Microsoft PowerPoint 【資料3】主な改定内容と課題について0405

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Taro-4

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栄養表示に関する調査会参考資料①

2. 栄養管理計画のすすめ方 給食施設における栄養管理計画は, 提供する食事を中心とした計画と, 対象者を中心とした計画があります 計画を進める際は, それぞれの施設の種類や目的に応じて,PDCA サイクルに基づき行うことが重要です 1. 食事を提供する対象者の特性の把握 ( 個人のアセスメントと栄

栄養成分等の分析方法等及び「誤差の許容範囲」の考え方について

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

Taro-①概要.jtd

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カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

日本スポーツ栄養研究誌 vol 目次 総説 原著 11 短報 19 実践報告 資料 45 抄録

スライド 1

Microsoft Word - 【140821差し替え】日本人の食事摂取基準(2015年版)概要

具体的論点 1( 栄養成分 ) ( 案 ) 平成 28 年 2 月 16 日第 2 回検討会資料 2 から抜粋 1 栄養成分を機能性表示食品制度の対象とする意義 2 安全性の確保 対象となる食品 成分の範囲 摂取量の在り方 3 機能性の表示 適切な機能性表示の範囲 消費者に誤解を与えないための情報の

1カップ 74gあたり エネルギー (kcal) 57 ビタミンE(mg) 14 ブイ クレスゼリーカップタイプりんご水分 (g) 59 ビタミンB1(mg) 2.1 たんぱく質 (g) 0.5 ビタミンB2(mg) 2.1 脂質 (g) 0 ナイアシン (mg) 10.5 炭水化物 (

2

2) エネルギー 栄養素の各食事からの摂取割合 (%) 学年 性別ごとに 平日 休日の各食事からのエネルギー 栄養素の摂取割合を記述した 休日は 平日よりも昼食からのエネルギー摂取割合が下がり (28~31% 程度 ) 朝食 夕食 間食からのエネルギー摂取割合が上昇した 特に間食からのエネルギー摂取

保健機能食品制度 特定保健用食品 には その摂取により当該保健の目的が期待できる旨の表示をすることができる 栄養機能食品 には 栄養成分の機能の表示をすることができる 食品 医薬品 健康食品 栄養機能食品 栄養成分の機能の表示ができる ( 例 ) カルシウムは骨や歯の形成に 特別用途食品 特定保健用

スライド 1

1カップ 74gあたり 6311 エネルギー (kcal) ブイ クレスゼリーカップタイプりんご水分 (g) たんぱく質 (g) 脂質 (g) ナイアシン (mg) 1.5 炭水化物 (g) ナトリウム (mg) 22 ビタミンB12(μg)

目次 < 栄養表示の特徴 > 栄養表示の特徴 1 < 健康 栄養政策と栄養表示の関係 > 健康 栄養政策と栄養表示基準 2 健康 栄養政策と栄養表示 3 健康 栄養政策と栄養表示の関係 4 21 世紀における国民健康づくり運動 ( 健康日本 21) の具体的な推進について 5 < 栄養表示の重要性の

61023 明治インスロー 1 本 200mlあたり エネルギー (kcal) 200 ビオチン (μg) 30 水分 (g) パントテン酸 (mg) 2.00 たんぱく質 (g) 10.0 ビタミンC(mg) 80 脂質 (g) 6.6 コリン (mg) 36.4 炭水化物 (g) 2

1 栄養成分表示を活用してみませんか? 媒体の内容 1 ページ 導入 ねらい : 栄養成分表示 とは 食品に含まれているエネルギー及びたんぱく質 脂質 炭水化物 食塩相当量などを表示したものであることを理解する 栄養成分表示を見たことがありますか? と問いかけ 普段から栄養成分表示を見ているか 見て

山梨県生活習慣病実態調査の状況 1 調査目的平成 20 年 4 月に施行される医療制度改革において生活習慣病対策が一つの大きな柱となっている このため 糖尿病等生活習慣病の有病者 予備群の減少を図るために健康増進計画を見直し メタボリックシンドロームの概念を導入した 糖尿病等生活習慣病の有病者や予備

