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目次 1. 開会の挨拶 3 中島一格東京都赤十字血液センター 2. 平成 20 年度献血功労者厚生労働大臣感謝状伝達式東京都知事感謝状贈呈式 4 3. 献血の現状 5 岡崎仁東京都赤十字血液センター 4. 輸血療法 Q&A 11 座長 田崎哲典 東京慈恵会医科大学附属病院輸血部 藤田浩 東京都立墨東病院輸血科 Q1. 臨床的に問題となる不規則抗体とは? 11 内川誠東京都赤十字血液センター Q2. 交差適合試験の副試験を省略しても安全な輸血は可能か? 21 上村知恵慶応義塾大学病院輸血 細胞療法部 5. シンポジウム 29 テーマ : 輸血副作用の対策 発生時の対応と再発防止について 座長 橋孝喜 東京大学医学部附属病院輸血部 田中朝志 東京医科大学八王子医療センター臨床検査医学科 イントロダクション 29 比留間潔 東京都輸血療法研究会世話人代表 1. 非感染性輸血副作用の報告状況 32 宇都木和幸東京都赤十字血液センター 2. 不適合輸血および非溶血性免疫性輸血副作用について 40 石田明立川病院血液内科 3. 輸血関連急性肺障害 (TRALI) および輸血関連循環負荷 (TACO) について 48 牧野茂義虎の門病院輸血部 ディスカッション 57 6. 閉会の挨拶 61 比留間潔東京都輸血療法研究会世話人代表

1 開会の挨拶 東京都赤十字血液センター 中島一格 ご紹介いただきました血液センターの中島でございます 本日 皆様には週末のご多忙なところ 東京都輸血療法研究会にご出席を賜りまして 誠にありがとうございます 東京都輸血療法研究会も今年で7 回目を迎えました 当研究会は 都内で輸血医療に関係されている皆様方に 実践的で実用的な情報を提供し また ここでのいろいろな方々との交流を通しまして 輸血医療の現場でお感じになっておられます課題やさまざまな問題点をともに議論して 解決の方策を考えていただき 日々の業務の向上に そして都内の輸血医療の発展に寄与することを目的として運営してまいりました この研究会は 東京都の関係部局の方々 東京都内で輸血医療に関係されております専門医の先生方 臨床検査技師 薬剤師 看護師の皆様方 血液センターの関係者等 多くの方たちの努力によって支えられています 大変限られた時間ではございますけれども 本日の研究会が皆様方の日々の輸血医療の業務に役立ちますことを心より願っています 輸血用血液は薬事法で規制されている医薬品であり 血液センターは医療機関からの血液製剤のオーダーに可能な限りお応えする責務があります わが国におきましては 血液が届かなかったために 必要な医療が行えなかったということは決してあってはなりません しかしながら 輸血用の血液は 輸血伝票さえ切れば 水道の蛇口から水が出るように 必要な血液が自動的に届けられるというものではございません 献血の血液には 他人の命を救うことを願い また他人の健康の回復を願う温かい人々の善意が込められております わが国において献血の現場においでいただく献血者の方々は 忙しい日々の生活の中で時間をやりくりして献血現場においでいただき 何の見返りも求めずに 痛い思いをして血液を提供してくださっています そのような血液が病院の皆様方のもとに毎日届けられていることをご理解いただき どうか献血者への感謝の気持ちを持って輸血を行ってくださいますよう 心からお願い申し上げます 本日はこの後 献血功労者の方々への表彰状の伝達式があります わが国のレベルの高い輸血医療は ここにおいでの献血功労者をはじめとする 全国では年間 500 万人近く 都内では 55 万人にも上る多くの熱心な献血者の方々によって支えられています ここに心から深く感謝を申し上げます 本日ご出席の皆様方は ご多忙とは存じますが どうか時間の許す限り できますれば最後まで この研究会にご参加いただきますようにお願い申し上げまして 開会のご挨拶とさせていただきます 3

