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2 薬物動態に基づく構造最適化による Phosphoinositide 3-Kinase 阻害剤の開発研究 河田発夫

3 本学位論文は, 下記の原著論文を基に作成され, 東北大学大学院薬学研究科に提出されたも のである. 1. Lead optimization of a dihydropyrrolopyrimidine inhibitor against phosphoinositide 3- kinase (PI3K) to improve the phenol glucuronic acid conjugation Hatsuo Kawada; Hirosato Ebiike; Masao Tsukazaki; Mitsuaki Nakamura; Kenji Morikami; Kiyoshi Yoshinari; Miyuki Yoshida; Kotaro Ogawa; Nobuo Shimma; Takuo Tsukuda; Jun Ohwada, Bioorg. Med. Chem. Lett. 2013, 23, Modification of a dihydropyrrolopyrimidine phosphoinositide 3-kinase (PI3K) inhibitor to improve oral bioavailability Hatsuo Kawada; Hirosato Ebiike; Masao Tsukazaki; Shun Yamamoto; Kohei Koyama; Mitsuaki Nakamura; Kenji Morikami; Kiyoshi Yoshinari; Miyuki Yoshida; Kotaro Ogawa; Nobuo Shinma; Takuo Tsukuda; Jun Ohwada, Bioorg. Med. Chem. 2015, 23, Optimization of the phenylurea moiety in a phosphoinositide 3 kinase (PI3K) inhibitor to improve water solubility and the PK profile by introducing a solubilizing group and ortho substituents Hatsuo Kawada; Hirosato Ebiike; Masao Tsukazaki; Shun Yamamoto; Kohei Koyama; Mitsuaki Nakamura; Kenji Morikami; Kiyoshi Yoshinari; Miyuki Yoshida; Kotaro Ogawa; Nobuo Shimma; Takuo Tsukuda; Jun Ohwada, Bioorg. Med. Chem. 2016, 24,

4 目次 序論 1 第 1 章新規 PI3Kα 阻害剤のデザインとグルクロン酸抱合の回避 第 1 節新規 PI3Kα 阻害剤のデザイン 7 第 2 節 SBDD に基づく構造最適化によるグルクロン酸抱合の回避 12 第 3 節化合物 5 の PK プロファイルと in vivo における抗腫瘍効果 19 第 4 節 X 線共結晶構造解析によるフェノール部およびアミノピリミジン部の相互作用の考察 20 第 1 章小括 23 第 2 章サルにおけるバイオアベイラビリティの改善 第 1 節水溶性置換基の導入による溶解性の改善 24 第 2 節水素結合アクセプターの削減による PK プロファイルの改善 28 第 3 節水溶性置換基の最適化とオルト位への置換基導入による PK プロファイルの改善 33 第 2 章小括 38 第 3 章分子の平面性解消による溶解性と PK プロファイルの改善 第 1 節メチル基の導入による溶解性向上の試みと阻害活性 39 第 2 節フェニルウレアのオルト位への置換基導入の試み 44 第 3 節オルト位への置換基導入と水溶性置換基導入による PK プロファイルの改善 47 第 4 節化合物 40 の in vivo における抗腫瘍効果 51 第 3 章小括 52 結論 53 実験の部 55 参考文献 87 謝辞 90

5 略語表 AKT: v-akt murine thymoma viral oncogene homolog BA: Bioavailability BCS: Biopharmaceutics classification system BuLi: Buthyllithium DCE: dichloromethane DCM: 1,2-Dichloroethane DMAP: N,N-Dimethyl-4-aminopyridine DME 1,2-Dimethoxyethane DMF: N,N-Dimethylformamide DMSO: Dimethyl sulfoxide dba: dibenzylideneacetone EDC: 1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl) carbodiimide EDTA: Ethylenediaminetetraacetic acid FaSSIF: Fasted state simulated intestinal fluid GCA: Glycocholic acd HPCD: 2-Hydroxypropyl-β-cyclodextrin HTS: High throughput screening HOBt: 1-Hydroxybenzotriazole LHMDS: Lithium bis(trimethylsilyl)amide LM: Liver microsome NADPH: Nicotinamide adenine dinucleotide phophate PAMPA: Parallel artificial membrane permeability assay PEG: Polyethylene glycol PK: Pharmacokinetics PKB: Protein kinase B PI3K: Phosphoinositide 3-kinase

6 PI: Phosphatidylinositol PI(3)P: Phosphatidylinositol-3-phosphate PI(4)P: Phosphatidylinositol-4-phosphate PI(3,4)P2: Phosphatidylinositol-3,4-tbisphosphate PI(4,5)P2: Phosphatidylinositol-4,5-bisphosphate PI(3,4,5)P3: Phosphatidylinositol-3,4,5-triphosphate PLP: Piecewise linear potential PMF: Potentials of mean force PTEN: Phosphatase and tensin homolog deleted from chromosome 10 SAR: Structure activity relationship SBDD: Structure based drug design S-Phos: 2-Dicyclohexylphosphino-2,6 -dimethoxybiphenyl TEA: Triethylamine TFA: Trifluoroacetic acid THF: Tetrahydrofuran UDPGA: Uridine diphosphate glucuronic acid X-Phos: 2-Dicyclohexylphosphino-2,4,6 -triisopropylbiphenyl

7 本研究の目的大腸がん, 前立腺がん, 乳がんなど各種癌に対する効果的な治療剤の開発は緊急の要請である. 本研究はがん細胞の増殖に深く関わる phosphoinositide 3-kinase( 以下 PI3K) によるリン酸化機能を標的として, これら各種がんの治療に有効な低分子阻害剤の創製を目的として行った. 序論 1. PI3K の機能と低分子阻害剤 PI3K は細胞内においてリン脂質である phosphatidylinositol の inositol の水酸基をリン酸化する酵素の総称である (Figure 1). Figure 1. Phosphorylation of phosphatidylinositol by PI3K and dephosphorylation by PTEN 1

8 特に PI3K によって PI(4,5)P2(phosphatidylinositol-4,5-bisphosphate) の 3 位水酸基がリン酸化されて生成する PI(3,4,5)P3(phosphatidylinositol-3,4,5-triphosphate) は, 細胞内のシグナル伝達においてセカンドメッセンジャーとして働き, 細胞の増殖 (proliferation) や生存 ( survival) に関与する AKT(v-akt murine thymoma viral oncogene homolog, 別名 protein kinase B) を活性化することが知られている 1-3.PI3K は class I, II, III の 3 つのファミリーに分けられるが, これらのうち class I PI3K が PI(4,5)P2 を基質として PI(3,4,5)P3 を産生することから, PI3K による AKT の活性化経路 (PI3K-AKT pathway) において重要な役割を担っている (Figure 2) 4. 近年, 様々な癌細胞で PI3K の変異 (mutation) や増進 (amplification) に伴って PI3K-AKT pathway が著しく活性化されることが明らかにされ, さらにリン酸化による PI(3,4,5)P3 産生の抑制ががん細胞の増殖の抑制になることも明らかにされている. 一方で,Class II PI3K は PI(4)P(phosphatidylinositol-4-phosphate) を基質として PI(3,4)P2(phosphatidylinositol-3,4-tbisphosphate) を産生することが知られているが, その機能については明らかにされていない. また class III PI3K は PI(phosphatidylinositol) を基質として PI(3)P(phosphatidylinositol-3-phosphate) を産生し, タンパク質の輸送に関わることが知られている (Table 1). これらの事実からがん細胞における PI(3,4,5)P3 産生の抑制, すなわち class I PI3K のリン酸化機能を標的とする阻害剤の開発がオンコロジー領域における重要な課題の1つとなっている 5,6. Figure 2. PI3K-AKT Pathway 2

9 Class I PI3K は触媒サブユニット (p110α,p110β,p110δ,p110γ) によって 4 つのアイソフォームに分類される. これらの中で p110γ はその阻害剤が主に炎症や自己免疫疾患の治療に効果が期待できるとして注目されている. 一方で, 残る3 種はそれぞれの阻害剤がすべて各種がんの治療に有効であると考えられ, 特に注目されている (Table 1). まず, p110α は多くのがん細胞株においてアミノ酸残基の変異 (mutation) や増進 ( amplification) を起こすことが知られ 4, 特に多くの癌種にわたって頻繁に変異を起こすアミノ酸残基はホットスポット呼ばれ E542,E545 と H1047 が該当する 7. また,p110β は腫瘍抑制因子として知られる phosphatase and tensin homolog deleted from chromosome 10( 以下 PTEN) と深く関わる. すなわち,PTEN は PI(3,4,5)P3 を脱リン酸化する酵素であり (Figure 1), がん増殖に関わる PI3K-AKT pathway を阻害する. これに対して p110β は PTEN が抑制された条件下でがん細胞の増殖を促進する. そのため,p110β の阻害は抗がん剤の開発という観点から重要な意味を持つ さらに,p110δ は免疫細胞に特異的に発現し 11, 12, 特に慢性リンパ性白血病においては著しく活性化されていることが明らかにされている. Table 1. Role of PI3Ks しかしながら, これらの知見にもかかわらず, この領域において開発に成功した薬剤は 2014 年に FDA から承認された Gilead 社の p110δ のリン酸化機能阻害剤 idelalisib (Zydelig) が唯一である (Figure 3) 13. この化合物は Roche 社のモノクロナール抗体 rituximab (Rituxan) との併用によって慢性リンパ性白血病の治療薬として使用されているが, 多くのがん種に関連する p110α および p110β を標的とする治療薬として承認を受けたものは未だになく 3

10 14-16, それらの開発が強く望まれている. そこで著者は, まず多くのがん種において変異や増進が確認されており, かつ薬剤の確立されていない p110α に対する阻害剤の開発を目的として本研究に着手した. 加えて, その過程で見出された p110β に対する阻害剤についても研究を行った. Figure 3. Chemical structure of idelalisib 一方, 苦痛の少ない経口による投与を可能にする医薬品の開発に際しては化合物の BA (bioavailability) が重要となる.BA の良好な化合物を見出すためには BCS class (biopharmaceutics classification system) 17 として示される化合物の水溶性と膜透過性が重要なパラメーターとなる. 一般に水溶性と膜透過性は相反するパラメーターであるため, これらの両立性が経口投与可能な化合物を見出す鍵となる. 本研究においては空腹時の腸液を模した FaSSIF(fasted state simulated intestinal fluid) 18 に対する化合物の水溶性を測定し, 適切な極性基を導入することでその改善を図った. 一方で過度な極性基の導入は化合物の脂溶性を低下させて膜透過性を低下させる. そこでさらなる溶解性の改善にあたっては, 分子の平面性を解消させることによって溶解性を改善することを念頭において候補化合物を設計した. 分子の平面性を解消させる手法においては, 化合物の結晶性を低下させることで膜透過性を損なうことなく水溶性を改善することが期待できる 19, 20. 膜透過性に関しては腸管膜に対する受動的な透過性と相関があるとされる人工脂質膜 PAMPA(parallel artificial membrane permeability assay) による評価を行った

11 Figure 4. BCS Classification PI3K 阻害剤の設計にあたり著者はまず, 既存の PI3K 阻害剤である Piramed 社の PI103 (2) 24 と Chiron 社の阻害剤 (3) 25 の構造に着目した. その結果, 両者の構造的特徴を組み込んだ化合物 1 が PI3Kα のリン酸化を強く阻害することを見出し, これをリード化合物とした (Figure 5). さらに化合物 1 の構造最適化の過程において見出された化合物 4 と PI3Kα との X 線結晶構造解析の情報に基づいた SBDD(structure based drug design) を適用して代謝安定性の至適化を図り 5 を得た. この化合物 5 は p110α の H1047R mutant である乳がん細胞株 KPL-4 に対し, 経口投与により強い抗腫瘍効果を示した. この詳細は第 1 章で述べる. さらにこの化合物 5 に対してより詳細な構造最適化を検討し, 水溶性 膜透過性 代謝安定性を図り, サルによる PK(pharmacokinetics) 試験で BA の改善した化合物 6 を得ることに成功した. この詳細は第 2 章で述べる. 一方, リード化合物 1 の構造をもとに誘導したフェニルウレア誘導体 7 は合成した化合物中で最大の PI3K 阻害活性を示したものの, その低水溶性による BA の低さが課題であった. これについては分子の平面性の解消による薬物動態改善を検討し, ウレア部の平面性の解消が好結果をもたらすことを見出した. すなわち,PTEN が不活性化された前立腺がんの細胞株である PC-3 に対して, 経口投与で強い抗腫瘍効果を発現する 2,6-ジフルオロフェニルウレア誘導体 8 を見出した. この詳細は第 3 章で述べる. 5

