラブに
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) 対応する つの剛体リンクからなるモデルを考え, 図 のような鉛直面から φ 傾いたスイング平面での 次元運 動を考える. 図 に示すように, リンク は腕, リンク はクラブに対応し, リンク の長さを L, リンク の長さを L, 回転中心からリンク の重心までの距離を R, リストジョイントからリンク の重心までの距離を R とし, m, J はリンク の質量と重心まわりの慣性モーメント, m, J はリンク の質量と重心まわりの慣性モーメントとする. 各点の座標は, スイング平面上で定義された 次元直交座標系で考え,( x, y ),( x, y ), ( x, y ),( x H, y H ),( xn, yn) は, それぞれ, リンク, リンク の重心, リスト, クラブヘッド, 回転中心の位置をスイング平面で定義した座標である. つのリンクはピンジョイントで結合されており, 結合部であるリスト部 には, 図 3 のような角変位が α 以 下ではばね定数が で, それ以上ではばね定数が の非線形ばねが存在すると仮定する. ここで,α はコック角 χ の外角 (π χ ) である. すなわち, 結合部はダウンスイング開始時に設定されたコック角よりも内側には変形し ないとし, 内向きのトルクが加わっている場合には, つの剛体は剛結されて リンクとなり, 結合部を開こう とする外向きトルクが加わった場合には, それを拘束する内力は発生せず, 回転はフリーのピンジョイントで結 合された剛体の リンク系となりリストターンが進むと考える. したがって, リストターンが行われるかどうか は, 回転ばねに内向きの内力が発生しているかどうかで判定できる. ϕ Verical axis Torque Swig plae Horizoal axis α Agular displaceme Fig. Icliaio agle of swig plae from verical axis Fig.3 Nolier agular siffess of wris joi. Sprig cosa uder α is ad ha of over α is. 3. リストターン開始条件式および状態量の計算法 本章では, 既報 ( 李他, 4) で示したリストターン開始に関する検討結果を発展させ, 次章以降で行う加速パターンの影響の検討の準備を行う. 一般化座標を, 図 に示すθ, θ とし, 表現の簡単のために gϕ = gcosϕ を導入し, ラグランジュの方法を適用すれば, リストターン開始後の リンク系の運動方程式は, ( gϕ + yn ){ Lm cosθ+ Rm cosθ+ Rm cos( θ+ θ)} LRm θθ siθ Lm R θ siθ + ( J+ J + L m + R m+ R m + LR mcos θ) θ+ ( J + R m + LR mcos θ) θ () x { Lm siθ + Rm siθ + Rm si( θ + θ )} = Q N ( gϕ + yn ) Rm cos( θ+ θ) + LRm θ si θ + ( J + R m + LRm cos θ) θ+ ( J + R m) θ x Rm si( θ + θ ) = Q N () となる. ここで, Q, Q は一般化座標 θ, θ に加わるトルクで, 物理的には, 腕に加わるトルクおよびリストに加わるトルクである. リストターン開始前の リンク系の場合には, θ = α で一定値となるので, 式 () に θ = α を適用すれば, 次式のようにθ のみに関する微分方程式が得られる. 3
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) { J + J + ( R + L ) m + R m + LR m cos αθ } + ( g + y ){ R m cos( θ α) + ( Lm + Rm )cos θ} ϕ N {( Lm + Rm)siθ + Rm si( θ α)} x = Q N (3) フェーズ での リンク系としての運動は, 図 3 の非線形ばねを有する リンク系において非線形ばねに圧縮 側のモーメント反力が生じているために リンクが一体となって運動している状態と等価である. リンク系の 運動を, リンク系の運動方程式 (), () で表現すれば, リンク には, リンク からの内力として受動的なト ルク Q を受けていることになる. 