大坂利文 : 抗生物質による腸内細菌叢の変化と生体影響 125 総 説 腸内細菌学雑誌 : 125-136,2018 特集 : 腸内菌叢はコントロールできるか? 抗生物質による腸内細菌叢の変化と生体影響 大坂利文 * * 東京女子医科大学医学部微生物学免疫学教室 Biological Effects of Antibiotic-induced Alterations in Gut Microbiota Toshifumi OSAKA * * Department of Microbiology and Immunology, Tokyo Women's Medical University 要旨 Alexander Fleming がペニシリンを発見して以降, 微生物が産生するほかの微生物の生育を阻害する物質 抗生物質 の発見と改良の歴史が積み重ねられてきた. 現在までに, コッホの 4 原則にしたがって発見されてきた多くの病原性細菌に対して感受性を示す抗生物質が見出され, 抗生物質はヒトや動物の生命を脅かす感染症の治療に不可欠なものとなっている. 一方, 近年増加の一途を辿っているアレルギー性疾患, 炎症性腸疾患, 自己免疫性疾患, 非感染性疾患 ( がん 循環器疾患 糖尿病 慢性呼吸器疾患 ) などの慢性炎症疾患の発症予防および根治が医学の大きな課題となってきた. このようななか, 腸内細菌叢が生体機能調節因子として非常に重要な役割を担うことや, 多くの難治性疾患の動物モデルやヒト患者において腸内細菌叢のバランス異常 (dysbiosis) が起こっていることが報告されている. 本稿では, 抗生物質の投与によって病態の改善あるいは増悪化が報告されている dysbiosis 関連疾患についての最新の知見を概説する. Abstract A variety of antibiotics have been developed and their activities improved since the discovery of penicillin by Alexander Fleming. At present, antibiotic drugs are the most important drugs for the treatment of many infectious diseases caused by pathogenic bacteria fulfilling Koch s postulates. Current major challenges in medicine are to establish preventive and treatment strategies for chronic inflammatory diseases such as allergic disease, inflammatory bowel disease, autoimmune disease, and non-communicable diseases including cancer, cardiovascular disease, chronic respiratory diseases, diabetes. Recent advances in gut microbiota research have led to numerous discoveries showing that gut commensal bacteria play essential roles in the development and regulation of the host immune system. There is accumulating evidence that the imbalance of compositions or functions of gut microbiota (termed as dysbiosis) is associated with the pathogenesis of chronic inflammatory diseases. This review summarizes the pros and cons of antibiotic treatments altering gut microbiota in dysbiosis-associated diseases. Key words : antibiotics;dysbiosis;inflammatory bowel disease;non-communicable disease はじめに 次世代シーケンサーの普及により, 口腔, 腸管, 皮 膚, 鼻腔などに定着するヒト常在細菌叢の全体像が明らかになりつつある. また, 難治性の慢性炎症疾患の多くで dysbiosis の報告が相次いでいるが, 腸内細菌の多くは難培養性細菌であるため, コッホの 4 原則に基づいて病原性細菌を特定することは困難である. 一方, 自己免 2018 年 3 月 16 日受付 2018 年 4 月 10 日受理 * 162-8666 東京都新宿区河田町 8-1 中央校舎 7F 8-1-7F, Kawadacho, Shinjuku-ku, Tokyo 162-8666, Japan 疫性関節炎や肥満など非感染性疾患の腸内細菌叢 ( 糞便 ) を感受性のある動物に移植することで, 糞便ドナーと類似した病態を誘導できることなどが報告され, 腸内細菌叢が重要な疾患発症因子となることが示唆されている. 本稿では, 抗生物質の投与によって病態が改善あるいは増悪化する dysbiosis 関連疾患についての知見を概説する. 腸疾患炎症性腸疾患 (Inflammatory bowel disease, IBD) と総称されるクローン病 (Crohn's disease, CD) や潰瘍性大腸炎 (ulcerative colitis, UC), 大腸がんなどの
