561 加藤真也 1) 小林千明 1) 中西優子 1) 伊勢赤十字病院医療技術部 1) 小児発熱性疾患におけるプロカルシトニンの臨床的意義の検討 ~ 川崎病を中心に ~ はじめに プロカルシトニン (PCT) は全身症状を伴う細菌感染症に特異的に上昇し かつ重症度を反映する炎症マーカーとしての有用性が報告されている また 小児においても細菌性敗血症の鑑別診断や 髄膜炎の重症度に関する有用性が報告されている 今回我々は小児の発熱性疾患 特に川崎病を中心に PCT の臨床的意義を検討したので報告する 対象及び方法 2012 年 1 月から 2014 年 11 月までに初診時に PCT の測定を行なった小児を対象とした 測定機器 ;SphereLight wako 測定試薬 ; スフィアライト ブラームス PCT 測定原理 ; 化学発光酵素免疫測定法 結果 川崎病や急性巣状性細菌性腎炎やリケッチア感染症である日本紅斑熱で高値 マイコプラズマ肺炎や気管支炎 ウイルス性胃腸炎では低値であった また 川崎病 ( 不完全型を含む ) において PCT を目的変数とした重回帰分析では PCT と関連が認められた因子は 肝機能 兆候数 入院日数であった (p<0.05) また 不完全型川崎病と川崎病が疑われた疾患群では有意に不完全型川崎で PCT が高値であった (p<0.05) 考察 川崎病は近年増加傾向にあるが 兆候が揃わない不完全型川崎病が年々増加しているといわれている (19.8%: 第 22 回川崎病全国調査 ) 当院でも川崎病の 20.3% が不完全型であり PCT の有用性が示唆された 川崎病において PCT が低値のものも存在するが 重症度と関連すると思われる 当日は症例数を増やし詳細を報告する
562 当院におけるプロカルシトニンとプレセプシンの比較検討 東恭加 1) 加藤淳子 1) 井元明美 1) 上霜剛 1) 秋篠範子 1) 兵庫県立柏原病院 1) はじめに プロカルシトニン (PCT) は 細菌性敗血症のマーカーとして日常診療に用いられており 当院でもイムノクロマト法 (PCT-Q: 和光純薬 ) による半定量法で実施してきた またプレセプシンも敗血症の新たなマーカーとして注目されている 今回 PCT-Q PCT 定量法およびプレセプシンを比較検討する機会を得たので報告する 対象および方法 2014 年 5 月 ~7 月に当院で PCT 検査依頼のあった 32 例を対象に PCT-Q PCT 定量 プレセプシンを測定した 症例の内訳は細菌感染症例 14 例 ( 敗血症 7 例を含む ) 非感染症例 18 例であった 使用機器 試薬 PCT 定量はミュータスワコー i30( 和光純薬 ) プレセプシンは PATHFAST(LSI メディエンス ) を使用し 各専用試薬にて測定した 結果 PCT-Q の 4 段階判定でみた PCT 定量との一致率は 79% であった 敗血症と非敗血症において有意差検定を行った結果 PCT(p<0.0026) プレセプシン(p<0.1008) となり PCT において有意差が認められた 敗血症を含む細菌感染症群と非感染症群において有意差検定を行った結果 PCT(p<0.0019) プレセプシン (p<0.0350) ともに有意差が認められた また ROC 曲線下面積の比較を行った結果 PCT 0.83 プレセプシン 0.72 で その時のカットオフ値は PCT 0.34ng/mL プレセプシン 890pg/mL となった 腎機能の影響について egfr 値 60 以上 60 未満群に分けて有意差検定をしたが PCT プレセプシンともに有意差は認められなかった 考察 当院では PCT-Q による半定量法で日常診療を行ってきたが PCT 定量法により敗血症まで重症化していない細菌感染症群を見落とさない可能性が示唆された 連絡先 0795-72-0524 ( 内線 :285)
563 プレセプシン測定の留意点 竹内慶太 1) 浅海隆司 1) 小山正晴 1) 池田寿昭 1) 東京医科大学八王子医療センター 1) はじめに プレセプシン( 以下 P-sep) は敗血症において早期に上昇, 重症度を良く反映, またその他の要因の影響を受けにくいマーカーと言われている 当院でも臨床研究として P-sep を測定しており, 若干の知見を得たので報告する 測定機器 試薬 PATHFAST(LSI メディエンス ), パスファースト Presepsin(LSI メディエンス ) 方法 結果 1. 検体安定性 : 健常人と患者検体の全血 EDTA 血漿 血清 クエン酸血漿を室温と 4 に分け 24 時間まで測定したところ, 健常人では全血 クエン酸血漿は採血直後以降,EDTA 血漿 血清は 8 時間で上昇傾向が認められた 患者検体では 24 時間まで安定していた 2.EDTA 血漿と血清 全血 クエン酸血漿間の相関 : 血漿と各検体での相関は 血清ではy=0.990x+21.56,r=0.997 となり良い相関が得られた 全血間では全体的に全血の方が高値となっていたため,13.5% ほど補正したところ y=1.094x+43.40, r=0.999 となった クエン酸血漿間では全体的に低値のため 10% ほど補正したところ y=1.008x-32.42,r=0.997 となった 3. 