女子高校生の生活習慣や健康に対する意識調査と発育状況 10 年前との比較検討 cm 160 a) 身長当校 全国平均 cm +1.5cm kg 54 b) 体重 当校 全国平均 kg -1.3kg 51

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2008/3/4 調査票タイトル : ( 親に聞く ) 子どものダイエットについてのアンケート 調査手法 : インターネットリサーチ ( ネットマイル会員による回答 ) 調査票種別 : Easyリサーチ 実施期間 : 2008/2/22 14:28 ~ 2008/2/22 21:41 回答モニタ数


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3 睡眠時間について 平日の就寝時刻は学年が進むほど午後 1 時以降が多くなっていた ( 図 5) 中学生で は寝る時刻が遅くなり 睡眠時間が 7 時間未満の生徒が.7 であった ( 図 7) 図 5 平日の就寝時刻 ( 平成 1 年度 ) 図 中学生の就寝時刻の推移 図 7 1 日の睡眠時間 親子

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問 3 問 2 で と回答した方は 上記対策で何を見て知ったか ( 複数回答可 ) % 問 4 問 2で と回答した方は 下記対策で利用したいまたは既に利用しているものは 問 4 何か ( 複数回答可 ) 特定健診 特定保健指導対策 10 (41.9%) がん ( 婦人

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Ⅳ 第 2 次計画の目標 : 第 2 次計画で新たに設定した項目 府民主体 府民と行政と団体 行政と団体 1 内 容 新 規 栄養バランス等に配慮した食生活を送っている府民の割合 2 朝食欠食率 第 1 次計画策定時 35 現状値 第 2 次計画目標 第 2 次基本計画目標 24% 15% 60%

2

小学校の結果は 国語 B 算数 A で全国平均正答率を上回っており 改善傾向が見られる しかし 国語 A 算数 B では依然として全国平均正答率を下回っており 課題が残る 中学校の結果は 国語 B 以外の教科で全国平均正答率を上回った ア平成 26 年度全国学力 学習状況調査における宇部市の平均正答

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5 教5-1 教員の勤務時間と意識表 5 1 ( 平均時間 経年比較 教員年齢別 ) 中学校教員 調査年 25 歳以下 26 ~ 30 歳 31 ~ 40 歳 41 ~ 50 歳 51 ~ 60 歳 7:22 7:25 7:31 7:30 7:33 7:16 7:15 7:23 7:27 7:25

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2) 各質問項目における留意点 導入質問 留意点 A B もの忘れが多いと感じますか 1 年前と比べてもの忘れが増えたと感じますか 導入の質問家族や介護者から見て, 対象者の もの忘れ が現在多いと感じるかどうか ( 目立つかどうか ), その程度を確認する. 対象者本人の回答で評価する. 導入の質

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2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取

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2 調査結果 (1) 教科に関する調査結果 全体の平均正答率では, 小 5, 中 2の全ての教科で 全国的期待値 ( 参考値 ) ( 以下 全国値 という ) との5ポイント以上の有意差は見られなかった 基礎 基本 については,5ポイント以上の有意差は見られなかったものの, 小 5 中 2ともに,

2) 親子関係 家族との生活に満足している について と の調査と比較した 図 12-2 に 示しているように の割合は 4 かとも増加傾向が見られた 日 本 米 中

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Transcription:

女子高校生の生活習慣や健康に対する意識調査と発育状況 10 年前との比較検討 松岡珠実 * 和井内由充子 * 佐藤幸美子 * 浅井直樹 * 下山千景 ** 森正明 * 河邊博史 * 思春期の発育環境については, 誤った情報の 氾濫や栄養を摂り過ぎる一方での運動量の減少 が近年指摘されている 1,2 ) 栄養や運動が身体 に与える影響について教育することは, 肥満や 特定の疾病を抱えた生徒にのみならず, 一般の 生徒にとっても, 将来にわたって健康な生活を 送るための基盤となる 平成 23 年度に文部科学省が実施した学校保 健統計調査 1) で, 女子高校生の平均体重が近 年減少していることが指摘された しかし, 当 高校ではもともと全国平均よりやせ傾向であっ たが, 近年は逆に増加しており全国平均値に近 づきつつある ( 図 1 ) 当校では 10 年以上前か ら春にダイエット関連の健康調査と, 秋にライ フスタイル調査を実施しており, その結果から 生徒の生活習慣や健康意識が 10 年間で如何に 改善されたかを検討した 対象と方法 東京都内某女子高校 2 年生,2001 年度 183 人,2010 年度 190 人を対象とした 進学年開始 直後の 4 月に 食事や睡眠, 生理に関する健康 調査 を, 学年半ばの 11 月に ライフスタイ ル調査票 の質問紙による調査を実施した 各 アンケートの項目から睡眠, 運動, 食行動などの生活習慣やストレス状況, やせ願望, ダイエットに対する意識, 月経状況についての回答を比較した 統計解析は Stat View4.5を用い,χ 2 テストを使用した P <0.05を統計学的に有意とした 成績 1. 食事や睡眠, 生理に関する健康調査 ( 表 1 ) やせ願望に対する設問では, 自分の体型が気になる, もっとやせたいと思う と答えた者は2001 年から有意に減少した 日頃から運動不足にならないように気をつけていますか の設問で いいえ と回答した者は,2001 年から減少傾向にあったが有意差は認められなかった 睡眠と月経に関しての設問では有意差はなかった 2. ライフスタイル調査票 ( 表 2 ) 眠れない, ストレスを感じる, 朝食はほとんど食べない, 食事のバランスがあまり取れていない と回答した者はいずれも2001 年から有意に減少した 運動, 間食, 月経に関しては改善している割合が高まっているが有意差はなかった * 慶應義塾大学保健管理センター ** 日本鋼管病院精神神経科 53

