TDB REPORT 113 号 -スマートフォン 業 界 読 解 / 地 域 経 済 動 向 2012-1. スマートフォン 業 界 読 解 通 話 やインターネットへの 接 続 音 楽 動 画 の 再 生 といった 多 様 な 機 能 を 持 つ スマートフォ ン 国 内 外 において 急 速 に 普 及 が 進 むこの 情 報 通 信 端 末 は 電 子 機 器 部 品 産 業 のみならず 通 信 事 業 やソフトウェアなど 関 係 する 業 界 に 競 争 を 起 こし 新 たな 盛 衰 をもたらしつつある また 今 後 についても その 利 用 により 業 務 の 効 率 化 や 生 産 性 の 向 上 が 図 れることから 業 界 を 問 わず 企 業 の 成 長 発 展 を 促 す 可 能 性 がある そこで 第 1 特 集 では スマートフォンの 市 場 拡 大 が 関 係 する 業 界 にもたらす 変 化 を 考 察 する とともに 部 品 製 造 ならびにソフトウェア(アプリ) 開 発 について 業 界 への 参 入 企 業 の 分 析 を 試 み 成 長 産 業 業 界 の 現 状 と 今 後 を 展 望 した スマートフォンはパソコンの 発 展 形 日 本 では 1990 年 代 後 半 から インターネットへの 接 続 や 音 楽 プレーヤーとしての 機 能 などを 備 え る 多 機 能 な 携 帯 電 話 (フィーチャーフォン)の 開 発 普 及 が 進 んできている スマートフォンはこのフ ィーチャーフォンの 進 化 形 と 認 識 されがちだが 両 者 にはいくつかの 違 いがある スマートフォンとフィーチャーフォンの 最 大 の 違 い それはコンピュータの 基 本 的 な 制 御 を 行 うソ フトウェア OS にある フィーチャーフォンに 搭 載 される OS は 通 信 事 業 者 や 端 末 に 特 化 した 固 有 のものであるのに 対 し スマートフォンでは 通 常 のパソコン 向 けの OS をベースとした 汎 用 性 のある ものである 言 い 替 えれば パソコンと 互 換 性 のある OS が 搭 載 されることが スマートフォンの 最 大 の 特 徴 である したがって スマートフォンとは 携 帯 電 話 の 多 機 能 化 進 化 形 ではなく パソコン のモバイル 化 の 発 展 形 といえる 市 場 拡 大 の 要 因 は 端 末 そのものと 利 用 環 境 の 変 化 スマートフォンの 代 名 詞 ともいえる iphone 日 本 でも 爆 発 的 にヒットした 要 因 のひとつには タッ チパネルという 新 たな 操 作 方 法 ユーザーインターフェース(UI)を 提 供 したことにある 番 号 キーや キーボードによる 操 作 と 比 べ 簡 単 で 分 かりやすく かつスムーズな 操 作 感 を 提 供 するこの 特 徴 は ス マートフォンが 市 場 を 拡 大 してきている 大 きな 要 因 といえる スマートフォンについてはさらに 膨 大 な 数 のアプリにより 機 能 の 追 加 ができ パソコンで 管 理 している 各 種 データを 同 期 ( 自 動 で 同 じ 状 態 に 保 つ 機 能 )して 持 ち 運 べる ことを 特 徴 としてあげる ことができる このスマートフォンならではの 利 便 性 が 評 価 され 市 場 の 拡 大 につながっていることは 論 を 待 たないが それは コンピュータシステムとネット 環 境 が 高 度 化 し アプリやデータがクラウ ドサービスを 介 して 動 作 活 用 できるようになったことで 実 現 している スマートフォンの 市 場 拡 大 は ソフトウェアやデータの 利 用 環 境 の 変 化 が 後 押 ししたものといえる 国 内 のスマートフォン 市 場 2010 年 度 に 急 拡 大 国 内 におけるスマートフォンの 市 場 は 2010 年 度 に 急 拡 大 した MM 総 研 の 発 表 によると 同 年 度 のスマートフォンの 国 内 出 荷 台 数 は 855 万 台 前 年 度 比 265.4% 増 の 大 幅 増 だった 各 通 信 事 業 者 からアンドロイド 端 末 が 相 次 ぎ 発 売 されたこと 特 に 年 末 商 戦 にお いて ワンセグ や 非 接 触 IC カード 赤 外 線 ポート など 携 帯 電 話 の 付 加 機 能 として 独 自 に 発 展 した 1