既報 ( 李他,4) で示したように, リリースポイントは, 一体で運動している状態での受動的トルクがなくなり, リンク系に移行する境界, すなわち, リンク系の最後で, かつ, リンク 系の始めでもあり, どちらの系の運動方程式も満たしている状態であるといえる. ジョイント部には非線形ばね による受動的なもの以外にプレーヤの意思による能動的なリストトルク Q が加わる場合も考慮すれば, リリースポイントでは, リンク系の運動方程式において, θ = α. θ =, θ =, Q = Q を満たしているはず である. いいかえれば, リンク系での運動が進み, 前述の条件が満たされるタイミングでリストターンが始ま ることになる. そこで, その条件を式 () に代入し, 条件を満たす時の各変数に添え字 をつければ, リストタ ーン開始の条件式として次式が得られる ( 李他,4). LRm θ si α+ ( Rm+ LRm cos αθ ) + J θ + g Rm cos( θ α) + y Rm cos( θ α) x Rm si( θ α) = Q ϕ N N (4) y y mrθ mrθ J θ α β β mg R x N( x, y ) N N x O Fig.4 Forces which apply mome o he wris joi. Agular acceleraio causes a ageial ierial force(ploed wih he blue arrow) ad a ierial mome(ploed wih he purple arrow) which apply egaive mome o he wris joi,agular velociy causes a cerifugal force (ploed wih he red arrow) which applies posiive mome. The gree arrow shows he graviy force. 左辺第 項は遠心力 ( 図 4 の赤の矢印 ) に起因するモーメントであり, θ に比例しリストを開く方向に働く. 第 項は接線方向の加速度に起因する慣性力 ( 青色の矢印 ) によるモーメントで, θ に比例しリストを閉じる方向に働く. 第 3 項は慣性モーメントと角加速度の積によるモーメント ( 紫の矢印 ) で第 3 項と同様に θ に比例し, リストを閉じる方向に働く. そこで, 第 項と第 3 項とをまとめて M C と表現する. 第 4 項は重力 ( 緑色の矢印 ) に起因するモーメント M g, 第 5 項は回転中心の y 方向の加速度 y N に起因するモーメントで, 第 6 項は回転中心の x 方向の加速度 x C に起因するモーメント M x である. それらの和が右辺の能動的なリストトルクQ とつりあっている. 4
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) 既報 ( 李他,4) で示したように, 多くのプレーヤは回転中心をあまり大きく移動させていないこと, 重力の リストターン開始の条件式への影響は議論の本質に影響をおよぼすレベルではないとして省略すれば, リストタ ーン開始の条件式は LRm θ si α+ { J + R m + LRm cos αθ } = M + M = Q (5) O C となり, 変形すれば R{ + J / ( mr )} + Lcos α Q θ (6) siα = θ Lsiα mrl となる. ここで, 等価クラブ長さ R E を mr + J R = = R{ + J / ( mr )} (7) E mr と定義し, 等価クラブ長さ R E の L に対する比 η RE= RE/ L, クラブと腕の長さの比 γ = L / Lを導入し, 式 (6) の右辺の第 項の θ の係数をφ とすれば ηreγ + cosα φ = (8) siα となる. さらに, リリースポイントでのトルク比 τ = Q / Q を定義して τ J ε = φmrl α (9) si を導入すれば, 式 (6) の右辺の第 項は Q si = εφθ mrl α () と変形できる. つの項をまとめ, λ = ε と定義すればリストターンの開始の条件式は, θ = ( ε ) φθ = λφθ () となる. Q の影響については, 既報 ( 李他,4) で検討済みであるので, 以下では, Q =, すなわち λ = として加速パターンの影響について検討する. したがって, ここでは, リストターン開始の条件式としては θ = φθ () を用いる. 上式でφ はプレーヤの腕の長さおよびクラブパラメータ, コック角などで決まるが, それらのφ への影響についても既報 ( 李他,4) で詳しく報告しているので, ここではφ は一定値として扱う. 運動方程式についても, 既報で示したように, 回転中心の移動に関する項はリストターン開始の条件式の場合と同様の理由で省略し, 重力による項については次式のように右辺に移項して, 重力項も含む Q を外力トルクとして定義し { J + J + ( R + L ) m + R m + LR m cos αθ } = Q g { R m cos( θ α) + ( Lm + Rm )cos θ } = Q (3) ϕ のように表現する. さらに, 変形すれば Q Q θ J (4) = = mr + m{ L + R + LR cos α} + J+ J となり, θ は Q に比例することになる. ここで, J はフェーズ における系全体の回転中心まわりの慣性モーメントである. 5