女子高校生の生活習慣や健康に対する意識調査と発育状況 10 年前との比較検討 cm 160 a) 身長当校 全国平均 159.5 159 158.5 158 157.5 157 156.5 +1.4cm +1.5cm kg 54 b) 体重 当校 全国平均 53 52-2.7kg -1.3kg 51 50 49 48 図 1 全国と当校の体格の年次変化 a) 身長 b) 体重 54

慶應保健研究 ( 第 31 巻第 1 号,2013) 表 1 食事や睡眠, 生理に関する健康調査の回答した生徒数 ( 単位 : 人 ) 質問項目 2001 年 2010 年 (1) 毎晩よく眠れますか ( いいえの回答 ) 16( 8.7%) 16( 8.4%)ns (2) 自分の体型や体重がとても気になりますか ( はいの回答 ) 115(62.8%) 96(50.5%)* (3) もっとやせたいと思いますか ( はいの回答 ) 152(83.1%) 141(74.2%)* (4) 日頃から運動不足にならないように気をつけていますか ( いいえの回答 ) 94(51.4%) 76(40.0%) ns (5) 月経が順調ですか ( いいえの回答 ) 4( 2.2%) 8( 4.2%)ns ( ) 内は回答者に占める割合 *p<0.05 **p<0.01 表 2 ライフスタイル調査票の回答 はい と回答した生徒数 ( 単位 : 人 ) 質問項目 2001 年 2010 年 (1) あまりよく眠れない よく眠れない 25(13.0%) 5( 2.6%)** (2) ストレスをとても感じる やや感じる 113(58.6%) 73(38.4%)** (3) 体育以外にはほどんど運動しない 110(57.0%) 95(50.0%)ns (4) 食事のバランスがあまりとれていない とれていない 30(15.5%) 13( 6.8%)* (5) 朝食は週 3 ~ 1 日 ほとんど食べない 14( 7.3%) 1( 0.5%)** (6) 間食は毎日食べる 週 6 ~ 4 日 120(62.2%) 112(59.0%)ns (7) 月経不順 30(18.4%) 21(11.0%)ns ( ) 内は回答者に占める割合 *p<0.05 **p<0.01 考察平成 20 年に改定された学校保健安全法第 9 条では, 担任, 学校医などの関係教職員が連携し, 健康相談や日常の健康観察等により生徒の心身の健康状態を把握するとともに, 組織的な保健指導をすることが求められている 保健室の特質として入学から経年的に生徒の成長 発達を見ることできることから, 健康問題を早期に発見して学級担任などの関係職員と専門職が連携して保健指導をすることが望まれている 渡辺ら 3) がわが国では近年思春期やせ症は増加し, 学校保健現場においての対応が必要とされる機会が増えつつあり, 早期診断には, 学校健康診断の身体計測値からのスクリーニングの 早期発見と介入が重要と述べていることから も, 特に女子生徒に関しては摂食障害の対策を 視野に入れた保健室活動が望まれるものと思わ れる 当校においては, アンケート結果に加え, 身 長, 体重といった健康診断結果を照合して状況 に応じて, 内科学校医, 精神科学校医, スクー ルカウンセラー, 保健師が面接を実施している ( 図 2 ) 面接では生徒にこれから起こりうる健 康障害の予防策を伝え, 体調に応じた生活のア ドバイスを行っている 時期をずらした 2 度の アンケートと, その結果による個別の面接か ら, 専門職の連携による早期対応が可能となり 健康障害の予防に繋げている 西園 4) によれば学校全体でカウンセリング 55

