広瀬貴士他 : きねふりもちの育成経過と特性 Ⅲ 特性の概要 1 形態的及び生態的特性育成地 ( 当所中津川支所 ) におけるきねふりもちの早晩性はココノエモチより出穂期及び成熟期が 1 日から 2 日程度早い早の早である ( 第 1 表第 2 表 ) ふ先色はココノエモチほど鮮

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ともひろいさやま
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1 岐阜県中山間農業研究所研究報告 (6):1~6(2010 ) 水稲糯新品種きねふりもちの育成経過と特性 * ** 広瀬貴士山本好文河合靖司杉浦和彦 *** **** ***** 各務由起子宮田和也小林忠彦久田浩志 Breeding Process and Characteristics of a New Rice Cultivar "Kinefurimochi" Takashi Hirose, Yoshihumi Yamomoto, Yasuji Kawai,Kazuhiko Sugiura, Yukiko Kagami, Kazuya Miyata, Tadahiko Kobayashi, Hiroshi Hisada Summary A glutinous rice cultivar Kinefurimochi was developed fr Hokuriku -mochi 141(Minenoyukimochi ) and Kokonoemochi.Grain,lodging yield resistance,and some c haracters of Kinefurimochi were similar to those of Koko inefurimochi was higher than that of Kokonoemochi, and i e of rice cake processed from Kinefurimochi. overall The ricepal cake atability than that of Kokonoemochi, and their stickiness was was important toissuring prevent grain f Key Word: paddy rice, A glutinous rice, A new cultivar, Kinefurimochi キーワード : 水稲糯新品種きねふりもち, which was caused by th Ⅰ 緒言岐阜県中山間地帯向けの水稲糯の奨励品種であるココノエモチは収量性耐倒伏性に優れているなど作り易い品種であるそのため東濃地域においてココノエモチは水稲糯品種の作付けの 7 割以上を占めているしかし外観上の品質や食味がやや劣るため作り易く高品質良食味の糯品種が望まれているまた岐阜県東濃地域では毎年他県より多くの糯米を購入しており地産地消の観点から地元での品質の良い糯米の生産が強く望まれているそこでココノエモチの栽培特性上の長所と高品質良食味を備えた新品種を目指し当支所においてきねふりもちを育成した本報ではきねふりもちの育成経過並びに特性について報告する Ⅱ 育成経過 1988 年に極早生良質の糯系統北陸糯号 ( 峰の雪もち ) を母に早生で栽培特性に優れる糯品種ココノエモチを父として岐阜県中山間地農業農業試験場 ( 現 : 岐阜県中山間農 * ** 現在 : 岐阜県農政部現在 : 愛知県農業総合試験場 *** 現在 : 岐阜県中濃地域農業改良普及センター **** 現在 : 岐阜県農業技術課 ***** 現在 : 岐阜県農業大学校業研究所中津川支所 ) において人工交配を行った ( 第 1 図 ) 1991 年に F3 で個体選抜を行い 1992 年 F4 より系統選抜を実施した 1995 年 F7 より中山系糯 136 の系統番号で生産力検定試験に供試し 1996 年 F8 より東濃糯 8 号の系統名を付して奨励品種決定調査特性検定試験に供試した 1999 年 ~ 2004 年の間は人員配置の関係で試験を一時中断したが 1996 年 ~ 1997 年および 2005 年 ~ 2008 年の現地で行った奨励品種決定調査の結果が良好であり東濃地域で栽培したいとう地元の要望もあったため 2009 年 3 月に品種登録を出願したなお 2008 年度の世代は雑種第 14 代であるササニシキ曲系 109 ( ハヤヒカリ ) 大系 227 こがねもち中部 1 号 ( シュウレイ ) GA-14 ( 大空 ) アキシノモチ第 1 図奥羽 302 号ヒメノモチ中部 26 号稲系糯 108 ( 中部糯 37 号 ) 北陸糯 141 号 ( 峰の雪もち ) ココノエモチきねふりもちの系譜きねふりもち ( 東濃糯 8 号 ) - 1 -

