入門実験 B17 演習 仕掛数とリードタイム 生産率の関係 Factory Physics の計算式 Best Case ( 最良にワークの流れが制御された場合 ) Worst Case( ワークを一塊にして流す最悪の場合 ) PW Case ( 各工程での処理時間が一定でないワークが 平均の処理時間で流れていると仮定する実施上の最悪の場合 )
生産活動に関する時間の種類仕掛 ( 仕事の投入量 ) と生産率 リードタイム : LT= 処理時間 :ΣPT+ 待ち時間 ΣQT w 1 : 機械 1 の仕掛数 w 2 w 3 全体の仕掛数 :WIP WIP = w 1 +w 2 +w 3 生産率 : Pr サイクルタイム :CT=1/Pr 生産率 : Pr ( 単位時間当たりの生産量 ) 2
生産活動に関する時間の種類 リードタイム (LT): 所要時間 スループットタイム サイクルタイム (CT): 生産周期 タクトタイム ピッチタイム 単位生産時間 ( 生産率の逆数 ) プロセッシングタイム (PT): 処理時間 作業時間 3
Little の公式 ( 仕事の投入量と効率の関係 ) 定常状態 (input = output) でのシステム内の平均滞在時間 (T) は平均到着 ( 又は出力 ) 間隔 ( 1 ) と仕掛り数 (W) の積に等しい P ( T) (W) 1 ( P) 1 ( P) T W P 又は 1 W P T : リードタイム W : 仕掛り数 P : 生産率 ( 単位時間当たりの生産量 ), 1 P : 到着 ( 又は出力 ) 間隔 4
( T) ( P ) リードタイム 生産量 ( 生産率生産率 ) リードタイム 仕掛り WIP ( W) リードタイム ( 生産量 ) と仕掛り ( 負荷 ) の関係 5
生産流通マネジメント 175 5 月 15 日 ( 月 ) 大成尚 フローマネジメント 2 [ リードタイムと生産率の設定 ] Factory Physics Chapter 7 : Basic Factory Dynamics ボトルネック生産率 仕掛ワーク数によるスループット ( 生産率 ) とリードタイムの計算式
ある自動車メーカーにおける製品コンセプトの例 安全性と高級感を考慮し 重量は 1 000 kg( 約 2 200 ポンド ) とする スポーティー感を出すため 10 秒で 0 から 60 に速度を上げられる加速性 ( 約 2.7 m / 秒 2 ) を実現する 燃費を抑えるため エンジンの馬力 (force) は 200 ニュートン ( 約 400 ポンド ) 以下にとどめる F ma 200 N 1, 000 kg 2.7m / s 2 2, 700 N 不可能 7
パラメータ ( 変数 ) の例 W 0 r b T 0 W 0 r b T 0 : クリティカル WIP : ボトルネックレート : 単純総加工時間 w : 仕掛数 (WIP) r : 各工程の生産率 ( 生産量 / 単位時間 ) t : 各工程での加工時間 ( 時間 / 個 ) r = 1/t T : 総加工時間 ( 全工程の加工時間を合計 ) TH : スループット ( 生産ライン全体の生産率 ) 8
ワークフローの単純化 SHOP SHOP ( 処理時間 ) SHOP ( 処理時間 ) 9
ペニー硬貨製造工場 1 における Best Case 条件の計算式 米国独立記念日のパレードの際に使用される巨大な 1 セント硬貨を作るための 連続する 4 台の機械で構成されるシンプルな生産ライン 機械 1: 硬貨の輪郭を抜く穴空け機 機械 2: 片面にリンカーンの顔を その裏面にリンカーン記念館を刻印する 機械 3: 硬貨の縁の加工をする 機械 4: 仕上げにギザギザを削り取る それぞれの機械はその作業に丁度 2 時間かかり 1 日 24 時間稼働している ボトルネックの生産率 総加工時間 仕掛の閾値 r b 0.5 ペニー / 時間 (h) T 0 8 時間 (h) W 0 r b T 0 0.5 8 4 ペニー 0 10
ペニー硬貨製造工場 1(WIP = 1 の場合 ) ( スタート時間 ) 工場内に1つの仕事しかない場合工程 1 工程 2 工程 3 工程 4 t = 0 時間経過 t = 2 t = 4 t = 6 11
ペニー硬貨製造工場 1(WIP = 2 の場合 ) ( スタート時間 ) 工程 1 工程 2 工程 3 工程 4 t = 0 時間経過 t = 2 t = 4 t = 6 12
ペニー硬貨製造工場 1(WIP = 3 の場合 ) ( スタート時間 ) 工程 1 工程 2 工程 3 工程 4 t = 0 時間経過 t = 2 t = 4 t = 6 13
ペニー硬貨製造工場 1(WIP = 4 の場合 ) ( スタート時間 ) 工程 1 工程 2 工程 3 工程 4 t = 0 時間経過 t = 2 t = 4 t = 6 14