機 能 を 搭 載 したモデルが 登 場 したことが 要 因 である 同 年 度 の 携 帯 電 話 端 末 の 国 内 出 荷 台 数 に 占 める スマートフォン 端 末 の 割 合 は 22.7%であり 同 15.9 ポイント 増 となった さらに 市 場 拡 大 は 2011 年 度 に 入 って 加 速 している ( 万 台 ) 同 社 の 発 表 によると 同 年 度 携 帯 電 話 端 末 の 国 内 出 荷 台 数 上 半 期 (4~9 月 期 )のスマー 6,000 60 出 荷 台 数 : 携 帯 電 話 スマートフォンシェア トフォンの 国 内 出 荷 台 数 は 5,000 ( 左 目 盛 ) ( 右 目 盛 ) 50 1,004 万 台 であり すでに 出 荷 台 数 :スマートフォン 4,000 ( 左 目 盛 ) 40 前 年 度 通 期 を 上 回 った 通 年 度 では 2,330 万 台 同 3,000 30 172.5% 増 となる 見 込 みだ 携 帯 電 話 端 末 におけるスマ ートフォンの 出 荷 台 数 シェ 2,000 1,000 20 10 アも 同 33.3 ポイント 増 の 56.0%と 過 半 数 を 上 回 る 0 0 2006 07 08 09 10 11 ( 年 度 ) 出 典 :( 株 )MM 総 研 { 東 京 港 } 注 :2011 年 度 は 見 通 し とみられている (%) スマートフォンがもたらす 変 化 情 報 通 信 端 末 のなかでその 存 在 感 を 増 しているスマートフォン その 隆 盛 は 通 信 事 業 や 端 末 部 品 製 造 ソフトウェア 開 発 など 関 連 する 業 界 はもとより 機 能 が 重 なる 電 子 機 器 の 業 界 にも 変 化 をも たらしつつある その 現 状 と 今 後 を 展 望 する 通 信 事 業 者 契 約 件 数 獲 得 と 通 信 料 金 単 価 アップの 強 い 武 器 に 通 信 事 業 収 入 は 契 約 件 数 と 通 信 料 金 単 価 の 積 算 である このうち 国 内 の 移 動 体 通 信 契 約 件 数 は 漸 増 しており 2010 年 度 末 には 1 億 2,000 万 件 を 突 破 した 計 算 上 国 民 1 人 が 1 契 約 を 持 つ 飽 和 状 況 に 陥 りつつある 一 方 通 信 料 金 単 価 については 漸 減 している 契 約 獲 得 に 向 け 値 下 げ 競 争 が 繰 り 広 げられているこ と また 連 絡 手 段 として 電 話 ではなく 電 子 メールの 利 用 が 拡 大 し 通 話 料 収 入 ( 音 声 ARPU)が 低 下 し ていることが 要 因 である したがって 通 信 事 業 各 社 にとって 他 社 契 約 の 奪 取 による 契 約 件 数 の 増 加 と 通 信 料 金 単 価 の 引 き 上 げが 収 入 増 に 向 けた 喫 緊 の 課 題 となっている スマートフォンは この 課 題 を 解 決 する 強 力 な 武 器 となる フィーチャーフォンとは 違 う 新 たな 端 末 としてアピールできるとともに その 利 用 においてネット 接 続 による 大 量 のデータ 通 信 が 見 込 まれ デ タ 通 信 の ARPU の 上 昇 それによる 通 信 料 金 単 価 の 維 持 上 昇 を 期 待 できるためだ iphone は 通 信 事 業 者 を 疲 弊 させる 可 能 性 がある KDDI は 2011 年 10 月 14 日 から iphone の 販 売 を 開 始 した iphone によるソフトバンクと KDDI の 新 たな 顧 客 争 奪 競 争 は 両 社 はもとより iphone を 持 たないドコモにも 厳 しい 状 況 をもたらす 可 能 性 がある KDDI とソフトバンクの 攻 防 の 焦 点 は 通 信 のつながりやすさ にあり KDDI はソフトバンクに 比 べ つながりやすい という 点 をアピールして 契 約 奪 取 を 目 指 している ただ スマートフォンのデー 2
