修士学位論文 論文題名 アルツハイマー病とレビー小体型認知症における 拡散テンソル構造的ネットワーク解析を用いた 脳内ネットワークに関する研究 ( 西暦 ) 2016 年 1 月 8 日提出 首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士前期課程人間健康科学専攻放射線科学域学修番号 : 氏

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1 アルツハイマー病とレビー小体型認知症における拡散 Title テンソル構造的ネットワーク解析を用いた脳内ネット ワークに関する研究 Author(s) 鶴田, 航平 Citation Issue Date URL DOI Rights Type Thesis or Dissertation Textversion author 首都大学東京機関リポジトリ

2 修士学位論文 論文題名 アルツハイマー病とレビー小体型認知症における 拡散テンソル構造的ネットワーク解析を用いた 脳内ネットワークに関する研究 ( 西暦 ) 2016 年 1 月 8 日提出 首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士前期課程人間健康科学専攻放射線科学域学修番号 : 氏名 : 鶴田航平 ( 指導教員名 : 妹尾淳史 )

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4 別紙様式 3( 修士申請者用 ) ( 西暦 )2015 年度博士前期課程学位論文要旨 学位論文題名 ( 注 : 学位論文題名が英語の場合は和訳をつけること ) アルツハイマー病とレビー小体型認知症における拡散テンソル構造的ネットワーク解析を用いた脳内ネットワークに関する研究 学位の種類 : 修士 ( 放射線学 ) 首都大学東京大学院人間健康科学研究科博士前期課程人間健康科学専攻放射線科学域学修番号 氏名 : 鶴田航平 ( 指導教員名 : 妹尾淳史 ) 注 :1 ページあたり 1,000 字程度 ( 英語の場合 300 ワード程度 ) で 本様式 1~2 ページ (A4 版 ) 程度とする アルツハイマー病 (Alzheimer s Disease: AD) とレビー小体型認知症 (Dementia With Lewy Bodies: DLB) は認知症状を示す代表的な神経変性疾患である. 両疾患の臨床症状は重複することもあり, 混合病理症例も頻発するため, 臨床上これらの疾患の鑑別が問題となることも多い. AD と DLB の画像診断法として,MRI による灰白質体積の減少による脳萎縮程度の評価が挙げられる. 一方で, 水分子の挙動を画像化する拡散強調像 (Diffusion-Weighted Imaging: DWI) の発展系である拡散テンソル画像 (Diffusion Tensor Imaging: DTI) を用いて, テンソル解析することで脳白質の神経束を描出する拡散テンソルトラクトグラフィ (Diffusion Tensor Tractography: DTT) という技術がある. 近年,MRI において,DTI や機能的 MRI(functional MRI: fmri) をグラフ理論と組み合わせることで, 脳の領域間における解剖学的な結合や機能的な結合, いわゆる 脳内のネットワーク の構造の特性を定量的評価することができ, 脳領域間の連絡や脳全体における情報伝達の効率などの脳内ネットワークの様々な側面を表現することが可能となっている. このグラフ理論解析は統合失調症やてんかん, 多発性硬化症など多様な精神疾患や神経変性疾患について研究が盛んに行われているが,AD と DLB において,DTI を用いてグラフ理論解析し, それらの鑑別を試みたという報告はまだ存在しない. 本研究は, 首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会 ( 承認番号 15056) および順天堂大学医学部附属順天堂医院病院倫理委員会 ( 承認番号 471) の承認を受けて実施している. 対象は, 神経内科医師によって AD と診断された患者 15 名と,DLB と診断された患者 7 名である. この 22 名に対し,DTI と T1 強調像を取得し, グラフ理論解析をすることにより算出されたネットワーク指標 (Characteristic Path Length: CPL, Global Efficiency: GE, Local Efficiency: LE, Clustering Coefficient: CC, Small-World property: SW) について AD と DLB 間で比較 検討した. 結果は,AD に比較して,DLB では,GE(p = ) および SW(p = 0.005) の有意な低下を示した.CPL,LE,CC について有意差は認められなかった. これは DLB と比べ,AD でスモールワールド性がより保たれ, 脳全体の情報交換処理効率が高いことを意味する. したがって, 本研究では,DTI にグラフ理論というアプローチを加えることで, 従来の拡散 MRI 解析にはなかった GE や SW といった脳内ネットワークに有意な差があることを示すことができた. よって,DTI を用いたグラフ理論解析では,AD と DLB 間の脳内ネットワークの変容の差異を反映し,AD と DLB の鑑別診断において有用であると考える.

5 目次 第 1 章序論 研究背景 研究目的 本論文の構成... 2 第 2 章核磁気共鳴現象 はじめに 核の回転と歳差運動 RF パルスによる NMR 信号の受信 T1 緩和時間と T2 緩和時間について... 7 第 3 章 MRI 原理 はじめに MRI 装置の歴史 傾斜磁場とスライス断面選択の原理 傾斜磁場と周波数エンコードの原理 傾斜磁場と位相エンコードの原理 k-space への充填 Spin Echo 法の撮像原理 Gradient Echo 法の撮像原理 Echo Planar Imaging 法の撮像原理 第 4 章拡散 MRI はじめに 拡散現象と濃度勾配 拡散係数について 拡散強調像 (Diffusion-Weighted Imaging: DWI) の基礎 拡散強調像における信号取得 拡散強調像の信号強度 b 値 (b-value) の定義と信号強度への影響 みかけの拡散係数 (Apparent Diffusion Coefficient: ADC) とは... 27

6 4.5 拡散テンソル画像 (Diffusion Tensor Image: DTI) について 拡散の異方性と信号強度への影響 拡散テンソルの数学的基礎 拡散テンソルトラクトグラフィ (Diffusion Tensor Tractography: DTT) と神経線維の追跡 第 5 章グラフ理論 はじめに グラフ理論における基礎と基本用語 グラフの構成とその分類 グラフの行列表現 グラフ理論より計算される指標について 最短経路長 (Shortest Path Lengths) について 平均経路長 (Characteristic Path Lengths) について クラスター係数 (Clustering Coefficient) について Global Efficiency について Local Efficiency について Small -World property について 第 6 章アルツハイマー病とレビー小体型認知症の病態と診断 はじめに 認知症について 認知症の概念 認知機能評価スケールの種類 MMSE について アルツハイマー病について アルツハイマー病の概念 アルツハイマー病の臨床所見 アルツハイマー病の画像検査 レビー小体型認知症について レビー小体型認知症の概念 レビー小体型認知症の臨床診断基準 レビー小体型認知症の画像検査 レビー小体型認知症の診断の難しさ... 52

7 第 7 章アルツハイマー病とレビー小体型認知症における拡散テンソル構造的ネットワーク解析を用いた脳内ネットワークに関する研究 本研究の背景および目的 対象 使用機器と撮像パラメータ 解析方法 connectivity matrix の取得方法 グラフ理論を用いたネットワーク解析 結果 考察 結論 第 8 章本研究のまとめ AAAAAAAAAAAAAAAA 1 - 略語一覧 AAAAAAAAAAAAAAAA 2 Connectome Mapper の導入方法 参考文献 謝辞 修士課程在学中における研究業績一覧... 92

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9 第 1 章序論 1.1 研究背景 2016 年, 日本は 65 歳以上の高齢者が総人口の 25% 以上を占める超高齢社会となり, 現代社会において高齢化が急速に進んでいるなか, 認知症発症数は著しく増加している. 認知症は脳神経細胞が変化して機能障害に陥り, 知的機能が低下することで発症する. 神経細胞の長期生存性から, 加齢とともに影響を受ける確率が高まるため, 認知症患者の数は年々増加傾向をたどり, 医療費や介護に伴う支出は大きな社会問題となっている. とりわけアルツハイマー型認知症 ( アルツハイマー病 :Alzheimer s Disease (AD)) は, 脳血管性認知症 (Vascular Dementia: VD) とならび, 認知症全体の中で占める割合が高く, 病態の解明と治療法の開発が急がれている認知症性疾患である. そして, レビー小体型認知症 (Dementia with Lewy Bodies: DLB) は,AD に続いて 2 番目に頻度が高い神経変性疾患であり, 現在では認知症の二割を占めている 1). AD と DLB は臨床症状が重複することもあり, さらに混合病理例も頻発するため, 臨床上これらの疾患の鑑別が問題となることも多い. AD と DLB などの認知症の臨床画像検査では,N-isopropyl-p-[I 123 ] iodoamphetamine (IMP) や 99m Tc-ethyl cysteinate dimer (ECD) などを用いた脳血流シンチグラフィ, 18F-fluorodeoxyglucose (FDG) を用いた PET などが主であるが 2), これらは放射線医薬品を使用するため放射線による被ばくを伴う. これに対して, 核磁気共鳴画像法 (Magnetic Resonance Imaging: MRI) は放射線による被ばくがなく, 脳を高いコントラストで描出することができる. MRI における AD と DLB の画像診断法として, 灰白質体積の減少による脳萎縮程度の評価が挙げられる. 一方で, 水分子の挙動を画像化する拡散強調像 (Diffusion-Weighted Imaging: DWI) の発展系である拡散テンソル画像 (Diffusion Tensor Imaging: DTI) を用いて, テンソル解析することで脳白質の神経束を描出する拡散テンソルトラクトグラフィ (Diffusion Tensor Tractography: DTT) という技術がある. 近年では, 拡散テンソル画像に対する解析方法の発達により, 脳の領域間における解剖学的な結合や機能的な結合 (connectivity と呼ばれる ) を包括的にマッピングした Connectome 解析が可能となり 3)4), グラフ理論と組み合わせることで脳内構造のネットワークの効率や連結の強さを特徴づけることができ 5), 脳内神経の相互作用を解明することができると注目されている. このグラフ理論解析は統合失調症やてんかん, 多発性硬化症など多様な精神疾患や神経変性疾患について研究が盛んに行われているが,AD と DLB において,DTI を用いてグラフ理論解析し, それらの鑑別を試みたという報告はまだ存在しない. 1

10 1.2 研究目的 本研究では, 拡散 MRI の撮像テクニックである拡散テンソル画像を取得し, 新しい解析法であるグラフ理論による脳白質の構造的ネットワーク解析をすることによって,AD と DLB 間の脳内ネットワーク変容を明らかにすることを目的とする. 1.3 本論文の構成 本論文は 1 章から 8 章までで構成される. 各章に記載される内容は以下の通りである. 第 1 章序論現代社会におけるアルツハイマー病とレビー小体型認知症の現状, 画像診断法と問題点等の背景, それら問題点の解決法を実現するための本研究の目的について述べる. 加えて, 本論分の構成について述べる. 第 2 章核磁気共鳴現象 MRI 装置における信号発生の原因となる核磁気共鳴 (Nuclear Magnetic Resonance: NMR) 現象について述べる. 第 3 章 MRI 原理 MRI 装置についての簡単な歴史,NMR 現象による MR 信号取得の原理について述べる. また, 現在における様々なパルスシーケンスの基礎となった Spin Echo(SE) 法,Gradient Echo(GRE) 法および拡散 MRI においての撮像に使用される高速撮像法について述べる. 第 4 章拡散 MRI 拡散 MRI の基礎となる拡散現象および種々の拡散係数について述べる. また, 拡散強調撮像の基礎と, その応用である拡散テンソル解析および拡散トラクトグラフィについて述べる. 第 5 章グラフ理論グラフ理論の導入背景について述べ, 基本的用語やグラフの構造, 行列表現について述べる. さらに, グラフから構成されるネットワークのモデルおよび本研究で用いられたグラフ理論を利用して導かれる指標について述べる. 第 6 章アルツハイマー型認知症とレビー小体型認知症の病態と診断本研究において鑑別検討の対象としている疾患のアルツハイマー病およびレビー小体型認知症の基本的概念, 臨床症候, および従来の画像検査について述べる. 2

11 第 7 章アルツハイマー病とレビー小体型認知症における拡散テンソル構造的ネットワーク解析を用いた脳内ネットワークに関する研究アルツハイマー病患者とレビー小体型認知症患者に対し, 拡散 MRI の撮像とグラフ理論解析をし, 導かれたネットワーク指標について比較検討した. 本研究の目的, 研究方法, 結果, 考察について述べる. 第 8 章本研究のまとめ本研究を総括してまとめを述べる. 3

12 第 2 章核磁気共鳴現象 2.1 はじめに 核磁気共鳴 (Nuclear Magnetic Resonance: NMR) 現象は 1946 年に Purcell 6),Bloch 7) により発見され, 現在の MRI 技術の基礎となっている.NMR で利用される原子は磁気双極子モーメントを有する 1 H, 13 C, 14 N, 17 O, 19 F, 23 Na, 31 P などの原子量と質量数がともに奇数の原子核であり, これらの核種は磁気特性を持つ. この特性から物質の分子構造や解剖学的構造を詳細に知ることが出来る.MRI(Magnetic Resonance Imaging) では存在比, 感度がともに高いといった理由から 1 H が主に用いられている. また,NMR 現象で放射される電磁波は X 線やガンマ線とは異なり,FM ラジオで使用する帯域程度であるため, 一般的に生体に無害である. 本章では,MRI 装置のもっとも基礎となる NMR 現象について述べる. 2.2 核の回転と歳差運動 原子核は固有の磁気モーメントを持つものと, そうでないものに分かれる.NMR の対象になるのは前者の原子核であり, 原子核を構成する陽子と中性子はいずれも固有の磁気モーメントを持っている. 磁気モーメントμμは原子核のスピンIIに由来し, これらは比例関係 μμ = 1 γγ h II (2.1) 2ππ で表すことができる. この時,γγは磁気回転比,hはプランク定数,IIはスピン量子数( スピンの方向及び大きさを表すベクトル量 ) である. 陽子と中性子がいずれも偶数の核種であった場合, 全てのスピンが相互に打ち消し合い, スピン量子数 IIはゼロとなる. スピンIIの静磁場方向成分 mm II は, 間隔が 1 の不連続な値だけを取ることができ,mm II の最大値をIIと書き, これを核スピンと呼ぶ. このとき mm II = II, (II 1),, II となり, 式 (2.1) から, エネルギー E は, EE = 1 2ππ γγ h mmii BB 0 (2.2) と表現できる. ここで,BB 0 は外部磁場である.MRI の主な対象となる 1 H では, スピン I=1/2 を持つ,mm II =1/2, -1/2 の状態が存在し,mm II =1/2 の時をααスピン状態,mm II =-1/2 の時をββスピン状態と呼ぶ.mm II =1/2 とmm II =-1/2 の 1 H 原子核の存在比はボルツマン分布に従い, 体温 (37 ) で 1.5T の MRI 装置の場合,αα スピン状態の 1 H 原子核はββスピン状態の 1 H 原子核より 4 個ほど多くなる. これらは静磁場が存在しない状態では同じエネルギーを持っているが, 静 4

13 磁場に置かれた状態では磁気モーメントと磁場の相互作用によって,EE αα = 1/4ππ γγ h BB 0,EE ββ = 1/4ππ γγ h BB 0 の異なるエネルギーを持つ. このエネルギー準位をゼーマン準位と呼び, 準位間のエネルギー差 EE = 1/2ππ γγ h BB 0 をゼーマンエネルギーと呼ぶ. 静磁場のない状態ではααスピン状態とββスピン状態にある核の数は同じであるが, 静磁場のある状態ではエネルギーの低いααスピン状態にある核の数がββスピン状態の核の数より多くなり, 安定した状態になる. この状態を熱平衡状態という. そこにゼーマンエネルギーに相当する電磁波を外部から与えると,ααスピン状態からββスピン状態への遷移が,ββスピン状態からααスピン状態への遷移をわずかに上回ることになり, この差にあたる分が電磁波の吸収として観測され,NMR スペクトルが得られる. これが NMR 現象である. ゼーマンエネルギーに相当する電磁波は, となる. つまり, 共鳴周波数 ( ラーモア周波数 )νν 0 は hνν 0 = ΔΔEE = 1/2ππ γγ h BB 0 (2.3) と表すことができる. νν 0 = γγbb 0 2ππ (2.4) 図 2.1 ゼーマン分裂から NMR スペクトルの観測までの概略図 強い外部磁場 BB 0 中に磁気モーメント μμ を持つ核スピンをさらすと, トルク ( 回転力 ) が生じ, ddμμ dddd = γγ μμ BB 0 (2.5) に従って運動をする. 磁気モーメントμμの時間変化は常にμμに垂直であるため,μμはBB 0 のまわりを回転運動する. すなわち,μμ = (μμ xx, μμ yy, μμ zz ), BB 0 = (0, 0, BB 0 ) としたとき, 式 (2.5) は ddμμ xx dddd = γγ μμ yy BB 0, ddμμ yy dddd = γγ μμ xx BB 0, ddμμ zz dddd = 0 (2.6) となり,μμ xxyy を xy 平面内の磁気モーメントの大きさとし,ωω = γγbb 0 と置き, これを解くと, μμ xx = μμ xxxx cccccccccc, μμ yy = μμ xxxx ssssssssss, μμ zz = cccccccccc. (2.7) となる. このことから, 磁気モーメントμμ は静磁場 BB 0 と一定の角度を保った運動, つまり歳差運動をする 8). 5

14 2.3 RF パルスによる NMR 信号の受信 NMR において実際に観測しているのは, 個々の 1 H 原子核磁気モーメントμμの振る舞いではなく, それぞれのμμのベクトル和 ( つまり,αα 群に余計に含まれているμμのベクトル和 ) の巨視的磁化 MMである. 静磁場 BB 0 にさらされた熱平衡状態にある巨視的磁化 MMは,BB 0 方向のスピン核運動量を持ち,BB 0 方向を向く大きなベクトルとなる. 磁気モーメントμμはBB 0 と 55 or 125 の角度を成していたことによって生じた偶力を受け, 歳差運動をしていたが, 巨視的磁化 MMはBB 0 と平行であるため偶力は生じず,MM xx, MM yy, MM xxxx はともに 0 のままである. ここでMM xxyy は横磁化,MM zz は縦磁化と呼ぶ. BB 0 はMMと比べ非常に大きな磁場であり,MM xxyy = 0 の状態だと,MM はBB 0 の陰に隠れ, 検出することができない. そのため,MM を検出するにはBB 0 と直交する成分 MM xxxx が必要となってくる.MM xxxx を生じさせるには,MMをMM zz から傾ければよい. それを可能とするのが共鳴周波数を持つ電磁波, つまり RF パルスという第 2 の磁場 BB 1 である. 磁場 BB 1 をかけられたMMは,z 軸から x -y 平面に倒れながら z 軸を中心にBB 1 と同じ速さで回転する. 巨視的磁化 MMの挙動はBB 1 の印加時間に比例し,BB 1 の印加による z 軸と巨視的磁化 MMの成す角 θθは,bb 1 が印加されている時間を t とすれば, θθ = γγbb 1 tt (2.8) と表現できる.γγBB 1 tt = ππ/2となるようにbb 1 を t 時間印加すると,MMは x -y 平面に横倒しになる. このようにππ/2 γγbb 1 時間だけ継続する RFパルスを 90 パルスと呼ぶ. 同様に,ππ γγbb 1 時間だけ継続する RF パルスを 180 パルスと呼び, このときMMは反転する. これらの RF パルスは NMR 信号を観測したり, 緩和時間を計測するために頻繁に用いられる. RF 磁場 BB 1 を短時間印加することで横磁化を生成し, 印加終了後, 巨視的磁化 MMは共鳴周波数 νν 0 で回転しながらもとの状態へと戻っていく. このとき検出コイルを置くことにより, 横磁化の回転に伴って信号が誘起される. これを NMR 信号といい, この現象を自由誘導減衰 (Free Induction Decay: FID) と呼ぶ. 図 パルスと 180 パルス 6