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) ダウンスイングのパターンを議論する場合に, 加速パターンを用いての議論とトルクパターンでの議論の 種類が考えられるが, トルクとして Q を用いればどちらで議論しても同様のパターンになる. また, 本報で検討する理論をゴルフスイングの診断や練習に適用する場合には, 計測したスイング動作に逆動力学を用いてトルクを推定するよりも, 計測した腕の角加速度をそのまま用いるほうが容易であり, 角加速度のパターンでスイングを考える方が応用面でも有用であると考えられることから, 以下では加速パターンで議論する. 加速パターンが与えられれば, それを積分することにより角速度の時間変化が得られる. 以上の議論より, 加速度のパターンが決まれば時間の関数として与えられた角加速度 θ およびそれを積分して得られる角速度 θ が決まるので, それらとリストターン開始の条件式である式 () からリリースポイント時の状態量である角加速度 θ, 角速度 θ が決まることになる. その一例を示したものが図 5 である. 図は加速度一定というパターンであるが, 式 () を参照すれば, φθ ( 実線 ) と θ ( 破線 ) の曲線の交点がリリースポイントであることが理解できる. したがって, その交点における時間が, 角速度が θ, 角加速度が θ となる. ダウンスイングスタート時は, θ = であるので, 両者の差は大きいが, 時間とともに θ が増加し, φθ と θ が等しくなればリストターンが始まる. 5 φθ Release poi 5 θ θ Fig.5 Mechaism of he release poi. The poi of iersecio bewee φθ (solid curve) ad θ (doed curve) shows he release poi...5..5. 4. 加速パターンのリリースポイントの時間 状態量への影響の計算法 本章では, ダウンスイング時の加速パターンがどのようにリリースポイントの時間や状態量に影響するかを検討する. 前節で示したように, リリースポイントにおける状態量を求めるには, 式 () のリストターン開始の条件式と加速パターンから得られる θ およびそれを積分して得られる角速度 θ を用いればよい. 加速パターンとしては, θ が次式のように時間 の 次関数で表現される場合について検討する. i θ = a ζi (5) i= ここで,a は大きさを表す定数で, ζ i はパターンを表す定数とする. 初期角速度は, 初期角変位をθ とし上式を時間で積分すれば, 角速度および角変位 θ はダウンスイング開始位置 θ とすれば ζ i i+ = a i= i + i (6) ζ i i+ = θ + a i= ( i+ )( i+ ) (7) θ θ となる. 式 (5),(6) において = とし, 式 () に代入して得られる に関する ( + ) 次方程式である次式 6
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) φ i ζ i i+ ζi = a i= i= i + i (8) を解き, 正の実数解の最小のものを選択すれば, それがダウンスイング開始からリリースポイントまでの時間 となる. 得られた を式 (5)~(7) に代入すれば, リリースポイントでの状態量として θ, θ, および図 6 に示すダウンスイング開始位置からの角変位 δ が得られる. : δ θ Iiial posiio posiio Release Begiig poi poi of wris ur Fig.6 Iiial poio of he dow swig(blue liks) ad he release poi(gree liks). θ represes he iiial agular displaceme, ad δ shows agular displaceme from he iiial posiio o he release poi. 最も簡単なトルクパターンである外力トルク Q が一定値 Q である場合には, 角加速度 θ は定数 a を用いて次式のように表現できる. θ = Q / J = a (9) さらに, 上式を積分すれば θ = a () θ θ = a () が容易に得られる. 式 (9),() で = としてリストターン開始の条件式 () に代入すれば, 式 (8) は数値解析を用いることなく解くことができリストターン開始時の時間として = ( φ / a ) / () リストターン開始時の角速度として θ φθ φ (3) / / = ( ) = ( a) が得られる. その時の運動エネルギー T は T = J θ /= J φa (4) となる. また, リストターン開始後の運動, 特にヘッドスピードが問題となるインパクト近傍での現象は, 腕とクラブが一直線となった状態, すなわちθ = を中心とした運動であると考えられる. そこで, θ = の時の系全体の回転中心まわりの慣性モーメントを J R とし, 腕とクラブが一直線となった剛体の運動エネルギーが上述の運動エネルギー T と等しいという次式 T = J θ / = J θ / (5) R R より得られる θ R もリリースポイントにおける重要な状態量であると考えられ ( 李,4), 式 (5) の関係を用いれば 7
