Cpk=36.5 μg/ml =0.99 meq/l Cav=27.9 μg/ml =0.75 meq/l Ctr=20.7 μg/ml = 0.56 meq/l 4) 躁病治療の有効血中濃度は 0.3~1.2mEq/L であるが この投与量で治療効果が得られるか? Li は 2 分子含まれているの

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Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

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Transcription:

臨床薬理学の基礎 ( 薬物投与と血中濃度計算 ) 最初に 薬理学総論を一読してから この章をお読み下さい ここでは 実際の添付書類に記載されている薬物動態の各種パラメータや図を利用して 薬物を投与したときの血中濃度を推定する計算例を示す 治療薬は 単回投与よりも反復投与する場合が多いし また点滴により持続注入することが多いので これらを中心に述べる 自分で実際に計算をして確かめて欲しい 計算には Excel を用いるとよい 計算が間違っている場合は 三木までお知らせ下さい 例題 1: Lithium carbonate の添付書類より 炭酸リチウム (Li 2 CO 3, MW=74) は 躁病治療薬で 100mg と 200mg 錠剤が市販されている 添付書類 ( 大正製薬 ) に 200mg を経口単回投与したときのパラメータが以下のように 記載されている Cmax Tmax T 1/2 AUC F 0.22 meq/l 2.6 hr 14.7 hr 2.26 meq*hr/l 0.85 Cmax: 最高血清中濃度 Tmax: 最高血清中濃度到達時間 F: 生体利用率 今 躁病患者に 投与量 (D)=800mg を 12 時間ごとに経口投与する時 次の質問に答えよ 1) 炭酸リチウムの Vd を求めよ みかけの分布容積 (Vd) と排泄速度定数 (Ke) は以下の数式で表される AUC は meq/l で表されているので mg/l に変換する Vd=0.85*200/(0.693/14.7)/(2.26/2*74)=43.3 L 2) 血中濃度の定常状態は およそ何時間後に得られるか? 反復投与で 定常状態は 半減期の 4~5 倍で得られる 14.7*5=73.5 時間 =3 日間 3) 投与間隔 τ=12 時間での定常状態における 炭酸リチウムの最大血中濃度 ( ピーク値 Cpk) 最小血中濃度 ( トラフ値 Ctr) および平均血中濃度 (Cav) を計算せよ 次の数式を用いる

Cpk=36.5 μg/ml =0.99 meq/l Cav=27.9 μg/ml =0.75 meq/l Ctr=20.7 μg/ml = 0.56 meq/l 4) 躁病治療の有効血中濃度は 0.3~1.2mEq/L であるが この投与量で治療効果が得られるか? Li は 2 分子含まれているので 平均血中濃度は 27.9/74*2=0.75 meq/l 最高濃度は 0.99 meq/l と計算されるので この濃度は有効量である 5) 血中濃度モニタリング (TDM) について薬物の血中濃度と 治療効果あるいは有害反応の間に相関関係があるので 薬物を適正に使用するために 血中濃度モニタリング (TDM therapeutic drug monitoring) が特定の薬物で行われている また 患者のコンプライアンスを知ることもできる TDM が必要とされる薬物の条件を挙げる a) 血中濃度と薬物効果あるいは有害反応との間に明らかな相関がある薬物 b) 治療域と中毒域が接近しており 安全域が狭い薬物 c) 薬物体内動態に 個人差が大きい薬物や 変動や非線形性のある薬物 d) 薬物相互作用のある薬物 TDM が行われている薬物の代表例を挙げる 抗そう薬 :lithium carbonate 抗てんかん薬:phenytoin, phenobarbital 強心薬:digoxin 抗不整脈薬 :lidocaine, procainamide 気管支拡張薬:theophylline 抗生物質:gentamicin, vancomycin, amikacin 免疫抑制薬:cyclosporine など 例題 2: Amlodipine の添付書類より Amlodipine は 持続性 Ca 拮抗薬であり 2.5mg と 5.0mg 錠剤が市販されている その添付書類 ( 住友製薬 ) には 以下の図 1 と図 2 および表が記載されている