ペニー硬貨製造工場 1(WIP = 5 の場合 ) ( スタート時間 ) 工程 1 工程 2 工程 3 工程 4 t = 0 時間経過 t = 2 t = 4 t = 6 15
ペニー硬貨製造工場 1 の WIP リードタイム スループット WIP LT % T 0 TH % r b 1 2 3 8 8 8 100 100 100 0.125 0.250 0.375 25 50 75 4 8 100 0.500 100 5 6 7 8 9 10 10 12 14 16 18 20 125 150 1750 200 225 250 0.500 0.500 0.500 0.500 0.500 0.500 100 100 100 100 100 100 W 0 r b T 0 0.5 8 4 ペニー 16
TH best w T 0, w W 0 r b, それ以外 の場合 ペニー硬貨製造工場 1 における WIP とスループットの関係 17
LT best T 0, w W 0 w r b, それ以外 の場合 ペニー硬貨製造工場 1 における WIP とリードタイムの関係 18
ペニー硬貨製造工場 2: バランスされていないライン ペニー硬貨製造工場 1 と同様 硬貨の穴空け 刻印 縁加工 及び仕上げの 4 ステップを行うが ラインはバランスされておらず 1 つの事業所が複数の機械を備え それぞれの加工時間も異なっている 事業所番号 機械数 プロセスタイム 事業所毎レート 1 1 2 時間 0.50 j/hr 2 2 5 時間 0.40 j/hr 3 6 10 時間 0.60 j/hr 4 2 3 時間 0.67 j/hr 19
ペニー硬貨製造工場 2 における条件の計算式 第 3WS における各機械の生産レート : 第 3WS 全体の生産レート : 1 10 ペニー / 時間 (h) 6 1 10 0.6 ペニー / 時間 (h) r b 0.4 ペニー / 時間 (h) T 0 20 時間 (h) W 0 r b T 0 0.4 20 8 ペニー 20
最善 (best) ケースと最悪 (worst) ケース 最善ケースとは ワークを纏めないで 1 個づつ小刻みに流す場合 先頭工程以外の工程は作業中の仕掛りを 1 個だけ持ち ライン中の仕掛りの大部分は先頭工程にある 最悪ケースとは 生産ライン内のワーク ( 仕掛り ) を全て一まとめにしたバッチで流す場合 ライン中の全ての仕掛りが 1 箇所の工程に集中してある 21
4 機械 3 ジョブシステムの最善ケースの状態 工程 1 工程 2 工程 3 工程 4 ( スタート時間 ) t = 0,8,16 t = 2,10,18 時間経過 t = 4,12,20 t = 6,14,22 22
4 機械 3 ジョブシステムの最悪ケースの状態 工程 1 工程 2 工程 3 工程 4 ( スタート時間 ) t = 0,24,48 t = 6,30,54 時間経過 t = 12,36,60 t = 18,42,66 23
法則 2 最善ケースのパフォーマンス LT best T 0, w W 0 w r b, それ以外 TH best w T 0, w W 0 r b, それ以外 の場合 の場合 法則 3 最悪ケースのパフォーマンス LT worst wt 0 TH worst 1 T 0 24
Best Case とは? TOC( ボトルネック工程 ) で生産能力は決まる rb : ボトルネックレート LT best T 0, w W 0 w r b, それ以外 の場合 TH best w T 0, w W 0 r b, それ以外 の場合 JIT のコンセプト ( 流れ化 ) 短小化 (1 個づつ流す ) 同期化 ( 決められたタクトタイムで一斉に流す ) 平準化 ( 工程間の作業量をバランスさせる )
4 機械 3 ジョブを持つシステムで起こりうる状況 状況 仕掛りベクトル 状況 仕掛りベクトル 最悪ケース 1 2 3 4 5 ( 3, 0, 0, 0 ) ( 0, 3, 0, 0 ) ( 0, 0, 3, 0 ) ( 0, 0, 0, 3 ) ( 2, 1, 0, 0 ) 11 12 13 14 15 ( 1, 0, 2, 0 ) ( 0, 1, 2, 0 ) ( 0, 0, 2, 1 ) ( 1, 0, 0, 2 ) ( 0, 1, 0, 2 ) 6 7 8 9 10 ( 2, 0, 1, 0 ) ( 2, 0, 0, 1 ) ( 1, 2, 0, 0 ) ( 0, 2, 1, 0 ) ( 0, 2, 0, 1 ) 16 17 18 19 20 ( 0, 0, 1, 2 ) ( 1, 1, 1, 0 ) ( 1, 1, 0, 1 ) ( 1, 0, 1, 1 ) ( 0, 1, 1, 1 ) 最善ケース 26