15 2.4 T1 緩和時間と T2 緩和時間について プロトンを x-y 平面に傾けるために励起すると,RF パルス印加が終えた直後から平衡状態に戻ろうとして緩和が起こる. 緩和には主に二つの特性があり, 一つは RF パルス直後のスピンの位相が揃った状態から位相がずれていくもの, もう一つは RF パルスから吸収したエネルギーを失って再び z 軸に配列するものである. 前者をスピン-スピン緩和過程あるいは横緩和過程,T2 緩和時間と呼び, 後者をスピン- 格子緩和過程あるいは縦緩和過程, T1 緩和時間と呼ぶ 9). スピンの位相のズレはそれぞれのスピン歳差周波数が微妙に異なるために起こる. ラーモア周波数での回転系で考えると, わずかに高い周波数のスピンは時計回りに位相の分散が起こり, 一方で低い周波数のスピンは反時計回りの位相角を持つことになる.FID の減衰の支配的な効果は主磁場の不均一性であり, 避けることが出来ない. もう一つの効果は組織内を動き回っているスピン間の相互作用, つまり双極子双極子相互作用 (dipole-dipole interaction: DDI) によって形成される. この作用によって生成された局所搖動磁場 Bと呼ばれる時間的に変動する微小な磁場によって, 位相が分散していく. これらは T2 緩和時間によって特徴づけられ, これは磁石や磁場強度に依存しない 10). 図 2.3 T2 緩和曲線と横磁化の位相分散の過程.A:RF パルス印加直後で, まだ位相がほぼ残っている.B: しばらく後で, かなり位相分散したがまだ横磁化は残っている.C: 完全に位相分散して横磁化は 0. 7

16 x-y 平面上の磁化は減衰するが, 横緩和過程ではエネルギーの損失はない. エネルギーの損失をするには, 1 H と周りのスピン- 格子が相互作用をし, スピン系以外にエネルギーを受け渡す必要がある. この時の 格子 とは具体的には分子のことを指す. つまり, 分子の運動エネルギーとして, スピンから格子へエネルギーを受け渡すということになる. このエネルギーの授受は, 分子運動の周波数 νν 1/ττ CC が磁気モーメントμμの周波数 ( νν 0 = ωω 0 /2ππ) と同じときに最もよく働く. ここで,ττ CC とは相関時間のことをいい, 分子が回転しないで停止している時間のことを指す. 静磁場 BB 0 が高くなると組織の T1 値が延長するのは, これらのことから説明できる. 静磁場 BB 0 が高くなると, 磁気モーメントμμの共鳴周波数 νν 0 が大きくなり, 縦緩和に寄与するνν 0 と同じ回転運動周波数 νの分子が減ることで, 縦緩和が進みにくくなり, 組織の T1 値が延長するということである 10). 図 2.4 T1 緩和曲線 90 パルスにより xy 平面に横磁化が倒された後の横磁化の減衰はブロッホ方程式より, MM xxxx (ττ) = MM xxxx(0) exp ( ττ TT 2 ) (2.9) と表され,180 パルス照射後の縦磁化の回復はブロッホの方程式より, MM zz (ττ) = MM zz(0) (1 exp ττ TT 1 ) (2.10) 8

17 第 3 章 MRI 原理 3.1 はじめに 現在,MRI(Magnetic Resonance Imaging) と呼ばれている撮像技術は, 核磁気共鳴 (NMR) という 50 年以上前より用いられてきた化学的分析技術を基礎として成り立っている.MRI は当初, 核磁気共鳴断層撮影 (NMR tomography) と呼称されていたが, 核 (nuclear) という言葉から核物質を使用していると誤った意味合いを持っているように聞こえるため,NMR から 核 (nuclear) を取り除いた MR という言葉が用いられるようになった. MRI は静磁場中におかれた生体に傾斜磁場およびBB 1 磁場を印加することにより発生する信号を計測し, 画像再構成にて任意の断層像を画像化する技術であり, 生体を主に構成する 1 H の物理化学的な状況を計測するために,X 線を用いた手法と比較し安全性に優れ, 濃度分解能に優れるほか, 生体機能を画像化することが出来る.MRI の信号を画像化するためには, 被写体からの信号の位置情報を捕捉する必要があり, 静磁場空間にスライス選択傾斜磁場, 位相エンコード傾斜磁場, 周波数エンコード傾斜磁場と呼ばれる三つの傾斜磁場を印加することによって得られる磁場強度の変化を利用し, 信号の位置情報を捉える. 本章では,MRI 装置の歴史に触れた後,MRI 装置を用いた断層イメージング原理とその代表的な撮像法について述べる. 3.2 MRI 装置の歴史 MRI は 1946 年に Purcell, Bloch より発表された NMR 信号の発見から始まった. しかし, 当初は NMR 現象という物理現象の研究であった. そのような中,1950 年に Hahn によりスピンエコー法 11) が発見され, この時代から NMR 技術が飛躍的に向上した. そして,1971 年に CT(computed tomography) を発表した Hounsfield の画像再構成理論である projection 法 12) を参考にし,1973 年に Lautebur によってはじめて NMR の画像化 13) が発表された.1975 年には Kumar ら 14) によって MRI のフーリエ化がなされ現在に至っている. その後, Mansfield, Pykett により MRI 高速撮像法である EPI(Echo Planner Imaging) 15) が発表され, 急激に MRI 画像法は進展を見せた. 拡散強調像 (Diffusion-Weighted Imaging: DWI) に関する歴史は,1950 年の Hahn の論文 11) に既に記載されていたが, スピンエコー法を用いて拡散解析を本格的に行ったのは Carr と Purcell であった 16). そして 1965 年,Stejskal, Tanner によって確立された Stejskal,-Tanner 法 17) は現在で最も頻繁に用いられている拡散解析である. 9

18 3.3 傾斜磁場とスライス断面選択の原理 MRI では任意方向の撮像断面を画像化できることが MRI の大きな特徴の一つである. 任意の断面像を得るためには, まず断層面の位置, つまりスライスを選択する必要がある. スライスはスライス選択傾斜磁場 GG (zz) と RF パルスによって決定される. 傾斜磁場 GG (zz) は, 捉えたい断層面 (x-y 平面 ) と垂直な方向 (z 軸方向 ) に沿って印加され, その磁場強度 BB (zz) は z 軸方向の位置によって異なる. そのときの共鳴周波数 νν (zz) は式 (2.4) のような比例関係にあるため, 共鳴周波数も z 軸方向の位置によって異なる. このように傾斜磁場を印加することによって z 軸方向に共鳴周波数の勾配を生成し, 捉えたいスライスに一致する RF パルスを印加することで, 任意の断層面を選択的に励起することが可能となる 18)19). 任意の断面層の位置 zz 1, zz 2 における磁場強度をBB (zz1 ), BB (zz2 ) とし, 共鳴周波数をνν (zz1 ), νν (zz2 ) とすると, 磁場強度 BB (zz1 ), BB (zz2 ) は BB (zz1 ) = BB 0 + GG zz zz 1 (3.1) と表され, 共鳴周波数 νν (zz1 ), νν (zz2 ) は BB (zz2 ) = BB 0 + GG zz zz 2 (3.2) νν (zz1 ) = 1 2ππ γγ(bb 0 + GG zz zz 1 ) (3.3) νν (zz2 ) = 1 2ππ γγ(bb 0 + GG zz zz 2 ) (3.4) となる. このとき, 任意の断面層の位置 zz 1, zz 2 における中心周波数 νν cc は, 次式 (3.5) で表せる. νν cc = 1 2 νν (zz 1 ) + νν (zz2 ) = 1 2ππ γγbb ππ γγgg zz(zz 1 + zz 2 ) (3.5) また, 周波数幅 ( バンド幅,BW: Band Width) は BBBB = νν (zz2 ) νν (zz2 ) = 1 γγgg 2ππ zz(zz 2 zz 1 ) (3.6) となる. つまり, スライス厚 zz(= zz 2 zz 1 ) は次式 (3.7) から導くことができる. zz = 2ππ γγgg zz BBBB (3.7) 10

19 図 3.1 スライス選択傾斜磁場 GG zz によるスライス厚の決定 3.4 傾斜磁場と周波数エンコードの原理 一切の傾斜磁場を印加せずに 1 H から信号を得ようとすると, どの位置に存在する 1 H で あっても同じ周波数として観測される. しかし, 傾斜磁場を印加しながら信号を観測すると, 位置情報を周波数情報として検出することができる. これを周波数エンコード (GG xx ) という. いま, 図 3.2 のようにスライス選択傾斜磁場により選択励起された断層面の位置 A, B に 1 H があるとする. この断層面に対し, 周波数エンコード傾斜磁場 GG xx を印加せずに FID 信号を取得し, フーリエ変換をすると, 位置 A, B の 1 H は共鳴周波数が等しいために,2 つの信号は混在してしまう. 一方, 周波数エンコード傾斜磁場 GG xx を印加した場合, 位置 A, B の共鳴周波数は別々の周波数として観測されるため,FID 信号取得後にフーリエ変換することによって, それぞれの周波数として区別して検出することが出来る 18)19). 位置座標をxとしたときの共鳴周波数 μμ xx は次式 (3.8) で表すことができる. μμ xx = γγ 2ππ (BB 0 + GG xx xx) (3.8) また, この周波数エンコード傾斜磁場は read out のエンコードとも言われている. 傾斜磁場強度と計測周波数帯域は一定の限度内であれば自由に設定できるため, 読み取り方向の撮像部位の大きさ, つまり FOV(field of view) を決定することが出来る. 計測周波数帯域はデータサンプリングの逆数で決定され, バンド幅と呼ばれることもあるが,3.3 節で述べた RF パルスのバンド幅とは異なる概念であるので, ここではスペクトル幅 (SS BBBB ) とする.read out 方向の FOV を決定する式は次式 (3.9) で得ることができる. 11

20 FFFFFF rrrrrrrr = 2ππ γγ GG rr SS BBBB (3.9) このようにして, 周波数方向の位置情報を周波数の違いとしてエンコードすることが可能となるが, 二次元画像を得るためにはまだ不十分であり, もう一次元の方向にも位置情報をエンコードする必要がある. このもう一つのエンコードを位相エンコードと言い, 次項で述べる. 図 3.2 周波数エンコーディングの原理 3.5 傾斜磁場と位相エンコードの原理 いま, ある断層面の全てのスピンが同位相であると仮定する ( 図 3.3: A). ここで RF パルスを印加し横磁化を発生させ, 信号を取得するまでの間に y 方向にt 時間, 位相エンコード傾斜磁場 (GG yy ) を印加すると, 1 H の歳差運動の周波数は y 軸に沿ってその位置に対応して, 位相が進むもしくは遅れる. 具体的には, 座標の原点に位置する 1 H の歳差運動は位相エンコード傾斜磁場 (GG yy ) の影響を受けず ( 図 3.3: y 軸 =0), 相対的に高い磁場を受ける 1 H では位相エンコード傾斜磁場 (GG yy ) が印加されている時間だけ位相が進み ( 図 3.3: y 軸 =yy 1 ), 相対 12

21 的に低い磁場を受ける 1 H では位相エンコード傾斜磁場 (GG yy ) が印加されている時間だけ位 相が遅れる ( 図 3.3: y 軸 = yy 1 ). しかし, 得られる信号には様々な位相が混在しているため, 周波数エンコーディングのように一度印加するだけでは各部位の信号を区別することが出来ない. そのため, 位相エンコーディングでは印加する傾斜磁場の強度を何ステップにも変化させながら測定を繰り返すことで, その信号を区別している.1 ステップ毎に変化させる位相エンコード傾斜磁場強度をGG yy, 傾斜磁場印加時間をttとしたとき, 位相方向の FOV(FFFFFF pphaaaaaa ) は,FFFFFF pphaaaaaa の両端で位相が 360 ずれるように設定する必要があるので, γγ GG yy tt FFFFFF pphaaaaaa = 2ππ (3.10) となる. また,MR 画像の位相エンコーディングをする場合, 強い傾斜磁場は信号のロスが生じてしまうため, 通常は 0 を挟んで ± の双方向に傾斜磁場を印加する. つまり, 式 (3.10) は, 位相エンコーディングステップ数をNN pphaaaaaa とすると, 次式 (3.11) で表せる. ±GG yy = ππ NN pphaaaaaa γ tt FFFFFF pphaaaaaa (3.11) 位相エンコードによって引き起こされる位相変化は, 他の傾斜磁場の印加か, もしくは MR 信号が T2 緩和によって減衰するまでは, 異なった場所における信号間の相対的な位相差は保持される 18)19). 図 3.3 位相エンコード傾斜磁場印加時のスピンの挙動 13

22 3.6 k-space への充填 k-space(k 空間 ) とは, 上述した周波数エンコード傾斜磁場, 位相エンコード傾斜磁場を受けたスピンからのエコー信号を格納する領域である. この k-space データを逆フーリエ変換することにより, 通常我々が観察している MRI 画像となる 19). k-space の座標軸は波数で表される. 波数とは単位距離あたりの波の数あるいは空間周波数のことをいい, 単位距離を 1cm にした波数の単位 cm -1 が kayser で, 単位記号として k が用いられる (k=cm -1 ). この k が k-space と呼ばれる由来である. k-space は中心に近いほど小さい波数の波を, 中心から離れるほど波数の大きい波を表現する. また,k-space の中心ほど位相エンコード量が少なく, エコー信号同士の干渉が少ないため, 振幅が大きく情報量も多い. この振幅はデジタル化された数値あるいはグレースケールの濃淡などで表される 20). k-space の充填法には様々な方法が提案されており, エコープラナー法 19), スパイラルスキャン法 20) 21), バースト法などといった超高速イメージング法では一回の励起で二次元または三次元の k-space をスキャンすることも可能となっている 18). 図 3.4 k-space における座標と振幅の関係 14

23 3.7 Spin Echo 法の撮像原理 MRI において,SE(spin echo) や GRE(gradient echo), STE(stimulated echo) といった幾種類の 信号発生方法が存在する. その中で,90 パルスの後に 180 パルスを印加しスピンを再 収束 (rephasing, refocusing) させて信号を発生させる方法を SE 法という. 位相分散には外部 磁場の不均一性によるものと, スピン - スピン緩和作用によるものがある.180 パルスを 印加することで前者による位相分散の影響は排除できるが, 後者の影響は除去できない. Spin Echo の発生機序を図 3.5 に示す.2.3 節で述べたように, 巨視的磁化 MM zz は外部磁場 BB 0 と同じ方向に向いているため信号を観測できない. 信号を得るためには, 巨視的磁化 MM zz を 外部磁場 BB 0 と異なった方向に向けることが必要である.90 パルスはこの巨視的磁化 MM zz を xy 平面へと倒す. 倒れた直後の巨視的磁化 MM zz を構成する個々のスピンはすべて同位相にあ る. その後, 磁場の不均一性により各々のスピン歳差周波数がわずかに変化し, 次第に個々 のスピンの位相が分散することによって, 巨視的磁化 MM zz が減衰していく. この減衰を FID という. その後,180 パルスを印加するとすべてのスピンが 180 反転する. この時, 縦 磁化と横磁化ともに反転するが,90 パルスから 180 パルスの間 ( この時間を ττ とする ) に 回復する縦磁化はほんのわずかであるため, ここでは横磁化についてのみ作用すると考える.180 パルスからさらにττ 時間経過するとスピンの位相は再び揃い, この位相が揃った時に発生する信号を Spin Echo と呼ぶ. 磁場の不均一によって分散したスピンの位相が 180 パルスによって再収束されるので, Spin Echo の信号のピークは T2* ではなく,T2 緩和に従う 20). 逆に 90 パルス印加後に自然に発生する FID は, 磁場の不均一性などのスピン系外の横緩和促進因子の影響を受けているので T2 ではなく,T2* で減衰する信号である. この FID を観測する信号として利用できればよいが, 信号の初めの部分が 90 パルスと重なって観測することが出来ないために MRI や NMR では利用されない. SE 法の信号強度 Sは次式 (3.12) で表され, SS MM 0 1 eeeeee TTTT TT 1 eeeeee ( TTTT TT 2 ) (3.12) SE 法の信号強度 S のピーク SS pppppppp は次式 (3.13) で表すことができる. SS pppppppp MM 0 exp ( TTTT TT 2 ) (3.13) 15

24 図 3.5 SE 法による磁化の挙動 3.8 Gradient Echo 法の撮像原理 SE 法と比較し,Gradient Recalled Echo(GRE) 法では 180 再収束パルスを使用せず,90 未満のパルス (α パルス ) を用いる.180 再収束パルスを使用しないので,GRE 法は T2 減 衰ではなく,T2* 減衰し, 磁場の不均一性や磁化率に敏感である. また,180 再収束パル スを介さないので TR を容易に短縮することができるため, 高速撮像に適している 20). 信号の発生には傾斜磁場を用いて位相を再収束させることで信号を発生させる. 式 (2.4) より, 共鳴周波数が磁場強度に比例することからもわかるように γγ を磁気回転比とする原 子核に対して傾斜磁場 GG を印加すると次式 (3.14) に従って位相 が変化する. = γγ GGGGGG (3.14) つまり, 傾斜磁場によって空間的に磁場強度を変化させることで, 各位置の磁場強度に応じてスピンの位相が変化する. 傾斜磁場 GGを tt 秒だけ印加すると, 前述の理由から位相が乱れる. この位相の乱れは磁場の不均一の影響に加え傾斜磁場の影響もあるため,FID の T2* よりさらに早期に乱れる. その後, GGを反転させGGにすると, 先ほどとは逆に GGで乱れた位相が揃いはじめ,GG 印加 tt 秒後に GGによる位相分散が相殺され信号がピークを迎える. さらにGGを印加し続けると位相がまた分散し始め, 信号が山型になり, 正しく観測可能となる 20). このように傾斜磁場によって発生する信号であることから Gradient Echo と呼ばれている. 16