2 広瀬貴士他 : きねふりもちの育成経過と特性 Ⅲ 特性の概要 1 形態的及び生態的特性育成地 ( 当所中津川支所 ) におけるきねふりもちの早晩性はココノエモチより出穂期及び成熟期が 1 日から 2 日程度早い早の早である ( 第 1 表第 2 表 ) ふ先色はココノエモチほど鮮明ではないが褐色で粳種との識別は容易である ( 第 1 表 ) 稈長はココノエモチより若干短く耐倒伏性は同等で強い ( 第 2 表 ) 穂数はココノエモチより多く草型は偏穂数型に属する玄米の収量性はココノエモチとほぼ同等である玄米の千粒重はココノエモチに比べ軽くやや小粒である玄米の外観品質はココノエモチに比べ若干良い耐冷性はココノエモチより弱くやや弱である ( 第 1 表第 3 表 ) 穂発芽性はココノエモチと同等の難である ( 第 4 表 ) 葉いもち圃場抵抗性はやや強である ( 第 5 表 ) 第 1 表一般特性調査結果稈芒早晩性ふ先色ふ色細太剛柔多少長短粒着密度きねふりもち早生早中中極少短褐黄金中難ココノエモチ早生早中中極少短赤褐茶中難脱粒難易第 2 表生産力検定試験の結果移植期出穂期成熟期稈長穂長穂数全重玄米比較千粒重品質障害の程度施肥試験年次収量比率外観等級倒伏葉い穂い水準もちもち ( 月. 日 )( 月. 日 )( 月. 日 )(cm)(cm)( 本 / m2 )(kg/a) (kg/a) (%) (g)1~9 1~3 0~5 1997,1998, きねふりもち減肥 2008, ココノエモチ ~1998, 標肥 2005 ~ ~2007 多肥注 1 ) 外観品質 :1 9 = 上の上下の下注 2 ) 等級 : 減肥は2008 年標肥は2005 ~2008 年多肥は2005 ~2007 年の平均注 3 ) 障害の程度 :0 5 = 無甚注 1) 長期冷水掛け流し法による注 2) 判定は極強 ~ 極弱の 7 段階注 3) ココノエモチは指標品種きねふりもちココノエモチきねふりもちココノエモチ第 3 表耐冷性検定結果 ( 当所本所 ) 総合出穂期稔実割合 (%) 出穂期稔実程度出穂期稔実程度出穂期稔実程度判定判定判定判定判定 ( 水尻 ) 水尻中央水口 ( 水尻 ) 水尻中央水口 ( 水尻 ) 水尻中央水口 ( 水尻 ) 水尻中央水口きねふりもち8/ 中 8/ やや弱 8/ やや弱 8/ 弱やや弱ココノエモチ 8/ 強 8/ 強 8/ 強 8/ 強強第 4 表穂発芽検定結果 (2005 年 ~2008 年 : 当所本所 ) 発芽程度判定日後 10 日後 7 日後 10 日後 7 日後 10 日後 7 日後 10 日後きねふりもち難ココノエモチ難コシヒカリ難注 1) 発芽程度は 2( 極難 )~8( 極易 ) の 7 段階判定は極難 ~ 極易の 7 段階注 2) コシヒカリは指標品種 - 2 -