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) θ = ( J / J ) θ (6) / R R となる. また, 式 () を式 () に代入すれば, 角変位 δ が次式のように φ のみの極めて簡単な関数として得られる. φ δ = θ θ = (7) 以下で加速パターンの影響を議論する場合には, 前述の角加速度が一定の場合を基準として議論を行うことにする. ただし,T, θ R の θ との関係は加速パターンが変わっても変化しないので, 以下の議論では,T, θ R は θ から容易に計算できるとして議論の対象から省略する. 角加速度が一定でない場合でも, 数値積分は不要ではあるが, 式 ()~(7) のような陽な形の計算式として表現することは例外を除けば難しいため, 高次方程式であ る式 (8) を数値計算により解いて, 加速パターンが, θ, θ,δ にどのように影響するかについて検討する. ただし, 初期加速度 a を一定としてパターンの差を論じようとすれば, ζ i が大きくなればなるほど, ダウンスイング開始からリストターン開始までの加速度が大きくなるので, その時の, θ, θ,δ の大きさを比較してもあまり意味はないと考えられる. そこで, 比較して意味のある加速パターンとして, 時間の 次関数で表現 される 種類のパターンを考える. 具体的には, a を一定とするのではなく, 図 7 のようなダウンスイング開始 からリリースポイントまでの平均加速度が一定値 a のパターン ( タイプ A), および図 8 のような時刻 におけ る加速度が一定値 a で与えられるパターン ( タイプ B) の 種類の加速パターンの場合に, パターンを表すパラ メータにより, θ, θ,δ がどのように変化するかを検討する. θ a a θ θ a a Fig.7 Acceleraio ype A. Average agular acceleraio form = o = is fixed o be a. Fig.8 Acceleraio ype B. Agular acceleraio a = is fixed o be a. まずタイプ A の場合について検討する. 式 (5) で = とすればパターンを表すパラメータは a, ζ, ζ の 3 個が存在するが, ζ であればζ = としても一般性は失われないので, パターンを表すパラメータとしては, 次式のように大きさを表す a と傾きを表すζ の つとする. ただし,a と a の関係については, リリースポイントの状態量等を計算する方法を示した後に検討する. θ = a( + ζ ) (8) 上式を積分すれば θ = a ( + ζ / ) (9) となり, 式 (8),(9) で = として式 () に代入すれば φ( + ζ ) = a + ζ (3) という に関する 4 次方程式が得られる. それを解いて求められた られる式に代入すれば, リリースポイントの状態量として を式 (8), 式 (9) および式 (9) を積分して得 θ = a( + ζ ) (3) 8
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) θ (3) = a ( + ζ / ) δ = a ( / + ζ / 6) (33) 3 が得られる. この場合の平均加速度 av は a V θ / = (34) となり, a V が a と一致するようにパターンを設定する必要がある. その手順として, いったん式 (8) の a, ζ の初期値を a, ζ として を求め, 得られた平均加速度を用いて, 初期のパラメータを修正する方法が考えられる. 修正後のパラメータを a, ζ と表現し. 大きさを表す a について, 単純に a a = a (35) a V のように修正し, パターンを表すζ としてはそのまま ζ を用いて計算すれば, = の時の角加速度 a に対する = の時の角加速度 θ の比 θ / a ( 以下 κ と呼ぶ ) が修正前後で変化してしまい, 修正により得られた平均加速度は a と一致しない. そこで, ζ についても, 初期値と同一のものではなく ζ ( a / a ) / = ζ (36) と修正して計算すれば,κ は変化せず, 平均加速度も a と一致する. その結果を反映させ,a を変化させてもκ が変化しないようなパターンの表現をねらって, パターンを表すパラメータとしてζ のかわりに ζ と次式のような関係があるζ を用いることを考える. ζ = a ζ (37) / 式 (37) を式 (8) に代入すれば加速パターンは θ = a( + a ζ ) (38) / のように a とζ を用いて表現できる. 上式および上式を積分して得られる θ = a ( + a ζ / ) (39) / において = としてリストターン開始の条件式である式 () に代入して得られる方程式は a( + a ζ / ) = φ( + a ζ ) (4) / / となり, 整理すれば { a + ζ ( a ) / } = φ( + a ζ ) (4) / / / となる. ここで = a (4) となるτ / を導入し = a (43) / を式 (4) に代入すれば { τ + ζτ / } = φ( + ζτ ) (44) のような a に無関係な方程式が得られる. これを解いて得られたτ / / を用いれば θ = a( + a ζ a τ ) = a( + ζτ ) (45) 9