126 腸内細菌学雑誌 32 巻 3 号 2018 腸疾患においては, 腸内細菌が病態形成に関与することが明らかになりつつある. 多因子疾患である IBD の病態機序の全貌は未解明であるが, 遺伝素因と環境因子の相互関係によって異常な免疫応答の活性化が誘導されていると考えられている.2012 年, 大規模な IBD 患者のゲノムワイド関連解析により, 合計 163 個にも及ぶ IBD 感受性遺伝子が報告された (1).IBD 感受性遺伝子の多くは細菌認識 免疫システム 粘膜構造に関わるものであり, 宿主と微生物の相互作用が IBD の病態形成に深く関わっていることを示唆している. また,IBD 研究の発展に貢献してきた腸炎を自然発症する免疫関連遺伝子欠損マウスは, 無菌環境下では腸炎が発症しないことから, 腸内細菌が腸炎の病態形成に関与すると考えられてきた (2). CD の病態は牛や羊などに発生する家畜伝染病であるヨーネ病 ( パラ結核 ) と類似点が多いことから, Mycobacterium avium subspecies paratuberculosis が CD 原因菌の 1 つとして考えられてきた (3, 4). また,adhesive-invasive E. coli,yersinia enterocolitica,listeria monocytogenes なども CD 原因菌として疑われている (5, 6). これら CD 原因菌が病態形成機序にどのように関与するかは不明のままであるが, 抗生物質による CD の病態制御が試みられてきた. 結核やハンセン病などの治療薬として使用されてきたクロファミジン, エタンブトール, リファンピシンなどの Mycobacterium 属細菌が感受性を示す抗生物質は, ステロイド剤と併用した場合において,CD 患者の寛解誘導に有効であることが報告されている (7). 広域スペクトルを有する非吸収性抗生物質であるリファキシミンは, 活動期 CD 患者に対する寛解の導入および維持に有効であることが報告されている (8 10). また, グラム陰性細菌や嫌気性細菌などに抗菌スペクトルを有するメトロニダゾールとシプロフロキサシンの混合投与は, CD の膿瘍や瘻孔といった化膿性合併症の治療や予防に有効であるという (11). 一方で, 抗生物質の使用が CD の発症リスクの増加と関連することも示唆されている (12, 13). UC 患者に対する治療方法としても抗生物質の有効性が報告されている. 急性の UC 患者に対して, ステロイド剤に加えて, トブラマイシンを経口投与することで寛解誘導率が増加することが報告されている (14). また, ステロイド抵抗性症例に対して, リファキシミンによる治療効果が報告されている (15). 一方,UC 患者の大腸粘膜の病変部に Fusobacterium varium が多く検出されることや,F. varium がマウスに UC 様の潰瘍を形成することが明らかとされ,UC の病態形成における F. variumの関与が示唆された (16, 17). そして, 腸内のF. varium の除菌を可能とするアモキシリン, テトラサイクリン, メトロニダゾールの 3 剤を投与する ATM 療法は,UC 患者に対する有効な治療法となることが報告されている (18, 19). さらに,ATM 療法で使用していたテトラサイクリンをホスホマイシンに変更した AFM 療法によって,UC 患者の腸内細菌叢を一度リセットした後に, 便微生物移植を実施することで,UC の治療効果が高まることが報告された (20). 健常者と IBD 患者の腸内細菌叢の比較研究は実施されてきたが, その多くが制御性 T 細胞 (regulatory T cell, Treg) の分化と関連する Clostridiales 目の減少と Proteobacteria の増加を特徴とする腸内細菌叢のバランス異常 (dysbiosis) を報告している (21, 22). Proteobacteria に属するEnterobaceteriaceae 科は, 腸管炎症の惹起に関連することが考えられる. 最近, Klebsiella pneumoniae が腸管に定着することで, 腸管粘膜固有層における Th1 細胞の増加を促し, 腸炎の病態を増悪化させることが報告された (23). また,K. pneumoniae や Proteus. mirabilis などが産生するウレアーゼによって, 腸内において窒素源として資化できるアンモニア量が増加することで,Proteobacteria の過剰増殖と Clostridiales 目の減少が誘引されることも報告された (24).IBD 患者の腸内における Proteobacteria (Esherichia 属,Klebsiella 属,Proteus 属など ) の増加する要因として, 炎症腸上皮から産生される一酸化窒素 NO が管腔内で硝酸イオンへと変換され, 硝酸呼吸で増殖する通性嫌気性細菌が優勢となることが考えられている (25). なお, タングステン酸塩の経口投与によって,Enterobacteriaceae 科などのモリブンデン補因子に依存的な硝酸還元酵素による呼吸を選択的に阻害することで, 腸炎誘導時の Proteobacteria の増殖の抑制および炎症の緩和が可能であることが報告された (26). 大腸がんの発症と強い関連性が示唆されてきた腸内細菌としては,Bacteroides fragilis,enterococcus faecalis,escherichia coli,fusobacterium nucleatum, Streptococcus gallolyticus などが挙げられる (27, 28). また, 次世代シーケンサーを活用したメタ 16S 解析によって, 大腸がん患者に特有の粘膜関連細菌叢の特徴も報告されている (29). 上部結腸がん患者の粘膜組織にはPrevotella 属やCoprococcus 属などを含む Prevotella cluster と称される細菌群が検出される. 一方, 下部結腸 直腸がん患者の粘膜組織には Fusobacterium 属, Porphyromonas 属,Anaerococcus 属,Parvimonas 属,Granulicatella 属などを含む Pathogen cluster と称される細菌群の定着が明らかとなった. Prevotella
