1. MOSFET の物性とモデル化の基礎 群馬大学大学院理工学府電子情報部門客員教授青木均 2014/6/26
MOSFET の物性とモデル化の基礎 EDA 関連技術研究, 海外と日本の違い 主なトランジスタモデルの種類 SPICE 用モデルの種類 半経験的なCompact Modelの要素 モデル式の導出 MOSFETのCompact Model BSIMモデルシリーズ バルクMOSFET 用 BSIMモデル 完全なMOSFETモデルの導出 (SPICEでは不可能) SPICEのコンパクトモデルの導出 ( 垂直電界からの導出 ) 等価回路のY-Matrix 化 演習問題
EDA 関連技術研究, 海外と日本の違い シミュレーションツールの90% 以上が欧米製品 総合 LSI 設計ツールでは, ほぼ100% が欧米製品 欧米ではシミュレーション技術, デバイスモデリング技術の研究がモチベートされている 大学 -UCB,Stanford,MIT... 企業 -Motorola, NXP, Xerox, TI, ST-Semicon 日本では,LSI 回路設計研究がモチベートされている STARC- 広島大学が MOSFET モデル HiSIM-HV, HiSIM2 の研究実施
主なトランジスタモデルの種類 赤字 : 日本で多く使用 デバイスの種類 一般的なモデル 最新のモデル (βを含む) アクティブ デバイス JFET UCBモデルの改良型 BSIM3,EKV2.0,SP2000 PSP- 表面電位型 Bulk CMOS BSIM4,EKV3.0 HiSIM2- 表面電位型 RFマクロモデル BSIM6- 電荷ベース SOI CMOS BSIMSOI3, 4 DMOS, LDMOS HVMOS, IGBT, SiC JFET HiSIM-HV, カスタムマクロモデル HiSIM-IGBT, A-IGBT, A-LDMOS, A-SiC-JFET,A-Self-heat* HiCUM2.1 A-Scalable BJT BJT/SiGeBJT MEXTRAM504 Gummel-Poon Enhanced G-P TFT RPI-TFT (p-si) UOTFT( 有機 TFT 用 ) HPATFT (a-si),rpi-atft AA-TFT (a-si) パッシブ デバイス ダイオード GaAs MESFET,HEMT GaAs HBT スパイラルインダクタキャパシタ抵抗 混成改良型 ( 元はUCB Diode) Curtice Statz,Root Parker,Tajima その他多く存在 UCSD, Agilent HBT シミュレータの種類に依存シミュレータの種類に依存シミュレータの種類に依存 *6 月 2 日 IEEE IMS-RFIC2014 (Florida, U.S.A.) で発表
SPICE 用モデルの種類 (IGBT の例 ) CAD(Function) Model Macro Model SPICE のエレメントのみで作成 サブサーキット Compact Model 物理的なモデル 経験的なモデル 半経験的なモデル Table-lookup Model ( 表参照型 ) シミュレーションするすべてのドメイン, 範囲についての測定を行う. データベース化 測定データ間に値は, 多項式で内挿する
半経験的な Compact Model の要素 物理式に基づいた方程式 指数項 対数項が少ない 微分方程式は境界条件を与える必要あり 不連続点が出にくい 多項式近似やテーラー展開などの関数により収束性を上げる 等価回路の Y-Matrix どのデバイス ノードを基準に作成するか 対称型の方が収束有利
デバイス構造 物性などから物理式を導出 多くのプロセスデバイスの測定データを元に 二次効果などを加える ( 不確定項はモデル パラメータとする ) シミュレーション確度にあまり影響しない 方程式の項を定数化 関数を簡略化 (Polynominal 近似 テーラー展開など ) モデルパラメータを 測定データから抽出 最適化してシミュレーション結果を測定と比較 モデル式の導出 電荷密度 ρ(n, p) ( ポアソン方程式 ) ( 連続方程式 ) ソース R S 電界 ε n + X j ( キャリア輸送方程式 ) L ゲート W L D L eff P - Si サブストレート n + 電流密度 J(Jn, Jp) ドレイン R D SiO 2