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) となる, したがって, ダウンスイング開始時の加速度 a とリストターン開始時の加速度 θ の比 κ は κ= θ / a = ( + ζτ w) (46) となり, a に無関係の値となり, 加速パターンの基本特性は a が変化しても変わらないことがわかる. 平均加速度 av が a であるためには a = a( + ζτ / ) = a (47) v となる必要があるので a = a / ( + ζτ / ) (48) と設定すればよい. 加速度一定の場合の時間および状態量に添え字 をつけ, それらで正規化したもので評価することを考えれば, については = a a = + (49) / / / / / / φ φ ( ζ / ) 加速度については, / a = a( + ) / a = ( + )( + / ) (5) θ ζτ ζτ ζτ 角速度については θ / θ = a τ ( + ζτ / ) / ( a φ) = τ ( + ζτ / ) φ (5) / / / / となる. τ はφ, ζ の関数であるので, /, θ / a, θ / θ はいずれも a にはよらず,φ, ζ のみの関数であることがわかる. δ については δ = aa ( τ / + a ζ a τ /6) = τ / + ζτ /6 (5) / 3/ 3 3 となり,δ は正規化しなくてもφ, ζ のみの関数であることがわかる. また, δ / δ は, 式 (7) を用いて δ/ δ = ( τ + ζτ / 3) / φ (53) 3 となる. 以上のように, 式 (38) のような形で加速パターンを定義すれば, 加速度一定の場合の値で正規化したリリースポイントの時間および状態量は a によらず,φ, ζ の関数として得られる. 次にタイプ B について検討する. 図 8 のパターンは式 (8) において a( + ζ ) = a (54) すなわち a= a / ( + ζ ) (55) とすれば表現できる. ここでタイプ B の加速パターンを表現するパラメータとしてζ を導入し a= ζ a (56) と定義すれば ζ = ( / ζ ) / (57) となる. したがって, a およびパターンに関連する とζ を与え, 式 (3) の a, ζ に式 (56),(57) を代入して 4 次方程式を解き を求めれば, それを式 (3)~(33) に代入してリリースポイントの状態量が計算できる.
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) については, 任意の値とするのは適当ではないので, トルク一定の場合の の / とする. そのような設定を行えば / と関係づけることを考え, を = / = ( φ / a ) / (58) となる. したがって / = ( / ) / = ( / )( a / ) (59) ζ ζ ζ φ となる. 加速パターンは / { } θ = a( + ζ ) = ζ a + ( / ζ )( a / φ) (6) のように a,φ, ζ で表現できる. 積分すれば { ( / )( / ) / } θ = ζ a + ζ a φ (6) となる. 式 (6),(6) で = とし, リストターン開始の条件式である式 () に代入すれば { ( / )( / ) / } ( ) { ( / )( / ) / } φζ a + ζ a φ = ζ a + ζ a φ (6) となり整理すれば { (/ ζ / } { / / / } )( a / φ) ζ ( a / φ) ζ (/ ζ )( a / φ) + = + (63) となる. ここで = ( a / φ) / (64) となるτ を導入し = ( / ) (65) / a φ を式 (63) に代入すれば { ( / ζ } { / / } ) τ ζ τ ζ ( / ζ ) τ + = + (66) のような a,φ に無関係な方程式が得られる. これを解いて得られたτ を用いれば / = ( a / φ) /( φ / a ) = (67) / / となる. 角加速度については θ / a = ζ a + ( / ζ ) τ / a = ζ + ( / ζ ) τ (68) { } { } 角速度については θ = ζ a + ( / ζ )( a / φ) / = ζ a / φ / + ( / ζ ) (69) { } { } { } θ / θ = ζ τ + ( / ζ ) τ (7) となる.δ については { / 3 } { 3 / ( / )( / ) / 3 / ( / ) / 3} δ= ζ a + ζ a φ = ζφ + ζ (7) のように,φ とζ の関数であり, 正規化すれば δ / δ = ζ τ / + ( / ζ ) τ / 3 (7) 3 { } となる. τ はζ のみの関数なので, 正規化した時間および状態量は, すべて ζ のみの関数となる.