2 平成 20 年度献血功労者厚生労働大臣感謝状伝達式東京都知事感謝状贈呈式 3 献血の現状 東京都赤十字血液センター 岡崎仁 厚生労働大臣感謝状受賞者 (4 団体 ) 東京電力労働組合東京総支部新宿支部株式会社日立製作所マイクロデバイス事業部日本光電工業株式会社株式会社コトブキ村山工場 ( 敬省略 ) 東京都赤十字血液センターの岡崎です よろしくお願いいたします まず 献血の現状についてお話しいたします ポイントは2つありまして 1つ目は献血者の減少です これはわれわれ1 人 1 人の問題であって 輸血を今ここにおられる方が受けるようになる時に本当に血液が存在するのかどうかというところは 非常に大事な問題です もう1つは 輸血感染症に対する安全対策のため新たに導入したことについてです スライド 1 東京都知事感謝状受賞者 (7 団体 ) ( 敬省略 ) このグラフは献血者数の推移を表しています 1995 年には 600 万人以上の方が献血にご協力いただいておりましたけれども 2007 年には 500 万人 スライド 2 狛江明るい社会づくりの会 を切ってしまいました 東京消防庁練馬消防署 株式会社鷺宮製作所 東京学芸大学附属大泉小学校 PTA 株式会社熊谷組 中央大学理工学部 株式会社丸井シティ池袋店 4 5

前のスライドでお示ししたように 献血者数は スライド 3 現状 40 歳未満の方で 4 分の 3 を占めておりま スライド 6 減っていますが 成分献血および 400 ミリリットル して 若年献血者の減少は今後の血液事業への不安 の献血の割合が大きいために 昨年より献血量とし 材料であります ては微増しています 400 ミリリットル献血の推進を図っていますが この方策だけでは現在の献血量を維持するのは限界 でありまして 早急に他の対策を出さないといけな いと思います 厚生労働省の献血推進のあり方に関 する検討会でも 高校生の 400 ミリリットル献血を 解禁するなど 献血基準の見直し案が出され 作業 部会が設置されたそうです これは全国および東京都の採血の供給実績です スライド 4 逆に輸血を受ける患者さんの年齢は 60 歳以上の方で4 分の3を占めるということで 少子高齢化 スライド 7 東京都では全国の約 1 割程度の採血 供給実績があ が進んでいることがわかると思います ります 製剤別に見ますと 血小板 血漿成分は全 国平均の 1 割をやや上回っている状況です 年代別の献血者数の推移のグラフです 10 代 20 スライド 5 このような患者さんがどのような病気をお持ちで あるかというと やはりガンが半分を占め 血液疾 スライド 8 代の若い献血者の減少が特に目立っていることがお 患 循環器疾患 消化器疾患と続いています わかりいただけると思います 6 7

月別の献血者の推移です 最近寒くなってきまし スライド 9 全体の中での検査の不合格率の推移を示します スライド 12 たが だいたいこの時期から献血者の減少がありま 現在 3.7 % の方の献血が検査によって輸血には使 す はたちの献血のキャンペーンなどいろいろなこ えないということです とをやっていますが 1 月 2 月の時期になると やはり非常に献血者数が減ってくるという状況にあ ります スライド 2 で報告したように 500 万人の献血者 スライド 10 HIV 陽性献血者の推移を表しています エイズ スライド 13 がいるわけですが 実は 600 万人ぐらいの献血申込 動向委員会でも報告がありましたが 昭和 60 年以 者数があります さまざまな理由で献血できない方 降 累計で全国で HIV の感染症は 8 万人を突破し がいるわけですが 特に多いのは比重不足です こ ました エイズ患者も含めると 1 万 5000 人を突 れは貧血で 若年者の女性に特に多いのが特徴です 破しているということです こういう方に 健康管理を指導して 献血できるよ 2004 年から本人確認を取り入れましたが 一時 うにしてあげるということも われわれのやるべき 期落ちていた陽性件数はだんだん上がってきて 今 ことの 1 つではないかと思います 年は 9 月までの分を表しており 年間では 100 人を 問診該当 2 は 海外に行かれて時間がたっていな 突破してしまうのは間違いないのではないかと思い いということで できなかった方などです ます 検査不合格者数の推移を示しています A LT というのは肝疾患のマーカーですが これで落ちる方が約 13 万人いらっしゃいます また 肝炎ウィルスのマーカーなどに関しては だんだん減少傾向にあります スライド 11 スライド 14 全国の献血者 10 万人当たりにおける HIV 陽性者の数を示したものですが どんどん上がっていることがわかります 8 9

