Microsoft Word _アミ修正版_TF6_MBDD最終5.1の03のCA.doc

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1 部会資料 新医薬品開発戦略 新たなナレッジマネジメントの潮流 (Model-Based Drug Development 解説 ) 平成 24 年 3 月 日本製薬工業協会 医薬品評価委員会統計 DM 部会 発行医薬出版センター

2 目次 1. MBDD を活用した医薬品開発ビジネスモデルへの展開 MBDD とは? 概説 モデリングとシミュレーション MBDD 導入により期待される効果 MBDD を運用すると医薬品開発ビジネスがどのように変わるか? 医薬品開発における現状の課題 医薬品開発の将来展望 MBDD の理論背景解説 はじめに モデルの解説 疾患モデル 薬剤モデル 試験モデル 統計手法の概説 MBDD で用いられる統計モデル モデル内のパラメータの配置による分類 モデル内のパラメータの役割による分類 応答変数の種類による分類 共変量 パラメータの推定方法 モデルの評価 当てはまりのよさ モデルの選択 モデルのバリデーション シミュレーション 確率的シミュレーションの手順 疑似データの生成 反復回数 MBDD 運用手順 ナレッジの蓄積 疾患モデルの構築 薬剤モデルの構築 臨床開発戦略と臨床試験シミュレーション 試験モデルの構築 影響因子の特定...31 i

3 2.6.7 不確定要素のためのシナリオ作成 臨床試験モデルのチューニング 臨床試験シミュレーションの実行 感度分析 最適な試験条件の選択 不確実性の意思決定 シナリオの発生確率 ( もしくは信頼度 ) が設定可能な場合 シナリオの発生確率 ( もしくは信頼度 ) が未知の場合 不確実性の意思決定における注意点 最近の話題 End-of-Phase 2A Meeting アダプティブ デザイン ベイズ統計学 MBDD 適応事例 はじめに 事例紹介 事例 1 第 1 相試験からの用法 用量設定 (Zosuquidar と抗腫瘍薬の併用 ) 事例 2 POC 試験結果からの後期第 2 相試験デザイン選択 ( ナラトリプタン ) 事例 3 先行薬モデルを利用した第 2 相試験のデザイン (HAE-1) 事例 4 競合他剤との比較による Go/No-Go 判断 (Gemcabene) 事例 5 疾患進行モデルの構築 ( アルツハイマー型認知症 ) 事例 6 疾患進行モデルの構築 ( 非小細胞肺がん ) 事例 7 特殊集団における用量調整 ( ブスルファン ) 事例 8 特殊集団における用量調整 ( ソタロール ) 事例 9 特殊集団における用量調整 ( メロペネム ) 疾患別モデリング事例 ヒト免疫不全症候群 (HIV) 型糖尿病 高血圧 慢性関節リウマチ 悪性腫瘍 鎮痛薬 アルツハイマー型認知症, うつ病 MBDD に必要な環境と担当者の育成 MBDD の知識, 技術の多様性 MBDD に必要な環境...89 ii

4 5.2.1 MBDD 導入時の注意点 組織の考え方 担当者の構成 MBDD を用いた医薬品開発の進め方 MBDD のタイムライン MBDD の実施 担当者育成 育成方針 数学及び統計知識 技術の必要性 臨床薬理等に関する知識 技術の必要性 担当者の意識改革 ソフトウェア アカデミア, 学会 ファーマコメトリシャンの今後の課題 過去のデータの見直し 臨床試験シミュレーション結果の再現 モデル作成担当者間での情報共有...98 iii

5 1. MBDD を活用した医薬品開発ビジネスモデルへの展開 1.1 MBDD とは? 概説医薬品開発のさまざまなプロセスにモデリングとシミュレーション (Modeling & Simulation; M&S) を活用した手法あるいはその開発戦略 ( 図 1-1) は, モデルに基づく医薬品開発 Model-Based Drug Development ( 以下,MBDD) と称され, 近年, 欧米を中心に盛んに議論されている 1,2,3,4 MBDD の特徴は, 開発過程において継続的に蓄積される情報や開発以前に蓄積された他剤や病態に関する情報などをモデルに変換し, そのモデルを用いた臨床試験シミュレーションで得られる定量的な情報を開発戦略と意思決定に役立てるということにある この定量的な情報を得るためのさまざまな技術や理論体系は, ファーマコメトリクス (Pharmacometrics; PMx) という 5 医薬品開発とモデル構築探索と検証 各意思決定の時点での継続的な探索 / 検証 / 予測 モデリング & シミュレーションの繰り返し実施 非臨床フェーズ1 フェーズ2a フェーズ2b フェーズ3 承認申請フェーズ4 / 取得 有効性毒性 PK/PD 忍容性ヒトでの PK/PD 有効性および安全性用量 / 暴露 - 反応用量調整 疾患ごとの指標共変量効果 競合品と比べた結果, 地域差, 疾患ごとの指標 不確実性 薬剤および疾患に対する確かさ 図 1-1 各臨床ステージにおける M&S の活用 (1 の論文より一部改変 ) 従来, 非臨床及び臨床でさまざまな知見や情報が得られていても, データの質や条件の違いなどを超えて論理的に結合する定量的な方法がないために, これら知見や情報の結合は主にプロジェクト担当者の頭の中で行われていた しかし, これら非臨床及び臨床のさまざまな知見 情報は, モデルに転換し同じ土俵に載せることで, それらの蓄積, 連携および活用を促進 ( ナレッジマネジメント ) できるようになる さらにモデルには確率の要素を含めることができる 複数の試験デザインから最良のものを選択するような場面において, モデルを用いるとモデルの中に組み入れられた確率に関する情報をもとに, 従来の主観的なメリット デメリットの評価に加えて, さまざまな試験デザインでの試験成功確率なども推定でき, それに基づき試験デザインの優劣の比較が数値で行えるようになる ( 定量的意思決定 ) さらに, コンピュータ上での臨床試験シミュレーションでは, あらゆる試験デザインについて試行が可能であり, 慣例とは異なる新しい優 1

6 知識量れた試験デザインが立案できる可能性も高まる 必要症例数の削減, 試験期間の短縮, 開発品の隠れたポテンシャルを引き出し標準薬との差別化を容易にする, などの利点を有する新規の試験デザインが多く採用されれば, より効率的に開発を進められる また,MBDD では臨床試験の結果に影響しうる数多くの要因について同時に考慮することが可能である 従来の臨床試験計画立案時においても, さまざまな因子の影響について考慮はされているが, 複数の因子の相互関係により生じる影響まで考慮することは困難なことが多い MBDD ではそうした因子の同時発生確率なども織り込んだうえでの意思決定が可能となる さらに,MBDD では非臨床及び臨床試験成績から得られたデータや知識 ( 熟練の開発担当者の開発経験やそれに基づく勘 ) を, モデルに変換することで 見える化 し, 薬物あるいは疾患, その他の臨床試験に関するさまざまな情報に関して何が既知で何が未知かということを適宜明確にすることができる 開発初期の段階では, その薬物に関して多くの未知情報が存在することになるが, そうした未知情報も複数のシナリオ ( 楽観的なケース, 現実的なケース, 悲観的なケース等 ) を想定してモデル化することができる 複数のシナリオに基づくシミュレーションの結果を総合的に評価することで, 各未知情報の重要度 ( 開発戦略や臨床試験結果への影響度 ) を明らかにすることも可能となる (2.6.7 章参照 ) このため MBDD では, より重要度の高い未知情報を優先的に取得する効率的な開発が可能となる ( 図 1-2) その未知情報が開発継続 中止を決定するほど重要度が高い場合には, より早期にその情報を得ることで中止になった場合のコストを最小化することができる この場合, 従来なら定型的なプロセスの中で必然的にとられていた重要度の低い ( 開発戦略や臨床試験結果への影響が小さい ) 未知情報を取得するための無駄な投資を回避することにも繋がる モデリング & シミュレーションを用いた医薬品開発 データ, 情報 ハッ m 候補化合物の選定 ( 例 : 疾患モデル ) 用量選択 ( 例 :PPK, PK/PD, E-R モデル ) 試験デザインの選択 ( 例 : 臨床試験のシミュレーション ) のためのモデリング & シミュレーション 知識の蓄積 モデリング & シミュレーションを用いない従来の医薬品開発 臨床試験の相 意思決定 成功 図 1-2 医薬品開発におけるモデリングとシミュレーションの役割 2

7 1.1.2 モデリングとシミュレーションここでモデリングとシミュレーション ( 以下,M&S) について簡単に解説する モデリングとは, 数式によって記述された数理モデルを組み立てることであり, シミュレーションとは, 物理的 生態的 社会的等のシステムの挙動を, これとほぼ同じ法則に支配される他のシステムまたはコンピュータの挙動によって模擬することである 他の実験計測で得られたデータを解析して結果を出すのと同様, 経験で得られた情報をもとにさまざまな条件下での数値シミュレーションで仮想集団を発生させ, そのデータを解析し結果を導き出す M&S は, すでに様々な分野で活用されており, 宇宙開発, 航空機開発や飛行トレーニング, 車両, 船舶, 原子力や化学プラント, 経済 金融など, さまざまな場面で使用されている 例として, 近未来の地球における温度が予測されている国連及び気候変動に関する政府間パネル (IPCC) の温暖化のシミュレーションをここでとりあげる 6 温暖化シミュレーションでは, 地球の温度に影響を与える排出物のさまざまな要因を数理モデルに組み込み, 気候モデルを構築してシミュレーションにより将来の気候の変化を予測している 医薬品開発におけるモデリングとは, 図 1-3 に示すように血中濃度や薬理効果などの観測データに, その背景となっている薬物曝露, 薬物の体内での挙動や, それらと観測データとの間に経験的に導かれた関係性を数式として組み入れ, 観測データを表現する上で最適なモデルを構築 選択することである ( 具体的な例については 3 章参照 ) 観測条件 投与量採血時間体重, 併用薬その他共変量 仮説モデル 1 仮説モデル 2 PK モデル PK/PD モデル PK/PD/ 疾患モデル E-R モデル 観測データ 血中濃度薬理効果有効性 モデルの当てはめ 仮説モデル 3 データ数, 投与量, 採血時間, 年齢, 性別各共変量 最適モデルモデル式モデルパラメータ 観測データを最もよく説明できるモデル 仮説モデル n 図 1-3 モデリングのプロセス シミュレーションは, さまざまな試験の要素 ( デザイン, 症例数や用法 用量など ) を変化させた場合の試験結果を予測し, 最適な試験条件を探索するために用いる 3

8 予測条件をモデルに適用 場合によってはモンテカルロ法 予測条件 1 予測データ 1 最適モデル モデル式 予測条件 2 予測データ 2 最適予測条件 PK モデル PK/PD モデル PK/PD/ 疾患モデル E-R モデル データ数 投与量 採血時間 年齢, 性別 各共変量 血中濃度 薬理効果 有効性 最適な予測条件を選択 予測条件 m 予測データ m 図 1-4 シミュレーションのプロセス 他にも例えば, 小児における投与設計では, 年齢または体重のいずれか ( あるいは両方 ) を考 慮しなければならないが, その最適化にも M&S は有用である ( 図 1-5) シミュレーション 成人 + 年齢体重依存 PK モデル 小児少数例血中濃度データ 体重依存 PKモデル年齢依存モデル基本モデル 最適モデル モデル式 体重あたり投与量年齢区分投与量 予測血中濃度予測血中濃度 モデリング 最適投与量 図 1-5 小児適応のための M&S のプロセス 4

9 1.2 MBDD 導入により期待される効果 MBDD 適応下で実施される M&S の重要な役割として, 1) 臨床開発初期の候補品の絞り込み又は選択のための情報提供 2) 臨床開発における次相移行時の臨床試験デザイン選択のための情報提供 3) ライフサイクルマネジメントにおける適正利用のための情報提供が挙げられる より具体的には MBDD の導入により, 以下のようなことが可能となる バイオマーカー等の経時推移の M&S による有効性プロファイルの明確化, 他剤との差別化要素の特定 副作用発現データを対象とした M&S による安全性プロファイルの明確化, 副作用対処方法の確立 開発上の課題 ( 薬物相互作用, 特殊患者集団等 ) に対する対処方法の確立また, 治験相談においてモデルを共通言語として用いることで, 開発戦略の根底にある様々なナレッジを規制当局に伝えることが可能となり, 規制当局のもつナレッジ ( 様々な開発品に対する助言 審査の経験 ) をモデルに反映することも可能となる その結果, 開発成功確率の向上, 開発プロセスの質の向上, 開発戦略の最適化によるコスト削減 開発期間の短縮が期待できる 7,8 医薬品開発には複数のステップがあるが,M&S はどのステップにおいても活用できる 第 1 相試験での製剤変更や用量設定, 第 2 相試験以降で用いるバイオマーカーの検討や用量設定, 適応拡大での用量設定などで活用事例の報告がある ( 表 1-1) 表 1-1 開発相毎の MBDD 適応事例 相 試験の 課題 M&S 事例 目的 タスク 第 1 相 薬物動態 最初の臨床試験での,PK 特性の PK 及び PD モデ Org25935( 中枢神経系の薬剤, グリ (PK), 薬力 特定 ルの開発又は シントランスポーター阻害薬, 製剤変 学 (PD) の 線形 PK/ 予測可能か? 更新 更, 第 1 相試験データの PK/PD 解析 特性評価 結果を用いてシミュレーション実施 ) 9 前期 想定する 目標とする母集団での薬剤の特 疾患進行と用量 Maraviroc( 非競合的 CCR5 受容体ア 第 2 相 母集団で 性 ( 既存治療との差別化要素 ) は 反応の時間経 ンダゴニスト,CCR5 に対する受容体 (POC) の有効性 何か? 過を理解するた 占有率が抗ウイルス活性のバイオマ の提示 めの薬剤 - 疾患 ーカーとなり, 患者におけるウイルス モデルの開発 量減少を予測できることを確認する ためシミュレーションを実施 ) 9 前期 既存薬に 既存の治療と同じ位の改善効果 用量反応モデ CI-1017(M1- ムスカリン酸作用薬, 第 2 相 対する有 があるか? ルの構築とモデ 前臨床データ 第 1 相試験データ 既 (POC) 効性の非 後期第 2 相 /3 相試験の用量は? ル情報を活用し 存薬データを用いて臨床試験デザイ 劣性の掲 用量反応関係プロファイルは? た最適な試験デ ンをシミュレートし, より費用を抑えた 示 開発を続けるメリットはあるか? ザインの探索 試験を実施.) 10 5