タ 通 信 量 はフィーチャーフォンの 10~20 倍 とされ iphone の 導 入 によるユーザー 数 の 急 増 が 通 信 回 線 (3G 回 線 )の 容 量 の 限 界 を 早 める 恐 れがある KDDI は 同 状 況 を 想 定 し アンドロイド 端 末 に 高 速 データ 通 信 サービス WiMAX 対 応 モデルを 用 意 し データ 通 信 を 3G 回 線 から 同 サービスに 担 わせる 施 策 を 進 めている だが iphone についてはユ ーザー 獲 得 のためデータ 定 額 料 金 をアンドロイド 端 末 より 安 く 設 定 したため アンドロイド 端 末 が 売 れず 同 策 が 奏 功 しない 可 能 性 がある また iphone は アプリを 販 売 する 市 場 (App Store)や 音 楽 映 画 などのコンテンツを 販 売 する 市 場 (itunes Store) 課 金 システムなどのすべてをアップルが 設 計 している EZ ナビウォーク や au Run&Walk などの 独 自 コンテンツ 音 楽 配 信 サービス LISMO を 展 開 してきた KDDI にとって は iphone の 導 入 は 自 社 サービスの 利 用 減 退 収 益 減 を 招 く 可 能 性 があることも 懸 念 点 といえる 一 方 ソフトバンクも iphone の 大 ヒットにより 急 速 に 顕 在 化 した つながりにくい という 状 況 の 改 善 に 向 け 2010 年 3 月 に ソフトバンク 電 波 改 善 宣 言 を 打 ち 出 し 基 地 局 整 備 やスマートフォン のデータを ADSL などの 固 定 通 信 網 に 移 すための 機 器 の 配 布 などの 対 策 を 進 めている 2011 年 11 月 からは 経 営 破 綻 したウィルコムから 承 継 した 周 波 数 帯 を 使 用 する 次 世 代 ネットワーク サービスを 開 始 し 2012 年 度 末 までには 全 国 政 令 指 定 都 市 人 口 の 99%をカバーするサービスの 提 供 を 目 指 してい る ただ KDDI との 競 争 が 今 後 の 収 益 に 影 響 を 与 えることは 必 至 であり ソフトバンクにとって 急 速 なインフラ 整 備 にともなうコスト 増 は 大 きな 負 担 となる 可 能 性 を 否 定 できない さらに 両 社 はもちろんドコモにも 降 りかかる 恐 れがあるのが 料 金 競 争 の 一 層 の 激 化 である iphone の 取 り 扱 いに 際 しては 契 約 上 アップルから 通 信 事 業 者 に 一 定 量 の 販 売 台 数 が 課 せられる 顧 客 奪 取 だけでなく 販 売 ノルマの 達 成 に 向 け KDDI とソフトバンクの 両 社 は iphone 用 に 戦 略 的 な 料 金 プランや 販 促 支 援 策 を 設 定 せざるを 得 ない 他 方 両 社 の iphone 攻 勢 に 立 ち 向 かうため ドコ モも 競 争 力 のあるスマートフォン 向 け 料 金 プランの 設 定 を 避 けられない 実 際 KDDI は 導 入 に 合 わせて iphone 向 けに 同 社 が 扱 うほかのスマートフォン 向 けよりも 低 額 の 料 金 プランを 設 定 ソフトバンクは 旧 モデルからの 機 種 変 更 を 実 質 無 料 とするキャンペーンを 実 施 し ている ドコモも 新 たな 高 速 通 信 サービスに 対 応 するスマートフォン 向 けのデータ 定 額 料 金 の 大 幅 値 下 げを 打 ち 出 した 電 気 通 信 事 業 者 協 会 の 発 表 によると 2011 年 10 月 の 契 約 純 増 数 はドコモが 8 万 9,600 件 KDDI が 19 万 6,900 件 ソフトバンクが 24 万 7,600 件 新 たな 料 金 設 定 による 各 社 の 契 約 への 影 響 を 判 断 するには 時 期 尚 早 だが 依 然 としてソフトバンクが iphone 先 行 による 強 さをみせているといえる 仮 にこの 状 況 