12 Figure 5. Design of new PI3Kα inhibitor and its derivatives 6

13 第 1 章新規 PI3Kα 阻害剤のデザインとグルクロン酸抱合の回避 第 1 節新規 PI3Kα 阻害剤のデザイン 分子標的薬の研究開発を進めるにあたっては, まず目的の標的に対する阻害活性を示すリード化合物を設定しなければならない. その手法は化合物ライブラリーを用いて標的に対する阻害活性を網羅的に評価する HTS(high throughput screening) に基づく手法と既存の活性化合物の構造を基礎として展開する手法に大別される. 後者においては既存の活性化合物との類似性から他者の知的財産に抵触するリスクがあり, 逆に既存の構造からの乖離は望みの活性の消失という事態に直面することになる. 著者は研究にあたり後者の手法に基づくものの, 化合物の設計にあたっては新たな工夫を加えた. すなわち, 単一の化合物への着目ではなく Figure 6 に示される研究開発段階にあった 4 種の PI3K 阻害剤の構造に着目し,PI3K との相互作用の発現に必須と推測される部分構造単位に着目し, 新たな基本構造中にこれらを適切に配置する手法を採用した. 着目した既存の化合物を Figure 6 に示す. これらの阻害剤は天然物の Wortmannin (9) 26-28, 日本イーライリリー社の LY (10) 29, Piramed 社の PI03 (2), そして Chiron 社の PI3K 阻害剤であり, それぞれ PI3Kα および他の PI3K アイソフォームの機能を阻害することが知られていた. Figure 6. Known PI3K inhibitors LY (10) は PI3Kγ との X 線共結晶構造が解かれており 30, モルホリン部位の酸素原子が PI3Kγ のヒンジ部位 ( 基質となる ATP が相互作用する部位 ) と水素結合を形成することが示されていた.Wortmannin (9) においてはテトラヒドロピラン上のカルボニル基が LY のモルホリンの酸素原子と同様の位置に配置されることが示唆されており, ヒン 7

14 ジ部位と水素結合を形成していると推察できる. 一方,PI103 (2) と Chiron 社の阻害剤に着目すると, どちらもピリミジン骨格を中心にモルホリン部とフェノール部を有する. まず, モルホリン部は LY (10) のモルホリン部と同様の相互作用をしており, フェノール部位は,2 つの化合物のピリミジン骨格を重ねると水酸基が同じ位置に来る. さらに PI103 (2) と Chiron 社の化合物の残りの部位に着目すると, ピリジンの窒素原子が水素結合アクセプターとして機能している可能性が示唆される. この窒素原子の位置に関しては構造最適化の余地を残すものの, 以上の考察から著者は, ピリミジンを中心にモルホリン部とフェノール部が適切な位置に結合し, 既存の活性化合物とは異なるジヒドロピロロピリミジンを中心骨格をとした化合物 1 を設計し, 合成した (Figure 7). Figure 7. Structure of lead compound 1 化合物 1 の合成ルートを Scheme 1 に示す. まず,γ-ブチロラクトンをβ ケトエステル 13 とし, これに塩基性条件下でグアニジン誘導体を作用させるピナーピリミジン合成 31 によりピリミジン誘導体 14 とした. さらに生じる水酸基をクロロ基へと置換することで鍵中間体となるジクロリド 15 を得た. これを各種アミノピリジン誘導体と反応させて対応するジヒドロピロロピリミジン誘導体とし, 芳香環メチルエーテル部を開裂し 1 を得た. リード化合物のデザインにあたって考察したように, 化合物 1 のピリジン部位においては最適化の余地があると考え化合物 4, 17, 18 を鍵中間体 15 より同様に合成した.N Phenyl 誘導体 19 は同様の手法によって得たトリクロリド 22 をアニリンと処理して得た 23 に, 鈴木 宮浦カップリングを適用して合成した. 8

15 Scheme 1. Preparation of compounds 1, 4, 17, 18, 19. Reagents and conditions: (a) LHMDS, 3-methoxybenzoyl chloride, THF, -78 C, 36%; (b) morpholinoformamidine hydrobromide, tbuona, tbuoh, microwave 120 C, 28%; (c) POCl 3, 110 C, 100%; (d) Pd 2(dba) 3, 1,3- bis(2,6-diisopropylphenyl)imidazol-2-ylidene (IPr), tbuona, amines, 1,4-dioxane, microwave 160 C; (e) EtSNa, DMF, 150 C; (f) HMDS, nbuli, CO(OMe) 2, THF, -78 C, 82%; (g) Na, morpholinoformamidine hydrochloride, MeOH; (h) POCl 3, 100 C, 28% in 2 steps; (i) aniline, NaH, THF, reflux, 78%; (j) 3-hydroxy-phenylboronic acid, Pd(OAc) 2, S-Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C, 16%. 9

16 得られた化合物の PI3Kα に対する阻害活性の結果を Table 2 に示す. 予期したように, ピリジン上の窒素原子の位置によって阻害活性が変化する傾向がみられ, 窒素原子が 4 位にある化合物 1 が最も強い阻害活性を示した. 窒素原子が 3 位にある化合物 17 では活性が 5 分の 1 に減弱し,2 位窒素体 18 では活性が認められなかった. さらに無窒素体 19 では活性が大幅に減弱した. このことからピリジン上の窒素原子は PI3Kα との相互作用に必須の存在であり, その位置は 4 位が最適であると結論した. 以上の結果から,PI3Kα に対して 8.6 nm と最も強い阻害活性を示した化合物 1 をリード化合物として選定した. Table 2. In vitro activity of heteroaromatic compounds 続いてリード化合物 1 に対してマウスにおける PK 試験を実施した. しかしながらその BA は 1.6% と予想外に低い結果となった. この低い BA の原因を明らかにするために in vitro での LM(liver microsome) 安定性試験を行った. その結果, 半減期がマウスで 20 分, ヒトで 29 分であり, 肝臓で代謝を受けていることが分かった. 一方, 化合物の構造より代謝経路としてフェノール部位のグルクロン酸による抱合が予想されることから,LM における 10

17 グルクロン酸抱合による半減期を測定した. その結果, マウスで 11 分, ヒトで 6.1 分と非 常に短く,BA の低さはグルクロン酸抱合を受ける初回通過効果 (first pass effect) に由来 するものと結論した (Figure 8). Figure 8. Glucuronidation of the lead compound 1 11

18 第 2 節 SBDD に基づく構造最適化によるグルクロン酸抱合の回避 前節で述べたように既存の PI3K 阻害剤の構造的相関に着目して合理的に設計したリード化合物 1 は非常に強い PI3Kαに対する阻害活性を示した. しかしながら, フェノール部位のグルクロン酸抱合による容易な代謝を受け, マウスにおける BA は 1.6% と非常に低い値であった. 一方, グルクロン酸抱合を避けるためにフェノールの水酸基をメチルエーテルとした化合物 24 においては阻害活性がリード化合物 1 の 50 分の 1 程度に低下した (Table 3). これらの事実は強い阻害活性の発現には水酸基のような水素結合のアクセプターとドナーの双方の機能性の保持が重要であることを示唆していることから, フェノール部位の構造最適化を検討した. そこでまず, 前節で合成したトリクロロ中間体 22 からジヒドロピロロピリミジン体 25 を得, 鈴木 宮浦カップリング反応を適用して一連の誘導体 26~35 を合成した (Scheme 2). これらはリード化合物 1 のフェノール部位を, 水素結合のアクセプターおよびドナーとなる官能基を保持する芳香環へ置換した化合物に対応する. Scheme 2. Preparation of compounds 26~35. Reagents and conditions: (a) 4-aminopyridine, NaH, THF, reflux, 54%; (b) boronic acids, Pd(OAc) 2, S-Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C; (c) 5M NaOH, MeOH/H 2O, 92%, (d) EDC, HOBt, NHMe, DMF, 67%. 得られた化合物の PI3Kαに対する阻害活性の結果を Table 3 に示す. 導入された芳香環上の水酸基のオルト位にメチル基を導入し, 立体障害によりグルクロン酸抱合の回避を意図した化合物 26 および 27 では阻害活性が失われる結果となった. このことは導入されたメチル基の立体効果がグルクロン酸による抱合のみならず, 肝心の PI3K との相互作用をも 12

19 妨げてしまったこと, これに加えてビアリール結合のオルト位にあるメチル基による分子全体のコンフォーメーションの変化にあると思われる. 関連するコンフォーメーション効果については第 2 章および第 3 章で述べる. さらに水素結合に対するアクセプターとドナーとしての機能の双方を備えたアミン 28, スルホンアミド誘導体 29, カルボン酸 31, アミド 32 を評価したが, いずれも見るべき活性を発現しなかった. 一方, 水素結合アクセプターとしての機能を保持しているピリジンならびにピリミジン誘導体 33~35 は, 明確な構造活性相関 (SAR:structure activity relationship) を示した. すなわち, 窒素原子が 4 位,3 位,3 位と 5 位の順に阻害活性が増大した. このことは水素結合アクセプターの存在が PI3Kαとの相互作用に大きな役割を果たしていることを示唆している. しかしながら, 水素結合ドナーに欠けるこれらにはリード化合物 1 と同等の阻害活性の発現は認めらなかった. Table 3. In vitro activity of phenol derivatives, phenol bioisosteres and heteroaromatic compounds 十分な阻害活性を維持しつつ代謝安定性を改善するために必須のフェノール部位の最適化をいくつか試みたが, いずれも阻害活性が大きく減弱する結果となった. これらの結果はフェノールの水酸基が PI3Kα との相互作用に非常に適した場所にあり, その置き換えには精密な分子設計が必須であることを示唆している. そこで PI3Kγとの X 線共結晶構造の解析に成功した化合物 4 の相互作用情報 (PDB: 3APF) をもとに最適構造を追求した. 化 13

20 合物 4 は化合物 1 のピリジン上の窒素原子の最適な位置を解明するために合成した化合物の 1 つであり,PI3Kαに対して 77 nm の阻害活性を示した化合物である (Table 1). 同様に強い阻害活性を有するいくつかの化合物で X 線結晶構造解析を試みていたが, この化合物 4 と PI3Kγとのコンプレックスにおいて結晶構造解析に成功した. 使用するタンパク質としては本来は PI3Kαの利用が望ましいが,X 線共結晶解析のためのタンパク質調製が困難であったため, 阻害剤の結合する ATP 結合部位において約 50% の相同性を有する PI3Kγ を活用した. 化合物 4 の相互作用パターンの解析については第 3 節にて詳細を述べる. この X 線情報を基にドッキングシミュレーションによる分子設計を行った. 評価を行うに当たってはフェノール部位の誘導化を効率的に行うため, 化合物 25 との鈴木 宮浦カップリングの適用を経て合成が可能な化合物群を選んだ. この考えに基づいて選ばれた化合物をコンピュータ上で PI3Kγ の ATP 結合部位にドッキングさせ,FlexSIS ドッキングシミュレーションを用いて, 静電的および脂溶性の相互作用による安定化エネルギーの算出を行った. まずデザインした化合物をジヒドロピロロピリミジン骨格部位を固定して AM1 によるコンフォメーションの最適化を行い, 次にジヒドロピロロピリミジン部位が化合物 4 のジヒドロピロロピリミジン部位と重なるようにタンパク質中に配置し,FlexX と PLP に DrugScore と PMF のデータを加味した経験的なスコアリング関数により化合物のスコアリングを行った 32. その結果,Table 4 に示すようにアミノピリジンおよびアミノピリミジンを有する化合物が, 化合物 4 を上回る安定化エネルギーを示すと算出されたことから, これらの化合物を合成し, 評価することとした. Table 4. Docking simulation scores 14