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) 以上のように, 加速パターンを時間の 次関数で表現した場合について, 種類のタイプを設定して検討を行ったが. タイプ A については, 次関数での考え方は, 容易に高次関数の場合に拡張できるので, 以下にその考え方を示す. 次関数の場合の考え方を拡張して加速パターンを i/ i a a ζ i i= θ = (73) と定義すれば, 積分して θ = a a ζ i/ i+ i i= i + (74) が得られるので, = を代入し式 (65) の関係を用いてτ に関する式に変形すれば, / i i = a i( a ) = a i i= i= θ ζ ζ (75) / / i+ i+ a ζ i( a ) / ζ i θ = a = a i+ i+ (76) i= i= ろなる. これらを式 () に代入すれば次式のように φ ζτ = i+ i i ζτ i i= i= i + (77) a に無関係なτ に関する高次方程式が得られる. したがって, 詳細は省略するが 次関数の場合と同様の手順を用いれば, 加速パターンを示すパラメータのリストターン開始時の正規化した状態量への影響を平均加速度の大きさに関係なく計算することができる. 5. 計算結果および考察 本章では, 前章で示した 種類の時間の 次関数で表現した加速パターンのパラメータがリリースポイント状態量等へどのように影響するかを計算する手法を用いて計算を行い, その結果について物理的な考察を加える. まず, 加速タイプ A の場合の計算結果を示す.φ が. および. の場合についてパターンを表すパラメータであるζ の /, θ / θ, θ / θ, δ / δ に対する影響を図 9(a)~(d) に示している.φ が. の場合には, 青色の曲線,. の場合には赤色の曲線で示している. 式 (38) で表現される加速度は ζ が正なら右上がりの直線, ζ が負なら右下がりの直線となる. φ =.,. のいずれの場合も, すべての図の曲線が ζ に対して単調増加になっていることがわかる. すなわち, 時間の経過とともに加速度が大きくなるほど, リストターンが遅くなり, θ / θ, θ / θ, δ / δ のいずれも大きくなることがわかる. また,φ の値を大きく変更しても図の値はあ まり変化しておらず, ζ の影響のほうが顕著であることがわかる. ここで, 図 9 の結果の物理的理解を深めるために, 図 に (a) 基準となる加速度一定の場合,(b) ζ =. > で後半ほど加速度が大きくなるパターン,(c) ζ =. < で後半ほど加速度が小さくなるパターンについて, 図 5 と同様に, 式 () のφθ および θ の時間変化を示す. 図で黒色は (a), 緑は (b), 赤は (c) に対応し, 実線はφθ, 破線は θ を表し, 実線と破線の交点がリリースポイントである. 図より ζ =. の場合には, φθ が後半ほど大きくなっているのに対して, θ は前半は成長がおそく後半になり増加の割合が大きくなっている. その結果, 両者の交点の座標値は加速度一定の場合と比べて, 横軸, 縦軸ともに大きくなっている. すなわち, リリースポイントでのφθ, θ が大きく, 時間 が遅くなっていることを意 味する. したがって, リリースポイントのタイミング, 角速度, 角速度がいずれも大きくなることが理解できる. 一方, ζ =. の場合には, φθ は前半は大きいが後半になれば減少していくのに対して, θ は前半は加速度一定の場合よりも成長が速いが後半は逆に鈍化していっている. その結果両者の交点の座標値は加速度一定の場
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) 合と比べて, 横軸, 縦軸ともに小さくなっている. すなわち, リリースポイントでのφθ, θ が小さく, 時間 が早くなっていることを意味する. / θ / a (a) / (b) θ / a θ / θ δ / δ (d) δ / δ (c) θ / θ Fig.9 Effec of he parameer of acceleraio paer ζ o /, θ / a, θ / θ ad δ / δ (Type A: Average agular acceleraio is fixed o be a ) 4 8 φθ Release poi 6 4 θ..5..5. Fig. Time hisory of φθ ad θ i 3 acceleraio paers(type A: Average agular acceleraio is fixed o be a ). Black, gree ad red color show Case(a)( ζ = ),Case(b)( ζ =. )ad Case(c)( ζ =. ),respecively. The poi of iersecio bewee φθ (solid curve) ad θ (doed curve) shows he release poi. 3