図 1 投与量 Tmax Cmax AUC 5.0 mg 7.7 hr 3.39 g/ml 178.2 ng*hr/ml 1) 図 1は 高血圧治療薬の amlodipine( 持続性 Ca 拮抗薬 ) を 5.0 mg 経口単回投与したときの血中濃度の推移である Amlodipine の半減期を求めよ また 体クリアランス (Clb) を求めよ Clb=Ke*Vd を利用する また F=0.7 と仮定する グラフの排泄相より 半減期は約 40 時間と計算される Ke=0.693/40=0.0173 Vd=F*D/Ke/AUC=0.7*5.0/0.0173/178.2=1135 L Clb=0.0173*1135=19.6 L/hr amlodipine は Vd が非常に大きいので 生体成分と結合していると考えられる 2)Amlodipine を 24 時間ごとに投与すると 何日で定常状態に達するか? その時のピーク値 (Cpk) を計算し 初回投与の濃度と比較せよ 24*5=120 時間 4~5 日間で定常状態に達する 投与間隔が半減期毎でなくても 5 回目の投与でほぼ定常状態になる Cpk=0.7*5.0/1135/(1-exp(-0.0173*24))=9.1 ng/ml 初期投与のピーク値の約 3 倍となる ( 図 2)

図 2 3) 図 2は 5mg の amlodipine を単回 (A) および8 日間連続投与後 (B) の若年健常者と老年高血圧症患者の測定値である 下記の表の Cmax Tmax T 1/2 の空欄を埋めよ また Vd Clb を求めよ 若年者に比べて どのパラメーターが一番異なっているか また その理由を述べよ 老年高血圧症患者 若年健常者 単回投与時連続投与時単回投与時連続投与時 Cmax (ng/ml) Tmax (hr) T 1/2 (hr) AUC (ng*hr/ml) 116.9-63.2 - Vd(L) - - Clb (L/hr) - - Ke-old=0.693/37.5=0.0185, Ke-young=0.693/27.7=0.025 Vd-old=0.65*5.0/0.0185/116.9=1502 L, Clb=Ke-old*Vd-old=1502*0.0185=27.8 L/hr Vd-young=0.65*5.0/0.025/63.2=2056 L, Clb=Ke-young*Vd-young=2056*0.025=51.4 L/hr 老年者では amlodipine の代謝 ( 体クリアランス ) が遅いために 血清中の濃度が若年者より高くなるので 低用量から投与を始めるべきである

4) 高齢者の薬物動態について 60 才以上の高齢者では 3) でも分かるように 薬物のパラメーターである 半減期 (T1/2) クリアランス (Clb) 分布容積(Vd) が変化する a) 腎機能の低下 : 腎機能は加齢と共に低下し 70 才で 30-40% 減少する 従って 半減期の延長とクリアランスの減少がおこる b) 相対的脂肪量の増加 : 脂溶性薬物の体内蓄積がおこりやすくなる c) 総水分量の減少 : 総水分量は70 才で 15-20% 減少するので Vd が減少する d) 肝容積と血流量ともに 45% 減少するので 薬物代謝活性も同様に低下すると考えられる 以上のことより 薬物の血中濃度が高くなり 中毒症状の出現する確率が高くなるので 成人の 1/2 から 1/3 量で始める 例題 3: cefotiam の添付書類より cefotiam は セフェム系抗生物質で 1g 0.5g 0.25g の静注用薬が市販されている その添付書類 ( 武田薬品 ) には 図 3 と図 4 の測定値が記載されている 図 3 1) 図 3は cefotiam の1gを静注したときの血中濃度の変化である 半減期 (T 1/2 ) および排泄速度定数 (Ke) を求めよ Vd を計算せよ T 1/2 =0.8 hr Ke=0.693/0.8=0.866 図 3を対数にとり 排泄相より C=C 0 *exp(-ke*t) 式により C 0 を求めると 60μg/mL と計算される 投与量 (D) は 1g であるので Vd=D/C 0 =1/60=16.7 L となる 2)2g の cefotiam を 1 時間点滴静注したときの血中濃度を求めよ また 2 時間かけて同量を点滴静注したときの血中濃度を求めよ