25 図 3.6 GRE 法による磁化の挙動 3.9 Echo Planar Imaging 法の撮像原理 Echo Planar Imaging(EPI) 法は, 臨床的に利用される撮像法の中で最速の撮像法であり, その高速性と磁化率効果の高さを生かし, 灌流画像 (perfusion image) や拡散強調画像 (diffusion-weighted image),bold(blood oxygenation level dependency) 法による機能的 MRI (fmri: functional MRI) などに利用される 21)22)23). 初期の EPI は, 図 3.7 に示すように励起 RF パルス印加後, 弱い位相エンコード傾斜磁場 GG pphaaaaaa を印加しながら, 高速に周波数エンコード ( 読み取り ) 傾斜磁場 (GG xx もしくはGG rrrrrrrr ) の反転を繰り返し, 多数のエコーを生成し k-space の全てのラインを埋める方法である. このように 90 励起パルス印加後から信号を取得する EPI は FID(GRE) 型 EPI と呼ばれ, その信号の包絡線は T2* で減衰する.k-space にデータを充填するときは, 一定の弱い位相エンコード傾斜磁場 GG pphaaaaaa を連続して印加するため, スキャンの軌道は図 3.8(A) のようにジグザグに充填される. この k-space 充填法ではデータポイントが不均一に分布してしまい, 従来法と比べてフーリエ変換時にアーチファクトを生じる. この欠点を解決するために考えられたのが blipped EPI と呼ばれる撮像法である ( 図 3.8(B)). 17

26 blipped EPI では, 読み取り傾斜磁場 GG rrrrrrrr がゼロ, つまり k-space における充填位置がkk xx 軸の端にあるときに, 短時間 ( 最小 200µsec) だけ位相エンコード傾斜磁場 GG pphaaaaaa を印加する. こうすることで充填するライン (k y 軸 ) 上下に移動する ( 図 3.9). 本来の EPI では弱い位相エンコード傾斜磁場を連続して印加していたために, その軌道はジグザグになり, データポイントは不均一に分布していたが,GG rrrrrrrr とGG rrrrrrrr の間に短時間 GG pphaaaaaa を印加することで, k-space を充填する軌道は直線になり, データポイントも均一に分布する 24). k-space 充填法の工夫以外にも,90 励起パルス印加後に 180 再収束パルスを印加し, その後に信号を取得する SE 型 EPI と呼ばれるシーケンスや, 一回の RF 励起パルスですべての信号を取得するのではなく ( この手法を single-shot という ), 複数回に分けて信号の取得をする multi-shot などといった工夫がある.SE 型 EPI は RF 励起パルス印加後に 180 再収束パルスを印加することで, 生成信号の包絡線がスピンエコーとなり,T2 減衰する. また, 信号取得に関しては多少時間的余裕が発生し, 磁化率の影響も小さくなる. また, multi-shot という手法は,single-shot のように一回の RF 励起パルスで生成される信号すべてにおいて十分な SNR で取得するのは難しいため, 一回の RF 励起パルスですべての信号を取得することを諦めて, 何回かに分割して信号を取得する手法である. こうすることで, 装置の性能に対する要求も軽減し,SNR が上がり, 磁化率の影響も少なくなる. ただし, single-shot では RF 励起が一度だけであるので,TR が無限大であり,T1 の影響がない画像となっていたが,multi-shot では TR が存在するために,T1 の影響が加わってくる. 図 3.7 GG pphaaaaaa 連続印加による FID 型 EPI のパルスシーケンス図 18

27 図 3.8 k-space の充填軌跡 (A:GG pphaaaaaa 連続印加による充填軌跡, B:blipped GG pphaaaaaa 連続印加による充填軌跡 ) 図 3.9 blipped GG pphaaaaaa 連続印加による SE 型 EPI のパルスシーケンス 19

28 第 4 章拡散 MRI 4.1 はじめに 拡散現象とは, 単位体積の溶液中の粒子数あるいは分子数の分布が非平衡な状態から平衡な状態に自然に変わっていく現象である. この現象はブラウン運動と呼ばれる水分子の不均衡な衝突が原因であり,1828 年に Robert Brown により発見され,1905 年に Albert Einstein が物理学的現象として理論づけた 25). これは液体中のような媒質中に浮遊する微粒子がランダムに運動する現象であり, 液体中の分子の熱運動による不規則な衝突によって引き起こされる. 拡散現象は巨視的には物質の移動が濃度勾配に比例するという Fick の法則に従っており, 物理学での拡散係数はその係数である. 微視的にはブラウン運動によって生じる濃度勾配が非平衡な状態から平衡な状態に自然に変わっていく過程である. 拡散 MRI で通常観察しているのは, ブラウン運動で見られるような微視的な水分子の不規則運動としての拡散現象である. 実際に撮像するには, 拡散を強調するために運動検出傾斜磁場 (Motion Probing Gradient: MPG) と呼ばれる一対の傾斜磁場を印加して撮像を行う. また, 拡散の強調度合いは b 値 (b value [sec/mm 2 ]) と呼ばれる MPG の強度や印加時間, 印加間隔などによって定義された指標で表現される. 拡散を強調した画像, いわゆる拡散強調像 (Diffusion-Weighted Imaging: DWI) では, 水分子の拡散運動速度やその拡散方向がわかる. 前者を見かけの拡散係数 (Apparent Diffusion Coefficient: ADC) といい, 後者を異方性 (anisotropy) といい, これらによって数値化することができる. 異方性には, 相対異方性 (Relative Anisotropy: RA), 異方性比率 (Fractional Anisotropy: FA), 体積比 (Volume Ratio: VR) などの指標が存在する. 本章では拡散 MRI の基礎となる拡散現象について述べ, 拡散強調撮像の基礎と, その応用である拡散テンソル解析および拡散トラクトグラフィについて述べる. 4.2 拡散現象と濃度勾配 拡散現象の基礎として 1855 年に発表された Fick の法則と呼ばれる法則がある. これは液体中を粒子や分子といった溶質が拡散するとき, 濃度変化の向きに垂直な単位面積を単位時間に通過する粒子は, その濃度勾配に比例するという法則である 25). このとき, 個々の粒子が濃度勾配に沿って一斉に移動するのではなく, 濃度勾配に逆らうものや直交方向に移動するものなどの総和を全体的に観察すると濃度勾配に沿って移動するような振る舞いをするということが重要である. 実際には粒子は三次元的に拡散するが, ここでは問題を単純化するために, 図 4.1 に示すような 2 つの異なる濃度 A と B の物質についての一次元の拡散について考える. いま, 20

29 物質 A と物質 B の間にある遮蔽板 ( 図 4.1 中の位置 ±rr) があるとする.±rr の位置にある遮蔽 板を時間 tt = 0[ms] において瞬間的に取り除いた場合,2 つの物質は拡散現象を起こし, や がて全容積が均一な濃度となる. ここで, 物質 A の濃度を CC AA [ 個 /m 3 ], 物質 B の濃度を CC BB [ 個 /m 3 ] とし,xx と xx + dddd の間の領域 dddd に注目する.xx にある平面を通過する物質 A の拡散 流 JJ AA [ 個 /m 2 s] は, 単位時間に xx の正方向へその平面の単位面積を通る A 分子の正味の数で ある. これは xx における A の濃度勾配に比例し, 次式 (4.1) で示される. JJ AA = DD CC AA 式 (4.1) の比例定数 D[m 2 /s] は拡散係数と呼ばれ, この値が大きいほど粒子の拡散が早く, 小 さければ粒子の拡散が遅いことを示す. また式 (4.1) は Fick の拡散第一法則と呼ばれている. CC 図 4.1 において,xxとxx + ddddの間の領域 ddddにおける物質 A の増加分 AA は, この領域に流 tt 入する A 分子と, 流出する A 分子との差を容積 dx で割ったものに等しい. つまり, (4.1) CC AA tt = 1 dddd [JJ AA(xx) JJ AA (xx + dddd)] (4.2) と示される. ここで dddd が十分に小さい場合, 次式 (4.3) が成り立つ. 式 (4.1), (4.2), (4.3) より JJ AA = 1 dddd [JJ AA(xx + dddd) JJ AA (xx)] (4.3) CC AA tt = JJ AA = DD CC AA = D CC AA 2 2 xx (4.4) と表すことができる. 式 (4.4) は拡散方程式と呼ばれ,Fick の第二法則のことを示す. この 式は, 濃度変化がその部位の濃度勾配の変化率に比例していることを示している 25)26). 図 4.1 一次元拡散系における拡散模式図 ( 文献 [26] より改変引用 ) 21

30 この拡散方程式という二階偏微分方程式の一般解は, 以下のような 2 つの境界条件を与え ることで求めることができる. 1) 初期条件 :tt = 0 のとき,CC(0, 0) = CC 0,CC(xx, 0) = 0 最初に原点以外の拡散粒子は存在せず, 原点のみから拡散するという条件. 2) 境界条件 :CC(±, tt) = 0 拡散時間 t に関係なく拡散粒子が届かない部分がある. つまり, 拡散する空間には 境界が存在せず無限に広いという条件. この条件下で式 (4.4) を解法すると, CC = CC 0 2 ππππππ となり, 物質が距離 x の位置に存在する確率を PP(xx, tt) とすると, PP(xx, tt) = CC CC 0 = 1 4ππππππ eeeeee xx2 (4.5) 4DDDD eeeeee xx2 (4.6) 4DDDD となる. これは標準偏差 σ = 2DDDD とする原点から正規分布を示す関数を表している 23). つ まり, 拡散現象が正規ガウス分布することを示している ( 図 4.2). 図 4.2 時間 t における拡散ガウス分布曲線 22

31 4.3 拡散係数について 流体中を速度 vv で移動する半径 r の小粒子には,FF = 6ππηηηηvv の抵抗を受けながら移動して いるという Stokes の法則がある. この逆数 (6ππηηηη) 1 を移動度と呼び,μμ で表す. 一方,1905 年に Einstein および Sutherland によって,1906 年に Smoluchowski によってそれぞれ独立に 明らかにされたブラウン運動についての関係式の一般形 DD = μμkk BB TT がある. この式は Einstein-Smoluchowski の関係式と呼ばれ,kk BB はボルツマン定数 (= [J/deg]), TT は熱力学温度, つまり絶対温度を示している. 以上のことから拡散係数 D は次式 (4.7) で 示される. DD = kk BBTT 6ππηηrr (4.7) 4.4 拡散強調像 (Diffusion-Weighted Imaging: DWI) の基礎 拡散強調像における信号取得 水分子の拡散現象を MRI の信号として検出する基本的な方法としては, スピンエコーシーケンス内の 180 再収束パルスの前後に, 大きさが同じで向きが逆の一対のパルス型傾斜磁場 (Motion Probing Gradient: MPG) を印加する Stejskal-Tanner 法がある. 180 再収束パルス印加前の MPG 傾斜磁場はプロトンの位相を分散させ,180 再収束パルス印加後の MPG 傾斜磁場はプロトンの位相を収束させる役割がある. 静止しているプロトンは一対の MPG 傾斜磁場により位相変化が相殺され, 信号に変化は起こらないが, 一対の MPG 傾斜磁場の印加の間隔に MPG 傾斜磁場と同じ方向に動いたプロトンは位相変化が残存し, 結果としてそれらの信号が低下する. つまり,MPG 傾斜磁場は, 拡散による動き を 位相のずれ として画像に反映させていると言える 25). 現在, 臨床で撮像されている拡散強調像は, 上述の Stejskal-Tanner 法と 3.9 節で述べた EPI 法をベースとした DWI SE-EPI 法が用いられている ( 図 4.3). 拡散現象は T1 値,T2 値といった従来の MRI のパラメータとは独立した物理現象で, 組織の構築, 組織の構成物ごとの物理学的性質, 組織の微細構造, 立体構造などの今まで画像化するのが困難であった微細構造を反映した MR 信号を得ることが可能となる. それを利用した画像は, 従来とは全く異なる物理的背景の画像となる. 臨床では, 超急性期脳梗塞などの病変の検出や鑑別に有用とされ, 頭部領域 MRI 検査のルーチン撮像として多くの施設で用いられている. 拡散強調像の信号は, 拡散係数が低い場合に高信号となる. また, 拡散強調画像は MPG 傾斜磁場を印加する前の撮像法 (EPI の T2 強調画像 ) の影響を受けてしまうため,T2 強調像由来の信号の解釈には注意が必要となる 26). 23

32 図 4.3 DWI SE-EPI のパルスシーケンスと MPG 傾斜磁場による位相変化 拡散強調像の信号強度 拡散 MRI では,MPG 傾斜磁場を印加することで 拡散による動き を 位相のずれ として画像に反映させている. この位相のずれ, つまり位相の分散を ±ππ[rad] の範囲で測定することで, 拡散の程度を信号の低下として画像化するということである.4.2 節で述べたように, 拡散は全ての拡散粒子が原点にあり, 拡散する空間に境界が存在しないことを条件としたとき, その拡散粒子の移動距離の分布は正規分布する. 原点から +xxに変位して位相が + ずれた核磁気モーメントμμと, 原点から xxに変位して位相が ずれた核磁気モーメントμμの存在確率は正規分布に従い同じで, これら二つの核磁気モーメントをペアとして考えると, そのベクトル和は必ずx 軸上に存在し, 大きさは2μμ cccccc ( 0) となる. したがって, 拡散しているプロトンの磁化の大きさMMは,x 座標 0~ に存在する μμの確率密度に2μμ cccccc を掛けたものを全て足し合わせればよいことになる 27). 正規分布 24

33 の確率密度分布は式 (4.6) より, 以下の通りになる. したがって, PP(xx, tt) = CC CC 0 = 1 4ππππππ eeeeee xx2 (4.6) 4DDDD MM = 0 2cccccc 1 4ππππππ eeeeee xx2 dddd 4DDDD 拡散変位距離 x の時間 t における位相 は, 磁気回転比 γγ[mhz/t]mpg 傾斜磁場強度を GG MMMMMM [T/m] としたとき, (xx, tt) = γγ GG MMMMMM (tt) xx(tt)dddd (4.9) と表現できる. 式 (4.8) および式 (4.9) より, となる. tt 0 tt 0 MM = eeeeee γγ 2 DD GG MMMMMM (tt )dddd 2 dddd (4.8) (4.10) ここで, 拡散していないプロトンの磁化の大きさ MM 0 は, 式 (4.7) においての = 0, す なわち cccccc = 1 の場合であるため, MM 0 = 0 2 となる. 式 (4.10) および式 (4.11) より これを解法すると, 1 4ππππππ tt 0 tt 0 eeeeee xx2 4DDDD dddd llll( MM MM 0 ) = γγ 2 DD GG MMMMMM (tt )ddtt =1 (4.11) 2 dddd (4.12) llll( MM MM 0 ) = DD γγ 2 GG MMMMMM 2 δδ 2 ( δδ 3 ) (4.13) ここで,γγ 2 GG MMMMMM 2 δδ 2 δδ 3 = bb と置くと, llll( MM MM 0 ) = bbdd (4.14) となる. このbbを b 値 (b value) と呼び, δδ を拡散時間と呼ぶ. 3 信号強度 SSは磁化 MMに比例するため, 次式 (4.15) が成り立つ. SS SS 0 = eeeeee ( bbbb) (4.15) 25

34 4.4.3 b 値 (b-value) の定義と信号強度への影響 b 値は, 拡散強調像における MPG 傾斜磁場の影響の大きさを表すパラメータである 節で述べたように b 値は次式 (4.16) で定義される. bb = γγ 2 GG 2 MMMMMM δδ 2 δδ (4.16) 3 式 (4.16) より読み取れるように b 値は,MPG 傾斜磁場の強度 GG MMMMMM [mt/m], 印加時間 δδ[ms], 印加間隔 [ms] を変更することにより調整することが可能である. この b 値を制御する ことで, 計測対象とする移動するスピンの位相変化を検出可能な ±π の範囲内に調整し, そのとき位相変化が 0 となっている計測対象, つまり b 値 の値の計測対象の信号が 最も高くなる. 基本的には b 値が小さいと, 移動速度の速い粒子から遅い粒子までの広い範囲を対象 とし,b 値が高いと移動速度の遅い粒子のみを対象とする. しかし, 大きな b 値を使用 すると, 移動速度の速い粒子と静止している状態に近い粒子との位相差が検出可能な位 相差 2π を超えるようになり, 位相変化が 2π の範囲に収まらなかった粒子の信号変化は反 映されない可能性がある 28). 言い換えると,2π を大きく外れて位相変化した粒子から信 号が取得できないということである. b 値を大きくするためには,MPG 傾斜磁場の強度 GG MMMMMM [mt/m], 印加時間 δδ[ms], 印加 間隔 [ms] を大きくすればよいが, 臨床 MRI 装置において GG MMMMMM は装置の傾斜磁場性能に よって決定されるので, 現実的には δδ もしくは を延長することで, 高い b 値を達成する. δδ もしくは を延長することは, 信号の読み取りまでの時間が延長することを意味し,TE の延長に低下につながり,SNR 低下や画像歪みの増悪, 信号低下を招く. このようなこ とから,b 値の大きさと信号強度はトレードオフの関係にあるといえる 26). 脳神経系では,b 値は 700~1000[sec/mm 2 ] 以上を用いることが多く, 灌流 ( 毛細血管の 中の血流 ) の影響がほぼ取り除かれる DWI となる. 図 4.4 b 値の変化によって観察される拡散の度合い 26

35 図 4.5 b 値による信号強度の違い みかけの拡散係数 (Apparent Diffusion Coefficient: ADC) とは 拡散現象は, 定量的な拡散の大きさを表すために, 拡散係数 Dを用いる. 拡散係数 Dは式 (4.15) を用いて算出するが,MRI の計測しているボクセルサイズ ( 数 mm) は, 生体内の動き ( 数十 µm) と比較すると非常に大きいため, 毛細血管流に代表される灌流 (perfusion) や他の種々の勾配もボクセル全体を巨視的に見れば, 様々な方向を向いており, ランダムな動きと同じことになる ( 図 4.6). つまり,MRI で計測される拡散では, 真の拡散 と濃度勾配は他の温度の高低, イオン勾配, 圧力や灌流などの要因と区別することができない. そのため,MRI では同程度の水分子の拡散 ( ランダムな動きをする拡散 ) をひとまとめにして 拡散 として扱い, それら拡散の動きを IVIM(IntraVoxel Incoherent Motion) と呼ぶ. よって, 生体内の拡散係数は, 純粋な拡散のみを扱っているわけではないので, みかけの 拡散係数 (Apparent Diffusion Coefficient: ADC) と呼ばれる.ADC は, 真の拡散係数 DD, 灌流している水分子の割合をff,b 値を b とすると, 次式 (4.17) で近似される. AAAAAA DD + ff (4.17) bb したがって,b 値が小さい場合には ADC は大きな値をとる. ここで MPG 傾斜磁場を印加しない場合の画像の信号強度をSS(0),b value = b としたときの MPG 傾斜磁場を印加した場合の画像の信号強度をSS(bb) とすると, 式 (4.15) より SS(bb) = SS(0) eeeeee ( bb AAAAAA) (4.18) が成り立つ. これを ADC について解法すると, AAAAAA = 1 bb llll SS(bb) (4.19) SS(0) と表せる. よって,ADC を求めるには, 少なくとも 2 種類の以上の b 値で撮像された画 像が必要となる. 多数の b 値を用いて ADC を算出するときは, 各 b 値における信号値 から回帰直線を求めることによって算出可能である. 臨床的に DWI を解釈する上では,ADC を画像化することで,T2 の影響を受けている のかの判別が容易となり, また, 定量評価が可能になる利点をもつ 26). 27