腎機能の影響 :1) 敗血症を疑わず透析を行っていない患者 における腎機能の影響 :P-sep と egfr との相関は y=-7.367 x+564.3,r=-0.779 となった 2)β2M との相関 : 敗血症を疑われた患者での相関は y=210.6x+123.5,r=0.707 となった また敗血症を疑わない患者では,y=100.9x-121.0,r=0.904 となった 3) 透析前後での値の変化 : 透析前後での P-sep の値は透析後で有意に減少した (p<0.001) まとめ 今回の結果から P-sep を測定する際, 時間が経過していた場合は参考値として扱った方が良いと思われた また PATHFAST で全血を測る際にはすでに Ht 補正で計算されているが, それよりも 10~15% ほど補正を追加するべきだと思われた クエン酸血漿を用いる場合は, クエン酸で希釈されている分の 10% ほどを補正した方が良いと思われた P-sep は腎機能の影響をあまり受けないとされていたが, 今回の検討では腎機能が低下すると上昇する傾向が見られた 今後 P-sep を測定する際は透析の有無, また egfr が 30 未満, β2m が 3 mg/l 以上では注意する必要があると思われた 連絡先 042-665-5611( 内線 :4111)
564 敗血症診断におけるプレセプシン測定の有用性の評価 村上純子 1) 高木妙子 1) 大栁忠智 1) 福田すみれ 1) 三浦貴博 1) 赤津哲 1) 山﨑哲 1) 聖マリアンナ医科大学病院 1) はじめに 細菌性敗血症の鑑別診断および重症度判定の補助として 当院ではプロカルシトニン ( 以下 PCT) を採用しているが 手術後や外傷など敗血症以外で陽性になる事が少なくない 今回 我々は新たに保険収載された 敗血症診断マーカー プレセプシン ( 以下 P-SEP) を検討する機会を得たので 血液培養 PCT との比較検討結果を報告する 対象および方法 2014 年 4~9 月までに血液培養が提出された中で P-SEP および PCT の同時測定が可能であった 91 例を対象とし 後ろ向きに検討した 血液培養は 菌が検出された 79 例中コンタミネーションが疑われた 13 例を除き 66 例を陽性群 12 例を陰性群とした P-SEP は CLEIA 法を原理とする測定試薬 パスファースト Presepsin ( 株式会社 LSI メディエンス ) を用いた 添付文書では P- SEP のカットオフ値を 500pg/mL に設定しているが 450pg/mL も検討対象とした PCT は ECLIA 法で測定しカットオフ値は 0.5ng/mL とした 結果 血液培養の検出菌種別による P-SEP と PCT の陽性率はそれぞれ グラム陽性球菌 75.0% 57.1%(n=28) グラム陰性桿菌 58.8% 70.6%(n= 17) 混合感染 80.0% 60.0%(n=10) その他の菌種 72.7% 54.5%(n=11) 全体では 71.2% 60.6%(n= 66) であった カットオフ値 450pg/mL では すべての菌種で PCT の陽性率を上回った 血液培養陽性群と陰性群の P-SEP の間に有意差が認められた (p< 0.01) が PCT では有意差は認められなかった 血液培養陰性で P-SEP が陽性になった例で 2 例は血液透析患者であった まとめ 今回の検討では 血液培養陽性における P-SEP の陽性率は 71.2% と高く敗血症診断に有用であった カットオフ値 500pg/mL 以下でも菌が検出された例や 血液透析患者など敗血症以外でも陽性になる例があるので PCT 同様 臨床症状に基づき総合的に診断する必要があると考える 連絡先 044-977-8111( 内線 5121)
565 プレセプシンの有用性について 当院における プレセプシン プロカルシトニン 血液培養相関性の検討 東綾香 1) 濱子真有美 1) 高橋音羽 1) 渡辺美絵 1) 梶谷博則 1) 森安節子 1) 社会医療法人岡村一心堂病院 1) はじめに 敗血症は病原体によって引き起こされる全身性炎症反応症候群 (SIRS) で, 最悪の場合死に至る そのため, 早期診断が求められる 現在, 診断に有用なマーカーとして, プロカルシトニン ( 以下 PCT) とプレセプシンがあり, 比較検討が行われている 当院でも従来 PCT を用いていたが, プレセプシンを導入することになり, 両者を比較検討したので, 血液培養の結果とともに報告する 対象および方法 1. 対象 :2014 年 3 月末から敗血症が疑われ, プレセプシン, PCT, 血液培養この 3 つの検査を行ったものを用いた 2. 測定機器 : プレセプシン ; パスファースト Presepsin(LSI メディエンス ) PCT; プロカルシトニンキットブラームス PCT-Q( 和光純薬 ) 血液培養 ;BACT/ALERT 3D( シスメックス ) 結果 全 20 件中, プレセプシン,PCT, 血液培養全てが陽性 :6 件, 血 液培養とプレセプシンが陽性 :2 件, 血液培養と PCT が陽性 :1 件, 血液培養のみが陽性 :0 件, プレセプシンと PCT が陽性 :4 件, プレセプシンのみが陽性 :2 件,PCT のみが陽性 :1 件, 全てが陰性 :4 件 結語 敗血症を疑う際には, プレセプシン,PCT が短時間で結果が出るので, 有用だと改めてわかった プレセプシンの方が PCT よりも早期に敗血症が分かるという結果もあったが, 腎機能の影響を受けているのではないかという結果も見受けられた プレセプシンを用いる際は, 腎機能も考慮して結果をみて, 判断する必要があると思われる 今後も追加検討を加え, 結果解釈についての考察を行い, 発表する予定です 岡村一心堂病院検査室 086-942-9912