21 化合物 36~38 および 5 は, これまでと同様に鍵中間体 25 および 39 に対する鈴木 宮浦カップリングによって合成するか, もしくは根岸カップリングによって合成した (Scheme 3). 得られた化合物 5 および 36~38 の PI3Kα に対する阻害活性を Table 5 に示す. これらの化合物は期待した通り PI3Kα に対する阻害活性を示したが, アミノピリジン誘導体 36 および 37 は中程度の阻害活性に止まった. 一方, アミノピリミジン誘導体 38 ではアミノピリジン誘導体に比して約 10 倍の活性増強となり,IC 50 が 26 nm という非常に強い阻害活性を示した. Scheme 3. Preparation of compounds 5 and 36~38. Reagents and conditions: (a) Aryl bromide, nbuli, iprmgcl, ZnCl 2, THF, then 25, reflux (for 36), boronic acids, Pd(OAc) 2, S- Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C (for 37 and 38); (b) TFA, c.h 2SO 4, 40 C; (c) 3-aminopyridine, NaH, THF, reflux, 67%; (e) boronic acid (48), Pd(OAc) 2, S-Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C; (b) TFA, conc.h 2SO 4, 40 C, 12% in 2 steps. 15

22 Table 5. In vitro activity of aminopyridine derivatives and aminopyrimidine derivatives ドッキングシミュレーションに基づいて見出された化合物 38 が非常に強い阻害活性を 有したことから, この化合物およびピリジン部位の窒素原子の位置が異なる化合物 5 に対 して代謝安定性の評価を行った. その結果を Table 6 に示す. 16

23 Table 6. In vitro activity and metabolic stability of compound 1, 5 and 38 a CRC, PI3Kα H1047R b Prostate cancer, PTEN null c Breast cancer, PI3Kα H1047R 化合物 38 および 5 は期待通りグルクロン酸抱合試験における半減期が 60 分以上となり, 確認された抱合体も 1% 未満であった. さらに LM 安定性試験においても改善がみられ, 化合物 5 はマウスにおける半減期も 63 分となった. 化合物 5 はピリジン部位の窒素原子の位置が 3 位になっているが,Table 2 で示されたような阻害活性の減弱は見られていない ( 化合物 1 v.s. 17). この構造活性相関の変化について明確な説明はできていないが, 第 3 節で示すように ATP 結合部位における化合物全体の配置が変化していることから, 窒素原子がどちらの位置でも同等の相互作用をしているか, もしくはどちらの位置でも相互作用に寄与していないものと推測している. 続いてこれらの化合物のがん細胞株に対する増殖抑制効果を評価した. がん細胞株としては大腸がん由来の細胞株である HCT116, 前立線がん由来の細胞株である PC3, 乳がん由来の細胞株である KPL-4 を選択した 33.HCT116 は p110αで発現が確認されている変異の中でもホットスポットと呼ばれる H1047 に変異を有する細胞株,PC3 はがん抑制因子 17

24 である PTEN が不活性化された細胞株,KPL-4 は HCT116 と同様に H1047 に変異を有する細胞株であり, いずれも PI3K 阻害剤による細胞の増殖抑制効果を評価するのに適した細胞株である.Table 6 に示されるように化合物 38 および 5 はこれらの細胞株に対して強い増殖抑制効果を示した.PTEN が不活性化された PC3 においても増殖抑制効果を示していることから, 序論で述べたようにこれらの化合物は PI3Kβ に対しても阻害活性を発現することが推測される. 以上,X 線情報に基づくドッキングシミュレーションによりグルクロン酸抱合に対する代謝安定性を改善し, かつ PI3K の活性化により細胞増殖機能が亢進している細胞株に対して in vitro で増殖抑制作用を示す化合物を得ることに成功した. そこで, 引き続きこの化合物の in vivo での薬効試験を行うこととした. 18

25 第 3 節化合物 5 の PK プロファイルと in vivo における抗腫瘍効果 前節で見出した化合物 5 に対して, マウスでの PK 試験を行った結果を Table 7 に示 す. 血中からの消失速度の指標である血中クリアランス値は大きいものの, バイオアベイラ ビリティ (F) は 41% となりリード化合物の 1.6% から大きく改善させることができた. Table 7. Mouse PK profile of compound 5 この結果を受けて, さらに in vivo での抗腫瘍効果を行った結果を Figure 9 に示す. 細胞株としては in vitro での増殖抑制試験において最も強い効果を示した KPL-4 を選択した. これをヌードマウスに移植し, 化合物 5 の連投試験を行ったところ,80 mg/kg の投与量において 166% TGI(tumor growth inhibition) という非常に強い抗腫瘍効果を示すことが確認された. Figure 9. In vivo antitumor activity of compound 5 in the KPL-4 mouse xenograft model 19

26 第 4 節 X 線共結晶構造解析によるフェノール部およびアミノピリミジン部の相互作用の 考察 これまで述べてきたように, 代謝に対して不安定なフェノール部位に対して SBDD の適用により構造最適化を施し, アミノピリミジン誘導体 5 を見出すことができた. 本節では,SBDD を実施するにあたって重要な情報となったフェノール誘導体 4 と PI3Kγの X 線共結晶構造と, その後に得られたアミノピリミジン誘導体 5 と PI3Kγの X 線共結晶構造 (PDB: 3APD) から, これら 2 つの化合物と PI3Kαの相互作用パターンについて考察する. 最初に両化合物の X 線共結晶構造解析の結果を重ね合わせたものを Figure 10 に示す. Figure 10. Crystal structure of 4 (shown in yellow) and 5 (shown in green) in PI3Kγ. Numbering of PI3Kα is shown in parentheses まずフェノール誘導体 4 側から見ると, モルホリン部位の酸素原子が PI3Kγ のヒンジ部位である Val882 の主鎖 NH と水素結合を形成しており, リード化合物 1 の設計において期待した通りとなっている. 加えてフェノール部位の水酸基は Asp841 のカルボキシル基および Tyr867 の水酸基と相互作用し, 水酸基の水素結合アクセプターおよびドナーとしての 20

27 機能の発現に適切な位置となっていることが分かる. 水酸基の隣にメチル基を導入した化合物 26 では Asp841 との立体反発が予想され構造活性相関を説明できる. また, このアクセプターおよびドナー双方を有する官能基が大きい場合には Asp841 と Tyr867 の間の空間に入ることができないことから, 化合物 29 や 31, 32 において阻害活性が大きく減弱したことも説明できる. アニリン誘導体 28 においては水素結合ドナーとしての能力が弱いことが阻害活性の減弱に繋がったと考えられる. Figure 11. Structure of compound 26, 28, 29, 31 and 32 続いてアミノピリミジン誘導体 5 は, モルホリン部位の酸素原子がヒンジ部位の Val882 の主鎖 NH と水素結合を形成している点では同様であるが, アミノピリミジン部位は Asp841 および Tyr867 ではなく Lys833 および Asp836 と水素結合を形成している. すなわちピリミジン環の環内の窒素原子が水素結合アクセプターとして Lys833 の側鎖 NH + 3 部位と水素結合を形成し, ピリミジン環上に置換されたアミノ基が水素結合ドナーとして Asp836 のカルボキシル基と水素結合を形成している. 加えてピリミジン環上のアミノ基と Asp841 のカルボキシル基の距離は 3.7Å であり, 水素結合を形成する距離には達しないものの, 弱い静電的な相互作用の余地は残していると思われる. 同様にピリミジン環内のもう一方の窒素原子と Tyr867 の水酸基においてもその距離は 4.3Å とやや離れているが, 弱い静電的な相互作用の可能性がある. アミノピリミジン誘導体 37 とアミノピリジン誘導体 38 で阻害活性に約 10 倍もの差がある点に関しては, Tyr867 の水酸基との弱い相互作用に加えて, アミノピリジン誘導体 37 ではピリジン環の窒素原子が Tyr867 側に向いたコンフォメーションで ATP 結合部位に入ってしまった場合に, この窒素原子が Lys833 の NH + 3 部位と相互作用するコンフォメーションに移行するためのエネルギー障壁を乗り越えなければならないことや, アミノピリミジン誘導体ではアミンの酸性度が上昇し Asp836 のカルボキシル基との水素結合におけるドナー性が強くなっていることなどが推測される. 21

28 Figure 12. Structure of compound 37 and 38 さらに, アミノピリミジン誘導体では ATP 結合部位における分子全体の配置にも変化が見られている. すなわちアミノピリミジン部位が Lys833 の NH + 3 部位および Asp836 のカルボキシル基と相互作用するために,Val822 の主鎖 NH 部位とモルホリン上の酸素原子による水素結合をアンカーとして, 分子全体がフェノール誘導体に比べて溶媒域側へ振れ動いた位置に配置される. キナーゼ阻害剤において,ATP との結合を模擬したヒンジとの相互作用は阻害活性に重要であると同時に,ATP のアデノシンがヒンジ部位と相互作用するように 2 点での水素結合を形成させ, 強い阻害活性を示すものが多く知られている (Figure 13). リガンドがタンパクのヒンジと 2 点で水素結合を形成している場合, リガンドの母核の配置は強固に制限され, そこに変化が生じると水素結合の角度および距離に歪みを生じる可能性が高いと推測される. 一方で, 本研究で用いたヒンジ部位と 1 点で相互作用する化合物においては, 母核の配置に対する制限には柔軟性があると考えられる. このことがフェノール誘導体における Asp841 のカルボキシル基および Tyr867 の水酸基との相互作用を, アミノピリミジン誘導体における Lys833 の NH + 3 部位および Asp836 のカルボキシル基との相互作用へと置き換えることを可能にしている. Figure 13. Hydrogen bond between ATP and hinge region of kinase 22

29 第 1 章小括 本章ではリード化合物 1 の設計から,SBDD を用いた代謝安定性の改善を追求し,in vivo で強い抗腫瘍効果を示す化合物 5 を見出すとともに,X 線共結晶構造解析によって PI3K との相互作用パターンの考察を行った. この間, リード化合物の設計にあたっては, 複数の既存の PI3K 阻害剤から相互作用に重要な部位を推測し, 構造変換が許容されると推測される部位に大きな変換を行い, 望む阻害活性を発現しかつ知的財産に抵触するリスクを回避した化合物 1 を設計した. 得られた本化合物 1 は PI3Kα に対して IC 50 が 8.6 nm という強い阻害活性を示したが, 活性発現に必須のフェノール部位がグルクロン酸による抱合を強く受けることが分かった. そこで, 化合物 4 と PI3Kγの X 線共結晶構造解析の結果をもとにコンピューターによるドッキングシミュレーションを行い, 新たに幾つかの化合物を設計し, 合成し, 評価した. その結果, フェノール部位をアミノピリミジンへ変換した化合物 38 で IC 50 が 26 nm という強い阻害活性が確認された. 加えてこの化合物はグルクロン酸に対する抱合をほとんど受けないことも見出した. フェノール誘導体 4 とアミノピリミジン誘導体 5 それぞれの PI3Kγ との X 線共結晶構造解析から, これら 2 種類の誘導体では水素結合を形成するアミノ酸残基が変化しており, その際に ATP 結合部位における阻害剤の基本骨格が占める位置に変化があることも見出した. アミノピリミジン誘導体から, マウスにおける PK 試験においてバイオアベイラビリティが 41% という良好なプロファイルを示し,p110α の H1047 に変異を持つ乳がん株 KPL-4 を用いたマウスのゼノグラフト試験において 166% TGI という強い抗腫瘍効果を示す化合物 5 を見出すことに成功した. 23