36 (a) (b) ボクセル内の水分子のランダムな動き毛細血管流などの局所の灌流もボクセルが大きいとランダムな動きをと水分子る図 4.6 ボクセル内の拡散流 (a: 水分子の拡散現象,b: 毛細血管流 ( 灌流 )) 4.5 拡散テンソル画像 (Diffusion Tensor Image: DTI) について 拡散の異方性と信号強度への影響 拡散の異方性とは, 計測する軸の方向, つまり MPG 傾斜磁場を印加する方向によって粒子の拡散の速さが異なる性質のことである. 生体内において, 細胞膜によって自由な拡散が妨げられたり, 毛細血管流などの微小な血流の影響を受けたりするため, 拡散しやすい方向と拡散しにくい方向がある. 特に, 大脳白質のような神経線維は方向が揃っているため, 神経線維に沿った方向の拡散は非常に早く, 神経線維との直交方向の拡散は非常に遅い. このように, 方向によって拡散の速さが異なることを異方性拡散という. 一方で, 脳脊髄液のような, 水分子の拡散があまり制限されず, どの方向にも同じくらいの速さで拡散する性質のことを等方性拡散という. 異方性拡散における信号値は, 拡散しやすい方向と同じ方向に MPG 傾斜磁場を印加する場合, 大きな拡散成分として観測される. 逆に, 拡散しにくい方向と同じ方向に MPG 傾斜磁場を印加する場合, 小さな拡散成分として観測される. 拡散成分が大きいということは, 小さい拡散成分と比べ, 位相の分散が速く進み, 結果として信号強度が低くなる. 例えば, 神経線維において, 神経線維の走行方向と同じ方向に MPG 傾斜磁場を印加した場合は, 神経線維は低信号として観測され, 直交方向に MPG 傾斜磁場を印加した場合は, 神経線維は高信号として観測される.MPG 傾斜磁場の印加方向による信号変化の概略図を図 4.7 に示し, 実際の画像を図 4.8 に示す. 28

37 図 4.7 MPG 傾斜磁場を印加する軸方向による信号値変化 図 4.8 脳における拡散の方向依存性 ここで,1 軸方向のみの MPG 傾斜磁場を印加した画像から求めた ADC 値は, 対象となる梁いい気が拡散異方性を持つ場合には, 方向に依存した値となるため, 等方性拡散を示す指標としては不適切である.1 軸方向のみの MPG 傾斜磁場を印加した画像から求めた ADC 値と, 異なった 3 軸方向以上の MPG 傾斜磁場を印加した画像から算出した等方性拡散の指標を区別するために, 後者を MD(Mean Diffusivity) と呼ぶことがある 29). 29

38 4.5.2 拡散テンソルの数学的基礎 拡散の異方性を表現するためには, 神経線維の走行方向に拡散する速さ, それに直交 する方向に拡散する速さと, それぞれの神経線維の方向ベクトルを合わせた 6 つの物理 量が必要となり, スカラー量やベクトルのみでは不十分で, テンソルという数学の概念を導入する. ここで, スカラーとは 長さや, 体積のように 1 つの値で表現される量 のことであり, テンソルとは 多線形性をもつベクトル変数の関数 つまり, ベクトルとベクトルを結ぶ線形関数 のことである 30). 零次テンソルが 1 1 の行列式, つまりスカラーで, 一次テンソルが 1 3 もしくは 3 1 の行列式で 2 次元のスカラーやベクトル, つまり 3 つの成分からなるものを表す.MRI では 3 次元空間を扱っているので,3 3 の行列式で表現され,3 次元のスカラーとベクトルを表す二次テンソル ( 二階のテンソルとも呼ぶ ) を用いる. 拡散テンソルDD は次式 (4.20) で与えられる. DD xxxx DD xxxx DD xxxx DD = DD yyyy DD yyyy DD yyyy (4.20) DD zzzz DD zzzz DD zzzz MPG 傾斜磁場の印加方向のベクトルをgg = (gg xx, gg yy, gg zz ), 実際の異方性拡散のベクトルを FF = (FF xx, FF yy, FF zz ) とし, 式 (4.15) と式 (4.20) を用いると gg xx DD xxxx DD xxxx DD xxxx gg yy FF xx FF yy = DD yyyy DD yyyy DD yyyy (4.21) FF zz gg zz DD zzzz DD zzzz DD zzzz ここで, 二次テンソルである拡散テンソルDD には 9 つの未知数の独立成分が存在するが, 拡散がガウス分布に従う場合には拡散テンソルDD は対称テンソルとなり,DD xxxx = DD yyyy, DD yyyy = DD zzzz, DD zzzz = DD xxxx が成り立ち, 実際には 6 つの独立成分を求めればよいこととなる. したがって, 少なくとも 6 方向以上の MPG 傾斜磁場を印加して, 拡散を計測する必要があり, 拡散テンソル画像を得るためには,MPG 傾斜磁場を印加しない (b=0) ときの信号も計測する必要があるので, 実質少なくとも 7 回以上の撮像が必要となる. 拡散に異方性があり, ある方向に拡散が速いとすると, その方向を長軸とする楕円体で表現することができる ( 図 4.9). その長軸方向は位置によって様々であり, この楕円体の基本軸の方向をx, y, z とすると, 座標軸 (x, y, z ) は MRI 装置固有の座標軸 (x, y, z) とは必ずしも一致しない. 装置固有の座標系で得られた拡散テンソルを原点中心に回転し, x, y, z 軸系に座標変換すると, 拡散テンソルDD の対角成分以外が消えてゼロになる. この操作を対角化という. 対角化により得られた 3 つの対角成分 λλ 1, λλ 2, λλ 3 ( ただし,λλ 1 λλ 2 λλ 3 ) を固有値 (eigenvalue) という. DD xxxx DD xxxx DD xxxx DD xx xx 0 0 λλ 対角化 DD = DD yyyy DD yyyy DD yyyy DD = 0 DD yy yy 0 = 0 λλ 2 0 DD zzzz DD zzzz DD zzzz 0 0 DD zz zz 0 0 λλ 3 30 (4.22)

39 対角化されたテンソルが持つ座標系は x, y, z であり, 拡散テンソル楕円体の基本軸 と一致する. この基本軸方向を示すベクトルを固有ベクトル (eigenvector) という. この 拡散テンソル DD の固有値はそれぞれの基本軸方向の拡散係数を示すことになる. 拡散テ ンソルDD が MRI 装置固有の軸と対象物との位置関係によって変化する量であるのに対 し, 固有値, 固有ベクトルはその対象に固有の量で観察座標に依存しない. 拡散テンソルDD を対角化して得られた各ボクセルの固有値や平均値を画像として表示したり, 各ボクセルの固有値をベクトルとして画像化することもでき, このような拡散テンソルの成分を使った画像および解析法を DTI と総称する. 図 4.9 拡散テンソル楕円体における観測系の座標軸と対角化された後の新しい座標系 ここで DTI から算出される代表的な指標である MD(Mean Diffusivity) および FA(Fractional Anisotropy) について述べる.MD とは, 各軸方向の MPG を印加して得られた画像から ADC を算出し, それらを足し合わせることによって得られる指標である.ADC は式 (4.19) からわかるように少なくとも 2 種類以上の b 値で撮像されていれば, MPG 傾斜磁場の印加方向が 1 軸方向のみでも求めることが可能であるが, 対象が拡散異方性を持つ場合には,ADC は方向に依存した値をとるため, 等方性拡散を表現するには不適切である.1 方向のみの MPG 傾斜磁場を印加して求めた ADC 値と, 異なった 3 方向の MPG 傾斜磁場を印加して得た画像を合成するなどして算出した等方性拡散の指標を区別するために, 後者を MD と呼ぶようになった 26).MD は拡散異方性を反映しない指標であるので, 臨床上汎用され, 拡散テンソルDD の固有値を用いて MD は次式 31

40 (4.23) で表現できる. この指標は拡散の大きさそのものを表す指標である. MMMM = λλ 1+λλ 2 +λλ 3 3 = DD (4.23) また, 拡散テンソルの対角成分と固有値の間には, DD xxxx + DD yyyy + DD zzzz = DD xx xx + DD yy yy + DD zz zz = λλ 1 + λλ 2 + λλ 3 (4.24) という関係が成り立ち, 全ての拡散テンソル成分がわからずとも DD xxxx, DD yyyy, DD zzzz がわかっ ていれば求めることが可能である. つまり, 少なくとも 3 方向以上の MPG 傾斜磁場を 印加することで MD は求めることができる. 一方,FA は異方性の強さを表現する指標であり, 等方性拡散からどの程度ずれてい るかを指標化している. FFFF = 3 2 (λλ 1 DD ) 2 +(λλ 2 DD ) 2 +(λλ 3 DD ) 2 λλ 1 2 +λλ2 2 +λλ3 2 (4.25) で定義されている.FA は規格化されており,0~1 の値をとる. 拡散が完全に等方性である場合,λλ 1 = λλ 2 = λλ 3 = DD となり,FA=0 となる. MD では, 上述のように拡散テンソルDD の全ての拡散テンソル成分がわからずとも, 式 (4.24) から間接的にλλ 1 + λλ 2 + λλ 3 の平均値を算出することが可能であったが,FA では, 装置固有の座標系で得られた拡散テンソルDD の全ての拡散テンソル成分が必要となるため, 少なくとも 6 方向以上の MPG 傾斜磁場を印加する必要がある 拡散テンソルトラクトグラフィ (Diffusion Tensor Tractography: DTT) と神経線維の追跡 拡散テンソルトラクトグラフィとは, 拡散強調像とテンソル解析による可能となった神経線維追跡技術 (fiber tracking) である. これはテンソル解析により算出した各ボクセルの固有値 λλ 1, つまり拡散楕円体における長軸方向を追跡していくことで, 疑似的な特定の神経線維束を描出することが可能である. トラクトグラフィの追跡方法には大きく分けて 2 つに分けられ, 決定 ( 論 ) 的 (deterministic) トラクトグラフィ と 確率 ( 論 ) 的 (probabilistic) トラクトグラフィ がある. 決定論的トラクトグラフィは, 最も初期に考案された線維追跡方法であり, 当初は確率論的トラクトグラフィが考案されるまで単に Tractography と呼ばれ, 現在でもそのような場合がある. つまり, 決定論的 や 確率論的 という言葉は両者の線維追跡方法を区別するために与えられたものであるといえる 26). 決定論的トラクトグラフィの線維追跡方法には大きく分けて 2 つに分けられ, 一つはストリームライン法で, もう一つは可変ステップ法と呼ばれている. 前者は, ボクセルの境界面で追跡方向を変化させる方法で, 次のボクセルになった時にそのボクセル内の固有値 λλ 1 方向で追跡を行い, これを繰り返していく方法である ( 図 4.10 (A)). 一方で後者は, 一定のステップ幅で逐次拡散テンソルの補正をしながら追跡方向を変化させていく 32

41 方法である 31) ( 図 4.10(B)). 図 4.10 代表的な決定論的トラクトグラフィの線維追跡方法 これらトラクトグラフィの問題点としては,1 つのボクセル内に様々な方向を持つ神経線維が混在する場合のトラクトグラフィの不正確性が挙げられる.MRI における空間分解能には限界があり, パーシャルボリューム効果によって, 線維交差部 (crossing) や接吻 (kissing), 扇状 (fannig) などに走行をしている神経線維の含まれるボクセル内のテンソル近似は不適切である場合が生じる. つまり, 本来であれば交差 分離しているはずの神経線維がテンソル解析をした結果,1 つの楕円体として表現されてしまい, どちらの特徴も消してしまうものとなる可能性が高くなる 26) ( 図 4.11). この決定論的トラクトグラフィの問題点を回避するために提案されたのが, 確率論的トラクトグラフィである. 決定論的トラクトグラフィでは走行方向を推定する点が同一であれば決定される走行も同一であるため, 開始点が同じ位置であれば常に同じ軌跡を辿る. したがって,1 つの追跡開始点からの追跡処理は一度しか行われない. 一方, 確率論的トラクトグラフィでは,1 つの追跡開始点から何度も追跡処理を繰り返す. その際, 同じ位置の追跡開始点であっても線維の追跡方向はあらかじめ決められた確率分布に基づきランダムに決定されるため, 追跡処理ごとに異なった走行方向が描かれる ( 図 4.12). 線維の走行方向の推定を一意に決定しないのは, パラメータ推定に対する不確実性を考慮するためである. 結果として,1 つの追跡開始点から何本もの追跡軌跡の中に抽出したい線維束に近いものが得られる可能性が高くなる. ただ, 確率論的トラクトグラフィでは, 計算コストが高く, 非常に時間を要する処理ということが欠点である. 33

42 図 4.11 パーシャルボリューム効果の影響 図 4.12 確率論的 Tractography による追跡経路 34

43 第5章 5.1 グラフ理論 はじめに 18 世紀初期 ケーニヒスベルク(現ロシア領)の町にはプレーベル川が流れ 7 本の橋が 架かっていた 当時 ケーニヒスベルクの人々は この全ての橋を 1 度ずつ渡って 出発 点へ戻ってくる道順を見つけ出すことができなかった この問題は ケーニヒスベルクの 7 つの橋の問題 と呼ばれ 1736 年 Euler がこの問題をグラフに置き換えて 出発点へ戻 ることが不可能なことを証明した(図 5.1) これがグラフ理論の起源とされている グラフ理論が対象とするグラフは 点(頂点 vertex ノード node とも呼ばれる)の集合 と 辺(枝 branch リンク link エッジ edge とも呼ばれる)の集合で構成され 我々が よく統計で扱う折れ線グラフや棒グラフといった 数値の変化量を示すためのグラフとは 異なるものである 32) グラフ理論は 人間の友好関係や感染症の拡散 集積回路の配列パターン表現 WorldWide Web システムにおけるページ間の関連性の表現 通信ネットワークの構成 電車の取 り換え案内 化学構造など多岐にわたる分野に応用されている 33) 近年では 脳の領域間 における解剖学的な結合や機能的な結合 いわゆる 脳内のネットワーク にグラフ理論 を用いて その脳内ネットワークの特性などを評価する研究がされている 特に O. Sporns らは human connectome というプロジェクトを立ち上げ 34) 精力的に研究を進めている 本章では グラフ理論で用いられる基本用語やグラフ理論から導かれる指標について 本研究で扱うものを中心に述べていく 図 5.1 ケーニヒスベルクの 7 つの橋の問題 35

44 5.2 グラフ理論における基礎と基本用語 グラフの構成とその分類 グラフは, 点集合 V と辺集合 E の組として G = (V, E) と表現される. 辺 (edge) は V の中の 2 点を結ぶ線分として表され, 向きがある場合とない場合がある. 前者を有向グラフ (directed graph) と呼び, 後者を無向グラフ (undirected graph) と呼ぶ. 同一の 2 点間に複数の辺がある場合, これらは多重辺 (multiple edges) あるいは並列辺 (parallel edges) と呼び, 多重辺が存在する場合を特に多重グラフ (multiple graph) と呼ぶ. 逆に, 多重辺が存在しないグラフは単純グラフ (simple graph) と呼ぶ. また, 点 (node) や辺 (edge) には重みやコストと呼ばれる数値が割り当てられることもあり, このようなノードやエッジに重みを持たせたグラフを重み付きグラフ (weighted graph) と呼ぶ 35). 重みを持たせないグラフは, エッジがあるかないか, つまり 0 か 1 かで表現するため, バイナリグラフ (binary graph) と呼ばれる. 図 5.2 にグラフの例を示す. 本研究では, エッジにトラクトグラフィで描出された線維の本数を重みとして表現し, 指方性を持たせていないので,undirected weighted graph を扱っていることになる. 図 5.2 グラフの種類 36

45 5.2.2 グラフの行列表現 グラフの行列表現には大きく分けて隣接行列 (adjacency matrix) と接続行列 (incidence matrix) の 2 種類がある. 隣接行列は 2 つのノード間が隣接しているか否かを表現し, ノードの数を n 個とすると,n n 行列で表される. 一方, 接続行列は各ノードとそこにエッジが接続しているかを表現し, ノードの数を n, エッジの数を e とすると,n e 行列で表される. グラフの行列表現の例を図 5.3 に示す. ネットワークトポロジー ( ネットワークの接続をグラフ理論的観点から見た時のグラフ構造, いわゆる図 5.2 のようなグラフ構造図 ) の性質は, 一般的に隣接行列で表現される. 本研究では, 前述に加え,5.2.1 節で述べたように undirected weighted graph を用いているため, 図 5.3(e) のような行列で表現される. なお, ノード自身へのエッジはないとするため, 対角成分は全て 0 であるとする. 図 5.3 グラフの行列表現の例 37

