不動産オーナーの所得税 Q&A 競売物件のポイントも解説しています 1 不動産賃貸の税務相談 2 青色申告とその特典 3 減価償却が節税のポイント 4 所得控除と節税対策 5 あるマンションオーナーの会計処理 立川税理士法人村野俊輔 190-0023 東京都立川市柴崎町 2-4-9 村野ビル202 042-522-8950
1 不動産賃貸の税務相談 目次いわゆる前家賃はいつ計上するのが正しいのですか? 不動産購入時の節税のポイントを教えて下さい不動産購入時の費用について教えて下さい利息の取扱いについて教えて下さい減価償却について教えて下さいマンションの修繕積立金は必要経費になりますか?
いわゆる前家賃はいつ計上するのが正しいのですか? 不動産賃貸契約は慣習上 家賃の支払日を前月末日とする いわゆる前家賃となっています 不動産所得の総収入金額に計上すべき時期は 支払日が定められている日ですから 翌年の 1 月分の家賃は前年の 12 月までに支払を受けることになりますので 翌年の 1 月分までを計上するのが正しいのです つまり 12 月中に入金された分まではその年の総収入金額とします
不動産購入時の節税のポイントを教えて下さい 1 取得価額になる経費と必要経費になる経費をよく理解する 2 建物と建物附属設備を区分し できるだけ短い耐用年数で償却する鉄骨 鉄筋コンクリートの競売物件でも 見積もって区分すればよい 3 建物附属設備 構築物は定率法を選択する 430 万円未満の少額減価償却資産を 1 年で減価償却する 5 競売物件のような中古資産であれば簡便法を適用して短い耐用年数にする
不動産購入時の費用について教えて下さい 次の費用の取扱いに注意 : 仲介手数料登記手数料固定資産税不動産取得税 必要経費になるのは登記手数料と不動産取得税 取得費になり 必要経費にならないのは仲介手数料と固定資産税 但し競売の場合は固定資産税の精算はありません 競売時の預り敷金は負債として計上します 必要経費にしたり 取得価格から差し引くことはできません
利息の取扱いについて教えて下さい 建築期間中の利息は はじめての不動産投資と既に貸し付けている場合では取扱いが違います 必要経費になる 取得費に加算する すでに不動産を貸し付けている 例えば ワンルームマンションを貸している人が更に 10 室のアパートを購入する場合 サラリーマンが土地を購入しアパートを建てるように 初めての不動産投資をする場合
減価償却について教えて下さい 減価償却は建物と建物附属設備を分けることがポイント 建物附属設備とは電気設備 給排水設備 ガス設備設備の耐用年数は 15 年 建物本体と区別して減価償却すると有利です 詳しくは 3 の 減価償却が節税のポイント で説明します
マンションの修繕積立金は必要経費になりますか? なります 修繕積立金は以下の 4 つの要件を満たしているからです 1 区分所有者は管理組合に支払義務を負っていること 2 管理組合は返還義務を有しないこと 3 管理組合は修繕の他に流用しないこと 4 修繕積立金は長期修繕計画に基づき合理的に計算されていること 通常修繕積立金は上記の 4 つの要件を満たしていますので 余程特別の事情がない限り必要経費になります
2 青色申告とその特典 目次 青色申告はいつまでに提出すれば その年の申告は青色申告になりますか 青色申告控除には 10 万円控除と 65 万円控除があるそうですが 65 万円控除ができる事業の規模を教えて下さい 妻が不動産の管理を手伝っているそうですが 青色申告にすれば給料が必要経費になるのですか? できるケース できないケースを教えて下さい 青色事業者専従者給与としてはどの位が適正ですか? 青色申告者の少額減価償却資産の取扱いについて教えて下さい 6 戸のアパートで 1 台 12 万円のクーラーを 6 台買ったのですが必要経費になりますか?