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Microsoft Word ビタミンB6.docx

,995,972 6,992,875 1,158 4,383,372 4,380,511 2,612,600 2,612, ,433,188 3,330, ,880,573 2,779, , ,

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

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結果の概要

Microsoft PowerPoint - 2.医療費プロファイル 平成25年度(長野県・・

(6/5 19:00修正)資料3 標準的な健診・保健指導プログラム改定のポイント (2) (2)

-3- Ⅰ 市町村国保の状況 1 特定健康診査受診者の状況 平成 23 年度は 市町村国保 (41 保険者 )98,439 人の特定健康診査データの集計を行った 市町村国保の診者数は男性 女性ともに 歳の割合が多く 次いで 歳 歳の順となっている 男性 女性 総数

学校給食摂取基準の活用 学校給食摂取基準は全国平均を示したものであるから その考え方を踏まえた上で 各学校の実態に応じた摂取基準 ( 給与栄養目標量 ) 作成する必要がある EER 算出シートに数字を打ち込めば EER( 推定エネルギー必要量 ) は算出できるが 専門職 ( 管理栄養士 栄養士 )

Microsoft PowerPoint - 100826上西説明PPT.ppt

(5) 食事指導食事指導は 高血圧の改善 耐糖能障害の改善 代謝異常の改善について 各自の栄養状況 意欲などに応じて目標をたて これを達成できるよう支援する形で行った 開始時点で 食事分析を行い 3ヶ月ごとに 2 回進捗状況を確認する面接を行った 1 年後に終了時点の食事分析を行った 各項目の値の増

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学校給食摂取基準の策定について(報告)

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栄養成分表示ハンドブック-本文.indd

(3) 栄養強調表示 ( 一般用加工食品の場合 基準第 7 条第 1 項 一般用生鮮食品の場合 任意表示 ( 第 21 条第 1 項 ) 別表第 12 13) 別表第 に掲げている栄養成分及び熱量を強調する場合は 当該栄養成分の量及び熱量は 別表第 9 の第 3 欄 ( 測定及び算出の方

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シェイクイット! ダイエットプロテインシェイク ( シリアルフレーバー ) [ID 201-JP] 15,000 ( 税込 ) 植物性タンパク質を主原料に グルコマンナン 穀物 ビタミン ミネラル 乳酸菌などを含む 栄養の偏りがちな現代人におすすめの栄養補助食品です ダイエットのために 1 食分の置

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経管栄養食 アイソカル RTU アイソカルプラス EX ネスレヘルスサイエンス ネスレヘルスサイエンス 1.0kcal/ml の流動食さらにやさしく より確かな安全を 1.5kcal/ml の高濃度流動食 アルギニン配合 アイソカルプラス アイソカル 1K ネスレヘルスサイエンス ネスレヘルスサイエ

ただ太っているだけではメタボリックシンドロームとは呼びません 脂肪細胞はアディポネクチンなどの善玉因子と TNF-αや IL-6 などという悪玉因子を分泌します 内臓肥満になる と 内臓の脂肪細胞から悪玉因子がたくさんでてきてしまい インスリン抵抗性につながり高血糖をもたらします さらに脂質異常症

平成 27 年 10 月 6 日第 2 回健康増進 予防サービス プラットフォーム資料 協会けんぽ広島支部の取り組み ~ ヘルスケア通信簿について ~ 平成 27 年 10 月全国健康保険協会広島支部 協会けんぽ 支部長向井一誠

Microsoft Word - P  第1部(第1表~第6表)

エネルギーの食事摂取基準 : 推定エネルギー必要量 (kcal/ 日 ) 男性 女性 年齢 身体活動レベル 身体活動レベル Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅰ Ⅱ Ⅲ 15~17 2,450 2,750 3,100 2,000 2,250 2,500 18~29 2,250 2,650 3,000 1,700 1,95

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00. (案トレ)調査の概要

2

ウ 一 日 当 たりの 摂 取 目 安 量 粒 ~ 粒 お 召 し 上 がりください という 旨 の 幅 の 両 端 をもって 表 示 することも 可 能 です エ 栄 養 成 分 の 量 及 び 熱 量 ( 栄 養 成 分 表 示 ) 一 日 の 摂 取 目 安 量 当 たりの 栄 養 成 分 の