10 フェーズ 試験の目 的 表 1-1 開発相毎の MBDD 適応事例 ( 続き ) 課題 M&S タスク事例 前期 想定する 目標とする患者に対する用量反 有効か無効か UK-279,276( 好中球抑制, 適応型第 第 2 相 母集団で 応関係は? を早期に判断す 2 相用量反応 POC 試験, ベイズ流適 (POC) の有効性 有効性確認試験での至適用量 るため, 治験実 応型用量割付方法, アダプティブ デ の提示 は? 施中にモデル ザインにより, 時間と費用を最小化し 更新 つつ, 効率的に用量反応を調べて, 早期の試験終了を実現.) 11 後期 目標母集 目標母集団で有効性を明確に示 所与の仮定や CI-1017( 試験デザインと用量反応パ 第 2 相 団 ( 適応 すために, どのような試験デザイ 試験デザインの ターンの組合せを複数設定し, 薬効 症 ) での最 ンを立てるべきか? もとで結果をシ や検出力を検討 ) 10 適利用 a) 対象 ( 選択 / 除外基準 ) ミュレートし, 試 b) 投与量, 用量群の数 験の成功確率 c) 症例数 を評価 d) 解析方法 e) 評価時期 第 3 相 臨床用量 臨床用量が患者集団に対して期 母集団 PK/PD Nesiritide( 種々の投与量シナリオに での安全 待通りの安全性及び有効性を示 モデルの妥当 ついてシミュレーション 提案した用 性及び有 すか? 性確認 法 用量で臨床試験が実施され, 試 効性の提 験成績が一致 ) 12 示 適応拡大 成人で承 小児についても成人と同じ効果 対象集団での ブスルファン ( 国内申請資料 ; 海外第 認されたも が得られるか? またその条件 用量 - 曝露相 2 相試験データ [ 小児患者 24 人 ] で母 のを小児 は? 関を確立 / 確認 集団 PK 解析し, 体重が共変量と判 へ適応拡 明 目標 AUC に到達するための投与 大 量調整のために,CL のモデル式に 基づいて目標 AUC の中央値とした場 合の体重 投与量曲線を描画 体重 別用量設定の提案 ) 13 市販後 臨床現場 至適用法 用量の検討 母集団 PK 解析 メロペネム ( 種々の用法, 用量につい への情報 後, 仮想濃度推 てシミュレーション ) 14 提供 移を発生させ T>MIC を計算 6

11 中枢系の薬剤である Org25935 では早期 ( 第 1 相試験終了時点 ) に, 投与方法を最適化することにより有害事象の発現を防ぎつつ有効性を確保できることが M&S により明らかとなった 9 また,Nesiritide では M&S により至適な用量を推測し, 必要最低限の臨床試験結果での承認を得ることができた 12 いずれの例においても,M&S のアウトカムとしての数値を判断のよりどころとしている MBDD を行うにあたり, 開発早期からデータに基づく定量的な判断基準を定め各ステップについて的確な統計的な評価を実施することが, 医薬品の開発を科学的かつ効率的に行うために欠かすことができないポイントと言える 有効性や安全性に影響を与える要因を定量的に理解し, モデリングの過程で補わねばならなかった仮定から, 未知の情報が何であるか, 現在の作業仮説の問題は何かを明確にでき, 次の試験での選択基準, 除外基準をより合目的的に設定することが可能となり, ひいては開発期間の短縮に繋がる すなわち, 適切な MBDD を実施することにより, 有効である薬がきちんと患者の手元に届くこと, 無効 ( あるいは危険 ) な薬が適切に排除されることが従来よりも短期間で可能となる これは患者にとって重要なことであることはもちろん, 企業としても臨床試験の成功確率を上げ, 開発費を抑制できるというメリットになる 開発候補品の数が限られているメガファーマ以外の多くの企業では, それら数少ない候補品の開発中止が経営に与える影響が大きい そうした企業では特に MBDD により開発の成功確率が高まることに注目すべきである 表 1-1 の例で Org25935 を紹介しているが, これは第 1 相試験結果を用いた M&S により, 開発の中止を阻止できた例である 第 1 相試験の結果において有効性を示す用量と有害事象を示す用量が近接していた ここで PK/PD 解析結果を元に M&S を行ったところ, 吸収速度を低下させると有効性には影響が無い一方で, 有害事象の発現率を低下させることが示され, 徐放性製剤の開発に繋がった 従来の考え方では開発を断念した可能性が高く, M&S が有効に活用された例である MBDD に関する公表論文は, いかに駄目な薬を早期に断念できたか というものが多く, 候補品を多数保有するメガファーマでなくては有効活用できない, との懸念もあったが, この Org25935 の例は開発候補品が少ない企業でも MBDD が十分に活用可能であることを示している 1.3 MBDD を運用すると医薬品開発ビジネスがどのように変わるか? 医薬品開発における現状の課題近年, 医薬品開発の効率が著しく落ちている事が大きな問題として取り上げられる様になり始めている 米国においては, その開発費の高騰に反して新薬の上市数が減少の一途をたどっていることも報告されている 15 本邦に於いても同様に, 特に第 2 相から第 3 相に移行する段階で医薬品開発の成功確率が落ち込んでいることが確認できる ( 表 1-2) 7

12 表 1-2 医薬品開発の成功確率 (16 の文献より引用 ) これらの原因としては様々な要因が考えられるが, 特に開発早期での成功確率が低い点から, ここでは初期の医薬品開発の複雑化に注目して考察したい 1980 年代から 90 年代にかけて, 製薬企業はその研究開発力の進歩に伴い多くのブロックバスターを手に入れた これらの多くは高血圧 高脂血症 胃潰瘍等の科学的にその疾患メカニズムが明らかな疾患の治療薬だった それから年月が経ち, それらの疾患に対するアンメットメディカルニーズが一定程度満たされた中で 2010 年問題を迎える事となった これらのことから, 現在では医薬品企業の主な開発ターゲット領域はメディカルニーズの未だに充たされていない, 癌やアルツハイマー病などの疾患メカニズムがはっきりしていない領域へとシフトしてきている 17, 18 そのため, 以前に比べて医薬品開発の効率が低下していると考えられる 本項では, このような複雑化した現在の医薬品開発に対して MBDD を活用することでもたらされる変化について考察する 図 1-6 のように,MBDD では, その時点で得られている全ての情報を用いてモデルを構築する もちろん, このような考え方は従来も開発担当者の経験に基づいて用いられてきたと考えられる しかし, 従来に比べてとりまく環境が複雑化している現在の医薬品開発に於いては, 個人がこれらの情報を活かすことは難しくなってきている MBDD ではこれらの情報を一元管理し, モデルという臨床試験のデザイン立案に有用な定量化された情報として提示することが出来る つまり,MBDD は既存の利用可能な情報を徹底的に使うことでその開発計画の精度を常に高め続ける開発手法と言える 当然ながら MBDD で扱うデータや情報には従来使われていたデータや情報を全て含んでいるため,MBDD の導入により開発計画の精度が従来よりも低下するということは理論的にありえない 開発プロセスが改善することはあっても悪化することはありえないのである 但し,MBDD の運用には M&S のために十分なリソースを投入する必要がある 十分なリソースが投入できなければ従来の開発スケジュールに M&S が追いつかず, その結果として開発の遅延を招き, 必ずしも開発効率の向上とならない 8

13 危険性はある MBDD の導入が進まない原因の一つがこのリソースに関わる導入コストの問題であると考えられる RDC との連携により 背景情報のみならず 血中濃度や有効性指標などの盲検データを盲検のままリアルタイムにモデルに反映することが可能に P 2 ( 実施中 ) のデータ P1 のデータ (PK) 前臨床の情報 類薬との in vitro 活性比較 システムファーマコロジー 病態進行パターン 領域特有の脱落パターン 臨床試験シミュレーション 1. 試験デザイン A 2. 試験デザイン B 3. 試験デザイン C 蓄積された情報を統合 海外データ (PK-PD, ) 試験デザイン要素 全て モデル に変換 モデルによる情報の Knowledge Base 化 類薬の情報 (PK-PD モデル等 ) 図 1-6 MBDD における情報の蓄積とその活用 米国医薬品食品局 (FDA) では MBDD の企業への導入を推進するため End-of-Phase 2A Meeting を取り入れた 19 第 2 相及び第 3 相試験のための用量選択は, 多くの医薬品開発における課題であり, 安易な用量の選択が試験の失敗を招くことも多い 開発早期における用量選択を改善することにより, 将来の試験の成功率の上昇が望める さらには, 薬物の曝露 - 反応, プラセボ効果, 病態モデルを用いた臨床試験シミュレーションを用いることで臨床試験デザインの改善が期待される End-of-Phase 2A Meeting では,FDA のファーマコメトリクス担当者 ( ファーマコメトリシャン ) が企業に対し, 臨床試験シミュレーションと定量的にモデル化された事前情報の臨床試験デザインへの利用, それによる用量 - 反応関係の精度良い推定と, 効果的な用量設定への活用を促している 以下に,End-of-Phase 2A Meeting での議論の例を挙げる 19 有効性及び安全性への関与が既知のバイオマーカー, 代替エンドポイントまたは臨床エンドポイントを利用した用量選択 動物及びヒトでの薬物の効果に関する定量的情報を反映した用量設定試験のデザイン及び安全性評価 非臨床及び臨床の曝露 - 反応データの用量反応試験デザインへの反映 9

14 他の試験デザイン戦略 ( 例, 並行群間, クロスオーバー, アダプティブデザイン ) 及び他の解析手法 ( 例, ベイズ ) の対比 非臨床及び臨床で得られた遺伝薬理学情報の活用と遺伝要因の PK-PD への影響 ( 用量選択における遺伝子の影響の定量的評価や以降の臨床試験での安全性及び有効性の評価への遺伝情報の利用を含む ) 以降の臨床試験の価値を最大化するための血液 DNA の収集戦略及びその他の試験デザイン上の工夫に関する議論 特殊集団 ( 例, 小児 ) への用量調整のための PK/PD データの活用に関する議論 このように米国では規制当局が主体となって MBDD の導入を進めており, 日本よりも導入コストに対する抵抗感は低いと推察される 但し, 日本の規制当局においても MBDD の利用可能性に関する検討は既に始まっている 2011 年 8 月には医薬品医療機器総合機構 (PMDA) 内に, 新薬審査部 ( 統計分野, 臨床分野,ADME 分野 ), 信頼性保証部, レギュラトリーサイエンス推進部, 審査マネジメント部等のメンバーからなる新統計プロジェクトが発足され, 部門横断的な活動が行われている 20 今後の PMDA からの情報発信に期待したい 医薬品開発の将来展望以上の点を踏まえた上で, 将来の医薬品開発について少し考えてみたい 最近では, 各社の情報を共有し医薬品開発に活かそうとする動きが始まっている 例えば, アルツハイマー病の病態解明を目的としたコンソーシアムや 21, アジアでの抗癌剤開発を扱うコンソーシアムが立ち上がっている 22 また, 一昔前であれば, 開発する薬剤の対象患者数は国内の疫学を用いていたが, 今では国際共同開発の潮流に乗り, 世界の疫学を想定してビジネスが成立するようになり始めている これによって, 今までは企業としては開発対象になり得なかった患者が国内に数十人 数百人しかいないような超希少疾病も医薬品の開発対象として考えられるようになってきた このような超希少疾病に対する医薬品の開発では, 今まで以上に情報がない中での開発が求められると考える そのような状況下では, 全ての情報を徹底的に使うことの出来る MBDD は強力なツールになると考える さらに, 未承認薬や適応外薬の開発の際に公知申請が一つの解決手段として考えられているが, その点に於いても, それまでの開発時点の情報や公知情報を入手したうえでモデルを構築して, その薬剤の効果を説明することで定量的にその薬剤のプロファイルを論じることが出来ると考える 最終的には, 下図のように医薬品開発の各段階でモデルを見直しつつ, その薬剤の効果の予測に役立つ 成熟されたモデル を構築し, 蓄積していくことが期待される これらの情報を当然の形で個人レベルの実臨床に反映出来るように, 医薬品開発のみならず医薬品そのものの一つの 薬剤モデル を構築することが求められる時代が来ることも予想される 近年では, 臨床開発の段階で得られる情報には限りがあり, 市場に出てからも医薬品は成長するべきものと認識されつつある この点からも, 上市後においてもその新しい情報を 薬剤モデル に組み込むことで,MBDD が医薬品のライフサイクルに真に寄与できるような時代が来ると考える ( 図 1-7) 10