が 今 後 も 続 くとなると KDDI は 現 状 ではソフトバンクよりも 高 めに 設 定 されている iphone 向 け 料 金 プランを 値 下 げし さらには 他 のスマートフォン 向 け 料 金 プランも 見 直 しを 余 儀 なく される 可 能 性 がある そうすると ソフトバンクやドコモも 対 抗 策 として 料 金 プランの 値 上 げを 行 う とみられ 料 金 競 争 の 激 化 は 避 けられなくなる なお 通 信 回 線 容 量 の 限 界 は 消 費 者 にも 影 響 を 及 ぼす 問 題 となりつつある 通 信 量 を 抑 えるため に データ 通 信 料 金 の 定 額 制 から 従 量 制 への 移 行 が 検 討 されているためだ 海 外 ではすでに 移 行 した 事 例 があり 国 内 事 業 者 の 判 断 が 注 目 されている 端 末 メーカー グローバル 競 争 に 巻 き 込 まれる 国 内 の 携 帯 電 話 端 末 市 場 において 国 内 メーカーは 圧 倒 的 な 強 さを 誇 っている だが 世 界 市 場 で は 国 内 メーカーは 存 在 感 がない その 理 由 は 2 つある ひとつは 国 内 では 1990 年 代 後 半 端 末 に 日 本 独 自 の 通 信 規 格 や 仕 様 が 採 用 されたことである 3
通 信 事 業 者 の 主 導 によるこの 決 定 により 海 外 メーカーの 国 内 市 場 への 参 入 が 難 しくなった 一 方 国 内 メーカーの 海 外 展 開 も 海 外 向 け 端 末 の 開 発 という 負 担 により 容 易 ではなくなったのである もうひとつは ガラパゴスケータイ と 揶 揄 されるほど 日 本 独 自 のものとして 端 末 が 進 化 してし まったことである 2000 年 代 以 降 国 内 でも 世 界 標 準 の 通 信 規 格 (W-CDMA/cdma2000)が 採 用 され たことから 端 末 メーカー 各 社 の 海 外 展 開 は 活 発 化 した だが 日 本 の 消 費 者 の 細 かなニーズに 対 応 するなかで ワンセグ や おサイフケータイ など 海 外 では 利 用 できない 多 様 な 機 能 が 端 末 に 付 加 さ れたうえ 高 価 格 となってしまい 世 界 で 求 められるものと 異 なってしまったのである ただ スマートフォンについては こうした 問 題 は 海 外 展 開 の 足 かせとはならない それは OS の 規 格 仕 様 が 世 界 に 公 開 された すなわち 基 本 仕 様 が 世 界 共 通 のアンドロイドを 利 用 すれば 海 外 向 けの 端 末 も 共 通 化 でき 世 界 のニーズにそった 商 品 を 低 価 格 で 提 供 できるためだ 国 内 メーカーにと って フィーチャーフォンでは 失 敗 した 海 外 展 開 のチャンスが 再 びもたらされたのである 一 方 このことはまた 海 外 メーカーが 国 内 市 場 への 進 出 を 加 速 する 可 能 性 があることも 意 味 する スマートフォンの 普 及 は 端 末 市 場 の 競 争 をこれまで 以 上 にグローバル 化 するものといえる 部 品 メーカー より 高 い 製 品 力 技 術 力 コストパフォーマンスが 求 められる スマートフォンが 部 品 メーカーにもたらす 変 化 としては 大 きく 2 つをあげることができる 変 化 のひとつは 需 要 される 部 品 の 変 化 である たとえば フィーチャーフォンでは 数 字 ボタンで 多 くの 操 作 を 行 うが スマートフォンではタッチパネルに 触 れて 操 作 する したがって スマートフ ォンでは 数 字 ボタンに 関 連 する 部 品 の 需 要 は 減 り 代 わりにタッチパネルに 関 連 する 部 品 の 需 要 が 拡 大 する ただ スマートフォンとフィーチャーフォンとを 比 べた 場 合 ハードとしての 変 化 はタッチ パネルの 採 用 以 外 に 本 質 的 な 違 いはない この 影 響 は 一 部 にとどまるとみるべきである もうひとつの 変 化 は 求 められるスペック 技 術 の 変 化 である こちらの 変 