埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 表紙 & 目次 はじめに 熱力学は熱の概念を教える科目である. 熱は工業生産や日常生活とは切っても切れない関係にあり, 機械工学のみならず物作りに関連するあらゆる分野において重要な科目の一つとなっている. 一般に, 熱力学は機械系

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1 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 表紙 & 目次 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 埼玉工業大学工学部機械工学科 小西克享

2 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 表紙 & 目次 はじめに 熱力学は熱の概念を教える科目である. 熱は工業生産や日常生活とは切っても切れない関係にあり, 機械工学のみならず物作りに関連するあらゆる分野において重要な科目の一つとなっている. 一般に, 熱力学は機械系と化学系によってその内容が若干異なり, 科目の呼び名も工業熱力学, 応用熱力学, 化学熱力学などと変化する. 市販のテキストが多数存在し, 内容も千差万別であるため, 教員としては教科書選びに事欠かない. しかしながら教科書はその性質上, 関係式の結果のみが示され導出過程は省略される場合が多く, 熱力学も例外ではない. しかも, 熱力学は厄介なことに概念の解説が多く視覚的に捉えにくいため, 理解が難しく習得が困難である. 実際, 熱力学を勉強し始めると, 専門用語の意味だけでなく, 式の導出が意味不明で, 内容が理解できないことが少なくない. 本書は, このように難解な部分を多く含む熱力学を工科系大学生に教育する目的から, 講義ノートとして記述したものである. 市販のテキストの要点を整理し, 用語や法則の意味を解説するとともに, 関係式をその導出過程とともに記述しており, 講義では実際に本書の内容に従って解説を行っている. なお, 一部説明を省略した項目があり, それらについては, 他の参考図書を参照していただきたい. なお, 本書には各章ごとの基本事項の理解度を判定するための理解度チェックが用意されているが, これ以外にも本書の各章の内容に対応した練習問題 tt://.t.a.j/ur/ko/jpn/ltur/rmodyam/rmodyamquto_t.df も用意しているので, 理解をより確実なものとするため, これらの問題を解くことを推奨する. 本書の内容は今後とも加筆修正の予定である. 内容に関して不明な点やお気付きの点があれば 著者までご連絡いただきたい. 第 8 版平成 7 年 月 日 埼玉工業大学工学部機械工学科小西克享

3 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 表紙 & 目次 目次 第 章熱と温度. 圧力と熱の本質. 熱と温度 6.. 熱の種類 6.. 温度 6.. 比熱 8. 単位.. 次元 9.. 基本量と基本単位 9 第 章熱力学第 法則. エネルギー保存則. 非流動系のエネルギー変換. 流動系のエネルギー変換 5. 状態量 7 第 章理想気体. 理想気体 8. 理想気体の状態方程式とその意味 8. 比熱と比熱比 9. 内部エネルギー 9.5 エントロピー 9.6 理想気体の状態変化 要点.6. 等温変化.6. 等圧変化.6. 等容変化.6. 断熱変化.6.5 ポリトロープ変化.7 可逆変化と不可逆変化 5.8 混合気体の性質 ( ドルトンの法則 ) 6 第 章熱力学第 法則. サイクルと仕事 7. 熱効率と動作係数 8. カルノーサイクル 8. 熱力学の第 法則 9.5 クラジウスの積分とエントロピー.6 有効エネルギーと無効エネルギー.7 最大仕事 第 5 章熱力学の一般関係式 5. 基礎式 6 5. マクスウェルの関係式 6 5. 応用 5.. エントロピー計算への応用 比熱計算への応用 8 5. ジュール効果, ジュール トムソン効果 第 6 章蒸気

4 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 表紙 & 目次 6. 蒸発の基礎 6. 状態曲面 6. 蒸気の熱的状態量 6.. 圧縮液と飽和液 湿り蒸気と乾き飽和蒸気 過熱蒸気 6 6. 蒸気表と蒸気線図 湿り空気 7 第 7 章熱力学のサイクル 7. 熱機関の概要 8 7. ガスサイクル機関 熱力学的サイクルの実現 熱力学的サイクルの種類 熱力学的サイクルの 基本形 サイクルの熱量と仕事 サイクルの理論熱効率 サイクル理論熱効率の比較 ガスタービンのサイクル ジェットエンジンのサイクル 6 7. 蒸気サイクルの機関 6 第 8 章気体の流れ 8. 流れの基礎式 6 8. ノズル内の流れ 8.. ノズル出口速度と熱落差 臨界状態 音速, およびマッハ数 66 第 9 章燃焼 9. 燃料の種類と燃焼によって発生する熱 9.. 燃料の種類 発熱量 反応熱 標準生成熱 燃焼に必要な空気量と燃焼ガス量 9.. 理論酸素量と理論空気量 燃焼ガス量とその組成 7 9. 燃焼温度 7 9. 燃焼により生成する大気汚染物質 9.. 排ガス成分とその有害性 窒素酸化物 一酸化炭素 硫黄酸化物 未燃炭化水素 77 第 章伝熱. 伝熱の形態.. 熱伝導 78.. 熱伝達 ( 対流熱伝達 ) 79.. 熱放射 79. 熱伝導と熱通過.. 平板 79

5 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 表紙 & 目次 5.. 円管 8.. フィン 8. 熱伝達率の式.. 無次元数について 86.. 対流熱伝達の実験式 89. 熱放射.. 熱放射 89.. 黒体および実在物体からの熱放射 9.. 黒体 面間の放射伝熱 9.. 灰色体系の放射伝熱 9..5 形態係数に関する法則 95.5 非定常熱伝導 95 理解度チェック 95 理解度チェック解答用紙 理解度チェック解答例 5

6 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章温度と熱量 6 第 章熱と温度. 圧力と熱の本質圧力も熱も共に分子の運動に起因して発生する事象である. 運動の形態によって圧力となったり熱となったりする. 圧力 (rur) は, 分子間および分子と容器壁間の衝突によって発生する. 衝突のエネルギーが大きいほど ( 衝突が激しいほど ) 圧力が大きくなる. 熱 (at) は, 分子の振動および回転によって発生する. 振動 回転のエネルギーが大きいほど温度が高くなる. 衝突 回転 振動 振動が伝わる 衝突 圧力の発生 エネルギーが周囲に伝播 熱の発生 高温 激しい振動 熱 ( エネルギー ) が移動 熱伝導 低温 緩やかな振動. 熱と温度.. 熱の種類熱には次のような種類がある () 顕熱 (bl at)= 温度変化を伴う熱 () 潜熱 (latt at)= 温度変化を伴わない熱.( 次の 種類がある ) 融解熱 (at of fuo)= 物質が溶けるのに必要な熱 ( 溶ける間は温度が変化しない ) 気化熱 ( 蒸発熱,at of aorato)= 物質が蒸発するのに必要な熱 ( 蒸発する間は温度が変化しない ).. 温度物体を加熱する ( 熱エネルギーを直接与える ) と, 物体の温度が上昇する. また, 物体を摩擦すると暖かくなる ( 物体の温度が上昇する ) が, これは運動エネルギーが熱エネルギーに変換され, 温度を上昇させたことを意味している. このように熱と温度は密接な関係にあるが, 概念の違いに注意が必要である. 熱 : エネルギーの大きさを表す. 温度 (tmratur): 寒暖の度合いを表す. 注意 : のお湯 kg に のお湯 kg を混ぜると, kgのお湯ができる. このとき, kgのお湯の熱は kg のお湯の 倍となるが, 温度は とはならず, のままである. このように つの系が混ざるとき, エネルギーは加算されるが, 温度は加算されないことに注意が必要である. () 経験的温度摂氏 (Clu tmratur)( ) 華氏 (Fart tmratur)( F ) 標準大気圧における標準大気圧における氷点 = 氷点 = 沸点 = * 沸点 = と, その間を 等分する温度を摂氏 ( ) とし, その間を 8 等分する温度を華氏 ( F ) といい,t で表す. という. * は標準大気圧 (.5MPa=.5Pa) における温度である. 水の沸点は, 雰囲気 6

7 起電力 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章温度と熱量 7 の圧力によって異なる. 詳細は第 6 章参照のこと. () 熱力学的温度 (trmodyam tmratur) 分子が運動 ( 衝突および振動 回転 ) を停止する温度を とし, 標準大気圧における氷点 =7.5 とする温度を絶対温度 (abolut tmratur) という. 単位はケルビン, 単位記号は K. 注 :K( 絶対零度 ) では, 圧力も となる. 関係式 K t 7. 5 () 熱平衡と温度計 つの系の間で熱の移動がないとき, つの系は熱平衡 (trmodyam qulbrum) 状態にあるという. 物体 A と B が熱平衡で, かつ B と C が熱平衡なら A と C も熱平衡の状態にある. これを熱力学の第 法則 (t zrot la of trmodyam) という. この法則より,B を温度計として用いることができる. 一次温度計絶対温度を直接測定できる温度計二次温度計通常の温度計. 目盛は目安. 指示値がどの程度正しいか不明 温度計 B 平衡平衡 A C 平衡既知の温度場未知の温度場 () 実用温度計 白金抵抗温度計白金線の電気抵抗が温度によって変化する性質を利用する. 熱電対 種類の金属線の両端を接合すると, 接合点間の温度差に応じて起電力が発生する. これをゼーベック効果 (Sbk fft) 注という. 起電力と温度差の関係を求めておくと, 温度計として利用することができる. 注 : 逆はペルチェ効果 (Pltr fft) という. 金属線 A 金属線 B 温度 t 温度 t 起電力 E が発生 液体膨張温度計水銀, アルコールなどの液体が温度によって体積膨張する性質を利用した温度計. 温度が t から t に変化すると, 温度計に充填された液体の体積は から に変化する. 体積膨張係数 ( 体積膨張率 ) をβとすると, は t t で表される. この時, 液だめ自体も膨張により体積が b から b に変化する. 液だめの材質 ( ガラス ) の線膨張係数をαとおけば, 体積変化は t t t t b b b となる. 温度変化により, 液面が から に変化するから, 毛細管の直径を d とし, 毛細管の膨張を無視すれば, と b には次の関係が成立する. d b 温度差 熱電対の起電力と温度差の関係 7

8 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章温度と熱量 8 ここで, 温度 t において液だめと液体の体積が等しい, すなわち b とおけば, d t t t t t t d となり, 水柱の高さの変化は, 温度変化に比例することが分かる. 放射温度計あらゆる物体は, 波長に対してその温度によって決まる特定の分布をもった電磁波を放出している. 電磁波を半導体で受け止めると, 光電子効果によって電流に変換することができる. 電流と温度の関係を校正しておくと温度の計測に利用できる... 比熱熱容量 (at aaty) J/K ある質量の物質 物体を 上昇させるのに必要な熱量のこと参考 : 熱量 (atg alu)= 熱の量を数字で表したもの. 厳密には つ状態におけるエンタルピーの差と定義される.( 第 章参照のこと.) 比熱 (f at) [J/(kgK)] 物質 物体を単位質量あたり 上昇させるのに必要な熱量のこと単位質量あたりの熱容量でもある. dq d 比熱の値は温度によって変化する.a, b,, d を定数として a b d のような多項式で表される. 定数の値は文献に掲載されている. モル比熱 (molar f at) J/(kmolK) 一般に, 比熱の単位は,J/(kgK) であるが, 化学では kmol 当たりの熱容量としてモル比熱 J/(kmolK) がよく用いられる. 定圧比熱 (f at at otat rur) と定容比熱 (f at at otat olum) 物質が気体の場合, 圧力一定のまま加熱するときは, 容積一定の状態で加熱するときより, 物質を 上昇するのに必要な熱量が多くなる. 前者の場合の比熱を定圧比熱, 後者を定 容比熱 という. 一般に, となり, 全ての気体で成立する. 詳細は下記資料を参照のこと. 埼玉工業大学機械工学学習支援セミナー ( 小西克享 ) 定圧比熱 > 定容比熱 となる理由 tt://.t.a.j/ur/ko/jpn/l_suort/suortpdf/sfhat.df つの比熱の比を比熱比 (at aaty rato) といい, ようになる. 単原子ガス (Ar, N など ) 5 原子ガス (N, O など ) 原子以上のガス (H O など ) ただし,ν は気体分子の自由度 で表す. ガスの種類により, 次の 8