46 5.2.3 グラフ理論とスモールワールドネットワークモデル グラフ理論は 18 世紀に Euler が創始した学問であるが, グラフの解析的な取り扱いを大きく進歩させたのは,Erdős と Rényi である. 彼らは,1959 年に ランダムグラフ (random graph) (Erdős Rényi model: ER モデル ) というネットワークモデルを考案し, グラフ理論が構造化されたグラフを扱うのに対して, 確率を用いてグラフの構造化するということにスポットライトを当てた. ランダムグラフは, 同じノード, 同じエッジ数で乱数を用いて, ノードを他のノードへランダムにつなぐというルールで構成されるグラフである. それ以降, グラフ理論の分野では目立った進展はなかったが,1998 年に Watts と Strogatz は多数の蛍の点滅やコオロギの鳴き声が同調する現象を究明する中で, Watts-Strogatz model(ws モデル ) というスモールワールドモデルを考案し 36), 同様の性質が現実世界の様々なネットワークにも共通して存在することを発見し, 現実世界の様々な現象を説明する新たなパラダイムとして注目を集めた. この性質はスモールワールド性 (small-world) といい, 任意の 2 つのノードが, 中間にわずかな数のノードを介するだけで接続されるという性質である 37). 簡単な例を挙げると, 世間は狭い と言われるように, 一見赤の他人に見えても, 実際は中間に少数の人を介するだけでつながっているということである. スモールワールドモデルは, 現実世界のネットワークに近い性質を持つネットワークモデルを極めて単純なアルゴリズムで生成するもので, インターネットや食物連鎖, 論文の被引用関係, さらには脳内のネットワークにおいても適応が可能となった 36). スモールワールドモデルでは,1 全てのノードを近隣の n 個のノードと格子状にエッジでつなぎ規則的な格子グラフを仮定し,2それらのエッジを確率 p でランダムにつなぎかえるというアルゴリズムでグラフを生成する.p = 0 のとき, 元の規則的なグラフ (regular network) となり,p = 1 のとき, 全てのエッジがランダムにつなぎかえられたグラフ (random network) となる. そして 0 < p < 1 のときでは,regular network と random network を併せ持つ構造, いわゆるスモールワールド性を持つネットワークが生成され, このようなネットワークを small-world network と呼ぶ 38). 規則的なグラフ (p = 0) のとき, ネットワーク全体のクラスター係数 ( 隣接する任意のノード間が実際に連絡している割合の平均 ) は高くなり, 平均経路長 ( 任意のノードから任意のノードへ至るステップ数の平均 ) は長くなる. ランダムグラフ (p = 1) のとき, ネットワーク全体のクラスター係数は低くなり, 平均経路長は短くなる. そして, スモールワールド性を持つネットワーク (0 < p < 1) のときでは, 規則的なグラフに見られる高いクラスター係数とランダムグラフに見られた短い平均経路長を併せ持つ. スモールワールドモデルで構築されるグラフの例とそれらのネットワークにおけるクラスター係数 C(p) と平均経路長 L(p) の特徴を図 5.4 に示す 36). 38

47 図 5.4 スモールワールドモデルで構築されるグラフ例とそれらのネットワークにお けるクラスター係数 C(p) と平均経路長 L(p) の特徴 ( 参考文献 [36] より改変引用 ) 5.3 グラフ理論より計算される指標について 本研究で定量値として扱うグラフ理論より導かれるネットワーク指標について, 以下に述べる 最短経路長 (Shortest Path Lengths) について 最短経路長は 2 つのノードに対して定義され, ノード i からノード j に至る最短のエッジの数を意味する 39).i 番目のノードと j 番目のノードとの間における最短経路長 dd iiii は, dd iiii = aauuuu GG ii jj aa uuuu (5.1) と定義される. ここでGG ii jj はノード i とノード j の間の最短経路を意味し, その経路に含まれるすべてのaa uuuu を足すことによって, 最短経路長 dd iiii を算出する. 上記の算出方法は,binary graph においてのものである. 本研究で取り扱うグラフは weighted graph であるので, 実際には図 5.4 のようにエッジに付加されている重みを考慮 39

48 して最短経路長の算出する.weighted graph における最短経路長 dd iiii ww は, dd ww iiii = ww aa ww GG ii jj ff(ww uuuu ) (5.2) と定義される 39)40).ffは重み付きグラフを意味し,GG ww ii jj はノード i からノード j に至るま での最短経路である. 図 5.5 binary graph と weighted graph における最短経路長の算出 平均経路長 (Characteristic Path Lengths) について Characteristic Path Lengths は固有パス長や平均経路長とも呼ばれ, すべての 2 組のノード間の最短経路長の平均で表される 39)40). 平均経路長をLL pp とすると, LL pp = 1 LL nn ii NN ii = 1 jj NN,ii jj dd iiii nn ii NN (5.3) nn 1 で定義される. このとき,nnはノード数,LL ii はノード i と他のノード全てとの間の平均距離である. つまり, 平均経路長は各経路長の総和をノードの全ての組み合わせの数で割ったものに等しくなる. 平均経路長の算出の仕方を示したものを図 5.5 に示す. また,weighted graph における平均経路長は次式 (5.4) で求めることができる 39)40). LL ww pp = 1 ww jj NN,ii jj dd iiii nn ii NN (5.4) nn 1 40

49 図 5.6 平均経路長 (Characteristic Path Lengths) の算出例 クラスター係数 (Clustering Coefficient) について クラスター係数は各ノードに対して定義され, ノード i の次数 kk ii とノード i とその周りのノードで構成される三角の総数 tt ii で表現される. 次数 (degree) とはそのノード i に接続されているエッジの数であり, ノード i の次数 kk ii は隣接行列の i 行目の合計値 kk ii = jj NN aa iiii (5.5) に対応する. また, ノード i とその周りのノードで構成される三角の総数 tt ii, つまり, ノード i の隣に位置するノードがお互いに接続している割合は, tt ii = 1 2 aa iiiiaa iih aa jjh jj,h NN (5.6) で定義される 39)40). i 番目のノードのクラスター係数をCC ii とすると, ネットワーク全体のクラスター係数 CC は, 式 (5.5) と式 (5.6) より 41

50 CC = 1 CC nn ii NN ii = 1 2tt ii nn ii NN (5.7) kk ii (kk ii 1) となる. ここで, ノード i の周りの三角の総数 tt ii は, 次数がkk ii のとき, 最大 kk ii (kk ii 1)/2となるため, その最大値で正規化してネットワーク全体で平均をとり,CC を算出している. 図 5.7 ノード i におけるクラスター係数の算出例 weighted graph の場合, 次数はノード i に接続されているエッジの数で定義されているため変わらず, ノード i とその周りのノードで構成される三角の総数 tt ii は次式 (5.8) で定義される 33). tt ii ww = 1 2 (ww iiiiww iih ww jjh ) 1/3 jj,h NN (5.8) つまり,weighted graph の場合のクラスター係数は, と表現することができる. CC ww = 1 CC nn ii NN ii ww = 1 ww 2tt ii nn ii NN (5.9) kk ii (kk ii 1) Global Efficiency について Global Efficiency(EE gggggggggggg ) はノード i, j 間の効率性 εε iiii の平均値で定義され, これはどの程度効率的に情報のやり取りをしているかを表現している. 効率性 εε iiii は最短経路長 dd iiii に 反比例する. ここで, ノード i における効率性をEE ii とすると,Global Efficiency は次式 (5.10) で表すことができる 39)40). EE gggggggggggg = 1 EE nn ii NN ii = 1 εε iiii nn ii,jj NN,ii jj nn 1 = 1 1 nn(nn 1) ii,jj NN,ii jj (5.10) dd iiii また,weighted graph の場合は次式 (5.11) で定義される. ww EE gggggggggggg = 1 1 nn(nn 1) ii,jj NN,ii jj ww (5.11) dd iiii 42

51 5.3.5 Local Efficiency について Local Efficiency(EE llllllllll ) は, ノード i に隣接するノード j, h のみで構成されたグラフ ( サブグラフ ) における効率性 EE llllll,ii の平均値で定義されている. また, ノード j, h 間のサブグラフ内の効率性 EE llllll,ii は, そのサブグラフ内での最短経路長 dd jjh (NN ii ) の逆数の平均値とノード j, h の次数で表現される. よって,Local Efficiency(EE llllllllll ) は次式 (5.12) で定義することができる 39)40). EE llllllllll = 1 nn ii NN EE llllll,ii = 1 aa iiii aa iih dd jjh (NN ii ) 1 jj,h NN,jj h nn ii NN (5.12) kk ii (kk ii 1) また,weighted graph の場合の Local Efficiency は, 次式 (5.13) で定義される. ww = 1 ww (ww iiii ww iih dd jjh(nnii ) 1 jj,h NN,jj h ) 1/3 nn EE llllllllll ii NN (5.13) kk ii (kk ii 1) Small -World property について Small-World property は, 対象とするグラフが small-world network を有するかどうか検証するための指標である 40) 節で述べたが,small-world network とはランダムグラフと元の規則的なネットワークの間に位置するネットワークであり, それらの双方の特徴を持つ, つまり高いクラスター係数 (high Clustering Coefficient) と短い平均経路長 (low Characteristic Path Lengths) をあわせ持つネットワークである. したがって,small-world network を有するかどうか調べるには, 対象となるグラフとそのグラフから構成されたランダムグラフから生成された平均経路長やクラスター係数などを比較すればよい. これを指標化したのが Small-World property と呼ばれる指標である. 他にも small worldness と呼ばれる指標も存在するが, 本研究では取り扱わないので省略する. Small-World property は規格化された平均経路長 λλとクラスター係数 γの比で与えられ, それらは次式 (5.14) および (5.15) で与えられる 40). λλ = LL pp rrrrrrrr LL pp rrrrrrrr (5.14) γγ = CC pp rrrrrrrr CC pp rrrrrrrr (5.15) ここで,LL rrrrrrrr pp は対象グラフの平均経路長,LL rrrrrrrr pp は対象グラフから構成されたランダムグラフの平均経路長,CC rrrrrrrr pp は対象グラフのクラスター係数,CC rrrrrrrr pp は対象グラフから構成されたランダムグラフのクラスター係数である.Small-World property はγ/λλで表されるため, 43

52 Small-World property = γγ λλ = CC pp rrrrrrrr LL rrrrrrrr pp CCrrrrrrrr pp LLrrrrrrrr pp (5.16) と表現できる. しかし実際は, ランダムグラフは乱数で制御されるため, 乱数が変われば当然ネットワークトポロジーも変わり, そのグラフから計算される平均経路長やクラスター係数などの指標も多少変化する. そのため, ランダムグラフをいくつも作成し, それらから計算された指標の平均値を用いる. つまり, 実際算出した Small-World property は次式 (5.17) のような式で求められる. Small-World property = 1 ( CC pp rrrrrrrr LLrrrrrrrr pp (nn) nn nn CC rrrrrrrr pp (nn) LLrrrrrrrr ) (5.17) pp 本研究では, 参考文献 [40] を参考に n=100 で Small-World property を算出した. 44

53 第 6 章アルツハイマー病とレビー小体型認知症の 病態と診断 6.1 はじめに アルツハイマー病とレビー小体型認知症は, 認知症性疾患の中でも 1 番目と 2 番目に多い疾患であり, この 2 つの疾患は認知症性疾患のおよそ 7 割を占める 41). 認知症は脳神経細胞が変化して機能障害に陥り, 知的機能が低下することで発症する. 神経細胞の長期生存性から, 加齢とともに影響を受ける確率が高まるため, 高齢になるほど認知症性疾患の罹患率は増加する. 現在, わが国では 65 歳以上の高齢者が総人口の 25% 以上を占める超高齢社会を迎えた. その患者数は年々増加傾向をたどり, 今後もさらに患者数は増加することが予想され, 医療費や介護に伴う支出は大きな社会問題となっている. 本章では, 初めに認知症についての基礎知識を述べた後, アルツハイマー病およびレビー小体型認知症の臨床症候, 従来の画像検査について述べる. 6.2 認知症について 認知症の概念 認知症 という言葉は, 疾患や 病気の名前ではなく, 様々な原因で脳の働きが低下し, 生活に大きな問題を引き起こしている状態を指す言葉である. 認知症性疾患は, 原因となる病気によってタイプが異なり, その中でも最もよく知られ, 多いのがアルツハイマー病である. レビー小体型認知症はアルツハイマー病に次いで 2 番目に多い認知症性疾患である. 他の認知症性疾患として, 脳血管性認知症, 前頭側頭型認知症, 特発性正常圧水頭症などが挙げられる 41)42). とりわけ, アルツハイマー病, レビー小体型認知症, 脳血管性認知症は三大認知症と言われている. 認知症に対する根治治療は, 未だないのが現状である. したがって認知症への治療法は, 必須症状である認知機能障害 ( 中核障害 ), および周辺症状, いわゆる非認知領域の障害 ( 知覚 思考内容 気分 異常行動など ) などの行動 心理的症状に対する対処療法や介護が中心となる 42)43) 認知機能評価スケールの種類 現在, 認知機能の評価には, 様々なものが開発, 使用されてきた. また, 使用にあたり質問内容に時代の変化を反映した改定がされ, わが国での使用に向け内容が検討され 45

54 るなどの試みが続けられている. 今日広く使用されている多種にわたる認知機能評価スケールは, 評価の目的, 施行方法や対象者などにより大別することができる 44). 評価の目的では, 知能あるいは認知機能障害, 痴呆にみられる行動障害, 精神症状の評価に分けることができる. 施行方法では, 対象者に直接質問するテスト式の評価法と, 介護者から聴取する観察式に分けることができる. 表 6.1 に代表的な認知機能評価検査の種類と特徴を示す. 施行方式 検査種 表 6.1. 認知症機能評価検査の種類と特徴 認知機能 行動障害 目的 精神症状 重症度 動作性検査の有無 HDS-R( 改訂長谷川式簡易認知評価スケール ) 44) 無 特徴 痴呆のスクリーニングテスト. 簡便かつ短時間で施行でき, 被験者の負担が少ない. 教育歴の影響が少なく, 広範な対象者に適応可能. テスト式 観察式 WAIS-R(Wechsler Adult Intelligence Scale-Revised) 44) - - 有 MMSE(Mini-Mental State Examination) 44) 有 ADAS-cog(Alzheimer's Disease Assessment Scale) 44) - - 有 CERAD(Consortium ot Establish a Registry for - - 有 Alzheimer's disease test) 44) GDS(Geriatric Depression Scale) 45) 無 CDR(Clinical Dementia Rating) 46) - - 有 FAST(Functional Assessment Staging) 47) - - 無 Behave-AD(Behavioral Pathology in Alzhemer's - - 無 Disease) 43) NPI(Neuropsychiatric Inventory) 48) - 無 16~64 歳を対象とする成人用知能テスト. 施行に多くの時間を要し, 動作性検査が多いため, 被験者の負担も多い. 国際的によく用いられる痴呆のスクリーニングテスト. 簡便かつ短時間で施行でき, 被験者の負担が少ない. 年齢と教育歴の影響を受ける. 幅広く認知症をとらえ, 認知機能の経時的変化に対して敏感. 施行に多くの時間を要し, 動作性検査が多いため, 被験者の負担が多い. 比較的簡便で信頼性も高く, 経時的変化を追跡することに優れる. 教育歴の影響を受けやすい. 高齢者用の心理テストで, うつ病状のスクリーニングに用いられる. 簡便かつ短時間で施行でき, 被験者の負担が少ない.GDS の短縮版として GDS-S などがある. 国際的によく用いられる認知症評価検査. 特に, 病理所見との対応で使用頻度の高い検査. 被験者への負担は比較的少ない.CDE ほど厳密な評価法ではないが, より短時間で行え, CDR では分類できない進行期の AD にも有用. 周辺症状を対象とし, その症状に対する薬物療法の効果判定に用いられ, 臨床で使いやすい. 周辺症状を対象とした認知症評価検査. 非薬物的介入, 薬物介入を含めた介入においても有用とされ, 国際的にも広く用いられる. 46

55 6.2.3 MMSE について MMSE(Mini-Mental State Examination) とは,1975 年に Folstein らによってせん妄と認知症を機能性精神疾患から鑑別するためのベッドサイド検査として考案された. 現在では, 認知症のスクリーニング検査として国際的に最もよく用いられている 49). 検査内容としては,11 個の質問項目 (1 時間の見当識,2 場所の見当識,33 単語の記銘,4 注意と計算,53 単語の想起,6 物品呼称,7 復唱,83 段階命令,9 読解,10 書字,11 構成 ) があり, それらは1 見当識,2 記憶,3 注意と計算,4 言語,5 視覚構成といった5つの認知領域を評価する 30 点満点の検査となる. 判定基準として Folstein らは, 正常高齢者の MMSE 平均得点は 27.6±1.7 点であり,24 点未満の場合に認知障害が疑われると報告している 50).MMSE を認知症のスクリーニングとして用いられる場合,23 ~24 点がカットオフ値として妥当だと考えられ, 年齢や職業 教育水準にもスコアに影響を与えることが知られている 49)50). 6.3 アルツハイマー病について アルツハイマー病の概念 アルツハイマー病 (Alzheimer s Disease: AD) は初老期 (40 歳以上 65 歳未満 ) に発症する原因不明の認知症をきたす疾患である 51). 若年期 (40 歳未満 ) に発症することはきわめてまれである. 神経病理学的な特徴は, 大脳皮質や海馬の萎縮であり, 顕微鏡的には, そこに1 神経細胞の脱落,2 細胞外の老人斑,3 細胞内の神経原線維変化の沈着, が広範に認められる. 老人斑の主要構成成分としてはアミロイドβタンパク (Amyloidβ protein: Aβ), 神経原線維変化の主要構成成分としては微小管結合タンパクの一つであるタウタンパクが高度にリン酸化されたものが同定されている 52). Aβは 40~43 のアミノ酸からなる分子量 4000 程度のペプチドであり,Aβ 前駆体タンパク質 (APP) からセレクターゼと呼ばれるタンパク質分解酵素による異常な分解がされ, 産生 沈着する. 正常では大部分の APP は Aβペプチドの中ほどで切るααセレクターゼで分解され,Aβは産生されないが, アルツハイマー病では Aβペプチドの上末端で切断するβセレクターゼや下末端で切断するγγセレクターゼによる異常分解が生じ,Aβが産生 沈着する 53).Aβ は,γγ セレクターゼの分解する箇所によって, Aβ40~Aβ43 になり, 特に,Aβ42 の増加がアルツハイマー病の発症に重要だと考えられている 52). タウタンパクは神経軸索内の分子量約 5 万の微小管結合タンパクであり, 細胞内で細胞骨格を形成している微小管と結合し, 細胞骨格の安定に寄与する. このタウタンパクがリン酸化酵素によってリン酸化されると, タウタンパクは微小管から分離しタウタンパク同士で結合し神経原線維変化を生じると考えられている 54). 神経原線維変化はアルツハイマー病以外にも, 進行性核上性麻痺や皮質基底核変性症などの神経変性疾患や Niemann-Pick 病などの先天性代謝異常症などの認知症性疾患の脳内にも蓄積することが知られており, 認知症の発症に極めて重要なタンパクである 52). 47

56 アルツハイマー病では,APP から Aβが産生され, 脳内に沈着することで老人斑ができ, それが引き金となって神経細胞に障害を与え, タウの重合を引き起こし, 神経原線維変化が形成される. 神経原線維変化の中には, 過剰にリン酸化されたタウで構成される線維が含まれ, そのタウの異常が最終的に神経細胞の死を引き起こし, 認知症に至る. このような考えはアミロイド仮説 ( あるいはアミロイドカスケード仮説 ) と呼ばれ,1992 年に提唱されて以来, 多くの研究者に指示されている. 図 6.1 アミロイド仮説の概略図 アルツハイマー病の臨床所見 アルツハイマー病の診断には, 臨床所見と画像所見を合わせて診断することが重要である. アルツハイマー病に特徴的な臨床症状は,1 初老期から老年期の発症,2 皮質性認知症 ( 陳述記憶の障害である健忘が著しく, 記憶障害を中心に見当識障害や思考, 判断力の障害が見られ, 失語, 失行, 失認などの高次脳機能障害も加わってくる ),3 緩徐な進行性,4 認知機能障害が意識障害によらない,5 感情や意欲の低下 6 幻覚や妄想などの心理症状,7 徘徊や攻撃傾向などの異常行動, などが挙げられる 42). アルツハイマー病の症状は大きく分けると中核症状と周辺症状 (BPSD: behavioral 48