30 第 2 章サルにおけるバイオアベイラビリティの改善 第 1 節 水溶性置換基の導入による溶解性の改善 第 1 章で述べたように, グルクロン酸による抱合の回避に成功した化合物 5 は, マウスにおいて 41% という良好なバイオアベイラビリティを示した. そこで, この化合物に対してサルを用いた PK 試験を行った. しかしながら, そのバイオアベイラビリティ (F) はわずか 5.6% と低いものであった (Table 8). Table 8. Pharmacokinetic data of compound 5 in mouse and monkey バイオアベイラビリティの種差については様々な議論がなされており, 代謝酵素の差 ( 基質特異性, および発現量 ) はその原因の 1 つとして挙げられている 34. また代謝におけるヒトとの相関としてはマウスよりもサルの方がより近いとされることから, サルにおけるバイオアベイラビリティが非常に低いことは, 創薬研究における臨床化合物の選定において大きなリスクとなることを意味する. 加えてこの化合物 5 は, 空腹時の腸液を模した FaSSIF(fasted state simulated intestinal fluid) に対する溶解性が検出限界以下であった. 小腸での溶解性もバイオアベイラビリティに影響を及ぼすことから, この低い溶解性も解決しなければならない課題となった. バイオアベイラビリティは小腸の膜透過性に関する Fa と消化管における代謝に関する Fg, そして肝臓での代謝に関する Fh の積として表わされる (F=Fa x Fg x Fh) 35. 従って代謝だけではなく膜透過性についても考慮しなければならない. この Fa についてはヒトでの Fa と人工脂質膜である PAMPA に対する透過性に相関があることが知られている 化合物 5 の PAMPA に対する透過性は 1.90 x 10-6 cm/s であることから, ヒトでの Fa としては 20% 以上の値が期待できる値であるが, 改善の余地を残している. 以上のことから化合物 5 は溶解性, 代謝安定性, 膜透過性のいずれにおいても改善の余地があった. 24

31 そこでまず, 溶解性の改善を目指して化合物 5 に水溶性置換基の導入を試みた. 化合物 5 におけるモルホリンおよびアミノピリミジン部位は標的タンパク質である PI3K と水素結合を形成する阻害活性に重要な部位である. そこで, 溶性置換基はピリジン部位に導入することとし, その合成中間体として化合物 40 を選定し,Buchwald-Hartwig 反応の適用によって, ピリジン部位の修飾を効率的に行った. 化合物 40 の化合物の合成ルートを Scheme 4 示す. まずトリクロリド 22 に対して, 窒素原子を導入するために 4-メトキシベンジルアミンと反応させて化合物 41 とした. これを閉環し, ジヒドロピロロピリミジン化合物 42 を得た. さらにパラメトキシベンジル基を脱保護してアセチル基へ保護基の付け替えたのちに, 別途調製した化合物 48 との鈴木 宮浦カップリングによって化合物 45 とし, 最後に脱保護し鍵中間体 40 に導いた. Scheme 4. Preparation of key intermediate 40. Reagents and conditions: (a) 4- methoxybenzylamine, DIPEA, CH 3CN, reflux, 68%; (b) Cs 2CO 3, NaI, CH 3CN, reflux; (c) TFA, conc.h 2SO 4, reflux; (d) AcCl, pyridine, DMAP, CH 3CN, 0 C to rt, 92% in 3 steps; (e) 48, Pd(OAc) 2, S-Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C, quant.; (f) 5M NaOH, THF, reflux, 85%; (g) 4- methoxybenzyl chloride, NaH, NaI, THF, rt, 92%; (h) B(OiPr) 3, nbuli, toluene/thf, 78 C; (i) pinacol, MgSO 4, DME, rt, 88% in 2 steps. 25

32 続いて水溶性置換基を導入した化合物 49~51 の合成ルートを Scheme 5 に示す. 必要なピコリンアミドおよびニコチンアミドは対応するカルボン酸のアミド化によって合成し, これらと鍵中間体 40 との Buchwald-Hartwig 反応を行った後, 脱保護し化合物 49~51 に導いた. Scheme 5. Preparation of picolinamides and nicotinamide derivatives 49~51. Reagents and conditions: (a) 53, Pd(OAc) 2, S-Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C; (b) TFA, N-acetylcysteine, 70 C, 38% in 2 steps; (c) 55, Pd 2(dba) 3, S-Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C; (d) TFA, N- acetylcysteine, 70 C, 58% in 2 steps; (e) 57, Pd 2(dba) 3, X-Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C; (f) TFA, N-acetylcysteine, 70 C, 91% in 2 steps; (g) N-methylpiperazine, EDC, HOBt, CH 2Cl 2, 83%; (h) N-methylpiperazine, EDC, HOBt, CH 2Cl 2, 28%; (i) N-methylpiperazine, EDC, HOBt, CH 2Cl 2, 78%. 合成した化合物 49~51 の PI3Kαに対する阻害活性, 溶解性,LM 安定性, 経口投与によるマウス PK 試験の結果を Table 9 に示す. 阻害活性については, 予期した通りいずれの化合物においても水溶性置換基の導入による大きな変化はなく, ピリジン部位の最適化によって種々のプロファイルの改善が可能であることが分かった.FaSSIF における溶解性に関しては, すべての化合物で水溶性置換基の導入による改善効果が見られたが,LM におけ 26

33 る代謝安定性および PAMPA に対する膜透過性は低下する傾向が見られた. 代謝安定性の変化について代謝物の同定は行っていないが, ピペラジン部位の脱メチル化などがその原因の一つであると推定される. また膜透過性に関しては, 水溶性置換基の導入により化合物全体の脂溶性が下がったことが一因と考えられる. これらの化合物の PK 試験ではいずれも経口投与による血中暴露が下がる結果となっおり, 溶解性は改善されたものの総合的には化合物 5 の PK プロファイルより劣るものとなった. Table 9. In vitro and in vivo profiles of picolinamides and nicotinamide derivatives 5 and 49~51 27

34 第 2 節水素結合アクセプターの削減による PK プロファイルの改善 第 1 節では難溶性の 5 への水溶性置換基を導入が, 阻害活性を損なうことなく水溶性の改善が可能であることがを明らかにした. しかしその反面, 代謝安定性と膜透過性については悪化する傾向が見られ,PK プロファイルの改善には至らなかった. 加えてこれらの化合物においては, 水溶性置換基の導入によって分子内に存在する水素結合アクセプターの数が 11 まで増大している (Scheme 6). あくまで経験則ではあるが, 創薬研究における重要な経験則である rule of five では, 経口投与可能な化合物とするためには水素結合アクセプターの数は 10 以下であることが望ましいとされている 36. Scheme 6. Hydrogen bonding acceptor of compound 50 そこで, この 11 まで増えた水素結合アクセプター数の削減を図った. この目的に沿って設計した化合物 58~61 の合成ルートを Scheme 7 に示す. 化合物 58 は鍵中間体 40 とブロモベンゼンとのカップリング反応により合成した. 化合物 59 は 3-ブロモ安息香酸メチルエステルと鍵中間体 40 をカップリングさせ, メチルエステルの加水分解と引き続くアミド化により合成した. 化合物 60 は対応するアミド部位を予め導入した化合物 65 と鍵中間体 40 とのカップリング反応により合成した. 最後に化合物 61 は,4-ブロモベンズアルデヒドのアルデヒド部位を保護した状態で鍵中間体 40 とカップリングし, 温和な酸性条件下で選択的に脱保護して得られる化合物 66 に対する還元的アミノ化反応によって得た. 28

35 Scheme 7. Preparation of benzamides and benzylamine derivatives 58~61. Reagents and conditions: (a) bromobenzene, Pd(OAc) 2, S-Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C; (b) TFA, N- acetylcysteine, 70 C, 80% in 2 steps; (c) 3-bromobenzoic acid methyl ester, Pd(OAc) 2, S- Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C, 86%; (d) 5M NaOH, THF, 30% aq. H 2O 2 reflux; (e) N- methylpiperazine, EDC, HOBt, DIPEA, DMF, 60 C, 71% in 2 steps; (f) TFA, 70 C, 96%; (g) 65, Pd(OAc) 2, S-Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C; (h) TFA, N-acetylcysteine, 70 C, 87% in 2 steps; (i) N-methylpiperazine, EDC, HOBt, CH 2Cl 2, 97%; (j) 2-(4-Bromophenyl)-1,3- dioxolane, Pd 2(dba) 3, X-Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C; (k) THF, 1M HCl, rt, 96% in 2 steps; (l) N-methylpiperazine, NaBH(OAc) 3, AcOH, CH 2Cl 2, rt, 51%; (m) TFA, N-acetylcysteine, 70 C, 90%. 得られた化合物 58~61 の PI3Kα に対する阻害活性, 溶解性,LM 安定性, 経口投与に よるマウス PK 試験の結果を Table 10 に示す. 分子の水素結合アクセプターを減らすため 29

36 に, まず化合物 5 のピリジン環をベンゼン環へ置き換えた化合物 58 の阻害活性を評価した. ピリジン部位の窒素原子については第 1 章の第 1 節で述べたように, フェノール誘導体においては窒素原子の位置が阻害活性の強さに大きな影響を与えることが明らかとなっている. 一方で第 1 章の第 2 節では, アミノピリミジン誘導体ではこの窒素原子の位置は阻害活性の強さに影響を与えないことから, 窒素原子が 3 位にある場合と 4 位にある場合でその相互作用が同等であるか, もしくはいずれの場合でも相互作用には寄与していない可能性を示している. もしこのピリジンの窒素原子が PI3Kαと相互作用をしていないのであれば, このピリジン環をベンゼン環へ置き換えても阻害活性を損なうことなく水素結合アクセプターの数を削減することができるはずである. 実際に対応するベンゼン誘導体 58 の阻害活性を評価したところ, その IC 50 は 35 nm であり 3-ピリジン誘導体 5 の 33 nm と同等であったことから, アミノピリミジン誘導体においてピリジンの窒素原子は阻害活性に寄与していないことが明らかとなった. Table 10. In vitro and in vivo profiles of benzamides and benzylamine derivatives 58~61 30

37 この結果をもとに, 前節で評価した化合物のピリジン環をベンゼン環へ置き換えた化合物 59 および 60, さらにベンズアミド部位をベンジルアミンへ変換した化合物 61 を評価をした. まず 3 位に水溶性置換基が導入された 59 と 49,51 とを比較すると阻害活性は 3~4 倍の減弱に収まっている (120 nm vs 40 nm, 32 nm). 溶解性については変わらず (454 µgl/ml vs 439 µg/ml, 376 µg/ml), マウスの LM における安定性は 4 倍程度改善している (6.2 µl/min/mg vs 27.3 µl/min/mg, 19.7 µl/min/mg). さらに膜透過性については 2 倍程度の改善が見られた ( cm/s vs cm/s, cm/s). マウスにおける経口投与試験では C max が 10 倍程度改善し (1500 ng/ml vs 128 ng/ml, 158 ng/ml), 血中暴露も大きく改善した (4030 ng h/ml vs 188 ng h/ml, 455 ng h/ml). 同様に 4 位に水溶性置換基が導入された化合物 60 と化合物 50 を比較すると阻害活性はほぼ変わらず (14 nm vs 25 nm), 溶解性は大きく改善した (331 µg/ml vs 29 µg/ml). マウスの LM における安定性は 3 倍程減少し (10.8 µl/min/mg vs 3.5 µl/min/mg), 膜透過性についても若干の減弱が見られている ( cm/s vs cm/s). マウスにおける経口投与試験では 3 位に水溶性置換基を導入したものと同様に C max が 10 倍程度改善し (2840 ng/ml vs 326 ng/ml), 血中暴露も大きく改善した (13200 ng h/ml vs 1650 ng h/ml). ピリジン環をベンゼン環に置き換えることで分子の脂溶性は増大するため膜透過性については改善が期待されたが,3 位に水溶性置換基を導入した化合物 59 では改善が見られたのに対して,4 位に水溶性置換基を導入した化合物 60 では改善が見られなかった. またこれら 2 つのグループでは水溶性の変化とマウスの LM における安定性の変化についても異なる傾向が見られたことから, この水素結合アクセプターの数を削減したことによる効果を明確に説明することはできない. しかしながらマウスにおける経口投与試験においては, いずれのグループでも大きな改善が見られた. 加えて水溶性置換基とのリンカーをベンズアミド型からベンジルアミン型へと変換した化合物 61 においても, マウスの経口投与試験において良好な C max と血中暴露を示したことから, この化合物におけるバイオアベイラビリティを測定したところ 61% という高い値を示した. この結果を受けて化合物 61 を用いたサルにおける PK 試験を行った結果を Table 11 に示す. 31

