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1 高齢者雇用環境に関する日韓比較研究 高齢社会公共政策部門講師李崙碩

2 < 目次 > I. 本研究の意義 Ⅱ. 労働需要側 Ⅲ. 労働供給側 Ⅳ. 結論 2

3 1. 本研究の目的 3 類似の制度を採用しているが 制度的環境が異なる日本と韓国の高齢者雇用に影響を及ぼす要因は何か? 高齢者雇用の供給 ( 労働者側 ) と需要 ( 企業側 ) に影響を及ぼす要因は何か 政策の関連アクター ( 高齢者 企業 政府 ) が与えられた制度的環境 ( 高齢化水準 国内外的企業環境および政策環境 ) の下で相互作用し 異なる政策結果をもたらす (1) 労働需要の側面 ( 日韓同時調査データを用いた定性分析 ) 日本経済新聞と韓国中央日報の共同調査データを用い 現在の企業環境のなか 個別企業の雇用結果を検討 (2) 労働供給の側面 ( 時系列データを用いた計量分析 ) ミクロデータを用い 日韓高齢者雇用の長期結果を検討

4 2. 本研究の意義 4 本研究は政策関連アクターのミクロ分析も行う総合比較研究 今まで高齢者雇用に関しては 事例紹介とマクロ指標の単純比較を除けば 国家間比較研究が行われていない 本研究は 企業単位と高齢者個人のミクロデータも利用した最初の総合的な日韓比較研究 本研究では 時間的 空間的環境要因と制度的要因の制約の下で 各行為者の相互作用がいかなる雇用結果を生み出したのかを検討する政策事例研究

5 3. 研究のデータと方法 5 両国のサーベイデータと質的資料により 研究を行う 1) 労働需要側 年 5 月日本経済新聞と韓国の中央日報が日韓企業 211 社 ( 日本は 125 社 韓国は 86 社 ) を対象として行った 高齢者雇用に関する共同調査 の一次データ (raw data) 2) 現在の高齢者雇用に対する企業の対応 ,1988,1992,1996,2000,2004 年の 6 時点の日本厚生労働省の 高年齢者就業実態調査 の一次データと韓国の保健福祉部の高齢者生活実態調査 (1994,1998,2004 年 ) の一次データ

6 < 目次 > I. 本研究の意義 Ⅱ. Ⅱ. 労働需要側定年延長 Ⅲ. 労働供給側 Ⅳ. 結論 6

7 1. 日本と韓国の対応 7 日本は着実に定年延長を政策実現手段として選択してきた 日本は高齢化に伴い 最近は 65 歳定年制度が議論された しかし 経営者側の要求を受けいれ 2006 年から実施された改正高齢者雇用安定法では 企業は 1 65 歳の定年延長 2 60 歳定年到達後 65 歳までの継続雇用 3 定年制の廃止 の中から一つを選択する方式へと変化した

8 2. 韓国の高齢化状況 8 韓国の高齢化は深刻な水準である 韓国では 2010 年から本格的にベビーブーム (Babyboom) 世代の引退が始まった 韓国は日本よりベビーブーム世代が長期間にわたっている 引退以後に対する社会システムはまだ整っていない 日本 韓国 高齢化社会 ( 高齢化率 7% 以上 ) 1970 年 2000 年 高齢社会 ( 高齢化率 14% 以上 ) 1994 年 2018 年 超高齢社会 ( 高齢化率 20% 以上 ) 2006 年 2026 年 高齢者雇用安定法制定 1971 年 1991 年 60 歳定年努力義務年度 1986 年 1991 年 60 歳定年法制化年度 1994 年 - 定年法制化当時 60 歳定年制比重 93.3% 16.5%

9 3. 韓国政府の高齢者雇用政策をめぐる議論 9 現在 韓国は日本式定年制度に向かうのか 定年廃止に向かうのかの岐路に立っている 2007 年に国会で開かれた 高齢社会に備えた定年延長保障のための討論会 では 定年延長を検討 経営者側は定年延長のような規制よりも 労働市場において長く残っていけるようにする総合的な対策が用意されなければならないと批判 国務総理調整室と労働部など 政府省庁次元では 定年義務制を望ましい方向として設定し これを推進している 最近 年齢差別禁止など定年廃止の動きもある まだ韓国は 本格的な高齢社会に突入する直前であるため どんな政策がいかなる効果を発揮するかを明らかにするのは難しい 短い期間施行されてきた韓国の高齢者雇用政策の効果を長期間施行されてきた日本と比較し いかなる要素が日韓間の差異に影響を与えたかを比較分析

10 4. 調査結果 10 現在 日本企業は定年延長よりは再雇用を好む 両国の企業調査資料の分析から 日本企業体の 95.2% (119 社 ) が退職者の再雇用制度があるが 韓国企業は 31.4% (27 社 ) だけ再雇用制度がある しかし 韓国の場合 定年延長 の割合が高い 2005 年から 3 年間定年を一度でも延長したことがある企業は韓国は 16.3%(14 社 ) 日本は 2.4%(3 社 ) に過ぎない 定年を延長していない企業の中でも定年延長の計画中の企業は韓国が 22.2% であり 日本の 9.2% をはるかに上回る 日本の大多数の企業が 高齢化の進行により 定年延長よりは 雇用の柔軟性がある再雇用制度を選択した 情報通信技術など技術の世界的な汎用化に伴う企業だけの固有な技術よりも 同種業種で広く汎用性を持つ場合が多くなっている

