資料 3 同一労働同一賃金は女性 子どもの貧困対策であり若者の結婚対策 - 白河桃子 - 相模女子大客員教授
同一労働同一賃金で正規 非正規間の格差を是正 日本の正規 非正規間の大きな賃金格差は シングルマザーの貧困 未婚率の上昇 出生率の低下等 日本の将来の根幹に関わる問題 正規 非正規間の賃金格差の是正に向けた抜本的な取組が必要 運用として どんな取り組みが 実質的な賃金上昇につながるのか 弱者の立場を考慮して設計してほしい 例 : シングルマザー Aさんのケース 2016/11/30 白河桃子 2
ある契約社員のシングルマザー A さんの状況 関東で契約社員 ( 準社員 ) として働くシングルマザーからのヒアリング 就職して 4 年 2 年後から時給が 10 円ずつ上がり現在 880 円 手取り 12 3 万円 朝 8:30 5:30 まで 8 時間労働 商品管理と事務の仕事 正社員よりも長時間働いているが残業時間はつかない 繁忙期は毎日 2,3 時間残業 2 年前に一度正社員転換希望を聞かれたが 結局それも見送りとなった 地域の最低賃金は 751 円 商品名とコード番号を覚えていないと仕事にならないので 営業より知識がある 同じ仕事の妻子がある正社員の男性がいるが 彼のお給料はしらない 二人の子どもの塾代稼ぎに 昼は会社 夜は居酒屋でバイトのダブルワークも 他の人の役に立つならということで 職種や地域を公表しないならということで ヒアリングに協力してくれた 2016/11/30 白河桃子 3
シングルマザー A さんの同一労働同一賃金が実現するには? 前提 :A さんは男性正社員と 自分 の仕事が 同一労働 であることは目で見てわかっている ( 同一労働の可視化 ) ハードル 1: 男性正社員の賃金額はわからない この場合は 雇用主が 同一賃金にした というなら 賃金表の公表を求める以外にない ハードル 2: しかし このヒアリングに応じることにすら一大決心だった 立ち場の弱い A さんが 自ら交渉して 賃金表の公表 昇給 を求めることにはハードルが高い 賃金の公表義務が必要 同一労働 に対して いくらの 同一賃金 を支給するか 賃金表の公表が前提 ( 義務 ) 交渉の窓口が必要 個人が ( 男性正社員の方が賃金が高いだろうという推測の下に ) 自分と当該男性正社員の同一労働同一賃金支給 の申し立てができるような公的機関 窓口を設置し 賃金格差の調査と是正の判定をしてくれるような制度をつくること 2016/11/30 白河桃子 4
なぜ日本の子どもは 6 人に一人貧困なのか? 子どものいる世帯の 12% 8 世帯に 1 世帯がひとり親家庭 ひとり親家庭の約 9 割がシングルマザー世帯 シングルマザー世帯の 8 割が就労 しかし 5 割以上の貧困率そのうち 5 割が パート アルバイト など 母子世帯の総所得 243 万円 ( 一般世帯 673 万円 ) 稼働所得 179 万円 ( 一般世帯 603 万円 ) 子どもの貧困率 6 人にひとりは母子世帯の貧困率を反映したもの 2016/11/30 白河桃子 5
まったく上がらない非正規の賃金 25~29 歳 : 正社員 1453 円 非正規 1030 円 50~54 歳 : 正社員 1446 円 非正規 1029 円 (1 時間 ) 非正規で働きながら正社員と同等の仕事をこなしている人は多い 働くシングルマザーの約半数は非正規で働いている もしもこのシングルマザーが同じような仕事をしている人と同じ賃金が得られたら または正社員になれたら 今の 50% を越える母子世帯の貧困率が下がるだろう あるいは 低収入を埋めるためのダブルワークも減り 子どもたちと過ごす時間も増えるだろう NPO 法人しんぐるまざあず ふぉーらむ理事長赤石千衣子 日経新聞 非正規の賃金 上がりやすく 同一賃金 へ熟練度を反映政府 秋にも法案 2016/2/7 1:39 2016/11/30 白河桃子 6
若年未婚女性 高齢女性の貧困 働く世代の単身女性の 3 分の 1 が 年収 114 万円未満 注目される若年女性の貧困 NHK クローズアップ現代 あしたが見えない深刻化する 若年女性 の非婚 より 青森県出身の女性 ファミレスに朝 10 時出勤の 4 時半までやって 5 時からピザ屋さんで 9 時までやって 9 時半にスナック行って 閉店まで 2 時 3 時まで働いて 本当に時給安くて すごく働いた気がしても やっと 10 万いったりとか 子どもを生みたい願望は? 25 歳の女性 それ 1 番ないです 自分 1 人でこの状態で いっぱいいっぱいなのに 子どもいたらアウトだなって思って 最悪自殺まで考えちゃうんじゃないか 結婚 子育ての希望も見えない女性たちいずれは生活困窮する高齢女性予備軍となる 2016/11/30 白河桃子 7
( 参考 ) 高齢者の貧困の将来推計 〇有識者の学術論文では 1980 年代以降の生涯未婚率 離婚率の上昇による影響は まだ現時点の高齢者には出ていないが 今後 高齢女性を中心に 貧困率 ( ) が相当程度上昇するとする推計もある ( 著者の指す 貧困率 は 生活扶助基準額未満の収入月額を下回る者の割合を指し 高齢者夫婦世帯 (68 歳 65 歳 ) で 109,440 円未満 高齢単身世帯 (68 歳 ) で 72,370 円未満と仮定している ) 30% 貧困率25% (生20% 活扶15% 助基10% 準未5% 満)0% 2000 2010 2020 2030 2040 2050 2060 2070 2080 2090 2100 稲垣誠一氏 ( 一橋大学経済研究所教授 ) によるマイクロシミュレーションモデルによる推計結果 諸前提については 結婚 出生 死亡 離婚等は平成 18 年の 日本の将来推計人口 就業状態の遷移は平成 21 年の財政検証結果 ( 年金局 ) に依っている ( なお 平成 21 年と26 年の財政検証結果では 女性の就業率 とりわけM 字カーブの底の年齢層の就業率は7~8% 程度異なる ( 平成 21 年の方が低い ) ) 資料出所 : 高齢者の同居家族の変容と貧困率の将来見通し ( 稲垣誠一 季刊社会保障研究第 48 巻第 4 号 ( 平成 25 年 3 月刊行 )) より転載