このような状況におきまして 日本赤十字社では血液製剤の安全対策をこれまで以上に充実することを考えております スクリーニング検査として 新しく CLEIA 法を取り入れ 核酸増幅検査に関しては新しい機械を導入して今まで以上に感染症を排除できるようにしています 以上です スライド 15 4 輸血療法 Q&A 座長 東京慈恵会医科大学附属病院輸血部 田崎哲典 東京都立墨東病院輸血科藤田浩 Q1 臨床的に問題となる不規則抗体とは? 東京都赤十字血液センター内川誠 臨床的に問題となる不規則抗体とは? という テーマでお話しします スライド 1 国際輸血学会が認定している赤血球の血液型抗原の数は 現時点では 308 種類に及んでいます 国際輸血学会の基準による分類では 血液型の性質がわかっていて なおかつ遺伝的に独立している血液型系列あるいは血液型システムとして 30 システムに分類されています これには 270 種類の抗原が存在しています 右の円グラフは血液型抗原の陽性頻度別に見たものです 血液型抗原の 86% は抗原陽性の頻度が 99% 以上の高頻度抗原 または抗原陽性の頻度が 1% 以下の低頻度抗原に属しています スライド 2 10 11

一方 輸血で日常的に問題となりやすい抗原陽性の頻度が数パーセントから 90% 程度の多型性をもつものは 全体の 14% でさほど多くはありません また 血液型抗原の頻度は民族によって異なっており わが国では 20 種類弱の血液型抗原と抗体が輸血検査で問題となっています スライド 3 さて 赤血球系の輸血検査には2つの大きな柱があります 1つは不規則抗体検査 もう1つは血液型の判定です 不規則抗体検査で求められるのは 臨床的意義のある抗体を検出し 臨床的意義のない抗体は検出しないような検査です また 不規則抗体検査には 反応時間を短縮しても 感度よく抗体が検出できるようにさまざまな反応増強剤が用いられています 現在では 臨床的に意義のある抗体を十分な感度で検出できるわけですが 臨床的意義のない抗体もしばしば検出してしまいます こうした現象は特に輸血検査にあまり慣れていない施設では 大きなストレスになっているのではないかと思います 血液型抗原は 糖鎖からなる糖鎖抗原とタンパク質からなるタンパク質抗原の2 種類があります 中には MN 抗原のように糖鎖とペプチドの両方からなるものもありますけれども 数は非常に少ない 一般に糖鎖抗原に対する抗体は IgM が主体となり 一方タンパク質抗原に対するものは IgG が主体となっています 赤血球と抗体との反応を反応温度の面から見てみますと 糖鎖抗原に対する抗体は低温にしたほうがよく反応する冷式抗体 一方 タンパク質抗原に対する抗体は 37 付近でよく反応する いわゆる温式抗体である場合が多いと考えられています スライド 5 スライド 6 スライド 4 さて 抗体の臨床的意義とはどういうことでしょうか 大まかに2つのとらえ方があります 1つは不適合の輸血をした際 臨床症状を伴うもので 特に重大な結果を招く恐れのあるものです もう1つは目立った臨床症状はないものの 検査結果から輸血した赤血球が破壊されたことが疑われるものです 例えば手術などで出血した赤血球を補うという目的からは 少し赤血球寿命が短縮したとしても 輸血の目的は十分果たしていると考えられます それに対して慢性的に輸血が必要な患者では 輸血回数を少しでも減らすためにも赤血球寿命の短縮は好ましくないと考えられます したがって 抗体の臨床的意義というものは 臨床の状況によって多少その意味合いが異なってくるということがあります スライド 7 冷式抗体と温式抗体についてもう少し詳しくみてみます 冷式抗体は 基本的に温度が下がるにしたがって反応が強くなる性質を持っています 冷式抗体の多くは せいぜい 25 程度までしか反応せず 体温付近まで反応するものは例外です この例外の代表例は ABO 血液型の抗 A と抗 B p 型の人が持つ抗 P ボンベイ型の人が持つ抗 H などで 冷式抗体としての性質は持っているものの 反応温度域が上昇し 37 でも反応してしまいます こうした抗体は 臨床的意義があります 一方 温式抗体は 37 付近で最適に反応します 温式抗体の場合は 温度を下げると抗原抗体反応が起こらないということではなく 反応速度が減少するわけです したがって 37 で反応させることで最も効率よく温式抗体が検出できることになります 12 13

