第 24 回もしもし医学セミナー 131130 糖尿病の治療 NTT 東日本関東病院糖尿病 内分泌内科林道夫
この世をば わが世とぞおもう
戦後日本の 糖尿病患者数の増加 は 自動車登録台数 の増加と 脂肪摂取量の増加 に 比例している
糖尿病学の変遷を見つめて日本糖尿病学会 50 年の歴史 社団法人日本糖尿病学会
2011 年国際糖尿病連合 Diabetes Atlas 第 5 版
生活習慣病の医療費と死亡数割合 生活習慣病は 国民医療費の約 3 割を占め 死亡数割合では約 6 割を占める 医療費 ( 平成 17 年度 ) 糖尿病 ( 糖尿病の合併症を含む ) 死因別死亡割合 ( 平成 17 年 ) 生活習慣病 10.7 兆円生活習慣病 60.1% 2.0 兆円 国民医療費 33.1 兆円 脳血管疾患 2.1 兆円 糖尿病 メタボリックシンドロームと関連 虚血性心疾患 0.8 兆円 悪性新生物 30.1% 悪性新生物 2.9 兆円 その他 39.9% その他 22.4 兆円 高血圧性疾患 3.0 兆円 ( 注 ) 国民医療費 ( 平成 17 年度 ) わが国の慢性透析療法の現況 (2005 年 12 月 31 日 ) 等により作成 高血圧性疾患 0.5% 糖尿病 1.3% 脳血管疾患 12.3% 糖尿病 メタボリックシンドロームと関連 心疾患 16.0% ( 注 ) 人口動態統計 ( 平成 17 年 ) により作成
糖尿病性足病変 ( 壊疽 潰瘍 )
足壊疽手術後
糖尿病とは? 糖尿病とは 慢性の高血糖によりさまざまな臓器障害を起こす疾患である 診断は血糖値やHbA1c 値 糖尿病の典型的な症状や糖尿病網膜症によりなされる 2 型糖尿病は インスリン分泌の低下やインスリン抵抗性をきたす複数の遺伝因子に加え 過去数十年間の生活様式の変化を背景にした過食 ( 特に高脂肪食 ) 運動不足 肥満 ストレスなどの環境因子及び加齢が加わり インスリン作用不足を生じて発症する 日本人糖尿病患者の90% 以上は2 型糖尿病である 1 型糖尿病ではインスリンを合成 分泌する膵ランゲルハンス島 β 細胞が破壊され インスリンの絶対的欠乏状態になるため 生命維持のためにインスリン治療が不可欠な インスリン依存状態 となる
糖尿病とは? 血糖が上がり 高血糖 になる病気
血糖
脳 血糖 筋肉 肝臓
食事 脳 血糖 筋肉 肝臓
食事 脳 血糖 筋肉 肝臓 インスリン 膵臓
食事 脳 血糖 筋肉 肝臓 インスリン 膵臓
食事 脳 血糖 筋肉 脂肪 肝臓 インスリン 脂肪 膵臓
食事 脳 血糖 筋肉 脂肪 肝臓 インスリン 脂肪 膵臓
糖尿病の治療 糖尿病の治療の基本は血糖をできるだけ正常に近 づけることにより 糖尿病の血管合併症の発症 進 展を防止することである 糖尿病合併症の予防には 厳格な血糖コントロールが有用であることがさまざ まな臨床研究の結果から示されている
糖尿病治療ガイド 2012-2013 血糖コントロール目標改訂版
食事療法 食事療法は糖尿病療養の基本である 糖尿病の発症 悪化の要因であある肥満 ( 特に腹部内臓脂肪蓄積 ) は食事の乱れ エネルギーの過剰摂取によりもたらされる また 経口血糖降下薬やインスリン治療中の患者では 不規則な食事は低血糖の原因となる 食事療法の基本はエネルギー摂取量 ( カロリー数 ) である 適正なカロリー数を計算するためには数を計算するためには まず身長から標準体重を計算し ( 標準体重 (kg)= 身長 (m) 身長 (m) 22) する 次に日常生活のなかでの運動量に応じて身体活動量 ( 標準体重 1kgあたりの身体活動量 ) を設定する 身体活動量は デスクワーク 主婦など軽労作であればク 主婦など軽労作であれば 25~30kcal 立ち仕事が多い職業であれば30~35kcal 力仕事の多い職業であれば 35kcal 以上 適正なカロリー数は 標準体重と身体活動量を掛け合わせることで計算する ( 摂取エネルギー量 (kcal)= 標準体重 身体活動量 )