15 民族差の検討はモデルで済! 有意差の は昔の笑話に 良くない薬は早く安く止める レジメの選択を効率よく 緻密な計画 Learning Confirming Seamless POC/P2a Sample Size Reestimation Seamless II/III Adaptive Dose Ranging Group Sequential Design Bayesian Dose Finding 良い薬は滅多に失敗しない 事前情報に基づいたモデル 非臨床の情報 PGx バイオマーカー Modeling & Simulations 類薬の情報 Disease モデル 適度に単純で予測に役立つ 熟成されたモデル 図 1-7 次世代の医薬品開発のイメージ MBDD は Risk-Benefit を定量化した, より科学的な開発手法である 導入に関わる障壁は高いものの,MBDD はそのコストを補って余りある利益をもたらす, 今後の医薬品の開発に必要不可欠の手段であることをご理解いただければ幸いである 11

16 2. MBDD の理論背景解説 2.1 はじめに MBDD により定量的かつ効率的な医薬品開発を実施するには, モデリングとシミュレーション ( 以下,M&S) を反復して実施することが必要になる 各臨床試験の企画段階では, 最新の情報を適用した臨床試験シミュレーションを用いて試験デザインの立案, 評価, 選択を行う 臨床試験シミュレーションの具体的な使用例としては, バイオマーカー, 代替エンドポイントまたは臨床エンドポイントを利用した定量的情報に基づいた用量選択, 試験デザインの比較などがある MBDD の運用手順を概説すると, まず行うべきことは臨床開発に関連するいくつかの情報をモデル化し, ナレッジとして PK-PD プロファイル, 非臨床薬理データ, 類薬の PK-PD 及び有効性 安全性プロファイルなどを蓄積することである このナレッジの蓄積は, その情報の信頼性も考慮したとき一朝一夕にできるものではなく,MBDD の運用開始当初に目立った成果を挙げることは困難であることが予想される ある程度のナレッジが蓄積された段階で, 次に臨床試験シミュレーションの目的, 意思決定の判定基準を設定し, シミュレーション計画を立案することになる 臨床試験シミュレーションを実行するためには, その基礎となる 3 つのモデル群 ( 疾患モデル : Disease model, 薬剤モデル :Drug model, 試験モデル :Trial model) を用いて目的に応じた数理モデルを設計及び構築し, 最新の情報に基づく改定を適時行うことになる 一方, モデル化では, 有効性, 安全性に関する評価項目などに対する影響因子を選択, 定義し, 臨床試験モデルの全体像を特定するため, 要因連関図などで整理することも重要である 要因関連図を元に 3 つのモデル群を組み合わせて臨床試験モデルを作成し, 想定される様々な条件 ( シナリオ ) でのシミュレーションを実施する そして, 得られた結果を基に, 試験デザインの選択, 評価などを行い, 開発方針を検討する また, そのようにしてモデルとして蓄積されたナレッジを組み合わせた臨床試験シミュレーションの結果や実施された臨床試験の結果が, 新たなナレッジを生み出すことなる MBDD では, 上述のように多くの過程を経るため, その立案, 運用には様々な専門知識が必要となる ここでの専門知識とは,M&S を実施し, 結果を評価するために必要となる薬物動態学, 薬力学, 臨床薬理学, 医学, 及び臨床統計学などを総合したものである これはファーマコメトリクス (Pharmacometrics; PMx) と定義され 5,MBDD を実施するために必須な基礎知識とされている 医薬品開発の成功確率向上や効率化の方策として, アダプティブ デザイン, ベイズ統計学を用いた試験デザインも注目を浴びている 23 アダプティブ デザインでは, 変更基準, 有意性の判断基準 ( もしくは試験の成功判断 ) など多くの基準の設定が必要となり, またベイズ統計学を用いた試験デザインでは, 事前分布の設定や成否の判断基準など, 汎用的な頻度論の試験デザインと異なった, いくつかの設定条件が必要となる さらに, ベイズ統計学とアダプティブ デザインを複合する場合も設定すべき条件が当然ながら多くなる このような複雑な条件設定を必要とする試験デザインを立案する際には, 特に複数のシナリオでの成功確率を定量的に評価できる臨床試験シミュレーションは有益である そこで本章では,MBDD を実施するために必要なファーマコメトリクスの基礎理論として, 疾患モデル, 薬剤モデル, 試験モデルなどのモデルの概略, 統計手法 シミュレーションに関する 12

17 概略を説明し, さらに実務担当者が実際に MBDD を運用する際の目安となるように具体的な MBDD 運用手順について整理する さらに,MBDD を実施する際には疎隔しがたい話題である End-of-Phase 2A Meeting, アダプティブ デザイン, ベイズ統計学について 2.8 章で紹介する 2.2 モデルの解説 MBDD は, 疾患モデル, 薬剤モデルおよび試験モデルという数学的モデルを用いることにより, 過去の試験情報を臨床試験シミュレーションに含めて実施することができ, 医薬品開発における意思決定に有用と考えられる モデルの構成 ( 組み合わせ ) は, シミュレーションの目的によって異なる 例えば, 特殊集団での用量調節や投与レジメンの最適化 (1 日 1 回 vs. 1 日 2 回投与など ) のように, 主に薬物動態の変動が薬理効果に及ぼす影響を考慮する場合では, 薬剤モデルは有用である また, 服薬期間が長期に渡り, 病態の進行を考慮する必要がある場合は, 疾患モデルを組み込む必要があると考えられる さらに, 複数の試験デザインの比較や試験結果に影響を与えそうな要因の検出などでは, 試験モデルも考慮する必要がある 以下に, 疾患モデル, 薬剤モデルおよび試験モデルに含まれる要素を図 2-1 に示し, それぞれ要約する 疾患モデル薬剤モデル試験モデル バイオロジ バイオマーカー / 結果変数病態の自然推移プラセボ効果 ファーマコロジー有効性安全性非臨床 / 健康成人 / 患者化合物特性 患者集団脱落プロトコール逸脱 図 2-1 疾患モデル, 薬剤モデルおよび試験モデルの要素 (24 の論文より改変して引用 ) 疾患モデル疾患モデルは, 疾患の進行の時間推移を記述するものである 薬物の曝露量に対する薬理効果の中長期的な評価においては往々にして疾患の進行などによる変化の影響を無視することができない この場合, 曝露量と薬理効果の短期的な関係を表現する薬剤モデルに加えて病態の経時的な変化を表す疾患モデルを考慮する必要がある 25,26,27 また, 疾患モデルはエンドポイントの最も効果的な観察時期を推定するうえでも有用である その概念図を図 2-2 に示す 例えば, 症状は改善されるが, 疾患の進行速度に影響しない (Symptomatic Effect)A 薬と, 疾患の進行速度を低下させる (Disease Modifying)B 薬の比較試験を行ったとする 時期 1 で比較した場合は,A 薬の方が, 時期 2 で比較した場合は B 薬の方が症状の悪化程度は低く, 評価時点によって結果が異なることを示している 13

18 時期 1 時期 2 病態の進行 (Disease Model) Symptomatic Effect(A 薬 ) 悪化 Disease Modifying(B 薬 ) 薬剤投与 時間 図 2-2 疾患モデル 時期 1 と時期 2 で薬剤の評価が異なる Symptomatic Effect: 症状は改善されるが, 疾患の進行速度は変わらない Disease Modifying: 疾患の進行速度を変化させる 疾患モデルには, 自然の疾患の進行を示すモデルだけでなくバイオマーカーと代替エンドポイント ( または真のエンドポイント ) との関係を表すモデルやプラセボ効果モデルも含まれる 疾患の進行はバイオマーカーまたは臨床エンドポイントを指標に評価されるため, 疾患モデルで取り扱われるデータは測定値やスコアなど様々である 概念的には無治療での病態進行とプラセボ効果の影響は分離した形の方が理解しやすいが, 現実的には, 無治療での臨床データを得ることは倫理的な面において難しく, 特殊なケースを除き, モデル構築はプラセボデータの利用となる 従って, 疾患モデルはプラセボ効果の影響を含めたモデルとなることがほとんどである また, プラセボ群は, 対象疾患により純粋にプラセボ剤だけの投与ではなく, 標準的な治療を基礎治療として受けていることもあり, 複数の試験データを統合して疾患モデルを構築する場合には注意が必要となる モデルは生体システムを反映した機構的なモデルというより経験的なモデルとなることが多い モデルには, 疾患の経時的変化とプラセボ効果以外に, 季節などの影響による周期的な変動が含められることがある FDA は, 肥満, パーキンソン病と非小細胞肺癌の病態モデルを構築済みであり, アルツハイマー病,HIV,2 型糖尿病などの領域でもモデルの構築を進めている 薬剤モデル薬剤モデルは, 投与量や生体内薬物濃度と, 薬理効果 ( バイオマーカーなど ) 又は臨床エンドポイント ( 有効性, 安全性に関わるエンドポイント ) との関連性を記述するモデルである ここでは, 薬物動態学と薬力学が基礎理論となる 薬物の用法 用量と薬物濃度推移の関係を取り扱うのが薬物動態学, 薬物濃度と薬理作用 ( 有効性, 安全性などすべての反応を含む ) の関係を取 14

19 り扱うのが薬力学である 以下に薬剤投与後, 血漿中薬物濃度を介して薬理作用が発現するまでの過程についての代表的な概念図の一つを図 2-3 に示す Kinetics Dynamics ( 代替エンドポイント ) ( 真のエンドポイント ) 投与 C p C e 効果 臨床転帰 薬物動態学リンク薬力学 C p : 血漿中薬物濃度,C e : 標的部位薬物濃度 図 2-3 薬理作用が発現するまでの過程の概念図 生体内での薬物濃度の時間変化を薬物動態 (Pharmacokinetics; PK) と呼び, 薬物濃度と薬理効果との関連性を薬力学 (Pharmacodynamics; PD) と呼ぶ そして, 薬物動態を薬力学に結合させ, 短期での薬理効果の時間推移を記述するモデルが PK-PD モデルである この PK-PD モデルにより, 投与量から薬理作用の経時的変化が予測可能となる 一方, 薬理効果の時間推移を考慮せず, 投与量又は PK パラメータ (C max,auc,c min,c ave など ) と, 薬理効果との関係を記述したモデルが Exposure-Response(E-R) モデルである 29 全身曝露により薬理効果が発揮される場合, 薬剤の曝露量は薬物動態に影響を及ぼす様々な要因により個体間変動, 個体内変動を生じるので, 投与量より PK パラメータを用いるほうが理論的には予測性がよいとされている PK モデルは, 通常, 生体をいくつかの抽象化されたコンパートメントに分け, 各コンパートメントでの物質収支式に基づいて構築されたコンパートメントモデル ( マルチコンパートメントや非線形消失プロセスなどがある場合も含む ) が用いられる PK-PD モデル ( あるいは E-R モデル ) では, 曝露と反応の関係を表す ( シグモイド )E max モデル ( 及び Linear,log-linear などの派生モデル ), ロジスティック回帰モデルなども用いられ, 骨髄抑制モデルはその一事例である 薬物濃度の変動と薬理効果の発現に時間的ズレ (hysteresis) が存在する場合には, 効果コンパートメントを仮定したモデルや, 間接反応モデルなどのように生体内反応を反映した機構的なモデルを用いることもある 従来薬剤モデルの構築においては, 得られたデータに基づき当該データを表現可能で, より簡略なモデルの適用が望ましいとされてきた しかしながら, 臨床試験シミュレーションを行う場合の薬剤モデルは, その外挿可能性をも考慮し, 薬剤の疾患への作用機序をより重視すべきである 30 対照薬の PK-PD 或いは E-R モデルも薬剤モデルに含まれる 薬理効果だけでなく安全性バイオマーカーや有害事象の発現をモデル化することもある ここで, 曝露量の指標となる薬物動態パラメータ ( 例えば,C max,auc) が投与量に比例する場合に用量比例性 ( 線形性 ) があるという 薬物動態における 線形 と後述する統計モデルにおける 線形 は異なる定義であることに注意が必要である 15

