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Ⅰ. 造血器腫瘍の新しい分類 1 WHO 2016 A 2006 年秋に Clara D. Bloomfield から WHO の Clinical Advisory Committee(CAC) に加わるよう電話をもらった. それから 4 カ月後, 厳冬のシカゴで丸 2 日間, 骨髄系とリンパ系の 2 チームに分かれて, 全員が与えられたテーマで発表し議論した. 何を Disease entity( 原因, 病態, 病状, 経過, 病理組織変化からみて疾患単位と考えられるもの ) と考えるか, 何をカテゴリー ( 臨床あるいは病理の特徴から診断上行う一つのまとまり, 類型とか症候群が近い言葉であるが, 本稿では疾患群として用いる場合は大カテゴリーとした ) とすべきか, 飛躍的に増えた遺伝子情報をどう取り込むのか, 形態 病理, 遺伝子, 臨床など異なる研究者間のコンセンサスを引き出すというタフな会議であった. 侃々諤々の議論が時には紛糾し, 多数決で片付けていく様 ( さま ) をみて驚いた. この議論を踏まえてでき上がったのが WHO 2008 年分類 1) である. 今回は 2013 年秋に Jim Vardiman,Jüergen Thiele からメールを頂き, 翌年 3 月 31 日 - 4 月 1 日に同じ会場で WHO-CAC が開かれた. 招待されたメンバーは骨髄系だけで 51 名と大幅に増えていた. 前回とほぼ同様, 病理側 ( 実質上の執筆者 ) が 2008 年以降の論文の中からテーマや提案を数十抽出し, それに従って臨床側が議論していくというスタイルで進められた. 今回の改訂の詳細は 2016 年内予定の出版を待たないとわからないが, 発刊されている概要 2, 3) に CAC での議論を加えて要点のみを記す. B MPN 骨髄増殖性腫瘍 (MPN) については大きな変更はないが, 臨床的に多様な疾患群を形成する 肥満細胞症 は MPN とは独立したカテゴリーとして扱われる ( 表 1). 慢性骨髄性白血病 (CML) についてはチロシンキナーゼ阻害剤 (TKI) 治療時代となって, 移行期 (AP) の定義に TKI への耐性や BCR-ABL1 点変異の出現を考慮する必要が出てきた. 急性転化期 (BC) においてリンパ芽球性 BC の場合は進行が急速であるので, 芽球 20% 以上や髄外腫瘤を必ずしも条件としなくてもよいかもしれない.BCR-ABL1 陰性の NPM については多くの進展があり, このことについての記載が増えそうである. まず JAK2 や MPL 変異の他,CALR 変異などが見出された. また PV に関しては WHO 分類 2008 での基準 ( 男 Hb>18.5g/dL) が厳しすぎるとの見解によって, 男性 16.5g/dL, 女性 16.0g/dL と基準が引き下げられ, それに伴い骨髄生検所見が必須となった. 原発性骨髄線維症 (PMF) では病理像が特に重視され, 細網線維, 膠原線維, 骨硬化の程度によって MF-0 ~ -3 の 4 段階に分け, これに従って 前線維期 と 線維期 のステージが区別された. また 前線維期 は細網線維の存在で ET と区別することが臨床的に重要であるとされた.