大坂利文 : 抗生物質による腸内細菌叢の変化と生体影響 127 cluster と Pathogen cluster の細菌群は, がんや炎症の進行 重症化に関わる遺伝子 (CXCL1,STAT3, IL-17a,IL-23,IL-8 など ) の発現量の増強と強く相関することも報告されており, 腸内細菌叢を標的とした治療により, 大腸がんの予防や病態進展の抑制などが期待される. 近年, 腫瘍免疫系を誘導する免疫チェックポイント阻害薬は, 日本においても悪性黒色腫, 非小細胞肺癌, ホジキンリンパ腫, 腎細胞癌に適応され, 今後も適応疾患が拡大していくと考えられる. しかしながら, 免疫チェックポイント阻害薬による治療が奏功しない患者が一定数存在する. このようななか, 免疫チェックポイント阻害薬 ( 抗 PD-1 抗体, 抗 CTLA-4 抗体 ) による抗腫瘍効果を得るためには,Bifidobacterium 属や Bacteroidales 目などの細菌が腸内に定着することが重要であることがマウスモデルを用いた研究から示唆されている (30, 31). また, 抗生物質投与中のがん患者では, 抗 PD-1 抗体療法が奏功せず生存率が低いことも報告されている (32). さらに, 一部の腸内細菌 (Akkermansia muciniphila,enterococcus hirae, Faecalibacterium prausnitzii,ruminococcaceae 科の未培養細菌など ) が抗 PD-1 抗体治療の奏功の鍵を握っている可能性が報告されている (32, 33). 一方, 大腸がんとの関連性が強い F. nucleatum は,TLR4 シグナル伝達を介してオートファジーを活性化することで抗癌剤耐性を誘導することが報告されている (34). さらに,Fusobacterium 属が固着しているヒト原発結腸癌組織の移植によって作製した患者由来異種移植片マウスモデルにメトロニダゾールを投与すると, 腫瘍組織内の Fusobacterium 属の減少および腫瘍サイズの縮小化が確認され, 抗生物質投与の有効性が示唆されている (35). 以上のことから, 抗生物質などによって腸内細菌叢を制御することで, 免疫チェックポイント阻害剤を介した腫瘍免疫応答や抗癌剤に対する感受性が増強し, 大腸がんを含めたさまざまながん治療の成績向上が期待される. 生活習慣病近年, 腸内細菌叢が肥満や生活習慣病の病態形成に関与することに衆目が集まっている. 無菌マウスと通常マウスの体脂肪や基礎代謝量を比較すると, 無菌マウスの方が顕著に低いことが報告されている (36). さらに,8-10 週齢の無菌マウスにマウス盲腸細菌叢を移植すると, 移植 2 週間後には, 体脂肪および基礎代謝量が増加するだけでなく, 耐糖能の低下やインスリン抵抗性が現われることも報告されている (36). また, 無菌マ ウスは高脂肪食を用いた食餌誘導性肥満 (Diet-induced obesity, DIO) に対する耐性を示すことも報告されている (37). 一方, 無菌マウスに腸内細菌が定着すると, 腸上皮細胞の fasting-induced adipose factor の発現量低下にともなう Lipoprotein lipase の活性化を介して血中からの脂肪酸の取込みが亢進したり, 生体内の燃料計と称される AMP-activated protein kinase の活性低下によって肝臓などにおける脂質合成が亢進することで, 体重や内臓脂肪量が増加することが明らかとされた (36, 37). さらに, 肥満個体の腸内においては, Bacteroidetes 門の細菌が減少し,Firmicutes 門の細菌が増加することによって, 食事成分からのカロリー回収率が高まり, 体重増加および体脂肪の蓄積を招くことも明らかとなっている (38, 39). 興味深いことに, 肥満やメタボリック症候群を発症するヒトやマウスの腸内細菌叢を無菌マウスに移植すると, 糞便ドナーの表現型 ( 肥満, メタボリック症候群 ) を呈するという研究成果が多数報告されている (39 41). また, 肥満型の腸内細菌叢は, 血中の酢酸レベルを増加させることで副交感神経系を活性化し, インスリンやグレリンの分泌を促進させることが報告された (42). 一方, 腸内細菌のバランス異常は, 腸管バリア機能を障害し, 炎症性サイトカインレベルの増加, 代謝性エンドトキシン血症 ( グラム陰性細菌由来の LPS を主体とするエンドトキシンの血中レベルの増加 ) やバクテリアトランスロケーション頻度の増加などを要因とした全身性の軽度慢性炎症が誘発され,2 型糖尿病 ( 血糖制御不良, 血管障害など ) や非アルコール性脂肪肝疾患 ( 肝炎, 肝硬変, 肝癌など ) といったさまざまな生活習慣病の病態形成に関わると考えられている (43, 44). つまり, 腸内細菌叢のバランス異常は, 腸管局所だけでなく全身の生体機能にさまざまな影響を与え, 生活習慣病の素地を作る要因となっている. 現在までに, 抗生物質によって腸内細菌叢を是正することで, 生活習慣病の病態を制御できる可能性が示唆されている. 広域スペクトル抗生物質 ( アンピシリンとネオマイシンの混合投与 ) を経口投与した DIO モデルマウスや遺伝性肥満マウス (ob/ob マウス ) では, 高脂肪食の給餌にともなう腸管バリア機能の障害や代謝性エンドトキシン血症が抑制され, 脂肪組織における炎症応答 ( サイトカイン産生, 酸化ストレス, 細胞浸潤 ), 耐糖能異常, インスリン抵抗性, 肥満が軽減することが報告されている (45).30% フルクトース含有水で飼育したマウスは, メタボリックシンドロームを誘導できるが, ポリミキシン B とネオマイシンを同時に経口投与することで, 代謝性エンドトキシン血症および肝臓の