38 Table 11. Pharmacokinetic data of compound 61 in mouse and monkey 化合物 61 のサルにおけるバイオアベイラビリティは 21% であり, 化合物 5 と比較して 4 倍の大きな改善が見られた. 特に経口投与における C max(95.9 ng/ml vs 41.6 ng/ml) と血中暴露 (1080 ng h/ml vs 417 ng h/ml) において改善が見られている. しかしながら, 血中クリアランス値に関しては 33.9 ml/min/kg とさらに改善の余地のある値となっており, バイオアベイラビリティは改善したものの経口投与における血中暴露も未だ十分な値には到達していない結果となった. 32

39 第 3 節水溶性置換基の最適化とオルト位への置換基導入による PK プロファイルの改善 前節までに示したように, サルにおけるバイオアベイラビリティが 5.6% という低い値を示した化合物 5 に対して, 水溶性置換基の導入と水素結合アクセプター数の削減という 2 つの構造変換により, 薬物動態の向上した化合物 61 を見出すことができた. 化合物 61 はサルにおいて 21% というバイオアベイラビリティを示したものの, 血中クリアランス値や血中暴露には改善の余地を残していた. 一方で水溶性置換基としてモルホリンを導入した化合物は LM における代謝安定性が良好で, また PAMPA による膜透過性がより良いものが得られていたことから, この周辺化合物の合成と評価を行った. その合成ルートを Scheme 8 に示す. 化合物 67 は化合物 61 と同様にベンズアルデヒド中間体 66 に対する還元的アミノ化反応により合成した. 化合物 68 は, 鍵中間体 40 と 4-ブロモ 3-フルオロベンズアルデヒドとのカップリング反応により得られるアルデヒド 69 に対する還元的アミノ化反応により合成した. 化合物 6 は, 鍵中間体 40 と 4-ブロモ 3-フルオロ安息香酸とのカップリング反応により得られるカルボン酸 70 に対するアミド化反応により合成した. 33

40 Scheme 8. Preparation of moropholine derivatives 67, 68 and 6. Reagents and conditions: (a) morpholine, NaBH(OAc) 3, AcOH, CH 2Cl 2, rt; (b) TFA, N-acetylcysteine, 70 C, 50% in 2 steps; (c) 4-bromo-3-fluorobenzaldehyde, Pd(OAc) 2, X-Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C, 65%; (d) morpholine, NaBH(OAc) 3, AcOH, CH 2Cl 2, rt; (e) TFA, N-acetylcysteine, 70 C, 52% in 2 steps; (f) 4-bromo-3-fluoro-benzoic acid, Pd 2(dba) 3, X-Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C, 80%; (g) morpholine, EDC, HOBt, CH 2Cl 2; (h) TFA, reflux, 96% in 2 steps. 得られた化合物 67, 68 および 6 の PI3Kαに対する阻害活性, 溶解性,LM 安定性, 経口投与によるマウス PK 試験の結果を Table 12 に示す. 前節で見出した化合物 X の N-メチルピペラジンをモルホリンで置き換えた化合物 67 では LM における代謝安定性が大きく改善し,PAPMA における膜透過性も cm/s と大幅に改善することが分かった. ピペラジンの N-メチル部位をエーテルへ変換したことで脱メチル化に関わる代謝がなくなったことや, 塩基性アミン部が消失し膜透過性が改善されたものと推測される. 一方で溶解性は検出限界以下となっている. このことはアミン部が存在しないことに起因すると考えられるが, 代謝安定性や膜透過性との両立が難しいことを示している. 以上のように水溶性基として導入したモルホリンは, 溶解性の観点からは不十分であったが, 代謝安定性および膜 34

41 透過性の観点で良好な結果を与えた. そこでモルホリンを維持したまま, 溶解性を改善する ことを目的とした構造最適化をさらに追求した. Table 12. In vitro and in vivo profiles of morpholine derivatives 溶解性を向上させるもう 1 つの手段として, 化合物の結晶性を低減させる方法が挙げられる 37. これは溶解過程における分子の結晶からの乖離を促進することで, 速度論的な溶解性を改善させる狙いである 38. 遷移金属を用いたカップリング反応の進歩に伴い, ビアリール化合物の合成が進歩したことの弊害として, 最近の創薬研究の現場には平面性の高い化合物があふれるようになった. 平面性の高い化合物は, 分子同士が重なり合うことで分子間力による安定化を強く受けることから, その強固な結晶構造により速度論的な溶解性を下げると考えられている. 化合物 67 もジヒドロピロロピリミジン骨格を中心に平面性が高く, この平面性の解消が溶解性の改善をもたらすと考えた. 平面性を崩すための手段として置換ベンゼンのオルト位への置換基の導入を選択した. ビアリール化合物のオルト位への置換基の導入が, もう一方のアリール部位との立体反発をもたらし分子の捻じれの誘起を図る手法である. 実際にベンゼン環のオルト位へ F 素原子を導入した化合物 68 では Table 11 に示すように溶解性が 107 µg/ml にまで改善することが分かった.4-フェニルピペラジンのオルト位に F 原子を導入した化合物においては大きな捻じれが生じることが知られているが, 化合物 6 における溶解性の改善が分子の平面性の喪失に起因するか検証として, 35

42 コンピューター化学による化合物の部分構造のエネルギー計算を行った. 計算結果を Figure 14 に示す. Figure 14. B3LYP/6-31+G(d,p) level calculation of N-phenyl dihydropyrrolopyrimidine derivatives. Potential energies were calculated with fixing the torsion φ between 0 and 350 at 10 intervals while other variables were optimized. All calculations were done by the program Gaussian 09. まずオルト位に置換基のない系においては, ジヒドロピロロピリミジン骨格をとベンゼン環が平面になるφ=0 および 180 が最安定コンフォメーションであることが分かる. 一方でオルト位に F 原子が導入された系では,F 原子がピリミジン環側を向いた形で平面構造を取ろうとすると (φ=0 ),F 原子とピリミジン環上の窒素原子がもつ孤立電子対との電子的な反発により不安定となることが分かる. 加えて F 原子がピリミジン環と逆側にくる場合でも平面構造 (φ=180 ) では最安定コンフォメーションとはならず, そこから 30 捻じれた状態 (φ=150 および 180 ) が最も安定なコンフォメーションとなることが分かる. 以上のことからオルト位へ F 原子を導入した化合物 68 においては, その最安定コ 36

43 ンフォメーションが平面構造を失い, 結晶性が低下し溶解性が改善したと考えられる. モルホリン部位を維持しながら溶解性を改善することに成功したが, 化合物 68 は膜透過性こそ化合物 67 と同等であったものの LM における安定性は 10 倍ほど低下し, さらに阻害活性も 5 倍ほど低下した. 代謝安定性の低下の原因は明らかではないが, 阻害活性の低下に関してはこれまでに得られていた構造活性相関から改善が可能であると考えた. すなわち Table 9 においてベンズアミド型の化合物 60 はベンジルアミン型の化合物 61 と比べて 3 倍以上強い阻害活性を有したことから, 化合物 68 をベンズアミド型とすることで阻害活性が改善を図れると考えた. そこで対応する化合物 6 を合成して評価したところ,Table 12 に示すように PI3Kαに対して 42 nm という強い阻害活性を示した. 溶解性は化合物 68 に比し約 3 倍減弱しているが, 化合物 5 に比べると 3 倍以上改善しており, さらなる評価を進めるのに十分な値となっている. この溶解性の減弱は新たに導入されたカルボニル基を介した分子間水素結合が生じ, 結晶性が増大したためと推測される. 化合物 6 は LM に対する安定性においてこれまで評価した化合物の中で最も良い値を示し,PAMPA における膜透過性も cm/s と良好であったことから, マウスおよびサルにおける PK 試験を実施した. その結果を Table 13 に示す. Table 13. Pharmacokinetic data of compound 6 in mouse and monkey マウスでの PK 試験では血中クリアランス値, 経口投与における C max および血中暴露はいずれも大きく改善し, バイオアベイラビリティは 86% に達している. この傾向はサルにおいても同様であり, 血中クリアランス値は 7.54 ml/min/kg と化合物 5 と比べて 3 倍改善した. 経口投与における Cmax は 1060 ng/ml と 25 倍改善し, 血中暴露おいても ng h/ml と 25 倍改善している. バイオアベイラビリティにおいても 47% と 8 倍改善する結果となった. 37

44 第 2 章小括 第 1 章で得られた化合物 5 がサルにおいて低いバイオアベイラビリティを示したことからその改善を検討した. まず溶解性を改善するために水溶性置換基の導入を行い, アミド結合をリンカーとして N-メチルピペラジンを導入したところいずれも FaSSIF における溶解性が改善した. しかしながらこれらの化合物では PK プロファイルの改善には至らなかった. そこでさらなる構造最適化の試みとして, 水溶性置換基の導入により rule of five に抵触していた水素結合アクセプターの数を減らした化合物を評価したところ, すべての化合物でマウスにおける血中暴露が改善した. 水素結合アクセプター数の削減にあたってはピリジン部位の窒素原子を炭素原子へ置き換えたが, この部位の窒素原子はフェノール誘導体において阻害活性の発現に必須の官能基であった. 一方, アミノピリミジン誘導体においては炭素原子への置き換えが阻害活性を損なうことなく可能であることが明らかとなり, 構造活性相関に変化があることを見出した. さらに水溶性置換基をベンズアミド型からベンジルアミン型へ変換した化合物 61 ではマウスにおけるバイオアベイラビリティの改善が確認され, サルにおける経口投与試験でもバイオアベイラビリティは 21% にまで改善した. しかしながら, 化合物 61 はその PK 試験おける大きい血中クリアランス値やその血中暴露の低さが課題であった. そこで見出したモルホリン誘導体の代謝安定性と良好な膜透過性に着目し, 溶解性の改善を図り目的を達成した. すなわち, 溶解性の低さが分子の平面性に由来することに着目し, 適切な位置への置換基の導入により平面性の解消を図り溶解性の改善されたモルホリン部を保持するフッ素化合物 68 を得ることに成功した. この化合物の最安定コンフォーメーションが非平面性であることもコンピュータ計算によって検証した. さらに非平面化による溶解性の改善とこれまでの構造相関をもとに 68 モルホリン部の最適化を図り阻害活性の改善されたアミド化合物 6 を見出した. 化合物 6 はマウスおよびサルの PK 試験において良好な結果を示し, サルにおけるバイオアベイラビリティは 47% となり化合物 5 と比べて 8 倍の改善を達成することに成功した. 38

45 第 3 章分子の平面性解消による溶解性と PK プロファイルの改善 第 1 節メチル基の導入による溶解性向上の試みと阻害活性 第 1 章で得られた化合物 5 では, モルホリン部位とアミノピリミジン部位が阻害活性に強く寄与していた. この 2 つの部位を維持し, ジヒドロピロロピリミジン骨格の N 原子に様々な置換基を導入した化合物について構造活性相関を追求したところ, ウレアをリンカーとしてフェニル基を導入した化合物 7 が PI3Kα に対して 13 nm というこれまでで最も強い阻害活性を示した (Table 14). Table 14. In vitro and in vivo profiles of phenyl urea derivatives. そこで化合物 7 と,PI3Kα とのドッキングシミュレーションを行ったところ, ウレアの先端に伸びたフェニル基は W780 の側鎖インドール部位に対して疎水性の相互作用をもたらし, さらに R770 の側鎖 NH + 3 部位との間にカチオン π 相互作用もたらしていることが示唆された (Figure 15). ウレアリンカーを介さない場合も, フェニル基と W780 との相互作用については同様に期待できる. 一方で,R770 とのカチオン π 相互作用は, フェニル基との距離が 5Å を超えることから相互作用は減弱するものと考えられる 39. 以上のこと 39