青色申告はいつまでに提出すれば その年の申告は青色申告になりますか その年の 3 月 15 日までが提出期限となります なお 競売物件で落札して全く新たに不動産投資をする場合は 貸し付けた日から 2 ヶ月までが提出期限となります
青色申告控除には 10 万円控除と 65 万円控除があるそうですが 65 万円控除ができる事業の規模を教えて下さい おおむね 5 棟 10 室が事業的規模といわれ 65 万円控除の対象となります なお駐車場のみの場合は 50 台といわれています 65 万円控除を受けるには複式簿記の経理が要件となります 事業的規模以外の小規模の場合は 10 万円控除となります
妻が不動産の管理を手伝っているそうですが 青色申告にすれば給料が必要経費になるのですか? できるケース できないケースを教えて下さい 事業的規模であれば 青色事業専従者給与に関する届出書 を開始しよるとする年の 3 月 15 日までに提出して 届出書に記載された金額の範囲内であれば 青色事業専従者給与として必要になります 従って アパートの室数が 7 室で事業的規模でないケースや届出書を提出していないケースでは青色事業専従者給与は必要経費になりません
青色事業者専従者給与としてはどの位が適正ですか? 事業の規模によりますが 専ら事業に従事するのですから @900 円 40 時間 4 週間 =144,000 円月額 15 万円は認められると思います なお他に パート収入があると専ら従事したことにならないので 青色事業専従者給与そのものが否認されることもあります 上限額は収入の 20% 位です 平均額は月額 20 万円 年額 240 万円です なお申告した人の不動産所得の金額が専従者給与を上回っているのが普通です なお不動産の所有者が長期の療養中であったり 高齢で介護が必要な場合は 子供が青色事業者になることも多く この場合には財産管理や実質的に後見の役割もあるので 申告した人の不動産所得の金額と同額であっても認められるものと考えます
青色申告者の少額減価償却資産の取扱いについて教えて下さい 6 戸のアパートで 1 台 12 万円のクーラーを 6 台買ったのですが必要経費になりますか? 1 つの取得価額が 30 万円未満であれば 年額 300 万円まで必要経費になります 確定申告書の減価償却費の計算の欄に 1 つずつ記載します 措法 28 の 2 と記入します 青色申告者であれば 12 万円 6=72 万円が減価償却費の一部として必要経費になります
目次 3 減価償却が節税のポイント 減価償却の選択について教えて下さい 建物附属設備にはどういうものがありますか? また 耐用年数を教えて下さい 減価償却の税務上の手続を教えて下さい A アパートの建物附属設備は定額法で減価償却しています 今年 4 月に新しく B アパートを建てたのですが 定率法を選択することはできますか? すでに毎年の申告で建物附属設備を定額法にしていますが 定率法にするにはいつまでにどのような手続をすればいいのですか? 中古のアパートを購入しました 築 10 年の木造アパートですが 耐用年数は何年を適用すればいいですか? 中古アパートを 2,000 万円で購入し リフォーム費用を 1,200 万円支払いました 1,200 万円は修繕費になりますか? また耐用年数はどうやって計算しますか? マンションが 11 月に完成し 入居者募集の広告を出しましたが立地条件が悪いこともあって年末まで入居者がありませんでした このような場合でも 11 月 12 月の減価償却費を計上できますか?
減価償却の選択について教えて下さい 減価償却の方法の選択には定額法と定率法があります 建物附属設備では定額法と定率法ではこんなにも償却費が違います 設備が 5,000,000 円 耐用年数 15 年 平成 26 年 1 月に取得したときの年間の償却費を計算すると 1 年目 2 年目 3 年目 4 年目 5 年目 定額法 335,000 335,000 335,000 335,000 335,000 定率法 835,000 695,555 579,398 482,638 402,038 となります
建物附属設備にはどういうものがありますか? また 耐用年数を教えて下さい 電気設備給排水設備 衛生設備 ガス設備冷暖房設備エレベーター消化報知設備自動ドア 15 年 15 年 13 年 17 年 8 年 12 年
減価償却の税務上の手続を教えて下さい 建物附属設備に有利な定率法を選択する税務上の手続についてです 初めての申告の場合確定申告の際 提出期限の 3 月 15 日までに減価償却の方法の届出書を提出します
A アパートの建物附属設備は定額法で減価償却しています 今年 4 月に新しく B アパートを建てたのですが 定率法を選択することはできますか? はい 建物附属設備はアパート毎に選択できますので 翌年の確定申告の提出期限までに減価償却の方法の届出書に B アパートの 電気設備等定率法 と記入して提出すれば B アパートについては建物附属設備は定率法になります
すでに毎年の申告で建物附属設備を定額法にしていますが 定率法にするにはいつまでにどのような手続をすればいいのですか? 変更しようとする年の 3 月 15 日までに 減価償却資産の償却方法の変更承認申請書 を提出すれば その年から建物附属設備について定率法から定額法に変更することができます