Ⅰ 造血器腫瘍の新しい分類 表1 3 骨髄系腫瘍と急性白血病における WHO 分類 2016 案 文献 2 を改変 Myeloproliferative neoplasms MPN Chronic myeloid leukemia, BCR-ABL1-positive Chronic neutrophilic leukemia Polycythemia vera Primary myelofibrosis PMF Essential thrombocythemia Chronic eosinophilic leukemia, not otherwise specified NOS Myeloproliferative neoplasm, unclassifiable Mastocytosis Myeloid/ lymphoid neoplasms with eosinophilia and abnormalities of PDGFRA, PDGFRB, or FGFR1, or with PCM1-JAK2 Myeloid/lymphoid neoplasms with PDGFRA rearrangement Myeloid/lymphoid neoplasms with PDGFRB rearrangement Myeloid/lymphoid neoplasms with FGFR1 rearrangement Provisional entity: Myeloid/lymphoid neoplasms with PCM1-JAK2 今回新たに加わった Myelodysplastic/myeloproliferative neoplasms MDS/MPN Chronic myelomonocytic leukemia Atypical chronic myeloid leukemia, BCR-ABL1-negative Juvenile myelomonocytic leukemia Myelodysplastic/myeloproliferative neoplasm with ring sideroblasts and thrombocytosis MDS/MPN-RS-T Myelodysplastic/myeloproliferative neoplasm, unclassifiable Myelodysplastic syndromes MDS MDS with single lineage dysplasia MDS with ring sideroblasts MDS with multilineage dysplasia MDS with excess blasts MDS with isolated del 5q MDS, unclassifiable Provisional entity: Refractory cytopenia of childhood Myeloid neoplasms with germline predisposition Acute myeloid leukaemia and related neoplasms AML with recurrent genetic abnormalities AML with myelodysplasia-related changes Therapy-related myeloid neoplasms AML, NOS Myeloid sarcoma Myeloid proliferations related to Down syndrome Acute leukemias of ambiguous lineage Acute undifferentiated leukemia q34.1;q11.2 ; BCR-ABL1 Mixed phenotype acute leukemia with t 9;22 Mixed phenotype acute leukemia with t v;11q23.3 ; MLL rearranged Mixed phenotype acute leukemia, B/myeloid, NOS Mixed phenotype acute leukemia, T/myeloid, NOS B lymphoblastic leukemia/lymphoma B lymphoblastic leukemia/lymphoma, NOS B lymphoblastic leukemia/lymphoma with recurrent genetic abnormalities T lymphoblastic leukemia/lymphoma Provisional entity: natural killer NK cell lymphoblastic leukemia/lymphoma 主な変更点をアンダーラインと和文で記した Mastocytosis は MPN の病型ではなく新たなカテゴリーとして独立 WHO2008 では Provisional Entity として RARS-T とされたものが名前を変えてに採用 これまで inv 3 あるいは t 3;3 は GATA2 エンハンサーによって MECOM 発現が高まり同時に GATA2 ハプロ 不全が起きる 以前記載されていた RPN1-EVI1 キメラ遺伝子は削除された t 15;17 については複雑核型や Cryptic rearrangement による場合を考慮し 単に PML-RARA と記載された 新たに Provisional Entity として AML with BCR-ABL1 と AML with RUNX1 が また CEBPA 変異 AML については bialleric に限定された Provisional entity として B lymphoblastic leukemis / lymphoma, BCR-ABL1-like と B lymphoblastic leukemis / lymphoma with iaml21 が加わった