平均血中濃度は 次式で表される ただし Rinf は静注速度 (g/hr) である 1 時間の時 : 静注速度 (Rinf) は 2 g/hr である Cav=2*(1-exp(-0.866*2))/16.7/0.866=114μg/mL 2 時間の時 :Rinf=2g/2 hr Cav=1*(1-exp(-0.866*2))/16.7/0.866=56.9μg/mL 点滴終了時に上記の血中濃度がえられる もし 半減期の 5 倍の 4 時間点滴すれば 定常状態がえられる Css=Rinf/Vd/Kel=2/4/16.7/0.866=34.6μg/mL が得られる 図 4 3) 図 4 の腎機能障害者 A 氏および B 氏では 血中濃度が健常者より高いことが分かる A と B 氏の T 1/2 および Clb を求めよ 4) 腎機能障害者の薬物動態について腎機能障害者では 低蛋白血症や薬物の蛋白結合率の低下により Vd が増加する 薬物体クリアランス (Clb)= 肝クリアランス (Clh)+ 腎クリアランス (Clr) と考えられる 腎機能障害者では Clr が減少するので Clb が低下する Clb=Vd*Ke であるので いま Vd が変化しないとすれば Clb の低下は Ke の低下による また Ke= 腎排泄定数 (Kr)+ 腎以外の排泄定数 (Knr) と考えられるので クレアチニン クリアランスを測定し Giusti 法などにより Ke を補正をすることができる クレアチニン クリアランス (Clcr) が分からないときは 血清クレアチニンから Clcr を次式から推定することができる Clcr( 男性 )=(140- 年齢 )* 体重 /72/ 血清クレアチニン濃度 [Kg/mg/dl]

Clcr( 女性 )=0.85*Clcr( 男性 ) 腎機能障害者への投与量の補正係数 (G) は 次式で表される ただし 100 は 健常者の Clcr [ml/min] である また fu は 尿中未変化体排泄率である 5) 腎機能障害者への薬物投与量の補正腎機能障害者では 投与量および投与間隔の補正計算が必要である 図 4で A 氏のクレアチニン クリアランス (Clcr) は <5 ml/min B 氏は 50.6 ml/min である cefotiam の場合の fu を 70% として 2) の例題 ( 健常者へ 2g cefotiam 1 時間点滴静注 ) の場合 B 氏への補正投与量を求めよ もし 2g を投与したい場合の投与時間を求めよ G=1-0.7*(1-50.6/100)=0.654 従って B 氏の投与量は D=2*0.654=1.3 g と計算される 投与時間を変更したいときは τ=1 hr/g = 1/0.654=1.5 時間に延長する 例題 4: Theophylline の添付書類より Theophylline は 気管支喘息の治療薬で テオフィリン徐放性錠剤として 100mg と 200mg が シロップとして 20mg/mL が市販されている 添付書類 ( 三菱ウエルファーマ ) に 200mg を経口単回投与したときのパラメータが以下のように記載されている Cmax Tmax AUC T 1/2 3.0 μg/ml 7.2 hr 53.9 μg*hr/ml 12 hr 1)F=0.9 として Vd とクリアランス (Clb) を求めよ Ke=0.693/12 =0.058 Vd=0.9*200/0.058/53.9=5.8 L Clb=Vd*ke=0.058*58=3.3 L/hr

