2 型糖尿病総説 (In the Clinic) Annals of Internal Medicine Nov.5, 2019 僻地で世界最先端 西伊豆健育会病院早朝カンファ令和 2 年 1 月仲田和正 Type 2 Diabetes (In the Clinic) 著者 Sandeep Vija

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わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

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3 スライディングスケール法とアルゴリズム法 ( 皮下注射 ) 3-1. はじめに 入院患者の血糖コントロール手順 ( 図 3 1) 入院患者の血糖コントロール手順 DST ラウンドへの依頼 : 各病棟にある AsamaDST ラウンドマニュアルを参照 入院時に高血糖を示す患者に対して 従来はスライ

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日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

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糖尿病予備群は症状がないから からだはなんともないの 糖尿病予備群と言われた事のある方のなかには まだ糖尿病になったわけじゃないから 今は食生活を改善したり 運動をしたりする必要はない と思っている人がいるかもしれません 糖尿病予備群の段階ではなんの症状もないので そう考えるのも無理はないです しか

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標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

医療法人将優会 将優会 クリニックうしたに

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第三問 : 次の認知症に関する基礎知識について正しいものには を 間違っているものには を ( ) 内に記入してください 1( ) インスリン以外にも血糖値を下げるホルモンはいくつもある 2( ) ホルモンは ppm( 百万分の一 ) など微量で作用する 3( ) ホルモンによる作用を内分泌と呼ぶ

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られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

2

激増する日本人糖尿病 ( 万人 ) 2,500 糖尿病の可能性が否定できない人 (HbA1c 6.0~6.4) 糖尿病が強く疑われる人 (HbA1c 6.5% 以上 ) 2,210 万人 2,000 1,500 1,000 1,620 万人 1,370 万人 万人 880 万人 +

山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

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ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

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より詳細な情報を望まれる場合は 担当の医師または薬剤師におたずねください また 患者向医薬品ガイド 医療専門家向けの 添付文書情報 が医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載されています

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News Release 報道関係各位 2015 年 6 月 22 日 アストラゼネカ株式会社 40 代 ~70 代の経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんと 2 型糖尿病治療に従事する医師の意識調査結果 経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんは目標血糖値が達成できていなくても 6 割が治療

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第12回 代謝統合の破綻 (糖尿病と肥満)

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カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

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やまぐち糖尿病療養指導士講習会  第1回 確認試験

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書式・記述方法等の統一について


第三問 : 次の認知症に関する基礎知識について正しいものには を 間違っているものには を ( ) 内に記入してください 1( ) インスリン以外にも血糖値を下げるホルモンはいくつもある インスリンが血糖値を下げる唯一のホルモンです 2( ) ホルモンは ppm( 百万分の一 ) など微量で作用する


スライド 1

糖尿病の薬について 糖尿病とうまく付き合うために薬を知ろう

糖尿病は 初めは無症状で経過しますが 血糖値の高い状態が長く続くと口渇 多飲 多尿 体重減少 倦怠感などの症状がみられます 糖尿病は自覚症状が乏しいので 血糖値がある程度改善すると 通院しなくなる人がいます 血液検査を行わなければ糖尿病の状態を知ることはできないので 自覚症状だけに頼ってはいけません

■● 糖尿病

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肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

4 職業から考える治療法 ( 運動不足 肉体労働 不規則な生活など ) 4 Keyword 肥満 1 度 病態をどうとらえるか parameter を読み解く 海外出張頻繁 アマリール 服用中 通院が不定期 肥満と家族歴の存在, およびこれまでの治療経過から 2 型糖尿病と考 罹病期間約 5 年 え

インスリンが十分に働かない ってどういうこと 糖尿病になると インスリンが十分に働かなくなり 血糖をうまく細胞に取り込めなくなります それには 2つの仕組みがあります ( 図2 インスリンが十分に働かない ) ①インスリン分泌不足 ②インスリン抵抗性 インスリン 鍵 が不足していて 糖が細胞の イン

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もくじ糖尿病は 合併症を防ぐために治療する 1 高血糖の三大原因 スルホニル尿素薬 (SU 薬 ) 4 速効型インスリン分泌促進薬 5 - グルコシダーゼ阻害薬 ビグアナイド薬 (BG 薬 ) 7 チアゾリジン薬 9 DPP-4 阻害薬 10 SGLT2 阻害薬 11 糖尿病の治療薬で起こる 低血糖

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-3- Ⅰ 市町村国保の状況 1 特定健康診査受診者の状況 平成 23 年度は 市町村国保 (41 保険者 )98,439 人の特定健康診査データの集計を行った 市町村国保の診者数は男性 女性ともに 歳の割合が多く 次いで 歳 歳の順となっている 男性 女性 総数

1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

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やまぐち糖尿病療養指導士講習会  第1回 確認試験

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日本医薬品安全性学会 COI 開示 筆頭発表者 : 加藤祐太 演題発表に関連し 開示すべき COI 関連の企業などはありません

5 患者数(万人52 15 Vol. 53 No. 2 わが国における高齢者認知症の患者数の推計要介護 ( 認知症高齢者の日常生活自立度 Ⅱ 度以上 ) 認定者 4 3 認知症有病率の全国調査 受診者数 :5,386 人受診率 :68% 有病率 :15% 患者数 :462 万人 2 )22 年 21

(2) 健康成人の血漿中濃度 ( 反復経口投与 ) 9) 健康成人男子にスイニー 200mgを1 日 2 回 ( 朝夕食直前 ) 7 日間反復経口投与したとき 血漿中アナグリプチン濃度は投与 2 日目には定常状態に達した 投与 7 日目における C max 及びAUC 0-72hの累積係数はそれぞれ

第 90 回 MSGR トピック : 急性冠症候群 LDL-C Ezetimibe 発表者 : 山田亮太 ( 研修医 ) コメンテーター : 高橋宗一郎 ( 循環器内科 ) 文献 :Ezetimibe Added to Statin Theraphy after Acute Coronary Syn

改訂糖尿病診断基準とHbA1cに関する記述の原則と実例

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食欲不振 全身倦怠感 皮膚や白目が黄色くなる [ 肝機能障害 黄疸 ] 尿量減少 全身のむくみ 倦怠感 [ 急性腎不全 ] 激しい上腹部の痛み 腰背部の痛み 吐き気 [ 急性膵炎 ] 発熱 から咳 呼吸困難 [ 間質性肺炎 ] 排便の停止 腹痛 腹部膨満感 [ 腸閉塞 ] 手足の筋肉の痛み こわばり