中古のアパートを購入しました 築 10 年の木造アパートですが 耐用年数は何年を適用すればいいですか? 中古の建物の耐用年数を決めるには 見積法と簡便法の 2 つの方法があります 見積法は その事業の用に供した時以後の使用可能年数を見積りその年数を耐用年数とする方法です 見積法でもはっきりしないときは ( 法定耐用年数 - 経過年数 )+ 経過年数 0.2= 中古資産の簡便法の耐用年数 (1 年未満切捨て ) となります したがって (22-10)+(10 0.2)=14 14 年となります なお 中古資産の簡便法の耐用年数は 最初の確定申告において適用しなければ その後の年での変更はできませんので注意が必要です
競売物件の中古アパートを 2,000 万円で購入し リフォーム費用を 1,200 万円支払いました 1,200 万円は修繕費になりますか? また耐用年数はどうやって計算しますか? 中古資産を購入しリフォーム費用を支払った場合 リフォーム費用は中古資産の取得価額となり修繕費として必要経費にすることはできません なおリフォーム費用が取得価額の 50% を超える時は 次のような加重平均した耐用年数を使います
1 中古アパートの取得価額とリフォーム費用の合計額 3,200 万円 2 中古アパートの取得価額を簡便法の耐用年数で割った値 2,000 万円 14=1,428,571 円 (22-11)+22 0.2=14 3 リフォーム費用を法定耐用年数で割った値 12,000,000 円 22=545,454 4 1 (2+3)=3,200 万円 1,794,025=17.83 よって 14 年と 22 年との間の 17 年となります 17 年
マンションが 11 月に完成し 入居者募集の広告を出しましたが立地条件が悪いこともあって年末まで入居者がありませんでした このような場合でも 11 月 12 月の減価償却費を計上できますか? 計上できます いつでも入居できる状態にし 入居者募集の広告も出して入居者にいつでも引き渡せる状態にしているのであれば その年中に入居者がいなかったとしても業務の用に供しているものとして減価償却をすることが出来ます
4 所得控除と節税対策 目次 社会保険料控除とその節税策について教えて下さい 国民年金基金の掛金は控除の対象になりますか? 小規模企業共済掛金控除について教えて下さい
社会保険料控除とその節税策について教えて下さい 個人事業主は 国民健康保険や国民年金が社会保険料控除の対象となります 本人が妻の国民年金を負担していれば 本人と妻の 2 人分の国民年金を控除することができます 妻の国民年金を本人口座から引落しとすれば 2 人分の社会保険料を控除できます
国民年金基金の掛金は控除の対象になりますか? 国民年金基金の掛金は控除の対象になります 個人事業主の国民年金のプラスアルファとして 平成 3 年に創設されました 20 歳から 65 歳の個人事業主が加入できます
小規模企業共済掛金控除について教えて下さい 小規模企業共済掛金は 個人事業主の退職金の準備のために月額 7 万円まで 年額 84 万円が控除できます 掛金の金額が控除できますので 小規模企業共済掛金と国民年金基金は不動産所得者の必須の節税策です
5 あるマンションオーナーの会計処理 青色申告をして 65 万円を控除するためには 複式簿記が要件となっています したがって マンションやアパートのオーナーは できるだけ全ての取引を通帳を通じて行うことが重要です
あるマンションオーナーの通帳の動き A 10 日借入金の返済 ( 長期借入金 ) ( 普通預金 ) ( 支払利息 ) ( 普通預金 ) B 10 日共用電気代 ( 水道光熱費 ) ( 普通預金 ) C 15 日共用水道代 ( 水道光熱費 ) ( 普通預金 ) D 15 日管理会社から家賃入金 ( 普通預金 ) ( 受取家賃 ) ( 管理料 ) ( 普通預金 ) ( 修繕費 ) ( 普通預金 ) E 22 日火災保険料 ( 保険料 ) ( 普通預金 ) F 28 日預金利息 ( 普通預金 ) ( 店主勘定 ) G 30 日固定資産税 ( 租税公課 ) ( 普通預金 )
A は借入金の返済ですが 元金は長期借入金の減少 金利分は支払利息となります B C は マンション アパートの共用電気代 共用水道代です 自宅の自用分は 別の通帳にするとよいでしょう D は管理会社を通して入金されたケースで 通常は管理料が差し引かれますが 電球の交換 ドアの修理 雑草の刈取りなどの修繕費が差し引かれることもあります
E は火災保険料の掛け捨てのケースで 保険料は必要経費になります なお 積立保険や建物更生 ( いわゆる建更 ) では積立部分がありますから 保険積立金として資産計上します F は間違いやすいところで 個人事業主では預金利息は利子所得とされ 不動産所得の計算には入れませんので 店主として処理します G は固定資産税ですが 必要経費となります なお 年末で未払部分があるとき 例えば第 4 期分をその年の必要経費にしたいときは 未払計上すれば OK です 固定資産税第 4 期分 ( 租税公課 ) ( 未払金 )
なお 前年の青色申告控除前の不動産所得が 290 万円以上の場合 多くの場合 個人事業税が課されますが 必要経費となります これに対し 所得税 市民税は必要経費になりませんので 経理するときは下記のようになります 所得税 ( 店主勘定 ) ( 普通預金 ) 市民税 ( 店主勘定 ) ( 普通預金 )