食事療法 食事全体のカロリー数を守るとともに 炭水化物 蛋白質 脂質のバランス ( 一般的には総カロリー数の50から60% を炭水化物から取るようにする 蛋白質は標準体重 1kgあたり1.0から1.2g ) を守り ビタミンやミネラルも適正量を摂取することが重要である 食事療法を実践する上でのポイントは 1 朝食 昼食 夕食を規則正しく食べ 間食をさける 2 腹八分目とし ゆっくりよくかんで食べる 3 食品の種類はできるだけ多く バランスよく摂取する 4 脂質と塩分の摂取を控えめにする ( 高血圧を合併した場合 一日の塩分摂取量は6g 未満とする ) 5 食物繊維を多く含む食品 ( 野菜 海草 きのこなど ) をとる ( 食物繊維には食後の血糖上昇を抑え 血清コレステロールの上昇を防ぐ効果がある ) 糖尿病腎症で腎機能障害が進行し 顕性腎症の段階に至った場合は 蛋白の摂取量を標準体重 1kgあたり0.8から1.0gに制限する アルコール飲料の摂取は適量ル飲料の摂取は適量 ( エタノールとして 1 日 25g まで ) にとどめ 肝疾患の合併やアルコール依存症など 状況によっては禁酒とする
食事 脳 血糖 筋肉 脂肪 肝臓 インスリン 脂肪 膵臓
運動療法 運動療法は 食事療法と並んで 車の両輪 にたとえられる 運動を行うことで食運動を行うと食事療法をおろそかにしてよいということにはならないし 食事に注意しているから運動しなくて良いということにもならない 運動療法には ブドウ糖 脂肪酸の利用を促進して血糖を低下させるという急性効果に加え 肥満 ( 特に腹部内臓脂肪蓄積 ) を予防 改善し 2 型糖尿病で問題となる インスリン抵抗性 を改善する効果がある 高血圧や脂質異常症にも運動療法は有効である 運動の種類は 有酸素運動 ( ウォーキング ジョギング 水泳などの全身運動 継続して行うことでインスリン抵抗性が改善する ) と レジスタンス運動 ( 筋肉トレーニング ダンベル運動など 筋肉量 筋力を増大する効果がある ) とに分けられるが いずれの運動も 運動時の心拍が運動時の心拍が 1 分間 100~120120 以内の 自覚的に きつい と感じない程度とする 運動量の目安は ウォーキングの場合 1 回に 15~30 分 1 日 2 回 1 日合計歩数 1 万歩 1 週間に3 日以上行うのが望ましい 特別な運動をしなくても 日常生活のなかでの身体活動量を増やす ( できるだけこまめに身体を動かす 長時間座っていないようにする エレベーターを使わない など ) だけでも 長期間継続すれば効果がある
運動療法 運動で消費するカロリーはそれほど多くはない 運動療法の基本は長い目で見た インスリン抵抗性の改善 である 運動後の空腹感から食事量が増えたり 運動で消費した分は多めに食べても良い という誤解をしないように 運動とともに食事療法もキチンを行うよう 指導することが重要である う 指導す インスリンやスルホニル尿素薬 (SU 薬 ) を用いている人では運動による低血糖に注意する ( 運動中 運動直後の低血糖に加え 十数時間後に低血糖が誘発されることもある ) 必要に応じ 運動前 運動中の捕食について指導する 血糖コントロール不良 ( 空腹時血糖値 200mg/dl 以上 ) 尿ケトン陽性 眼底出血 腎不全 虚血性心疾患 骨 関節疾患がある場合は 運動を禁止あるいは制限する必要がある
食事 脳 血糖 筋肉 脂肪 肝臓 インスリン 脂肪 膵臓