9 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章温度と熱量 9. 単位.. 次元比重や比率などの例外を除き, たいていの物理量 ( 長さ, 重さなど ) には単位 (ut) がある. 物理量の数は多数あるものの, 基本となる単位 ( 基本単位 ) は長さ [m], 質量 [kg], 時間 [], 温度 [K], 物質量 [mol], 電流 [A], 光度 [d] の 7 つで, 基本単位の組み合わせによって物理量の単位が決定される. 特に力学系物理量に限れば, 基本単位は長さ [m], 質量 [kg], 時間 [], 温度 [K] の つだけである. たとえば, 圧力の単位は N/m =(kgm/ )/m =kg/(m ) となり, 長さ [m], 質量 [kg], 時間 [] の つであることが分かる. 物理量が単位を持つとき, 物理量は次元 (dmo) を持つともいう.( 次元は空間の軸を示すことがある. 例. 次元空間 ) 物理量に単位がない場合, その物理量は無次元量 (dmol quatty) であるという. 例. 比重, 比率など.. 基本量と基本単位 () 基本量物理量の基本となる単位を基本単位 (ba ut) という. 力学系物理量の場合, 基本単位は つある. それらを記号 M,L,S, で表す. 基本単位のみで表される量は基本量 (ba quatty) という. () 基本単位すべての力学系物理量は, 基本単位の組合せた組立単位 (drd ut) で表すことができ, このような物理量を, 組立量 (drd quatty) という. 記号 M,L,S, を用いて表した物理量の単位を次元式 (dmoal formula) という. 次元は次元式に含まれる基本単位の指数を意味する. 例 ) 仕事単位 m g kg m/ m kg m / ML /S : 基本単位の組合せで表すことができる. この数字が次元 仕事 :ML /S 次元式 M: 乗 L: 乗 S: - 乗 仕事の次元式は ML /S で表される. 仕事は, 質量が次元, 長さが次元, 時間が次元 - の物理量である. () 物理系と工学系の次元式すべての力学系物理量は M,L,S, の つで表すことができるが, これに副次元として, 力 [F] と熱量 [Q] を加えると, 次元式が簡素化できる. たとえば, 仕事は,ML /S が FL となる.M,L,S, の つのみで表す場合は, 物理系 ( もしくは MLS 系 ) 次元式といい,M,L,S,,F,Q の 6 つで表す場合は工学系 ( もしくは MLSFQ 系 ) 次元式という. 主な物理量の次元式は次表の通り. 物理量 記号例 SI 単位 物理系工学系 (MLS 系 ) (MLSFQ 系 ) 質量 M kg M M 長さ L, l m L L 時間 t S S 温度 θ, K, 力 F N=kgm/ ML/S =MLS - F 9

10 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章温度と熱量 熱量 Q J=Nm=kgm / ML /S =ML S - Q 仕事 W J=Nm=kgm / ML /S =ML S - FL=Q エネルギー E J=Nm=kgm / ML /S =ML S - FL=Q 動力, 仕事率 P W=J/ ML /S =ML S - QS=QS - 速度 u,, m/ L/S=LS - L/S=LS - 加速度 α m/ L/S =LS - L/S =LS - 重力加速度 g m/ L/S =LS - L/S =LS - 質量流量 G kg/ M/S=MS - M/S=MS - 体積流量 Q m / L /S=L S - L /S=L S - 圧力 Pa=N/m =kg/(m ) M/(LS )=ML - S - F/L =FL - 応力 σ Pa=N/m =kg/(m ) M/(LS )=ML - S - F/L =FL - 体積弾性率 =/ 圧縮率 K N/m M/(LS )=ML - S - F/L =FL - 比重量 γ N/m =kg/(m ) M/(L S )=ML - S - F/L =FL - 密度 g kg/m M/L =ML - FS /L =FS L - 粘性係数 μ Pa =N/m M/(LS)=ML - S - FS/L =FSL - 動粘性係数 m / L /S=L S - L /S=L S - 比エンタルピー J/kg=Nm/kg=m / L /S =L S - Q/M=QM - 比内部エネルギー u J/kg=Nm/kg=m / L /S =L S - Q/M=QM - 比熱, J/(kgK) L /(S )=L S - - Q/(M)=QM - - 熱伝導率 λ W/(mK) ML/(S )=MLS - - Q/(LS)=QL - S - - 熱拡散率 a m / L /S=L S - L /S=L S - 熱伝達率 W/(m K) M/(S ) =MS - - Q/(L S)=QL - S - - () 熱の仕事当量と仕事の熱当量 SI 単位では, 熱も仕事も単位は J であるが, 工学単位では, 熱量は al, 仕事は kgm で表す. 工学単位系では, 熱と仕事の関係を求める場合には, 単位変換が必要となる. W JQ Q W AW J J を熱の仕事当量 A を仕事の熱当量という.

11 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 第 章熱力学第 法則 熱力学第 法則 (t frt la of trmodyam)= 熱はエネルギーの一種であり, 熱を仕事に変換, もしくはその逆も可能である. エネルギー保存則エネルギーの種類物体や系が保有するエネルギーには, 表に示すようないくつかの種類がある. 運動エネルギー (Kt Ergy, KE) や位置エネルギー (Pottal Ergy, PE) は力学的エネルギーと呼ばれる. 熱もエネルギーである.( 熱力学第 法則の意味 ) 熱エネルギーはエンタルピー (taly) H [J] と呼ばれる. 単位質量当たりのエンタルピーは比エンタルピー (f taly) [J/kg] という. 注意 : 単位モル当りのエンタルピー [J/mol] を用いることもある. エンタルピーは系の温度のみの関数である. エンタルピー 電磁気学的エネルギーは熱的エネルギーレベルを表すことになり,Pottal Ergy の一種と言える. エンタルピー差 = 熱量となる. エンタルピーは次式で定義される. 高さ [m] z m = H C d [J] C 運動エネルギー, 位置エネルギー 自然落下 d [J/kg, J/mol] 温度 [K] エネルギーの種類 力学的エネルギー 運動エネルギー 位置エネルギー 弾性エネルギー 熱エネルギー 化学エネルギー エンタルピー 相対的な 基準位置 絶対零度 宇宙不変の基準 =J 力学的エネルギー 熱エネルギー 本来, 系の持つ全エネルギーは熱エネルギーや力学的エネルギーなどすべてのエネルギーの総和である. 系の持つ全エネルギーは常に一定に保たれる. これをエネルギー保存の法則 (t la of t orato of rgy) という. エネルギーの保存則系の持つ全エネルギー = 熱エネルギー + 力学的エネルギー + = 一定 問題を扱う場合には, 物体や系に含まれるエネルギーのうち, 必要なエネルギーだけを考慮すればよい. 例えば, 運動する物体は運動エネルギーと位置エネルギーを持っており, 理想状態ではこれら つのエネルギーの和は一定 ( エネルギー保存則 ) となることを考慮する. 実際には物体や系には温度があるため, 力学的エネルギーだけではなく熱エネルギーも持っているわけであるが, 問題を解く際に温度が変化しないと仮定できれば, 力学的エネルギーだけ考慮すれば良いことになる. 一方, 熱力学が扱う系 ( 開いた系, 閉じた系 ) の場合, 運動するしないにかかわらず系の温度が変化するため, 常に熱エネルギーを考慮しなければならない. 開いた系では熱エネルギーだけでなく作動流体が運動するため, 力学的エネルギーを含めた全エネルギーを考えなければならない. 一方, 閉じた系では作動流体の運動は無視できるため, 熱エネルギーのみを考慮すればよい.

12 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 参考 : 熱エネルギーは運動系のエネルギー保存を考える上でも重要な場合がある 次に つの運動を考える l[m] 移動 F F l[m] 持ち上げる 摩擦係数 摩擦抵抗力 m[kg] 物体を水平に動かす場合 m[kg] 物体を鉛直上方に動かす場合 物体を水平に動かす場合力 F を作用させて床に置かれた質量 m[kg] の物体を水平にゆっくり移動するとき,F は摩擦抵抗力 mgに等しい. すなわち, F mg この物体を l[m] 移動するのに要するエネルギー E は, E Fl mgl 移動が完了したとき, 移動に要したエネルギーは, 摩擦熱に変換されて周囲に散逸したことになる. この系では移動に要したエネルギーと摩擦熱の間でエネルギー保存が成立する. 物体を鉛直上方に動かす場合力 F を作用させて質量 m[kg] の物体を鉛直上方に等速度で移動するとき,F は物体の重量 mg に 等しい. すなわち, F mg この物体を l[m] 持ち上げるのに要するエネルギー E は, E Fl mgl 移動が完了したとき, 移動に要したエネルギーは, 位置エネルギーに変換されて物体自体に蓄えられることになる. この系では移動に要したエネルギーと位置エネルギーの間でエネルギー保存が成立する.. 非流動系のエネルギー変換 () 気体の仕事 膨張仕事, 外部仕事シリンダ ピストンでは, シリンダ内圧 によって内側からピストンを押す力 F A (A は シリンダ断面積 ) が作用し, この力がピストンを動かす駆動力となる. シリンダ内の気体を加熱して気体が膨張し続けると, この駆動力を利用してピストンに仕事をさせることができる. 気体の膨張に伴ってピストンが x から x まで移動するとき, ピストンは外部に対して, W x x Fdx の仕事をする. このようにシリンダとピストンを用いると, 気体の膨張を利用して熱量を仕事 ( 力学的エネルギー, 機械的エネルギーともいう ) に変換することができる.W は気体の膨張によって発生する仕事であることから膨張仕事と呼ばれる. また, この例のように系が外部に対して行う仕事を外部仕事 (xtral ork) という. 参考 : 大気圧による背圧 b が作用するため, ピストンには押し戻す力 F A も同時に作用する. このため, 実際に仕事として利用できるのは となる. 注意 : W x x x Fdx x x F dx W W b b W, W b b a

13 圧力 内側からピストン を押す力 F シリンダ内圧力 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 一般に, シリンダ内の気体が膨張してピストンが外部に仕事を発生するとき, 仕事の符号を正とする (W > ). ピストンを押してシリンダ内の気体を収縮させるとき, ピストンには逆に外部から仕事を与えなければならない. このとき仕事の符号は負 (W < ) と符号を定義する. Q 気体が膨張する際に圧力変化が生じる. 圧力変化の形は, 熱の与え方による. 熱量 Q 容積 b F F b ピストンに作用する力 F 力の大きさはシリンダ内圧力の変化に応じて変化する. この面積分が有効に取り出せる仕事 位置 x 排除仕事ここで, 外気の圧力が のとき, 空っぽの袋に体積 の気体を充填することを考える. この作業 ( 仕事 ) を行うには, 圧力 に逆らって体積 だけ外気を押しのけなければならないから, 作業を行うのに必要な仕事 ( エネルギー量 ) は と の積に等しい. 外気を押しのける ( 排除する ) 意味から, と の積を排除仕事という. は圧力 [Pa] での理想気体 [m ] の排除仕事 [J] であり, は圧力 [Pa] での理想気体 kg も しくは mol の排除仕事 [J/kg or J/mol] となる. 袋 充填後の袋 [kg] 排除仕事 (, ) [m ] の気体を充填 袋は圧力 の気体を体積 だけ排除. 排除に要したエネルギ ( 排除仕事 ) は 線図上の面積で表される 線図 容積 () 内部エネルギーエンタルピーから排除仕事分を差し引いた値を内部エネルギー (tral rgy) U [J] と呼ぶ. 単位質量当たりの内部エネルギーは比内部エネルギー (f tral rgy) u [J/kg] という. 詳細は下記資料を参照のこと. 埼玉工業大学機械工学学習支援セミナー ( 小西克享 ) 内部エネルギーの意味 tt://.t.a.j/ur/ko/jpn/l_suort/suortpdf/itralergy.df 注意 : 単位モル当りの内部エネルギー [J/mol] を用いることもある.

14 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 エンタルピー H と内部エネルギー U の関係 ( 比エンタルピー と比内部エネルギー u の関係 ) は次式で定義される. H U [J] u [J/kg, J/mol] 内部エネルギーは系の温度のみの関数である. 等温変化では, 系の圧力 容積が変化しても温度が等しいため内部エネルギーの値は同じである. U C d [J] u C d [J/kg, J/mol] 閉じた系で体積が変化できない場合, 外部から与えられた熱量 dq はすべて内部エネルギーの増加量となる. dq du [J] dq du [J/kg, J/mol] () 熱力学の第 基礎式閉じた系で体積が変化できる場合, 外部から熱量 dq を与えると, 一部が仕事 dw に変わり, 残りは内部エネルギーの増加量 du となる. 与えた熱量がすべて仕事に変換される訳ではないことに注意が必要である. dq du dw [J] dq du d [J/kg, J/mol] ここで, 仕事の変化分 dw は dw d [J] d d [J/kg, J/mol] だから, 代入すれば dq du d [J] dq du d [J/kg, J/mol] この式を熱力学の第 法則から導かれた熱力学第 基礎式 ( エネルギー式 ) という. () 熱力学の第 基礎式比エンタルピー の式は u 両辺の全微分を取ると, d du d du d d du d d ここで, 熱力学の第 基礎式 dq du dを適用すれば d dqd よって dq dd となる. これを熱力学の第 基礎式という. 熱量が内部エネルギーと仕事に変換される比率は状態変化の仕方によって異なる. 体積が変化しない閉じた系 体積が変化する閉じた系 まとめ 熱力学の第 基礎式 dq du d 熱力学第 法則 熱力学の第 基礎式 dq d d 等温変化等温変化ではジュールの法則 *) より内部エネルギーの変化 du は であるため, すべての熱量が仕事に変換される. du, dw dq [J] du, d dq [J/kg, J/mol] *) ジュールの第 法則. 理想気体の内部エネルギーはその圧力や体積には依存せず 温度にのみ依存するという法則.U=f(). 第 法則は, 電流と発生熱の関係を示す法則.Q= Rt 等圧変化等圧変化では熱量は, 次のように内部エネルギーと仕事に配分される.