動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2012 年版 ( 日本動脈硬化学会 ) ガイドラインの策定経緯 高脂血症診療ガイドライン :1997 年 動脈硬化性疾患診療ガイドライン 2002 年版 :2002 年 動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2007 年版 :2007 年 動脈硬化性疾患予防ガイドライン

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Shokei College Investigation into the Physical Condition, Lifestyle and Dietary Habits of the Members of a Boy s Soccer Team and their Families (1) Ph

三 大 ( 炭 水 化 物 たんぱく 質 脂 質 ) たんぱく 質 脂 質 炭 水 化 物 水 分 灰 分 暫 定 上 限 量 目 標 量 推 定 平 均 必 要 量 目 安 量 or 推 奨 量 耐 容 上 限 量 15~34g 46g~102g 102g 29.52g 45.9g 推 定 平 均

H22栄養調査

14栄養・食事アセスメント(2)

学校給食摂取基準の策定について(報告)

標準的な健診・保健指導の在り方に関する検討会

次世代ヘルスケア産業協議会第 17 回健康投資 WG 資料 6 職場における食生活改善の質の向上に向けて 武見ゆかり第 6 期食育推進評価専門委員会委員 ( 女子栄養大学教授, 日本栄養改善学会理事長 )

Q1.65 歳での健康寿命に 65 を足せば 0 歳での健康寿命になりますか A1. なりません 別途 健康寿命の算定プログラム 等を用いて 0 歳での健康寿命を算定する必要があります 例えば 健康寿命の算定方法の指針 の図 4-3 の男の算定結果を見ると 健康な期間の平均が 65 歳時点では 17

11_ 中国 2

1 基本健康診査基本健康診査は 青年期 壮年期から受診者自身が自分の健康に関心を持ち 健康づくりに取り組むきっかけとなることを目的に実施しています 心臓病や脳卒中等の生活習慣病を予防するために糖尿病 高血圧 高脂血症 高尿酸血症 内臓脂肪症候群などの基礎疾患の早期発見 生活習慣改善指導 受診指導を実

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Ⅰ 調査の概要 1. 調査の目的この調査は 健康増進法 ( 平成 14 年法律第 13 号 ) に基づき 国民の身体の状況 栄養素等摂取量及び生活習慣の状況を明らかにし 国民の健康の増進の総合的な推進を図るための基礎資料を得ることを目的とする 2. 調査対象調査の対象は 平成 29 年国民生活基礎調

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【資料1】栄養強調表示等について

宗像市国保医療課 御中

具体的論点 1( 栄養成分 ) ( 案 ) 平成 28 年 2 月 16 日第 2 回検討会資料 2 から抜粋 1 栄養成分を機能性表示食品制度の対象とする意義 2 安全性の確保 対象となる食品 成分の範囲 摂取量の在り方 3 機能性の表示 適切な機能性表示の範囲 消費者に誤解を与えないための情報の

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Microsoft PowerPoint - ④(資料3)食品表示法(保健事項(2017)

2013 年 4 月 26 日 消費者委員会第 22 回食品表示部会の資料に対するコメント 日本生活協同組合連合会 品質保証本部 / 安全政策推進室 鬼武一夫 実りある議論のためのコメント ( 赤字が資料に関するコメントである ) 栄養表示における重要な事項は どのような国においても 1. 表示値を

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SoftBank 301SI 取扱説明書

第43号(2013.5)

Q ふだん どんな食事を食べていますか? よく食べる料理は? あまり食べない料理は? よく食べる料理に をつけてみましょう 副菜 野菜やいも 海藻などを主な材料とした料理主食や主菜で不足する栄養面の補強をし 食事に味や彩りなどの多様さをもたらす 主菜 魚や肉 卵や大豆などを主な材料とした料理副食の中