ランダム度合い最大化のシナリオ 起こりうる状況 の 起こりやすさ を全て等しくするためには 以下の 3 つの条件が必要になる 1. ラインはバランスされていなければならない ( つまり 全ての WS の平均プロセスタイムが等しくなければならない ) 2. 全ての WS は 1 機械のみを備えるものとする ( こう仮定することにより 並行処理や 2 機械間のジョブの移動といった複雑な問題を避けることができる ) 3. プロセスタイムは 指数分布 と呼ばれる ある特定の確率分布に従ってランダムに決まるものとする 指数分布は 非記憶特性 という特別な特性を持つ唯一の連続型的分布である ある機械の作業時間が指数分布されている とき 目下処理中の部品に対してこれまで何時間処理を施していたとしても そのことは あと何時間で終わるか ということに対して何の情報ももたらさない 例えば ある 1 台の機械のプロセスタイムが平均 1 時間で指数分布されているとき 目下のジョブがこれまで 5 秒仕掛かり中であろうが 1 時間 または 942 時間仕掛かり中であろうが 予測残りプロセスタイムは 1 時間なのである 未来予測に当たって機械があたかも過去の作業を忘れたかのように見えるので 非記憶 という言葉が使われる 27
実施上最悪 (practically worst case) ケース 実施上最悪 (PWC) とは 現実的に存在しうる状況で 生産の流れが最も不安定となる生産条件をシンプルに表現した場合 工程能力に差が無い ( 余裕のある工程が無い ) ボトルネックとなる工程が一定とならない 1 工程 1 機械となっている ( サービス窓口が 1 つ ) 混んだ場合の代替ルートが無い 各工程での所要時間は一定の値に固定されていない ( 所要時間のバラツキが大きい ) 28
法則 4: 実施上最悪ケースのパフォーマンス (1) N 個の WS( 全て 1 台の機械を備える ) において それぞれの平均処理時間が t であり 常に w 個のジョブがラインの中にあるとする T 0 Nt 時間 (h) 1 つのジョブが WS に留まる平均時間 r b 1 = 前に待っているジョブの合計時間 + 当該ジョブの時間 w 1 N t t 1 w 1 N t 平均リードタイム LT N 1 w 1 N t Nt w 1 t T 0 w 1 r b t 29
定義 : 実施上最悪ケースのパフォーマンス 実施上最悪ケース (Practically Worst Case)= PWC LT PWC T 0 w 1 r b TH PWC w W 0 w 1 r b W 0 r b T 0 Little の公式 LT=[1/TH] W TH=W/LT 30
ペニー硬貨製造工場 2 における WIP とリードタイムの関係 31
ペニー硬貨製造工場 2 における WIP とス ループットの関係 32
( T) リードタイム システム X システム B システム A 仕掛り WIP ( W) ショップ特性によるリードタイムの変化
停滞度合 ( 係数ではない ) 実施上最悪ケースの場合の停滞度合い l W 0 T 0 LT l w l W 0 1 T 0 停滞係数 α 1 2 ( l = 平均リードタイムを表す関数 ) クリティカル WIP レベルにおける実際のリードタイムの 単純総加工時間 (= 最善リードタイム ) に対する割合 実施上最悪ケースの場合 ここで l W 0 T 0 W 0 1 W 0 r b T 0 W 0 1 T 0 W 0 1 r 3 b 1 1 W 0 1 2 2 = 1 W T 0 0 W 0 実施上最悪のケースを α=1 とするために 2に3の逆数を掛ける r b LT PWC の定義 全く停滞のない場合を α=0 とするために 1 からを 1 を引いて正規化する W 0 W 0 1 1 T 0 l W 0 より 34
停滞係数 α の例 ペニー硬貨製造工場 2 において プロセスタイムが指数分布されていると仮定し W 0 = 8 T 0 = 20 とする この場合 実施上最悪のケース とは異なり ラインはバランスされておらず 事業所は複数の機械を備えている そこでコンピュータを用いてラインをシミュレートし 多数のジョブについてのリードタイムを観察して平均リードタイムを求め WIP が W 0 ( =8 ) のときの平均リードタイムを計算す ると 25.79 であった これを先の数式に代入すると W 0 W 0 1 l W 0 1 T 0 8 8 1 25.79 20 1 0.33 となり 最善 と 実施上最悪 の間に位置する ( Best ) 0 < 0.33 < 1 ( Practically Worst ) 35
停滞係数 α の例 ( イメージ ) 0.00 0.33 1.0 36