46 から, フェニルウレア誘導体においては R770 との相互作用を獲得するにより強力な阻害活 性を発現しているものと推測できる. Figure 15. Docking simulation of phenylurea compound 7 with PI3Kα. Based on the X-ray structure information of PI3Kα (PDB: 3ZIM) and the X-ray structure of our dihydropyrrolopyrimidine PI3K inhibitor with PI3Kγ (PDB: 3APD), compound 7 (green) was docked with PI3Kα X-ray structure (ribbon). V851 and amino acid side chains of R770 and W780 were shown in stick form. 以上のようにフェニルウレア誘導体である化合物 7 は PI3Kαに対して強い阻害活性を示したが,FaSSIF に対する溶解性は 3 µg/ml 以下と非常に低いものであった. この低い溶解性は, 第 2 章でも述べたように分子の高い平面性による強固な結晶性に起因している. マウスでの PK 試験においても経口投与による血中暴露がわずか 437 ng h/ml であり,in vivo での抗腫瘍活性は期待できないものであった (Table 13). そこで化合物 7 の強い阻害活性を保持しつつ, 溶解性を向上させて PK プロファイルを向上させることを検討した. 低溶解性の原因と考えられる分子の平面性を崩すために 7 の構造をもとに設計 合成し, 評価した. その合成ルートを Scheme 9 および Scheme 10 に示す. 最初のフェニルウレア化合物 7 は, 第 2 章でも用いた鍵中間体 40 に対するフェニルイソシアナートとのウレア結合形成によって合成した. ウレア部位の N 原子上にメチル基を導入した化合物 71 は, 鍵中間体 40 にトリホスゲンと N-メチルアニリンを反応させて合成した (Scheme 9), またアミノ 40

47 ピリミジン側にメチル基を導入した化合物 72 は, 化合物 39 から鈴木 宮浦カップリング の適用によって合成した (Scheme 10). Scheme 9. Preparation of phenyl urea derivatives 7 and 71. Reagents and conditions: (a) phenyl isocyanate, TEA, DCE, reflux, 51%; (b) TFA, conc.h 2SO 4, 40 C, 82%; (c) triphosgene, pyridine, DCM, rt; (d) N-methylaniline, DCM, rt; (e) TFA, N-acetylcysteine, reflux, 49% in 3 steps. Scheme 10. Preparation of ortho-methyl compound 72. Reagents and conditions: (a) 4- methoxybenzyl chloride, NaH, NaI, THF, rt, 79%; (b) B(OiPr) 3, nbuli, toluene/thf, -78 C; (c) pinacol, MgSO 4, DME, rt, 78% in 2 steps; (d) 75, Pd(OAc) 2, S-Phos, K 3PO 4, DMF, 100 C; (e) TFA, conc.h 2SO 4, 40 C, 43% in 2 steps. 41

48 ウレアをリンカーとした化合物においては,Figure 16 に示すようにウレアの N 原子上の H 原子と, ピリミジン骨格の N 原子との分子内水素結合により, 分子の平面性をより強固にしていると考えられる. そこでこの分子内水素結合を形成させないよう, ウレアの N 原子をメチル化した化合物 71 を評価したが, 溶解性の改善は見られず阻害活性が 10 倍低下する結果となった (Table 13). 阻害活性の減弱からも分子の平面性は崩れていると推測できるが, 溶解性が改善しなかった点に関しては化合物の脂溶性の増大や, 水分子との溶媒和に不利な変換であったことなどが考えられる. Figure 16 Estimated intramolecular hydrogen bonding in compound 7 ウレア部位 2 級窒素原子上へのメチル基導入により分子内水素結合を解消を図る戦略では, 溶解性と阻害活性の両面で好結果をもたらさなかった. そこで別の部位への置換基導入により平面性を解消し, 溶解性の改善させることを検討した. アミノピリミジン部位のオルト位へメチル基を導入によりビアリール系の平面性を崩す化合物 72 を評価したところ, FaSSIF に対して 56 µg/ml の溶解性を示し, 平面性の崩壊が溶解性の向上に有効であることを示唆した (Table 15). 化合物 72 はフェニルウレア誘導体ではないが, 対応するメチル基の導入されていない化合物 5 に比して大きく溶解性が改善したことから, フェニルウレア誘導体においても効果が期待できる. しかしながら阻害活性についてはメチル基の導入によって約 8 倍減弱した. 第 1 章でも示した化合物 5 と PI3Kγの X 線共結晶構造解析の結果から, ジヒドロピロロピリミジン骨格とアミノピリミジン部位は PI3K と相互作用する際に平面構造を取っていることが明らかにされており, この部分の平面性の解消は活性発現の鍵となる水素結合の距離や角度に不利な影響を与えていると考えられる. 以上のことか 42

49 らアミノピリミジン部位でのオルト位への置換基導入は, 溶解性の改善は期待できるもの の阻害活性を維持することは難しいと判断した. Table 15. In vitro profiles of ortho substituted compounds (1) 43

50 第 2 節フェニルウレアのオルト位への置換基導入の試み 第 1 節においては分子内水素結合の解消やビアリール系の平面性の解消を図るメチル基の導入について検討したが, 阻害活性を減弱させることなく溶解性を改善することはできなかった. そこで他の部位への置換基導入によって分子の平面性の解消を図ろうと, フェニルウレアのオルト位へ置換基を導入した化合物の合成 評価を行った. 合成ルートを Scheme 11 に示す. 化合物 76~78 はいずれも鍵中間体 40 とトリホスゲンから調製される塩化カルバモイル中間体に対して, 対応するアリニン誘導体を反応させ合成した. Scheme 11. Preparation of phenyl urea derivatives 76~78. Reagents and conditions: (a) triphosgene, pyridine, DCM, rt; (b) aniline, DCM, rt; (c) TFA, N-acetylcysteine, reflux, 68% in 3 steps (76), 56% in 3 steps (77), 57% in 3 steps (78). 得られた化合物の PI3Kαに対する阻害活性と FaSSIF に対する溶解性を Table 16 に示す. いずれの化合物においても FaSSIF への溶解性に関しては数字上の変化が出ていないが,PI3Kαへの阻害活性が減弱している. この部位へのメチル基の導入により PI3Kαとの立体反発が生じることは考えにくいため, この阻害活性の減弱はフェニル部位の捻じれにより R770 もしくは W780 との相互作用が減弱したことによると推測される. フェニルウレアのオルト位へアルキル基を導入した場合, 導入したアルキル基がカルボニル基との立体的な反発を避けるために, アルキル基がカルボニル基の逆側に配位するコンフォメーションが安定である. この際にアルキル基の先にはモルホリンのメチレンが存在し, その立体反発を避けるためにフェニル基が捻じれるものと考えられる. この仮説を検証するために, 化 44

51 合物の最安定コンフォメーションをコンピューター計算によって算出した. 結果を Figure 17 に示す. Table 16. In vitro profiles of ortho substituted compounds 76 ~ 78 Figure 17. B3LYP/6-31+G(d,p) level calculation of phenylurea derivatives (1). Most stable conformations and torsions of each compound were shown. All calculations were done by the program Gaussian

52 Figure 17(a) に示したように, モルホリン部位を有さずジヒドロピロロピリミジン骨格に対してオルトメチルフェニルウレアが結合した構造では, 完全に平面となるコンフォメーションが最安定である. これは共役系が伸びることに加えて, オルト位のメチル基がピリミジンの N 原子がもつ孤立電子対との好ましい静電相互作用をすることによるものと考えられる 40, 41. 一方で Figure 17(b) に示すようにモルホリン部位を含めて計算を行うと, その最安定コンフォメーションはフェニル基が捻じれたものとなることが分かった. これは先述のようにオルト位のメチル基がモルホリンのメチレンとの立体的な反発を避けるためと考えられる. また,Table 16 ではよりかさ高いアルキル基を導入したものにおいて, より活性が減弱する傾向となっているが, この点については 2 つの可能性が考えられる.1 つ目の可能性としてはかさ高いアルキル基ほど立体反発を避けるためにはフェニル基がより大きく捻じれ, その場合に第 1 節で示した W780 および R770 との相互作用に不利に働く可能性である.2 つ目の可能性としてはアルキル基そのものが PI3K との立体的な反発に寄与している可能性である. 実際にどちらの寄与によるものなのか, もしくはどちらの寄与が大きいのかは明らかでないが, 阻害活性の観点からは導入する置換基はメチル基程度の大きさのものが好ましいと結論される. 46

53 第 3 節オルト位への置換基導入と水溶性置換基導入による PK プロファイルの改善 第 2 節においては, フェニルウレアのオルト位への置換基導入によって分子の平面性が解消される可能性が示唆されたが, 溶解性の改善は不十分であった. そこで導入するオルト位置換基の種類と, 水溶性置換基の導入を検討した. 検討のために合成した化合物 79, 80 および 8 の合成ルートを Scheme 12 に示す. それぞれの化合物は鍵中間体 40 から調製可能な塩化カルバモイルに, 対応するアニリン誘導体を反応させ得た. 必要なアニリン誘導体の合成に関しては,83 は化合物 81 のアミド化とニトロ基の還元によって得られた.86 はニトロベンゼン誘導体 84 に対する SnAr 反応によってアミノ基を導入し, ニトロ基を還元することで得られた.89 はアミノ基を持つ基質との Buchwald-Hartwig 反応の適用により得られた. Scheme 12. Preparation of phenyl urea derivatives with solubilizing group. Reagents and conditions: (a) N-ethylpiperazine, EDC HCl, DMAP, DCM, rt, 79%; (b) Pd/C, H 2 gas, MeOH, rt, 96%; (c) triphosgene, pyridine, DCM, rt; (d) 83, DCM, rt; (e) TFA, N-acetylcysteine, reflux, 19% in 3 steps; (f) N-ethylpiperazine, K 2CO 3, DMSO, 80 C; (g) Zn, NH 4Cl, MeOH, rt, 90% in 2 steps; (h) Phosgene, DCM/sat.NaHCO 3 aq. = 1/1, rt; (i) 86, TEA, DCE, rt; (j) TFA, reflux, 76% in 3 steps; (k) (Boc) 2O, DMAP, DMF, rt; (l) N-ethylpiperazine, Pd(OAc) 2, S-Phos, tbuok, toluene, 60 C, 20% in 2 steps; (m) 6M-HCl/EtOAc, rt, 91%; (o) Triphosgene, Pyridine, DCM, rt; (p) 89, DCM, rt; (q) TFA, N-acetylcysteine, reflux, 52% in 3 steps. 47

54 得られた化合物の阻害活性, 溶解性とマウスにおける PK 試験の結果を Table 17 に示す. 第 2 節での結果からオルト位への置換基としては活性の減弱が少ないメチル基を最初に選択し, これに水溶性置換基としてアミド結合を介して N-エチルピペラジンを導入した化合物 79 を評価した.Table 17 に示すように化合物 79 は PI3Kαに対して 26 nm という強い阻害活性を示したが,FaSSIF に対する溶解性は検出限界以下であった.N-エチルピペラジンをフェニル基に直接導入した化合物 80 においては,PI3Kαに対する阻害活性が 10 nm と非常に強いものとなったが, 溶解性については改善が見られなかった. ここで水溶性置換基としてはより阻害活性の強い N-エチルピペラジンを直接結合させたものを採用し, オルト位置換基として F 原子を 2 つ導入した化合物 8 を評価した. その結果,FaSSIF に対して 20 µg/ml の溶解性を示し,PI3Kαに対しても 22 nm という強い阻害活性を示した. 化合物 7 に対して阻害活性を維持しつつ, 溶解性の改善したこの化合物 8 を用いてマウスでの経口投与による PK 試験を行ったところ, 化合物 7 に比べて Cmax で約 5 倍,AUC で約 10 倍向上した. Table 17. In vitro and in vivo profiles of ortho substituted compounds with solubilizing group 1 Prostate cancer, PTEN negative 48