20 2.2.3 試験モデル試験プロトコルに依存したデザイン情報を定義する要因 (Trial-based input factor), 逸脱 服薬遵守の状況を示す試験実施モデルは臨床試験結果に影響を及ぼす要因として考慮する必要があり, これらを総じて試験モデルと呼称する 仮想患者を発生させる場合の被験者背景に関する共変量の分布も試験モデルに含める このとき, 背景因子間の相関 ( 背景因子が正規分布の場合は分散共分散行列 ) を考慮しないと仮想被験者が非現実的な被験者背景を持つことになるので注意が必要である 試験デザインに基づく要因臨床試験シミュレーションは, 複数のシナリオ ( 試験デザイン ) のパフォーマンスを定量的に評価するための手段である 試験デザインに基づく要因が結果に与える影響を検討する, いわゆる What if シミュレーションは, 適切な試験デザイン立案に極めて重要となる 試験デザインに基づく要因として, 並行群間試験やクロスオーバー試験などの直接的なデザインの情報, 全被験者数, 処置の数, 各群に割り付けられる被験者の比, 観察時点などがあげられる 試験実施モデル試験実施モデルは, プロトコル逸脱や脱落などによる試験結果への影響を記述するモデルとして定義され, 服薬遵守モデルや脱落モデルなどが含まれる 31,32 プロトコル逸脱はその発生が, 前のイベントや時間に依存する時間依存型およびその発生が前のイベントの発生に依存しない時間非依存型の 2 種類に分けて考えることができる 服薬遵守モデルは服薬率などの低下を考慮するためのモデルである 服薬率低下の表現には確率モデルであるマルコフモデル ( 現在の状態が過去のある時点までの状態に依存する確率構造をとるモデル ) が適用されることがある 遵守する症例群と遵守しない症例群の存在を考慮する混合の分布を考えることが適切な場合もある 実際の服薬遵守パターンからリサンプリングしてシミュレーションすることも有用である 脱落モデルは試験実施中の患者脱落による症例数減少を考慮するためのモデルである 特別な理由のないランダムな脱落は, 単純に全体の症例数が減り検出力に影響を与える この場合, モデルは時間の関数で表される 疾患や試験条件などによる非ランダムな脱落では, 例えば, 病態が改善されなければ脱落率が増える, といった状況が想定され, 試験結果に影響を与える因子となりうる 2.3 統計手法の概説 MBDD で用いられる統計モデル本節では, 前節で示した各種モデルを, 統計モデルとして整理する 統計モデルの構成は, 観 16

21 察可能な説明変数及び応答変数, 説明変数と応答変数の構造的関係を示すパラメータ及び誤差からなる その概念図を図 2-4 に示す 統計モデルは, モデル内のパラメータの関係や, 応答変数の種類により区分される 説明変数 1 説明変数 3 説明変数 5 b1 b3 b5 ε 応答変数 b2 b4 b6 説明変数 2 説明変数 4 説明変数 6 観察可能な項目パラメータ誤差 図 2-4 統計モデルの概念図 モデル内のパラメータの配置による分類 線形モデル (Linear model) 本節で示す線形モデルの 線形 は, 前節で示された薬物動態学的な 線形 ( 投与量に対する用量比例性 ) とは異なる 線形モデルは, パラメータと説明変数 ( 例えば血漿中薬物濃度 (x)) からなるモデル式が適切な変換を行うことで, 線形結合, すなわち和の形で示されるモデルであ る 前節の E-R モデルの 1 例として, 血漿中薬物濃度 (x) と反応 (y) の関係を y = a x + a x (a 1,a 2 はパラメータ ) で表したモデルは線形モデルであるが, 薬物濃度 - 反応関係をグラフに示した場合, モデルは曲線で表される 非線形モデル (Nonlinear model) 統計モデルのうち, 適切な変換を行ってもパラメータが線形結合で表されないモデルを非線形モデルという 33 MBDD で用いられる各種モデルは, モデルの理論的背景から非線形モデルとして表されるものが多い 薬剤モデルである PK モデルのコンパートメントモデルや,E-R モデルの E max モデルが非線形モデルに当たる また, 各種疾患モデルなども非線形モデルで表されることが多い 17

22 2.3.3 モデル内のパラメータの役割による分類 固定効果モデル固定効果モデルは, 統計モデルに含まれる全てのパラメータが, 個体に寄らず一定であることを前提としている 例えば,E-R モデルとして単回帰モデルを想定した場合, 切片や傾きのパラメータが個体に寄らず共通であると想定するモデルとして表される 換言すると, 固定効果は, パラメータの値に関連し, 応答変数の推定値に直接影響を及ぼす 変量効果モデル変量効果モデルは, 統計モデルに含まれる全てのパラメータが, 個体ごとに異なり, 個体ごとの違いは確率分布に従うことを想定している E-R モデルとして単回帰モデルを想定した場合, 切片や傾きのパラメータが個体ごとに異なるが, これは母集団全体の傾きや切片に, ある確率分布に従う個体の効果を示す確率変数が付与されていることを想定するモデルとして表される 換言すると, 変量効果は, 一般的にパラメータの値に関連がなく, 分散だけに関連し, 応答変数の分散のみに影響を及ぼす 混合効果モデル混合効果モデルは, 統計モデルに含まれるパラメータの一部が固定効果, 残りが変量効果であることを想定している 例えば,E-R モデルとして単回帰モデルを想定した場合, 切片は個体ごとに異なり, 母集団としての切片にある確率分布に従う個体の効果を示す確率変数が付与されるが, 傾きは個体にかかわらず一定であることを想定するモデルとして表される 線形モデルに変量効果が含まれるモデルを線形混合効果モデル, 非線形モデルに変量効果が含まれるモデルを非線形混合効果モデルという どのパラメータに変量効果を設定すべきかについては, パラメータに対する個体間変動の大きさと元となるデータが持つ情報量を勘案して決定される 変量効果は正規分布 ( あるいは対数正規分布 ) に従うと仮定することが多いが, 他の確率分布に従うと仮定する場合もある 応答変数の種類による分類 応答変数が計量値の場合応答変数が計量値の場合, 誤差は正規分布, 対数正規分布などに従い, 様々なモデルが用いられる 例えば,E-R モデルでは, E max モデルが例としてあげられる 34 E max モデルは式 (1) で表されるが, パラメータである EC 50 及び E max は, 式を変換しても線形結合として表せない非線形モデルである 18

23 E E = EC max 50 [ D] [ D] + + ε E: 反応量 ( 応答変数 ),E max : 最大反応 ( パラメータ ),EC 50 :50% 反応濃度 ( パラメータ ), [D]: 薬物濃度 ( 説明変数 ),ε: 誤差 (1) 計量値を応答変数としたモデルの事例として,3.2.1 章に Zosuguidar の PD モデルが示されている 応答変数が 2 値の場合応答変数が 2 値応答の場合, ロジスティック モデルが汎用的である 2 値応答と説明変数 X のモデルにおいて, 値 x をとる確率を p(x) とするとロジスティック モデルは確率 p(x) のロジットに対して線形であり, 式 (2) で示される 35,36 2 値応答の場合, 応答変数は二項分布やポアソン分布に従う ( x) p( x) p ( p( x) ) log logit = = a1 a2 x 1 + (2) 2 値を応答変数としたモデルの事例として,3.2.2 章にスマトリプタンの PK-PD モデルが示されている 応答変数が順序カテゴリの場合応答変数が順序カテゴリの場合, 順序性の情報をロジットに直接組み入れることができる 累積確率 (cumulative probability) とは, 応答変数 Y がカテゴリ j 以下になる確率であり, 第 j 番目 の累積確率は式 (3) で示される 35,36 ( Y j) = p + L + p, j = 1, J p j, 1 L J-1 までのロジットは次式で表され累積ロジットと言われる logit ( P( Y j) ) p = log 1 p = log p j ( Y j) p( Y j) L+ p j + L+ p J, j = 1, L, J 1 (3) ロジスティック モデルと同様にこの累積ロジットを応答変数として, 線形モデルを構築することができる 順序カテゴリの場合, 応答変数は多項分布に従う 順序カテゴリを応答変数としたモデルの事例として,3.2.2 章にスマトリプタンの Pain Severity の PD モデルが示されている 共変量 疾患モデル, 薬剤モデル, 試験モデルを構築する際には, 応答変数に影響を与える共変量 19

24 (Covariate) を考慮する必要がある 37 共変量には, 性別のように時間に影響されない時間非依存共変量と, 併用薬や臨床検査値のように, 時間とともに応答変数への影響が変化する時間依存共変量がある 38 共変量を無視した場合は, 共変量の応答変数への影響は誤差に含まれるが, 適切な共変量を選択してモデルへ組み込むことで, 共変量の応答変数への影響を誤差と分離することが可能となり, 固定効果の推定精度が向上することが期待できる これらの共変量は臨床試験モデルのシミュレーションにおいて重要な情報となる パラメータの推定方法線形モデルでは, 尤度方程式を解析的に解くことによりパラメータの推定を行うことが可能であるが, 非線形モデルでは, 尤度方程式が複雑になるため解析的に解くことが出来ず, 反復計算が必要となる 非線形モデルでは, 反復計算を行うための初期値の設定が必要であり, 適切な初期値を設定しないと, 反復計算が収束しない場合や, 適切なパラメータの推定値が得られない場合がある 39 複雑なモデルである非線形混合効果モデルでは, 最尤法を用いてパラメータの推定が行われる 39 最尤法では, パラメータに対する尤度関数を最大化するものを最尤推定量とする 非線形混合効果モデルでは, 固定効果を推定するため変量効果を多重積分した周辺尤度を用いるが, 非線形混合効果モデルでは多重積分を直接計算できないため, いくつかの数値的な方法により多重積分を実施している 39,40,41 以下に, 主な解析ソフトウェアで利用可能な非線形混合効果モデルのパラメータ推定方法を表 2-1 に示す 37,42 一般に, 精度と収束までの所要時間は,Monte Carlo Integration>Adaptive Gaussian Quadrature>Laplacian method>first-order conditional estimation> First-order approximation の順であると言われている 37 表 2-1 各種解析ソフトウェアにおける非線形混合効果モデルのパラメータ推定方法 ソフトウェア名称 NONMEM SAS (NLMIXED) S-PLUS (nlme) 非線形混合効果モデルのパラメータ推定方法 First-order approximation,first-order conditional estimation method, Laplacian method など First-order approximation,laplacian method,monte Carlo Integration, Adaptive Gaussian Quadrature First-order conditional estimation method,laplacian method,adaptive Gaussian Quadrature 2.4 モデルの評価 当てはまりのよさモデル構築に際しては, データに対する 当てはまりのよさ (Goodness of Fit) を評価することが必要である 当てはまりのよさを明確に定義することは難しいが, 通常は視覚的な方法や定 20

25 量的な尺度によって評価することが多い ここでは,MBDD に広く利用できる汎用的な方法を取り上げる 視覚的な方法視覚的な方法としては, 観測値, モデルによる予測値, 残差などを用いて様々な組み合わせの散布図を作成し, モデルからのズレや系統的な誤差を評価する方法がある 43 大きなズレや系統的なトレンドが見られる場合には, モデルでは説明できていない部分があることが示唆される そのような場合には, モデルの形や説明変数の選択を再検討すべきである 作成する散布図には, 以下のようなものがある 予測値 vs 観測値 予測値 vs 残差 時間 vs 残差 共変量 vs 残差ここでの残差は, 観測値と予測値との差である この他, 残差の代わりにバラツキの大きさで残差を調整した重み付き残差, 残差の平方値や絶対値などを用いる場合もある 時間に対するプロットは, モデルに時間的な推移が含まれる場合に重要である 残差と共変量のプロットは, 特定の共変量を変化させた場合の残差の系統的なトレンドを見るためのものである モデルに含まれている共変量はもちろんのこと, モデルに含まれていない共変量について調べることで系統的なトレンドが見えてくることがある その他, シミュレーションを交えた視覚的な評価方法も存在する そのひとつである Visual Predictive Check では, まずデータからモデルを作成し, 作成したモデルからシミュレーションにより疑似データを生成する 疑似データは必要な測定点について複数作成し ( 例えば 1,000 個 ), 中央値やパーセント点により要約する 要約した値を観測値とあわせてプロットして見比べることにより, 作成されたモデルが元データの変動を説明できているかを検討することができる 定量的な尺度当てはまりのよさを評価するための定量的な尺度としては, 残差に関連する指標と情報量基準とよばれる指標が代表的である バイアスの小さいモデルでは, 測定値とモデルから得られる予測値のズレが小さくなると考えるのが自然であろう そこで定義される指標が, 残差平方和 (SSE;Sum of Square Error) である N 2 SSE = ( y i yˆ i ) (4) i= 1 ここで N はデータの個数, y i, ŷi および yi ŷi はそれぞれ i 番目の観測値, 予測値および残差である すなわち, 残差平方和は N 個の残差の 2 乗を足し合わせたものであり, この値が小さい程, モデルの当てはまりがよいと考えることができる ところが, 残差平方和はモデルに多くの説明変数を含めるほど小さくなるという性質がある 21