スライド 8 検査で見つかった不規則抗体の臨床的意義の予測については 確実な方法はありませんが 血清学的な特徴によってある程度まで予測することができます まず 37 での反応性です 次にその抗体の特異性です ただし 特異性によっては 37 で反応する抗体であっても 特異性によっては臨床的意義を持たない抗体もあります 抗 A 抗 B など一部の例外を除いて 抗体の免疫グロブリンクラスは IgG の場合のほうが IgM に比べて 臨床的には問題となりやすい傾向があります このことに関係しますが 食塩液法や酵素法に比べて 抗グロブリン法のほうが臨床的意義のある抗体を検出できるよい方法であると言えます 凝集そのものが弱く脆いものと比べて 強くしっかりしている抗体 さらに抗体価が高ければそれだけ臨床的には問題になりやすい傾向があります スライド 10 臨床的意義のある抗体は 抗グロブリン法で検出できるということですが 抗グロブリン法で陽性となっても 特異性によっては臨床的意義のない抗体もあります 検出された抗体がスライド右の JMH などの特異性を示した場合には 抗原陰性血液を準備する必要はなく 検査では不適合でも輸血して問題ないことが多くの症例でわかっています まん中の? マークは 不適合輸血の症例によって副作用があったりなかったり あるいは症例数が少なく その臨床的意義が明確ではないものです そのうち 抗 Jr a は日本で比較的よく検出されていますが 不適合輸血での重篤な副作用例はきわめてまれです 抗 Jr a が検出された場合 Jr(a-) 血液が入手できれば それを輸血します Jr(a-) 血液が入手できないか 間に合わない場合には あえて不適合輸血を行ったとしても 臨床上大きな問題になる可能性は低いと考えられます 輸血学会のガイドラインには 臨床的意義のあ スライド 9 これは一般に検出される不規則抗体で ここでは スライド 11 る不規則抗体は ほぼ例外なく 37 反応相からの 12 種類並べてあります 東京都赤十字血液センター 間接抗グロブリン法で陽性となる と書かれていて で いろいろな医療機関から不規則抗体検査で問題 抗グロブリン法が重要な検査であるとしています のあった例をいろいろ精査していますが その中で 検出される割合の多いものです この中で よく検出される臨床的意義のある抗体 スライド 12 をこのスライドに示しました 14 15

これらの抗体は冷式抗体で臨床的意義がないとされているものです ここに示した抗体のほとんどは 臨床的意義がありません 冷式抗体は臨床的に問題がないといっても 37 での検査で検出されてしまうことがあります 室温で血清と血球浮遊液を混合した段階で抗原抗体反応が起こり 凝集したり 補体成分が血球に結合したりしてしまいます 抗原抗体反応がいったん起きてしまうと 抗体が血球から離れにくくなり 凝集が比較的強い場合には 37 に加温しても凝集したまま残り 一見 37 でも凝集しているように見えてしまいます また 補体成分は一度血球に結合すると 37 に温めても血球から離れることはありません スライド 13 スライド 14 反応増強剤はもともとタンパク質抗原に対する抗原抗体反応の際に 反応時間を短くすることを目的として開発されたもので 短時間の反応で感度よく抗体を検出できます しかし 冷式抗体による反応も無意味に強めてしまうというマイナス面もあります アルブミン PEG は凝集反応を LISS は補体の結合を強めてしまう傾向があります 抗グロブリン試薬は抗 IgG 単独のものを使用することで 冷式抗体による紛らわしい反応の多くを避けることができます 冷式抗体が存在したり あるいはその存在が疑われたりした場合 抗原陰性血を選択すべきかどうかを見るために 検査する上でどのような点に注意したらよいのでしょうか? 