55 F 原子をオルト位に導入した場合は, その小ささから第 2 節で述べたモルホリン部位との立体反発は期待できないが, 両オルト位に F 原子をもつ化合物 8 ではウレアのカルボニル基との電子的な反発のためにフェニル基に捻じれが生じるものと考えられる. また化合物 80 と化合物 8 を比較から, メチル基を 1 つ導入するよりも F 原子を 2 つ導入する方がより捻じれが大きく, 阻害活性は減弱するものの溶解性では改善が見られたと推測される. これを確認するために, 第 2 節でのメチル基と同様にエネルギー計算を行った結果を Figure 18 に示す. Figure 18. B3LYP/6-31+G(d,p) level calculation of phenylurea derivatives (2). Most stable conformations and torsions of each compound were shown. All calculations were done by the program Gaussian 09. まず F 原子が 1 つだけオルト位に導入された化合物についての計算したところ,Figure 18(a) に示されるようにほぼ平面となるコンフォメーションが最も安定であることが分かった. これは導入された F 原子がウレアの NH との好ましい静電相互作用をするためと考えられる. これに対して Figure 18(b) に示されるように,F 原子を 2 つ導入した化合物の場合にはフェニル基が捻じれるコンフォメーションが最安定となることが分かった. 加えてその 2 面角は 125 となっており,Figure 17(b) で示したメチル基を導入した場合の 33 より大きい. この結果に対応して化合物 8 では化合物 80 と比べて阻害活性が減弱してい 49

56 る. これは Figure 17 での考察と同様フェニル基がより捻じれることで, 周辺の W780 お よび R770 との相互作用に最も適切なフェニル基の配置から逸脱していくことによるもの と考えられる. 50

57 第 4 節化合物 8 の in vivo における抗腫瘍効果 第 3 節において化合物 8 は PI3Kαに対して,22 nm の強い阻害活性を示し, かつ FaSSIF に対して 20 µg/ml の溶解性を示し, さらにマウスにおける経口投与でも一定の血中暴露を示したことから,in vivo における薬効試験を実施した. 第 3 節の Table 16 に示したように, 化合物 8 は PI3Kβに対しても 7 nm の強い阻害活性を示したことから, 細胞株は PC-3 細胞を選択した. 序論において述べたように,PI3Kβ に対する阻害剤は PTEN の不活性化されたがん細胞株に対して増殖抑制効果を示すことが知られている.PC-3 細胞は PTEN の不活性化された前立腺がんの細胞株であり, 化合物 8 による増殖抑制効果を確認したところ,in vitro において 58 nm という強い活性を示した. 以上の結果をもとに, ヌードマウスに PC3 細胞を移植したゼノグラフトモデルにおける抗腫瘍効果を確認した. その結果,Figure 19 に示すように化合物 8 は 6.25 mg/kg の投与量において体重減少なく 82% TGI という強い増殖抑制効果を示した. Figure 19. In vivo antitumor activity of compound 8 in mouse PC-3 xenograft models. 51

58 第 3 章小括 本章では PI3Kα に対して強い阻害活性を示したフェニルウレア誘導体 7 をもとに, 活性を保持したより高い PK プロファイルを持つ誘導体への改善を検討した. 水溶性改善にあたっては第 2 章において有力な手法であることを確認した分子の平面性を解消させる手法を適用して検討した. その結果, 阻害活性を損なわずに平面性を解消する最適な置換基と導入位置を見出し, 目的を達成した. まず, 分子の平面性に寄与していると考えられる分子内水素結合を解消するために, ウレアリンカーの NH 部位を NMe と変換したが, 溶解性の改善は確認できなかった. これに対してアミノピリミジン部位のオルト位にメチル基を導入すると溶解性は大きく向上した. しかしながら, 阻害活性は 8 倍減弱した. 一方で, フェニルウレア部位のオルト位へメチル基を導入した化合物 76 では, 阻害活性の減弱を最小限にとどめ, かつ分子の平面性を解消することができた. これに対し水溶性置換基を導入し, 両オルト位へ F 原子を導入した化合物 8 は FaSSIF に対して 20 µg/ml の溶解性を示し, 加えて PI3Kα に対しても 22 nm という強い阻害活性を示した. すなわち, 化合物 8 は溶解性と阻害活性を両立した化合物であり, マウスでの経口投与試験においても構造最適化を行う前の化合物 7 と比べて 10 倍以上高い血中暴露を示した. さらに化合物 8 は PI3Kβ に対しても 7 nm という強い阻害活性を示し,PI3Kβの阻害により抗腫瘍効果が期待できる PC-3 細胞を用いた in vivo 試験においても,6.25 mg/kg の投与量において 82% TGI という強い抗腫瘍効果を示すことを見出した. 52

59 結論 本研究は細胞内のリン酸化タンパク質である PI3K(phosphoinositide 3-kinase) のリン酸化機能阻害による大腸がん, 前立腺がん, 乳がんなどの各種がんの治療薬の開発を目的として行われた. すなわち,Class I PI3K に属し各種がんの標的として重要なアイソフォームである p110α,p110β,p110δ のうち, 現在までに承認を受けた p110δ のリン酸化機能を標的とした idelalisib に加わる p110α および p100β のリン酸化機能阻害剤の創製を目指した. その結果, マウスを用いた in vivo 試験において顕著な抗腫瘍効果を示す化合物 5 および 8 を見出すことに成功した. 化合物 5 はさらに PK プロファイルを改善し, 経口投与の期待できる化合物 6 へと導くことに成功した. 化合物 5 は乳がんの細胞株である KPL-4 細胞に対して,in vivo にて 166% TGI という非常に強い抗腫瘍効果を示した.KPL-4 細胞は p110α に H1047R 変異を持つ細胞株である. この変異は多くのがん細胞株に見られ, かつ p110α によるリン酸化機能を活性化してがん細胞の増殖を亢進させる. このことから, 化合物 5 は p110α の阻害剤として有望な化合物である. 一方で, 化合物 5 はサルを用いた PK 試験において非常に低いバイオアベイラビリティを示したことから, 経口投与を可能にするためにさらなる構造最適化を行った. 水溶性置換基としてモルホリンを導入した化合物は膜透過性と代謝安定性の面で優れたプロファイルを示したが, 分子の平面性に由来すると想定される低水溶性の改善が望まれた. そこでビアリール部のオルト位への置換基導入による脱平面化をはかり, 膜透過性と代謝安定性を維持したまま水溶性が改善された化合物 6 を見出した. 化合物 6 はサルにおけるバイオアベイラビリティが 47% にまで改善しており, ヒトにおいても経口投与が期待できる化合物である. 化合物 8 は前立腺がんの細胞株である PC3 細胞に対して,in vivo にて 82% TGI という強い抗腫瘍効果を示した.PC3 細胞は腫瘍抑制因子である PTEN が不活性化された細胞株であり, そのような細胞株においては p110β を阻害することによって細胞の増殖を抑制できることが知られている. 化合物 8 は p110β に対して IC 50 = 7 nm という強い阻害活性を示し, かつ in vivo においても PC3 細胞に対して強い抗腫瘍効果を示したことから,p110β の阻害剤として有望な化合物であると認識されよう. 53

60 以上, 本研究によって p110α および p110β のリン酸化機能を標的とする新規 PI3K 阻害剤を見出すことに成功した. これら 2 つのタンパクによるリン酸化機能はオンコロジー領域における重要な標的でありながら, 未だに承認を受けた阻害剤はなく, 本研究の成果は各種がんの治療に貢献が期待できるものである. 本研究に関連して, 筆者の属する研究機関では第 1 章で見出したアミノピリミジン誘導体をもとに臨床候補化合物 CH が見出されている (Figure 20). グルクロン酸抱合に対して著しく不安定であったフェノール部位を SBDD の手法によって活性を損なうことなくアミノピリミジンへ変換することに成功した本研究の成果が, 臨床試験の現場においてもがん治療の一助となることが期待される. O N N N N H 2 N N N S O O Figure 20. Structure of CH

61 実験の部 本研究では, 化合物の分析に以下の機器を用いた. 1H, 13C NMR スペクトル JEOL JNM-EX270 (270 MHz), JEOL JNM-EX400 (400 MHz), JNM-GSX400 (400 MHz), Bruker Ascend400 (400 MHz). 化学シフトは値を ppm 単位で記載し, 内部標準としてテトラメチルシラン (0.00 ppm) を用いた. 高分解能質量分析スペクトル (HRMS) Thermo Fisher Scientific LTQ Orbitrap XL MS spectrometer (ESI) もしくは I-Class/Xevo G2S TOF (ESI). Liquid chromatography/mass spectrum(lcms) 分析 Waters HPLC system(zmd もしくは ZQ もしくは SQD) シリカゲルクロマトグラフィー Biotage SNAP カートリッジもしくは SILICYCLE SiliaSep カラムもしくは Merck silica gel

62 合成実験 3-(3-Methoxybenzoyl)-dihydro-furan-2-one (13) の合成 γ-butyrolactone (2 g, 23.3 mmol) の脱水 THF (250 ml) 溶液を窒素雰囲気下 -78 に冷却し,3-methoxybenzoyl chloride (4.17 g, 24.5 mmol) の脱水 THF 溶液を加え,LHMDS (1M in THF, 46.6 ml, 46.6 mmol) をゆっくりと加えた. これを 1 時間撹拌後,-78 にて飽和 NaHCO 3 水溶液 (50 ml) を加えてクエンチし,EtOAc (200 ml) で抽出後, 飽和 NaCl 水溶液 (200 ml x 2) で有機層を洗浄した. これを無水 Na 2SO 4 で乾燥後, 減圧下溶媒を除去し粗生成物を黄色のオイルとして得た. これをシリカゲルクロマトグラフィー (nhexane/etoac=50/50) により精製し, 目的化合物を黄色固体として得た (1.84 g, 36%). 1H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.66 (1H, dt, J = 7.7, 1.1 Hz), 7.57 (1H, dd, J = 2.5, 1.7 Hz), 7.42 (1H, t, J = 8.0 Hz), 7.16 (1H, ddd, J = 8.3, 2.7, 0.9 Hz), (2H, m), (1H, m), 3.86 (3H, s), (1H, m), (1H, m); MS (ESI) m/z: 221 [M+H] +. 5-(2-Hydroxyethyl)-6-(3-methoxyphenyl)-2-morpholin-4-yl-pyrimidin-4-ol (14) の合成 Morpholinoformamidine hydrobromide (200 mg, mmol) と 13 (419 mg, 1.90 mmol), tbuona (183 mg, 1.90 mmol) を microwave 反応試験に加え,tBuOH (3 ml) に溶解した. Microwave を 1 時間照射 (200W, 120 ) した後, 減圧下溶媒を除去し粗生成物を茶色の固体として得た. これをシリカゲルクロマトグラフィー (DCM/MeOH=95/5) により精製し, 目的化合物を無色固体として得た (88 mg, 28%). 1 H-NMR (400 MHz, CDCl3) δ: 7.33 (1H, t, J = 7.8 Hz), (2H, m), (1H, m), 3.82 (3H, s), (6H, m), (4H, m), 2.70 (2H, t, J = 5.5 Hz); MS (ESI) m/z: 332 [M+H] +. 4-[4-Chloro-5-(2-chloroethyl)-6-(3-methoxyphenyl)-pyrimidin-2-yl]-morpholine (15) の合成 14 (220 mg, 0.66 mmol) を POCl 3 (5 ml) に溶解し, 封官チューブ中で 24 時間 110 に加熱した. 減圧下溶媒を除去し粗生成物を茶色のオイルとして得た. これをシリカゲルクロマトグラフィー (n-hexane/etoac=9/1) により精製し, 目的化合物を黄色オイルとして得 56