26 つまり, 予測にほとんど寄与しない説明変数であっても, とにかくモデルに含めておけば残差平方和は小さくなる 一方, 説明変数が多ければ多いほどその解釈や応用は困難になることが多い そこで, 次の平均 2 乗誤差 (MSE;Mean Square Error) によって当てはまりのよさを評価する場合もある MSE = SSE (5) N p ここで p はモデルに含まれるパラメータの数である 説明変数を多く含むほど分母が小さくなり MSE は大きくなる 一方, 代表的な情報量基準としては, 赤池情報量基準 (AIC;Akaike s Information Criteria) があり, モデル選択の指標として広く用いられている L を尤度関数について最大化した値 ( 最大尤度 ) とするとき, AIC = 2 (ln L p) (6) となる モデルがデータに当てはまっているほど, 最大対数尤度 ln L が大きくなるので AIC は小さい値となる 直観的には, パラメータ数 p による引き算は, 説明変数の多さに対するペナルティと理解することができる AIC には様々な拡張版が存在するが, 基本的な考え方は同様である 通常これらの尺度は, 当てはまりがよい程その値が小さくなるように定義されている ただし, その値自体を解釈することは意味をなさず, 例えば 10,000 だったら大きいとか 0.01 だったら小さいという類の絶対的な値に対する解釈は適切でない これらの指標の主眼は, モデル間の相対的な比較にある モデルの選択 モデル選択の考え方モデルの選択においては, 複雑なモデルから得られるバイアスの少なさと, シンプルなモデルから得られる予測の一般化可能性とのバランスが重要である 一般にモデルに多くの説明変数を含める程, モデルによる予測値と観測値のズレは小さくなっていく しかしながら, 説明変数が多くなりモデルが複雑になるにつれてモデル構築に用いたデータに当てはまりすぎてしまい, それ以外のデータへの一般化が難しくなるという問題が生じる また, 説明変数が多いほど, モデルの解釈が困難になる そもそも, 誤差として説明されるべき部分まで説明変数で説明してしまうといった誤りもあり得る 一方, 説明変数が少ないシンプルなモデルは, より一般的な状況での予測に用いやすいが, 重要な説明変数を組み込めていないと予測にバイアスが残ることになる なお,MBDD では意思決定のための材料をタイムリーに生み出すことが重要である モデル選択に過度な時間を費やすよりは, タイムリーに M&S を進め, ナレッジの蓄積を繰り返しながらモデルを成熟していく立場が適していると考えられる 誤ったモデル選択によって誤った判断を導いてしまうことは大きな損失につながりうるが, 一方でモデルの当てはまりを追求することがスピード面での足かせとならないような配慮も必要である 1 つのモデルへの絞り込みが難しい場合には, 複数のモデルで評価を行う感度分析による検討も考慮すべきである 22

27 モデル選択のアプローチモデル選択には, 情報量基準を用いるアプローチ, 検定によるアプローチなどがあるが, これらの理論的な根幹を成しているのは前節で述べた当てはまりのよさの指標である 情報量基準を用いるアプローチでは,AIC などの情報量基準を計算してより当てはまりのよいモデル (AIC であれば値の小さなモデル ) を選択する このようなアプローチは以下に述べる検定によるアプローチに比べて汎用性が高い M&S のように比較的広い範囲でモデルを検討するような場合には, 情報量基準を用いるアプローチのほうが適用しやすいだろう 検定によるアプローチは, ネストしているモデル同士の比較にのみ用いることができる 2 つのモデルはネストしているとは, 一方のモデルが他方のモデルの特別な場合として表せる関係のことである 以下, 必要な説明変数をすべて含むモデルをフルモデル F, その特定の場合として表わされるモデルを縮小モデル R とよぶ 2 つのモデルの当てはまりに差がないという帰無仮説の下で次の統計量は F 分布に従うことが知られている SSE R SSE F p F p R SSE F N p F ~ F (pf pr, N pf ) これにより, 当てはまりについての検定を構成することができる 検定が棄却されれば, フルモデルの方が有意に当てはまりがよいと判断する 検定が棄却されなければ, よりシンプルな縮小モデルでも説明可能と判断する ただし, 非線形モデルにおいては, 上記の F 分布は近似的なものになる 検定による他の方法として, 尤度比検定がある 2 つのモデルの当てはまりに差がないという帰無仮説の下で, 次の統計量が x 2 分布に従うことから, 検定を構成することができる 2 2 (ln LR ln L F ) ~ ( p F pr ) χ (8) 検定によるアプローチの短所は, 原則としてネストしたモデル間の比較にしか使うことができないことである モデルの枠組みを固定した状況下での説明変数の選択のような問題には有効だが, そもそもモデルの型から選択の対象としたい場合には適用が難しい また, 検定を構成する場合の有意水準の設定や多重性の考慮も悩ましい問題である いずれのアプローチを選択した場合でも, 統計学的な当てはまりの指標のみを用いてモデルを選択すると, 解釈しづらいモデルや, これまでの知見と相容れないモデルになることがある このようなモデル選択の限界を理解し, 総合的な観点からモデルを選択する必要がある (7) モデルのバリデーションバリデーションは共通の理解が得られにくい考え方であるが, ここではバリデーションを モデル作成に用いられたデータ 以外のデータに対する予測可能性, 外挿可能性の評価と定義する 先に述べた当てはまりのよさの指標等を活用し, このモデルを予測に使ってもよいのか という問いに対して答えようとするのがバリデーションである モデルが真実か, ということの検証 23

28 ではないことに留意が必要である 以下, バリデーションを外的バリデーションと内的バリデーションに分けて説明する 外的なバリデーション外的なバリデーションは, モデル作成用データを用いてモデルを作成し, 別の評価用データに対してこのモデルを適用し, 当てはまりを評価する方法である わかりやすく, 後述の内的なバリデーションより説得力があるが, モデル作成用データとは別にモデル評価用データを得ることが現実的でない場合が多い 内的なバリデーション内的なバリデーションは,1 組のデータで行うバリデーションであり, 別途評価用の外部データを必要としない データ分割, クロス バリデーションおよびブートストラップ法によるアプローチがある データ分割データ分割は, 手元のデータをランダムに 2 つに分割し, 一方のデータでモデルを作成し, 他方のデータでその評価を行うアプローチである 汎用的なアプローチであるが, データを分割することによるパラメータ推定精度の低下を考慮する必要がないほど十分なデータ量がある場合に最適応となる ( 図 2-5) ( : モデル作成用データ, : モデル評価用データ ) 図 2-5 データ分割 クロス バリデーションクロス バリデーションは,1 組のデータから繰り返し抽出を行い疑似的なデータセットを反復的に作成する, リサンプリングに分類される方法である クロス バリデーションでは, 前述のデータ分割を反復的に繰り返し行う まず,N 個のデータを N-1 個からなるモデル作成用データと残りの 1 個からなるモデル評価用データに分割する 次に, 作成用のデータからモデルのパラメータを推定し, これを評価用のデータに当てはめて誤差を評価する これをすべてのデータが 1 回ずつ評価用データとなるよう N 回繰り返す 最後に N 回分の誤差の平均を求めることにより, モデルの誤差を推定する ( 図 2-6) 24

29 : ( : モデル作成用データ, : モデル評価用データ ) 図 2-6 クロス バリデーションにおけるデータ分割 ブートストラップ法ブートストラップ法は, リサンプリングの代表的な方法である ブートストラップ法では,N 個のデータからの無作為復元抽出により,M 個のデータからなる疑似データセットを繰り返し作成する このデータセットはブートストラップ標本とよばれ, もともとの母集団の分布 F を近似する経験分布関数 Fˆ に従うことが知られている 近似の精度は, 繰り返し回数 B が増えるにつれて高くなる 得られたブートストラップ標本から予測誤差を推定することができる ( 図 2-7) (N=10 の元データ ) ( 大きさ M=10, 繰り返し回数 B=5 のブートストラップ標本 ) 標本 1: 標本 2: 標本 3: 標本 4: 標本 5: 図 2-7 ブートストラップ標本 2.5 シミュレーションシミュレーションは, これまでに得られた知見や仮定を統合して複雑な事象のふるまいを定量的に探索するための手段として, 医薬品開発において広く応用されている 特に MBDD においては,M&S が道具立ての柱となっており, シミュレーションを理解して使いこなすことが不可欠である 一般に, シミュレーションは, 確定的シミュレーションと確率的シミュレーションに分けて考えることができる 確定的シミュレーションは, 確率的な変動を含まないモデルによるシミュレ 25

30 り返し(1 組のオブザベーション数要約する繰り返し(シミュレーション回数) シミュレーション結果から 結論を引き出す繰ーションである 乱数を使わないため, 条件を与えると結果が一意に定まる 一方の確率的シミュレーションは, 確率的な変動を含んだモデルに基づく, 乱数を使ったシミュレーション, いわゆるモンテカルロ シミュレーションである MBDD で用いられるシミュレーションは主に確率的シミュレーションであるため, 以後は確率的シミュレーションについて述べる 確率的シミュレーションの手順典型的な確率的シミュレーションの手順を図 2-8 に示す この手順では, モデルに含まれるすべての確率分布や説明変数が特定できる場合を想定している 一般的な確率的シミュレーションは1: モデルと確率分布の特定 ( モデリング ),2: 確率分布から乱数発生,3: 乱数を用いた結果変数の生成,4:23を繰り返すことで 1 組のデータを生成,5: シミュレーション結果の要約の 5 つのステップになる 検討に用いる数学的モデルを特定する 1モデルと確率分布を特定する モデルに含まれる確率分布およびそのパラメータについても特定する ( モデリング ) 統計解析やシミュレーション用のソフトウェアの 2 確率分布から機能を利用して乱数を生成する乱数を生成する ソフトウェアが対応していない複雑な確率分布については 一様乱数等から生成する モデル中の説明変数と誤差項をすべて 3 乱数をモデルに与えて結果変数の値を得る代入し結果変数 モデル中では確率変数でない固定効果項にの値を得るついても 必要に応じて乱数から生成する) 23を繰り返し1 組のデータセットを得る 4 1 組のデータセットについて結果を 5 複数回のシミュレーション結果を要約し 結論を得る 要約統計量や検定統計量 視覚化など解析の目的に応じた方法で 3 で得たデータセットを要約する 求める精度に応じて 234 を繰り返し 複数回のシミュレーション結果を得る 要約統計量 検定統計量 視覚化などシミュレーションの目的に応じた方法で複数回のシミュレーション結果を要約する 図 2-8 典型的な確率的シミュレーションの手順 26

31 2.5.2 疑似データの生成確率的シミュレーションの基本的な構成要素は, 擬似乱数 ( 以下, 乱数 ) である モデルに含まれる確率変数を擬似的に生成することが乱数の役割である 乱数を発生させることは, 確率分布からのサンプリングと呼ばれる しばしば用いられる確率分布としては, 以下のようなものがある 連続データ : 一様分布, 正規分布, 対数正規分布,t 分布,x 2 分布,F 分布離散データ : 2 項分布, 多項分布, 超幾何分布頻度データ : ポアソン分布生存時間データ : 指数分布, ワイブル分布など 標準的な確率分布からのサンプリングは, 汎用の統計解析ソフトウェアで行うことができる 多くの場合, 代表的な確率分布については, 乱数を生成するための関数が組み込まれている 一方, こうした組み込み関数が用意されていない確率分布の場合は, 解析者がサンプリングのための計算をする必要がある 一様分布などサンプリングが容易な確率分布から複雑な確率分布に従う乱数を導く方法として, 逆関数法や棄却サンプリング法などの手法がある 詳細については, 四辻の成書 44 などが参考になる 逆関数法は, 目的の確率分布の分布関数 F(x) の逆関数 F 1 (y) に一様乱数 U を代入することによって乱数を生成する ( 図 2-9) 逆関数が簡単に計算できないことも多いが, 原理的にはすべての分布に適用することができる y 1 U y = F(x) 0 X x 図 2-9 逆関数法 棄却サンプリング法では, 目的の分布の確率密度関数 f (x) の他に, サンプリングの容易な確率分布の確率密度関数 g(x) を選び, 定義域全域で cg(x) が f (x) を覆うような c を設定する すなわち, f(x) cg(x), c > 1 (9) である g(x) から X のサンプリングを行い, f (x) cg(x) を求める この値を別に発生させた一様乱数 U と比較し, f (x) cg(x) U となるときに限り X を採用, それ以外の場合は棄却するこ とで, f (x) に従う乱数を生成することができる 27

32 なお, 確率分布は特定できないが, 確率分布から得られたデータが入手可能である場合には, データからのリサンプリングによって疑似データを生成することができる 前述のブートストラップ標本は, もともとの母集団の分布 Fを近似する経験分布関数 Fˆ に従うことが知られている ここまで,1 次元の確率分布からのサンプリングに焦点をあてて取り上げてきたが, 実際には多次元の確率分布からサンプリングが必要な状況に直面することもある 本書で詳しく説明することはしないが, 多次元の確率分布からのサンプリングには幾分複雑なデータ加工が必要になることが多い ここでは, 多次元の確率分布からのサンプリングの例として, 比較的簡単に計算できる 2 次元正規分布からのサンプリング方法を紹介しておく 独立な標準正規分布に従う乱数 X 1 および X 2 を用いると Y + 1 = μ1 σ1x1 2 Y2 = μ 2 + σ 2 (ρx1 + 1 ρ X 2 ) (10) (11) によって, 平均 μ および 1 μ 2, 分散することができる 2 σ1 および 2 2 σ, 相関係数 ρ の 2 次元正規分布に従う乱数を生成 反復回数確率的シミュレーション結果の精度は, シミュレーションの反復回数に依存する 必要とするシミュレーションの精度を得るための反復回数は, モンテカルロ誤差から見積もることもできる 45 シミュレーションを計画する際は, データの性質やシミュレーションの目的によって, 適切な反復回数を検討しなければならないことが多い 反復回数に応じて計算時間は増加するが, コンピュータの計算能力は以前に比べてかなり向上しており, 反復回数の設定にそれほど神経質になる必要もないかもしれない 必要があれば, 興味のあるパラメータの推定精度ベースでシミュレーションの反復回数を見積もることも可能である 2.6 MBDD 運用手順 ナレッジの蓄積先にも述べたが,MBDD を運用する上での最初のステップは, 臨床開発に関わるあらゆる情報をモデル化し, ナレッジとして蓄積することである ナレッジとして蓄積する情報の例としては, PK-PD プロファイル, 有効性 安全性プロファイル, 非臨床 (PK 薬理 ) データ, 類薬の PK-PD, 有効性 安全性プロファイル及び病態進行速度やプラセボ効果などが挙げられる また, 対象疾患の患者背景 ( 人口統計学などの疫学データ ), 過去の治験での脱落速度などもナレッジとして蓄積可能である このようにナレッジとして扱う情報は多岐に渡るため, 情報の内容を熟知している各担当部門においてモデル化を行うことが望ましいが, モデルの作成には専門の知識が要求されるため, 各部署の持つ情報をモデルに変換する作業を支援する部署や担当者が必要になることも考えられる また, 過剰な労力の浪費を避けるため, 必要な情報の種類や各情報をモデル化する上での要求精度は事前に定義しておく必要がある そのようにしてモデルとして蓄積された 28