目次 1, 研究背景 1-1, ダイエッに対する関心 1-2, 現代の食生活の問題 2, 肥満になる原因 2-1, 肥満になるメカニズム 2-2, 原因 3, 食事パターンによる比較 3-1, 食事パターンの構造と栄養素等の摂取状況の研究 4, 研究目的と分析手順 4-1, データ概要 4-2, 用

(別紙様式1)

タイトル

Microsoft PowerPoint - 【講習会用】食品表示法

特定健康診査等実施計画 ( 第 3 期 ) 三菱製紙健康保険組合 平成 30 年 4 月

別紙様式 (Ⅴ)-1-3で補足説明している 掲載雑誌は 著者等との間に利益相反による問題が否定できる 最終製品に関する研究レビュー 機能性関与成分に関する研究レビュー ( サプリメント形状の加工食品の場合 ) 摂取量を踏まえた臨床試験で肯定的な結果が得られている ( その他加工食品及び生鮮食品の場合

[ 原著論文 ] メタボリックシンドローム該当者の年齢別要因比較 5 年間の健康診断結果より A cross primary factors comparative study of metabolic syndrome among the age. from health checkup resu

死亡率 我が国における疾病構造 生活習慣病は死亡割合の約 6 割を占めている 我が国の疾病構造は感染症から生活習慣病へと変化 死因別死亡割合 ( 平成 24 年 ) 生活習

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第1 総 括 的 事 項

婦人科63巻6号/FUJ07‐01(報告)       M

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食事摂取基準 (2015 年版 ) の 主な改定内容と課題について

食事摂取基準 (2015 年版 ) の策定方針 < ポイント 1> 生活習慣病の発症予防と共に 重症化予防 も視野に入れて策定 図日本人の食事摂取基準 (2015 年版 ) 策定の方向性 1

< ポイント 2> 対象者の範囲を拡張 食事摂取基準の対象は 健康な個人並びに健康な人を中心として構成されている集団とし 高血圧 脂質異常 高血糖 腎機能低下に関するリスクを有していても自立した日常生活を営んでいる者を含む 具体的には 歩行や家事などの身体活動を行っている者であり 体格 (body mass index:bmi) が標準より著しく外れていない者とする なお 高血圧 脂質異常 高血糖 腎機能低下に関するリスクを有する者とは 保健指導レベルにある者までを含むものとする 疾患を有していたり 疾患に関する高いリスクを有していたりする個人並びに集団に対して 治療を目的とする場合は 食事摂取基準におけるエネルギー及び栄養素の摂取に関する基本的な考え方を理解した上で その疾患に関連する治療ガイドライン等の栄養管理指針を用いる 2

保健指導判定値 受診勧奨判定値 (2010 年版 ) 基準範囲内保健指導レベル受診勧奨レベル 2015 年版 保健指導レベルの目安 高血圧脂質異常高血糖腎機能低下 130mmHg 収縮期血圧 <140mmHg 又は 85mmHg 拡張期血圧 <90mmHg 120mg/dL LDL<140mg/dL 又は 150mg/dL TG<300mg/dL 又は HDL<40mg/dL 100mg/dL 空腹時血糖 <126mg/dL 又は 5.6% HbA1c(NGSP)<6.5% 50 egfr<60 ( 推算糸球体濾過量 egfr の単位 :ml/min/1.73m 2 ) ( 出典 ) 第 3 回 日本人の食事摂取基準 (2015 年版 ) 策定検討会 ( 平成 25 年 4 月 8 日開催 ) 資料 2 3

[ 参考 ] 年齢区分 日本人の食事摂取基準 (2010 年版 ) と同様の年齢区分を用いた 高齢者人口の増大に鑑み 高齢者について詳細な年齢区分設定が必要と考えられるが 今回はそのための十分な知見が得られなかったことから 今後の課題とした 年齢 0~5( 月 ) 6~11( 月 ) 1~2( 歳 ) 3~5( 歳 ) 6~7( 歳 ) 8~9( 歳 ) 10~11( 歳 ) 12~14( 歳 ) 15~17( 歳 ) 18~29( 歳 ) 30~49( 歳 ) 50~69( 歳 ) 70 以上 ( 歳 ) エネルギー及びたんぱく質については 0~5か月 6~8か月 9~11か月 の3 区分 4