15 圧力 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 5 dq dq du, dw dq [J] du, d dq [J/kg, J/mol] ただし, 比熱比 等容変化等容変化は体積の変化しない閉じた系であり, 熱量はすべて内部エネルギーに変換される. du dq, dw [J] du dq, d [J/kg, J/mol] (5) 絶対仕事シリンダとピストンからなる往復動エンジンでは, 内部に閉じ込められた気体に熱量を与えると気体が膨張してピストンを押すことによりピストンは外部に対して仕事を行う. このような閉じた系では, 気体が外部に対して行う仕事は絶対仕事 (abolut ork) W と呼ばれる. Q 面積 = 絶対仕事 熱量 Q 容積 熱力学の第 法則の式を積分すると dq du dw [J] dq du d [J/kg, J/mol] Q U U W q u u 気体を膨張させるために外部から与えた熱量は仕事を発生させるとともに, 内部エネルギーを増加させることになる. 絶対仕事 W は 線図 ( 線図 ) の圧力を積分することで求まる. W d [J] d [J/kg, J/mol]. 流動系のエネルギー変換 () 工業仕事タービンでは作動流体が一方方向に流れ, タービンブレードに力を与えて軸を連続的に回転させることで仕事を発生する. このように, 開いた系で気体が外部に対して行う仕事は工業仕事 (tal ork) W t と呼ばれ, 絶対仕事と区別される. 工業仕事は 線図 ( 線図 ) の圧力を積分することで求まる. W d t [J] d t [J/kg, J/mol] 5

16 圧力 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 6 面積 = 工業仕事 エネルギー保存の法則から, タービンが外部にする仕事 ( 工業仕事 )W t は入口と出口の作動流体のエンタルピー差に等しい. W t H H [J] t [J/kg, J/mol] タービン入口 において作動流体の持つエンタルピーは H U [J] u [J/kg, J/mol] タービン出口 において作動流体の持つエンタルピーは H U [J] u [J/kg, J/mol] であるから U U Wt u u t [J] [J/kg, J/mol] W U U u u t となる. 一方, 熱力学の第 法則において, 断熱変化では dq より dq より dq du dw [J] dq dud [J/kg, J/mol] から までの間で積分すると du dw U U W W U U [J] t du d u u u u [J/kg, J/mol] となるから, 工業仕事は次のように表すことが出来る. W t W [J] t [J/kg, J/mol] ( もしくは ) はタービン入口 に投入された作動流体の持つエネルギーの一部であり, 作動流体を入口から押し込むのに必要な仕事に等しい. これは正の仕事に変換できる ( 外部に対して仕事を発生できる ) エネルギーである. W は作動流体が から まで断熱変化する際にタービンブレードに与える絶対仕事であり, 入口出口間の内部エネルギー差に等しい. ( もしくは ) はタービン出口から作動流体を排出するのに必要な負の仕事である. タービンが外部にする仕事はこれらの仕事の総和である. この仕事は 線図 ( もしくは 線図 ) では次式で表される. W t d [J] t d [J/kg, J/mol] 容積 排除仕事 絶対仕事 排除仕事 工業仕事 = + - () エネルギー保存則 6

17 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 7 図に示す流動系のエネルギー保存を考える. m 出口における作動流体のエネルギーは, 入口におけるエネルギーに系の外から流入する熱量と系の外に発生する仕事が加味されたものとなるから, 次のエネルギー保存則が成立する. H m mgy Q Wt H m mgy ただし,H : 単位時間当たりに流入するエンタルピー [J/],H : 単位時間当たりに流出するエンタルピー [J/],Q : 単位時間当たりに供給される熱量 [J/],W t : 単位時間当たりに発生する工業仕事 [J/],: 流速 [m/],m: 質量流量 [kg/]. 式を変形すると, Q H H m Wt mgy y H m, H m なので Q m m Wt mgy y m gy Q m gy W t さらに, u, u を代入すれば mu gy Q mu gy W t. 状態量状態量 (quatty of tat)= 系もしくは物質の状態を表す量. 示量性 (xt rorty) 示強性 (t rorty) ( 系全体の量が部分系の量の和に等しい ) ( 示量性でないもの ) 体積圧力質量密度物質量 (mol) 濃度エントロピー温度エンタルピー化学ポテンシャル内部エネルギー注意 : 熱量 Q, 仕事 W などは状態量ではない. 理想気体では, 圧力 温度 比容積 のうち, つが決まると, 残りの一つは決定される. 7

18 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章理想気体 8 第 章理想気体. 理想気体理想気体 (dal ga) は気体分子の体積および分子間力を無視した仮想の気体である. 理論計算を行う上で便利であるが, 実際には存在しない気体である. 実在する気体は, 総称として実在気体 (ral ga) という. 理想気体と実在気体の比較理想気体実在気体 ( 半理想気体 ) 比熱温度に関係なく一定温度の関数 状態変化 次項の理想気体の状態方程式で記述される 単原子分子および 原子分子 (N, O, ): 狭い温度範囲において, 理想気体の状態方程式を適用可 原子分子 (CO, H O, ): 理想気体の状態方程式が適用できない. 理想気体の状態方程式とその意味理想気体に成立する法則として代表的なものには次のものがあげられる. ボイルの法則 (Boyl' la): 温度一定のもとで, 圧力と体積は互いに反比例する シャルルの法則 (Carl' la)( ゲイ リュサックの法則ともいう ): 圧力一定のもとでは, 体積は熱力学温度に比例する. ボイル シャルルの法則 (Boyl-Carl' la): 体積は, 圧力に反比例し, 熱力学温度に比例する. これらの関係を整理したものは, 理想気体の状態方程式 (quato of tat of dal ga) と呼ばれ, 理想気体の温度 圧力 比容積 ( 状態量 ) の関係を表す. 理想気体の状態方程式系全体単位質量当り mr R R u ただし,m は系に含まれる気体の質量 [kg], はモル数 [mol] である.R はガス定数 (ga otat) [J/(kgK)] で, 気体成分ごとに異なる.R u はガス定数 R に分子量 M [g/mol=kg/kmol] を乗じた値で, 一般ガス定数 (ural ga otat) [J(/mol K)] という. R u MR 8. J/(kmol K) 一般ガス定数は気体の種類に関係なく一定である. 注意 : 実在する気体 ( 実在気体 ) は気体を構成する原子数が増えるほど, 理想気体の状態方程式に従わなくなる. 式から分かるように, 状態方程式とは気体の圧力, 容積, 温度の関係を示すものであるが, この方程式が持つ意味はそれだけではない. ( 等温変化では ) 圧力と体積は反比例する. 系全体 単位質量当り or 単位モル数当り 式の単位はエネルギーである. 8

19 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章理想気体 9 系全体 mrの場合 左辺 : Pa N/m, m N/m m Nm J 右辺 : kg, R J/kg/K, K mrkg J/kg/K K J となる. 単位質量当り m すなわち系全体のエネルギー [J] R の場合 左辺 : Pa N/m, m /kg N/m m /kg Nm/kg J/kg 右辺 : R J/kg/K, K J/kg/K K J/kg すなわち単位質量当りのエネルギー ([J/kg]) となる. は圧力 [Pa] での理想気体 [m ] の排除仕事 [J] に等しい. は圧力 [Pa] での理想気体 kg の排除仕事 [J/kg] に等しい.. 比熱と比熱比ジュールの法則 (Joul la): 実験により, 内部エネルギーは温度のみの関数であることを発見. 熱力学の第 基礎式および第 基礎式より, dq du d dd 比熱の定義より dq du d du, d d d よって du d, d d dq d dd d これらを, 熱力学の第 基礎式および第 基礎式に代入すれば, dq d d, dq d d 両辺を引くと d d d d d R なので, この両辺の全微分は dr d d d dr d Rd 理想気体の状態方程式は, R d d d となる.. 内部エネルギー温度 [K] モル数 [mol] の理想気体の内部エネルギーは, 分子運動論より,m を分子の質量, m を平均分子運動エネルギー,N A をアボガドロ数とすると R 単原子分子 : U m N A N A R [J] N A 5 原子分子 : U R [J].5 エントロピーある温度 の下で, 単位質量あたり熱量が dq 変化した場合,dq と の比 dq/ は, 一つの状態量となる.( 注 :dq 自体は状態量ではない.) そこで, クラジウスは変化量が dq d 9

20 圧力 P 圧力 P 温度 比エンタルピー 圧力 P 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章理想気体 で表される状態量 をエントロピー (troy) と名付けた.( この場合, 正確には比エントロピー ) 気体の状態変化を考察する際に, 縦軸に圧力 と, 横軸に比容積 としたグラフ ( 線図 ) だけでなく, 縦軸に温度, 横軸に比エントロピー としたグラフ ( 線図 ) を併用すると理解が容易となる..6 理想気体の状態変化要点温度, 圧力, 比容積などの状態量が変化することを状態変化 (ag of tat) という. 一般に, 変化前を, 変化後を で表し, 必要に応じて数字を追加する. 状態変化の様子を表すために, 線図 ( dagram), 線図 ( dagram), 線図 ( dagram) が用いられる. このうち, 理想気体では 線図, 線図の 種類, 湿り空気では 線図を加えた 種類が用いられる. 比容積 重ね合わせると < 仕事 d 比容積 熱量 dq 比エントロピー 比エントロピー 記号は大文字と小文字で意味が異なる場合がある., P: 圧力 : 絶対温度,t: 摂氏 : 比容積 ( 比体積 ),: 容積 ( 体積 ) : 比エンタルピー,H: エンタルピー : 比エントロピー,S: エントロピー 変化の仕方は無数に考えられる 状態変化の仕方は無数にある. そのうち, 特徴的なものは 等温変化 (otrmal ag) 等圧変化 (obar ag) 等容変化 (oor ag) 比容積 断熱変化 (adabat ag) の 種類である. これらの状態変化は 5 ポリトロープ変化 (oltro ag) の一種であり, ポリトロープ変化は全ての状態変化の総称である. 状態変化を考える上で重要な

21 温度 圧力 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章理想気体 ことは, 発生する仕事 ( もしくは外部から与えられる仕事 ) 供給する熱量 ( もしくは, 奪い去る熱量 ) を求めることである. 仕事は, 線図で圧力 を積分することで求まる. d ここで, 圧力 は 等温変化 ot. ot. 等圧変化 ot. 等容変化 ot. / ot. 断熱変化 ot. 5 ポリトロープ変化 ot. の関係から, 求めることができる. また, 熱量は, 熱力学の第 基礎式と第 基礎式から求めることができる..6. 等温変化 等温変化 等温変化 等温変化では, 温度が変化しないから, 内部エネルギーは, du 熱力学第一法則から dq du d d となり, 気体に与えられた熱量 q はすべて, 仕事 に変換される. q m[kg] では Q mq m 理想気体の状態方程式は R ot とおけば, 外部仕事は d d d l l l l さらに, 次のようにおくこともできる. l R l.6. 等圧変化 線図 比容積 線図 比エントロピー 体積が変化する閉じた系

22 温度 圧力 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章理想気体 等圧変化 等圧変化 等温変化 等圧変化では圧力が変化しないから, d よって, 熱力学の第 基礎式 ( 熱力学の第一法則 ) から dq dd d となる. 加えられた熱量は, すべてエンタルピー変化に変わる. ここで d d であるから q 外部仕事は d d d よって, 比をとると R q R となる. 内部エネルギーは du d であるから u u du d 比をとると u u q u u q P 線図 比容積 となる. 等圧変化では, 加えられた熱量は内部エネルギーと外部仕事に配分される. q 線図 比エントロピー 体積が変化する閉じた系.6. 等容変化等容変化では容積が変化しないから, d よって, 熱力学の第 基礎式 ( 熱力学の第一法則 ) から dq du d du となる. 加えられた熱量は, すべて内部エネルギー変化に変わる. ここで du d であるから

23 温度 圧力 温度 圧力 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章理想気体 等容変化 等温変化 等容変化 等圧変化 P 線図 比容積 線図 比エントロピー q du d 外部仕事は, 体積変化がないから d 体積が変化しない閉じた系.6. 断熱変化 等容変化 等圧変化 等容変化 等温変化 断熱変化では, 変化の過程で気体と周囲との間に熱交換が行われない ( 断熱されている ). また, 摩擦による内部発熱も発生しない. 熱交換がないから, dq よって, 熱力学の第 基礎式 ( 熱力学の第一法則 ) から dq du d d d (.) となる. ここで, 理想気体の状態方程式 R の両辺を微分すると d d Rd (.) (.) 式より d d d R d d (.) 式に代入すると d d d 積分すれば d d d d P 線図 l l ot l 比容積 l ot l d d d ot 線図 比エントロピー 体積が変化しない閉じた系 ot

24 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章理想気体 となる. 注 : 断熱変化では圧力と比容積の関係が, 比熱比 κ を用いて表すことができるため,κ は断熱指数ともいう. とおけるから, 外部仕事は d d ここで などの関係を代入すると R となる..6.5 ポリトロープ変化変化の過程で, 気体と周囲との間で熱交換が行われる場合, 一般に, 圧力と比容積の関係は ot の形で表すことができる. をポリトロープ指数という. 代表的な状態変化では等圧変化 : 等温変化 : 等容変化 : 断熱変化 : の場合に等しい. 外部仕事は, 断熱指数をポリトロープ指数で置き換えたもの等しい. R 熱量は, 熱力学の第 基礎式 ( 熱力学の第一法則 ) から d d d du dq 積分すれば R R d d q ここで, ポリトロープ変化の比熱として R を定義すれば q を境にして, ポリトロープ変化の比熱の正負が逆転するため, の状態から の状態に膨張