目次 1. 目的 2 2. 人工透析患者の年齢等の分析 3 性別 被保険者 被扶養者 3. 人工透析患者の傷病等の分析 8 腎臓病 併存傷病 平成 23 年度新規導入患者 4. 人工透析 健診結果 医療費の地域分析 13 二次医療圏別 1

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結果の概要

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

< 糖尿病療養指導体制の整備状況 > 療養指導士のいる医療機関の割合は増加しつつある 図 1 療養指導士のいる医療機関の割合の変化 平成 20 年度 8.9% 平成 28 年度 11.1% 本糖尿病療養指導士を配置しているところは 33 医療機関 (11.1%) で 平成 20 年に実施した同調査

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(検8)05資料4 門脇構成員 随時血糖値の判定基準について

血糖値 60 歳女性 HbA1c : 6.5 従来のカロリー制限食 糖質制限食 糖質 ( 米など ) を制限しない食事では カロリーを制限しても血糖値は食後に急上昇するそれに対し 糖質制限食では血糖値上昇はわずか

14栄養・食事アセスメント(2)

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

 今年のスギやヒノキ花粉の飛散は、「少なく」または「非常に少なく」なりそうです

本物のダイエットPart1(サンプル)

糖尿病がどんな病気なのか 病気を予防するためにどんな生活が望ましいかについて解説します また 検診が受けられるお近くの医療機関を検索できます 健康診断の結果などをご用意ください 検査結果をご入力いただくことで 指摘された異常をチェックしたり 理解を深めたりすることができます 病気と診断され これから

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第1 総 括 的 事 項

第4章:施策と目標 2:生活習慣病の発症予防と重症化予防の徹底(3)糖尿病(4)COPD

当院における虚血性心疾患患者の 糖尿病および耐糖能異常についての現状

糖尿病と治療の目的 糖尿病とは 糖尿病とは 体内でインスリンというホルモン p.3参照 が不足したり はたらきが悪くなったりすることによって 血液中に含まれる糖 血糖 の値が高い状態が続く病気です 糖尿病 患者さんの 場合 健康な 人の場合 インスリンによって糖が細胞に取り込まれ 血液中の糖が使われ

障害程度等級表 級別じん臓機能障害 1 級 じん臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 3 級 じん臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 じん臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

糖尿病の薬物療法としては, インスリン療法と経口糖尿病薬 ( 他の箇所との語句の統一が適当と考えられます 経口糖尿病薬 経口血糖降下薬 回答 : 上記のご指摘の点に関しまして修正と語句の統一をさせて頂きました P.12 解説 10 行目 : グリクラジド MR 薬を基本として グリクラジド MR 薬

《印刷用》ためしてガッテン:糖尿病が完治する!? すい臓を復活させる薬


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2 型糖尿病総説 (In the Clinic) Annals of Internal Medicine Nov.5, 2019 僻地で世界最先端 西伊豆健育会病院早朝カンファ令和 2 年 1 月仲田和正 Type 2 Diabetes (In the Clinic) 著者 Sandeep Vijan, MD, University of Michigan 東京の上野勝則先生から 2 型糖尿病の総説をご紹介頂きました Annals of Internal Medicine の 2019 年 11 月の総説です この数年の糖尿病の最新知識が素晴らしくまとまっており また重要な RCT を網羅していて重要ポイントのおさらいに役立ちます 2 型糖尿病総説 (Annals of Internal Medicine) 最重要点は下記 15 です 1 2 型 DM の第 1 選択薬はメトフォルミン 体重減らし低血糖起こさぬ 2 中等度腎不全に使えるのはトラセ ンタ シュアホ スト SGLT-2 GLP-1 3 2 型 DM の第 2 選択薬は SGLT2 阻害薬と GLP1 受容体作動薬 4 SGLT-2 阻害薬 GLP-1 受容体作動薬は心血管 腎障害を低下させる 5 45 歳以上で 1 回 /3 年の糖尿病検診推奨 有リスク者は 45 歳未満でも推奨 6 DM 症状に黒色表皮腫も DM 診断は A1c 6.5 or FPG 126 or 食後 BG 200 7 初期評価は心血管 神経 皮膚 足 BG,A1c,Tch,Cr, 尿微量 alb/cr, 肝機能 眼底 8 前糖尿病で運動 150 分 / 週 タ イエットで体重を 5-7% 減らせ! コレステロール減らせ! 9 地中海食 ( 全粒穀物 野菜 豆 オリーフ 油 魚 トリ ) 摂れ 赤い肉 砂糖飲料避けよ 10 A1c<7.0 で微小血管障害に効果出るのに 15-20 年かかる 老人は 8.0 以下で十分 11 治療はまず 6-8 週ダイエット+ 運動 A1c 低下無ければ薬剤開始 12 α ク ルコシタ ーセ 阻害薬 速効型インスリン分泌促進薬は食前投与 食事不規則患者に 13 インスリン初期量 0.1-0.2U/ kg 2 型 DM では 3 回 / 日以上は普通不要 14 血圧 130/80 or140/90 以下 腎のため ACE-I か ARB 使用多い 眼底 1-3 年毎 15 糖尿病性神経障害に三環系抗うつ剤 サインハ ルタ テク レトール カ ハ ヘ ン リリカ有効 この Annals of Internal Medicine は小生 今まで読んだことはなかったのですが世界の医学雑誌ではインパクトファクター第 4 位につける雑誌でした なお impact factor とは次のような計算式です 2019 年 impact factor=(2018 年の引用数 )/(2016-2017 のその雑誌の論文数 ) つまり過去 2 年間にその雑誌に載った論文が次の1 年にどれだけ引用されたかです 1 / 17