57 and psychological symptoms of dementia) に分類される. 中核症状は認知症の直接の原因である神経細胞死が起こる症状で, 認知症患者全てが抱える症状である. 一方, 周辺症状は中核症状を背景にして, または独立して生じる精神 感情 行動障害などの非認知症状を指す. 中核症状では, 記憶障害, 失語, 失行, 失認, 遂行機能の障害が挙げられる. 周辺症状では, 幻覚, 妄想, 誤認症候群, せん妄, 抑うつ, アパシー ( 無関心 ), 徘徊, 食行動異常, 排泄行動異常などが挙げられる 43). 図 6.2 認知症における中核症状と周辺症状 ( 参考文献 [43] から改変引用 ) アルツハイマー病の画像検査 CT や MRI においては, 脳血管障害の同定や正常圧水頭症, 慢性硬膜下血腫, 脳腫瘍などの治療可能な認知症の鑑別が最も重要な目的の一つである. アルツハイマー病では, 早期に海馬や海馬傍回などの内側側頭葉領域が萎縮し, 進行するに従い, 側頭頭頂連合野などの大脳皮質に病変が進展し, そして萎縮は大脳全域におよび, 脳室系の拡大も目立つようになる. また, 大脳白質の変性 ( 白質希薄化 ) も出現してくる 42). 脳萎縮以外にも, 脳アミロイドアンギオパチー (Cerebral Amyloid Angiopathy: CAA) を反映した皮質下微小出血がある. 脳アミロイドアンギオパチーは老人版を形成する Aβが, 髄膜や脳実質内の動脈, 毛細血管に沈着する病態であり, アルツハイマー病との強い関連を持つ. 通常, 加齢とともに増加することが知られているが, アルツハイマー病では, 高頻度に伴うと報告されている 55). アルツハイマー病の神経病理変化は, シナプス機能の低下が先行し, 神経細胞死の結果を反映した脳萎縮がそれによって引き続いて生じると考えられている. よって, 脳の 49

58 代謝や血流を評価することのできる SPECT や PET は, 理論上, アルツハイマー病の病理変化をより早期に捉えることができると考えられている. SPECT における脳血流シンチグラフィでは, 123 I-IMP や 99m Tc-HMPAO, 99m Tc-ECD といった放射性医薬品を用いることにより, 脳血流の分布を定性的に評価できる. アルツハイマー病では, 最初に後部帯状回から楔前部において脳血流の低下が生じ, また, 病初期からは大脳皮質の縁上回, 角回などの頭頂連合野の血流低下がある. その後, 側頭頭頂連合野全体に脳血流低下領域は広がり, さらに進行すると, 前頭葉も含めた連合皮質の血流が広範に低下する. PET 検査では,FDG や PIB などといった放射性医薬品が用いられる.FDG-PET では, グルコース代謝が活発なシナプス機能を鋭敏に反映することから, 世界中でアルツハイマー病の早期診断や鑑別診断に以前より広く用いられてきた. また, 脳血流より直接的に脳神経活動を反映していることや解像度が優れているという点で,SPECT よりもアルツハイマー病の診断精度において優れていると考えられている. しかし, わが国では, 保険適応外であるため, 日常臨床には応用しがたい 56).PIB-PET とは, アミロイド PET のことを指し, アルツハイマー病の原因である Aβの脳内沈着を観察することが可能である. しかし, 対象となる放射性医薬品は 11 C で標識されており, その半減期は 20 分と短く, 現状サイクロトロンを保有している施設のみでしか検査は出来ないなどの制約がある. 6.4 レビー小体型認知症について レビー小体型認知症の概念 レビー小体型認知症 (Dementia with Lewy Bodies: DLB) は, アルツハイマー病についで頻度が高い変性認知症であり,1980 年に小坂らに提唱された. 大脳皮質などの中枢神経系を中心に多数のレビー小体の出現を特徴とする. レビー小体とは, 神経細胞内に見られる異常な円形状の封入体であり,ααシヌクレインと呼ばれるタンパク質の蓄積によって発現する 41). このレビー小体が神経細胞に沈着 変性することで, 神経細胞が脱落する. また,ααシヌクレインが原因で神経細胞の変性 脱落が起こる病気をααシヌクレオパシーと呼び, レビー小体型認知症の他に, パーキンソン病や多系統委縮症などが挙げられる 41). 老年期に発症し, 進行性で変動する認知機能障害, 繰り返す幻視, パーキンソニズム ( 振戦, 筋固縮, 無動, 姿勢保持障害の内,2 つ以上が該当する ), レム睡眠行動障害, 起立性低血圧などの症状が見られる神経変性疾患である. 病態としては, 大脳皮質, 扁桃体, 黒質, 青斑核, 縫線核, 迷走神経背側核などに多数のレビー小体とレビー関連神経突起が発現し, 神経細胞の脱落や大脳皮質や海馬の萎縮, 黒質 青斑核の色素脱落が見られる 42 ). アルツハイマー病との脳病理合併は, 軽度が 13.2%, 中度が 7.8%, 高度が 7.8% である 42). 50

59 6.4.2 レビー小体型認知症の臨床診断基準 1 必須症状 : 正常な社会 食後湯機能を妨げる進行性の認知機能低下が存在する 記憶障害は病初期に目立たないことがあるが, 通常進行とともに明らかになる 注意や遂行機能および視空間機能障害が目立つことがある 2 中核症状 : 以下の 3 項目中,1 項目存在すれば possible DLB,2 項目以上存在すれば probable DLB (1) 注意や覚醒レベルの顕著な変動を伴う認知機能の変動 (2) 詳細で具体的な内容の幻視 (3) 特発性パーキンソン症候 3 示唆症状 : 中核症状が 1 項目に加え, 示唆症状が 1 項目以上存在すれば probable DLB, 中核症状はないが, 示唆症状が 1 項目以上存在すれば possible DLB (1) レム睡眠行動障害 (2) 顕著な抗精神病薬に対する過敏性 (3) SPECT または PET で大脳基底核におけるドパミントランスポーター取り込み低下 4 支持症状 : 特異的ではないが, 通常存在する症状 繰り返す転倒と失神 一過性の意識障害 重度の自律神経症状( 起立性低血圧, 尿失禁 ) 幻視以外の感覚様式の幻覚 系統的な妄想 抑うつ状態 CT や MRI 検査における, 内側頭葉領域の ( 相対的 ) 保持 SPECT や PET 検査における, 後頭葉領域の血流低下 MIBG 心筋シンチグラフィの取り込み低下 脳波検査における, 側頭葉の一過性鋭波を伴う顕著な徐波化 5 DLB の診断を支持しない特徴 (1) 脳血管性障害の存在 (2) 他の身体疾患 脳疾患の存在 (3) 重篤な認知症の時期に初めてパーキンソニズムが出現 51

60 6.4.3 レビー小体型認知症の画像検査 CT や MRI においては, アルツハイマー病と同じく大脳の全般的な萎縮が見られるが, 海馬の萎縮が軽度である. また, 内側側頭葉が比較的保たれていることが, レビー小体型認知症の支持特徴とされる. しかし, 萎縮の程度は症例によって差があり, アルツハイマー病とのオーバーラップも少なくないので, 萎縮の有無のみでレビー小体型認知症とアルツハイマー病を鑑別するのは困難である 57). SPECT や PET においては, アルツハイマー病と異なり, レビー小体型認知症では病初期から後頭葉の血流 代謝の低下がみられ, 鑑別に有用である 58). また, 123 I-MIBG 心筋シンチグラフィでの取り込み低下がみられる.2013 年には SPECT 製薬である 123 I-FP-CIT の薬事承認がなされ, この製剤を用いた検査をすることで, パーキンソン病やレビー小体型認知症の特徴である黒質線条体ドパミン作動性ニューロンの変性を鋭敏に捉えることができる. また, ドパミントランスポーター PET による黒質変性は, 運動障害を発症する以前に検出可能であるとされる レビー小体型認知症の診断の難しさ レビー小体型認知症は, 症状が多様で個別性が高いということもあり, 診断の難しさにつながっている. 例えば, 初期にパーキンソニズムが出現し, 中期から幻視や認知障害が発現する場合と, それとは全く逆の場合もある. レビー小体型認知症の初期には認知障害が目立たないことが多く,CT や MRI による脳の器質的変化は著しくない. 加えて, 幻覚や妄想, 抑うつ症状などがみられる場合が多いため, 機能的な精神障害と誤認される可能性がある. 一方, 認知障害が著しい場合, それだけに注目するとアルツハイマー病と誤診してしまうこともある. また, 初期症状がパーキンソニズムを発現したり, 自律神経症状が現れたりする場合もあるので, パーキンソン病や自律神経に伴う身体疾患などと捉えられてしまうことも少なくない 59). これらことからレビー小体型認知症は, アルツハイマー病やうつ病, 遅延性パラフレニア, 統合失調症, パーキンソン病などとよく誤認されてしまう. さらに,6.4.1 節でも述べたが, アルツハイマー病とレビー小体型認知症が合併している場合もあるのでより鑑別が難しくなる. ただし, 両疾患には様々に異なる特徴もある ( 表 6.2) 41)58). 52

61 表 6.2 アルツハイマー病とレビー小体型認知症の特徴の違い 主な障害部位 特徴的な症状 経過 アルツハイマー病 頭頂葉 側頭葉 記憶障害 見当識障害 物盗られ妄想 徘徊緩徐に進行する レビー小体型認知症 後頭葉 幻視, 妄想 抑うつ状態 パーキンソニズム 認知の変動 自律神経障害 抗精神病薬に過敏性あり緩徐に進行することが多いが, まれに急速に認知機能が低下することがある 男女比女性に多い男性に多い CT /MRI 所見 PET /SPECT 所見病理所見蓄積蛋白 海馬の萎縮 大脳の全般的な萎縮 側頭葉 頭頂葉の血流および代謝低下 神経原性線維変化 老人斑 Aβ タウ蛋白 海馬の萎縮は比較的軽度 後頭葉の血流および代謝の低下 レビー小体 αシヌクレイン 53

62 第 7 章アルツハイマー病とレビー小体型認知症における 拡散テンソル構造的ネットワーク解析を用いた 脳内ネットワークに関する研究 7.1 本研究の背景および目的 認知症は脳神経細胞が変化して機能障害に陥り, 知的機能が低下することで発症し, 認知症の原因となる病気によってタイプが異なる. とりわけアルツハイマー型認知症 ( アルツハイマー病 (Alzheimer s disease:ad)) とレビー小体型認知症 (Dementia with Lewy bodies:dlb) は, 認知症全体の中で占める割合が高く, 病態の解明と治療法の開発が急がれている認知症性疾患である.AD の特徴的な臨床症状には物忘れ, 認知障害, 妄想, 徘徊などが挙げられ,DLB の特徴的な臨床症状は動揺性の認知機能障害, 幻視, パーキソニズムが挙げられる 60).AD と DLB は臨床症状が重複することもあり, 混合病理症例も頻発するため, 臨床上これらの疾患の鑑別が問題となることも多い. また,DLB はコリンエステラーゼ阻害薬が有効である一方, 抗精神病薬に対して副作用が発現し易い点や, 転倒からの骨折, 誤嚥からの肺炎を併発し,downhill course を辿り易い点で, 臨床経過や予後が異なるため, 正確な診断が要求される 61). AD と DLB などの認知症の臨床画像検査では,N-isopropyl-p-[I 123 ] iodoamphetamine (IMP) や 99m Tc-ethyl cysteinate dimer (ECD) などを用いた脳血流シンチグラフィ, 18F-fluorodeoxyglucose (FDG) を用いた PET などが主であるが 62), これらは放射線医薬品を使用するため放射線による被ばくを伴う. これに対して, 核磁気共鳴画像法 (Magnetic Resonance Imaging: MRI) は放射線による被ばくがなく, 脳を高いコントラストで描出することができる. MRI における AD と DLB の画像診断法として, 灰白質体積の減少による脳萎縮程度の評価が挙げられる. 一方で, 水分子の挙動を画像化する拡散強調像 (Diffusion-Weighted Imaging: DWI) の発展系である拡散テンソル画像 (Diffusion Tensor Imaging: DTI) を用いて, テンソル解析することで脳白質の神経束を描出する拡散テンソルトラクトグラフィ (Diffusion Tensor Tractography: DTT) という技術がある. 近年では,DTI や機能的 MRI(functional MRI: fmri) をグラフ理論と組み合わせることで, 脳の領域間における解剖学的な結合や機能的な結合, いわゆる 脳内のネットワーク の構造の特性を定量的評価することができる 63)64). さらに脳領域間の連絡や脳全体における情報伝達の効率, 連結の強さなどを特徴づけることができ 65), 脳内神経の相互作用を解明することが可能であると注目されている. 正常発達 66) 67) 68), 加齢, 神経変性疾患において 54

63 もグラフ理論を用いた構造的コネクティビティ解析が応用され, その有用性が報告されている. 近年, 神経変性疾患における病態生理の概念として, 脳内ネットワークの変容が提唱されており 69), 統合失調症やてんかん, 多発性硬化症など多様な精神疾患や神経変性疾患について研究が盛んに行われている.AD と DLB においても,fMRI による機能的ネットワーク解析でもネットワークの変容が報告されているが 70),DTI を用いてグラフ理論解析し, それらの鑑別を試みたという報告はまだ存在しない. 本研究の目的は, グラフ理論に基づいた拡散テンソルによる脳白質の構造的ネットワーク解析を用いて,AD と DLB 間の脳内ネットワークの差異を明らかにすることである. 7.2 対象 本研究は, 首都大学東京荒川キャンパス研究安全倫理委員会 ( 承認番号 15056) および順天堂大学医学部附属順天堂医院病院倫理委員会 ( 承認番号 471) の承認を受けている. 対象は, 上記倫理委員会で承認された方法により, 自らの意志で参加を希望し, 説明を受け同意を得た, 神経内科医によってそれぞれの認知症の診断がなされた方々である. 本研究では,AD 患者 15 名 ( 男 : 女 =7:8, 平均年齢 :73.0 歳 ±7.8 歳 ) および DLB 患者 7 名 ( 男 : 女 =2:5,74.0 歳 ±7.1 歳 ) を対象とした. 表 7.1 にその他の患者背景を示す. それぞれにおいて両疾患群で有意差検定をし, 年齢, 罹病期間,MMSE については t 検定, 性別についてはΧΧ 2 検定で検定した. 有意水準は 5% とした. 表 7.1 患者背景 AD (n = 15) DLB (n = 7) p value 性別, 男 : 女 7 : 8 2 : 5 NS (0.421) 年齢 [ 歳 ], 平均 (SD) 73.0 (7.8) 74.0 (7.1) NS (0.799) 罹病期間 [ ヵ月 ], 平均 (SD) 34.5 (20.6) 42.3 (22.9) NS (0.835) MMSE[ 点 ], 平均 (SD) 21.1 (4.8) 17.3 (6.1) NS (0.312) Note : AD; アルツハイマー病,DLB; レビー小体型認知症 NS; Not Significant(p > 0.05) 55

64 7.3 使用機器と撮像パラメータ 本研究で使用した MRI 装置は順天堂大学医学部付属順天堂医院の臨床用 3T-MRI (Achieva, PHILIPS) で, 信号受信には 8-channel head coil を使用し, 拡散テンソル画像と 3D-T1 強調画像を撮像した. 拡散テンソル画像の取得には SE 型 single-shot EPI パルスシーケンスを使用し,T1 強調画像の取得には MPRAGE(Magnetization-Prepared Rapid Gradient-Echo Imaging) シーケンスを使用した. 撮像パラメータは次の通りである. DTI: TR / TE = 5452 / 70 [ms]; resolution = 1.75 [mm] 1.75 [mm]; slice thickness = 3.0 [mm]; FOV = 224 [mm] 224 [mm]; Matrix = ; NEX = 2; b value = 0, 1000 [s/mm 2 ]; MPG = 32 directions; Δ / δ = 39.0 / 28.0 [ms]. 3D-T1WI (MPRAGE): TR / TE = 9653 / 67 [ms]; resolution = [mm] [mm]; slice thickness = 0.86 [mm]; FOV = 260 [mm] 260 [mm]; Matrix = 解析方法 connectivity matrix の取得方法 撮像により取得した raw data(dti と 3D-T1WI) から connectivity matrix を作成した. connectivity matrix とは, 脳内における空間的に離れた二地点間での接続の強さ ( グラフ理論におけるグラフ ) を行列の形として表現したものである.connectivity matrix の作成までには, 複数のプロセスがあり, そのプロセスの一連の流れを Connectome Mapper ( から入手可能 ) 71) と呼ばれるソフトウェア パイプラインを使用して解析処理をした ( 図 7.1).Connectome Mapper での処理は,Preprocessing stage, Segmentation stage, Percellation stage, Registration stage, Diffusion and tractography stage, Connectome stage の計 6 個のステージに分かれており, ステージによって使用されるソフトウェアが異なる. この各解析をつなぐパイプラインには,Nipype というフリーソフトウェアが用いられている.Nipype は, プログラミング言語の Python でニューロイメージ解析の環境を作成するコミュニティである NiPy の下で, 複数のソフトウェアのパイプラインを簡単に作成することができる.Nipype は t/nipype/ から入手可能である. 本研究で著者は,VMware Player 上で,Ubuntu(version 12.04) と呼ばれる Linux ディストリビューションを導入し, そこで Connetome Mapper を動作させた.VMware Player は から入手可能であり,Ubuntu は /releases/ / から入手可能である. VMware Player は仮想化環境を構築することができ,1 台の PC で複数 OS の実行を可能とする. 本研究において, 各ステージで実際に行われた処理概要について下記する. 56

65 図 7.1 Connectome Mapper の起動画面 Preprocessing stage Preprocessing stage では,FSL の一部機能である MCFLIRT や Eddy correct を使用して, 拡散テンソル画像の動きや渦電流による歪みの補正をする.MCFLIRT は動きの補正であり, アフィン変換により拡散テンソル画像の b=0 画像に他の拡散テンソル画像を合わせこむ機能である.Eddy correct は渦電流による歪みの補正をする機能である. 使用ソフトフェアは FSL というOxford 大学の FMRIB Analysis Group が開発した, 脳の FMRI MRI DTI 画像を解析するためのツール群であり, から入手可能である. 57