33 ナレッジを組み合わせて, 臨床試験シミュレーションに用いることで, 新たなナレッジを生み出すことが可能となる 8 このナレッジ蓄積のためのサイクルは様々な業界における企業のナレッジマネジメントで用いられているもの 46 と共通であり,MBDD に応用した場合の概念図を図 2-10 に示す このサイクルは, それまでに実施された非臨床試験や臨床試験の結果や類薬での臨床成績, 優れた開発担当者が持つ知見 経験などのナレッジ ( 暗黙知 ) を 1 つ 1 つモデル ( 形式知 ) に変換, あるいは既存のモデルに反映することから始まる< 表出化 > こうして得られた個々のモデルを繋ぎ合わせ, 臨床試験全体を表現するための結合モデルという新たな形式知を作り出す < 連結化 > この結合モデルを用いた様々な条件 シナリオでの臨床試験シミュレーション結果から, 臨床試験を成功に導く, あるいは臨床試験を効率的に実施するための条件 ( 暗黙知 ) を獲得する< 内面化 > シミュレーション結果に基づきデザインされた実際の臨床試験の結果は, モデル構築に関わった全てのメンバーにフィードバックされ< 共同化 >, モデル更新のための新たな暗黙知となる このようにして, 継続的にモデルは改定され, より正確にシミュレーションを行えるようになっていく 共同化 (Socialization) 暗黙知から別の暗黙知へ Profiling 表出化 (Externalization) 暗黙知から形式知へ 臨床試験結果知見 経験 モデル (Trial, Drug, Disease) Assembling Clinical Trial Execution シミュレーション結果 結合 ( 臨床試験 ) モデル Simulation 形式知から暗黙知へ形式知から別の形式知へ 内面化 (Internalization) 連結化 (Combination) 暗黙知 : 言葉などで表現することが難しい経験や勘に基づく知識形式知 : 文章 図表 数式などで説明 表現可能な知識 図 2-10 ナレッジの蓄積サイクル 疾患モデルの構築疾患モデルは, 当該疾患の進行に関する経時変化を主な対象とする 25 疾患の種類にも依るが, 一般的にその進行速度の個体間でのばらつきは大きい これは病態進展に影響を与える因子は多 29

34 数存在するためである さまざまな背景情報の影響を考慮し, 精度の高い病態進行モデルを作成するためには, その疾患に精通していることに加えて, 大量のデータが必要となる ここで必要となる大量のデータは, 過去に実施した複数のプロジェクト ( 開発中止になったものも含む ) 複数の臨床試験におけるプラセボ投与群のデータや当該患者群の背景データを選択 統合することで得られる 自社のデータのみでは疾患進行モデルを構築する上で十分な情報量が得られない場合には, 同じような状況にある他社と契約し, 当該データの相互利用を行うなどの取り組みも欧米では行われ始めている 47 また, そうしたモデル情報を販売するビジネスも既に始まっている 集められたデータと臨床担当者や疫学情報担当者からの情報に基づき, 混合効果モデルなどを用いて, その病態の進行プロファイルをモデル化する 疾患モデルに関する情報の入手は, 当該疾患における開発プロジェクトが立ち上がる前に行っておくことが望ましい 薬剤モデルの構築薬剤モデルでは, 先行している臨床試験の結果に基づき, その薬物の投与量と有効性 ( または安全性 ) エンドポイントの関係などの特徴をモデル化する その際, 必要に応じて薬物動態プロファイルも考慮する 詳細は, 上述のモデルの概説を参照されたい 主に健康成人を対象として実施される開発初期段階では有効性 ( または安全性 ) データが十分に得られないため, バイオマーカーの活用が有用となる バイオマーカーと有効性エンドポイントとの関連性について, 非臨床での E-R モデルや類薬の薬剤モデルを元に当該薬物のモデルを構築し, これらデータから予測されたパラメータを用いて初期のモデルとすることも可能であろう その場合, 臨床開発での情報が収集された時点で適時モデルを更新する 構築したモデルは, その使用用途に応じて必要なレベルのバリデーションを行っておく 薬剤モデルの構築は, 従来の PK-PD モデル (E-R モデルなど ) の構築方法が参考となる ただし, 公開情報が限られた対照薬に対して, これらのモデルを構築することには困難を伴う この場合, 未知の情報について複数のシナリオを想定するか, 開発早期に対照薬の投与群を含む比較的小規模な臨床試験を実施し, 情報収集することも有用であろう 臨床開発戦略と臨床試験シミュレーション MBDD の運用下では, 各臨床試験の企画段階において最新のモデル情報を適用した臨床試験シミュレーションを用いて試験デザインの立案, 評価, 選択を行う 従って, 当該開発品に設定された Target Product Profile の定義を基に, 各ステージにおいて開発を進める上で解決しなければならない課題 (Key Driver) に対して, 充分な情報を元にシミュレーションが行えるよう臨床開発戦略を策定する必要がある また, 各ステージにおけるシミュレーションの実施前に, 当該シミュレーション結果に対する意思決定の判断方針を検討しておくことも重要である シミュレーション計画を含む開発戦略やシミュレーション結果に対する意思決定の判断基準は開発計画を定義した文書中にあらかじめ記載し,MBDD に関わる全ての部署が参照できるようにしておくことが望ましい 48 30

35 2.6.5 試験モデルの構築試験モデルには, 臨床試験デザイン, 対象患者集団の人口統計学データ, 臨床検査値やバイオマーカーのベースラインの分布, 症例の脱落速度, 服薬遵守率などの情報が含まれる 詳細は, 上述のモデルの概説を参照されたい 人口統計学データ, 臨床検査値, バイオマーカーのベースラインについては, それら同士の相関について考慮する必要があり, 正規分布に従うとみなせる変数であればそれぞれの平均値と分散共分散行列の推定値を既存の臨床データや疫学データから情報を得ておく 分布形と分布を規定するパラメータからモンテカルロ法などにより, シミュレーションに使用する想定した分布から架空の抽出患者データを生成する 収集されたデータの分布が不定形などで, 特定の分布や共分散を仮定できない場合には, 既存の患者データからのリサンプリングによりシミュレーションのための架空の患者集団を作り出すことも可能である 臨床試験のデザインについては, 当該試験の主目的に関わる項目 ( 主要評価項目の種類, 投与レジメン, 観察期間, 観察頻度, 試験デザインの種類 [ 並行群間 / クロスオーバーなど ], 無作為化の有無, 症例数, 解析手法なども含む ) が網羅されている必要がある また, 試験の主目的に直接的には影響しない場合でも, 症例の脱落や有害事象などによる休薬が一定の割合で発生することが想定される場合など, 間接的に主目的の評価に影響しうる情報は考慮する必要がある 影響因子の特定シミュレーションによる試験デザイン案の検討対象としている臨床試験の結果, 特に主目的を決定あるいは影響しうる因子を特定する上で, 利用可能なモデルを整理しシミュレーションのための臨床試験モデルに必要なモデル ( 疾患モデル, 薬剤モデル, 試験モデル ) を選択し, モデル間の関係を定義し, 臨床試験モデルの全体像を設計する必要がある これをフレーミングと言い, そのための設計図が インフルエンスダイアグラム である インフルエンスダイアグラムの作成は, 当該試験の主要評価項目への直接的な影響因子又は影響因子に影響を及ぼす因子について想定されるものを可能な限り多く描写することから開始する それら影響因子及び影響因子に影響を及ぼす因子をカスケード状に組み上げることを繰り返して, 必要と考えられる全ての外的及び内的要因を描写し, 最終的に臨床試験全体を表現する 臨床試験モデルには, 適切に選択された影響因子を組み入れることが望ましく, 臨床試験結果に影響のない因子のモデルを作成し, 臨床試験モデルに組み入れることは結果的に労力と時間のロスとなる 一方で, 影響が不明な因子のモデルを全て外してしまうと, 予期していなかった重要な因子を見逃すリスクが生じうる シミュレーションに要するリソース及び時間も考慮し, 適切な情報量を含む臨床試験モデルを構築することを心がける 図 2-11 にインフルエンスダイアグラムとして Proof-of-Concept 試験の概念図を示す 31

36 患者集団 ( 選択 / 除外基準 ) バイオマーカーのベースライン シナリオ :E max {60, 80, 95} 観察時点 治験薬 / プラセボ経口投与レジメン 体重 CL PK モデル 1- コンパートメント E 0 PD モデル E max モデル 血中濃度 バイオマーカー濃度 ( 主要評価項目 ) 臨床効果 (Source: Clinical Trial Simulation: A Tool for Understanding Study Failures and Preventing 無効 Them Basic & Clinical Pharmacology & Toxicology TD 2005, モデル 96, ) AE / SAE ロジスティックモデル脱落 < 凡例 > 試験デザインに関する要素など, 治験依頼者が行為の選択を行う項目 確率分布で表現される, 直接コントロールできない不確実な要因 事象 観察 ( 可能な ) 項目 モデル及びモデルパラメータ モデル又はモデルパラメータのうち不確実なもの ( シナリオ ) 現状で, 不確定性の強い要素 図 2-11 Proof-of-Concept 試験におけるインフルエンスダイアグラムの例 不確定要素のためのシナリオ作成臨床試験モデルに含まれる全ての要素についてモデル情報が既知であることはむしろ稀であり, 多くの場合, 不確定要素 ( モデル式やパラメータが不明 ) が含まれる この不確定要素については, 生じうるいくつかのシナリオ ( パターン ) を作成することになる 例えば, 対照薬の薬理効果の強さを示すパラメータ値が未知の場合, 楽観的 (Optimistic), 現実的 (Realistic), 悲観 32

37 的 (Pessimistic) などの複数のパラメータ値候補をシナリオとして用意し, それぞれのシナリオについて臨床試験シミュレーションを行う 各シナリオから得られた結果から, 後述する感度分析や定量的意思決定方法により, 未知情報の試験結果に与える影響や未知情報の影響を考慮した試験デザインの最適化が可能である 臨床試験モデルのチューニング新たな臨床試験デザイン設計のためのシミュレーションを行う前に, 既にデータが得られている臨床試験と同じ条件を仮定した臨床試験シミュレーションを行い, 実データとシミュレーションにより得られたデータを比較することで, 系全体に対するモデルの整合性確認 ( 統合テスト ) を実施し, パラメータのチューニング ( 微調整 ) することも可能である 個々のモデルは適切なバリデーションが行われていたとしても, それらのモデルは実世界の一部を取り出して抽象化 捨象化したものである そのため, モデル化にあたり無視されたマイナーな要素が多々あることを考慮すれば, こうした微調整が必要になることも理解できよう チューニングに際しては, 見落としていた影響因子の拡充や, パラメータ間の相関 ( 分散共分散行列 ) などについても検討する 当然ながら, 必要に応じて追加モデル解析を行い, そのエビデンスに基づいて行うことが望ましい また, シミュレーション結果が臨床担当者やオピニオンリーダーの経験的に想定される結果と乖離がある場合, その乖離は重要なシグナルである シミュレーションの結果だけを鵜呑みにすることは避けるべきであり, そのズレの原因を突き詰めていくことで, 本来含まれるべき因子が落ちていた等の発見があるかもしれない 臨床担当者やオピニオンリーダーとシミュレーション結果を議論する上では, お互いの理解を助けるためのシミュレーション結果のビジュアル化も考慮する 49, 臨床試験シミュレーションの実行作成した臨床試験モデルを用いてシミュレーション ( 通常は確率的シミュレーション ) を行う シミュレーション結果の指標には, 対象とする臨床試験の成功率が用いられことが多かったが, 近年では正しい判断をもたらす結果が得られる確率 (Trial Performance Metrics) を指標とするシミュレーションも行われるようになってきている 1 全ての臨床試験において偶然性の影響を排除することは不可能である 例えば, 対照薬との比較試験において, 本来, 対照薬に対して有効性 安全性で優れている開発品においても, 臨床試験ではその優越性を示せないことがある ( 第 2 種の過誤 ) 逆に, 有効性 安全性の点で優れているとは言えない開発品が, 臨床試験で優越性を示すこともある ( 第 1 種の過誤 ) 前者では本来上市可能な 良い 薬物が上市できなくなるリスクが生じ, 後者では続く大規模な臨床試験で薬物のポテンシャルが明らかになることで多額の開発費用が無駄になるリスクが生じる これらのリスクを最小化し, 実施する臨床試験において正しい判断を行う確率を最大化することで新薬開発における投資効率を最大化するアプローチが近年開発された Trial Performance Metrics である ( 図 2-12) 33