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) 次に加速タイプ B についての検討結果について示す. 前章で示したように /, θ / a, θ / θ, δ / δ には,φ, a は影響を及ぼさないので. ζ が正規化した時間, 状態量へどのように影響するかについて検討した..4 ζ.6 の範囲でζ の影響を計算した結果を図 に示す. 図 (b) の青色の曲線に示すようにタイプ A の場合とは逆で, ζ が より小さければ加速度は右上がりで時間とともに増加し, ζ が より大きければ右下がりで時間とともに減少し, 他の図に示す /, θ / θ, δ / δ も図に示す範囲ではタイプ A とは逆にすべ て単調減少となっている. したがって, 後半に加速度が大きくなるパターンほどいずれの値も大きくなるという 傾向はタイプ A と同様である. また, 図 (b) には θ / a の曲線に加えて, 平均加速度を正規化した結果を赤色で示している. タイプ A では平均加速度は一定であったが, タイプ B の場合には, ζ が より小さくなっても, 大きくなっても平均加速度は, 基準値よりも大きくなっている. / θ / a av / a θ a / a v / a (a) / (b) θ / a ad av / a θ / θ δ / δ (c) θ / θ (d) δ / δ Fig. Effec of he parameer of acceleraio paer ζ o /, θ / a, θ / θ ad δ / δ (Type B:Aacceleraio a = is fixed o be a ). I Figure(b), av / a is ploed addiioally wih red curve. 図 に (a) 加速度一定の場合,(b) ζ =.6 < で後半ほど加速度が大きくなるパターン,(c) ζ =.4 > で後半ほど加速度が小さくなるパターンについて, φθ および θ の時間変化を示す. 図で黒色は (a), 緑色は (b), 赤色は (c) に対応し, 実線はφθ, 破線は θ を表し, 実線と破線の交点がリリースポイントである. 図 と同様に加速度が後半ほど大きくなっている場合には, つのグラフの交点の座標値は加速度一定の場合と比べて横軸, 縦軸ともに大きくなっており, リリースポイントの時間, 角速度, 角速度がいずれも大きくなること, 加速度が後半ほど小さい場合にはその逆になっていることがわかる. 以上のタイプ A, タイプ B のいずれの計算結果からも, ダウンスイングの後半に大きい加速度を与えることが, いわゆるレイトヒッティングに結びつくと同時に, リストターン開始時の大きい角速度を実現していることがわかる. 逆に, ダウンスイングの開始時に力をいれて大きいトルクで加速してしも, その後トルクあるいは加速度が減少すれば, リリースポイントが早くなり角速度も低下するとことになる. 4
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) 以上のようにダウンスイングの加速パターンは, リストターンの開始時期や, その時の角速度の大きさに大きく影響を与えることがわかった. また,4 章の検討で示したように, そのような傾向は, 基準となる加速度あるいはトルクの大きさによらないので, どのような体格のプレーヤにもあてはまると考えられる. また, このような結果は, 指導書などで, よく, ダウンスイングをゆっくり開始することがいわゆるレイトヒッティングに結びつきヘッドスピードも増加すると書かれていることの力学的な説明になると考えられる. また, 初心者にありがちなリストターンが非常に早く始まってしまう現象は, 力が入りすぎて最初に大きいトルクで加速してしまい, その後トルクおよび加速度が減少してしまうことが関連しているのではないかと推察される. したがって, プレーヤが, 自身のダウンスイングにおける加速パターンがどのようになっているかを知ることができれば, 提案法を参照することにより, レイトヒッティングに至るためのスイング改善の指針が得られると考えられる. 現在, 加速パターンを定量的に計測し提案した理論を応用してスイングを診断するウエアラブルなシステムの開発を進めており, 完成すれば多数の被験者での計測を行い, 被験者の技術レベルと加速パターンの関係を調べる予定である. 5 φθ Release poi 5 θ..5..5. Fig. Time hisory of φθ ad θ i 3 acceleraio paers. (Type B:Aacceleraio a = is fixed o be a ). Black, gree ad red color show Case(a)( ζ = ),Case(b)( ζ =.6 )ad Case(c)( ζ =.4 ),respecively.. The poi of iersecio bewee φθ (solid curve) ad θ (doed curve) shows he release poi. 6 結言一般的に, プロや上級者は, できるだけリストターンを遅らせる, いわゆるレイトヒッティングによりリストターンまでに大きい運動エネルギーや角速度を確保し, リストターン開始後は, 腕からクラブへのエネルギーが移動することによりヘッドスピードを高めていると言われていることに注目し, ダウンスイング における加速パターンがリリースポイントの時間や状態量にどのように影響するかを明らかにすることを目的として検討を行い以下のような結論を得た. ゴルフスイングを 次元剛体 リンクでモデル化し, リリースポイントとは, リストターン開始までの リンク系として運動するフェーズ からリスト部がピンジョイントとなる リンク系で運動するフェーズ へ移行する境界であると仮定して導出したリストターン開始の条件式と加速パターンを時間の多項式で与えて得られる角加速度および角速度を表現する式とを連立させて得られる方程式を解くことにより, リリースポイントの時間や角加速度, 角速度, 角変位が算出できることを示した. 時間の 次関数で表現された加速パターンとして平均角加速度を与えるタイプ A および特定の時刻の角加速度を与えるタイプ B について. それぞれ加速度一定のパターンの場合の値で正規化したリリースポイントの時間や状態量を計算する方法を提案し, タイプ A の場合には, プレーヤおよびクラブの諸元やコック角で決まる 5