MOSFET の Compact Model しきい値に基づいた電荷モデル ( ソース基準 ) MOSFET Level 1, 2, 3 モデル BSIM1, 3, 4モデル 電荷基準モデル ( バルク基準 ) EKVモデル BSIM6モデル 表面電位モデル ( バルク基準 ) HiSIM2モデル PSPモデル 電流特性と対比して解析しやすい 収束が早い VDS=0において逆 順方向で非対称であり, 不連続点が発生しやすい DC,ACにおいて対称であり, 不連続点が発生しにくい 物理的モデルの度合いが高い しきい値パラメータが存在しないため, 電流特性が直感的にわからない 収束性能が理論的にはしきい値基準モデルと同等 DCにおいて対称であり, 不連続点が発生しにくい 物理的モデルの度合いが高い しきい値パラメータが存在しないため, 電流特性が直感的にわからない 回路, ドメインによっては収束に問題あり
BSIM モデルシリーズ WCM2012 より
バルク MOSFET 用 BSIM モデル ソース基準 バルク基準 BSIM1 サブミクロン用解析モデル (L > 0.8μm を保証 ) BSIM2 ディープサブミクロン CAD モデル ( 非線形近似 )(L > 0.2μm を保証 ) BSIM3(Hewlett-Packard 社協力 ) しきい値電圧ベースのディープサブミクロン物理モデル (L > 0.1μmを保証 ) 最初のCMC 標準モデル BSIM4 微細加工のMOSに対応のためサポートする物性を拡張した, しきい値電圧ベースのMOSモデル RF-MOSFETをサポートのため小信号 AC 等価回路を拡張 BSIM6 チャージ ( 電荷 ) ベースの対象型 MOSFET モデル 電荷を中心にモデル式を導出 BSIM4の物性とモデルパラメータをサポート CMC 標準モデル Verilog-Aコード供給
完全な MOSFET モデル SPICE では不可能なアプローチ
シリコンと酸化膜 2D Poisson 方程式の算出 Nguyen and Plummer, IEDM 1981 [7]. Sub-threshold 領域において 境界条件 : 12
2D 境界値問題へのアプローチ (1) ν(x,y) はN a による均一でない式を扱い,Topの境界条件を満足するための項 固有値 uはラプラス方程式によるソース, ドレインに印加される電位に寄与する量 u L, u R, u B はψ(x, y) が他の境界条件を満足するために用いる均一な式 Top,Bottom,Rightで :u L =0.Top,Bottom,Leftで :u R =0.Top,Left,Right でu B =0. 13
2D 境界値問題へのアプローチ (2) 境界条件を満足するためには 14
u B と高次項 u L, u R の消去 電位 ψ の 2D 近似解法 15
SPICE のコンパクトモデル導出 垂直電界からの導出
MOSFET の基本物理モデル N チャネル MOSFET のチャネルピンチオフ状態での断面図 x 長チャネル (L mask > 10μm) 電流密度方程式による解法 y V G I D V D = 小 i dsat n + 反転層 n + (a) 線形領域特性 v dsat VD x y V G V D = 大 I D i dsat n + n + 反転層 (b) 飽和領域特性 v dsat VD
ナノスケール MOSFET モデルの物性 Pao&Sah のチャージシート近似モデル 反転層は限りなく薄く, チャネルの厚さによって電位は変化しない Δψ s 反転層 W I(x) Δx Ψ s (x) Ψ s (x + Δx) 基板
ドリフト電流と拡散電流 (1) ( ) = ( ) + ( ) I x I x I x drift x と x + Dx 間の電位差は, diff ( x) ( x x) ( x) Δ ψ = ψ +Δ ψ s s s この表面電位差と, 表面移動度 (μ), 反転電荷 (Q I), チャネル幅 (W) を使って I drift を表すと, ' W Δx 0 Idrift ( x) = μ( Q I ) Δψ x ( x) Idrift ( x) = μw ( Q' I ) Δx ' dq I Idiff ( x) = μwφ (φ t t は熱電圧 ) dx dψ s dx dψ I W( Q ) W dx dq dx ' ' s I DS = μ I + μ φt