化 の 影 響 は 大 きい スマートフォンは 高 機 能 化 にともない フィーチャーフォンと 比 べ 1 台 に 搭 載 される 部 品 の 数 が 多 い にもかかわらず 1 回 の 充 電 による 使 用 時 間 を 伸 ばすために 電 池 の 大 型 化 も 避 けて 通 れない そ のため より 小 型 で 高 い 省 エネ 性 能 を 持 つ 部 品 の 需 要 が 拡 大 するとともに 限 られたスペースに 部 品 を 詰 め 込 む 高 密 度 実 装 技 術 の 重 要 性 が 高 まっている 一 方 世 界 市 場 では 低 価 格 な 端 末 の 需 要 が 拡 大 していることから 部 品 も 値 下 げ 圧 力 が 高 まってい るとみられる 部 品 メーカーにとってスマートフォンは より 高 い 製 品 力 と 技 術 力 コストパフォー マンスを 要 求 される 厳 しい 商 品 といえるだろう ただ この 要 件 を 端 末 メーカーや EMS メーカーに より 認 められた 企 業 にとっては 今 後 の 高 い 成 長 を 期 待 できる 商 品 ともいえる モジュール 化 の 進 化 がカギ モバイル 型 の 情 報 携 帯 端 末 では 部 品 のモジュール 化 が 進 んでいる モジュール 化 は 組 み 合 わせの 方 法 によって 少 ない 体 積 で 部 品 を 実 装 でき また 部 品 の 交 換 により 機 能 向 上 を 容 易 に 行 えるというメ リットがあるためである スマートフォンについても 多 様 な 機 能 を 限 られたスペースに 搭 載 するた めに モジュール 化 が 可 能 な 機 能 におけるモジュール 部 品 の 採 用 は 進 んでいる モジュール 化 は 部 品 メーカーにとっても 事 業 拡 大 のチャンスといえる 技 術 力 のアピールに 加 え 端 末 メーカーとの 共 同 開 発 の 機 会 が 生 まれ 部 品 が 採 用 される 可 能 性 が 高 まるためだ ただ 今 後 の 市 場 拡 大 にともない スマートフォンも 一 層 の 小 型 薄 型 化 の 要 求 が 強 まり 既 存 の モジュール 化 技 術 では 対 応 できないレベルが 求 められる 可 能 性 がある 部 品 メーカーにとっては モ ジュール 化 技 術 の 進 化 はスマートフォン 事 業 で 勝 ち 抜 くためのひとつの 重 要 な 要 素 になるとみられる 4
ソフトウェア 開 発 事 業 者 中 小 事 業 者 でも 参 入 が 容 易 なアプリ 開 発 スマートフォンがもたらす 変 化 として 市 場 の 活 況 という 変 化 をもっとも 強 く 受 けているといえる のが アプリを 開 発 するソフトウェア 開 発 事 業 者 である スマートフォンはアプリの 追 加 により 端 末 としての 利 便 性 が 高 まることから アプリの 開 発 市 場 投 入 が 端 末 の 市 場 拡 大 を 促 し また 新 たなア プリの 開 発 を 後 押 しする 循 環 にあるためだ アプリはソフトウェアの 開 発 販 売 において 独 特 な 面 があることも 市 場 の 隆 盛 の 一 因 といえる ソフトウェア 開 発 は 基 本 的 に 発 注 者 から 大 手 ( 元 請 け) 中 小 ( 下 請 け) 零 細 個 人 ( 孫 請 け)という 重 層 的 な 下 請 け 構 造 を 持 つ 受 注 産 業 であり 大 手 を 除 いては 自 らコンテンツを 企 画 開 発 し 販 売 する という 取 り 組 みはほとんどない だが アプリについては 中 小 や 零 細 個 人 事 業 者 でも 自 ら 企 画 開 発 ができ App Store や Android Market といった 専 用 サイトで 販 売 することができる 技 術 力 があれば 中 小 以 下 の 事 業 者 にもチャンスがあるこの 仕 組 みにより 市 場 は 多 くの 事 業 者 の 参 入 を 招 き 活 況 を 呈 しているのである 収 益 向 上 には 貢 献 せず だが 市 場 の 活 況 が 事 業 者 の 収 益 向 上 につながっているわけではない 前 述 のとおり