38 Lower Reference Value (LRV) Target Value (TV) 次相に移行 判断保留 開発中止 PCT20 PCT90 PCT: P(Δ) のパーセント点 データからの判断 真実 望ましい判断 次相に移行 ( 成功 ) Go: PCT 20 >LRV かつ PCT 90 >TV 開発中止 ( 失敗 ) Stop: PCT 20 LRV または PCT 90 TV 合計 P(Go and Δ>TV) P(Stop and Δ>TV) Δ>TV 次相移行と判断すべきとこ 次相移行と判断すべきとこ P(Δ>TV) 次相に移行 ろ, データからも次相移行と ろ, データからは中止と Δ>TV の確率 正しく 判断する確率 誤って 判断する確率 P(Go and Δ TV) P(Stop and Δ TV) Δ TV 中止と判断すべきところ, 中止と判断すべきところ, P(Δ TV) 開発中止 データからは次相移行と データからも中止と 正しく Δ TV の確率 誤って 判断する確率 判断する確率 P(Go) P(Stop) 合計 1.0 次相に移行する確率開発中止の確率正しい判断の確率 =P(Go and Δ>TV) + P(Stop and Δ TV) 誤った判断の確率 =P(Go and Δ TV) + P(Stop and Δ>TV) = 1 - 正しい判断の確率 図 2-12 Trial Performance Metrics 感度分析モデル内に複数の不確定要素あるいは試験デザイン上の選択肢が存在し, 要素や選択肢それぞれに対して数多くのパターンを想定すると, 評価しなければならないシナリオの数は膨大な数になる 限られた時間とリソースで, それらの全てのシナリオについてシミュレーションを実施することは不可能であることも多い このことからシナリオが多数想定される場合には, 各不確定要素及び選択肢につき極端な 2,3 パターン ( 下限値, 中央値, 上限値など ) の組み合わせについて 34

39 シミュレーションを実施し, 要素や選択肢の試験結果への影響力を評価する (2) これを感度分析という 例えば, 表 2-2 のように 対照薬の効果 と 治験薬の吸収速度 が不確定要素であり, それぞれにつき 3 つのパターン, 計 9 つのシナリオが設定されたとする 表 2-2 感度分析による不確定要素の評価 新製剤 ( 治験薬 ) の吸収速度 対照薬の効果 旧製剤 x 0.5 旧製剤 x 1.0 旧製剤 x 1.5 Optimistic( 弱い ) Realistic Pessimistic( 強い ) インパクト : 小 インパクト : 大 ( 数値は当該シナリオにおける Trial Performance Metrics) このとき, 治験薬の吸収速度による影響は, 各シナリオにおける成功確率にほとんど影響して いないため, 吸収速度を旧製剤と同じと仮定してしまっても, 評価結果にはほとんど影響しない 表 2-3 感度分析の結果に基づく変更後のシナリオ評価 新製剤 ( 治験薬 ) の吸収速度 対照薬の効果 旧製剤 x 1.0 Optimistic( 弱い ) 0.89 Realistic 0.75 Pessimistic( 強い ) 0.27 各不確定要素及び選択肢の数が非常に多い場合には, 検討対象以外の要素を全て特定の代表値 ( 中央値など ) に固定して要素を個別に評価するという方法もある 但し, この場合には複数の因子及び選択肢の特定のパターンの組み合わせにおいてのみ生じうる特異的なシミュレーション結果を把握できなくなる可能性があることに注意する必要である なお, その評価結果における不確定要素の重要度の序列を明示的に表記する方法としてはトルネードチャートがある ( 図 2-13) 35

40 体表面積 BMI 体重 年齢 性別 CCR AST ALT LDH Δ 試験成功率 (%) 図 2-13 トルネードチャートの例 感度分析の結果に基づけば, 影響力が充分に小さいと想定された不確定要素又は選択肢を検討対象から除外するだけでなく, 影響力の大きい選択肢について条件を追加設定し, より最適な条件を探索することも可能である 感度分析の結果から当該要素或いは選択肢を無視して問題ないとする判断の基準を一概に定義することはできないが, 不確定要素及び選択肢の影響力の絶対値や他の不確定要素などの影響力との相対的な差を考慮して決定する ( 表 2-4) 表 2-4 感度分析の結果に基づくシナリオの選択と選択肢の拡充 評価項目の PD モデルの形状 評価項目の PD モデル 観察期間 Linear Log-linear Emax 観察期間 Linear 2 ヶ月 ヶ月 ヶ月 ヶ月 ヶ月 ヶ月 0.85 ( 追加 ) 1 年 0.92 ( 追加 ) 2 年

41 最適な試験条件の選択最適な試験条件は, シミュレーションにより得られた定量的な指標により選択される その際, 選択の手順は, モデルに不確定要素が含まれる場合と含まれない場合で異なる モデルに不確定要素が存在せず試験デザイン上の選択肢が異なるだけの場合は, 網羅的にある程度の数の条件を設定したシミュレーションの結果が得られた段階で全体のシミュレーションの結果を評価する ここで, 最も良い結果を与えた条件を採用しても良いが, シミュレーション全体の評価結果から, その結果に大きく影響する条件が確認できれば, その条件によるさらなる最適化について検討を行うことも考慮する モデルに不確定要素が存在し, 複数のシナリオに基づくシミュレーション結果から総合的な評価を行う場合には, 各シナリオの発生確率 ( もしくは信頼度 ) が設定可能か否かと, 当該開発品への要求に基づいた不確実性の意思決定に関する方法論を適用する なお, 不確定要素を含む場合に用いる意思決定の原理については, 次節で解説する 2.7 不確実性の意思決定シミュレーションの目的にもよるが開発早期における臨床試験シミュレーションでは, 事前情報が不足しているために, モデルに不確定要素が含まれる可能性が高い こうした不確定要素を含むシミュレーション結果に基づく選択肢の選定方法には, いくつかの原理が存在する 51 例えば, 前期第 2 相試験の試験デザインの検討において, 表 2-5 のような事前情報及び臨床試験シミュレーション結果が得られたとする この結果に基づき, 用量反応試験のための用量を選択する場面において 異なる用量の組み合わせを設定した4つの試験デザイン候補があるとする 表 2-5 シナリオと正しい結果を与える確率の推定値の関係 PD モデル ( シナリオ ) と予想発生確率 試験デザイン Linear Linear-log Exponent Logistic Double logistic Quadra A 20% 98% 35% 40% 25% 5% B 90% 95% 95% 90% 25% 35% C 70% 75% 70% 75% 70% 70% D 85% 90% 90% 80% 65% 70% この薬物の PD モデル ( 投与量と薬理効果の関係 ) が直線的 (Linear) であるならば, 試験デザインAで試験を実施すると, 用量反応の有無を正しく評価できる確率は 20% であるとシミュレーションの結果は示している 一方で,PD モデルが直線的である可能性は類薬などの情報から 15% と想定されているため, 合理的な意思決定 ( 試験デザインの選択 ) には, この薬物が他の PD モデルに従っている可能性も考慮しなければならない 本章では, 本事例に基づき, 不確実性の意 37

42 思決定に用いられる代表的な原理について紹介する シナリオの発生確率 ( もしくは信頼度 ) が設定可能な場合 期待値原理適用ケース : 複数の試験計画に適応し, ある程度の失敗を見込んででも, 全体としては一定の確率で成功を収めたい場合など < 手順 > 1. シナリオ期待値 (= 予測される結果 予測発生確率 ) を算出 2. シナリオ期待値の期待値 ( 平均値 ) が最大になる試験デザインを選択 3. 期待値が同じならば, シナリオ期待値の標準偏差が小さい試験デザインを選択 表 2-6 シナリオと正しい結果を与える確率の推定値 ( 期待値原理 ) PD モデル ( シナリオ ) と予想発生確率 試験デザイン A B C D Linear Linear-log Exponent Logistic Double logistic Quadra % (3%) 90% (14%) 70% (11%) 85% (13%) 98% (25%) 95% (24%) 75% (19%) 90% (23%) 35% (11%) 95% (29%) 70% (21%) 90% (27%) 40% (8%) 90% (18%) 75% (15%) 80% (16%) 25% (1%) 25% (1%) 70% (1%) 65% (1%) 5% (0%) 35% (2%) 70% (4%) 70% (4%) 標準期待値偏差 8% 9% 14% 11% 12% 8% 14% 10% 表 2-6 には, 各シナリオ (PD モデル ) の成功確率に各シナリオの予想発生確率を掛け合わせた値を ( ) 内に示し, 試験デザイン毎に全シナリオの ( ) 内の値の算術平均値と標準偏差を算出した 期待値原理に従えば, 期待値が最大である B と D の試験デザインのうち標準偏差の小さい D の試験デザインを選択することになる 期待値 分散原理適用ケース : 期待値原理と同じだが, シナリオ期待値のばらつきをより重視したい場合, など < 手順 > 1. 同じ標準偏差ならば, 期待値が大きい試験デザインを選択 2. 同じ期待値ならば, 標準偏差が小さい試験デザインを選択 3. 1., 2. で決まらない場合は, 期待値を標準偏差で補正した値 ( 例えば, 期待値 - 標準偏差 ) で選択 38

43 表 2-7 シナリオと正しい結果を与える確率の推定値 ( 期待値 分散原理 ) PD モデル ( シナリオ ) と予想発生確率 試験デザイン A B C D Linear Linear-log Exponent Logistic Double logistic Quadra % (3%) 90% (14%) 70% (11%) 85% (13%) 98% (25%) 95% (24%) 75% (19%) 90% (23%) 35% (11%) 95% (29%) 70% (21%) 90% (27%) 40% (8%) 90% (18%) 75% (15%) 80% (16%) 25% (1%) 25% (1%) 70% (1%) 65% (1%) 5% (0%) 35% (2%) 70% (4%) 70% (4%) 期待 標準 差 値 偏差 8% 9% -1% 14% 11% 3% 12% 8% 4.5% 14% 10% 4.4% 表 2-7 では, 各シナリオ (PD モデル ) の成功確率に各シナリオの予想発生確率を掛け合わせた値を ( ) 内に示し, 試験デザイン毎に全シナリオの算術平均値と標準偏差を算出した 試験デザイン C が標準偏差は最も小さいが試験デザイン B,D と比べて期待値も小さいため, 標準偏差と期待値の差を算出した 期待値 分散原理では, 標準偏差と期待値の差は試験デザイン C と D では大きな違いは無いため, この原理により一つの試験デザインを選択するのは困難であった 最尤未来原理適用ケース : ひとつのシナリオの可能性が, 他に比べて極めて高い場合, など < 手順 > 最も可能性が高いシナリオのみに注目し, 最良の試験デザインを選択 最も可能性が高いシナリオ以外は一切考慮しない 表 2-8 シナリオと正しい結果を与える確率の推定値 ( 最尤未来原理 ) PD モデル ( シナリオ ) と予想発生確率 試験デザイン Linear Linear-log Exponent Logistic Double logistic Quadra A 20% 98% 35% 40% 25% 5% B 90% 95% 95% 90% 25% 35% C 70% 75% 70% 75% 70% 70% D 85% 90% 90% 80% 65% 70% 39

44 最尤未来原理の場合, 事例のケースでは予想発生確率が最大であるシナリオである Exponent 型 PD モデルでの成功確率のみに注目する ( 表 2-8) このシナリオにおける成功確率は試験デザイン B において最大となり, これが選択される 要求水準原理適用ケース : 要求水準以上の成功確率を最大化したい場合 < 手順 > 1. 要求水準を設定する 2. 要求水準を達成する可能性の高い試験デザインを選択する 表 2-9 シナリオと正しい結果を与える確率の推定値 ( 要求水準原理 ) 試験 デザイン PD モデル ( シナリオ ) と予想発生確率 Double Linear Linear-log Exponent Logistic Quadra. logistic 成功率 70% 以上 のシナリオの 総発生確率 A 20% 98% 35% 40% 25% 5% 0.25 B 90% 95% 95% 90% 25% 35% 0.90 C 70% 75% 70% 75% 70% 70% 1.00 D 85% 90% 90% 80% 65% 70% 0.95 要求水準原理を適用する場合, 最初に要求水準を設定する必要がある 事例のケースで要求水準を 70% と設定した場合, 全てのシナリオにおいてこれを満たす唯一の試験デザインである C が選択される ( 表 2-9) 一方, 要求水準を 90% とした場合には要求水準を上回る確率が 90% と最大となる試験デザイン B が選択される シナリオの発生確率 ( もしくは信頼度 ) が未知の場合 シナリオの発生確率や信頼度を特定することは, 現実的には困難であろう シナリオの発生確率 ( 信頼度 ) が未知の場合の意思決定方法の例について以下に示す ラプラスの原理適用ケース : 期待値原理や期待値 分散原理を適用するシチュエーションの各シナリオの発生確率が存在しない場合 40