医学雑誌インパクトファクター 2019 1 位 :New England Journal of Medicine 55.873 2 位 :The Lancet 45.217 3 位 :The Journal of the American Medical Association 35.289 4 位 :Annals of Internal Medicine 17.81 5 位 :British Medical Journal 17.445 6 位 :Arch Intern Med 17.333 7 位 :PLOS MED 14.429 NEJM The Lancet JAMA の三つは誠にエベレストのような最高峰です ただ上記の中で PLOS MEDICINE の大躍進には驚きます (PLOS ONE が運営 ) これはノーベル生理医学賞を受賞した Harold Varmus が 2004 年に創刊した電子ジャーナルで無料 フリーアクセスであり 掲載数に制限がないので年間何万本もの論文が載ります 後進国の医師にとって雑誌掲載は大変ハードルが高く また論文への高額アクセス料は世界最新知識に追いつくのを困難にしています Harold Varmus は論文アクセスを無料にすべきだと主張して PLOS ONE を立ち上げたのです PLOS MED は掲載料 (3,000 ドル 1 ドル 108 円として 32 万 4,000 円 ) を払えば簡単に掲載でき その掲載料で運営されているのです なおアフリカ諸国からの投稿は無料でできるようです 当初はゴミ論文しか集まらないだろうと揶揄されたのですが これほどまでに順位を上げて来たのです このような無料の電子ジャーナルがメジャーになると既存のジャーナルは総説の掲載などで生き残るしかないのではと思います 世界まだまだ貧しい国が多いですから論文 1 本のダウンロードに何千円も取られるようでは後進国の医師には到底手が出ません 1.2 型 DM の第 1 選択薬はメトフォルミン 体重減らし低血糖起こさぬ 2 型糖尿病の内服薬第 1 選択は無論メトフォルミンです 当 西伊豆健育会病院では内服薬に SU 剤 ( テ アメリン S, シ メリン, アヘ マイト, ク リミクロン, オイク ルコン, タ オニール, アマリール ) をほぼ使用しなくなってから何年にもなりますが 低血糖患者が救急で搬入されることはほぼなくなりました SU 剤やインスリンは低血糖や体重増加を起こします 2 / 17

メトフォルミンは低血糖を起こさずまた肥満患者で体重を低下させます 特に体重が理想体重の 20% を超える患者には第 1 選択になります 但し腎障害には注意です 腎障害 (GFR<30ml/ 分 /1.73m 2 ) や 心不全 肝障害では使えません Cr1.2 か 1.3 以上ではメトフォルミンは乳酸アシドーシスを稀に起こします また造影剤使用時は使用中止し 48 時間後再開ということになっています 以前 製薬会社さんに聞いた話では静岡県東部でメトフォルミン使用が最も多いのが当 西伊豆健育会病院だとのことでした ただ安い薬ですのであまり嬉しくなさそうでした メトグルコ 250 mg 9.9 円 500 mgで 15.4 円です 2. 中等度腎不全に使えるのはトラセ ンタ シュアホ スト SGLT-2 GLP-1 ただ糖尿病患者に腎障害は多いですから小生いつも困っています 腎障害で使用できるのは DPP-4 阻害薬のトラゼンタ (linagliptin) かインスリン分泌促進薬 (meglinitides) のシュアポスト (repaglinide) くらいでした SGLT-2 阻害薬 ( スーク ラ フォシーカ ルセフィ テ ヘ ルサ アフ ルウェイ カナク ル シ ャテ ィアンス ) は重度腎障害や透析患者には投与しないことになっていますが中等度腎障害 (egfr30~45 位 ) なら使用できるようです 一方 GLP-1 受容体作動薬は肝代謝であり添付文書には腎不全に対する注意は書かれていません ですから腎不全で使える糖尿病薬はトラゼンタ シュアポスト ( 低血糖 起こすことあり ) SGLT-2 GLP-1 というところでしょうか 3.2 型 DM の第 2 選択薬は SGLT2 阻害薬と GLP1 受容体作動薬 数年前までメトフォルミンに次ぐ第 2 選択薬に何が妥当なのかわかりませんでした しかし 2015 年から 2019 年にかけて SGLT2 阻害薬と GLP1 受容体作動薬が第 2 選択薬として浮上してきました これら二つが糖尿病で心血管合併症や腎症を低下させることがわかったのです SGLT-2 阻害薬 ( スーク ラ フォシーカ ルセフィ テ ヘ ルサ アフ ルウェイ カナク ル シ ャテ ィアンス ) と GLP-1 受容体作動薬 ( ヒ クトーサ ハ イエッタ ヒ テ ュリオン リキスミア トルリシティ オセ ンヒ ック ) は特に心血管死亡を低下させることにより全死亡率を下げます また両者とも腎障害リスクを低下させます 3 / 17

従ってメトフォルミンを内服できぬ場合 これらの使用が強く推奨されますし メトフォルミンに次ぐ第 2 第 3 選択として有用です ただし GLP-1 受容体作動薬は注射薬しかありません しかしこれらは大変高価です SGLT-2 のジャディアンスの 10 mgが 198.7 円 25 mgが 339.0 円 GLP-1 のビクトーザ 18 mg /3ml(1 日 1 回 0.3 mgから開始 0.9 mgに ) が 10,245 円と驚くほど高価なのです ビクトーザを 1 日 0.9 mg使用したら 512.3 円もします ( 価格は 2020 年現在 ) とは言え DPP-4 阻害薬のジャヌビア最大量 (100 mg錠 ) も 197.0 円です 当 西伊豆健育会病院では polypharmacy には細心の注意を払い薬を 5~6 種類以上使ったら 犯罪 としています 医師が勉強しているかどうか その実力は処方を一目見れば大体見当が付きます エビデンスの乏しい薬を思い切って減らして高価な SGLT-2 阻害薬等を使うのは有りかなと思います Liraglutide( ヒ クトーサ GLP-1 receptor agonist) は FDA(Food and Drug Administration) で減量に認証されておりとくに肥満患者で有用です DPP-4 阻害薬は SGLT-2 阻害薬や GLP-1 receptor agonists のような心血管疾患に対する利点はありませんから相対的に地位が下がってきました また SU 剤は低血糖 体重増加を起こしますし心血管系の利点もなく血糖を下げる以外に良いところがありません 4.SGLT-2 阻害薬 GLP-1 受容体作動薬は心血管 腎障害を低下させる SGLT2 阻害薬が心血管リスクや腎障害を低下させることは 2015 年から 2019 年にかけて下記 3つの RCT(Randomized Control Trial) で証明されました EMPA-REG(2015 シ ャテ ィアンス) CREDENCE(2019 カナク ル) DECLARE-TIMI58(2019 フォシーカ ) の3トライアルです SGLT-2 阻害薬のトライアルの詳細 1) EMPA-REG trial(nejm, 2015):2 型 DM で心血管リスクの高い 7,020 人を empagliflozin(sglt2 ジャディアンス 10 か 25 mg ) 群とプラセボ群にわけた 複合心血管リスクは 10.5% 対 12.1%(HR0.86 CI,0.74-0.99 ) 全死亡率 5.7% 対 8.3% (HR0.68 CI,0.57-0.82 ) で特に心血管死亡が減少した また腎臓アウトカムも Cr の二倍増加率が減った 4 / 17