11 5. 日本と韓国の類似点 11 欧米諸国に比べて 次のような共通点がある 1 類似の制度的環境欧米と比較すると 社会保障制度が不充分であり 東アジア文化圏の下で伝統的な家族保障がその役割をしてきた 2 相異なる雇用制度終身雇用を前提とした企業文化の下で 欧米とは異なる定年制度がある 定年後の高齢者にも仕事 ( 就労事業 ) を通じて福祉増進を追求 3 急速な高齢化欧米が経験した高齢化スピードに比べ 日韓のほうが速い

12 6. 日本と韓国の差異 (1) 12 しかし 実際的な運用は異なっている 1 相異なる価値観と国際的環境韓国にはまだ儒教思想が残って 高齢者を優待することが高齢者雇用に異なる結果を生み出す 日本が高齢化社会 ( 高齢化率 7%) に突入した時期 (1970 年 ) は高度経済成長期であり 世界的にも高齢者福祉に抵抗感が少なかった時期であったが 韓国が高齢化社会に入った時期 (2000 年 ) は IMF 危機下であり 世界的にも新自由主義が流行し グローバル化の下で 企業環境は大きく変化した 2 雇用制度の相異なる運用日本は 高齢社会 ( 高齢化率 14%) に入った 1994 年に定年制度を法制化した しかし 韓国は急速に変わる制度的環境の下で 高齢社会に入る (2018 年予想 ) 前に 日本式の定年延長制度を選択するのか それとも 米国式の定年制度を撤廃するのかの岐路に立っている そして 日本と韓国は類似の就労事業を実施している一方 運営システムと社会保障制度の差に起因して 異なる政策結果を導き出している

13 7. 日本と韓国の差異 (2) 13 しかし 実際的な運用は異なっている 3 急速な高齢化日本も欧米に比べて 急速な方ではあるが 韓国は高齢化社会から超高齢社会に至るまで わずか 26 年しかかからないと予想され 日本とほとんど同じ水準の世界最高の超高齢社会になる このような労働力の急速な高齢化は 両国に異なる政策結果を出す 4 制度定着の時差韓国は制度導入と定着が短期間である一方 日本は利害関係者の合意に基づき 長い時間制度が導入され その施行後に長い猶予期間を与える このような両国の制度定着の時差が 両国に異なる結果をもたらしている

14 8. 定年延長と韓国への示唆 14 長期的な観点から見れば 韓国は定年制度を通じた政策方向を選択するのは無理 日本は高齢社会 ( 高齢化率 14%) に入った 1994 年に定年延長を法制化した 韓国は急速な高齢化を経験し 日本のような長期間の協議と信頼に基づいた定年制度の構築は難しい すでに平均寿命が 80 歳近くなった社会で定年をさらに延長することも難しくなり 定年制度というのはむしろ高齢者の解雇制度として機能する可能性が高い 最近 働きたい高齢者の相当数が多様な就業形態を望んでいる

15 < 目次 > I. 本研究の意義 Ⅱ. 労働需要側 Ⅲ. 労働供給側 Ⅲ. 再就業 Ⅳ. 結論 15

16 1. 就業率分析と高齢者雇用の特徴 (a) 16 日本の場合 高齢者の就業率が減少し 韓国は増加しつつある < 図 > 日韓高齢者の就業率 日本の60-64 日本の65-69 韓国の65-69 韓国の 注 1. () は韓国の年度 2. 韓国の観測値 : 65-69: : 1392 日本の観測値 : 60-64: 13031, 65-69: 資料 : 韓国の 高齢者生活実態調査 ( ) 日本の 高年齢者就業実態調査 ( ) から筆者作成

17 2. 就業率分析と高齢者雇用の特徴 (b) 17 高齢者雇用は制度 マクロ経済状況 家族文化から影響を受ける 全体的な傾向 - 日本の場合 高齢者の就業率が減少しているが 韓国は増加しつつある 日本の場合 年から1988 年まで就業率が上昇しているが その後 下落している 定年延長にもかかわらず不景気で 定年以後の就業率は下落する しかし 景気回復と制度変化にともない 就業率は上昇する - 韓国の場合 年外国為替危機を経験したにもかかわらず 高齢者の就業率は上昇する傾向にある 経済的自立の必要性が高まり 就労事業の影響も重複的に現れる