25 温度 圧力 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章理想気体 5 ( 温度が低下するから ) の場合 なら q : 加熱しないと状態変化を実現できない なら q : 断熱しないと状態変化を実現できない なら q : 放熱しないと状態変化を実現できない の状態から の状態に圧縮 ( 温度が上昇するから ) の場合 なら q : 放熱しないと状態変化を実現できない ことになる. なら q : 断熱しないと状態変化を実現できない なら q : 加熱しないと状態変化を実現できない ( 等容 ) ( 等容 ) ( 等圧 ) ( 等温 ) ( 等圧 ) 線図 比容積 ( 等温 ) ( 断熱 ) 線図 ( 断熱 ) 比エントロピー.7 可逆変化と不可逆変化状態変化を起こす系が完全に断熱されるとともに, 内部で摩擦などによるエネルギーの散逸がなければ, の状態変化をさせても, 逆のプロセスで再び のように元の状態に戻すことができる. これを可逆変化 (rrbl ag) という ). 実際の現象では, 断熱やエネルギー散逸を伴うので元の状態には戻らない. この場合, 不可逆変化 (rrrbl ag) という. 断熱変化 ポリトロープ変化 可逆変化 不可逆変化 シリンダ内のピストンが移動するとき, 可逆変化では, 断熱変化により と の状態変化を繰り返すことができる. 不可逆変化では, にポリトロープ変化後, ピストンを押し込めば, ポリトロープ変化により の状態変化を起こすことになる. と の状態は一致しない. 可逆変化は断熱変化において起きる理想的な変化であるため, 特に可逆断熱変化 (rrbl adabat ag) ともいう. ただし, 断熱変化でも内部摩擦等が発生する場合には, 不可逆断熱変化 (rrrbl adabat ag) となる. ) 詳細は下記資料を参照のこと. 埼玉工業大学機械工学学習支援セミナー ( 小西克享 ) 可逆変化と不可逆変化 tt://.t.a.j/ur/ko/jpn/l_suort/suortpdf/rrlcag.df 5

26 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章理想気体 混合気体の性質 ( ドルトンの法則 ) 数種類の理想気体が反応せずに, 拡散 混合する場合, 出来上がった混合気はドルトンの法則によって, 質量 温度 圧力 容積の状態量を求めることができる. ドルトンの法則 (Dalto' la): 混合気の圧力は各成分の分圧の和に等しい. 混合前の各成分気体の質量, 圧力, 温度, 容積をそれぞれ m,,,, 混合後を m,,, とする. 関係式は mr m R, m m m u u m 全体では m m m u um m m m u m u m m m u m u m u u m 容器が断熱されている場合, 全体の内部エネルギーは混合前後で保存される. m u mu よって R R m m m m 気体成分の分圧 ' は, その成分のみが体積, 温度 になった場合の圧力に等しいから R R m ' より ' R m ' 混合前混合後

27 8 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 7 第 章熱力学第 法則. サイクルと仕事熱エネルギーを仕事 ( 動力 ) に変換する機械を熱機関 (at g) という. もっとも単純な熱機関はシリンダとピストンで構成される. 高熱源からシリンダ内の気体に熱を供給すると気体は膨張してピストンを動かすから, ピストンに仕事をさせることができる. しかし, ピストンの移動量には限界があるため, 気体を無限に膨張させることは出来ない. そこで, 熱機関が連続的に仕事を発生するには, ピストンを何らかの方法で一旦元の位置に戻し, 再度膨張させる繰り返しを行なわなければならない. これをサイクル (yl) という. 熱機関ではサイクルを実現することにより, 間欠的に連続した仕事を取り出す事ができるようになる. 図で, サイクルが行う仕事は, 気体の膨張により発生する膨張仕事と, 気体を圧縮することに費やされる圧縮仕事との差となる. 圧力 サイクルに外部に取り出せる仕事 膨張 圧縮 容積 熱機関のサイクル 圧力 熱量を与える ( 等温膨張 ) Q 膨張仕事 熱量を奪う ( 等温圧縮 ) Q 圧縮 ( 収縮 ) 仕事 外部になす仕事 供給熱量 Q> + 容積 放熱熱量 Q< - 加熱と放熱の組み合わせたサイクル 圧力 熱量を与える ( 等温膨張 ) Q 膨張仕事 外力で押戻す ( 断熱圧縮 ) 圧縮仕事 外部になす仕事 供給熱量 Q> + 容積 - 加熱と押し戻しの組み合わせ このとき, サイクルが有効な仕事を発生するためには 7

28 8 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 8 膨張仕事 > 圧縮仕事でなければならない. サイクルは, 線図 ( 線図 ) で閉曲線の状態変化を描く事になる. 閉曲線内部の面積がサイクルから取り出せる仕事を表す. 周積分記号を用いるとサイクルの仕事は以下のように定義できる. W = d シリンダ内の気体を膨張させるには, 気体に熱量を与えればよい. 一方, 膨張した気体から熱量を奪えばピストンを押し戻すことが出来るが, 熱損失を無視できるとすると膨張過程と圧縮 ( 収縮 ) 過程の経路が同じとなり, 膨張仕事 ( 正の仕事 ) と圧縮仕事 ( 負の仕事 ) が等価となる. この場合, サイクルは外部に何も仕事をしないことになる. また, 放熱を行わずに力を加えてピストンを押し戻すと, 圧力が元の状態より大きくなるため膨張仕事 ( 正の仕事 )< 圧縮仕事 ( 負の仕事 ) となって, 仕事を取り出すどころか逆に仕事を与えなければならなくなる. このため, 単に熱量を奪ったり, ピストンを力ずくで戻しても有効なサイクルを形成できない. 有効なサイクルを形成するには, ピストンを元の位置に戻すための圧縮仕事を気体の膨張で得られる膨張仕事より小さくしなければならない.. 熱効率と動作係数熱機関では, 高熱源から熱量を得て低熱源に放熱することでその熱量差を仕事に変換できる. 高熱原から供給する熱量のうち, 何 % を仕事に変換できるかが熱機関の性能を示す重要な指標となる. この指標を熱効率 (trmal ffy) ηといい, 次式で表すことができる. η = W Q Q Q = Q Q = Q 熱機関のサイクルを逆向きに動作させると, 低熱源から熱量を奪い ( 吸熱 ), 高熱源に放熱することができ, これを冷凍機もしくはヒートポンプという. 冷凍機では低熱源側からの吸熱を冷却に応用したもので, ヒートポンプでは高熱源側への放熱を暖房に応用したものである. 冷凍機もしくはヒートポンプの性能を表す指標は動作係数 (offt of rforma) といい, 次式で表される. 冷凍機の動作係数は Q Q ε r = = W Q Q ヒートポンプの動作係数は Q Q ε = = W Q Q 圧力 圧力 P 容積 熱機関のサイクル 容積 冷凍機のサイクル (Q を利用 ) ヒートポンプのサイクル (Q を利用 ). カルノーサイクルカルノーは, 温度 の高熱源と温度 の低熱源を用いて, 次の つの行程を順に行うことで, あらゆる熱機関の中で最大の熱効率を与える熱力学的理論サイクルを構成できることを見出した. 等温膨張 8

29 8 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 9 断熱膨張 等温圧縮 断熱圧縮このサイクルは, カルノーサイクル (Carot' yl) と呼ばれている. 圧力 断熱圧縮 等温圧縮 等温膨張 断熱膨張 温度 断熱圧縮 等温膨張 等温圧縮 断熱 膨張 線図 比容積 カルノーサイクル 比エントロピー 線図 カルノーサイクルでは, 高熱源からの熱供給により気体を等温膨張させると, 供給熱量全てを仕事に変換できる. 熱供給を止めても, 内部エネルギーを消費しながら気体は引き続き膨張 ( 断熱膨張 ) することができる.その後, 等温冷却すると気体は収縮する.さらに断熱圧縮をさせると元の状態に戻る.の過程で, エネルギーを投入していないにもかかわらず, 膨張仕事が得られるが,では逆に, 圧縮仕事を与えなければならないから,に必要なエネルギーを のエネルギーで埋め合わせれば, 結局, 高熱源から供給される Q と低熱源へ捨てる Q のみがサイクルに関与する熱量となる. カルノーサイクルの熱効率は次のように計算される. 高熱源 からの加熱量は, 間の等温変化の熱量に等しく, Q = mr l > 低熱源 からの放熱量は, 間の等温変化の熱量に等しく, Q = mr l = mr l = mr l > カルノーサイクルの熱効率は, 次のように単純な公式で表すことができる. mr l Q η = = = Q mr l 注 : カルノーは理論を考案したにすぎず, 実際にエンジンを製作したわけではないが, 現代の熱機関に発達につながる重要な熱力学の理論を導き出したことで, その貢献はきわめて大きい.. 熱力学の第 法則自然界では, 熱は高温側から低温側に流れる. これを熱力学の第 法則 (t od la of trmodyam) という. 熱の移動現象は, 水が高いところから低いところに流れることと類似した現象である. エネルギーの流れに方向性があることは, われわれが経験的に知っている事実であり, 経験則と呼ばれる自然法則である. 注 : 経験則は否定する事実が見つかっていないだけであり, 宇宙普遍であることまでは証明されていない法則である. 熱を仕事に変換するには, 熱機関が必要となる. 熱力学の第 法則によれば, 熱機関は高温側から熱量 Q をもらい低温側に熱量 Q を捨てることにより, 熱量差 Q Q を仕事 W に変換することが可能であることを示している. 9

30 8 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則.5 クラジウスの積分とエントロピー () クラジウスの積分カルノーサイクルの熱効率は Q η = = Q であるから, 熱量比は温度比に等しいことが分かる. すなわち Q = Q 変形すれば Q Q = ここで, 加熱を正, 放熱を負に取り, 記号を変更すれば Q = Q, Q = Q とおけば, Q Q + = 任意のサイクルを分割して, 個の複合カルノーサイクルを考えれば, 各カルノーサイクルについて Q Q + = a Q Q : Q + Q + = = が成立する. 辺々の合計を求めれば, = Q = 積分記号を用いると, 分割数を無限大にした場合, lm = Q = dq = 比容積 となる. これを可逆サイクルのクラジウス積分という. 可逆サイクルのクラジウス積分を分割すれば, dq = dq + = a dq b よって dq = dq = a b dq b となり, クラジウス積分は変化前後の状態が同じであれば, 経路に関係なく値は等しいことが分 かる. したがって, dq は状態量であることがわかる. そこで S S = dq となる量をクラジウスはエントロピー (troy) と名付けた. エントロピーは微分形で表すと ds = dq : エントロピー 圧力 b

31 8 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 d = dq : 比エントロピー となる. 不可逆サイクルでは, クラジウス積分は dq < となり, エントロピーは ds > となる. 自然界では状態変化はすべて不可逆変化であるため, 状態変化がおこれば, 必ずエントロピーが増加する. これをエントロピー増大の法則 (la of troy ra) という *.( 熱力学第 法則の別の意味 ) * 詳細は下記資料を参照のこと. 埼玉工業大学機械工学学習支援セミナー ( 小西克享 ) エントロピー増大の法則 tt://.t.a.j/ur/ko/jpn/l_suort/suortpdf/prl_of_troy.df () 理想気体の可逆エントロピー変化熱力学の第 基礎式および第 基礎式は dq = du + d, dq = d d これらの左辺は, 比エントロピー dq = d と表わせる. 一方, du = d, d = d d = dq より であるから, 代入すると第 基礎式および第 基礎式は次のように表わすことができる. d = d + d, d = d d 両辺を で割れば d = d + d, 理想気体の状態方程式 = R から R R = もしくは = d = d d なので, これらを代入すると R R d = d + d, d = d となる. 積分すれば R = d = d d l R l + = + (.) R = d d d = l R l = (.) 等温変化 等温変化では = であるから, (.) 式および (.) 式より = l + R l = R l = l R l = R l d

32 8 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 等容変化等容変化では = であるから, (.) 式より l l l R = + = また, = だから, l = 等圧変化等圧変化では = であるから,(.) 式より l l l R = = また, = だから, l = 断熱変化断熱変化では, ot = = = κ κ κ R = より, = = = = = κ κ κ κ κ κ κ R R 式 () より ( ) ( ) l l / / l l l l l = = = = = = R R R κ κ κ κ 5 ポリトロープ変化ポリトロープ変化では, ot = = = R = より, 断熱変化の場合と同様に = 式 () より ( ) ( ) l l l l l l R R = + = = = = κ.6 有効エネルギーと無効エネルギー

33 8 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 高熱源から Q の熱量を受け, 低熱源に Q の熱量を捨てることにより, Q a = Q Q を仕事に変換することができる. 仕事に変換できた熱量を有効エネルギー (aalabl rgy) という.- 線図では, が描く面積 Q に等しい. 低熱源に捨てた熱量 Q を無効エネルギー (uaalabl rgy) という. 線図では, 網掛け部分に等しい. a 温度 ( 有効エネルギー ) ( 無効エネルギー ) 温度 ( 有効エネルギー ) ( 無効エネルギー ) 比エントロピー - 線図 供給熱量 Q が等しく, 比エントロピー - 線図 の場合の 線図の比較 上図に示す高熱源から供給熱量 Q の等しい つのカルノー線図を比較すると, 右図の方が, 無効エネルギーが大きいことから, 有効エネルギーは Q > a Q a となる. これは, 高熱源の温度が高い方が, エネルギーの変換効率が大きいことを意味している..7 最大仕事 () 最大仕事とエクセルギー圧縮された気体が膨張することにより外部仕事を発生できるが, 膨張するためには周囲の気体を押しのける ( 排除する ) だけのエネルギー ( 排除仕事 ) が必要であるから, この分は外部仕事として取り出すことができない. 線図において, 単位質量あたりの膨張仕事 は = d で表され, 排除仕事は周囲の圧力を とすると, ( ) となるから, から への状態変化の間にピストンが外界に対して発生しうる単位質量あたりの仕事は ( ) m = d となる. 微分形式で表わすと, 次式のとおりとなる. = d d d m 気体が雰囲気圧力に一致するまで膨張したとき, ピストンの運動は停止するため, それ以上仕事を取り出すことができなくなる. その間に取り出した仕事が膨張によって取り出しうる最大の仕事となり, これを非流動系における最大仕事 (maxmum ork) という. 最大仕事は, シリンダの内外の圧力が平衡するまでの膨張仕事から排除仕事を差し引いた分となる. よって, 平衡状態を添え字 で表すと となる. m = dm = d ( ) 圧縮された気体が周囲と平衡するまで膨張する際に得られる最大エネルギーをエクセルギー (xrgy) という. 最大仕事と同義である.