128 腸内細菌学雑誌 32 巻 3 号 2018 脂肪蓄積や炎症応答を著しく抑制できることが報告されている (46). また, バンコマイシンとポリミキシン B を経口投与したマウスでは, デオキシコール酸やリトコール酸などの2 次胆汁酸産生者である Clostridium cluster XI / XIVa や Bacteroides 属の細菌が減少し, 血糖値および血中中性脂肪値が低下することが報告された (47). 抗生物質ではないが, 抗酸化剤として知られているテンポールは, 腸内細菌叢の構成に影響を与え, 肥満や非アルコール性脂肪性肝炎 (non-alcoholic fatty liver disease, NAFLD) の発症を抑制することが報告されている (48, 49). テンポールを投与されたマウス腸内では, 胆汁酸の脱抱合活性を有する Lactobacillus 属や Clostridium 属が減少し, 一次胆汁酸であるタウリン抱合 b ミュリコール酸 (tauro-b-muricholic acid, TbMCA) が腸内に蓄積する. 腸内に蓄積した TbMCA は, 核内受容体 Farnesoid X receptor(fxr) のアンタゴニストとして作用し, 腸管 FXR シグナル伝達が抑制されることで, 生活習慣病の病態形成に関連する脂肪毒性が高いセラミドの産生量が減少し, 食事誘導性肥満や NAFLD の病態形成が緩和されるという. 一方で, オベチコール酸やフェクサラミンといった FXR アゴニスト剤は,FXR シグナル伝達の活性化を介してインスリン レプチンの産生抑制 抗炎症作用 白色脂肪組織の褐色化などの生理応答を誘導できることから, 生活習慣病 ( 肥満,2 型糖尿病,NAFLD, 動脈硬化など ) の治療薬として期待されている (50, 51). 生活習慣病は長期間の治療が必要な疾患であることから, 多様な生理活性と関連する FXR シグナル伝達の持続的な活性化あるいは阻害が生体に与える影響についても注意深い検証が必要である. また, 肝硬変患者に対する抗生物質 ( ノルフキサシンとネオマイシンの混合投与 ) が肝機能の改善や小腸内細菌異常増殖症の抑制に有効であることも報告されている (52). 近年, 肝硬変の合併症の 1 つである肝性脳症に抗生物質を用いた治療が注目されている (53, 54). 肝性脳症は, 肝硬変によりアンモニアの解毒能が低下し, 腸内細菌が産生したアンモニアは門脈 - 大循環短絡路を介して体内循環することで脳症を惹起すると考えられている. そこで, 非吸収性の広域スペクトル抗生物質であるリファキシミンによって, 腸内のアンモニア産生細菌を減少させ, 高アンモニア血症を改善することで肝性脳症の治療効果を向上させることが報告されている. 一方, 低容量の抗生物質投与は肥満を誘発する因子でもある (55).1950 年頃から, 畜産業においては, 家畜 ( 牛, 鶏, 豚など ) の体重増加を目的として, テトラサイクリンやペニシリンなどの抗生物質が飼料添加物とし て大量に使用されてきた. 最近, 生後早期 ( 出生後 2 年まで ) の抗生物質の投与が小児の肥満リスクを増加させるというコホート研究成果が報告された (56). 小児の肥満は, 成人期の生活習慣病リスクの増加と関連することが知られている (57). このようななか, 乳幼児期に低容量の抗生物質 ( ペニシリン, バンコマイシン, クロルテトラサイクリンなど ) を投与したマウスでは, 肝臓の中性脂肪合成の活性化, 内臓脂肪量の増加, 高血糖症, インスリン抵抗性, レプチン抵抗性, 摂食抑制ペプチドの産生抑制などの 2 型糖尿病や NAFLD に類似した病態を呈することが報告された (58 60). さらに, 生後直後から離乳まで期間における低容量のペニシリン曝露は, 生涯にわたって宿主のエネルギー代謝制御系に影響を与えることも報告されている (59). 乳幼児期における腸内細菌と宿主間の相互作用は, 宿主の生体機能制御に関わるエピゲノムに影響を与え, 個体の体質を決定している可能性が示唆されている. アレルギー性疾患アレルギー性疾患の罹患者数は, いわゆる先進国において顕著に増加している. また, 多くのヒトが小児期にアレルギーを発症し, 成長によって発症するアレルギー疾患が変遷していく傾向にある (61).1989 年, イギリスの Strachan によって, アレルギーの発症は, 衛生環境の改善や少子化による乳幼児期の感染症リスクの低下と関連する という衛生仮説が提唱された (62). また, 母乳の授乳期間が長い子供は, 乳児期のアレルギー性疾患の発症リスクが低いだけでなく, 学童期のアレルギー発症も抑制されることが報告された (63). 母乳は分泌型 IgA 抗体や抗菌エフェクターを含むだけでなく, ビフィズス菌の増殖を促すことによって, 腸内細菌叢の正常化に寄与している. このような背景から, 細菌 - 宿主間の相互作用を機軸としたアレルギー性疾患の研究成果が多数報告されてきた. 樹状細胞やマクロファージなどの自然免疫細胞は, Toll-like receptors(tlrs) などの受容体によって微生物成分を感知することで活性化し, 獲得免疫応答の誘導や病原微生物に対する感染防御に大きく貢献している. とくに, グラム陰性細菌由来のエンドトキシンの中でも強い生物活性を示す LPS を認識する TLR4 シグナル伝達の活性化は,IL-12 や IFN- g などの Th1 系サイトカインの産生が亢進し, 生体内 Th1/Th2 バランスの Th1 偏向を促すと考えられてきた. 実際,TLR4 欠損 ( 変異 ) マウスでは, ピーナッツアレルゲンに対する食物アレルギー感受性の増加や病態の増悪化することが報告されている (64). しかし, 卵白アルブミン (OVA) を用いた