Li, Ioue, Kodama, Liu ad Shibaa, Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol.8, No.84 (5) 定数 φ の影響が若干あるものの, パターンを表すパラメータ ζ がわかれば, 正規化した状態量の傾向が予測でき, 平均加速度 a の大きさの影響は受けないことを示した. また, タイプ B については, 正規化した時間および状態量は, 基準角加速度 a の大きさおよびφ の影響をうけず, 加速パターンを表すパラメータ ζ のみの関数 であることを示した. さらに, いずれのパターンでもダウンスイングの後半ほど加速度が大きくなるようなスイ ングの場合にリストターンの開始が遅れ, その時の状態量が大きくなること, 逆に後半ほど加速度が減少するパ ターンは, リストターンを早め, その時の状態量も小さくなることを確認するとともに, 物理的な観点から現象を説明した. 以上の議論を通して, ダウンスイングにおける加速パターンはレイトヒッティングが実現できるかどうかに対して大きい影響を持つことがわかった. 文 献 Burde,A.M., Gimsshow,P.N.ad allace,e.s., Hip ad shoulder roaios durig he golf swig of sub- hadicap players, Joural of Spors Sciece, Vol.6, Issue ( 998), pp.65-76. 井上喜雄, 甲斐義弘, 廣岡栄子, 河田耕一, 岡宏一, ゴルフスイングの動力学に関する一考察 ( シャフト剛性と振りやすさ ), 日本機械学会, シンポジウム : スポーツ アンド ヒューマンダイナミクス講演論文集 (999), pp.34-38. Ioue, Y. ad Kai,Y., Sudy o dyamics of he golf swig ad he mechaism of he wris ur, The Egieerig of Spors 4, Blackwell Publishig( ), pp.68-687. Jorgese, T.P., O he dyamics of he swig of a golf club, America Joural of Physics,Vol.38-5(97), pp.644-65. Jorgese, T.P.,The physics of golf, America Isiue of Physics, New York. (994). 李志偉, 井上喜雄, 児玉駿太, 劉涛, 芝田京子, ゴルフスイングのリリースポイントに関する動力学解析 ( クラブおよび人間の諸元の影響 ), 日本機械学会論文集, Vol.8, No.8(4), DOI:.99/rasjsme.4dr385. Michell, K., Baks, S., Morga,,D ad Sugaya,H., Shoulder moios durig he golf swig i male amaeur golfers, Joural of Orhopaedic & Spors Physical Therapy, Vol33-4(3), pp.96-3. Nesbi,M.S. ad Serao, M., ork ad power aalysis of he golf swig, Joural of Spors Sciece ad Medicie(5)4, pp.5-533. Nesbi,M.S., A hree dimeioal kiemaic ad kieic sudy of he golf swig, Joural of Spors Sciece ad Medicie (5)4, pp.499-59. 太田憲, 仰木裕嗣, 渋谷和宏, 重振子モデルによるゴルフスイングの数理解析, 日本機械学会, シンポジウム : スポーツ アンド ヒューマンダイナミクス講演論文集 (),pp.447-45. Pickerig,.M. ad Vickers,G.T., O he double pedulum model of he golf swig, Spors Egieerig, Vol.-3(999), pp.6-7. Refereces Burde,A.M., Gimsshow,P.N.ad allace,e.s., Hip ad shoulder roaios durig he golf swig of sub- hadicap players, Joural of Spors Sciece, Vol.6, Issue ( 998), pp.65-76. Ioue,Y.,Kai,Y.,Hirooka,E. Kawaa,K. ad Oka,K., Sudy o dyamics of golf swig(effec of elasiciy of shaf o feelig of swig), Proceedigs of Symposium o Spors ad Huma Dyamics (999), pp.34-38(i Japaese). Ioue, Y. ad Kai,Y., Sudy o dyamics of he golf swig ad he mechaism of he wris ur, The Egieerig of Spors 4, Blackwell Publishig( ), pp.68-687. Jorgese, T.P., O he dyamics of he swig of a golf club, America Joural of Physics,Vol.38-5(97), pp.644-65. Jorgese, T.P.,The physics of golf, America Isiue of Physics, New York. (994). Li, Z., Ioue,Y., Kodama,S.,Liu,T. ad Shibaa,K.,Dyamic aalysis for he release poi of he golf swig(effec of parameers of golf club ad player ), Trasacios of he JSME (i Japaese), Vol. 8, No. 8 (4), DOI:.99/rasjsme.4dr385. 6
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