34 8 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 圧力 膨張仕事 排除仕事 膨張停止 熱量 Q 比容積 () 最大仕事の式 一定温度の高熱源を用いる場合図に示すカルノーサイクルが温度 の高熱源から熱量 Q を得て, 温度 の低熱源に熱量 Q を捨てる場合, 有効エネルギーが最大仕事となる. Q = Q より, サイクルの最大仕事は となる. = Q Q Q Q = Q = W m 温度 温度 温度 比エントロピー 比エントロピー 比エントロピー 断熱膨張の場合圧力, 温度, 容積, 内部エネルギー, エントロピーが初期状態,,, U, S から可逆的に断熱膨張し ( 供給熱量 =), 系の圧力, 温度が, の平衡状態になるものとする. 高熱源からの熱量の出入りはなく, 温度 の雰囲気に捨てられるのみである. 熱力学第 法則から熱量は dq = du + dw で表され, 熱力学第 法則から dq ds =, dq = ds と表される. また, 系のなす膨張仕事 dw はエクセルギー dw m と排除仕事 dw = dwm + d これらを代入すると ds = du + dwm + d, dwm = du + ds d よって, エクセルギーは d の合計であるから,

35 8 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 章熱力学第 法則 5 となる. W m = dw m = ( U U ) + ( S S ) ( ) 圧力 W m 容積 5

36 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 5 章熱力学の一般関係式 6 第 5 章熱力学の一般関係式 偏微分の知識を利用すれば, 熱力学に関するさまざまな関係式を導出することができる. これらの式は, 理想気体だけでなくあらゆる物質に適応できるため, 熱力学の一般関係式と言われる. 5. 基礎式独立変数 X, Y で表される関数 Z を Z Z X, Y (5.) と表すと,Z の全微分 dz は Z Z dz dx dy X Y Y X (5.) これを, dz MdX NdY, Z Z M, N X Y Y X (5.) と表す.dZ が Z の全微分であるためには, 偏微分の順番を入れ替え Z Z Z Z Y X YX XY X Y (5.) M Z Z N Y X YX XY X Y が成立しなければならない.(5.) 式において, dz とおけば Z Z dx dy X Y dx で両辺を割れば Z Z dy X Y dx dy Y ここで, として一般化すれば dx X Z Z Y X Y X Z Y X Y X Z Y Z X X Y Z 5. マクスウェルの関係式熱力学の第 法則は熱力学の第 基礎式 : dq du d 熱力学の第 基礎式 : dq d d これに, エントロピーの式 dq d を適用すれば, 熱力学の第 基礎式 : d du d, dud d (5.5) 熱力学の第 基礎式 : d d d, dd d (5.6) ここで, 新たな状態量としてヘルムホルツの自由エネルギー (Hlmoltz fr rgy): f u ギブスの自由エネルギー (Gbb fr rgy), もしくは自由エンタルピー (fr taly): g 6

37 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 5 章熱力学の一般関係式 7 7 を導入し, それぞれの全微分を行えば d d du df d d d dg ここで,(5.5) 式,(5.6) 式を代入すれば d d d d d d df (5.7) d d d d d d d d d dg (5.8) (5.5),(5.6),(5.7),(5.8) 式を,(5.) 式と比較すれば (5.) 式 : NdY MdX dz X Y Y Z N X Z M, (5.5) 式 : d d du u u, (5.6) 式 : d d d P, (5.7) 式 : d d df f f, (5.8) 式 : d d dg g P g, 整理すると u f u g g f となる. 次に,(5.5),(5.6),(5.7),(5.8) 式を,(5.) 式と比較すれば (5.) 式 : NdY MdX dz Y X X N Y M (5.5) 式 : d d du (5.6) 式 : d d d (5.7) 式 : d d df (5.9) (5.8) 式 : d d dg (5.) 下線の 式をマクスウェルの関係式 (Maxll rlato) という. 5. 応用 5.. エントロピー計算への応用,, : 計測容易 dq から求まる しかし,Q が計測困難 マクスウェルの関係式 (5.9),(5.) を使うと,,

38 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 5 章熱力学の一般関係式 8 8 の実測値から を求めることができる. 5.. 比熱計算への応用 比熱の測定定圧比熱および定容比熱を直接測定することは出来ないが, 次のようにマクスウェルの関係式を用いることで,,, の実測値から, を求めることができる. 熱力学の第 基礎式, d du dq において等容変化では, d より, du dq となる. さらに d du du dq d 常微分を偏微分に拡張すると, u よって, 定義より定容比熱は u u q (5.) 熱力学の第 基礎式, d d dq において等圧変化では, d より, d dq となる. さらに d d d dq d 常微分を偏微分に拡張すると, よって, 定義より定圧比熱は q (5.), の式を偏微分すれば となる. これらの式を数値積分すれば,, が求まる. 定圧比熱と定容比熱の関係エントロピーを, とおけば, の全微分は d d d (5.) 両辺を d で割れば d d d d (5.) 等圧変化では, 左辺の d d は

39 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 5 章熱力学の一般関係式 9 9 d d となる. 一方, 右辺の d d は d d となるから,(5.) 式に代入すると と の差を取り, 上式を代入すれば (5.5) ここで であり, マクスウェルの関係式, を代入すれば (5.6) (5.6) 式の右辺の は, 等温変化時の容積に対する圧力の変化率である. 等温変化 (=ot) では, 線図に示すように勾配の値は となるから, この関係を代入すると,(5.5) 式の右辺 > となる. すなわち 同様に, エントロピーを, とおけば, の全微分は d d d (5.7) となり, 次式が得られる. 比容積 線図圧力 勾配圧力 線図比容積 勾配

40 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 5 章熱力学の一般関係式 等温変化 (=ot) では, 勾配の値は となるから, となる. 気体では常に と の差は正となることがわかる. 5. ジュール効果, ジュール トムソン効果熱力学の第 法則およびマクスウェルの関係式から, 内部エネルギーとエンタルピーの変化を求めることができる (5.) 式より d d d 右辺第 項は,(5.) 式より 右辺第 項は,(5.9) 式より これらの関係を,(5.5) 式 d d du に代入すると, 内部エネルギーの全微分は d d d d d du (5.8) となる. 一方,(5.7) 式より d d d 右辺第 項は,(5.) 式より 右辺第 項は,(5.) 式より これらの関係を,(5.6) 式 d d d に代入すると, エンタルピーの全微分は d d d d d d (5.9) となる. 等温変化における偏微分として,(5.8) 式および (5.9) 式で d とおくと, u が導かれる参考 ). 温度 の下で圧力と比容積の変化を計測すれば, 内部エネルギーの比容積に対する変化の割合とエンタルピーの圧力に対する変化の割合を計算できることになり, 数値積分すれば, 内部エネルギーとエンタルピーを計算することが可能となる. 理想気体の場合は R R u R R となり, 内部エネルギーとエンタルピーは体積や圧力には関係なく, 温度のみの関数となること

41 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 5 章熱力学の一般関係式 が分かる. これをジュールの法則 (Joul' la) という. また, 温度変化に関して次の関係式が導かれる. 自由膨張における温度変化 ( ジュール効果 ) ( 真空中での膨張を自由膨張という. 排除すべき気体がないので排除仕事をしないため外部仕事をしない膨張である ) ジュール (Jam Prott Joul) は, 空気を自由膨張させた場合, 空気の温度は変化しないことを実験で確かめた.( 厳密には, 温度が変化しないのは理想気体の場合であり, 実在気体では温度が低下する. このことは, ジュール効果として知られている.) ジュールの実験 A の容器に入った空気を真空の容器 B に放出し, 空気の温度変化を調べた. 容器内の温度は一時的に変化したものの, やがて元の温度に戻った ( 平衡状態となる ) ことから. 自由膨張では気体の温度が変化せず, 内部エネルギーは一定に保たれることが分かった. A 真空 B ジュールの実験 (5.8) 式で du とおくと, u この式は, 自由膨張時の体積に対する温度変化の割合を示し, ジュール効果 (Joul fft) という. ただし, 理想気体の場合は R R u となって, 自由膨張によって体積が変化しても, 温度は変化しないことが分かる.( ジュール効果は存在しない ) 絞りにおける温度変化 ( ジュール トムソン効果 ) ジュールとトムソンは, 絞りを通して気体を膨張 ( ジュール トムソン膨張 ) させた場合, 気体の温度が変化すること見つけた. ジュール トムソンの実験 ジュール トムソンの実験では, 圧力が A に一定に保たれた断熱容器 A から, 圧力が B に一定に保たれた断熱容器 B に多孔質壁の細孔を通って気体をゆっくりと圧力差を保った 状態で絞り膨張させた. その結果, 膨張後の B の気体の温度が A の温度よりわずかに低く なることを確かめた. A B F F,, 多孔質壁 > ジュール トムソンの実験

42 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 5 章熱力学の一般関係式 A の容器が体積 A だけ減少し,B の容器が体積 B だけ増加したとする. 容器の周囲の圧力が とすれば,A から B には細孔を通して A A のエネルギーが流入し,B はピストンが空気を排除することで, B B のエネルギーを失うことになる. この系は外部に仕事をしないため, エネルギーの変化はすべて内部エネルギーに変換される. よって B の内部エネルギーが U b から U b に変化したとすれば, B B A A b b b U U U この系全体の排除仕事分の変化は,+ - である. この装置は外部に対して仕事をしたわけではないので, 排除仕事分の変化は系全体の内部エネルギーの変化分 ΔU に変換される. したがって, U となる. ここで,ΔU は A と B の内部エネルギー U と U の差に等しいので, U U U となる. よって U U このとき, 系全体のエンタルピーは一定に保たれる.(5.9) 式で d とおくと, μ をジュール トムソン係数という. 理想気体の場合は R R となって, 絞り膨張によって圧力が変化しても, 温度は変化しないことが分かる. 実在気体では, ある圧力を境に勾配が逆転する. これをジュール トムソン効果 (Joul-omo fft) という. ジュール トムソン効果参考 : 微分公式 g fg g f g f を適用すると, より, 式の変形が正しいことが分かる. B の圧力 温度 逆転温度 一定逆転温度曲線等エンタルピー線 > < 圧力が低下する方向が膨張

43 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 6 章蒸気 第 6 章蒸気 6. 蒸発の基礎 () 飽和温度水が沸騰する温度は, 飽和温度 (aturato tmratur) と呼ばれる. 飽和温度は雰囲気の圧力によって異なり, 下左図のように圧力が大きいほど飽和温度も高くなる. 飽和温度と飽和圧力の関係は, 機械工学便覧に記載されており, 次表に抜粋を示す. また, グラフで表すと下右図の通りである..5 蒸気圧曲線 水温 5.76MPa のとき.5 飽和温度 沸点.MPa のとき 沸騰 時間 圧力 [MPa] 温度 [ ] 水の飽和表 (999 日本機械学会蒸気表より抜粋 ) 圧力 温度 比体積 密度 比エンタルピー 比エントロピー Prur mratur Sf olum Dty Sf Etaly Sf Etroy kpa MPa m kg - kg m - kj kg - kj kg - K - ' 8 " ρ ' " "-' ' " "-' なお, 理科年表には, [mmhg] の水の沸点として, 以下の計算式が紹介されている. 沸点 ( ) ( ) t 68 = [ ] t 68 :968 年国際温度目盛 () 加熱時の水の状態変化水 ( 圧縮水 omrd atr) を一定圧力の下で加熱 ( 等圧加熱 ) すると, やがて飽和温度に達して飽和水 (aturatd atr) となる. 飽和水をさらに加熱すると水蒸気が発生し, 飽和状態の水と水蒸気が混在した湿り蒸気 (t aor) となる. 湿り蒸気の状態ではいくら加熱しても温度は一定である. 湿り蒸気をさらに加熱すると, やがてすべてが水蒸気となって乾き飽和蒸気 (dry aturatd aor) となる. 乾き飽和蒸気をさらに加熱すると, 再び温度が上昇し, 過熱蒸気 (uratd aor) となる. ある圧力を超えると, ある温度まで過熱されると, 蒸発現象を伴わ