3 岐阜県中山間農業研究所研究報告 (6):1~6(2010 ) 第 5 表葉いもち検定結果 ( 当所本所 ) 発病程度 0( 病斑面積率 0%)~10( 病斑面積率 100%) 判定 7/13 7/20 7/2 7/13 7/207/2 7/137/20 7/278/37/157/248/1 きねふりもちやや強たかやまもちやや強コシヒカリ弱注 1) 判定は強 ~ 弱の 5 段階注 2) コシヒカリは指標品種 2 品質及び食味等の特性玄米白度はココノエモチより若干高い ( 第 6 表 ) 循環式精米機を用いた精米白度及び脱芽率は同程度の搗米歩合においてココノエモチより高かった ( 第 2 図第 3 図 ) 家庭用精米機においても同様の結果が得られた ( 第 7 表 ) 餅硬化速度はココノエモチに比べ若干遅いが硬化特性の分類は同等の Ⅰ であった ( 第 8 表 ) 餅加工すると白くて外観が良く粘りが強い特徴があり食味の総合評価ではココノエモチに優る ( 第 9 表 ) 第 6 表玄米白度玄米白度 1997 年 2007 年 2008 年きねふりもちココノエモチたかやまもち峰の雪もち注 ) 白度 : ケット精米用白度計 C-300 で測定した数値白 55 度搗精歩合 (%) 第 2 図精米白度 ( 循環式精米機 )( 2007 年 ) 注 1) 精米機 : トーヨーテスター精米機 MC-90A きねふりもちココノエモチたかやまもち注 2) 白度 : ケット精米用白度計 C-300 で測定した数値脱芽 80 率(きねふりもち % 70 ココノエモチ)たかやまもち第 3 図脱芽率 ( 循環式精米機 )( 2007 年 ) 注 1) 精米機 : トーヨーテスター精米機 MC-90A 注 2) 白度 : ケット精米用白度計 C-300 で測定した数値注 3) 脱芽率 : 脱芽粒数 / 調査粒数 100 注 1) 精米機 : みのる産業製つきたて米びつ精米機 HRP-121 注 2) 脱芽率 : 脱芽粒数 / 調査粒数 100 第 8 表餅の曲がり度合いの時間推移 ( 2007 年 ) 餅つきから測定までの時間きねふりもちココノエモチたかやまもち 18 時間時間時間 0.20(Ⅰ) 0.13(Ⅰ) 0.13(Ⅰ) 注 1) 数値は餅の曲がり度合い注 2 ) ( ) 内は餅の硬化特性の分類 :Ⅰ (0.25 以下 ) Ⅱ (0.25 ~0.5) Ⅲ(0.5~1) Ⅳ(1~2) Ⅴ(2 以上 ) 第 9 表 92 食味評価搗精歩合 (%) 86 第 7 表精米白度と脱芽率 ( 家庭用圧力式精米機 ) きねふりもちココノエモチたかやまもち試験搗精搗精搗精精米脱芽精米脱芽精米脱芽年次歩合歩合歩合白度率 (%) 白度率 (%) 白度率 (%) (%) (%) (%) 年次等総合見た目味滑らかさ柔かさ粘り 2008 焼餅生餅生餅生餅生餅生餅生餅注 ) 数値はココノエモチに比べ全員が良いとすれば 1 全員が悪いとすれば -1 となるよう調整した数値 - 3 -

4 広瀬貴士他 : きねふりもちの育成経過と特性 Ⅳ 配布先における成績岐阜県東濃地域の現地及び当所本所 ( 飛騨市 ) においては育成地の結果とほぼ同様な結果が得られた ( 第 10 表第 1 1 表 ) 岐阜県農業総合研究技術センター ( 現 : 岐阜県農業技術センター岐阜市 ) においては縞葉枯病により減収した ( 第 12 表 ) 第 10 表奨励品種決定調査 ( 現地 ) の結果移植期出穂期成熟期稈長玄米千粒重品質障害の程度試験年次場所収量外観等級倒伏葉い穂い有望度もちもち ( 月. 日 ) ( 月. 日 ) ( 月. 日 ) (cm)(kg/a) (g)1~9 1~3 0~5 恵那市きねふりもちココノエモチきねふりもち福岡町 5.11 ココノエモチきねふりもち瑞浪市 6.06 ココノエモチ七宗町 1996 岩村町 2005,2006 多治見市きねふりもちココノエモチきねふりもちココノエモチきねふりもちココノエモチきねふりもち ~2008 中津川市 5.15 ココノエモチ注 1) 東濃地域農業改良普及センター東濃地域土岐農業改良普及センター調べ注 2) 外観品質 :1 9 = 上の上下の下注 3) 障害の程度 :0 5 = 無甚注 4) 有望度 : = 有望 = やや有望 = 継続 = 打切り第 11 表奨励品種決定調査 ( 当所本所 ) の結果移植期出穂期成熟期稈長穂長穂数全重玄米比較千粒重品質障害の程度施肥試験年次収量比率外観等級倒伏葉い穂い紋枯水準もちもち病 ( 月. 日 ) ( 月. 日 ) ( 月. 日 ) (cm)(cm)( 本 / m2 )(kg/a) (kg/a) (%) (g)1~9 1~3 0~5 1996,1997, きねふりもち標肥たかやまもちきねふりもち多肥たかやまもち注 1 ) 外観品質 :1 9 = 上の上下の下注 2 ) 障害の程度 :0 5 = 無甚第 12 表奨励品種決定調査 ( 岐阜県農業総合研究技術センター ) の結果施肥試験年次水準 1996 標肥移植期出穂期成熟期稈長穂長穂数全重玄米比較千粒重品質障害の程度収量比率外観等級倒伏縞葉枯病紋枯病 ( 月. 日 )( 月. 日 )( 月. 日 )(cm)(cm)( 本 / m2 )(kg/a) (kg/a) (%) (g)1~9 1~3 0~5 きねふりもちモチミノリ注 1 ) 外観品質 :1 9 = 上の上下の下注 2 ) 障害の程度 :0 5 = 無甚 - 4 -

岐阜県中山間農業研究所研究報告 (6):1~6(2010 ) Ⅴ 栽培適地及び栽培上の注意点 1 栽培適地温暖地の中山間地帯に適する 2 栽培上の注意事項 1.