63 た (244 mg, 100%). 1 H-NMR (400 MHz, CD 3OD) δ: 7.40 (1H, t, J = 8.1 Hz), (1H, m), (2H, m), 3.83 (3H, s), (4H, m), (4H, m), 3.55 (2H, t, J = 8.0 Hz), 3.06 (2H, t, J = 8.0 Hz); MS (ESI) m/z: 368 [M+H] +. 4-(3-Methoxyphenyl)-2-morpholin-4-yl-7-pyridin-4-yl-6,7-dihydro-5H-pyrrolo[2,3- d]pyrimidine (16) (Ar=Py-4-yl) の合成 15 (300 mg, 0.82 mmol), Pd 2(dba) 3 (37 mg, 0.04 mmol), 1,3-bis(2,6- diisopropylphenyl)imidazol-2-ylidene (IPr) (53 mg, 0.12 mmol), tbuona (183 mg, 190 mmol) と 4-aminopyridine (192 mg, 2.05 mmol) を microwave 反応用試験管に加え, 窒素ガスを吹き受け 1,4-dioxane (3 ml) に溶解した.Microwave を 1 時間照射 (300W, 160 ) した後, 減圧下溶媒を除去し粗生成物を黄色のオイルとして得た. これをシリカゲルクロマトグラフィー (DCM/MeOH=9/1) により精製し, を無色固体として得た (150 mg, 39%). 1 H-NMR (400 MHz, CDCl 3) δ: 8.51 (2H, dd, J = 4.9, 1.5 Hz), 7.73 (2H, dd, J = 4.9, 1.5 Hz), 7.39 (1H, t, 7.9 Hz), (2H, m), (1H, m), 4.05 (2H, m), 3.86 (11H, m), 3.36 (2H, m); MS (ESI) m/z: 390 [M+H] +. 3-(2-Morpholin-4-yl-7-pyridin-4-yl-6,7-dihydro-5H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl)-phenol (1) の合成 16 (Ar=Py-4-yl) (50 mg, 0.13 mmol) の DMF 溶液 (3 ml) を 150 に加熱し,EtSNa (105 mg, mmol) を 15 分毎に 1 滴ずつ,3 回に分けて加えた.15 分間 150 で加熱後冷却し,H 2O (1 ml) を加えてクエンチした. 減圧下溶媒を除去し, シリカゲルクロマトグラフィー (DCM/MeOH=94/6) により精製し, 無色固体として得た. これを H 2O で洗浄し, 目的化合物を無色の固体として得た.( 13 mg, 27%). 1 H-NMR (400 MHz, DMSO-d 6) δ: 9.60 (1H, S), 8.44 (2H, dd, J = 4.9, 1.5 Hz), 7.81 (2H, d, J = 5.0, 1.6 Hz), 7.40 (1H, t, J = 1.7 Hz), 7.34 (1H, d, J = 8.1 Hz), 7.28 (1H, t, J = 7.8 Hz), 6.85 (1H, ddd, J = 7.9, 2.3, 1.0 Hz), 4.08 (2H, t, J = 8.2 Hz), (8H, m), 3.28 (2H, t, J = 8.1 Hz); MS (ESI) m/z: 376 [M+H] +. 3-[7-(1H-Benzimidazol-5-yl)-2-morpholino-5,6-dihydropyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-57

64 yl]phenol (4) の合成化合物 1 と同様の手法で, 化合物 15 と 6-aminobenzimidazole から化合物 4 を得た. 1 H- NMR (400 MHz, DMSO-d 6) δ: (1H, s), 9.54 (1H, s), (1H, m), (1H, m), (2H, m), (1H, m), 7.34 (1H, d, J = 7.9 Hz), 7.27 (1H, t, J = 7.8 Hz), 6.83 (1H, dd, J = 7.5, 2.0 Hz), 4.14 (2H, J = 8.1 Hz), (8H, m), 3.28 (2H, t, J = 8.1 Hz); MS (ESI) m/z: 415 [M+H] +. 3-[2-Morpholino-7-(3-pyridyl)-5,6-dihydropyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl]phenol (17) の合成化合物 1 と同様の手法で, 化合物 15 と 3-aminopyridine から化合物 17 を淡黄色の固体として得た. 1 H-NMR (DMSO-d 6) δ: 9.53 (1H, s), 9.09 (1H, s), (2H, m), (2H, m), 7.35 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.29 (1H, t, J = 7.8 Hz), 6.85 (1H, d, J = 8.1 Hz), 4.12 (2H, t, J = 8.3 Hz), (8H, m), (2H, br m); MS (ESI) m/z: 376 [M+H] +. 3-[2-Morpholino-7-(2-pyridyl)-5,6-dihydropyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl]phenol (18) の合成化合物 1 と同様の手法で, 化合物 15 と 2-aminopyridine から化合物 18 を得た. 1 H-NMR (DMSO-d 6) δ: 9.54 (1H, s), 8.59 (1H, d, J = 8.6 Hz), 8.36 (1H, d, J = 3.8 Hz), 7.82 (1H, t, J = 8.1 Hz), 7.41 (1H, s), 7.36 (1H, d, J = 7.5 Hz), 7.29 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.02 (1H, t, J = 6.2 Hz), 6.85 (1H, d, J = 8.1 Hz), 4.25 (2H, t, J = 8.3 Hz), (9H, m), 3.25 (4H, t, J = 8.3 Hz); MS (ESI) m/z: 376 [M+H] +. 2-Oxo-tetrahydro-furan-3-carboxylic acid methyl ester (20) の合成化合物 13 と同様の手法で,γ-butyrolactone と dimethyl carbonate から化合物 20 を淡褐色のオイルとして得た (82%). 1 H-NMR (270 MHz, CDCl 3) δ: (1H, m), (1H, m), 3.66 (3H, s), 3.42 (1H, dd, J = 9.4, 7.8 Hz), (1H, m), (1H, m); MS (ESI) m/z: 145 [M+H] +. 58

65 4-[4,6-Dichloro-5-(2-chloroethyl)-pyrimidin-2-yl]-morpholine (22) の合成 Na (3.19 g) と MeOH (140 m) から調製した 1M MeONa 溶液に 20 (13.3 g, 92 mmol) と morpholinoformamidine hydrochloride (15.3 g, 92 mmol) を加え 2 時間加熱還流した. これを減圧下溶媒を除去して得られる 5-(2-hydroxyethyl)-2-morpholin-4-yl-pyrimidine-4,6-diol (21) の粗生成物を POCl 3 (90 ml) に溶解し,100 で 10 時間加熱還流した. これを減圧下溶媒を除去し, 残差に氷 ( 約 100 g) を加え,5M NaOH 水溶液で中和後,EtOAc で 2 回抽出した. 有機層を飽和 NaCl 水溶液で洗浄後, 無水 Na 2SO 4 で乾燥し, 減圧下溶媒を除去し粗生成物を得た. これをシリカゲルクロマトグラフィー (n-hexane/etoac=20/1~10/1) により精製し, 目的化合物を黄色粉末として得た (8.4 g, 28%). 1 H-NMR (400 MHz, DMSO-d 6) δ: (8H, m), 3.66 (2H, t, J =7.9 Hz), 3.20 (2H, t, J = 7.9 Hz); MS (ESI) m/z: 296 [M+H] +. 4-(4-Chloro-7-phenyl-5,6-dihydropyrrolo[2,3-d]pyrimidin-2-yl)morpholine (23) の合成化合物 25 と同様の手法で, 化合物 22 と aniline から化合物 23 を得た (78%). 1 H-NMR (DMSO-d 6) δ: 7.78 (2H, d, J = 7.9 Hz), 7.39 (2H, t, J = 8.0 Hz), 7.06 (1H, t, J = 7.3 Hz), 4.10 (2H, t, J = 8.4 Hz), 3.65 (8H, s), 2.99 (2H, t, J = 8.4 Hz). 3-(2-Morpholino-7-phenyl-5,6-dihydropyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl)phenol (19) の合成 23 (32 mg, 0.10 mmol), 3-hydroxyphenylboronic acid (41 mg, 0.30 mmol), Pd(OAc) 2 (0.9 mg, mmol), S-Phos (3.3 mg, mmol), K 3PO 4 (70 mg, 0.33 mmol) の DMF (1 ml) 溶液を窒素雰囲気下 100 で 2 時間撹拌した. 反応液を室温まで冷却後 H 2O を加え,DCM で抽出後, 飽和 NaCl 水溶液で有機層を洗浄した. これを無水 Na 2SO 4 で乾燥後, 減圧下溶媒を除去し粗生成物を得た. これをプレパラティブ TLC (DCM/MeOH=20/1) により精製し, 目的化合物を黄色固体として得た (6 mg, 16%). 1 H-NMR (400 MHz, CDCl 3) δ: (1H, m), (2H, m), 7.35 (1H, d, J = 6.8 Hz), 7.28 (1H, t, J = 7.6 Hz), 7.12 (1H, dt, J = 7.6, 1.3 Hz), 7.07 (1H, t, J = 8.0 Hz), (1H, m), 6.39 (1H, dd, J = 8.0, 2.2 Hz), 6.33 (1H, t, J = 2.2 Hz), 4.06 (2H, t, J = 8.2 Hz), (8H, m), 3.27 (2H, t, J = 8.2 Hz); MS (ESI) m/z: 375 [M+H] +. 59

66 4-Chloro-2-morpholin-4-yl-7-pyridin-4-yl-6,7-dihydro-5H-pyrrolo[2,3-d]pyrimidine (25) の合成 NaH (60% in mineral oil, 800 mg) を n-hexane で洗浄し,THF (10 ml) に懸濁させた. 氷冷下 4-aminopyridine (1.88 g, 20 mmol) の THF 溶液 (40 ml) を加え, アルゴン気流下 2 時間加熱還流させた. 反応液が青くなったのを確認後,22 (1.19 g, 4.0 mmol) の THF 溶液 (8 ml) を加え, さらに 10 時間加熱還流した. 反応液を室温まで冷却後, 氷水 (50 ml) に注ぎ,EtOAc で 2 回抽出した. 有機層を飽和 NaCl 水溶液で洗浄後, 無水 Na 2SO 4 で乾燥し, 減圧下溶媒を除去し粗生成物を得た. これをシリカゲルクロマトグラフィー (DCM) により精製し, 目的化合物を淡黄色粉末として得た (727 mg, 54%). 1 H-NMR (270 MHz, CDCl 3) δ: 8.51 (2H, dd, J = 5.0, 1.6 Hz), 7.65 (2H, dd, J = 5.0, 1.6 Hz), 4.07 (2H, t, J = 8.1 Hz), (8H, brs), 3.10 (2H, t, J = 8.1 Hz); MS (ESI) m/z: 318 [M+H] +. 2-Methyl-5-[2-morpholino-7-(4-pyridyl)-5,6-dihydropyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl]phenol (26) の合成化合物 19と同様の手法で, 化合物 25と2-methyl-5-(4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2-dioxaborolan- 2-yl)phenol から化合物 26を得た (42%). 1 H-NMR (400 MHz, DMSO-d 6) δ: 9.49 (1H, brs), 8.44 (2H, d, J = 6.3 Hz), 7.82 (2H, d, J = 6.4 Hz), 7.49 (1H, s), 7.29 (1H, d, J = 7.8 Hz), 7.17 (1H, d, J = 8.0 Hz), 4.08 (2H, t, J = 8.2 Hz), 3.74 (8H, d, J = 7.7 Hz), (2H, m), 2.17 (3H, s); MS (ESI) m/z: 390 [M+H] +. 2-Methyl-3-[2-morpholino-7-(4-pyridyl)-5,6-dihydropyrrolo[2,3-d]pyrimidin-4-yl]phenol (27) の合成 25 (20 mg, mmol), 2-(3-methoxy-2-methyl-phenyl)-4,4,5,5-tetramethyl-1,3,2- dioxaborolane (23 mg, mmol), Pd(OAc) 2 (0.7 mg, mmol), S-Phos (2.6 mg, mmol), K 3PO 4 (26.7 mg, mmol) にDMF (0.5 ml) を加え, 超音波照射下脱気を行った. これを窒素雰囲気下 100 で撹拌した. 反応溶液を室温まで冷却し, 分取 HPLCによって精製して4-[4-(3-methoxy-2-methyl-phenyl)-7-(4-pyridyl)-5,6-60

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