[ 参考 ] 対象とするエネルギー及び栄養素 健康増進法に基づき 厚生労働大臣が定めるものとされている熱量及び栄養素について摂取基準を策定する 併せて 健康の保持 増進に不可欠であり そのための摂取量が定量的に見て 科学的に十分に信頼できるものと判断される栄養素があるかについて 検討する 1 国民がその健康の保持増進を図る上で摂取することが望ましい熱量に関する事項 2 国民がその健康の保持増進を図る上で摂取することが望ましい次に掲げる栄養素の量に関する事項イ国民の栄養摂取の状況からみてその欠乏が国民の健康の保持増進に影響を与えているものとして厚生労働省令で定める栄養素 たんぱく質 n-6 系脂肪酸 n-3 系脂肪酸 炭水化物 食物繊維 ビタミンA ビタミンD ビタミンE ビタミンK ビタミンB 1 ビタミンB 2 ナイアシン ビタミンB 6 ビタミンB 12 葉酸 パントテン酸 ビオチン ビタミンC カリウム カルシウム マグネシウム リン 鉄 亜鉛 銅 マンガン ヨウ素 セレン クロム モリブデンロ国民の栄養摂取の状況からみてその過剰な摂取が国民の健康の保持増進に影響を与えているものとして厚生労働省令で定める栄養素 脂質 飽和脂肪酸 コレステロール 糖類( 単糖類又は二糖類であって 糖アルコールでないものに限る ) ナトリウム図栄養素の指標の目的と種類 図健康増進法に基づき定める食事摂取基準 5

< ポイント 3> エネルギーの指標を見直し エネルギーの指標 : エネルギーの摂取量及び消費量のバランス ( エネルギー収支バランス ) の維持を示す指標として 体格 (BMI ) を採用することとした 栄養素の指標 : 従前のとおり 3 つの目的からなる指標で構成した < 目的 > 摂取不足の回避 過剰摂取による健康障害の回避 生活習慣病の予防 < 指標 > 推定平均必要量 推奨量 * これらを推定できない場合の代替指標 : 目安量 耐容上限量 目標量 図栄養素の指標の目的と種類 6

[ 参考 ] 目標とする BMI の範囲 成人期を 3 つの区分に分け 目標とする BMI の範囲を提示 肥満とともに 特に高齢者では低栄養の予防が重要 発症予防の基本的考え方 死因を問わない死亡率 ( 総死亡率 ) が最低になる BMI をもって健康的であると考えることとした 年齢 ( 歳 ) 総死亡率が最も低かった BMI(kg/m 2 ) 18~49 50~69 レビューによる検証 観察疫学研究において報告された総死亡率が最も低かった BMI の範囲 (18 歳以上 ) 18.5~24.9 20.0~24.9 70 以上 22.5~27.4 日本人の BMI の実態等 総合的に判断 7

目標とする BMI の範囲 (18 歳以上 ) 年齢 ( 歳 ) 目標とする BMI(kg/m 2 ) 1,2 18~49 50~69 18.5~24.9 20.0~24.9 70 以上 21.5~24.9 3 1 男女共通 あくまでも参考として使用すべきである 2 観察疫学研究において報告された総死亡率が最も低かった BMI を基に 疾患別の発症率と BMI との関連 死因と BMI との関連 日本人の BMI の実態に配慮し 総合的に判断し目標とする範囲を設定 3 70 歳以上では 総死亡率が最も低かった BMI と実態との乖離が見られるため 虚弱の予防及び生活習慣病の予防の両者に配慮する必要があることも踏まえ 当面目標とする BMI の範囲を 21.5~24.9 kg/m 2 とした 今後の課題 目標とする BMI の設定方法について 引き続き検証が必要である 目標とする BMI に見合うエネルギー摂取量についての考え方 健康の保持 増進 生活習慣病の予防の観点からは 身体活動の増加も望まれることから 望ましいエネルギー消費量の考え方についても 整理を進めていく必要がある 8