ソフトウェ ア 開 発 事 業 は 重 層 的 な 下 請 け 構 造 となっていることに 加 え 参 入 激 化 により 開 発 料 金 のたたき 合 いが 厳 しいためである また 仮 にアプリを 自 ら 企 画 開 発 したとしても アプリの 販 売 (ダウンロード 課 金 )から 収 益 を 得 ることは 難 しいとみられる 現 状 では アプリの 販 売 を 収 益 の 軸 とするソフトウェア 開 発 事 業 者 は 少 ないとみられる 中 小 や 零 細 個 人 事 業 者 が 自 らアプリを 企 画 開 発 販 売 する 取 り 組 みは 開 発 技 術 力 をアピールするため と 考 えられる ソフトウェア 開 発 事 業 にとってスマートフォンは 収 益 向 上 に 貢 献 するには 難 しい 分 野 であるとい える ただ 参 入 が 容 易 であることから 今 後 もスマートフォン 関 連 業 界 のなかではもっとも 盛 り 上 がりを 見 せるものとみられる デジタル 機 器 メーカー スマートフォン 特 に 国 内 市 場 に 投 入 されるガラパゴス 化 した 端 末 は 機 能 が 重 なる 他 のデジタル 機 器 の 市 場 を 侵 食 する 可 能 性 がある 1.パソコン ~ ネットブックは 駆 逐 される 可 能 性 が 高 い パソコンのなかで スマ (%) ートフォン 同 様 に 携 帯 性 が 25.0 特 長 のモバイルノート 型 の 20.0 成 長 にはやや 鈍 化 の 傾 向 が 15.0 10.0 うかがえる 電 子 情 報 技 術 5.0 産 業 協 会 の 発 表 によると 0.0 モバイルノート 型 パソコン -5.0-10.0 の 2010 年 度 の 出 荷 台 数 伸 -15.0 び 率 は 前 年 度 比 6.5% 減 -20.0-25.0 ノート 型 パソコン 全 体 に 占 めるシェアは 同 2.8 ポイン モバイルノート 型 パソコンの 国 内 出 荷 動 向 モバイルノート 型 パソコンの ノート 型 パソコンに 占 める 割 合 モバイルノート 型 パソコンの 国 内 出 荷 伸 び 率 2006 07 08 09 10 11( 年 度 ) ( 上 半 期 ) 出 典 : 電 子 情 報 技 術 産 業 協 会 発 表 資 料 より 帝 国 データバンク 作 成 5
ト 減 の 19.7%だった 2011 年 度 上 半 期 についても 出 荷 台 数 伸 び 率 は 前 年 同 期 比 10.0% 増 と 回 復 し たものの シェアは 18.7%に 低 下 した 文 書 作 成 やデータ 整 備 解 析 など パソコンは 入 力 や 思 考 のためのツールとして 現 代 において 欠 か せず また キーボードという 入 力 デバイスの 操 作 性 が 勝 る 面 もあることから スマートフォンおよ びタブレット 型 端 末 がすべてのパソコンに 置 き 換 わることはないだろう ただ 将 来 的 には モバイ ル 性 とネット 接 続 という 機 能 では 優 位 なことから スマートフォンがネットブックを 駆 逐 する 可 能 性 は 高 いとみられる 2.デジタルカメラ ~ コンパクトタイプの 需 要 先 細 りは 否 定 できない デジタルカメラの 市 場 は 近 年 おおむね 成 長 傾 向 で 推 移 している だが コンパクトデジタルカメ ラに 限 ると その 動 向 は 浮 沈 を 繰 り 返 している 市 場 には 断 続 的 に 最 新 機 能 を 盛 り 込 んだ 機 種 の 投 入 が 図 られているものの 景 気 低 迷 による 消 費 減 退 に 加 え 携 帯 電 話 の 高 機 能 化 のひとつとして 解 像 度 の 高 いカメラ 機 能 の 搭 載 が 進 んでいることが 需 要 減 を 招 いているとみられる デジタルカメラそのものについては 一 眼 レフやミラーレス 一 眼 など 高 機 能 モデルが 市 場 を 形 成 し ており スマートフォンによる 代 替 が 起 きることはないと 見 込 まれる ただ コンパクトデジタルカ メラについては ネットブック 同 様 需 要 が 先 細 る 可 能 性 は 否 定 できないだろう 3. 