大坂利文 : 抗生物質による腸内細菌叢の変化と生体影響 129 アレルギー性喘息が,TLR4 変異マウス (C3H/HeJ) では増悪化しないことも報告されている (65). つまり, 感染症やエンドトキシンの暴露頻度によって, アレルギー性疾患の増加を説明することが難しいことを示唆している.TLRs などの宿主の微生物認識受容体のリガンドは病原微生物に特異的な分子ではなく, 常在微生物も保有する分子である. 日常的に腸内細菌に曝露されている腸管粘膜においては, 常在細菌と宿主の相互作用が生体のホメオスタシス制御に不可欠である (66). また, TLR アゴニストの投与が食物アレルギーや喘息などのアレルギー応答の発症を抑制することも報告されている (64, 67). 抗生物質は感染症の治療や予防に大きく貢献してきたが, 腸内細菌叢に対しても大きな影響を与える. そのため, 抗生物質による腸内細菌叢の撹乱はアレルギー性疾患の発症との関連性が示唆されている. 例えば, 離乳前の仔マウスにカナマイシンを投与すると,Th1/Th2 バランスの Th2 免疫系に偏向し, 血中の IgG1 抗体や IgE 抗体の総量が増加することが報告されている (68). また, アレルゲン投与の 1~3 週間前から抗生物質カクテル ( カナマイシン, ゲンタマイシン, コリスチン, メトロニダゾール, バンコマイシン ) を投与したマウスでは, アレルゲン特異的 IgE 抗体の増加と腸管腔中のアレルゲン特異的 IgA 抗体が激減し, 食物アレルギーが強く誘導されるという (64). 無菌マウスは高い IgE 抗体の産生能およびアレルギー感受性が高いが, 離乳前に腸内細菌叢を定着させることで IgE 抗体レベルは正常化することから, 乳幼児期の腸内細菌叢の発達とアレルギー素因の獲得に関連性があることが示唆されている (69). 現在までに, 生後早期の抗生物質投与による腸内細菌叢の撹乱とアレルギー性疾患に関する科学的エビデンスは確立されつつある. また, 生後早期の腸内細菌叢がアレルギー性喘息の感受性に大きな影響を与えることが報告されている (70). バンコマイシンによって生後早期の腸内細菌叢を撹乱したマウスに OVA による気道炎症を誘発すると, 気管支肺胞洗浄液中の炎症細胞総数の増加,OVA 特異的 IgE 抗体レベルの増加, メサコリン誘導性の気道抵抗値の過敏性上昇, 気道上皮細胞のムチン産生の亢進を呈し, 喘息症状の増悪化が確認された. 一方, ストレプトマイシン投与したマウスでは喘息症状の増悪化は認められなかった. なお,7 週齢マウスにバンコマイシンを投与しても,OVA 誘導性の喘息症状の増悪化は確認されないという. 生後早期に投与された抗生物質の違いがアレルギー性喘息の感受性に与える要因として, 腸内細菌叢の構成および腸管 Treg の存在量が考えられる. ストレプトマイシン は, マウス腸内細菌叢の構成や多様性に与える影響が少なかったのに対して, バンコマイシンは腸内細菌の多様性を著しく低下させた. バンコマイシンの投与は, Bacteroidales 目,Clostridiales 目,Lachnospiraceae 科,Ruminococcaceae 科などの細菌群をほぼ消失させ, 腸管 Treg も著しく減少した. バンコマイシンに感受性を示すグラム陽性細菌 (Clostridiales 目, Lachnospiraceae 科,Ruminococcaceae 科 ) は, 酪酸の産生を介して腸管 Treg の分化誘導に関与している (71). また, バンコマイシン投与によって消失した Bacteoroides 属の細胞壁成分 (polysaccharide A) も, TLR2 依存的に Treg の分化を誘導することが報告されている (72). Bacteroides 属が優勢となった糞便を移植したマウスでは, 牛乳アレルギーの発症が抑制されることも報告されている (73). 近年, ヒトを対象としたコホート研究においても, 抗生物質による腸内細菌叢の撹乱とアレルギー性疾患との関連性を示す疫学的エビデンスが集積している. フィンランドやデンマークで行われた調査研究では, 妊娠前後に抗生物質投与履歴のある母親から生まれた子供や乳幼児期に抗生物質の投与履歴がある子供は, 喘息を発症するリスクが高いことを報告している (74, 75). とくに, 小児喘息の発症はペニシリン, マクロライド系, セファロスポリン,ST 合剤の投与履歴 期間と強い関連性が見出されている (74). とくに, 生後 3 か月頃までの抗生物質による腸内細菌叢のバランス異常は, アトピー性皮膚炎, 食物アレルギー, 喘息の発症に関与していることが示唆されている (76 79).Azad らによると, カナダに生まれた子供の生後 3 か月時の Bacteroideaceae 科に対する Enterobacteriaceae 科の相対比 (E/B 比 ) は, 1 歳時の食物アレルギーリスクの指標となると提案している (77). アトピー性皮膚炎を発症した子供においても,Enterobacteriaceae 科の過剰増殖が報告されている (80 82). また, アトピー性皮膚炎や食物アレルギーを発症した子供においても,Bacteroides 属の定着性の低さが報告されている (83, 84). 以上のことから, 生後早期に定着する腸内細菌と宿主の相互作用は, アレルギー素因に関わる宿主免疫系のエピゲノムに影響を与えている可能性が考えられる. 一方, 乳幼児期以外の抗生物質投与によっても, アレルギー性気道炎症を増悪化させることが知られている. 抗生物質に腸内細菌叢のバランス異常によって, 腸内において真菌が過剰増殖する (85 88). 近年, 腸内の常在性 Candida 属の真菌の過剰増殖がアレルギー性気道炎症を増悪化させるメカニズムが解明された (89). 抗生物質によってBacteroides 属,Clostridium 属,