4 Ⅰ. 造血器腫瘍の新しい分類 C MDS 前回の改訂以降, 最も多くの遺伝子情報が蓄積されたが, 今回の改訂では診断や分類に取り入れられたものはなく, 記述的にあるいは補足的に取り扱われそうである. その大きな理由は, 遺伝子変異と MDS の診断 病型の関係が充分整理されていないからだと思われる.MDS 患者の 8 9 割に何らかの MDS に関連したクローン性の遺伝子変異がみいだされるが, それら遺伝子変異は健常高齢者にもみいだされる (clonal hematopoiesis of indeterminate potential: CHIP). さらに複雑なのは, 血球減少と遺伝子変異が認められるが,MDS の基準である異形性あるいは染色体異常が認められないケース (clonal cytopenia of undetermined significance: CCUS) もあることである.CHIP や CCUS においては DNMT3A,TET2,ASXL1, TP53 の変異が多く, これは MDS での変異頻度とほぼ同様で MDS としての特異性に乏しい. 例外は SF3B1 変異で,CHIP や CCUS には認められず環状鉄芽球を伴う MDS に特徴的である. 表 2 骨髄中赤芽球が 50% を超えた時の鑑別アプローチ 2? AML? MDS AML WHO2008 WHO2016 NA Yes NA NA Yes AML with recurring genetic abnormality Therapy-related myeloid neoplasm Therapy-related myeloid neoplasm AML with recurring genetic abnormality Yes AML with myelodysplasia-related changes AML with myelodysplasia-related changes 50 20 No No No AML, NOS, acute erythroid leukemia erythroid/ myeloid type AML, NOS, acute erythroid leukemia erythroid/ myeloid subtype MDS AML, NOS non erythroid subtype 20 NA MDS 80 AML, NOS, acute erythroid leukemia pure erythroid type AML, NOS, acute erythroid leukemia pure erythroid type MDS Therapy-related myeloid neoplasm AML MDS

Ⅰ. 造血器腫瘍の新しい分類 5 MDS の診断は国際予後判定システム (IPSS) での閾値以下, すなわち Hb<10g/dL,Plt< 100 10 9 /dl, 好中球 <1.8 10 9 /L(1 ~ 3 系統 ) を必須とし, 異形成 ( 少なくとも 1 系統における 10% 以上の細胞に明らかな異形性を認めること ), かつ / または MDS に特徴的な染色体異常が認められる場合であって, 鑑別すべき疾患を認めない場合であることに変更はない. しかし異形性については微小巨核球, ペルゲル フエット核異常, 好中球低 ( 脱 ) 顆粒に限定すべきとの意見もあり, なかでも微小巨核球の重要性は今回の会議でも強調された. 大きく変更されるのは病名で, refractory cytopenia や refractory anemia はすべて MDS に統一され, たとえば Refractory cytopenia with unilineage dysplasia であれば MDS with single lineage dysplasia へと変更される. 芽球比率の計算法にも変更があった. これまでは骨髄有核細胞中の赤芽球が 50% を超える場合は, 赤芽球を除いた有核細胞を分母として芽球比率を求めることになっていたが, 改訂版では全有核細胞を分母とすることに変更された. このため Acute erythroid/myeloid leukemia の多くが MDS with excess blasts に分類されることになる ( 表 2). MDS に特徴的とされる染色体異常は若干整理され, 特異性の少ない+8, Y,del(20q) は省かれた.del(5q) のみを伴う MDS は独立した疾患として扱われてきたが, モノソミー 7 あるいは del(7q) 以外であれば, 付加的染色体異常が一つであれば予後に大きく影響しないことからこれを含むことになる. D AML 1. 反復性遺伝子異常を伴う AML WHO 分類 2008 で,NPM1 変異と CEBPA 変異が Provisional entity として加わっており, 今回正式な entity として認められた. ただし後者については, 両アレル変異 (DM) では若年者が多くその頻度は年齢とともに下がる傾向にあり, 予後は良好である. 一方, 片アレル変異 (SM) は年齢にかかわらず頻度は一定で,NPM1,RUNX1,FLT3 変異とも共存することがあり, 予後は良好とはいえない. そこで,DM に限局することとなった.inv(3) あるいは t(3;3) では GATA2 エンハンサーによって MECOM 発現が高まり同時に GATA2 ハプロ不全が起きるが,RPN1-EVI1 キメラ遺伝子は形成されない. そこでキメラ遺伝子の記載が削除された.t(15;17) については複雑核型や Cryptic rearrangement による場合を考慮し, 単にキメラ遺伝子 PML-RARA と記載される.Provisional entity として,AML with BCR- ABL1 と AML with mutated RUNX1 が加わった. 後者については de novo AML であり MDS 関連染色体異常を伴わないことが条件である. 2. 骨髄異形成関連変化を伴う AML Therapy-related や Recurrent genetic abnormalities を否定したうえで,MDS あるいは MDS/MPN からの芽球 20% 以上への進展, 多系統異形成 ( 骨髄 2 系統以上において 50% 以上の細胞の形態的な異形成 ), 骨髄異形成に特徴的な染色体異常 ( リストの中身がアップデートされた ) のいずれかを満たすものを指す. このカテゴリーに特異性の少ない+8 Y, del(20q), それと Recurrent genetic abnormalities(npm1,cebpa 変異 ) に伴う del(9q)