66 Segmentation stage Segmentation stage では,T1 強調画像をもとに白質, 灰白質 ( 皮質や皮質下構造 ), 脳脊髄液に領域分ける処理 ( 以降セグメント (segment) と呼ぶ ) をする. その後, 皮質下構造はさらに約 40 もの領域にセグメントされ, 自動的に解剖学的な名前や位置情報が付与され, これはラベリングと呼ばれる. 皮質下構造の自動セグメントおよびラベリングは, 脳構造位置の確率情報を含むアトラスに基づいて解析される. 特に, FreeSurfer ではこの処理を Subcortical Segmentatnion と呼ぶ. 使用ソフトウェアは FreeSurfer で Massachusetts General Hospital の Martinos Center for Biomedical Imaging が開発し, 脳の標準化機能を有するツール群で から入手可能である. Percellation stage Segmentation stage では皮質下構造のセグメントがされていたが,Percellation stage では皮質表面の自動セグメントおよびラベリングが実行される. これらは, 事前に手動でラベリングされたトレーニングセット ( モデル構築に使用されるデータ ) から推定された確率情報に基づいて,Desikan-Killiany atlas や Destrieux atlas などといった皮質表面モデル上に神経解剖学的ラベルを割り当てられる. 本研究では, Desikan-Killiany atlas を用いた皮質表面のパーセレーション解析をし, 最終的に, 皮質および皮質下構造は 83 の領域 (node) に分割される. 使用ソフトウェアは Segmentation stage と同様,FreeSurfer である. Registration stage Registration stage では, 拡散テンソル画像の b=0 画像に T1 強調画像を線形変換し, 重ね合わせる. この時の変換パラメータを Segmentation stage および Percellation stage で作成された皮質および皮質下構造の分割された領域についても適応させ,T1 強調画像と同じように変形し, 拡散テンソル画像の b=0 画像に重ね合わせる. 使用ソフトウェアは Preprecessing stage と同様,FSL である. Diffusion and tractography stage Diffusion and tractography stage では, 全脳におけるトラクトグラフィをする. Connectome Mapper では決定論的トラクトグラフィと確率論的トラクトグラフィの両方とも選択が可能であるが, 現状では確率論的トラクトグラフィを組み込んだパイプラインが実装されておらず, 決定論的トラクトグラフィの一択のみであるため 71), 本研究では Diffusion Toolkit を用いた決定論的トラクトグラフィによる全脳の fiber tracking をした. 使用ソフトウェアは Difusion Toolkit というフリーソフトウェアで,Massachusetts General Hospital の Martinos Center for Biomedical Imaging が開発した. また,TrackVis と呼ばれる拡散 MRI 解析ツールの一部のソフトウェアであり, 主に拡散画像に対す 58

67 るトラクトグラフィに用いられる. から入手可能である. Connectome stage Connectome stage では, 皮質および皮質下構造のセグメント結果と全脳トラクトグラフィの結果を組み合わせることで,connectivity matrix を算出する. 皮質および皮質下構造は 83 もの領域にセグメントされ, その内の特定 2 領域間において tractography が何本描かれたかが connectivity matrix に反映される.83 領域あるため, connectivity matrix は の行列として表現される. また,connectivity matrix に反映されるものはトラクトグラフィが何本描かれたかだけでなく,FA や ADC,GFA 等の値の平均値をトラクトグラフィに沿って当てはめていくことで, それに応じた重みづけされた connectivity matrix を得ることができる. しかし, 現段階の Connectome Mapper では, 拡散定量値によって重み付けした connectivity matrix を得ることができず, 領域間の線維の本数によって定義 connectivity matrix を採用した. なお,connectiviry matrix の出力ファイル形式はいくつか選択可能であるが, グラフ理論解析をするときには Matlab を用いるため,Matlab で読み込める形式である Mat を選択する. connectivity matrix とグラフの簡易的な見方について概略図を図 7.2 に示す. また, Connectome Mapper による解析のフローチャートを図 7.3 に示す. 図 7.2 グラフと connectivity matrix の関係本研究では weighted graph を採用しているため,connectivity matrix に振られる値は 2 領域間でのトラクトの描かれた本数を反映する. 59

68 図 7.3 Connectome Mapper による解析のフローチャート まず 取得した T1 強調像を基に脳を 83 の領域に分割化する それを線形変換し 拡 散テンソル画像に合わせ込む これがグラフ理論で言うノードに相当する 拡散テンソ ル画像に位置合わせされた 83 個のノードを用いて 全ての各ノード間でトラクトを描く そのときに引けた神経束の本数がエッジに相当する この得られたノードとエッジの情 報より Connectivity matrix が作成される 60

69 7.4.2 グラフ理論を用いたネットワーク解析 前節で述べた Connectome Mapper によって算出された connectivity matrix から, グラフ理論を用いてネットワーク解析をした. グラフ理論を用いたネットワーク解析には MATLAB 2014a(Mathworks 社 ) の toolbox である Brain Connectivity Toolbox (BCT) 70) を使用した.BCT は無料で公開されており,Matlab2010 以降のバージョンで動作する ( 入力する connectivity matrix は正方行列である必要があり, 自己接続を含まないようにする必要がある. つまり,connectivity matrix は n n 行列のマトリクスであり, かつマトリクス内のセルNN ii,ii ( マトリクスの左上から右下への対角線上の値 ) は 0 である必要がある.BCT で算出できる指標は多数の存在する. 本研究では, 脳全体のネットワーク指標である Characteristic Path Length (CPL),Global Efficiency (GE), 局所のネットワーク指標である Local Efficiency (LE),Clustering Coefficient (CC), 脳内ネットワークのスモールワールド性の指標である Small-World property (SW) を評価対象とした.Local Efficiency と Clustering Coefficient に関しては, 全 node の平均値を用いた. 使用した各指標についての概念について表 7.2 および図 7.3 に示す. 統計解析には SPSS(Statistical Package for the Social Sciences for Windows, Release 21.0, IBM 社 ) を用いて,AD 患者群と DLB 患者群間で, 各ネットワーク指標について比較した. 統計解析方法には Bonferoni 補正をした student t 検定を用いた. 脳全体のネットワーク指標である CPL, GE, LE, CC, SW については,p < 0.05 用いたネットワーク指標の数 = 0.01を有意とした. 5 表 7.2 ネットワーク指標の概念 Measure Implications ネットワーク内の node 全ての組み合わせ間の平均最短経路長. Characteristic Path Lengths ネットワーク内における並行処理情報伝達の効率性の指標. 最短経路長の逆数の調和平均で計算される. Global Efficiency ネットワーク内における情報伝達の効率性の指標. Local Efficiency ネットワーク内の局所における情報伝達の重要性の指標. ある node の隣に位置する node がお互いに接続している割合. ネ Clustering Coefficient ットワークにおける機能的分離性 ( 接続強度など ) の指標. 局所的に隣接する node 同士のつながりは強いままで, ネットワーク全体における任意の node 同士の平均経路が短いネットワークという 2 つの特徴を併せ持つネットワークを表現する指標. Small-World property 64) Small-World property(σ)>1 であるとき, そのネットワークはスモールワールド性を有することを示す. スモールワールド性とは, ある 2 つの node が中間にわずかな数の node を介するだけで接続されるという性質. 61

70 図 7.4 ネットワーク指標の概念図 7.3 結果 AD 患者と DLB 患者の脳全体における各ネットワーク指標に対する平均値, 標準偏差と t 検定における比較結果を表 7.3 に示す. アルツハイマー病に比較して, レビー小体型認知症では, Global Efficiency(p = ) および Small-World property (p = 0.005) の有意な低下を示した.Characteristic Path Length, Clustering Coefficient, Local Efficiency では, 有意水準 1% において, 有意な差は認められなかったが, レビー小体型認知症で低下傾向にあった. 両疾患のどちらにおいても脳全体におけるネットワーク指標に MMSE および罹病期間との有意な相関は見られなかった. 表 7.3 AD と DLB 間の脳全体におけるネットワーク指標の比較 AD (Mean±SD) DLB (Mean±SD) p value Characteristic Path Length 59.41± ± Global Efficiency ± ± * Local Efficiency ± ± Clustering Coefficient 75.73± ± Small-World property 2.17± ± * Note: AD; アルツハイマー病,DLB; レビー小体型認知症 *Significant difference between groups. 62

71 7.4 考察 本研究では, レビー小体型認知症患者はアルツハイマー病患者と比較して,Global Efficiency が有意に低下していた (p=0.009).global Efficiency は Shortest Path Length の調和平均の逆数で定義され,Global Efficiency が低いほど Shortest Path Length の調和平均が延長していることを示している. つまり, レビー小体型認知症患者では, アルツハイマー病患者より脳領域間の情報交換の効率性が低下していることを示す. これは fmri によるネットワーク解析の先行研究とも一致している 70). アルツハイマー病患者と比較してレビー小体型認知症患者では,Small-World property が有意に低下しており (p=0.005), スモールワールド性が低いことが示された.Small-World property は一般に Clustering Coefficient の低下および Characteristic Path Length の上昇とともに低下する. 本研究では, レビー小体型認知症患者で Clustering Coefficient が低下傾向であったことから, node 同士の接続強度を表す Clustering Coefficient の低下, すなわち脳領域間の connectivity が弱くなったことが Small-World property 低下の要因となったと考えられる. レビー小体型認知症における白質変性のプロセスは, 大脳白質におけるααシヌクレインの蓄積によって神経細胞に発現するレビー小体や糸屑上の無数の異常神経突起である Lewy neurite のようなレビー病理の存在, アミロイド前駆体タンパク質などの軸索輸送物質の蓄積による軸索輸送障害が関与していると考えられている 73). コリン作動性シナプスと呼ばれるアセチルコリンを神経伝達物質とする神経の障害に作用するコリンエステラーゼ (ChE) は, アセチルコリンを分解し, アセチルコリン系の神経活動を低下させる働きを持ち, レビー小体型認知症では, アルツハイマー病よりもコリン作動性シナプスの障害が強いことが知られている 74)75). また, 健常者やアルツハイマー病に比べ, レビー小体型認知症では, 側頭葉や前頭葉における細胞体内の非リン酸化神経フィラメントが有意に増加すると言われ, 軸索構造を保つ重要な役割を果たす神経フィラメントタンパク質の異常発生が軸索構造異常の原因となっている可能性がある 73). これらコリン作動性シナプスの障害や軸索構造異常のような神経病理的な側面, 神経化学的な側面などの様々な異常が, 脳内ネットワークにおける長距離接続に影響を及ぼす可能性があり, 近距離ニューロン群の皮質内接続を阻害する可能性がある 76)77). その結果として生じる変化が, 本研究での脳全体のネットワーク指標に反映されたものであろうと考える. 本研究にはいくつかの課題がある. 一点目は, レビー小体型認知症の症例数が 7 例と少なかったことである. 症例数が少ない場合, 結果に隔たりが生じ, 信頼性が落ちる可能性がある. そのため, さらに症例数を増やして解析をすることが必要であると考えられる. 二点目はトラクトグラフィによる神経追跡の曖昧性についてである. トラクトグラフィによる神経の描出される数や精度は, 画質 ( アーチファクトやボクセルサイズ,TR/TE など ) や印加する MPG の方向や軸数, さらに解析するソフトウェアにも影響される. 本研究では Connectome Mapper という解析環境で解析し, 決定論的トラクトグラフィという神経線 63

72 維追跡で解析を行っている.DTI による決定論トラクトグラフィでは,voxel 内における異なる繊維方向の混在 ( 図 4.11) やアーチファクトの影響で, その voxel での繊維方向の推定が曖昧になってしまう. その曖昧性を回避するために高分解能拡散画像 (high angular resolution diffusion imaging: HARDI) 78)79) や歪みの少ない RESOLVE(readout segmentation of long variable echo-trains) 80) の適用, 決定論的トラクトグラフィより神経追跡の曖昧性を低減させることのできるとされる確率論的トラクトグラフィを用いる必要があると考える. 三点目は, 機能的なネットワーク connectivity と構造的なネットワーク connectivity の結びつきに対する検討, つまり DTI を用いたグラフ理論解析と fmri を用いたグラフ理論解析の結びつきに対する検討が未だなされていないことが挙げられ, 構造的なつながりと機能的なつながりの関係を明らかにすることは, 今後における重要な課題であると考える. 四点目は,connectivity matrix の標準化が挙げられる.connectivity matrix はグラフの種類や解析するソフトウェアの違いにより脳領域の分割数や描出されるトラクト本数に差異がある. これによりグラフ理論から計算されるネットワーク指標の値は大きく異なる場合があるため,connectivity matrix の値を最小値及び最大値を 0~1 の間で標準化したり, 最適な脳領域の分割数などを検討する必要があると考える. 最後に, 本研究では脳の全体的なネットワーク指標でのみ評価したが, 領域ごとにネットワーク指標を算出したり, 前頭葉や側頭葉などより大きな括りでの脳内ネットワークの比較やその大きな領域内でのサブネットワーク解析をすることで, より精度の高い鑑別診断につながる可能性がある. 7.5 結論 本研究では, 新しい解析法である 拡散テンソルに基づく構造的ネットワーク解析 により, 従来の拡散 MRI 解析にはなかった GE や SW といった脳内ネットワークに有意な差があることを示すことができた. アルツハイマー病と比べ, レビー小体型認知症では脳内ネットワークの効率性の低下や, 脳領域間の接続強度の低下を反映すると思われるネットワークの変容を示唆する結果が得られた. 構造的ネットワーク解析により, 疾患のバイオマーカーとしての可能性を見出し,AD と DLB の鑑別の可能性を示唆した. 64

73 第 8 章本研究のまとめ 近年では,DTI や機能的 MRI(functional MRI: fmri) をグラフ理論と組み合わせることで, 脳の領域間における解剖学的な結合や機能的な結合, いわゆる 脳内のネットワーク の構造の特性を定量的評価することができ, 脳領域間の連絡や脳全体における情報伝達の効率などの脳内ネットワークの様々な側面を表現することが可能となっており, 注目されている. このグラフ理論解析を用いた先行研究には, アルツハイマー病や統合失調症, てんかん, 多発性硬化症など多様な精神疾患や神経変性疾患について研究が盛んに行われているが,AD と DLB において,DTI を用いてグラフ理論解析し, それらの鑑別を試みたという報告はまだ存在しない. 本研究では, 神経内科医師によって AD と診断された患者 15 名と,DLB と診断された患者 7 名に対し,DTI と T1 強調像を取得し, グラフ理論解析をすることにより算出されたネットワーク指標 (Characteristic Path Length; CPL,Global Efficiency; GE, Local Efficiency; LE, Clustering Coefficient; CC, Small-World property; SW) について AD と DLB 間で比較 検討した. 得られた結果は,AD と比較して,DLB では,GE(p = ) および SW(p = 0.005) の有意な低下を示した.CPL,LE,CC について有意差は認められなかった.AD と比べ, DLB で GE が低下していることから, DLB は AD より情報伝達の効率が悪いことが示され, これは過去に報告された fmri における先行研究と一致した. 今後の課題として, まず,DLB の症例数が 7 例と少なかったため, 今後増やしていく必要がある. 次に,Connectome Mapper という解析環境で解析したが, この環境では決定論的トラクトグラフィで神経線維追跡を行っているため,voxel 内における異なる繊維方向の混在やアーチファクトの影響で, その voxel での繊維方向の推定が曖昧になってしまうことがある. その曖昧性を回避するために高分解能拡散画像 (high angular resolution diffusion imaging: HARDI) や RESOLVE(readout segmentation of long variable echo-trains) の適用, 確率論的トラクトグラフィを用いる必要があると考える. さらに,connectivity matrix のグラフの種類や解析するソフトウェア違いによる脳領域の分割数や描出されるトラクト本数の違いによって, グラフ理論から計算されるネットワーク指標の値は大きく異なる場合があるため,connectivity matrix の値を規格化したり, 最適な脳領域の分割数などを検討する必要があると考える. 最後に, 本研究では脳の全体的なネットワーク指標でのみ評価したが, 領域ごとにネットワーク指標を算出したり, 前頭葉や側頭葉などより大きな括りでの脳内ネットワークの比較やその大きな領域内でのサブネットワーク解析するで, 新たな鑑別診断のバイオマーカーの発見につながる可能性があると考える. 以上より, 本研究には課題があるものの,DTI にグラフ理論というアプローチを加えることで, 従来の拡散 MRI 解析にはなかった GE や SW といった脳内ネットワークに有意な差があることを示すことができた. よって,DTI を用いたグラフ理論解析では,AD と DLB 65

74 間の全脳における脳内ネットワークの変容の差異を反映し,AD と DLB の鑑別診断におい て有用であることが示唆された. 66

75 Appendix 1 - 略語一覧 - ( 略語 ) ( 英語 ) 11C-PIB 123I-FP-CIT 123I-IMP 123I-MIBG 18F-FDG 99mTc-ECD 99mTc-HMPAO AD ADC APP Aβ BCT BPSD CAA CC CPL CT DLB DTI DTT DWI EPI FA FID fmri FOV GE GFA GRE Gx Gy Gz 11C-Pittsburgh Compound B 123I-N-(3-fluoropropyl)-2ββ-carbomethoxy-3β-(4-iodo-phenyl)nortropane N-isopropyl-p-[I 123 ] iodoamphetamine 123I-metaiodobenzylguanidine 18F-fluorodeoxyglucose 99mTc-ethyl cysteinate dimer 99mTc-hexamethylpropylene amine oxime Alzheimer s Disease Apparent Diffusion Coefficient Amyloid-beta Precursor Protein Amyloid-Beta Brain Connectivity Toolbox Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia Cerebral Amyloid Angiopathy Clustering Coefficient Characteristic Path Length Computed Tomography Dementia with Lewy Bodies Diffusion Tensor Imaging Diffusion Tensor Tractography Diffusion Weighted Imaging Echo Planer Imaging Fractional Anisotropy Free Induction Decay functional Magnetic Resonance Imaging Field Of View Global Efficiency Generalized Fractional Anisotropy Gradient Recalled Echo readout gradient phase encode gradient slice selective gradient 67

76 HARDI High Angular Resolution Diffusion Imaging IVIM IntraVoxel Incoherent Motion LE Local Efficiency MD Mean Diffusivity MMSE Mini-Mental State Examination MPG Motion Probing Gradient MPRAGE Magnetization-Prepared Rapid Gradient-Echo Imaging MRI Magnetic Resonance Imaging NEX Number of Excitations NMR Nuclear Magnetic Resonance PET Positron Emission Tomography RA Relative Anisotropy RESOLVE REadout Segmentation Of Long Variable Echo-trains RF Radio Frequency SE Spin Echo SPECT Single Photon Emission Computed Tomography SPL Shortest Path Lengths SW Small-World Property T1 T1 relaxation time T2 T2 relaxation time T2* T2* relaxation time TE Echo Time TR Reputation Time VR Volume Ration 68