18 3. 年齢別分析結果 18 年齢が高いほど就業確率は落ちるが 賃金への影響は異なる 就業継続意思 : 年齢が上がるほど 減少 求職期間 :60 代前半の場合は年齢が高いほど 長くなった 就業確率 : 年齢が高いほど 就業確率が落ちる 賃金率 : 日本の場合 60 代前半では年齢が高まるほど賃金が減少しているが 60 代後半からは年齢効果は現れなかった 韓国も同じ傾向 60 代前半の年齢層で求職の困難さと賃金の下落を同時に経験し この年代での再就業の影響がその後まで続く

19 4. 企業規模別分析結果 19 企業規模が大きくなるほど 賃金は上がるが 就業確率は落ちる 就業継続意思 : 有意に現れなかった 求職期間 : 中規模の企業に従事した高齢者の求職期間が最も短かったが 小規模に従事した高齢者の求職期間が長く現れた 就業確率 : 年齢が高まるほど大きい規模の企業には就業が難しくなる 賃金率 : 企業規模が大きくなるほど賃金は高まっている 企業規模が大きいほど賃金が高く その反作用で年齢が高まるほど就業が難しくなる

20 5. 家族関連分析結果 20 扶養家族と年金は高齢者雇用に影響を及ぼす 日本 - 同居家族数が多いほど 就業継続意思および就業確率が高い 韓国 - 同居家族の数が多くなるほど 就業確率が減少している 年金などほかの収入 - 多いほど就業確率が低くなり 特に年金による就業への否定的な効果は 日本高齢者の分析結果で 60 代前半の場合には 代後半の場合には で現れた 一方 韓国は各々 で もっと大きく現れ 親戚から援助がある場合に就業確率は急激に低くなる

21 6. 学歴別分析結果 21 韓国は高学歴層のための雇用戦略を立てなければならない 日本の場合は教育水準が高いほど 就業確率が上昇したが 韓国の場合は教育水準が高いほど 就業確率が低下 教育水準が高いほど 就業継続意思と賃金率は高い 韓国社会は学歴中心の社会なので 教育水準が高いほど富を蓄積することが容易であり 社会的体面のため 低賃金の雑役をしない傾向 今後増えるはずの高学歴高齢者のため 雇用戦略をたてなければならない

22 < 目次 > I. 本研究の意義 Ⅱ. 労働需要側 Ⅲ. 労働供給側 Ⅳ. 結論 22

23 < 結論 > 23 今後 高齢者雇用に関する政府の役割は規制よりは教育と支援に重点を置くべきだ 高齢者雇用環境は変化しつつあり 今までの政策仕組みで対応するのは無理 高齢者の多様な経歴とニーズに合わせる多様な就業のシステムが必要 これから政府の役割は 規制よりは教育と支援に集中しなければならない

24 どうもありがとうございました! 24

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改正要綱 第 1 国家公務員の育児休業等に関する法律に関する事項 育児休業等に係る職員が養育する子の範囲の拡大 1 職員が民法の規定による特別養子縁組の成立に係る監護を現に行う者 児童福祉法の規定により里親である職員に委託されている児童であって当該職員が養子縁組によって養親となることを希望しているも 別紙第 3 国家公務員の育児休業等に関する法律の改正についての意見 の申出及び一般職の職員の勤務時間 休暇等に関する法律の 改正についての勧告 近年 少子高齢化の進展に伴い 育児や介護と仕事の両立を支援していくことが我が国の重要な課題となっており 家族形態の変化や様々な介護の状況に柔軟に対応できるよう民間労働法制の見直しが行われている 公務においても 適切な公務運営を確保しつつ 働きながら育児や介護がしやすい環境整備を更に進めていくことが必要となっている

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第第第ライフスタイルに対する国民の意識と求められるすがた50 また 働いていないが 今後働きたい と回答した人の割合は 男性では 7.4% であるのに対し て 女性は19.1% である さらに 女性の中では 30 代の割合が高く ( 図表 2-1-2) その中でも 特に三大都市圏で高い割合となってい 第 2 章 ライフスタイルに対する国民の意識と求められるすがた 第 2 章では 第 1 章で示した労働や余暇 世代や居住地ごとのライフスタイルの現状を踏まえ 国 注土交通省が一般国民を対象に実施した意識調査 ( 国民意識調査 ) から 各世代 各居住地によって 異なるライフスタイルの現状と求められるすがたについて考察する なお 本章では ライフスタイルを 働き方 楽しみ方 住まい方 動き方 の4 要素に分

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ポイント 〇等価尺度法を用いた日本の子育て費用の計測〇 1993 年 年までの期間から 2003 年 年までの期間にかけて,2 歳以下の子育て費用が大幅に上昇していることを発見〇就学前の子供を持つ世帯に対する手当てを優先的に拡充するべきであるという政策的含意 研究背景 日本に 子育て費用の時間を通じた変化 日本のパネルデータを用いた等価尺度の計測 名古屋大学大学院経済学研究科 ( 研究科長 : 野口晃弘 ) の荒渡良 ( あらわたりりょう ) 准教授は名城大学都市情報学部の宮本由紀 ( みやもとゆき ) 准教授との共同により,1993 年以降の日本において,2 歳以下の子供の子育て費用が大幅に増加していることを実証的に明らかにしました 研究グループは 1993 年において

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