2) CREDENCE (Canagliflozin and Renal Events in Diabetes with Established Nephropathy Clinical Evaluation trial, NEJM2019) は 2 型 DM 患者 4,401 人 egfr30-89 アルブミン尿症で ARB(renin-angiotensin blockade) 使用している患者に canagliflozin( カナグル ) 群とプラセボ群で比較した 終末腎症進展 クレアチニンの二倍増加率に有意差が見られ 腎または心血管死亡率は 43.2 対 61.2 人 /1,000 人年で有意差があり HR,0.70(CI,0.59-0.82) であった 3) DECLARE-TIMI58(Dapagliflozin Effect on Cardiovascular Events- Thrombolysis in Myocardial Infarction 58, NEJM 2019)trial は 2 型 DM 患者 17,160 人 (10,186 人は心血管疾患なし ) をランダムに dapagliflozin( フォシーガ ) 群とプラセボ群に割り付けた Primary outcome( 心血管死亡 心筋梗塞 脳卒中 ) に差はなかったが Secondary outcome の心不全による入院 (HR,0.73 CI,0.61-0.88 ) と renal endpoints で差があった (HR, 0.76 CI,0.67-0.87 ) 一方 GLP-1 受容体作動薬の RCT は 2016 年から 2019 年にかけて施行 下記のような 3 つがあります LEADER(2016 ヒ クトーサ ) SUSTAIN-6(2016 オセ ンヒ ック) REWIND(2019 トルリシティ) です いずれも心血管疾患や腎障害に改善が見られます オゼンピックは週 1 回の注射ですから在宅で認知症のある方には有用かもしれないなあと思いました GLP-1 受容体作動薬の詳細は下記の通りです 今回改めて気付いたのは こういった重要な RCT が載るのはたいてい NEJM や Lancet なんですねえ 以前からなんで NEJM 総説の著者にハーバードの人が多いんだろうと思っていたのですが NEJM 本部はハーバードの図書館の中にあるのだそうです NEJM の論文採択率は 5% 位で 雲の上のような存在です GLP-1 受容体作動薬のトライアル詳細 1) LEADER (NEJM 2016) : GLP-1(glucagon-like peptide-1)receptor agonist の liraglutide( ヒ クトーサ ) とプラセボを比較した 2 型 DM9,340 人の RCT 3.8 年で心血管イベントの複合アウトカムは liraglutide 対プラセボで 13.0% 対 14.9%;HR,0.87(CI,0.78-0.97) 全死亡率 8.2% 対 9.6%:HR,0.85 CI,0.74-0.97 心血管死 (4.7% 対 6.0%;HR,0.78 CI,0.66-0.93 ) 2) SUSTAIN -6 (NEJM 2016) : GLP-1 の semaglutide( オゼンピック 週 1 回注射 ) による 2 型 DM 3,297 人のトライアル 複合心血管エンドポイントは 6.6% 対 8.9%;HR,0.74 CI,0.58-0.95 死亡率には差はない 5 / 17

腎症は semaglutide 群で低下し 3.8% 対 6.1%;HR,0.64 CI,0.45-0.88 しかし 網膜症は悪化し 2.0% 対 1.8%;HR,1.76 CI,1.11-2.78 3) REWIND (Lancet 2019) :GLP-1 の dulaglutide( トルリシティー ) の RCT 2 型 DM 高心血管リスクの 9,901 人 (31.5% は心血管イベントあり ) での REWIND trial Primary outcome は心血管死亡 非致死性心筋梗塞 非致死性脳卒中の複合アウトカムは Dulaglutide により低下し HR, 0.88 CI,0.79-0.99 腎臓のエンドポイント ( 特にアルブミン尿症 ) は HR,0.85 CI,0.77-0.93 5.45 歳以上で 1 回 /3 年の糖尿病検診推奨 有リスク者は 45 歳未満でも推奨 厚労省の平成 28 年 国民健康 栄養調査 によると 糖尿病が強く疑われる者 の割合は 12.1% です 一方 米国で糖尿病が疑われるのは 米国人の 9.4%(3,030 万人 ) であり 実際に糖尿病と確定診断されるのはその2/3だと言うのです 欧米人は肥満者が多く日本よりずっと糖尿病が多いと思っていたのですが意外です なおインドでも糖尿病が多いのです これは日本やインドのように歴史的に長い年月 粗食を続けてきた民族は 代謝が低いカロリーでリセットされてしまい わずかにそれを上回る食事を すると容易に糖尿病を発生するためのようです インパール作戦という logistic ( 物流補給 ) を全く考えなかった作戦がありました 以前 なにかの本でリーダーとして一番適さないのは 愚かで勤勉な人間だ とあって 小生結構ギクッとしました 声の大きい牟田口廉也司令官の大本営での演説に 参加者は こんな作戦絶対無理 と思いながらもその場の空気で黙り込んでしまい作戦は決行されました その結果 惨敗 多数の餓死者を出しながらも牟田口司令官は責任を問われなかったのです 現在の日本で私達の会議でもこのような空気はないでしょうか? ドイツ国防軍上級大将だったクルト フォン ハンマーシュタインは将校を 利口 愚鈍 勤勉 怠慢の 4 つで分類しています 利口で勤勉なタイプ: 参謀将校に適する 愚鈍で怠慢なタイプ: 軍人の 9 割に当てはまりルーチンワークに向く 利口で怠慢なタイプ: 高級指揮官に向く 確信と決断の図太さがあるから 愚かで勤勉なタイプ: いかなる責任ある立場も与えてはならない 6 / 17