130 腸内細菌学雑誌 32 巻 3 号 2018 Lactobacillus 属といった腸内常在細菌が減少すると, Candida 属が過剰増殖する. 腸内で Candida 属真菌はアラキドン酸をプロスタグランジン E2(PGE2) に変換する. 血中の PGE2 レベルの増加によって, 肺胞マクロファージの組成が M2 型マクロファージに偏向することで, アレルギー性気道炎症が増悪化していく. 近年, 腸内環境の変化がアレルギー性喘息などの呼吸器疾患の病態形成に関連する現象 (Gut-lung axis) に注目が集まっている. また, 腸内細菌が産生する代謝産物もアレルギー性疾患の病態形成に関与する. 大腸内における主要な発酵産物である酢酸は, 短鎖脂肪酸の受容体 GPR43 を介して炎症応答の抑制的制御に関与することが報告されている (90).GPR43 欠損マウスに OVA によって気道炎症を誘導すると,BALF 中の顆粒球を中心とした炎症細胞が顕著に増加する. なお,GPR43 欠損マウスの顆粒球は, 活性酸素種やミエロペルオキシダーゼの産生能が高い. さらに,GPR43 欠損マウス由来の好中球は, 補体 C5a 受容体やケモカイン受容体 CXCR2 を高発現し, 補体 C5a や細菌由来のペプチド (N-Formyl-Met-Leu-Phe: FMLP) に対する遊走能が増強している. また, アレルギー性疾患児の糞便中には多く含まれている 12, 13- ジヒドロキシ -9Z- オクタデセン酸 (12, 13-diHOME) は, IL-4 産生性 CD4 + T 細胞の分化促進と Treg の分化抑制という生理活性を有することが報告された (78). 新生児期の腸内細菌叢 dysbiosis に起因する代謝産物が, CD4 + T 細胞の分化に影響を与え, アレルギー性疾患の病態形成に関与している可能性がある. 型糖尿病 1 型糖尿病 (Type 1 diabetes, T1D) は, 膵 β 細胞の破壊にともなう低インスリン血症を招く自己免疫疾患である.T1D は先進国での発症が多いが, その発症が低年齢化している (91). また, 世界中で T1D 患者数は年々 3-5% 増加している (92 94).T1D を自然発症する NOD(non-obese diabetic) マウスを用いた研究から,T1D の病態形成における腸内細菌や細菌成分の関与が明らかとなってきた.1990 年代には,NOD マウスの T1D 発症は, 結核菌成分である完全フロイントアジュバンドによって抑制できることが報告されている (95, 96). また,TLR シグナル伝達系のアダプタータンパク質である MyD88 を欠損した NOD マウス (MyD88 -/- NOD マウス ) は,T1D の発症が完全に抑制されることが報告された (97). 一方, 広域スペクトラム抗生物質 ( サルファトリム ) の投与あるいは無菌環境で飼育された NOD マウスは,MyD88 の有無に かかわらず,T1D を強く発症する. そして,Specific pathogen free(spf) 環境で MyD88 -/- NOD マウスと共飼育した場合,NOD マウスの T1D の発症が抑制されることも報告された. なお,MyD88 -/- NOD マウスの腸内細菌叢は,Lactobacillaceae 科,Porphyromonadaceae 科,Rikenellaceae 科の増加を特徴とする. またほかの研究グループより,Diabetes resistant-bb(dr-bb) ラットから分離された Lactobacillus johnsonii N6.2 株が,T1D モデル diabetes-prone BioBreeding(DP-BB) ラットの T1D の発症を抑制することが報告されている (98). これらの結果から,NOD マウスの T1D 発症には TLR-MyD88 シグナル伝達を介した自然免疫の活性化が関与するが, 特定の腸内細菌が T1D の素因を抑制的に制御できる可能性が示唆される. NOD マウスの T1D 発症は, マウスのブリーダーや飼育環境によって変わることが知られている (99). また, 腸管の Th17 細胞を分化誘導する Segmented filamentous bacteria(sfb) の定着性の有無が NOD マウスの T1D の発症に関与することが明らかとなっている (100).SFB が定着していない雌 NOD マウスは, 生後 30 週までに 91% が T1D を発症するのに対して,SFB が定着している雌 NOD マウスの T1D 発症率 (16%) は劇的に低下する. ただし,SFB を保菌している NOD マウスにおいても膵島炎は確認される. つまり, SFB は T1D の病態進展を抑制する役割を担っていると考えられる. また, 抗糖尿病活性を有する L. johnsonii N6.2 株も Th17 細胞の分化を促進し,NOD マウスの T1D の発症を抑制することが報告されている (101). 一方で,SFB が分化誘導する Th17 細胞は,Treg 細胞の抑制や Th1 細胞による細胞性免疫の活性化を介して, T1D の病態形成に関与している (102). このようななか,SFB が感受性を示す抗生物質であるバンコマイシンを出生後から長期投与された NOD マウスでは,Th17 細胞の分化誘導は抑制されるにもかかわらず,T1D を発症しやすくなることが報告された (103).T1D の発症に関わる自己免疫応答は,Th1/Th17 系の免疫応答だけでなく, ヘルパー T 細胞の表現型可塑性や IL-21 を産生する濾胞性ヘルパー T 細胞なども関与していることから,Th17 などの特定の免疫系を抑制するアプローチでは T1D の発症を制御することが困難であることを示唆している (104). 乳幼児期の抗生物質投与と T1D の関連性が示唆されてきた. しかしながら, デンマークで行われたコホート研究では, 乳幼児期の抗生物質投与と T1D の関連性が否定されている (105). 一方,T1D の発症に関わるヒト腸内細菌の探索が行われてきた. フィンランドで生