電 子 辞 書 ~ 市 場 侵 食 は 不 可 避 電 子 辞 書 の 国 内 市 場 は 2008 年 以 降 減 少 基 調 にある 2007 年 に 手 書 き 文 字 入 力 や 音 声 出 力 カ ラー 化 ワンセグ TV 搭 載 など 技 術 革 新 が 一 気 に 進 み 需 要 の 前 倒 しが 起 きたとみられることが 大 き いが その 後 辞 書 機 能 を 搭 載 する 携 帯 電 話 の 普 及 が 進 んだことも 減 退 の 動 きに 拍 車 をかけている スマートフォンは 膨 大 な 数 のアプリを 追 加 できることから フィーチャーフォン 以 上 に 辞 書 機 能 を 強 化 することができる さらにいえば 通 常 のパソコンと 同 様 の 機 能 を 持 つことから 辞 書 に 収 録 されていない 情 報 の 検 索 も 可 能 である スマートフォンの 普 及 とともに 電 子 辞 書 の 市 場 が 侵 食 されて いくことは 避 けられないとみられる スマートフォンは 業 界 問 わず 変 化 をもたらす 通 信 事 業 や 端 末 部 品 製 造 ソフトウェア 開 発 など スマートフォンにかかわる 業 界 では 現 在 市 場 の 隆 盛 にともない 新 たな 経 営 戦 略 の 実 行 や 企 業 参 入 など 活 発 な 動 きが 続 いており 業 績 向 上 やシェ ア 奪 取 など 少 しずつ 結 果 をあげる 企 業 も 表 れはじめている 一 方 パソコンやデジタルカメラ 電 子 辞 書 などスマートフォンと 機 能 が 重 なるデジタル 機 器 では 一 部 に 市 場 縮 小 の 動 きもうかがえ 生 き 残 りに 向 けた 早 急 な 取 り 組 みを 迫 られている 今 後 これらの 業 界 では 勢 力 関 係 が 変 わり 再 編 の 動 きへとつながっていくことが 予 想 される 他 方 関 連 する 業 界 企 業 以 外 にも スマートフォンは 少 なからぬ 変 化 をもたらすといえる フィ ーチャーフォンやノート 型 パソコンにより 実 現 してきた 営 業 生 産 性 の 向 上 や 業 務 の 効 率 化 などが 一 層 進 化 することで 新 たな 企 業 の 成 長 ひいては 業 界 の 勢 力 関 係 の 変 化 をもたらす 可 能 性 があるためだ ネット 時 代 の 新 たな 情 報 端 末 として スマートフォンがもたらす 変 化 は 今 後 も 大 きく かつ 重 要 性 を 増 していくことは 間 違 いないと 見 込 まれる 6
2. 地 域 経 済 動 向 2012 2011 年 の 国 内 経 済 は 3 月 の 東 日 本 大 震 災 の 発 生 年 後 半 の 急 激 な 円 高 の 進 行 およびタイの 洪 水 被 害 と 改 善 の 足 取 りにブレーキをかけるアクシデントに 相 次 ぎ 見 舞 われた 震 災 の 打 撃 は 復 興 需 要 として 年 末 には 景 気 回 復 のけん 引 力 となったものの 円 高 を 主 因 とする 製 造 業 の 疲 弊 そ れにともなう 雇 用 所 得 環 境 の 悪 化 懸 念 による 内 需 産 業 の 低 迷 から 改 善 の 勢 いは 鈍 ったままで ある 2012 年 においても ユーロ 経 済 の 危 機 や TPP( 環 太 平 洋 経 済 連 携 協 定 )の 参 加 などの 問 題 がくすぶり 国 内 経 済 の 先 行 きには 厳 しさが 見 込 まれる 第 2 特 集 では 厳 しい 状 況 にある 国 内 経 済 の 現 状 と 展 望 を 帝 国 データバンク(TDB) 景 気 動 向 調 査 の 最 新 データにより 地 域 ごとに 解 説 する さらに 都 道 府 県 ごとの 経 済 の 現 状 についても TDB の 企 業 概 要 データベース COSMOS2 や 公 的 統 計 データを 用 いて 概 観 する 2012 年 の 国 内 景 気 は 震 災 の 悪 影 響 が 徐 々に 緩 和 されるものの 不 安 定 な 欧 米 経 済 や 円 高 脆 弱 な 内 需 などで 緩 やかな 回 復 にとどまるとみられる 地 域 別 でみると 復 興 