45 < 手順 > 1. 全てのシナリオの発生確率は等しい と仮定 2. 期待値原理あるいは期待値 分散原理を適用 表 2-10 シナリオと正しい結果を与える確率の推定値 ( ラプラスの原理 ) PD モデル ( シナリオ ) と予想発生確率 試験 デザイン Double Linear Linear-log Exponent Logistic Quadra. logistic 期待値 A 20% 98% 35% 40% 25% 5% 37% B 90% 95% 95% 90% 25% 35% 72% C 70% 75% 70% 75% 70% 70% 72% D 85% 90% 90% 80% 65% 70% 80% ラプラスの原理を適用する場合, 各シナリオ (PD モデル ) の発生確率はいずれも等しいと想定するため事例のケースでは各シナリオの予想発生確率は 1/6 となる 試験デザイン毎に全シナリオの成功確率の算術平均値 ( 期待値 ) を算出した ( 表 2-10) ここで期待値原理に従えば, 期待値が最大である試験デザイン D を選択することになる マクシミン原理適用ケース : 最低限の成功確率を確実に担保したい場合 < 手順 > 1. 各選択肢において, 最悪の結果を調査 2. 最悪の結果の中で, 一番よい結果をもたらす試験シナリオを選択 表 2-11 シナリオと正しい結果を与える確率の推定値 ( マクシミン原理 ) PD モデル ( シナリオ ) と予想発生確率 試験 デザイン Double Linear Linear-log Exponent Logistic Quadra. logistic 最低確率 A 20% 98% 35% 40% 25% 5% 5% B 90% 95% 95% 90% 25% 35% 25% C 70% 75% 70% 75% 70% 70% 70% D 85% 90% 90% 80% 65% 70% 65% 41

46 マクシミン原理を適用する場合, 各試験デザインについて全シナリオ中最低成功確率に注目する ( 表 2-11) この最低成功確率が最大である試験デザイン C を選択することになる マクシマックス原理適用ケース : 臨床開発で適用が想定されるケースは存在しない, と思われる 1/100 の確率で 100 万円当たる宝くじと 1/10 の確率で 10 万円当たる宝くじ, ともに期待値は 1 万円だが, マクシマックス原理に当てはめれば当たったときの利益が大きい 100 万円当たる宝くじを選択する < 手順 > 1. 各選択肢において, 最良の結果を調査 2. 最良の結果の中で, 一番よい結果をもたらす試験シナリオを選択 マクシマックス原理を適用する場合, 各試験デザインについて全シナリオ中最高成功確率に注目する この最高成功確率が最大である試験デザイン A を選択する 不確実性の意思決定における注意点いずれの選択原理を用いたとしても, 不確定要素 選択肢の数と種類を調節することで, 任意の選択肢に誘導しうる 不確定要素及び選択肢の設定は, 科学的に想定しうるパターンに対して網羅的でなければならず, 決して恣意的に不確定要素の種類やその予想発生確率 選択肢を設定してはならない また, 試験開始前の不確実な状況下での意思決定を行なわず, 臨床試験の実施中に不確実な部分の情報を収集 ( 中間解析, アダプティブデザイン ) し, モデルの情報を更新しながら臨床試験を進めるという方法があることには留意されたい 42

47 2.8 最近の話題今般, 医薬品開発におけるコストの高騰, 新薬上市の遅れや上市数の停滞は, 製薬企業のみならず, 医療全体に影響する大きな課題となっている その要因のひとつとして, 第 2 相試験, 第 3 試験などの段階で多くの試験が失敗していることが, 取り沙汰されている 16 製薬企業にとって, 創薬 開発に長い時間と巨額の費用をかけた最終段階での失敗は, 重大な問題であり, 特に期待が大きい薬剤ではその落胆も大きくなる また, 臨床試験に参加した被験者のボランティア精神や, 臨床試験に関わった医療機関の方々の幾多の努力に残念ながら報いることが出来なかったことになる このような失敗の背景には, 検証試験自体の計画の問題のみならず, 探索段階の学習過程にも問題があると考えられる 昨今, 開発費用の高騰も相まって, 臨床開発の生産性に改善の余地が十分にあることが指摘されている このような課題への対策として, 試験デザイン, 開発戦略, 臨床統計を考慮して, 様々な検討がなされており,MBDD, アダプティブ デザイン, ベイズ統計学などが注目を集めている 23 MBDD, アダプティブ デザイン, ベイズ統計学は, いずれも特異な理論体系のため複合するには多くの課題はあるが, 効果的な医薬品開発においては, 本来これらを連携して検討する必要がある FDA が発出したアダプティブ デザインのドラフト ガイダンスでも, 様々なアダプティブ デザインの条件を設定するため M&S の利用を推奨している アダプティブ デザインとベイズ統計学の関係も同様であり, ベイズ統計学を基礎理論とした, 探索段階でのアダプティブ デザインの利用も重要視されており, このような複合的なデザインでは M&S の計画立案時の重要性は顕然である ここでは,MBDD の意義 運用について具体的に示した End-of-Phase 2A Meeting を紹介し, アダプティブ デザイン, ベイズ統計学については, 臨床試験への適用を主体とした状況 概要を記載する End-of-Phase 2A Meeting End-of-Phase 2A (EOP2A) Meeting は,2001 年の Center for Drug Development Science (CDDS) meeting で概念が示され,2008 年にドラフト ガイダンス,2009 年には正式なガイダンスとして FDA より発出された 19 その目的は,(1) 臨床試験シミュレーションと定量的にモデル化された事前情報を新たに計画する臨床試験デザインへ活用すること,(2) 用量 - 反応関係を効率的に推定し, より良い用量を設定するための試験デザインを設計すること,(3) (1)(2) に関連する諸問題に対する助言が必要な治験依頼者と FDA の相互協力を推進することである FDA は, 臨床試験シミュレーションや定量的モデルからの情報を最大限に活用することを推奨し, 成功確率を向上させる試験デザインの模索を促進したいと考えている 52 EOP2A Meeting は, 第 1 相試験及び患者での初期の探索試験 ( 前期第 2 相試験 ) が完了した後に, 後期第 2 相試験, 及び第 3 相試験を開始するまでの準備期間に開催される EOP2A Meeting では, プラセボ効果, バイオマーカー及び / 又はエンドポイントの選択, 試験デザイン, 後期段階で使用する用量の探索的な推定や選択について議論される 詳細については, 巻末の本 TF にて作成した翻訳版を参照されたい 43

48 2.8.2 アダプティブ デザインアダプティブ デザインとは, 中間解析によって得られた試験途中の情報 ( データ ) を用いて, 試験デザインの変更を行うことである アダプティブ デザインでは特に, 集積されているデータに基づいて, 試験デザインのアダプテーションを実施するため, 恣意性による妥当性 (validity) とインテグリティ (integrity) の欠落は, 試験結果の信頼性を著しく損なうことになる そのため, アダプティブ デザインを利用する際に妥当性と正当性の担保は, 必須の要素として考慮すべき内容とされている 53 アダプティブ デザインは,1990 年より多段階デザインの一種として adaptive interim analyses, flexible design など様々な呼称で検討されてきた 21 世紀に入り医薬品開発の開発費の削減, 成功確率の向上などの機運に乗り急激に注目を集めている アダプティブ デザインは, サンプルサイズ, 選択 / 除外基準, 用量, エンドポイント, 解析方法の変更を広く柔軟に変更可能とした Liu らの基本概念 54 のもとに PhRMA Working Group が定義した 各極の動向としては, 欧米では, European Medicines Evaluation Agency(EMEA) が 2002 年に Points to consider 55,56,2007 年に REFLECTION PAPER が発出され,FDA は 2010 年 2 月に Draft Guidance 57 を発出しており,2007 年頃から急速にその利用も広がっている 58 アダプテーションの方法としては, 多くの提案, 事例があるが Shein-Chung Chow による成書 59 の記述を一部借りると, 以下に示すようなデザインがある (1) an adaptive group sequential design: 群逐次デザインにおいて事前に取り決めた, 安全性, 有効性, 及び無効の基準に準じて中止 継続の判断, サンプルサイズの再計算などを行う適応型群逐次デザインである (2) N-adjustable design: 中間段階のデータに基づいて, サンプルサイズの再計算のみを行うサンプルサイズ調整デザインである サンプルサイズの再計算の方法には, 盲検下のデータから分散を推定しサンプルサイズ計算を行う Gould の方法がある 60,61 一方, 盲検解除を伴う場合は, 中間解析ごとにサンプルサイズの再調整を行う Cui-Hung-Wang 法 62, Proschan-Hunsberger 法 63,Bauer and Kohne 法 64,65 がある Proschan-Hunsberger 法,Bauer and Kohne 法は, 各ステップでの統計量が独立であることを前提とした 2 段階デザインでの手法である その他,Bauer and Kohne 法を多段階に拡張した Independent p-value Approaches や, 同様に多段階デザインを前提とした逆正規変換法がある (3) an adaptive seamless phase 2/3 design: 第 2 相試験と第 3 相試験の別々の試験によって達成できる目的を,1 つの試験で達成することを目的とした試験計画であり, 最終解析には, アダプテーションの前および後に集積された被験者のデータを用いる シームレスデザインには, 通常の第 2 相試験と同じ目的の学習 (learning) フェーズと, 通常の第 3 相試験と同じ目的で行われる検証 (confirmatory) フェーズがある (4) a drop-the-loser design: 多段階デザインにおいて, 効果のない治療群を脱落させる (5) an adaptive randomization design: 適応型割付手順には, 治療適応型割付, 共変量適応型割付, 反応適応型割付がある 治療適応型割付および共変量適応型割付はその殆どが治療群間での目的とするサンプルサイズ比からの不均衡もしくは偏りを減らすことを目的としている 一方, 反応適応型割付は割りつけられた治療群の効果 ( 反応 ) により割り付けを行う方法である (6) an adaptive dose-escalation design: 初期段階の臨床試験で用いられることが多く, 最大耐用量を決定することが目的のデザインである ベイズ統計学の考え方を利用して, がんの分野で汎用的な Continual Reassessment Method (CRM) がその事例のひとつである (7) an adaptive treatment switching: がんや HIV のような進 44

49 行性の疾患で使われており, 登録時に割り付けられた治療群の効果が, 治療の無効または疾患の進行がみられるなどの場合には, 倫理的な理由から別の治療群への切り替えが許されているデザインである (8) an adaptive hypotheses design: 中間解析の結果により, 試験仮説の変更を行うことができるデザインである (9) any combination of the above: 上記内容の複合デザインとなる 上述のようにアダプティブ デザインは, 種類も多様であり FDA から発出されたドラフト ガイダンスでも多くの留意点が記述されている ここですべてを記載することは出来ないが, ドラフト ガイダンスでは, 如何にして A&WC (adequate and well-controlled effectiveness) study として成立させるかを命題の一つとしている また, アダプティブ デザインには, 多くの複合デザインがあり, 方針の決定時期も多様である 適応過程で想定される重複因子を有するデザインでは, その特性を評価して, 最適なデザインを選択することは難題である そのため, 試験デザインを決定する際には, 臨床試験シミュレーションにより複数のシナリオの統計的な特性を評価する必要がある 特に, エンドポイントやイベントに対するモデル, 脱落モデル, 症例集積モデル, アダプテーションの選択手順を示すモデルなどの臨床試験モデルを作成し, アダプテーションの方法, アダプテーションのタイミング, 多段階での薬剤効果を合併する手順, 薬剤効果を推定するための解析方法, 最終段階での第一種の過誤や検出力などを評価することが望ましい ベイズ統計学ベイズ統計学については多くの成書 66, 67 で示されているように, 考え方として, 推測対象のパラメータが確率の分布によって表現されることを基本としている データが得られる前のパラメータは事前確率の分布 ( 事前分布 :prior distribution) として定義される 得られたデータは, パラメータを含んだ尤度関数のモデルで表現される 事前確率分布と尤度関数の積を標準化したものは, 事後確率の分布 ( 事後分布 :posterior distribution) と呼ばれる 事後分布に基づいて, 対象のパラメータに関する推論を行うことができる 従来, 臨床試験で適応されている統計理論である頻度論と比較してベイズ統計学の特徴を概説する 一般的に使用されている頻度論では, 真値は唯一の点である その真値を臨床試験で得られた結果を用いて知りえない値である真値 ( 例えば, 実薬とプラセボの差 ) について, 推定, 検定を行うというのが頻度論の考え方である 頻度論とベイズ統計学の大きな違いは, 成功確率の直接的な判断の可否である ベイズ統計学では, 例えば薬理効果の大きさを表すパラメータの事後分布における 0 以上の確率を計算することで, 薬剤の効果があると言える確率は何 % であるかを直接的に評価することが可能である 一方, 頻度論に基づく統計的仮説検定の結果からは, 真値が 0 かどうかという判断のみであり, 真値の推定値 ( もしくは真値の推定値が従う分布 ) からの成功確率の判断は出来ない このことより, 薬剤の効果の大きさを適切に見積もる必要がある早期段階の臨床試験において, ベイズ統計学の利用は有用であると考えられる 臨床試験デザインにおいてベイズ統計学は, 中間モニタリング ( 中間解析による go/no-go の判断 ), サンプルサイズの再算定,CRM( いずれも広義にはアダプティブ デザイン ) などに適用できる 無論, 単純な無作為化並行群間試験を頻度論ではなく, ベイズ統計学を基本として構成することも可能である ベイズ統計学を基本として試験を立案する際は, 頻度論による検出力ベ 45

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