この最後の愚かで勤勉なタイプというのには 小生結構ギクリとします インパール作戦では愚将 牟田口司令官の指揮でビルマ ( 現ミャンマー ) からミンタミ山系を越え チンドウィン川を渡河し 2,000m 級のアラカン山脈を越えてインドのインパールに攻め込み 26,000 の戦死者 30,000 の戦病者を出したのです 退却路は飢餓により死者が累々と続き白骨街道と呼ばれました 北から南に向かって 烈軍団 祭軍団 弓軍団の計 92,000 の兵力で 各軍団は更に右 中 左突進隊に分かれて広範囲に進撃したのです 食料の補給が困難なため兵士は皆 3 週間分の食糧を背負い 更に弾薬 銃を持ちますから 1 人当たり 50kg にもなります 大砲も解体して兵士が背負います ジンギスカン作戦と称して運搬 食料に使うため 牛 3 万頭 ヒツジ ヤギ 1 万頭を連れて進撃しました しかしチンドウィン川渡河で牛の半数は流されてしまいます また牛による山の登り降りは無理でした 作戦初期で既に家畜の大半はいなくなりました 兵士達の夢は 以前のように味噌汁と お新香でご飯をたらふく食べること でした 日本人一般の当時の食事はそれほど貧しかったのです 肉や卵など食べることは稀でした 日本人が毎日のように肉 魚を食べるようになったのはごく最近のことです 日本人も長い年月の粗食で代謝が低カロリーにリセットされており これをわずかに上回ると簡単に糖尿病を発症するのでしょう 退却に成功して急に食事が食べられるようになり refeeding syndrome で急死する兵士も多かったようです 野戦病院では手を動かせず自分で食べることができない兵士の方が助かったとのことです 牟田口司令官は作戦中 一度も現場に足を運びませんでした 以前 このインパール作戦に参加された方が外来患者さんにいました インドネシアのジャカルタで警察指導官をされていて インドネシア人とオランダ人のハーフの凄い美女と婚約しました ところが召集令状が来て なんとガダルカナル作戦に従軍して生き残り その後インパール作戦に参加したとのことでした ガダルカナル作戦では米軍の機関銃に対し銃剣突撃を繰り返して惨敗 残った兵士の多くが餓死しました その女性とはそれきり会うことはできなかったそうです ガダルカナルで軍医だった先生が西伊豆にいました その方が手記を出版し一部を頂きました それによると密林に潜む日本兵に対し米軍は地図に枡目を引いて各枡目に網羅的に砲撃していたようだとのことでした 7 / 17

丁度 戦史に詳しい研修医が小生の後ろにいて ガダルカナル インパールの生き残りの患者さんという話を聞いただけで 胸が熱くなった と言っていました 2000m 級のアラカン山脈では雲が下に見えたとのことです 数週前 EPA(Economic Partnership Agreement) でミャンマーから女性 2 名が当西伊豆健育会病院にヘルパーとして入職しました その一人は Myingyon の出身で弓軍団の退却路の町の出身でした 無論インパール作戦の話は全く知りませんでした 兵士たちの話ではビルマ ( ミャンマー ) 人たちは兵士たちにとても親切だったとのことです 現在の日本は飽食の時代です テレビで 大食い番組 を見ると 小生本当に何とも居たたまれない気持ちになります 2015 年国連が立てた Sustainable Development Goals(SDGs)17 のうち 1 番目と 2 番目の目標が次の二つなのです 持続可能な発展目標 (SDGs) SDG1: 貧困を無くせ (No poverty) SDG2: 飢餓を無くせ (No hunger) この総説によると 2 型 DM 患者の 1/4 は疾患に気付いていません 気付かぬうちに網膜症 微量アルブミン尿症が始まります 45 歳以上では 3 年に 1 回の検診を推奨です また 45 歳未満であってもリスク因子がある場合は検診を推奨です リスク因子とは 1 親等 ( 自分と親と子 自分の兄弟は2 親等 ) に 2 型 DM 患者がいる場合や 人種としては黒人 ヒスパニック アジア系 Native American です また 4 kg以上の児出産者 肥満 心血管疾患 高血圧 高脂血症のある者も検診を推奨です ただしスクリーニングしてもアウトカムは変わりません 以前 西伊豆にいた ALT(assistant language teacher) に 黒人のことを何と言えばよいのか 尋ねたところ 大変敏感 (sensitive) な問題であり 正式には African American と言うのだそうです インディアンは Native American です 以前 映画 ダイハード の中で 刑事マックレーンに犯人から I hate niggers ( 俺は黒人が嫌いだ ) という看板を背負ってニューヨークのブルックリンを歩けと要求する電話のシーンがありました ALT の話だと そんなことをしたら間違いなく殺されるとのことでした 8 / 17

6.DM 症状に黒色表皮腫も DM 診断は A1c 6.5 or FPG 126 or 食後 BG 200 今さらですが DM の古典的症状は多尿 (polyuria) 多飲 (polydipsia) 多食 (polyphagia) と体重減少です 合併症は網膜症 腎障害 多発神経炎 インポテンス 繰り返す感染症です この総説に合併症として黒色表皮腫 (acanthosis nigricans) が書かれていたのには 驚きました よく肥満者で頸部 腋の下などが黒く色素沈着していますがあれです これを見たら糖尿病も疑うとは知りませんでした 推奨糖尿病診断法は HbA1c 6.5 であることです 現在 A1c は計測法が一定になり施設間のバラつきがなくなり信頼できるものになったのです その他に早朝血漿血糖 (Fasting Plasma Glucose) が最低 1 日あけて複数日で 126mg/dl 以上です 126mg/dl とは随分中途半端な数字ですがモルで言うと 7.0mmol/L で区切りの良い数字なのです 小生今まで全く知らなかったのですが血液を採取してそのまま置いておくと血球によりグルコースが消費されて 1 時間に 10 mg /dl ずつ血糖が下がるのだそうです ですから血糖採取時は NaF( フッ化ナトリウム ) 入りのスピッツを使用して解糖を防ぐのだそうです また古典的症状 + 食後ブドウ糖 200 mg /dl 以上も糖尿病です 経口ブドウ糖負荷試験 (OGTT) は 2 時間後血漿ブドウ糖 200 mg /dl 以上が糖尿病です 一方 前糖尿病 (prediabetes) は A1c 5.7-6.4% 空腹時血糖 100-125mg/dl(5.6-6.9%) OGTT2 時間後 140-199 mg /dl の時です 7. 初期評価は心血管 神経 皮膚 足 BG,A1c,Tch,Cr, 尿微量 alb/cr, 肝機能 眼底 初期評価は血圧 糖尿病合併症すなわち心血管系 神経 皮膚 足の観察を行います 検査は血糖 HbA1c コレステロール 腎障害( 尿微量アルフ ミン / クレアチニン比 血清 creatinine) またスタチンを開始する場合や 脂肪肝の確認のために肝機能も調べます 眼底も確認です 9 / 17