需 要 の 増 大 によってけん 引 され る 東 日 本 に 比 べて 西 日 本 の 回 復 遅 れが 続 く 可 能 性 が 高 い (DI : 0~100 50が 判 断 基 準 ) 45 景 気 DI 40 東 日 本 大 震 災 予 測 35 北 京 五 輪 30 25 世 界 的 な 金 融 危 機 の 拡 大 外 需 減 速 円 高 サッカーW 杯 南 アフリカ 大 会 全 国 景 気 DI 改 善 率 製 造 改 善 率 小 売 改 善 率 ( 年 月 ) 順 位 順 位 順 位 (%) 順 位 (%) 順 位 (%) 順 位 201104 30.4-63.5-32.4-64.8-28.3-61.8-20 リーマン ショック バンクーバー 冬 季 五 輪 15 08 09 10 期 間 :2008 年 1 月 ~2012 年 12 月 201106 33.2-69.3-35.2-70.4-31.5-68.8-201108 35.2-73.5-36.8-73.6-35.0-76.4-201110 36.1-75.4-37.4-74.8-35.3-77.1 - 注 : 改 善 率 はそれぞれ 前 回 の 景 気 回 復 局 面 における 最 高 水 準 に 対 する 当 月 のDIの 回 復 の 度 合 いを 表 す 11 12 ( 年 ) TDB 景 気 天 気 図 2011 年 全 国 北 海 道 東 北 北 関 東 南 関 東 北 陸 東 海 近 畿 中 国 四 国 九 州 TDB 景 気 天 気 図 2012 年 3 月 31.6 25.5 24.0 28.7 31.5 32.3 31.9 34.2 33.4 34.1 33.6 10.2 2011 年 6 月 33.2 28.2 31.3 32.8 34.6 33.7 31.8 33.7 32.6 33.9 33.0 6.4 9 月 35.5 30.8 38.3 35.4 36.0 36.5 37.3 34.8 34.5 36.1 34.2 7.5 12 月 37.2 30.6 41.0 35.6 39.3 35.6 38.8 37.8 35.3 36.7 36.7 10.4 3 月 37.7 31.5 41.2 37.4 41.3 37.2 39.5 38.8 36.0 36.9 37.0 9.8 2012 年 6 月 39.1 31.2 42.5 36.6 41.7 38.7 39.6 38.1 36.0 36.8 36.7 11.3 9 月 40.1 33.1 41.9 35.9 42.1 39.7 40.4 38.1 37.2 37.1 37.5 9.0 12 月 39.5 31.7 40.6 35.9 41.6 39.6 40.4 37.9 37.4 37.4 37.8 9.9 2011 年 3 月 および6 月 9 月 は 実 測 値 下 線 太 字 は 当 月 の 全 国 と 同 水 準 以 上 であることを 示 す TDB 景 気 天 気 図 は 景 気 DIの 水 準 と 方 向 性 地 域 の 経 済 指 標 などを 総 じて 表 す 指 標 地 域 間 格 差 は 地 域 間 における 各 月 の 最 高 と 最 低 の 差 を 表 す 地 域 間 格 差 7
TDB REPORT 113 号 スマートフォン 業 界 読 解 / 地 域 経 済 動 向 2012 目 次 第 1 特 集 スマートフォン 業 界 読 解 第 1 章 変 化 をもたらすスマートフォン 第 2 章 スマートフォンを 裸 にする 第 1 節 スマートフォンを 構 成 する 部 品 群 第 2 節 スマートフォンを 構 成 する 企 業 群 第 3 章 スマートフォンアプリ 解 剖 第 1 節 アプリ 開 発 の 動 向 第 2 節 アプリ 開 発 業 の 現 状 と 実 態 第 2 特 集 地 域 経 済 動 向 2012 第 1 章 地 域 経 済 の 現 状 と 展 望 第 2 章 47 都 道 府 県 の 概 要 連 載 中 小 企 業 の 目 利 き 日 本 経 済 展 望 データ レビュー プレビュー(2011 年 10 月 ~2012 年 3 月 ) TDB 経 済 統 計 主 な 企 業 の 合 併 商 号 変 更 上 場 一 覧 (2011 年 10~11 月 ) 8