77 Appendix 2 Connectome Mapper の導入方法 - ( 現在 ) 本節では,1 仮想環境を導入するのに必要な VMware Player のインストール,2 仮想環境である Ubuntu のインストール,3 解析ツールである Connectome Mapper のインストール, を中心に述べていく. なお,Connectome Mapper の導入には筑波大学の根本先生のウェブページ ( と google groups を参考にした. ソフトウェアのインストールについて述べる前に, それらソフトを導入する PC に推奨されるスペックについて説明する. 推奨される PC のスペックは (i)windows 64bit 版,(ii) メモリ 4GB 以上,(iii)10GB 以上のハードディスクの空き容量が最低限のスペックである. 1 VMware Player のインストール VMware Player 上で 64bit 版の OS を動作させる場合,Intel Virtualization Technology を有効化させる必要がある. この設定は PC の BIOS で設定可能であり,PC の電源を入れてすぐ特定のキーを押すと BIOS 画面に切り替えることが可能である.BIOS 画面への切り替えは基本的には PC の製造会社によって異なるため, 各製品のマニュアルを参照していただきたい.BIOS 画面に入ったら, Inten(R) Virtualization Technology を探し, そこの設定をデフォルトの Disabled から Enabled に変更後, 保存して終了する. ここまで設定が終了したら, VMware Player のインストールに進む. VMware Player は からダウンロード可能である. このリンクから Windows 64bit 版をダウンロードする. ダウンロードが完了したら, インストーラーを起動し, インストールウィザードに従ってセットアップをする. VMware Player のインストールが完了したら, 次のステップである Ubuntu のインストールに進む. 図 1 VMware Player のダウンロード画面 ( 69

78 2 Ubuntu のインストール Linux(windows や Macintosh と同じで OS の一種 ) にはディストリビューションと呼ばれるパッケージがいくつも存在し, それらのパッケージはディストリビューターと呼ばれる人々によって提供されている. ここでは, Connectome Mapper をインストールするため, Ubuntu というディストリビューションをインストールする. Ubuntu には様々なバージョンが存在するが, 今回の目的である Connectome Mapper のインストールは, Ubuntu のバージョンによっては起動できないものもある. そのため, ここでは著者がインストールに成功したバージョンの Ubuntu をインストールしていくこととする. まず, Ubuntu のパッケージのダウンロードは, /releases/precise/ で可能である. 前述のリンクから Ubuntu desktop-amd64.iso を選択し, ダウンロードする ( 図 2). 図 2 Ubuntu のダウンロード画面 ( /releases/ /) 次に, VMware Player を起動し, 図 3 のように 新規仮想マシンの作成 をクリックする. その後, 仮想マシン作成ウィザードが起動するので, 図 4 に従って進めていく. 図 3 VMware 起動画面 70

79 図 4 VMware の設定 71

80 図 4 VMware の設定 ( 続き ) (a) 後で OS をインストール を選択し, 次へ をクリックする. (b) ゲスト OS は Linux, バージョンは Ubuntu 64 ビット を選択し, 次へ をクリックする (c) 仮想マシンに名前をつける. ただし, 注意点として, 全角スペース, 半角スペース, 全角文字, 日本語などは使用しないこと. ここでは connectome と名前をつける. 保存場所は適当に設定する. (d) ディスク最大サイズは外付け HDD を使用することを考慮すると 20GB でも可能. しかし, 大きいことに越したことはないため, ここでは 128GB に設定する. この項目は PC のスペックに大きく依存する. 仮想ディスクは 単一ファイル で問題ない. 設定が終わったら, 次へ をクリック. (e) ハードウェアのカスタマイズを選択する. (f) メモリは最低 4GB 必要となり, 多いほど良い. プロセッサは並列処理をする過程があまりないため, 好みの設定で良い. (g) 新規 CD/DVD を選択し, 接続 の項目は ISO イメージファイルを使用する にチェックを入れ, 参照 をクリックし, 先程ダウンロードした ubuntu の iso イメージファイルである Ubuntu desktop-amd64.iso を選択する. その他, 設定したい項目があれば設定し, 閉じる をクリックする. (h) 設定が完了したら, 完了 をクリックする. 72

81 図 4 に従って設定を終えると,VMware の起動画面で Connectome という仮想マ シンが新たに作成される ( 図 5). ここまで設定し終えたら, Connectome を選択し, 仮想マシンの再生 で実際に起動する. 図 5 仮想マシンの再生 起動すると,Ubuntu のインストール画面が立ち上がるので, 初期設定をしていく. 初めに使用言語の設定があるが, ここでは英語を選択する ( 図 6). これはソフトウェアの中には, 日本語での使用を想定していないものもあり, 言語設定によってはエラーが発生するものや, 起動することすらできないものもあるためである. 図 6 Ubuntu の言語設定 73

82 言語の設定が終わったら, 図 7 のような手順でオプションの設定をしていく. この設定をし終わったときに,Ubuntu のアップグレードについて問われるが, 無視する. (a) (b) (c) (d) (e) (f) 図 7 オプション設定画面 74

83 (g) (h) (i) 図 7 オプション設定画面 ( 続き ) (a) 初めの画面では, 何も選択せずに Continue をクリックする.Ubuntu では, アップデートが頻繁に行われるが, アップデートに伴い, 以前動作していたソフトウェアが正常作動しなくなるという事例もあるため, アップデートをする場合は注意が必要である. (b) Erase disk and install Ubuntu を選択し, Continue をクリックする. (c) Install Naw をクリックし, インストールを開始する. (d) 都市名を選択し (Tokyo のままでよい ), Continue をクリックする. (e) キーボードのレイアウトを設定し, Continue をクリックする. (f) ユーザー情報を設定する. ここでは, ユーザー名を con nectome とし, パスワードも connectome とした. また, ログイン時にパスワードを入力するかどうかの設定をし終えたら, Continue をクリックする. (g) インストールが終了するまで待つ. (h) インストールが終了したら, Restart Now をクリックし, 再起動する. (i) この画面が出たら, Enter を押す. 次に,VMware Player のメニューから 管理 VMware Tools のインストール を選択する. 選択後,CD のアイコンの VMware Tools がマウントされ, ウィンドウが表示されるので, そのウィンドウにある VMwareTools-.tar.gz ( は version によって異なる ) というファイルをデスクトップにドラッグし, ファイルをコピーする. このときウィンドウが最大化されている場合があり, ウィンドウを縮小するためには図 8 に示す箇所をダブルクリックすると, 縮小される. また, このダブルクリックした箇所は, アクティブになっているウィンドウのメニューバーに相当する. 75

84 図 8 Ubuntu におけるメニューバーの表示 ここまで終了したら, 管理者として開く という機能を追加していく. まず, デスクトップ上で Ctrl + Alt + T を押し, ターミナルを立ち上げる. ターミナルは Windows でいう コマンドプロンプト のようなもので, コマンドで PC を操作することが可能である ( 動作や仕様など異なる ). ターミナルをアクティブにし, sudo add-apt-repository ppa:nae-team/ppa を入力する. 正しくコマンドが入力されていると, Press [ENTER] to continue or ctrl-c to cancel adding it と表示されるので,Enter を押し, 命令を続行させる. ターミナルの左端に マシン名 :~$ と表示されると, 処理が終了したことを示し, 次のコマンドが入力できる状態となる. ここで,sudo は特殊なコマンドで, 一時的に管理者権限を用いてコマンドを使用するコマンドで, パスワードの入力が必要になる. パスワードの入力画面は図 9 のように文字を入力しても, 何も打ち込めていないように見えるが, 実際にはちゃんと入力できている. 入力が終了したら,Enter を押す. 図 9 ターミナル画面およびパスワード入力画面 次に, sudo apt-get update && sudo apt-get install nautilus-open-as-root と入力する. 途中, Do you want to continue [Y/n]? と表示されるので, y とタイプし,Enter を押す. その後, nautilus -q とコマンドを入力するか, 右上のメニューから一度ログアウトして ( 図 10), 再度ログ 76

85 インしなおす. 図 10 ログアウトの場所 再ログイン後, デスクトップにコピーしたファイル (VMwareTools-.tar.gz) を右クリックすると, メニューに Open as Root という選択肢が増える. ここでは, まず, デスクトップにコピーしたファイルを右クリックし, Extract Here をクリックし, ファイルを展開する. vmware-tools-distrib というフォルダが生成されるので, そのフォルダを右クリックし, Open as Root を選択する. すると, 図 11 のような表示がされるので, 設定したパスワード ( ここでは connectome) を入力する. 図 11 Open as Root を選択したときのパスワード入力画面 パスワードを入力すると, vmware-tools-distrib のウィンドウが開く. その後, その中にある vmware-install.pl をダブルクリックし, Run in Terminal を選択すると, ターミナルが立ち上がり,VMware Tools のインストールが開始される. このとき, 様々な質問がターミナル上でされるが, 基本的にはデフォルトで良いので, 質問がされる度に Enter を押す. インストールが終了したら, 一度ログアウトし, 再度ログインする. その後, ターミナルを立ち上げ, sudo apt-get install gedit と入力し, gedit というテキストエディタをインストールする. ここまでで,Ubuntu のインストールは終了となる. 77

86 3 Connectome Mapper のインストール Connectome Mapper は様々な画像統計解析ソフトのライブラリを呼び出すパイプラインである. そのため, 処理の内容はそれぞれのソフトウェアに依存する. 処理は, Preprocessing stage, Segmentation stage, Percellation stage, Registration stage, Diffusion and tractography stage, Connectome stage の計 6 種類のステージに分かれていて, それぞれのステージで使用されるソフトウェアは予めインストールする必要がある. 具体的には, connectoe Viewer, FSL, MRtrix, TrackVis, Diffusion Toolkit, Freesurfer, Camino, Camino-TrackVis, MITK, MITK-Diffusion, Nipype, Connectome Mapper である. 以降から, Connectome Mapper のインストールについて述べていく. 初めに,NeuroDebian のリポジトリを登録する. 日本でのミラーサイトは筑波大学 ( 時点 ) の根本清貴先生が管理されているので, 公開キーをそこからダウンロードする. を開き, 図 12 のように,OS は Ubuntu LTS Precise Pangolin (precise), ダウンロードサーバーは Japan (Kiyotaka Nemoto), components は all software を選択すると, 公開キーおよびコマンドが出現する. その Wev 上に出現したコマンド ( 下記コマンド ) をコピーし,Ubuntu 上でターミナルを立ち上げ (Ctrl + Alt + T), コピーしたコマンドを張り付け実行する. wget O- sudo tee /etc/apt/sources.list.d/neurodebian.sources.list sudo apt-key adv --recv-keys keysever hkp://pgp.mit.edu:80 0xA5D32F012649A5A9 その後, 以下のコマンドを入力する. sudo apt-get update 図 12 NeruoDebian のレポジトリ登録 ここまで終了したら, 各ソフトウェアのインストールをする. インストールをする際は, 下記コマンドを順に入力する. 途中, インストールを続行するかどうか確認される場合があるので, y とタイプしたり,OK や Enter を押してインストールを続行する. 78

87 connectome Viewer のインストール sudo apt-get install connectomeviewer FSL のインストール sudo apt-get install fsl fslview fslview-doc MRtrix のインストール sudo apt-get install mrtrix Oracle Java のインストール Camino をインストールするために必要な Oracle Java をインストールする. ターミナルを開き, 下記コマンドを順にタイプする. sudo add-apt-repository ppa:webupd8team/java sudo apt-get update sudo apt-get install oracle-java7-installer sudo apt-get install oracle-java7-set-default 途中,BIOS 画面のようなウィンドウになることもあるが,OK や Yes,Enter を押せば, スムーズにインストールが完了する. Lapack のインストール Camino-TrackVis をインストールに必要な Lapack をインストールする. sudo apt-get install libblas-dev liblapack-dev libatlas-base-dev Connectome Mapper に必要なライブラリのインストール sudo apt-get install libboost-program-options-dev libnifti-dev libblitz0-dev sudo apt-get install libboost-program-options git のインストール sudo apt-get install git これ以降に記述するソフトウェアは apt-get コマンドではインストールできないため, 各ソフトウェアのダウンロードサイトからダウンロードし, インストールを自身でやる必要がある. Diffusion Toolkit と TrackVis のインストール にアクセスすると, アドレスとパスワードが聞かれるので, 登録していない場合は Sign up から登録し, ソフトウェアをダウンロードする. また, ダウンロードする際は,Ubuntu からダウンロードす 79

88 ること 時点での動作確認の出来ているソフトウェアのバージョンは Diffusion_Toolkit_ v _x86_64.tar.gz と TrackVis_v _x86_64.tar.gz である. ダウンロードが終了すると,/home/connectome/Downloads にダウンロードしたものが置かれる. インストールする際のコマンドを下記する. cd /usr/local sudo tar xvzf /home/connectome/downloads/diffusion_toolkit_v _x86_64.tar.gz cd /usr/local/dtk sudo tar xvzf /home/connectome/downloads/trackvis_v _x86_64.tar.gz Freesurfer のインストール Freesufer はファイルが非常に大きいため, ダウンロードに時間を要するので, 下記のように wget コマンドを使用することを推奨する. cd /home/connectome/downloads wget ftp://surfer.nmr.mgh.harvard.edu/pub/dist/freesurfer/5.3.0/freesurfer-linux -centos4_x86_64-stable-pub-v5.3.0.tar.gz ダウンロードが終了したら, 下記コマンドを入力し, ターミナルからファイルの解凍をする. cd /usr/local sudo tar xvzf /home/connectome/downloads/ freesurfer-linux-centos4 _x86_64-stable-pub-v5.3.0.tar.gz Freesurfer はインストールしただけでは使用することができず,Freesurfer の使用登録をする必要がある. から登録をし, 送られてきたメールに記載されているライセンス情報を認識させる必要がある ( 図 13). 図 13 Freesurer のライセンス情報ライセンスを認証させるには, 下記のコマンドをタイプし, cd /usr/local/freesurfer sudo gedit.license 作成されたファイルに図 13 に CUT HERE 内の内容を書き込み, 保存することでライセンスを認証させることができる. 80

89 Camino のインストール から最新版の Camino をダウンロードする. その後, ターミナル上で下記コマンドをタイプする. ここで, には version number が入る. cd /home/connectome/downloads unzip camino-code-.zip cd camino-code- make cd.. mv camino-code- camino sudo cp r camino /usr/local Camino-TrackVis のインストール から camino-trackvis tar. bz2 をダウンロードする ( 図 14). その後, 下記コマンドで, ファイルを解凍し, インストールを開始する. cd /home/connectome/downloads sudo tar xvjf camino-trackvis tar.bz2 cd camino-trackvis /build.sh cd.. sudo cp r camino-trackvis /usr/local 図 14 Camino-TrackVis のダウンロード方法 MITK のインストール下記コマンドをタイプし, ダウンロードおよびインストールをする. cd /home/connectome/downloads wget /Linux/MITK linux64.tar.gz cd /usr/local sudo tar xvzf /home/connectome/downloads/mitk linux64.tar.gz 81

90 MITK-Diffusion のインストール下記コマンドをタイプし, ダウンロードおよびインストールをする. cd /home/connectome/downloads wget /Linux/MITK-Diffusion linux64.tar.gz cd /usr/local sudo tar xvzf /home/connectome/downloads/mitk-diffusion linux64.tar.gz ここまで様々なソフトウェアをインストールしてきたが, これらソフトウェアはパスを通さないと使用することができない. パスとは簡単に言うと, コマンドを実行するプログラムのある場所を示すものである. ここでは, ホームディレクトリに存在する.bashrc という隠し属性のファイルにパスの情報を記載することで, パスを通す. まず, ターミナルに下記コマンドを入力する. cd /home/connectome gedit.bashrc テキストエディタが起動したら, テキストの一番最後に各ソフトウェアのパスを追加する. 追加する文章は下記の通りである. #FSL. /etc/fsl/fsl.sh #MRtrix export MRTRIX=/usr/lib/mrtrix/bin #Diffusion toolkit export DTDIR=/usr/local/dtk export DSI_PATH=/usr/local/dtk/matrices #Freesurfer export FREESURFER_HOME=/usr/local/freesurfer source $FREESURFER_HOME/SetUpFreeSurfer.sh #Camino export MANPATH=/usr/local/camino/man:$MANPATH export CAMINODIR=/usr/local/camino/bin #Camino-trackvis export CAMINO2TRK=/usr/local/camino-trackvis /bin 82

91 #MITK export MITK=/usr/local/MITK linux64 #MITK Diffusion export MITKDIFFUSION=/usr/local/MITK-Diffusion linux64 #Update PATH export PATH= ${DTDIR}:${MRTRIX}:${CAMINODIR}:${CAMINO2TRK}:${MITK}:${ MITKDIFFUSION}:${PATH} 入力し終えたら, 上書き保存をし,.bashrc を閉じる. その後, ターミナルから下記コマンドを入力し, パスを更新する. cd /home/connectome..bashrc 図 15 実際の.bashrc の中身とパスの通し方 83

92 Nipype のインストール Nipype は Connectome Mapper 用に modify されたバージョンが必要であるため, ターミナルから下記コマンドを実行する. cd git clone git://github.com/lts5/nipype.git cd nipype sudo python setup.py install Connectome Mapper のインストール cd git clone git://github.com/lts5/cmp_nipype.git cd cmp_nipype sudo python setup.py install sudo apt-get install python-statsmodels これで Connectome Mapper を動作させるためのソフトウェアのインストールは終了である. しかし,TraackVis および Diffusion Toolkit は初回起動時にライセンスの認証が必要となるため, 解析前に一度起動させる必要がある. 通常,TrackVis を独立して起動させるには, ターミナル上で trackvis とタイプすれば良いが, 本節通りにインストールしていくと libtiff.so.3 がないというエラーメッセージが表示される. このエラーの解消方法は, ターミナル上に下記コマンドを入力することで対応可能である. sudo ln s /usr/lib/x86_64linux-gnu/libtiff.so.4 /usr/lib/x86_64-linux-gnu/libtiff.so.3 その後, ターミナルを起動し, trackvis とタイプすると図 16 のようにライセンスキーの入力が求められるので, アカウント登録した際に届いたメールに記載されているライセンス情報を入力する. 図 16 ライセンスキーの入力画面最後に, ターミナルを開き, connectomemapper とタイプし, 図 17 のようなウィンドウが立ち上がれば, 起動の成功となる. なお本節での Connectome Mapper の導入はバージョンの違いによるインストールの失敗などには対応していない. 84

93 図 17 Connectome Mapper の起動画面 85

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