基本構造 < ポイント 4> 総論を充実させ 参考資料として 対象特性 と 生活習慣病とエネルギー 栄養素との関連 を追加 総論 各論 参考資料 策定方針 策定の基本的事項 策定の留意事項 活用に関する基本的事項 エネルギー 栄養素 34 項目 たんぱく質 脂質 炭水化物 ビタミン ミネラル 脂溶性 水溶性 多量 対象特性 生活習慣病とエネルギー 栄養素との関連 エネルギー産生栄養素バランス A, D, E, K 妊婦 授乳婦乳児 小児高齢者 高血圧脂質異常症糖尿病慢性腎臓病 (CKD) B 1, B 2, ナイアシン, B 6, B 12, 葉酸, ハ ントテン酸, ヒ オチン, C Na, K, Ca, Mg, P 参考 水 微量 Fe, Zn, Cu, Mn, I, Se, Cr, Mo 9

策定の基本的事項 < ポイント 5> レビュー方法を記述 可能な限り科学的根拠に基づいた策定を行うことを基本とした 系統的レビューの手法を用いて 国内外の学術論文並びに入手可能な学術資料を最大限に活用することにした エネルギー及び栄養素についての基本的なレビューにおいては 食事摂取基準 (2010 年版 ) の策定において課題となっていた部分について特に重点的にレビューを行った 併せて 高齢者 乳児等の対象特性についてのレビューを行った エネルギー及び栄養素と生活習慣病の発症予防 重症化予防との関係についてのレビューは 高血圧 脂質異常 高血糖及び腎機能低下に関するリサーチクエスチョンの定式化を行うため PICO 形式を用いてレビューした また このほか栄養素摂取量との数量的関連が多数の研究によって明らかにされ その予防が日本人にとって重要であると考えられている疾患に限ってレビューの対象とした この際 研究対象者の健康状態や重症度の分類に留意して検討することとした これらのレビューは 平成 25 年度厚生科学研究費補助金 ( 循環器疾患 糖尿病等生活習慣病対策総合事業 ) の 日本人の食事摂取基準の策定に資する代謝性疾患の栄養評価に関する研究 を中心に行った こうしたレビューの方法については 今後 その標準化を図っていく必要がある 10

< ポイント 6> 基準改定の採択方針を記述 推定平均必要量 (estimated average requirement:ear) 従来 推定平均必要量が設定できなかった栄養素において 十分な科学的根拠が得られた場合には 新たに推定平均必要量を設定する 推定平均必要量の算定において 身体的エンドポイントを変更した場合には その根拠に基づき推定平均必要量の値を変更する 参照体位の変更に伴い 必要に応じて推定平均必要量の値を変更する 推奨量 (recommended dietary allowance:rda) 推定平均必要量を新たに設定した場合または推定平均必要量を変更した場合は 推奨量を新たに設定または推奨量の値を変更する 変動係数を変更した場合には 推奨量を変更する < 変動係数の変更に必要な条件 > 変動係数の変更が必要と判断される明確な根拠が得られる場合 11

目安量 (adequate intake:ai) 栄養素の不足状態を示す人がほとんど存在しない集団で 日本人の代表的な栄養素摂取量の分布が得られる場合は その中央値とする この場合 複数の報告において 最も摂取量が少ない集団の中央値を用いることが望ましい また 目安量の策定に当たっては 栄養素の不足状態を示さない 十分な量 の程度に留意する必要があることから その取扱いは以下のとおりとする 1 他国の食事摂取基準や国際的なガイドライン 調査データ等を参考に判断できる場合には 中央値にこだわらず 適切な値を選択する 2 得られる日本人の代表的な栄養素摂取量のデータが限定的かつ参考となる情報が限定的で 十分な量 の程度の判断が困難な場合には そのことを記述の上 得られるデータの中央値を選択しても差し支えない 耐容上限量 (tolerable upper intake level:ul) 十分な科学的根拠が得られた場合には 新たに耐容上限量を設定する 新たな知見により 健康障害発現量を見直す必要が生じた場合には 耐容上限量を変更する 不確実性要因の決定において変更が必要な知見が新たに得られた場合には 不確実性因子 (UF) を変更する 12