と同等である精米白度はココノエモチより高く餅加工すると白くて外観が良い餅ができる餅の食味の総合評価ではココノエモチに優る刈り遅れると胴割れが発生しやすいため適期収穫に努める必要があるきねふりもちココノエモチ 16 砕 12

ココノエモチ 9 月 4 日 Ⅵ 命名の由来主に栽培を予定している東濃地域にある中津川市蛭川地区の杵振り祭りに由来する杵振り祭りは古く伝統ある祭りで五穀豊穣を祈ること餅つきを連想させることが栽培特性に優れ餅が白く食味が良い

5 岐阜県中山間農業研究所研究報告 (6):1~6(2010 ) Ⅴ 栽培適地及び栽培上の注意点 1 栽培適地温暖地の中山間地帯に適する 2 栽培上の注意事項 1. 品質の安定のために適期収穫に努める乾燥調整後の玄米の砕米率は収穫期が成熟期から遅れる程増加し成熟期から一週間以降の増加率はココノエモチより高くなった ( 第 4 図 ) 2. 縞葉枯病に罹病性であるため縞葉枯病の常発地では防除に留意する 3. 紋枯病が比較的発生しやすいため紋枯病の常発地では防除に留意する Ⅷ 摘要きねふりもちは北陸糯号 ( 峰の雪もち ) ココノエモチの交配組合せの後代から育成された水稲糯品種である収量性耐倒伏性等の栽培特性はココノエモチと同等である精米白度はココノエモチより高く餅加工すると白くて外観が良い餅ができる餅の食味の総合評価ではココノエモチに優る刈り遅れると胴割れが発生しやすいため適期収穫に努める必要があるきねふりもちココノエモチ 16 砕 12 米率(%) 成熟期から収穫期までの日数第 4 図成熟期後の砕米率 (2007 年 ) 注 1) 砕米率 : 砕米重量 / 試料全重 100 注 2) 成熟期 : きねふりもち 9 月 2 日ココノエモチ 9 月 4 日 Ⅵ 命名の由来主に栽培を予定している東濃地域にある中津川市蛭川地区の杵振り祭りに由来する杵振り祭りは古く伝統ある祭りで五穀豊穣を祈ること餅つきを連想させることが栽培特性に優れ餅が白く食味が良いきねふりもちのイメージに合うと考えられる写真 1 きねふりもちの草姿 ( 左 : きねふりもち右 : ココノエモチ ) Ⅶ 育成従事者育成従事者は第 13 表のとおりである第 1 3 表育成者と従事年度年度世代交配 F 1 F 2 F 3 F 4 F 5 F 6 F 7 F 8 F 9 F 10 F 11 F 12 F 13 F 14 広瀬貴士山本好文河合靖司宮田和也各務由起子小林忠彦杉浦和彦写真 2 きねふりもちの立毛状態 - 5 -

6 広瀬貴士他 : きねふりもちの育成経過と特性写真 6 きねふりもちの玄米 ( 左 : きねふりもち右 : ココノエモチ ) 写真 3 きねふりもちの籾 ( 左 : 乳熟期中央 : 糊熟期右 : 黄熟期 ) 写真 7 きねふりもちの白米 ( 左 : きねふりもち右 : ココノエモチ ) 注 ) 搗精歩合 : きねふりもち 90.5% ココノエモチ 89.8% 写真 4 ココノエモチの籾 ( 左 : 乳熟期中央 : 糊熟期右 : 黄熟期 ) 写真 8 きねふりもちの切り餅 ( 左 : きねふりもち右 : ココノエモチ ) 注 ) 搗精歩合 : きねふりもち 90.7% ココノエモチ 90.0% 写真 5 きねふりもちの籾 ( 成熟期 ) ( 左 : きねふりもち右 : ココノエモチ ) - 6 -

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