2) 経口投与による緊急飽和について Theophylline の有効血中濃度は 8~20μg/mL とされている 維持量 10 μg/ml を 緊急に得るための初回量 ( 飽和量 ) と維持量を求めよ 初回投与 (loading 飽和) 量 Dld とすれば 半減期 (Thaf) 後の体内薬物残存量 (remaining amount) を Ab とすれば Ab=Dld*exp(-0.693) 半減期後に体内から消失する量 Dm は Dm=Dld*(1-exp(-0.693))=Dld*0.5 で表される この式より 初回量を 維持量の2 倍にし 半減期後に維持量を与えるとよいことが分かる (ANS) 定常状態で theophylline の血中濃度 10 μg/ml を得たいのだから 半減期を Thaf として 維持量をDm として 定常状態での血中濃度は C=F*D/Vd/Ke/Thaf で表される 従って 維持量は Dm=10*Vd*Ke*Thaf/F=10*5.8*0.058*12/0.9=448 mg である 初回に維持量の2 倍量 900mg を投与し 以降 12 時間ごとに 450mg を投与すると 初回から 10 μg/ml が維持 ( 急速飽和 ) できる Theophylline の徐放剤を使った喘息発作の予防法を RTC(round the clock: 一日中 ) 療法という 薬を 1 日に 2 回服用することにより 薬の効果を持続させて発作を予防する方法である 3)Theophylline クリアランスの年齢変化 Theophylline は 血中濃度に比例して 副作用が出現することが多く TDM を行い かつ患者個人に適した投与計画が必要である 図 5のように theophylline の Clb が年齢により大きく変化する 特に 1~2 才で成人の約 2 倍となるので注意が必要である 図 5( 千葉 日児誌 95,1735,1991 より改変 ) 維持投与量 =( 投与間隔 )*( クリアランス )*( 血中濃度 ) で表されるので 維持量は クリアランスに比例することが分かる 従って 小児において theophylline は 痙攣などの 副作用を生じやすい

4) 小児における薬物投与について 小児は 大人を小さくしたものであるとする考え方で 薬物治療がなされているのが大部分 であり 体重をもとに 薬物量が表のように決められ用いられている 小児の薬物投与量の簡易表 年齢新生児 未熟児 0.5 1 3 7.5 12 成人 用量 1/20 から 1/10 1/5 1/4 1/3 1/2 2/3 1 しかしながら 多くの薬物について 小児の薬物動態値が 得られていないので 成人のパラメーターが指標になっている この場合は 水分布による補正がなされている a) 細胞外液 Vd は 生理的水分布に比例し 小児と成人の細胞内液は体重の 35~40% であるが 細胞外液が成人に比べて多い 例えば 新生児では 細胞外液は 体重の約 32%( 成人 : 約 20%) イヌリンクリアランスは 10mL/min ( 成人 :120mL/min) などである 多くの薬物は 細胞外液に分布するので Friis-Hansen の式により 細胞外液を求めて補正する b) 代謝および腎機能 幼少児では グルクロン酸抱合が未発達であるが 硫酸抱合は良い メチル化も活発である また 腎機能も未発達であるので 薬物動態に大きく影響を与える 例題 5: Omeprazole の添付書類より Omeprazole は プロトンポンプ阻害薬 (PPI) で 10mg と 20mg 錠 および注射剤 (20mg) が市販されている その添付書類 ( アストラゼネカ ) には 以下の図 6と表が記載されている Omeprazole は CYP2C19 により代謝されるが この酵素には遺伝子的多型があり Poor Metabolizer(PM) が日本人では 15-20% 存在する 当然 Extensive Metabolizer(PM) とは血中動態が大きく違っている 胃潰瘍などでピロリ菌の除菌のために omeprazole と amoxicillin の投与が行われている PM では除菌成功率がほぼ 100% であるのに対し EM では成功率が 30-60% であるとの報告がある 添付書類では 1 日 2 回 20mg 静注で 6 日間の反復投与の血漿中濃度のグラフが記載されている しかし ここでは 48 時間までのグラフを載せている 1)EM と PM について 投与終了時の血漿濃度と半減期を求めよ また 消失速度の比を求めよ

計算法はすでに 他の例題で用いているので 参照のこと 2) この薬物の Vd を求めよ 文献によると Vd は 0.3L/Kg と報告されている 図 6 群 ( 例数 ) 投与回数 投与終了時の血漿濃度 (μg/ml) 消失半減期 (h) AUC (μg*h/ml) EM(7) 初回 1.00 PM(3) 初回 4.87 参考図書 : 石崎高志著 臨床薬理学レクチャー 医学書院 高田寛治著 薬物動態学 じほう社 ( 三木 ) (