大坂利文 : 抗生物質による腸内細菌叢の変化と生体影響 131 まれた子供を対象に,HLA-DQ の遺伝子型から抽出した T1D 発症ハイリスク児と対照群の生後約 2 年間の腸内細菌叢の発達について報告された (106).T1D 発症児の腸内細菌叢の特徴としては, 細菌多様性が低いこと, 特定の Bacteroides 属細菌 (Bacteroides sp. CJ78, B. ovatus, B. thetaiotaomicron, B. uniformis など ) の存在比が高いこと,Clostridium cluster IV(human intestinal firmicute CO19) の存在比が低いことが報告されている. また, 自己免疫性疾患の発症率の高い国 ( エストニア, フィンランド ) と低い国 ( ロシア ) に生まれた子供の腸内細菌叢の比較解析によって, 生後 1 年間のグラム陰性細菌の構成の違いが免疫系の発達に影響している可能性が報告された (107). 通常分娩で出生した新生児の腸内には,E. coli などの好気性細菌が定着し, 腸内の嫌気度の増加にともなって嫌気性細菌を優勢とする腸内細菌叢へと推移していく. 生後 3 か月 ~ 12 か月の乳児腸内細菌叢の特徴として, エストニアやフィンランドの子供では Bacteroides 属細菌の存在比が高いことが見出された.Bacteroides 属細菌は E. coli と同様に LPS を保有するグラム陰性細菌である. Bacteroides 属由来の LPS は, 生物活性が非常に低いだけでなく,TLR4 アンタゴニストとして作用する. この Bacteroides 属由来の LPS が宿主免疫系の発達 制御を妨げ, エンドトキシン耐性を減弱させるという. 実際, T1D 発症前の NOD マウスに対して,E. coli あるいは B. dorei の LPS を反復投与 ( 週 1 回,4 回 ) すると,B. dorei 由来の LPS 投与群では T1D の発症率や脾細胞のエンドトキシン応答性が増加する. つまり, 生後 3 ~ 12 か月の乳児腸内細菌叢において Bacteroides 属の存在比が高い場合, エンドトキシンに対する生体応答が増強し, 自己免疫性疾患の病態形成に寄与する可能性を示唆している. 自己免疫性関節炎自己免疫性関節炎の病態解明は, 関節炎感受性動物に 2 型コラーゲンを免疫することで炎症が惹起するコラーゲン誘発性関節炎モデル (collagen-induced athritis, CIA) や, 関節炎を自然発症するモデル動物を用いて行われてきた (108). これら自己免疫性関節炎モデルにおいては,IL-17 を産生する Th17 細胞が関節炎の病態形成に大きく関与することが明らかとなっている (109). また,Segmented filamentous bacteria(sfb) が接着した腸上皮細胞が産生する血清アミロイド A によって, 粘膜固有層中の樹状細胞による IL-6 や IL-23 の産生が亢進することで, 腸管粘膜固有層中の Th17 細胞が分化誘導していることが明らかとなっている (110).SFB は Clostridium 属に近縁な Candidatus Arthromitus と分類されるグラム陽性細菌であり, バンコマイシンに対して感受性を示す. 自己免疫性関節炎モデル K/BxN マウスにバンコマイシンを投与した場合, 腸管の Th17 細胞の誘導抑制および関節炎の発症が大幅に軽減することが報告された (111). つまり, モデル動物を用いた研究からは,Th17 免疫系の偏向を誘発する細菌の定着を抑制することで, 自己免疫性関節炎の発症や病態の進展を抑制できる可能性が考えられる. 自己免疫性関節炎である関節リウマチ (Rheumatoid arthritis, RA) 患者や脊髄関節炎 (Spondyloarthritis, SpA) 患者における常在細菌叢のバランス異常が多数報告されている (112). 関節リウマチ患者は, 歯周病を併発していることが多く, 口腔病原体が関節リウマチの病態形成に関与する可能性が考えられてきた (113). 例えば, 歯周病の代表的な病原菌である Porphyromonas gingivalis はタンパク質をシトルリン化する酵素 Peptidyl-arginine-deiminases によって自己抗体の産生能を増強することで, 関節リウマチの発症に関与する可能性が示唆されている (114). さらに, 耐酸性である Porphyromonas gingivalis を関節炎モデルマウスに経口投与すると, 下部消化管内の細菌叢のバランスが変化し, 腸管免疫系が Th17 免疫系に偏向することで, 関節リウマチの病態が増悪化することが報告された (115). 近年, 新規発症 RA 患者の腸内細菌叢の特徴の1つである Prevotella copri の顕在化が注目されている (116, 117). P. copri の存在比が高い RA 患者の糞便懸濁液を無菌状態の SKG マウス (Th17 細胞依存性の関節炎を発症 ) に投与すると, マウス腸内の Th17 細胞の分化誘導および重篤な関節炎を発症することから,P. copri が自己免疫性関節炎の発症に密接に関与することが明らかとされた (116). 一方, ヒト糞便より分離された P. histicola(p. copri ゲノム DNA との相同性は約 69%) は,CIA モデルマウスの腸内では Th17 細胞の分化誘導および関節炎の発症を抑制することが報告された (118). つまり,Prevotella 属は自己免疫性関節炎の発症と抑制に関わる細菌が混在する興味深い細菌群である. 上記以外にも,RA 患者の腸内細菌叢の特徴として,Bacteroides 属や Bifidobacterium 属の減少,Collinesella 属,Esherichia 属,Eggerthella 属,Faecalibacterium 属,Mycoplasma 属,Proteus 属の増加などが報告されている (112). また,SpA の代表疾患の 1 つである強直性脊椎炎 (ankylosing spondylitis, AS) 患者は腸管炎症を合併することが多く, 腸管炎症と AS の病態形成の関連性が示唆されている (119).AS 患者と健常者の回腸末端部部の細菌叢の比