女子高校生の生活習慣や健康に対する意識調査と発育状況 10 年前との比較検討 4 月 5 月 6 月 7 月 8 月 9 月 10 月 11 月 12 月 1 月 2 月 3 月 生徒健診実施 体重測定実施 アンケート調査 食事や睡眠 生理に関する健康調査アンケート アンケート調査 ライフスタイル調査票 面接実施 ( 精神科 内科校医 カウンセラー 保健師 ) 面接実施 ( 精神科 内科校医 カウンセラー 保健師 ) 受診状況確認 ( 精神科 内科校医 保健師 ) 図 2 当校における健康診断後の面接スケジュール シートなどスクリーニングをうまく活用し, 健康を大事にする文化ができてくれば, 学校は摂食障害の早期発見, 早期治療の場として大きな力を発揮するという 当校保健室では内科学校医, 精神科学校医, スクールカウンセラー, 保健師といった保健室スタッフが生徒の抱えている問題を共有するだけでなく, 担任, 生徒指導教員, 主事, 学校長などの学校教員や家族の協力を求められるよう調整し連携を図るよう努めている 食事や睡眠, 生理に関する健康調査 は, 精神科学校医が主に摂食障害や気分障害などの精神科疾患等の早期発見を目的として作成したものであり, 解析も精神科学校医が行い, 面接対象を抽出している 自分の体型や体重がとても気になりますか や, もっとやせたいと思いますか の設問に はい と回答してなおかつ無月経や極端なやせ, 過食嘔吐の傾向が懸念されるような生徒を面接対象としている 月経不順に関しては, まず保健師が面接を実施して月経の時期や期間, ダイエットの有無を確認し, 必要に応じ内科医や精神科医の面接につなげている 例年, 内科医が数名, 精神科医 が10 ~15 名, スクールカウンセラーが15 ~20 名, 保健師面接が30 名前後の面接を実施している状況である その結果健康習慣の意識は改善している傾向で特に体重が気になる, もっと痩せたいと回答する生徒は10 年前より減少した 一方 ライフスタイル調査票 は, 内科学校医や保健師が中心となり作成したものであり, 運動, 食事, 睡眠といった基本的な生活習慣を把握することを目的としている 強いストレス 不眠についてはスクールカウンセラーが面接を実施, 月経不順に関しては保健師が面接を実施して, 内分泌系の問題の確認を要するときには内科学校医, 無月経で極端なやせを伴っている場合には精神科学校医の面接を設定するようにしている 例年, 精神科学校医が 5 名前後, スクールカウンセラーが 5 名前後, 保健師が30 名 ~40 名前後面接を実施している状況である ライフスタイル調査票の結果をみると, 睡眠, 運動, 食事習慣のいずれも10 年前より改善し, ストレスを感じる頻度も減少した 睡眠および運動, 食事の健康習慣を体得すること 56

慶應保健研究 ( 第 31 巻第 1 号,2013) で, 精神的不安定な状況を抑制することが期待 される 5) 10 代は発育がピークとなり, その後半には 終了する時期であり, 生徒や保護者の関心も高 い 生徒健診に加えて新学年と学年の中間のア ンケート実施と面接により発達状態, 生育環境 の社会的要因などの影響や変化を把握して健康 状態を知る機会として捉えている 特に女子高 校生は身体の成熟に伴う体重増加に対して減量 行動をとりやすい 生徒の基礎資料 6) に加えて アンケート調査と個別面接を実施することは, する傾向が高まり, 朝食を摂取する割合が増加した ストレスを感じる割合は減少した 4. アンケート調査と専門職による面接は, 生徒の生活習慣と健康意識の改善を促すことが期待できる 特に思春期やせの初期の兆候を把握して予防に働きかけられる 5. 今後は, 面接に至るまでのチェックの方法を確立して, 個別の面接フォローを充実させていくことや, 生徒の生活習慣や心身の健康に関する問題意識を高められる工夫も課題である 生活実態を把握する上での有力な情報となり, 疾病の早期発見と予防, 好ましい健康習慣の獲 得と発育促進に寄与していると考えられる 文 献 当校の生徒の健康度は,10 年前と比較して向上してきている これは専門職が教員と連携して早期介入 健康教育を行ってきた成果である 心身の成長を見守る中で, 新たな健康問題や身体活動の関連を考慮して対応するためにも, 各専門職と学校担当者を円滑に連携させる保健室運営が, 改定学校保健安全法の精神に適うものである 今後は, 面接に至るまでのチェックの確立をして, 個別の面接フォローを充実させていくことが必要である そして, 生徒の生活習慣や心 1 ) 文部科学省 : 平成 23 年度学校保健統計調査報告書 2 ) 厚生労働省 : 健康日本 21 児童 生徒における現状と目標 3 ) 渡辺久子, 他 : 思春期やせ症の診断と治療ガイド. 文光堂,p.51 53,2006 4 ) 西園文 : 摂食障害治療サポートガイドブック. 女子栄養大学出版部,p.106 119,2003 5 ) 廣美里, 他 : 高校生の生活習慣に関する研究 運動実施状況からみた生活習慣の状況に着目して. 愛知教育大学保健体育講座研究紀要 28:17 25, 2003 6 ) 佐藤幸美子, 他 : 女子高生における除脈を指標とした摂食障害スクリーニング. 慶應保健研究 28:39 42,2010 身の健康に関する問題意識を高められる工夫も 課題である 総 括 1. 女子高校生の生活習慣や健康意識の変化を 2 種類のアンケート調査結果から検討した 2. 食事や睡眠, 生理に関する健康調査の回答を10 年前から比較すると, 自分の体型や体重がとても気になると, もっとやせたいと思いますかの回答では改善が見られた 3. ライフスタイル調査票では, 眠れないと回答する割合は減少し, 食事のバランスを意識 57