ドリフト電流と拡散電流 (2) ここでチャネルのソース端 (x = 0) における表面電位を ψ s0 そこでの Q I を Q I0 とおく. 同様にドレイン端 (x = L) における表面電位を ψ sl そこでの Q I を Q IL とおく.I DS を x = 0 から x = L まで積分すると以下のようになる. I = I + I DS DS1 DS2 L 0 ψ sl Q ' ' DS = μ( I) ψs + φt μ I ψ I dx W Q d W dq ' IL ' s 0 Q I 0 ' sl Q IL W ψ ' ' IDS = ( Q I ) d s t dq I L μ ψ + φ μ ψ ' s 0 Q I 0 ψ sl W I = μ Q dψ s 0 ' ( ) DS1 I s L ψ W I = μφ Q Q L ' ' ( ) DS 2 t IL I 0 キャリアの移動度がチャネル内のすべてにおいて一定とする
逐次チャネル近似 I DS1 と I DS2 を解析するために,Q I を ψ s の関数として求める必要がある. 逐次チャネル近似 (Gradual Channel Approximation) を思い出して,UCB MOSFET レベル 2 の導出を Bulk 基準に応用すると ' ' Q I = C ox VGB VFB ψ s + C ox は酸化膜容量,V GB はゲート 基盤電圧,V FB はフラットバンド電圧,Q B は基盤電荷で, Q = q d N ' B B A ここで d B は空乏層の厚み, N A はアクセプタの濃度を表す. Q C ' B ' ox d B = 2ε s qn A ψ s
微少領域 dx の電流密度概念図 逐次チャネル近似 チャネルが十分に長い場合, ξx ξ y チャネル長方向の微少部分 dxに着目してみる. チャネル内の電子密度をn (x,y) とするとドリフトによる電流密度は以下のように与えられる. (, ) (, ) dv Jn= qμnn x y ξ= qμnn x y dy I ドレイン電流を J n についてチャネルの境界面積で積分すれば, D Z W = dz Jdx n 0 0
ドリフト電流と拡散電流 (3) 前頁より Q = 2qε N ψ ' B s A s γ = 2qε s N A C ' ox Q = γc ψ ' ' B ox s 前頁の Q I は ( ) Q = C V V ψ γ ψ ' ' I ox GB FB s s 以上を代入すると, ドレイン ソースのドリフト電流は, W I C V V L μ = ψ ψ 2 ψ ψ 3 γ ψ ψ I 1 2 ( )( ) ( ) ( 3 3 ) ' 2 2 2 2 DS1 ox GB FB sl s0 sl s0 sl s0 ドレイン ソースの拡散電流は, W = C L μ φ ψ ψ + φγ ψ ψ ( ) ( 1 1 ) ' 2 2 DS 2 ox t sl s0 t sl s0
表面電位と電荷基準モデル 収束性を向上させコンパクトモデルとして実用的にするために, このチャージシートモデルを改良, 様々な微細デバイスプロセスによる物理現象を取り入れてできたのが, 表面電位 (Surface Potential) モデル HiSIM2, PSP Model など 前頁の ψ s0,ψ sl はコンピュータを用いた繰り返し最適化によって求めるため収束問題の可能性有 ソース, ドレインにおける反転電荷に注目し, 面積密度関数として表していくのが電荷基準 (Charge Based) モデル BSIM3/4/6 Model など 前頁の簡略化した表面電位から, しきい値電圧に置き換えている. 物理ベースの解析モデルなので近似的モデル式が多く存在する 今後普及される可能性の高いモデル BSIM6
Gauss の法則 BSIM6 の基礎物性 (1) 長チャネル MOSFET における Poisson 方程式 基板電荷密度 基板効果 γ 0 Γ= 1 + δ PD 上記を合わせると
BSIM6 の基礎物性 (2) Q i =0 の時, ピンチオフ電位を ψ P =ψ S とおくと V t が小さく,ψ S >V t のとき 反転電荷の線形化すると ここで n q は傾き係数
BSIM6 の基礎物性 (3) 線形化と正規化を行うと 他のモデルでは無視している 他のモデルと違い, 電荷式を解くときに近似を行っていない 電荷方程式を解析的に導出 反転電荷 q i は解析的手法を用い解いている
ドレイン電流 BSIM6 のドレイン電流式 移動度モデル ( 対称性を保っている ) 電荷線形化と正規化による計算
しきい値電圧の扱い チャージベースのため直接的なゼロ電圧でのV TH はパラメータとして存在しない 基板基準のモデル EKVモデルの応用 フラットバンド電圧, ドーピング濃度によって内部で算出される BSIM4 BSIM6 VTH0 または NDEP NDEP
MOSFET の容量モデル C ゲート C ソースドレイン GBO ゲート GSO C GDO ソース ドレイン C j C jsw C jsw C j 基板 実際の容量測定 TEG