目標量 (tentative dietary goal for preventing life-style related diseases:dg) 値を設定するに十分な科学的根拠を有し かつ現在の日本人において 食事による摂取と生活習慣病との関連での優先度が高い場合には 新たに目標量を設定する 十分な科学的根拠により導き出された値が 国民の摂取実態と大きく乖離している場合は 当面摂取を目標とする量として目標量を設定する 13

2,000 参考文献数[ 参考 ] 食事摂取基準 の参考文献数の推移 1,857 1,500 1,244 1,000 850 632 500 225 276 0 1990 年第 4 次改定 1995 年第 5 次改定 2000 年第 6 次改定 2005 年 2010 年 2015 年 栄養所要量 食事摂取基準 14

活用の基本的事項 < ポイント 7> 活用の基本的考えを整理 図食事摂取基準の活用と PDCA サイクル 15

< ポイント 8> 食事摂取基準の活用と食事摂取状況アセスメントの概要を整理 生活環境 生活習慣 食事によって得られる摂取量 食事摂取基準の各指標で示されている値 身体状況調査による体重 BMI 臨床症状 臨床検査の利用 比較 食事摂取状況のアセスメント エネルギーや栄養素の摂取量が適切かどうかを評価 食事調査票の有用性と限界 調査票の開発や妥当性研究 16

その他の主な改定内容 < ポイント 9> 生活習慣病の予防を目的とした 目標量 を充実 ナトリウム ( 食塩相当量 ) について 高血圧予防の観点から 男女とも値を低めに変更 18 歳以上男性 :2010 年版 9.0g/ 日未満 2015 年版 8.0g/ 日未満 18 歳以上女性 :2010 年版 7.5g/ 日未満 2015 年版 7.0g/ 日未満 小児期からの生活習慣病予防のため 食物繊維とカリウムについて 新たに 6~17 歳における目標量を設定 17

< ポイント 10> 参考資料として 対象特性 生活習慣病とエネルギー 栄養素との関連を記述 対象特性 妊婦 授乳婦 乳児 小児 高齢者については その特性上 特に着目すべき事項について 参考資料として示した 妊婦 授乳婦について 推定平均必要量 推奨量の設定が可能な栄養素については 付加量を示した また 目安量の設定に留まる栄養素については 付加量ではなく ある一定の栄養状態を維持するのに十分な量として想定される摂取量としての値を示した 高齢者については 過栄養だけではなく 低栄養 栄養欠乏の問題の重要性を鑑み フレイル ( 虚弱 ) やサルコペニア ( 加齢に伴う筋力の減少 ) などとエネルギー 栄養素との関連についてレビューし 最新の知見をまとめた 生活習慣病とエネルギー 栄養素との関連 生活習慣病とエネルギー 栄養素摂取の関連については 高血圧 脂質異常症 糖尿病 慢性腎臓病 (CKD) に関して レビューした結果を基に特に重要なものについて図にまとめ 解説と共に参考資料として示した 18

[ 参考 ] 生活習慣病とエネルギー 栄養素との関連 ナトリウム ( 食塩 ) カリウム (-) (++) (-) 炭水化物アルコール (+) 高血圧 脂質 エネルギー (+) 肥満 (++) たんぱく質 肥満を介する経路と介さない経路があることに注意したいこの図はあくまでも概要を理解するための概念図として用いるに留めるべきである 図栄養素摂取と高血圧との関連 ( 特に重要なもの ) 19

(+) (+) (++) エネルギー 肥満 脂質異常症 脂質 飽和脂肪酸 多価不飽和脂肪酸 食事性コレステロール 炭水化物 水溶性食物繊維 糖 アルコール たんぱく質 (++) (-) (+) (-) (+) (+) 高 LDL コレステロール血症 低 HDL コレステロール血症 高トリグリセライド血症 肥満を介する経路と介さない経路があることに注意したいこの図はあくまでも概要を理解するための概念図として用いるに留めるべきである 図栄養素摂取と脂質異常症との関連 ( 特に重要なもの ) 20