8. 前糖尿病で運動 150 分 / 週 タ イエットで体重を 5-7% 減らせ! コレステロール減らせ! コレステロール低下は糖尿病全患者に推奨です 前糖尿病状態 (prediabetes) でダイエットと運動で 2 型 DM への進行を抑えることができ これは RCT で証明されています 平均 55 歳の耐糖能異常 (impaired glucose tolerance) の肥満フィンランド人 522 人で体重 5% 減により 2 型糖尿病への進展は 3 年で 23% から 11% に抑えられました また米国で平均年齢 51 歳 3,234 人の前糖尿病で体重 7% 減少により糖尿病発生は 3 年で 22% から 14% に減少しました というわけで体重 5-7% 減量は極めて効果的なのです 驚いたのは糖尿病予防にメトフォルミンやグルコバイを予防的に飲ませる RCT が下記のように行われました それなりの効果はあるのですが 生活スタイル改善に較べて劣るそうです メトフォルミン グルコバイ予防投与の RCT 糖尿病予防プログラムでメトフォルミン 850 mg 2 回 / 日で 3 年で糖尿病は 29% から 22% 減ったが 生活スタイル改善に較べて劣る 1,429 人の糖尿病予防プログラムで acarbose( グルコバイ )100 mg 3 回 / 日で糖尿病発症は 42% から 32% に減少 3 年間の相対リスク減少 (RRR) は 25% DM のダイエット 運動に画一的なものはありません 新規 2 型 DM 患者でダイエットは A1c を 2.25% 減らしました 34 の RCT で運動は血糖コントロールを有意に改善し腹囲を減らし血糖コントロール血圧を改善しましたが なんと体重と BMI は改善しませんでした 9. 地中海食 ( 全粒穀物 野菜 豆 オリーフ 油 魚 トリ ) 摂れ 赤い肉 砂糖入り飲料避けよ この総説には食事の詳細は一切書かれていません The Lancet, June 7. 2014 に 2 型糖尿病の食事療法 総説がありました 詳しくは当 西伊豆健育会病院ホームページの下記サイトをご覧ください 日本の糖尿病基本食は 1965 年に米国を真似て 1 単位 80Kcal で作られました しかしこんなことは上記の Lancet 総説には一言も書かれていませんでした www.nishiizu.gr.jp/intro/conference/h26/conference-26_18.pdf (2 型糖尿病の食事療法 The Lancet 2014,June 7. 2014 西伊豆早朝カンファ ) 10 / 17

上記総説を一言で言うと 色々なダイエットがあるけど どれもそれなりに 有効なので 個人の好みで選べばよい というものです ひとそれぞれ好みはあるけど どれもみんなきれいだね という訳です ただし厳格な菜食主義 (Vegetarian, Vegan) は決して良好な血糖コントロール 心血管リスク低下には至らないのでやめておけとのことです 菜食主義は低カロリーと結びついていることが多く単独評価が難しいようです 西伊豆に来た ALT(assistant language teacher) の中には厳格な Vegan( ビーガン ) の人もいて我が家に遊びに来ると家内が料理に大変困っていました 食べるものが限られるのです ただデザートにはケーキだのチョコレートだのどっさりと食べるのには なんだかなあと思っていました しかし様々なダイエット法のうち 血糖コントロール インスリン感受性改善に最も 有効だったのは地中海食だったとのことです 地中海食要点は下記 4 つです 是非暗記して下さい 地中海食(The Mediterranean diet) 要点 4 つ 摂取すべきは全粒穀物( 玄米 茶色のハ ン ) 果物 野菜 ナッツ 豆 オリーフ 油 魚 トリ肉 控えるべきは赤い肉 最悪は加工肉( ソーセーシ ヘ ーコン ハム ハンハ ーカ ー ) と砂糖入り飲料 適量のアルコール( 男性で 22g 女性で 24g) は DM 予防効果あり 白より赤ワイン 食塩制限 6g 以下 なおアルコール 20g はビール 500ml 日本酒 180ml ワイン 180ml ウイスキー 60ml 相当です 意外に飲んでいいんだなと嬉しくなります 森鷗外の独逸 ( ドイツ ) 日記を読むと 鷗外にはビールは 1.5l が限界でしたが 同僚のドイツ人達はなんと 11-12l も飲むと驚いています ライプチヒでは小生 家内とアウエルバッハ酒場でビールを飲みました ここはゲーテのファウストの中に ライプチヒなるアウエルバハの穴倉 として出てくる舞台です また森鷗外も井上とここを訪れており 明治 19 年 1 月の独逸日記には ギョオテのファウスト Faust を訳するに漢詩体を以てせば如何かとかたりあひ とあります 壁に森鷗外 井上とファウストの悪魔メフィストフェレスを描いた壁画がありました 給仕の女性に 森鷗外の と言ったらすぐ壁画の前に連れて行ってくれました ゲーテは Göthe と綴りますが ö(o- ウムラウト ) の発音は唇をオの形でエと言います ギョエテとは俺のことかとゲーテ言い という川柳があります 11 / 17