132 腸内細菌学雑誌 32 巻 3 号 2018 較解析も行われており,AS 患者では Lachnospiraceae 科,Ruminococcaceae 科,Rikenellaceae 科, Porphyromonadaceae 科,Bacteroidaceae 科の細菌の存在比が高く,Veillonellaceae 科と Prevotellaceae 科の細菌が減少する傾向であることが報告されている (120). 今後, 難治性の自己免疫性関節炎においては, Th17 細胞の誘導に関連する口腔や腸内の常在細菌を標的とした治療法の開発が期待される. 多発性硬化症日本においても,1970 年代以降, 中枢神経組織に生じる自己免疫性疾患である多発性硬化症 (Multiple sclerosis, MS) の患者数は増加の一途を辿っている. MS の病態形成においても, 腸内細菌叢の変化や腸管粘膜免疫系の Th1/Th17 偏向が関与している可能性が考えられている (121, 122).MS モデル動物としては, ミエリンオリゴデンドロサイト糖蛋白質由来 (Myelin oligodendrocyte glycolipid, MOG) ペプチドを免疫することによって誘導する自己免疫性脳脊髄炎 (Experimental autoimmune encephalomyelitis, EAE) が広く利用されている.MOG ペプチドを免疫したマウスを, 抗生物質 ( カナマイシン, コリスチン, バンコマイシン ) による腸内細菌の除菌あるいは無菌環境下で飼育すると, 中枢神経組織への細胞浸潤および EAE の発症が著しく抑制されることから, 常在細菌が EAE の発症に関与することが示唆された (123, 124). 腸内細菌の非存在下および除菌下においては,EAE の病態形成に関わる Th1 細胞 (IFN- g 産生 CD4 陽性細胞 ) および Th17 細胞 (IL17 産生 CD4 陽性細胞 ) の誘導が抑制されることも報告されている (123, 124). また,Th17 細胞を誘導する SFB のみを定着させたノトバイオートマウスでは,SPF 環境飼育マウスと同様に EAE の病態が増悪化することが報告されている (123). つまり, MS モデル動物を用いた研究からは,Th17 細胞の分化誘導に関与する細菌の定着を制御することで,MS の発症や増悪化を抑制できる可能性が示唆されている. 現在までに, 各国の研究者によって,MS 患者と健常者の腸内細菌叢の比較結果が報告されている.IBD 患者で確認される明確な腸内細菌叢のバランス異常が MS 患者で確認されることはないが, いくつかの細菌群の増減が見出されている.MS 患者では,Clostridium cluster IV/XIVa,Faecalibacterium 属 (F. prausnitzii), Parabacteroides 属 (P. distasonis), Prevotella 属 (P. histicola) などの Treg 誘導に関連する抗炎症細菌の減少が報告されている (125 128). 一方で,MS 患者において増加する細菌は多種多様なものが報告さ れてきたが,EAE の病態を増悪化させる Acinetobacter 属と Akkermansia 属の細菌に対する関心が高まってい る (127, 129). Acinetobacter calcoaceticus は, ヒト 末梢血単核細胞を用いた in vitro 実験やノトバイオートマウス実験において,IFN- g を産生する Th1 細胞の分化を促すことが報告されている (127). 一方,MS 患者の糞便を投与したマウスでは EAE の病態は増悪化するが,Th1/Th17 免疫系の増強というよりも,IL-10 を産生する Treg の誘導が不十分であることが原因とされている (127). また,MS 患者の脳生検試料から Fusobacterium 属が多く検出されたという報告もあるが,Fusobacterium 属の侵入経路や病態形成との関連性などについては明らかとされていない (130). 今後, 新たな MS 治療方法として,Acinetobacter 属や Akkermansia 属や Fusobacterium 属などを標的とした治療や Treg 誘導マイクロバイオータ製剤などの開発が期待される. おわりに 抗生物質は, 感染症の予防や治療だけでなく, 常在細菌叢の dysbiosis をともなう難治性疾患の病態制御や抗癌剤や免疫チェックポイント阻害薬などによる治療効果の改善など, 多様な目的での利用も検討されていくだろう. 一方で, 抗生物質の弊害である多剤耐性細菌の出現の増加によって, 感染症治療の選択肢が狭まっていくことが危惧されている. また, 抗生物質の利用によって誘発される幼少期の腸内細菌叢の発達異常, 腸内細菌叢の再構築異常, 母子間で受け継がれていくヒト常在細菌叢の変化などが, さまざまな難治性疾患の発症リスクの増加と関連することも示唆されている. 近年のマイクロバイオーム研究によって腸内細菌叢のカタログ化が進んできたが, 腸内における各細菌の共生 共存 競合 淘汰といった生態学的特性の理解を深化させていくことで, 合理的に腸内細菌叢の質 量 活性の安定化を制御するための多様なアプローチを考案していく必要があると考えられる. 利益相反 (COI) について 発表内容に関連し, 開示すべき COI 関係にある企業などはない. 引用文献 (1) Jostins L, et al. Host-microbe interactions have shaped the genetic architecture of inflammatory bowel disease. Nature. 2012; 491: 119 124. (2) Wirtz S, et al. Mouse models of inflammatory bowel disease. Adv Drug Deliv Rev. 2007. 59: 1073 1083.
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