44 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 6 章蒸気 ずに一気に液体から蒸気に変化する. このときの圧力と温度の状態を臨界状態という. 臨界状態における温度を臨界温度, 圧力を臨界圧力という. 線図および 線図上で, 臨界状態はひとつの点 C で示される. この点を臨界点 (rtal ot) という. 等圧加熱時の水の状態変化を 線図および 線図に示すと図のようになる. 圧縮水 (= 水の圧縮液 ): 線図上を a b に変化する 飽和水 (= 水の飽和液 ):b 点の状態となる 湿り蒸気 : 線図上を b d に変化する 乾き飽和蒸気 :d 点の状態となる 5 過熱蒸気 : 線図上を d に変化する 飽和液線 飽和液線 圧縮水 過熱蒸気 液体 過熱蒸気 C 臨界点等圧変化 C 臨界点 a b d b 等圧変化 d 飽和蒸気線 a 湿り蒸気湿り蒸気 A B A B 圧縮水 過熱蒸気 液体 過熱蒸気 C 臨界点 a C 臨界点 b d 等温変化等温変化 a b d 飽和蒸気線湿り蒸気湿り蒸気 A B A B 線 AC 上では水が沸騰状態にあり, 飽和液線 (aturato lqud l) という. 線 CB 上では水が乾き飽和状態にあり, 飽和蒸気線 (aturato aor l) という. 6. 状態曲面 () 状態曲面 線図を温度 に関して拡張すれば, を つの軸とする 状態曲面ができる. このうち, 面は 線図に等しい. 面は 線図となり, 固相, 液相, 気相の状態を表すことになる. () 相変化相変化は次のように呼ばれる. 融解 (fuo): 固相 液相蒸発 (aorato): 液相 気相昇華 (ublmato): 固相 気相特定の圧力 温度において, 固相 液相 気相の三相が共存することができる. この条件を三重点 (trl ot) という. 三重点は物質によって異なる.

45 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 6 章蒸気 5 線図 C 臨界点 F 解曲相線( 氷)融固液相 ( 水 ) C 臨界点 線図 C 臨界点 C A B 蒸気圧曲線 三重点昇華曲線 S 気相 ( 蒸気 ) 線図 三重点 A 湿り蒸気 B 6. 蒸気の熱的状態量 6.. 圧縮液と飽和液内部エネルギー, エンタルピー, エントロピーは相対量 基準が必要 () 水の場合 基準 : 三重点 ( 温度 = 7. 6 K, 圧力 = Pa, 比容積 =. に変更された. 三重点において, 比エンタルピー = 比エントロピー = 比内部エネルギーは, エンタルピーの定義 = u + より u = = 6.659[Pa].6 [m /kg] =.6[J/kg] 値が小さいため, u とおいてもよい. [m /kg]) () 冷媒の場合基準 :. において比エンタルピー =8.68kJ/kg=kal/kg 比エントロピー =.868kJ/(kgK)=.kal/(kgK) () 任意の温度 における飽和水基準状態 (. と定義 ) から次のように状態変化したと考える. 状態 : 基準状態 (., = Pa) の飽和水 等温加圧 : du = u = u = 状態 : 温度., 任意圧力 = の圧縮水 : = u + 等圧加熱 : dq = d d = d = dt 状態 : 温度 t [ ], 任意圧力 の飽和水 q l t = dt =. 7.6 d : 液体熱 q l = dt = より = d 圧力 液体なのでほとんど圧縮されない 5

46 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 6 章蒸気 6 同様に = d 6.. 湿り蒸気と乾き飽和蒸気水と蒸気が共存する状態を湿り蒸気といい, 飽和温度で全量が蒸気となった状態を乾き飽和蒸気という. 乾き度 (dry frato): 湿り蒸気 kg 中に含まれる蒸気分 ( 乾き蒸気 ) の質量が x[kg] のとき,x を乾き度という. 湿り度 (t frato): 乾き度が x のとき, x を湿り度という. 湿り蒸気の状態量は, 飽和液の状態を, 飽和乾き蒸気の状態を で表すと. r = " ' : 蒸発潜熱 = x" + x x x x ( ) ' ( x) ' ( x) ' = x" + = x" 過熱蒸気乾き蒸気をさらに加熱すると, 過熱蒸気と呼ばれる状態となる. 過熱蒸気の, は以下のとおり. q = d : 過熱分の熱 = " + = " + a d A B A B x d C 臨界点 6. 蒸気表と蒸気線図 () ファンデアワールスの式蒸気には理想気体の状態方程式は適用できない. 蒸気の状態変化を表す式として, 次のファンデアワールスの式が有名. a + ( b) = R (a,b は定数 ) () 蒸気表蒸気の温度, 圧力, 比容積, 比エンタルピー, 比エントロピーを一覧表にしたもの. 国際標準値に基づく日本機械学会蒸気表 999 年版が最新. () 蒸気線図 ( 蒸気 - 線図 ) 蒸気のエンタルピー とエントロピー の関係を線図にしたもの. 水蒸気に対するものはモリエ線図という. C 臨界 b d 等温変化等温変化 a b d x -x x -x x a b C r x 等圧変化 d 過熱蒸気 6

47 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 6 章蒸気 7 蒸気 atm 等温線 液体 臨界点 等圧線 x= x=.5 x= 乾き度 6.5 湿り空気 () 乾き空気水蒸気をまったく含まない空気. 体積組成は N :O :Ar:CO =78.8:.95:.9:. () 湿り空気水蒸気を含む空気 全圧と分圧水蒸気と乾き空気の混合気の圧力を全圧 (total rur) という. 全圧 は, 水蒸気の圧力 ( 水蒸気分圧 artal atr aor rur) と乾き空気の分圧 の合計となる. すなわち = + a 飽和蒸気圧と飽和湿り空気空気中に蒸気として含有できる量は, 空気の温度によって異なる. 分圧として表した場合, 到 達しうる最大の水蒸気分圧を飽和蒸気圧 (aturatd aor rur) a という. 水蒸気分圧が 飽和蒸気圧に等しい湿り空気を飽和湿り空気 (aturatd mot ar) という. 絶対湿度と相対湿度空気中に含まれる水蒸気の濃度を表す方法には 種類ある. 絶対湿度 : 乾き空気 kg に対して含まれる水蒸気の量を絶対湿度 (abolut umdty) という. x[kg/kg] で表す. 相対湿度 : 飽和蒸気分圧 に対する蒸気分圧 の比を % で表したものを相対湿度 (rlat umdty) という. ϕ = [%] θ [ ] における空気中の飽和水蒸気圧を求める式は多数提案されているが, 気象の分野では次の Magu t (967) の近似式が一般的である. ) 7.5θ log = θ + 7. もしくは, 対数の定義より 7.5θ = 6.66 θ + 7. [Pa] ) 出典 :tt://r.olorado.du/~oml/.tml () 関係式絶対湿度 x [kg/kg] と相対湿度 ϕ [%] には次の関係がある. 7

48 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 6 章蒸気 8 ϕ x =.6 ϕ () 湿り空気線図湿り空気の乾球温度, 湿球温度, 露点温度, 絶対湿度, 相対湿度, 比容積, 比エンタルピーなどの状態量のうち, つがわかると, 残りの全ての状態量を決定することができる. 参考 : 米国暖房冷凍空調学会 (ASHRAE) の ASHRAE Fudamtal Hadbook(997) には, 飽和湿り空気表 ( 大気圧 ) が掲載されている. 比エンタルヒ ー 相対湿度 飽和湿り空気 湿球温度 絶対湿度 水蒸気圧 比容積 露点温度乾球温度 8

49 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル 9 第 7 章熱力学のサイクル 7. 熱機関の概要 () 熱機関 (Hat g) 熱力学の第 法則により, 高熱源から熱を供給し, 低熱源に放出することにより熱を仕事に変換することができる. 熱から仕事へのエネルギー変換を行う装置を熱機関 (at g) という. () 熱機関の種類と特徴 種類 ガスサイクル機関 蒸気サイクル機関 燃焼形式 内燃機関 : Itral ombuto g 燃焼ガスのエネルギーを直接動力に変換する. 外燃機関 :Extral ombuto g 燃焼もしくは核反応のエネルギーを水に与え, 発生する蒸気で動力に変換する. 実用例 往復動機関 ( レシプロ機関, 蒸気機関 : Stam g Rroatg g) ガスタービン : Ga turb 蒸気タービン : Stam turb () 熱効率 (rmal ffy) エンジンの熱効率は, 投入したエネルギーの何 % が有効に利用できるかを示すため, エンジンにとって重要な指標である. 熱効率には次の種類がある. 理論熱効率サイクルが発生する仕事, W t 供給熱量, Q 正味熱効率サイクルが発生する仕事から損失を除いた分, W' ' 供給熱量, Q 正味熱効率は常に理論熱効率より小さい. つの効率比は熱力学的熱効率 ηという. ' t カルノーサイクルの熱効率はあらゆる熱機関の中で最大となり, カルノーサイクルの熱効率を越える熱機関は存在しない. 高熱源から与えられる熱量のうち, Q は, 仕事に変換できる最大値を示すため, これを最大仕事もしくはエクセルギー (xrgy) という. ( 第 章のエクセルギーも参照のこと ). また, Q は仕事に変換できない熱量であり, アネルギー (argy) という. 7. ガスサイクル機関 7.. 熱力学的サイクルの実現サイクルが外部に仕事を発生するには, ピストンを元の位置に戻すための圧縮仕事を気体の膨張で得られる膨張仕事より小さくなるよう, 閉曲線を描かなければならない. すでに述べたように, 加熱と冷却を組み合わせただけのサイクルでは, 同じ状態変化を繰り返すだけで閉曲線を実現できない. カルノーは熱効率が最大となるカルノーサイクルを考案したが, これも実際には実現は困難である. 9

50 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル 5 外部にする仕事 加熱 外部にする仕事 放熱 加熱と冷却によるサイクル 実用サイクル 実用的な熱機関を実現するには, 膨張完了時に一気に放熱して気体の圧力を低下させれば良い. 実用エンジンでは, 気体の膨脹時に発生する仕事をフライホイールの回転エネルギーに変換して蓄え, ピストンを押し戻す際の圧縮仕事に利用している. また, 膨張後に排気を行うことにより短時間のうちに気体から熱量を奪うように工夫している. 一方, サイクルが成立するためにはピストンが元の位置に戻った際に圧力がサイクルの初期状態に戻らなければならない. そのためには, ピストンが まで押し戻されたら熱量を供給して圧力を の状態まで回復させれば良い. このように, ピストンの上死点で熱供給を行い, 下死点で放熱し, 膨張および圧縮の期間は断熱変化させることでサイクルは外部に対して仕事をすることが可能となる. このようなサイクルを熱力学的サイクル (trmodyam yl) と呼ぶ. 熱力学的サイクルは上死点での圧力変化 ( 状態変化 ) のさせ方によって, オットーサイクル (Otto yl), ディーゼルサイクル (Dl yl), サバテサイクル (Dual Combuto Cyl, Sabat yl) の つの基本形に分類することが出来る. これらの基本サイクルを考えるとき, 実際のエンジンにおけるサイクルでは, 熱損失, 物性値の温度変化, 種々の物理的な遅れなどのために複雑な状態変化を示し, 理論的考察は困難である. そこで, 実際には存在しない理想的なサイクルを考えた方が考察しやすい. もっとも現象を単純化したものは, 作動流体を理想気体としての空気に置き換えた 理論空気サイクル と呼ばれる. また, 理論空気サイクル の作動流体に燃料や残留ガスの物性を加味し, 実際のサイクル に近づけた 燃料空気サイクル もある. 7.. 熱力学的サイクルの種類各サイクルの主要な相違点は次表の通りである. 項目理論空気サイクル燃料空気サイクル実際のサイクル 作動流体理想気体 ( 比熱一定 ) 大気の温度 圧力における比熱 密度 新気 ( 燃料空気混合気 ) と残留ガス 新気 ( 燃料空気混合気 ) と残留ガス 燃焼 時間遅れを無視 時間遅れを無視 時間遅れを考慮 壁面熱損失 考慮する ガス交換 下死点において行われる 下死点において行われる 時間遅れを考慮 7.. 熱力学的サイクルの 基本形熱力学的サイクルの つの基本形であるオットーサイクル, ディーゼルサイクル, サバテサイクルの P- 線図および -S 線図を下に示す. サイクルの特徴や相違点を十分理解することが必要である. 注意 : 熱力学的サイクルの P 線図には つの状態変化の過程 ( サバテサイクルでは 5) が存在するが, つの過程が必ず行程 ( ストローク ) に対応すると勘違いしてはいけない. 圧縮過程が圧縮行程と一致するように, つの過程がピストンの 行程 ( ストローク ) に対応する場合もあれば, そうでない場合もある. シリンダ内の気体の状態変化が圧縮開始 ( 番号 ) から始まって, 再び元の圧縮開始 ( 番号 ) に戻る一連の変化をサイクルと呼ぶのである. 状態変化の 過 5