未婚者対策としても同一労働同一賃金は有効 正規非正規の格差 = 結婚格差 となっている まち ひと しごと創生本部地域少子化対策検証プロジェクトで地域の未婚者の年収をだしてもらったところ 男性は 300 万円台 女性は 200 万円台が中央値 結婚や子どもを持つことを希望する未婚者の 正規非正規 の賃金格差がそのまま 恋愛 や 結婚格差 となっている状況を是正しなければいけない 2016/11/30 白河桃子 9
未婚者対策としても同一労働同一賃金は有効 正規非正規の格差 = 結婚格差 となっている 男性 女性の正規 非正規別にみた 交際異性あり の割合 2016/11/30 白河桃子 10
資料 : 国税庁 民間給与実態統計調査 (2014 年 ) 結婚や出産をとりまく状況 (1) 若年者の非正規雇用の増加 若年者の非正規雇用割合は依然として高く 非正規雇用の給与は正規雇用と比較して低い 非正規雇用の有配偶率は低く 雇用の不安定が結婚に当たっての 壁 となっている (%) 40 35 30 25 20 15 10 5 0 19.8 14.9 1991 若年者の非正規雇用割合の推移 20.8 20.9 16.5 1993 17.5 1995 23.2 20.7 1997 正規雇用と非正規雇用の 1 人当たり平均給与 平均給与 24.9 23.0 1999 27.2 26.1 2001 うち正規 うち非正規 計 415 万円 478 万円 170 万円 男 514 万円 532 万円 222 万円 女 272 万円 359 万円 148 万円 30.4 28.6 2003 32.6 31.3 32.0 31.4 31.9 32.6 32.5 2005 33.5 33.7 34.4 35.1 35.2 2007 非正規雇用割合 (15~34 歳 ) 非正規雇用割合 ( 全年齢計 ) 36.7 37.4 33.9 34.3 資料 : 総務省統計局 : 労働力調査 労働力調査特別調査 ( 注 )1. 非正規雇用割合については 2001 年度までは 労働力調査特別調査 (2 月調査 ) 2002 年以降は 労働力調査 ( 詳細集計 ) による 調査月 (2001 年までは各年 2 月 2002 年以降は各年の平均の値 ) が異なることなどから 時系列比較には注意を要する 2. 労働力調査では 2011 年 3 月 11 日に発生した東日本大震災の影響により 岩手県 宮城県及び福島県において調査実施が一時困難となった ここに掲載した 2011 年の 内の数値は補完的に推計した値 (2005 年国勢調査基準 ) である 3. 年齢区分 (15~34 歳 ) の数値については 労働力調査特別調査 及び 労働力調査 ( 詳細集計 ) をもとに 厚生労働省において計算 2009 2010 2011 2012 2013 2014 60% 50% 40% 30% 20% 10% 0% 就労形態別配偶者のいる割合 ( 男性 ) 正社員 非典型雇用 非典型雇用のうちパート アルバイト無業 8.6% 4.5% 2.6% 1.6% 7.4% 31.7% 13.0% 5.1% 23.3% 57.8% 13.6% 10.2% 20~24 歳 25~29 歳 30~34 歳 資料 : 労働政策研究 研修機構 若年者の就業状況 キャリア 職業能力開発の現状 (2014 年 ) 注 : 就労形態分類については 若年者の就業状況 キャリア 職業能力開発の現状 における定義 ( 下記 ) による 非典型雇用パート アルバイト 労働者派遣事業所の派遣社員 契約社員 嘱託など 正社員以外の呼称で働いている被雇用者
生涯未婚率 男性 3.9%/ 女性 4.3% (1985 年 ) 男性 20.1%/ 女性 10.6% (2010 年 ) 資料出所 : 国勢調査 ( 総務省 ) 将来推計 男性 27.6%/ 女性 18.8% (2030 年 ) 資料出所 : 日本の世帯数の将来推計 ( 全国推計 )( 平成 25 年 1 月推計 ) ( 国立社会保障 人口問題研究所 ) 離婚率 ( 人口千対 ) 1.39(1985 年 ) 1.77(2014 年 ) 離婚 / 婚姻の件数比 22.6% (17 万件 /74 万件 ) (1985 年 ) 34.5%(22 万件 /64 万件 ) (2014 年 ) 資料出所 : 人口動態統計 ( 厚生労働省 ) 生活をまかなう主な収入源が自分自身である割合 契約社員 :67.9% 派遣労働者 :69.0% パート :32.5% ( 平成 26 年就業形態の多様化に関する総合実態調査 ) 厚生年金の適用割合 契約社員 :83.5% 派遣労働者 :76.5% パート :35.3% ( 平成 26 年就業形態の多様化に関する総合実態調査 ) 12
シングルマザー関連データ 2016/11/30 白河桃子 13
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