1つは 37 での反応ということを少し意識することです 患者血清 血球浮遊液 反応増強剤など 反応させるものを冷えたままの状態で不用意に用いないことが大切です 例えば 血球浮遊液を調整するための試薬管に適量の生理食塩液を入れ これを 37 恒温槽で温めておきます 試験管に患者血清を数滴入れ 37 恒温槽に移し5 分間程度 患者血清を温めます 温めておいた生理食塩液で血球浮遊液を作り 直ちに患者血清と混合し反応させます 抗グロブリン試験を行う際は 37 での反応から 遠心判定をすることなく そのまま抗グロブリン法の洗浄操作に入ることが重要です こうすることで 冷式抗体による無意味な陽性反応を少なくすることができます また 抗グロブリン試薬は IgG 単独のものを使用することも 冷式抗体による紛らわしい反応を減らす上できわめて有効です 最後に 反応増強剤は使用しないことです 抗グロブリン試験での反応時間を 45 60 分にすることで 感度を大きく落とすことなく臨床的意義のある抗体を検出することができます 冷式抗体の中で 抗 M と抗 Le a 特に抗 M は 37 でも強く反応し 抗 IgG による抗グロブリン法で さらに反応が有意に強められる IgG タイプのものが検出されることがあります こうした抗体に遭遇した場合には 抗原陰性血液による対応が必要になります しかし このような例はきわめてまれで 私どもの検査室でも数年に1 例程度しか経験しておらず 抗 M 抗 Le a の多くは溶血性輸血反応の原因となることはありません スライド 15 スライド 16 16 17

抗 Le b 抗 P1 抗 N に関しては 溶血性副作用の報告例はなく 抗原陰性の血液を輸血する必要がないことが国際的にも容認されています とくに 抗 Le b のほとんどは O 型を除く ABO 型の人に存在し しかも O 型の Le(b+) 血球と強く反応する抗 Le bh の特異性をもっています つまり O 型血球で構成されている不規則抗体検査ではっきり検出されていても ABO 適合の輸血では臨床的意義がないことになります スライド 17 冷式抗体に関しては 今の説明でよろしいでしょうか 輸血療法委員会や病院の中で決めなくてはいけないところもたくさんあると思いますが きちんと各施設の輸血上のルールとして決めておかないと いわゆる責任問題といった面倒なものが出てくるかもしれませんので では 37 のクームス法が大事だということですが 私から先生に質問したいことがあります いわゆるエンザイムオンリーというものです 酵素だけ反応する抗体で 要するにクームス陰性があれば酵素法はいらない 酵素法はいろいろ非特異的な問題もあるので 間接抗グロブリン試験陰性であれば 酵素法はやらなくていい あるいは クームスでのスクリーニングが陰性ならクロスマッチなどやらなくていいという極端な考えもあります これに関してはどうお考えでしょうか スライド 18 血清学的検査では さまざまな条件が複雑に重なりあって 予期しない問題が起こりやすいですが ちょっとした注意を払うことで 輸血がもう少しスムーズにいくと思われます 輸血を必要とする患者さんにとっては 不規則抗体が検出されようがされまいが 輸血が必要であることに変わりありません 特に 冷式抗体による検査上の問題をすみやかに解決し 輸血をスムーズに行えるようにすることも大事なのではないかと思います どうもありがとうございました ***** 座長 ( 田崎 ): ありがとうございました 従来からいわれている 37 で行うクームス法が非常に大事だということですが やはり実際の臨床の場では どうしたらよいのかという場面に遭遇することが必ずあろうかと思います せっかくの機会ですから フロアの方々からの質問をお受けします 先生から説明がありました抗 Le b 抗 P1 はほとんど臨床的には問題ないといってよいと思います しかし きわめてまれですが 副作用報告があるということで 私は慈恵医大におりますが 長年こういった抗体に対しても もし見つかった場合には陰性血を使うということになっております 実際 フロアの方の中で 冷式抗体をまったく意識しないといいましょうか 37 で反応するものだけを考慮しているという施設と 私の施設と同じように そういう抗体まで合わせて抗原陰性血を使っているという施設と 各施設の経験でもよろしいですのでお聞かせいただければと思いますが あるいは こうしたら冷式抗体をあまり問題視しなくなったということでも結構です ございますか 内川 : 基本的には酵素法はいらないと思います 現在では 不規則抗体スクリーニングの間接抗グロブリン法に PEG などの反応増強剤を使用していることから 特に Rh 系の抗体検出では感度がすごくよくなっています したがって 以前は酵素法のみ陽性のように見えた Rh 関連の抗体でも 現状では抗グロブリン法で検出できるものが多いのではないかと思います また 酵素法のみで検出される抗体に臨床的意義はないと考えられています クロスマッチは 不規則抗体スクリーニングが陰性であれば 