51 温度 温度 温度 温度 温度 圧力 P 圧力 P 圧力 P 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル 5 程を サイクルと勘違いし, これらを サイクルエンジンと呼ぶのは間違いである. つのストロークで サイクルを構成するから, ストロークサイクルエンジンと呼ぶのが正しい. 注意 : 圧縮始めの番号を とする. 等圧加熱 等圧加熱 o 断熱膨張 等容加熱 d 断熱膨張断熱膨張等容加熱 断熱圧縮等容放熱等容放熱等容放熱 o d 断熱圧縮 5 断熱圧縮 容積 容積 容積 オットーサイクル ディーゼルサイクル サバテサイクル サイクルの P 線図 等容等容 o 断熱 o 断熱 等圧 d 断熱 d 等容 断熱 等容 等容 等圧 断熱 5 エントロヒ ー S エントロヒ ー S エントロヒ ー S オットーサイクル ディーゼルサイクル サバテサイクル サイクルの S 線図 -S 図について 等容 等容 エントロピーの定義より 状態 a から b までの経路の積分 dq ds [J] dq d [J/mol] Q ads b [J] q ad b [J/mol] は系に出入りする熱量を表す. 下図に示すオットーサイクルでは, 供給熱量は 排出熱量は 供給熱量 Q ds [J] エントロヒ ー S -S 線図 排出熱量 q d [J/mol] エントロヒ ー S 5

52 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル 5 となる. Q ds ds [J] d q d [J/mol] 7.. サイクルの熱量と仕事サイクルの各行程における熱の出入り ( 正 = 加熱, 負 = 冷却 ) と仕事 ( 正 = 膨張仕事, 負 = 圧縮仕事 ) は下表の通りである. オットーサイクル表の各欄, 上段は系全体, 下段は単位質量もしくはモル数当りの式過程熱量 (> 供給,< 冷却 ) 仕事 (> 膨張仕事,< 圧縮仕事 ) : 断熱圧縮 o: 等容加熱 o o: 断熱膨張 o : 等容放熱 Q W U U d d q u u d d Q q Uo U uo u Q q Q q U Uo u uo W W W o d o d o U o U o d o o u o u o d o d o d o ディーゼルサイクル過程熱量 (> 供給,< 冷却 ) 仕事 (> 膨張仕事,< 圧縮仕事 ) : 断熱圧縮 d: 等圧加熱 d d: 断熱膨張 d : 等容放熱 Q q Q q Ud U W ud u Q q Q q U Ud u ud W W W W U U d d u u d d d d d d d d d U d U d d d d u d u d d d d d d d サバテサイクル 過程 熱量 (> 供給,< 冷却 ) 仕事 (> 膨張仕事,< 圧縮仕事 ) 5

53 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル 5 : 断熱圧縮 : 等容加熱 : 等圧加熱 5: 断熱膨張 5 : 等容放熱 Q q Q q U U u u Q q U U W u u Q 5 q 5 Q q 5 U U5 5 u u5 W W W W W U U d d u u d d d d d d 5 5 U U 5 d 5 5 u u 5 d 5 d 5 5 d サイクルの理論熱効率理論熱効率は理論サイクルにおける出力 ( 理論仕事 ) と入力 ( 供給熱量 ) との比である. また, 出力は供給熱量 Q q と排出熱量 Q q の差となるから, 理論熱効率は次式のように定義できる. W Q Q q q t t Q q Q q 理論仕事は P- 線図 (P- 線図 ) 上のサイクル内部の面積に等しい. 基本サイクルの理論熱効率は次の通りである. オットーサイクル膨張仕事は o o の過程, 圧縮仕事は の過程となる. 理論熱効率は W W W Uo U o U U U o U t Q Q U U U U もしくは t 断熱変化では また, だから q q u o o u u o o u u u ot o ad o u u o o o u u ot o ad o o o ad 変形すると, 圧縮比 (omro rato) を として o o o o o o o o ad o o 5

54 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル 5 5 o o o o o o o o よって t オットーサイクルでは理論熱効率は圧縮比と比熱比の関数となることがわかる., f t ディーゼルサイクル膨張仕事は d d の過程, 圧縮仕事は の過程となる. 理論熱効率は d d d d d d W U U U U W U U U U U U W W U U W W W Q W t もしくは d d d d d d u u u u u u u u u u u u q t d d d d d,, R R P d d d d d,, R R より d d R P W d d R P よって d d d d d R R t d d d d R R t R より d d d d t の過程は断熱変化であるから よって, d の過程は等圧変化であるから d d d d ここで, 等圧膨張比 ( 締切比 ut-off rato) を d d d d と定義する. d d の過程は断熱変化であるから d d d d d d d d d d より d d d d d d d d

55 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル 55 よって, d d d d したがって, 理論熱効率をさらに変形すると d t d ディーゼルサイクルでは理論熱効率は圧縮比, 比熱比, 等圧膨張比の関数となることがわかる. f,, サバテサイクル膨張仕事は 5 の過程, 圧縮仕事は の過程となる. 理論熱効率は W W W5 W W U U5 U t Q Q U U U U W U U W もしくは より t q q t U U W 5 u U U 5 U u u u u u u u u u 5 u u, R, R, R, R よって t R R 5 5 t R R t 5 の過程は断熱変化であるから よって, 5 u 5 u 5 の過程は等容変化であるから. ここで, 圧力比を と定義する. の過程は等圧変化であるから ここで, 等圧膨張比 ( 締切比 ) を

56 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル と定義する. 5 の過程は断熱変化であるから より 5 もしくは 5 よって 5 5 よって t サバテサイクルでは理論熱効率は圧縮比, 比熱比, 等圧膨張比 ( 締切比 ), 圧力比の関数となることがわかる.,,, f t 7..6 サイクル理論熱効率の比較 つの基本サイクルの理論熱効率を比較すると, 次の表のようになる. 表からわかるように, オットーサイクルはサバテサイクルの等圧膨張比 ( 締切比 ) の場合に一致し, ディーゼルサイクルは圧力比 の場合に一致する. オットーサイクルディーゼルサイクルサバテサイクル t t t 解答. オットーサイクル :. t ディーゼルサイクル :..7 t サバテサイクル :..6 t 例題 κ=.,ρ=,λ= のとき, オットーサイクル, ディーゼルサイクル, サバテサイクルの理論熱効率の式を求めよ. 例題 オットーサイクル, ディーゼルサイクル, サバテサイクルの理論熱効率と圧縮比の関係をグラフで示せ. ただし,κ=.,ρ=,λ = とする. 圧縮比は から の範囲とする オットーサイクルサバテサイクルディーゼルサイクル理論熱効率圧縮比

57 圧力 温度 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル 57 解答. 図のとおり. 圧縮比および供給熱量が同じ場合圧縮比が同じ場合, 各サイクルの断熱圧縮過程 ( ) における状態変化は同一となる. 圧縮後, 同じ供給熱量を与えると, 膨張 ( 燃焼 ) 過程 ( オットー : o o, ディーゼル : d d, サバテ : 5) はおおよそ図のような変化となる. 等容冷却過程 ( オットー :o, ディーゼル :o, サバテ :5 ) では排出熱量 Q q オットー : Q o o U o U o q uo u o ディーゼル : Q サバテ は d d U d U d q ud u d 5 Q U5 U 5 5 q u5 u 5 となる. 排出熱量は 線図 ( 線図 ) の冷却過程における圧力差 ( オットー : o, ディーゼル : d, サバテ : 5 ) に比例するから, ディーゼル>サバテ>オットーとなる. 排出熱量の比較は S 線図 ( 線図 ) の面積 ( オットー :--b-a, ディーゼル :-d- b- a, サバテ : 5 b a) からも確かめられる. q q したがって, 理論熱効率の式 t において, 供給熱量 Q q は一定であるから, 理論熱効 q 率の値はオットー > サバテ > ディーゼルとなる. 一般に, ディーゼルエンジンの方がガソリンエンジン ( オットーエンジン ) より燃費が良いとされる常識に矛盾するように思えるが, これは圧縮比が異なるためである.( 実際のエンジンではディーゼルが 6 から に対してガソリンでは約 ) o オットー サバテ d ディーゼル d 5 o 容積 オットー 等容 等圧 等容 サバテ o 5 o d d 6o 6 6d ディーゼル エントロヒ ー S 最高圧力および出力が同じ場合出力が同じ場合,P 線図 (P 線図 ) および S 線図 ( 線図 ) においてサイクルが描く面積が等しくなる. さらに最高圧力が等しい場合, 次図のようになる. 排出熱量は 線図 ( 線図 ) の等容冷却過程 ( オットー :o, ディーゼル :d ) における圧力差 ( オットー : o, ディーゼル : d ) に比例し,S 線図 ( 線図 ) の面積 ( オットー :-o-6o-, ディーゼル : -d-6d-) からも確かめられるようにオットー >ディーゼルとなる. 理論熱効率の値は 57

58 圧力 温度 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル 58 ディーゼル > オットーとなる. サバテサイクルはその中間となる. d d ディーゼル o o オットー o d ディーゼル等圧 d o 等容 等容 オットー o d o d 容積 6d 6o エントロヒ ー S 前項でも説明したように, 実際のエンジンでは圧縮比がディーゼルエンジンの方がガソリンエンジンより大きい. すなわち, ディーゼルエンジンの方がガソリンエンジンより行程が長くなるために熱効率が高くなることが上記の説明からも理解できる. ストロークと ストロークの動作と状態変化の関係 ストローク ストローク 吸入行程 吸気弁 掃気 ( 放熱 ) 圧縮行程 圧縮行程 燃焼 燃焼 膨張行程 膨張行程 5 放熱 排気弁 ピストン 往復 = 行程 6 排気行程 ピストン 往復 = 行程 58

59 温度 温度 圧力 P 圧力 P 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル 59 ストローク ストローク W 6 5 容積 ストロークエンジンの圧力と容積の関係 W 容積 ストロークエンジンの圧力と容積の関係 5 6 エントロヒ ー S エントロヒ ー S ストロークエンジンの温度とエントロヒ ーの関係 ストロークエンジンの温度とエントロヒ ーの関係 7..7 ガスタービンのサイクル ガスタービンにおける気体の状態変化 B 断熱圧縮 ( 空気圧縮機 C) : 加圧空気 : 等圧燃焼 ( 燃焼器 B) : 高温燃焼ガス 断熱膨張 ( ガスタービン ) C G 高温ガスは膨張しながらガスタービンを回転させ, 熱エネルギーを動力に変換する. 発 生した動力を用いて,C を駆動すると共に, 発電機 G を駆動する. サイクルの 基本形ブレイトンサイクル (Brayto yl)( 定圧燃焼サイクル ) とエリクソンサイクル (Ero yl) が基本. 59

60 温度 温度 圧力 圧力 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル 6 等圧加熱 等圧加熱 断熱膨張 等温膨張 断熱圧縮 等温圧縮 7..8 ジェットエンジンのサイクル基本はブレイトンサイクル. 等圧放熱容積 ブレイトンサイクルエリクソンサイクルサイクルの P 線図 断熱 等圧 等圧 断熱 エントロヒ ー S ブレイトンサイクルエリクソンサイクルサイクルの S 線図 等圧 等温 等圧放熱 等温 等圧 容積 エントロヒ ー S 7. 蒸気サイクルの機関 () ランキンサイクル (Rak yl) 水を等圧加熱して過熱水蒸気を作り, 蒸気タービンのブレードに当てることによりタービンを回転させる方式 構成給水ポンプ P, ボイラ B, 過熱器 S, 蒸気タービン, 復水器 C ランキンサイクルにおける水蒸気の状態変化 断熱圧縮 ( 給水ポンプ P) : 圧縮水 : 等圧加熱 ( ボイラ B) : 飽和水 等圧加熱 ( ボイラ B) : 乾き飽和蒸気 等圧加熱 ( 過熱器 S) : 過熱蒸気 断熱膨張 ( 蒸気タービン ) : 湿り蒸気 復水器 C 過熱蒸気は膨張しながら蒸気ガスタービンを回転させ, 熱エネルギーを動力に変換する. 発生した動力を用いて, 発電機 G を駆動する. B S P C G 6

61 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル 6 少し圧縮されるが, 大差はない 飽和液線飽和蒸気線 - - -: 等圧変化 熱効率ポンプ仕事 W ' ランキンサイクルの理論熱効率 R W W () 再熱サイクル (ratg yl) 段目の蒸気タービンからでた水蒸気を再加熱し, 段目の蒸気タービンで利用する方式 構成給水ポンプ P, ボイラ B, 過熱器 S, 蒸気タービン,, 再熱器 R, 復水器 C B R a S P b C G 再熱サイクルにおける気体の状態変化 断熱圧縮 ( 給水ポンプ P) : 圧縮水 : 等圧加熱 ( ボイラ B) : 飽和水 等圧加熱 ( ボイラ B) : 乾き飽和蒸気 等圧加熱 ( 過熱器 S) a: 過熱蒸気 断熱膨張 ( 蒸気タービン ) b: 過熱蒸気 等圧加熱 ( 再熱器 R) : 過熱蒸気 断熱膨張 ( 蒸気タービン ) : 湿り蒸気 復水器 C 過熱蒸気は膨張しながら蒸気ガスタービンを回転させ, 熱エネルギーを動力に変換する. 発生した動力を用いて, 発電機 G を駆動する. a b a b b 6