6 Ⅰ. 造血器腫瘍の新しい分類 については削除, また Recurrent genetic abnormalities とされる inv(3),t(6;9) も削除, いくつかの Balanced translocation が追加された. また 多系統異形成 については,NPM1 変異や CEBPA 変異などが混在しており, 遺伝子変異を優先して判断すべきである. 3. 治療関連 AML 殺細胞効果のある治療後に発症した AML/MDS で, 染色体や病型での分類に統合すべきとの意見もあったが, 独立したカテゴリーとしてとどまった. 背景に胚細胞変異がある場合があり注意が必要である. 4. その他の AML 基本的に WHO 分類 2008 が踏襲されているが,Acute erythroid leukemia は若干狭く定義された. 赤芽球が 80% 以上あるもの (Acute pure erythroid leukemia) を除き, 骨髄あるいは末梢血で全有核細胞の 20% を超える場合のみを AML とした. 上記でも触れたが, これまでは赤芽球 50% 以上, かつ骨髄の赤芽球以外で骨髄芽球が 20% 以上あれば Acute erythroid leukemia(erythroid/myeloid type) としていた. E 今回新たに大カテゴリーとして加わった. 他疾患や臓器障害はなく骨髄系腫瘍として発症するCEBPA 変異,DDX41 変異, 血小板異常のみが先行して発症するRUNX1 変異, ANKRD26 変異,ETV6 変異, 臓器障害を伴い発症するダウン症候群, ヌーナン症候群や GATA2 変異などの 3 群に分類される. F 骨髄系,T 細胞系,B 細胞系のための基準は変更されていないが, 定義が厳格になりすぎたので混乱も生まれていた.2 種類の系統がある白血病の場合 ( いわゆる Bilineage acute leukemia) や一般的な AML や ALL では, 系統決定のためにこの厳密な定義を用いる必要はないことを明記した. また 1 種類の集団で 2 種類の系統発現がある場合 ( いわゆる Biphenotypic acute leukaemia) の場合でもいくつかの抗原発現は均一ではないことが注意点である. G B / B-ALL ALL に関しては ( 前回同様 ) 骨髄系腫瘍のチームで議論された. 最終的な記載がどのようになるかわからないが, 表 1 のように 骨髄系腫瘍と急性白血病 としてまとめられる可能性がある.ALL では以下 2 つが Provisional entities として加わった. BCR-ABL1 様 ALL 遺伝子発現パターンが BCR-ABL1 陽性 ALL に類似した ALL の一群が報告されており, 予後不良や IKZF1 や CDKN2A/B 欠失を伴いやすいこと,CRLF2 転座,EPOR の C 端欠失, JAK 変異などチロシンキナーゼの活性化をもたらすことも知られている.BCR-ABL1 陰性 ALL は小児では ALL の 10% 弱, 成人では 20 25% を占める. 分子病態に応じた TKI 併用療法が期待されうる.

Ⅰ. 造血器腫瘍の新しい分類 7 21 番染色体における染色体内増幅を伴う B-ALL 小児 ALL において染色体 21 番 (RUNX1 を含む近傍 ) で染色体切断 融合が繰り返され染色体破砕 ( クロモスリプシス ) が起きた結果, 部分的な増幅が起きるとされている.RUNX1 の FISH など遺伝子増幅で診断できる. 白血球数が低く再発リスクが高いとされている. H T / T-ALL T-ALL は分子 遺伝学的な特徴からいくつかの亜群に分類されることやこれら亜群が分化段階に沿うことが示されてきた. しかし予後は亜群内でも一致せず, この分類については先送りされた. しかし Early T precursor(etp)all は未分化な T 細胞マーカーと同時に骨髄系 幹細胞系マーカーを有し,FLT3,RAS,DNMT3A,IDH など AML のような変異を有することも知られており,Provisional entity とされた. 予後は不良とされていたが大規模研究では否定されている. I 概して日本の研究者は, 疾患の部分に着目して解析することは得意であるし, 特に遺伝子の仕事は高く評価されている. しかし entity やカテゴリーを確立するとか, 病理や臨床と繋ぐなどの段階になってくると, 大規模臨床試験が少ないうえ, 英語力や交渉力の貧弱さが目立ち, 存在が薄くなってくる ( まさに私のことである ). 骨髄系疾患においては民族差はほとんどなく, 病理を専門とする研究者も少なく, 何とも心もとない. 今後も改訂は続けられるので, 是非とも複数の日本人研究者が活躍できるよう期待したい. そのための第一歩は WHO 2016 分類の検証と情報発信であろう. ブレイクスルーの研究であれば競争も厳しく欧米のデータのみが引用される傾向もあるが, コツコツ積み上げた論文は意外と引用されやすいものであることを学んだ. 1)Swerdlow SH, Campo E, Harris NL, et al. editors. WHO classification of tumours of haematopoietic and lymphoid tissues [4th edition]. Lyon: IARC Press; 2008. 2)Arber DA, Orazi A, Hasserjian R,et al. The 2016 revision to the World Health Organization(WHO)classification of myeloid neoplasms and acute leukemia. Blood. 2016 Apr 11. [Epub ahead of print]. 3)Arber DA, Hasserjian RP. Reclassifying myelodysplastic syndromes: what's where in the new WHO and why. Hematology Am Soc Hematol Educ Program. 2015: 2015: 294-8.