血清学的なクロスマッチは省略できるのではないでしょうか 不規則抗体が検出された場合には 抗体の同定間違いや 見逃した抗体 隠された抗体の有無などを確認するためにも 間接抗グロブリン法によるクロスマッチの主試験は行う必要があると思います 酵素法の利点もありますが 問題なのは 酵素法では紛らわしい反応が多すぎることです 酵素法による反応が意味あるものか そうでないかをすみやかに鑑別できる検査室では問題ありません しかし そうではない施設では そこで検査が止まって 輸血も止まってしまう その結果 輸血が必要なのにタイムリーに輸血ができない 輸血が大幅に遅れてしまう といった事例が増えているのではないかと心配しています 不規則抗体検査としては 間接抗グロブリン法だけをきちんとやっていれば 安全な輸血を確保できると思います 座長 ( 田崎 ): 一番最後のスライドにありましたが 患者さんの治療に遅れてはならないという言葉が 非常に印象的でした 事務局 : 事務局から質問です 東京都センターの高橋です 日本では DAT の陽性血液は扱われなくて 返品で戻ってきますが 英国では基準があって ご存じのとおり ドナーに溶血がなければ使用可能であるわけです 実際問題どうであるか また 臨床的意義のある抗体について 患者さんのほうのお話がありましたが ドナーのほうの臨床的意義のある抗体はあるのでしょうか 内川 : 悩ましい問題です それは抗グロブリン法による交差試験の主試験で陽性となってしまうことです 献血者血球の DAT 陽性例のほとんどは弱陽性から中程度の陽性で 強陽性例は非常に少ない 18 19

日本では長い間 酵素法つまりブロメリン法が交差試験の主流でした ブロメリン法では一部の DAT 強陽性のものしか交差反応では陽性となりません したがって 相当な数の DAT 陽性血液が多数の患者に輸血されていたと推測されますが DAT 陽性血液が原因で輸血後なにか問題があったかというと 私が知る限りでは報告例は一例もありません これは何を意味するかというと DAT 陽性血液を輸血しても臨床上問題が起こる可能性はきわめて低いということだと思います 現状では 赤血球製剤が DAT 陽性であれば それを輸血しないという施設が多く 何らかの指針が必要ではないかと思っています あくまで個人的な意見ですが 例えば交差試験 ( 主試験 ) の陽性原因が DAT 陽性であれば 強陽性つまり凝集の強さで表せば4+ の血液は輸血を控える それ以外は輸血することができる といったような基準を設ける必要があるのではないかと考えています 献血者の不規則抗体が臨床的に問題になるとすれば 抗グロブリン法で検出され しかも抗体価が高いものに限定されると思います この点からみますと 現在では輸血の既往歴のある方は献血できませんので 以前と比較すれば抗体価が高く臨床的意義のある不規則抗体をもつ献血者の方は とても少なくなりました しかし 皆無ではないことから 間接抗グロブリン法による不規則抗体検査は必要ではないかと思っています しかし 食塩液法や酵素法でのみ陽性となる不規則抗体 さらに抗グロブリン法で陽性でも抗体価がさほど高くない不規則抗体が 溶血性輸血副作用の原因となることはありません 座長 ( 田崎 ): 内川先生 どうもありがとうございました 交差適合試験の副試験を省略しても安全な輸血 は可能か? Q2 質問に答えてしまうと はい です 交差試験 の副試験を省略しても 安全性が損なわれることは ありません これは言い切っていいことだと思いま す これからその理由をお示しするとともに その 代わり ここは必ず守るべきところだ 輸血の安全 にとって本当に必要なところは何なのかということ をお話ししたいと思います 交差適合試験の副試験を省略しても安全な輸血は可能か? 慶応義塾大学病院輸血細胞療法部 スライド 1 上村知恵 はじめに 輸血療法の実施に関する指針には どう記載されているかを復習します Ⅴに不適合輸血を防ぐための検査 ( 適合試験 ) と書いてあります 輸血前に必要なのは 皆さんが交差適合試験といってイメージされるクロスマッチという検査だけではなく 適合試験というのは患者さんの血液型の再検査も含めた試験であるとお考えください それを実施する しかも正しく実施するという前提で副試験はいらないという話になると思います 目次で交差適合試験について言及しているのは1 番と4 番ですので ここを復習します スライド 2 20 21