62 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 7 章熱力学のサイクル 6 () 再生サイクル (rgrat yl) 蒸気タービンで膨張途中の過熱蒸気を抽気し, 再熱器で加熱してボイラに戻す方式. 構成給水ポンプ P, 再熱器 R,R, ボイラ B, 過熱器 S, 蒸気タービン, 復水器 C 再生サイクルにおける気体の状態変化 断熱圧縮 ( 給水ポンプ P) : 圧縮水 等圧加熱 ( 再熱器 R) 8 : 圧縮水 等圧加熱 ( 再熱器 R) 8: 飽和水 等圧加熱 ( ボイラ B) : 飽和水等圧加熱 ( 再熱器 R) 5 : 抽気過熱蒸気 等圧加熱 ( ボイラ B) : 乾き飽和蒸気 5: 抽気過熱蒸気 等圧加熱 ( 過熱器 S) : 過熱蒸気 断熱膨張 ( 蒸気タービン ) 6: 湿り蒸気 ( 復水器 C) S R () 再熱再生サイクル (ratg ad rgrat yl) 再熱サイクルと再生サイクルを組み合わせたもの. 構成給水ポンプ P, 再熱器 R,R, ボイラ B, 過熱器 S, 蒸気タービン,, 復水器 C B a B 8 S R b 8 R 8 再熱再生サイクルにおける気体の状態変化図参照 R 5 5 P 5 6 C P C G G - - -: 等圧変化 a b

63 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 8 章気体の流れ 6 第 8 章気体の流れ 往復動機関 : 燃焼 ( 熱エネルギー発生 ) 高圧を発生 動力に変換ガスタービン : 燃焼 ( 熱エネルギー発生 ) 運動エネルギーに変換 動力に変換 8. 流れの基礎式熱と運動のエネルギーの関係式には次のものがあり, すべての式を満足する値が, 速度, 圧力 の解となる. 質量保存 : 連続の式エネルギー保存 : エネルギーの式運動量保存 : 運動方程式 () 連続の式 (quato of otuty) 定常状態 ( 時間的に変化しない状態 ) では, と の断面 ( 検査面 ) を通過する質量流量は等しい. このとき, m A [kg/] (8.) ただし, A, : 流体の密度,kg/m, : 流体の平均速度,m/ A, A : 検査面の断面積,m () エネルギーの式 (rgy quato) 検査面 に流入する流体は,E の運動エネルギーと H のエンタルピーを持っている. 流体は検査面 に到達する間に Q の熱量を与えられ ( Q とおく ),L の仕事を外部に発生する ( L とおく ). エネルギー保存から, 検査面 のエネルギーは検査面 のエネルギーにそれらを加えたものとなる. E H H E Q (8.) L ただし, Q : 与えられた熱量 ( Q ) L : 外部になした仕事 ( L ) H : 検査面 の流入エンタルピー ( H ) H : 検査面 の流出エンタルピー ( H ) E : 検査面 を通過する流体の持つ運動エネルギー ( E ) E : 検査面 を通過する流体の持つ運動エネルギー ( E ) 注意 : 流体内部の摩擦がある場合でも管路より外に摩擦熱が逃げない場合には, 摩擦熱は流体自身を加熱させることになる. この時, 系の外とはエネルギーの出入りが無いので,(8.) 式はそのまま適用される. 参考 : 管壁を通して摩擦熱の一部が逃げる場合は, 次式のように熱損失分 ( F ) を考慮しなければならない. E H H E Q L F (8.) (8.) 式を変形すると, Q L H H E (8.) ここで Q E mq, L ml であるから, H m m u, H m m u, E m, E m 6

64 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 8 章気体の流れ 6 mq ml m m m m q l これを微分形式で書けば, dq dl d d (8.5) 注意 :(8.5) 式は, 内部摩擦があり, 摩擦熱すべてが流体の加熱に使われる場合にも適用できる. 内部摩擦が無い場合, 熱力学の第 基礎式 dq d d (8.6) を (8.5) 式に代入すると, d d dl d d, d d dl (8.7) となる. 一方, 内部摩擦があり, 摩擦熱 df すべてが流体の加熱に使われる場合, 流体に加えられる熱は dq df となるので, 熱力学の第 基礎式は dq df dd (8.8) と表わされる.(8.8) 式の dq を (8.5) 式に代入すると, d d df dl d d, d d dl df (8.8) となる. 非圧縮性流れの場合 q, l, f dq, dl, df の場合を考えると d d 非圧縮性なので, otとして積分すると, d d d d ここで,, は動圧,, は静圧, は全圧という. 圧縮性流れの場合 q l f において q, l, f の場合を考えると より, エネルギーの式は ここで, : 全エンタルピー 6

65 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 8 章気体の流れ 65 () 運動方程式 (quato of moto) 理想気体の定常流れでは, 運動方程式は次式となる. d d dy g d d d ただし, は流路に沿う座標. 式を変形して積分すると d d g dy gy C ただし,C は積分定数. 流れがない場合, だから gy ot となる. この式は, 非圧縮性流体にも適応でき, 例えば水圧計算に応用できる. 大気圧 a において, 水面 y を基準に考えると, 深さ の水圧 は次式で計算できる. よって, g a g g 8. ノズル内の流れ a スロート 先細ノズル (orgt ozzl) 先細末広ノズル (orgt-drgt ozzl) 8.. ノズル出口速度と熱落差ノズルを用いることにより, 熱エネルギーを運動エネルギーに変換することができる. 圧縮性流れのエネルギー保存の式 より ここで を熱落差という. 入り口速度 が出口速度 に比べて無視できるときは, a. 摩擦がない場合可逆断熱流れ ( 等エントロピー流れ ) となり, 熱落差は断熱熱落差 となる. このとき, もしくは ad ad ad R ad b. 摩擦がある場合 ad 65

66 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 8 章気体の流れ 66 ' ここで, 速度比 :, ノズル効率 :. 95 ad ad 8.. 臨界状態 (rtal tat) () 先細ノズル等エントロピー流れの場合, 先細ノズルでは, 質量流量が最大となるノズル出口と入口の圧力比が存在する. このときのノズル出口圧力は臨界圧力と呼ばれ, 次式で与えられる. 可逆断熱膨張と考えると, ノズル出口の温度は ノズル出口での速度は もしくは R () 先細末広ノズルスロート部分で臨界状態となる. このときの圧力, 温度, 速度は先細ノズルの出口における上記の式で計算できる. 末広とすることにより, 背圧が臨界圧力より小さい場合にさらに膨張して速度を増し, 音速を超えて超音速流れを実現できる. スロート部の面積とノズル出口面積の比を末広比といい, 次式で与えられる. A A ノズル出口面積を与えれば, この式を用いて, スロート部の面積を決定することができる. 8. 音速 (d of oud), およびマッハ数 (Ma umbr) 音速 : 理想気体中を音波が進む速度 a R 空気の場合, ガス定数は 87.J/(kgK), 比熱比を. とすると a R [m/] マッハ数 : 気体の流速 ( もしくは飛行物体と気流の相対速度 ) と音速の比のこと M a 66

67 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 9 章燃焼 67 第 9 章燃焼 (ombuto) 9. 燃料の種類と燃焼によって発生する熱 9.. 燃料の種類一般に内燃機関に用いられる燃料は原油を精製して作られる石油系燃料である. 燃焼機器には内燃機関を含め種々の形式があり, 石油系燃料は各機器の燃焼方式に都合の良いように大別されて製品化されている. ガソリンエンジンには文字通りガソリンというように, エンジンはそのタイプによって使用する燃料が決められている. 仮にガソリンエンジンにディーゼルエンジンの燃料である軽油や重油を使用しても, 燃料の気化性の違いから正常に燃焼させることは出来ない. 炭化水素燃料の分類油田やガス田から採掘される化石燃料 ( 石油, 天然ガスなど ) は色々な構造を持つ炭素と水素の化合物 ( 炭化水素という ) から成っている. 炭化水素は化学構造の違いによって図 のように分類される. 代表例の化学構造式を図 に示す. 代表的な炭化水素の特徴炭化水素は 種類に分類され, 表 のような特徴を持つ. 表. 炭化水素の特徴 パラフィン系 ( 化学式 C H + ) オレフィン系 ( 化学式 C H ) ナフテン系 ( 化学式 C H ) 芳香族系 ( 化学式 C H -6 ) 直鎖パラフィン系ガソリン 低オクタン価側鎖パラフィン系ガソリン 高オクタン価 ( 良質 ) 直鎖パラフィン系軽油 高セタン価 ( 良質 ) 二重結合 つを持つ炭化水素, 天然石油には少量含有 シクロペンタンC 5 H ほか. 二重結合, 三重結合を含まない安定な構造ナフテン系ガソリンは直鎖パラフィン系より良質二重結合 つの環状不飽和炭化水素. ベンゼンやトルエンなど. 高オクタン価で燃料として良質. 石油に含まれる元素の成分石油の主成分は炭化水素であるが, ほかに硫黄, 酸素, 窒素, 微量の金属を含んでいる. 組成は産地によって異なる. 炭化水素はパラフィン C H +, ナフテン ( シクロパラフィン )C H, 芳香族 C H -6 からなり, 炭素数は C から C 5 まで広く分布する. オレフィンは原油中には存在せず, 精製中に生成する. H H C H 炭化水素 H H H C H H C C C H 鎖状炭化水素 環状炭化水素 H H H H 異性体 H H C が H で飽和 不飽和 C が H で飽和 不飽和 H H C H H C C H H H C H H パラフィン系 オレフィン系アセチレン系アスファルト系 ナフテン系ベンゼン系ナフタレン系 図. 炭化水素の分 H C H H C H H H C C H H 直鎖型 -パラフィン 側鎖型 o-パラフィン H C H C H C H H H H H C H + C H + C H C H - C H - C H C H -6 C H - メタン -ブタン イソブタン エチレン シクロペンタン ベンゼン ( パラフィン ) ( パラフィン ) (o-パラフィン) ( オレフィン ) ( ナフテン ) ( 芳香族 ) 図. 炭化水素の化学構造式 C C H C C H C C H H 67

68 埼玉工業大学 ( 小西克享 ) 熱力学講義ノート ( 第 8 版 ) 第 9 章燃焼 68 表 に炭化水素の化学式, 常温での状態を示す. 表 に石油製品の成分比率を示す. 表 に石 油の元素含有量を示す. 表. 燃料の化学式と常温における状態 名称 化学式 状態 名称 化学式状態 メタン CH エチレン C H 天然ガス エタン C H 6 気プロピレン C H 6 気体 プロパン C H 8 体 液化石油ガス ブテン C H 8 ブタン C H (LPG) ペンテン C 5 H ペンタン C 5 H ヘキセン C 6 H ヘキサン C 6 H ヘプテン C 7 H 液体 ヘプタン C 7 H 6 ガソリン オクテン C 8 H 6 オクタン C 8 H 8 ノネン C 9 H 8 ノナン C 9 H 液 デカン C H 体 オレフィン系 ウンデカン C H ドデカン C H 6 灯油 名称 化学式状態 テトラデカン C H ベンゼン C 6 H 6 ペンタデカン C 5 H トルエン C 7 H 8 ヘキサデカン C 6 H 固 エチルベンゼン C 8 H オクタデカン C 8 H 8 体 プロピルベンゼ C 9 H アイコサン C H 状 ンブチルベンゼン C H 液体 - パラフィン系芳香族系 表. 石油製品の炭化水素成分比率 ガソリン 灯油 軽油 重油 潤滑 パラフィン 5% % o パラフィン 5% % ナフテン 5% % 芳香族 無 ( 微少 ) 少 5% 文献. 小川勝, 燃料油及び燃焼, 海文堂文献. 小西誠一, 燃料工学概論, 裳華房 表. 石油の元素含有量 元素 文献 文献 C 79~88% 8~87% H 9.5~%.7~.7% S ~%.~.% O ~.% ~.% N ~.% ~.% 金属 ~.% 9.. 発熱量燃料が燃焼する際に発生する熱量を発熱量 (alorf alu) という. 水素の燃焼では燃焼生成物として H O( 水蒸気 ) が得られる. 水蒸気 ( 気体 ) は水 ( 液体 ) より蒸発潜熱 ( 気化熱 ) に相当する分だけエンタルピーが大きい. そこで, 水の蒸発潜熱分を含まない発熱量を低位発熱量, 含む発熱量を高位発熱量という. 燃焼によって発生する熱 ( 燃焼熱 = 発熱量 ) を動力に変換する際, 排気ガスの温度は 以上であるから,H O は水蒸気のまま排出され, 蒸発潜熱分は利用されずに捨てられることになる ( 図 ). 動力に変換できるのは, 低位発熱量の方である. 注意 : 高位と低位の区別は水素および水素を含む燃料の場合に問題となるのであり. 水素を含まない場合には関係ない. 68

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