小生自身は外来では 糖尿病の患者さんには まず夕食のみのローカーボ食 ( 炭水化物を摂らない ) を勧めています これは酒飲みには大変簡単なダイエットです 夕食は炭水化物を摂らずに酒とオカズだけでいいからです これだけで驚くほど A1c が低下してきます ただし朝も昼もローカーボにすると大変危険です 炭水化物を抜くのは夕食のみです そして赤い肉 ( 豚 牛 ) を避けて魚と鶏肉を中心にしてもらいます 最悪が加工肉 ( ソーセージ ハム ベーコン ハンバーガー ) と砂糖入り飲料であると言うと 大変驚かれます そして毎日 21 分の運動 (150 分 / 週 ) を勧めます これは歩いて通勤してもらえばたいてい達成可能です 10.A1c<7.0 で微小血管障害に効果出るのに 15-20 年かかる 老人は 8.0 以下で十分 ほとんどの患者は HbA1c<8.0 で可です 7.0 以下で維持して心血管リスク減少には 15-20 年かかりますので American College of Physicians はほとんどの患者で 7-8% で可としています 余命が 15 年ない時 強化血糖コントロール (A1c 7.0 未満 ) は意味がないどころか寿命を縮めることになります 衝撃的だったのは 2008 年の ACCORD 試験です 目標 A1c 6.0% 未満群と 7.0-7.9% 群を較べたところ 6.0% 未満群ではなんと 全死亡率が 22% も増加したため途中で試験が中止されたのです ガーン!! 以前 外来で 70 歳代男性の A1c を 8.0 位でコントロールしていたところ 都会の内科専門医にかかりたい とのことで紹介状を書きました 後でお話しをお聞きしたところ コントロールが悪すぎる と大変怒られインスリンまで導入されて 6.0 代にされてしまいました 2016 年の JAMA に 老人 2 型糖尿病の血糖コントロール の総説がありました www.nishiizu.gr.jp/intro/conference/h28/conference-28_08.pdf ( 老人 2 型 DM の血糖コントロール JAMA,March8,2016 西伊豆早朝カンファ ) 上記総説によると 65 歳以上老人は A1c7.5 から 9% の間で利益は最大で害は最も少ない しかし A1c が9% を超えると多尿 脱水を起こす とのことでした 9% 以上はペケです 驚いたのは 老人で A1c が 6 代の場合 7.5 以上に引き上げよと言うのです それにより polypharmacy を防げます なるほどなあです A1c のチェックは年 4 回程度が合理的 (reasonable) です 安定していれば 6 カ月毎です 12 / 17

至適 A1c の各スタディの詳細は下記をご覧ください 至適 A1c のトライアル 1)UKPDS(1998 Lancet, U.K.Prospective Diabetes Study) UKPDS では A1c を 7.0% 以下と 7.9% 以下で比較した場合 7.0% 以下では無症候微小血管障害は減るが 心血管死亡 有症状微小血管障害 ( 視力障害 切断 腎不全 ) は変わらなかった 20 年フォローで心筋梗塞発症は 16.8 対 19.6/1000 人 死亡 26.8 対 30.3 人 /1000 人だったが血糖コントロールには差がなくなっていた 2)VADT(2009 NEJM, Veterans Affairs Diabetes Trial) は 1791 人の糖尿病の退役軍人 平均 60.4 歳 罹患期間平均 11.5 年 40% は心血管イベントありで 平均 A1c6.9% 群と 8.4% 群を比べた 心血管イベント 心不全 血管手術 切断等の primary endpoint に差はなく 全体死亡率 microvascular event 発生も差が無かった 15 年のフォローで強化コントロール群で死亡率低下はなかった (HR,1.02 CI,0.88-1.18 心血管疾患(HR, 0.91 CI,0.78-1.06 3)ACCORD(Action to Control Cardiovascular Risk in Diabetes,2008) で米国の糖尿病患者 10,251 例 ( 平均 62.2 歳 平均罹患期間 10 年 35% は心血管イベントあり ) で 強化治療群は A1c6.0% 未満 通常治療群は 7.0-7.9% を目標とした その結果 前者は 6.4% 後者は 7.5% となった しかし強化群で全死亡率は 22% 増加したため途中で中止された (5.0% 対 4.0% P=0.04) エンドポイント ( 非致死性心筋梗塞 非致死性脳卒中 心血管死 ) に差はなかった 強化群で低血糖と体重増加が多かった 4)ADVANCE(Action in Diabetes and Vascular Disease,2008) では糖尿病患者 11,140 人 ( 平均 66 歳 平均罹患期間 8 年 32% は心血管イベントあり ) で A1c は強化コントロール群で 6.5% 通常コントロール群で 7.3% 強化群で腎症は減少 (4.1% 対 5.2% P=0.006) したが心血管イベントと死亡率に差はなかった 11. 治療はまず 6-8 週ダイエット + 運動 A1c 低下無ければ薬剤開始 A1c 上昇患者はまず 6-8 週間ダイエットと運動を推奨です A1c 低下がなければ薬剤を開始します 薬はメトフォルミン ( メトグルコ グリコラン ジベトス ジベトン ) が第 1 選択です メトフォルミンはインスリンや SU 剤のような低血糖や体重増加が少ないのです 特に体重が理想体重の 20% を超える患者は第 1 選択です ただし腎障害 (GFR<30ml/ 分 /1.73m2) や 心不全 肝障害では使えません Cr1.2~1.3 以上では使わないほうが無難です 13 / 17

糖尿病の第 2 選択薬としてこの数年で SGLT-2 と GLP-1 受容体作動薬が浮上してきました これらは特に心血管死亡を低下させることにより全死亡率を下げます また腎障害を軽減します 従ってメトフォルミンを内服できぬ場合はこれらの使用を強く推奨です GLP-1 の Liraglutide( ヒ クトーサ ) は FDA(Food and Drug Administration) で減量に認証されておりとくに肥満患者でよいそうです GLP-1 受容体作動薬は肝代謝であり 添付文書には腎障害に対する注意は書かれていません 一方 DPP-4 阻害薬は SGLT-2 や GLP-1 受容体作動薬のような心血管疾患に 対する利点がありませんから相対的に地位が低下してきました SU 剤は低血糖 体重増加起こしますし心血管系の利点もありません チアゾリジン誘導体 (pioglitazone: アクトス 15 mg錠 62.8 円 ) は心不全 骨折リスクはありますが全体的な心血管イベントは増えません 12.α ク ルコシタ ーセ 阻害剤 速効型インスリン分泌促進薬は食前投与 食事不規則患者に αグルコシダーゼ阻害薬は食前投与し食事時間が決まっていない患者によいとのことです acarbose( グルコバイ 50 mg錠 18.6 円 ) miglitol( セイブル 25mg 錠 21.9 円 ) voglibose( ベイスン 0.2 mg錠 31.5 円 ) があります 速効型インスリン分泌促進薬 (nonsulfonylurea insulin secretagogues) には nateglinide( ファスティック スターシス 30 mg錠 16.0 円 ) mitiglinide( グルファスト 5 mg錠 22.7 円 ) rapaglinide( シュアポスト 0.25 mg錠 33.4 円 ) があり食前投与です 食前投与なので食事時間が決まっていない患者に使えます 13. インスリン初期量 0.1-0.2U/ kg 2 型 DM では 3 回 / 日以上は普通不要 内服薬で血糖コントロールできぬ場合にインスリンを開始します インスリンは biphasic prandial basal のどれが優れているとも言えませんが低血糖は basal insulin group で一番少ないとのことです インスリン開始で HbA1c は1-2% 低下します 強化コントロールでは BG<120 mg /dl を目標としますが低血糖と体重増加リスクがあります 14 / 17