脂質 たんぱく質 炭水化物糖食物繊維アルコール エネルギー (+) 内臓脂肪型肥満 ( インスリン拮抗性 ) (++) (-) (++) 高血糖 肥満を介する経路と介さない経路があることに注意したいこの図はあくまでも栄養素摂取と高血糖との関連の概要を理解するための概念図として用いるに留めるべきである インスリン作用不足図 栄養素摂取と高血糖との関連 ( 特に重要なもの ) 21

矢印は すべて正の関連 ナトリウム ( 食塩 ) 高血圧 たんぱく質 炭水化物 リン 高血糖 慢性腎臓病 (CKD) アルコール エネルギー 肥満 脂質 脂質異常 高血圧 脂質異常症 糖尿病に比べると栄養素摂取量との関連を検討した研究は少なく 結果も一致していないものが多い また 重症度によって栄養素摂取量との関連が異なる場合もあるこの図はあくまでも栄養素摂取と慢性腎臓病 (CKD) の重症化との関連の概要を理解するための概念図として用いるに留めるべきである 図栄養素摂取と慢性腎臓病 (CKD) の重症化との関連 ( 重要なもの ) 22

< ポイント 11> 食事摂取基準の策定に係る 今後の課題 を整理 栄養素等 エネルギー ( 再掲 ) 質飽和脂肪酸 課題 目標とするBMIの設定方法については 引き続き検証が必要である また 目標とするBMI に見合うエネルギー摂取量についての考え方 健康の保持 増進 生活習慣病の予防の観点からは 身体活動の増加も望まれることから 望ましいエネルギー消費量の考え方についても 整理を進めていく必要がある 脂 小児における主要な脂肪酸 特に飽和脂肪酸の摂取量と摂取源に関する記述疫学的な研究に加えて 他の栄養素摂取量に及ぼす影響や 循環器疾患リスク等の健康リスクとの関連に関する研究が必要である 炭水化物炭水化物 食物繊維 糖の健康影響はその種類によって同じではない 特に 単糖 二糖類と多糖類のそれでは大きく異なる その健康影響は その摂取量実態も含めて 日本人ではほとんど明らかになっていない それぞれの糖の目標量の設定に資する研究 ( 観察研究または介入研究 ) を進める必要がある 乳児並びに小児における食物繊維の健康影響は その摂取量実態も含めて 日本人では十分には明らかになっていない 小児における食物繊維の目標量の設定に資する研究 ( 観察研究または介入研究 ) を進める必要がある 23

栄養素等 エネルギー産生栄養素バランス 介入研究 ) を進める必要がある 水溶性ビタミンビタミン C 課題 1エネルギー産生栄養素バランスは 他の栄養素の摂取量にも影響を与える これらの栄養素バランスと食事摂取基準で扱っている他の栄養素の摂取量との関連を 日本人の摂取量のデータを用いて詳細に検討する必要がある 2 脂質の目標量の上の値を算定するための根拠となる研究は 世界的に見ても少ない 日本人の現在の脂質摂取量の分布を考慮した上で 脂質目標量の上の値を算定するための根拠となる研究 ( 観察研究又は 指標として推定平均必要量 推奨量が適切であるか 又は目標量が適切であるか さらに どの健康障害を回避することを目的として算定すべきか 水 について 文献等を精査し 再検討する必要があると考えられる 多量ミネラルに関するデータが必要である 微量ミネラルカルシウムリン鉄ヨウ素 食事摂取基準として 骨粗鬆症 骨折を生活習慣病として扱うかどうか そして そこにおけるカルシウムの意義について検討する必要があると考えられる リン必要量の算定のために 生体指標を用いた日本人のリン摂取量 日本人妊婦 授乳婦における鉄の必要量の算定に資する基礎データの収集が必要である 他国に比べて摂取量が著しく多い日本人におけるヨウ素の習慣的な摂取量分布並びに健康影響に関するデータが必要である 現在のところ 水の摂取量並びに水の摂取源について 日本人を対象とした信頼度の高い研究は極めて乏しく 参考となる報告は見いだせていない 24