アクティブなゲート容量 チャネル電荷は電荷保存則より Q c = Q G + Q B または Q C = Q S + Q D Q B = Q G として表せる. 反転層の電荷を Q n とすると,Q S と Q D はそれぞれ, Q S = W Q D = W L 0 L 0 1 y L Q n dy y L Q ndy 以上の関係式から各容量が導ける. 例えば, C GS = δq G δv S C GB = δq G δv B
接合容量とオーバーラップ容量 ソース ゲート ドレイン 接合容量 底部の面積容量と周囲長容量の和 C BS = C j A S 1 V BS / P B M j + C jsw P S 1 V BS / P B M jsw C j C jsw C jsw C j 基板 C BD = C j A D 1 V BD / P B M j + C jsw P D 1 V BD / P B M jsw C GSO ゲート オーバーラップ容量 C GBO C GDO チャネル外容量のために基本的には固定容量. フリンジング容量と分割不可能. 例えば線形領域 (V GS > V on + V DS ) では, ソース ドレイン C GB = C GBO L C GS = C 0 1 V GS V DS V on 2 + C GSO W 2 V GS V on V DS C GD = C 0 1 V GS V on 2 + C GDO W 2 V GS V on V DS
MOSFET の等価回路 R D Drain Gate C GDO C GBO Bulk C GSO Source R S
BSIM6 の等価回路概略
MOSFET のノイズ源モデル ドレイン C BD C GD r D i rd g BD ゲート g DS i D 基板 C GS g BS r S i rs C GB ソース
4 端子 MOSFET で考察 等価回路の Y-Matrix 化 MOSFET の直流等価回路 Dx Drain R D D r BD I BD Gate Bulk G I DS I BS B S r BS R S Sx Source
従属電流源に関するマトリックス 1 ドレイン ソース電流に関するマトリックス D G S B I DS D gds 0 gds 0 G 0 gm gm 0 = + I DS S gds gm gm + gmbs + gds gmbs B 0 0 gmbs g mbs 2 接合ダイオード電流に関するマトリックス gbd gbd VBD + IBD gbd g = bd V BD I + BD gbs gbs VBS + IBS = g g V + I bs bs BS BS
MOSFET の全直流 Y マトリックス Dx Sx D G S B 1 1 0 0 0 0 RD RD 1 1 Dx 0 0 0 0 RS RS Sx 1 1 1 1 D 0 + + gds 0 gm gmbs gds gbd + gmbs RD RD rbd rbd G 0 0 0 gm gm 0 S 1 1 B 0 gds gm gm + gmbs + gds gbs gmbs RS rbs 1 1 1 1 0 0 g 0 g g + + g + g + g rbd rbs rbd rbs bd mbs bs mbs bd bs
演習問題 1 MOSFET のコンパクトモデルは, どのような外部変数によってシミュレートされますか? まずは電圧, 電流がありますがその他をすべてあげてください.
演習問題 2 MOSFET の交流簡易化 3 端子等価回路 V g V d Gate Drain Source V s Gate Drain Source????????? V V V g d s =??? MOSFET の複素 Y-Matrix を求めてみよう! 行列の? マークを埋めてください.
MOS トランジスタ関連お勧め書籍 MIT 基礎電子工学教科書 2 半導体素子とモデル (1979 年 ), C.L. サール ( 著 ), 宇都宮敏男, 菅野卓雄 ( 訳 ) Physics of Semiconductor, 2 nd (3 rd より良い ), S. M. Sze Device Electronics for Integrated Circuits, 2 nd, Richard S. Muller, Theodore I. Kamins CMOSモデリング技術, 青木均ほか, 丸善出版 シリコンFETのモデリング, 青木均著, 西義雄監修, アジソン ウェスレイ パブリッシャーズ ジャパン ( 増版終了 )