まず 1 日 1 回の注射で開始します 低血糖が起こらなければ眠前 1 回の NPH か basal analogue insulin+ 経口薬 (metformin など ) でコントロールできます インスリン初期量は典型的には 0.1-0.2U/ kgです 2 回 / 日必要な場合もありますがそれ以上の回数は 2 型糖尿病ではふつう不要です しかし早朝血糖正常でも A1c が高値の場合は 食前インスリンが必要なことがあります インスリン量が多い場合は高濃度インスリン (U-500) 使用も可です 国内では basal insulin に使う持効型インスリンは ランタス 100U/ml ランタス XR300U/ml( 高濃度 ) レベミル 100U/ml トレシーバ 300U/3ml があります basal insulin と GLP-1 receptor antagonists の固定用量も可能で インスリンよりも低血糖発作が少なく体重増加を避けられます 14. 血圧 130/80 or140/90 以下 腎のため ACE-I か ARB 使用多い 眼底 1-3 年毎 高血圧は糖尿病合併症のリスク因子ですが 140/90 以下に比し 120/80 以下で糖尿病のアウトカムは必ずしも改善しないそうです しかし American College of Cardiology and the American Heart Association は 130/80 以下を推奨しています 一方 The American College of Physicians は 140/90 以下を推奨です 推奨降圧薬ははっきりしませんが 腎臓への効果から ACE-I か ARB を選ぶことが多いようです 尿アルブミンは心血管疾患のリスクであり ACE-I ARB による治療は末期腎障害への進行を遅らせます SGLT-2 も腎障害進行を遅らせます 40 歳以上の DM 患者のほとんどはコレステロールを低下させる必要があります スタチンで十分下がらぬ場合は ezetimibe ( ゼチーア ) を追加します DM 患者で aspirin 投与で血管イベントが 1.1% 低下しましたが出血リスクが 0.9% 増加しその利益ははっきりしませんでした 心疾患のある場合は aspirin 75-325mg を投与します 眼底検査は 1-3 年毎定期的に行います 15 / 17

15. 糖尿病性神経障害に三環系抗うつ剤 サインハ ルタ テク レトール カ ハ ヘ ン リリカ有効 糖尿病性神経障害には三環系抗うつ剤が RCT で有用でした 眠前少量で開始し滴定 (titrate) します 抗コリン作用に注意です Duloxetine ( サインバルタ ) は FDA で糖尿病性神経障害に認可されました ただ肝障害やアルコール中毒では不適切です カプサイシンクリームは RCT で有用でした 灼熱感を生ずることがあります carbamazepine( テグレトール ), gabapentin( ガバペン ), pregabalin( リリカ ) も RCT で有用でした 坐骨神経痛に対し小生最近はサインバルタを使用しております 大変よく効く場合もあり坐骨神経痛にようやく武器を持てたと感じています 以前はビタミン B12 やプロスタグランジン E1 製剤を出したりしましたが 効いたと思ったことはありません リリカ (pregabalin) は NEJM, March23, 2017 の Trial of Pregabalin for Acute and Chronic Sciatica で 209 例の RCT により坐骨神経痛に対してはその効果が完全否定されてしまいました 最近両下肢の強い坐骨神経痛を訴える 86 歳の老人が外来に来られました 居合道 8 段の方です サインバルタもリリカも無効で手術まで希望されます この総説に gabapentin ( ガバペン ) が書いてあったのを思い出して ダメ元で処方しました 本日 小生ウォーキングしていたところ畑仕事をしていたこの男性に呼び止められました なんと 1 錠内服しただけで疼痛は 4/10 に軽減したとのことで大変感謝され こちらの方が驚きました それでは 2 型糖尿病総説 最重要点 15 の怒涛の反復です 1 2 型 DM の第 1 選択薬はメトフォルミン 体重減らし低血糖起こさぬ 2 中等度腎不全に使えるのはトラセ ンタ シュアホ スト SGLT-2 GLP-1 3 2 型 DM の第 2 選択薬は SGLT2 阻害薬と GLP1 受容体作動薬 4 SGLT-2 阻害薬 GLP-1 受容体作動薬は心血管 腎障害を低下させる 5 45 歳以上で 1 回 /3 年の糖尿病検診推奨 有リスク者は 45 歳未満でも推奨 6 DM 症状に黒色表皮腫も DM 診断は A1c 6.5 or FPG 126 or 食後 BG 200 7 初期評価は心血管 神経 皮膚 足 BG,A1c,Tch,Cr, 尿微量 alb/cr, 肝機能 眼底 8 前糖尿病で運動 150 分 / 週 タ イエットで体重を 5-7% 減らせ! コレステロール減らせ! 9 地中海食 ( 全粒穀物 野菜 豆 オリーフ 油 魚 トリ ) 摂れ 赤い肉 砂糖飲料避けよ 10 A1c<7.0 で微小血管障害に効果出るのに 15-20 年かかる 老人は 8.0 以下で十分 16 / 17

11 治療はまず 6-8 週ダイエット+ 運動 A1c 低下無ければ薬剤開始 12 α ク ルコシタ ーセ 阻害薬 速効型インスリン分泌促進薬は食前投与 食事不規則患者に 13 インスリン初期量 0.1-0.2U/ kg 2 型 DM では 3 回 / 日以上は普通不要 14 血圧 130/80 or140/90 以下 腎のため ACE-I か ARB 使用多い 眼底 1-3 年毎 15 糖尿病性神経障害に三環系抗うつ剤 サインハ ルタ テク レトール カ ハ ヘ ン リリカ有効 17 / 17