薬物療法 通常 2 型糖尿病患者の多くは食事療法 運動療法によって相当程度の血糖コントロールの改善が期待できるが 食事療法 運動療法を2,3ヶ月行っても血糖コントロールが目標に達しない場合や 著明な高血糖 尿ケトン陽性 体重減少を認める場合などでは 薬物治療が必要になる また1 型糖尿病患者では 当初からインスリン治療が必要である 薬物療法には経口薬と注射薬があるが いずれも少量から始め 血糖コントロールの状態を見ながら徐々に増量する 経口血糖降下薬やインスリンを使用する場合も 食事 運動療法を並行して確実に行うことが重要である 体重減少や生活習慣の改善による血糖コントロールの改善に伴って 糖毒性 ( 高血糖状態によって インスリンの分泌不全と作用障害がさらに増悪する悪循環のこと ) が解除され 経口薬や注射薬の減量 中止が可能にあることがある 薬剤は漫然と投与するのではなく 常に減量 中止の可能性を考慮しつつ投与する
糖尿病治療のエッセンス 2012 日本糖尿病対策推進会議
糖尿病治療のエッセンス 2012 日本糖尿病対策推進会議
食事 脳 血糖 筋肉 脂肪 肝臓 インスリン 脂肪 膵臓
低血糖 治療にあたっては低血糖の出現に注意しなければならない 空腹時や運動時などに血糖が下がりすぎ 強い空腹感 冷や汗 手のふるえ 動悸 視覚異常が出現するのが低血糖の典型的な症状であり 放置すると意識障害に陥る場合もある 自覚症状がなく突然意識を失う無自覚低血糖や 高齢者などでは典型的な症状を欠き せん妄状態のような異常行動をとることもあるので 注意が必要である 薬物治療 ( 特にスルホニル尿素薬とインスリン注射ル尿素薬とインスリン注射 ) を行っている患者に対しては ブドウ糖 砂糖 またはこれらを含む飲料を常に携帯して 低血糖が出現した場合はただちに摂取するよう指導する 回復しない場合は 医療機関での治療 ( ブドウ糖液の静注など ) が必要になる たびたび低血糖を起こす場合は 生活パターンの確認や薬剤の減量 中止が必要である 自動車などの運転中に低血糖が起こると重大な結果を招く危険があるので 運転時にはあらかじめ捕食するなど低血糖予防に留意すること 万一運転中に低血糖になったら速やかに対処できるよう 車内にブドウ糖 砂糖 またはこれらを含む飲料などを常備するよう 指導が必要である
インスリン 糖尿病治療のエッセンス 2012 日本糖尿病対策推進会議
スルホニル尿素 (SU) 薬 膵 β 細胞に作用してインスリン分泌を促進する 肥満やインスリン抵抗性のある患者には不向き 空腹時などに低血糖が出現する可能性がある 高齢者 腎障害 肝障害 などでは低血糖の危険性が高まり 一旦起こった低血糖がなかなか回復しない ( 遷延性低血糖 ) こともある 投与を継続していると経過に伴い体重が増えたり 血糖降下作用が減弱することもあるので 注意する
食事 脳 血糖 筋肉 脂肪 肝臓 インスリン 脂肪 膵臓
糖尿病治療のエッセンス 2012 日本糖尿病対策推進会議
速効性インスリン分泌促進薬 SU 薬と同様に膵 β 細胞に作用してインスリン分泌を促進するが 作用の発現と消失が速い 食後血糖の上昇を抑えるために食直前に服用する 低血糖について注意が必要である
糖尿病治療のエッセンス 2012 日本糖尿病対策推進会議
α- グルコシダーゼ阻害薬 食直前に服用し 腸管からの糖の吸収を遅らせることで 食後血糖の上昇を抑える 腹部膨満 放屁 便通異常 ( 下痢 ) といった腹部副作用がある 単独投与では低血糖を起こす可能性はきわめて低いが SU 薬やインスリンと併用している患者に低血糖が起こった場合 通常の砂糖では吸収が遅れるので ブドウ糖を服用するように指導する
食事 脳 血糖 筋肉 脂肪 肝臓 インスリン 脂肪 膵臓
糖尿病治療のエッセンス 2012 日本糖尿病対策推進会議
ビグアナイド薬 夜間や空腹時に肝臓から糖が放出されるのを抑制する また インスリン抵抗性を改善する効果もある 体重を増加させないので 肥満患者向きであるが 非肥満患者にも有効である 単独使用であれば低血糖を起こす可能性はきわめて低い 歴史的には乳酸アシドーシスの副作用が知られているが 実際にはそのシ頻度は低い ただし 高齢者 重度の肝 腎 心臓 肺機能障害のある患者 大量飲酒者では副作用の危険性が高まるとされ 投与しない 感冒や下痢で脱水になりやすい時 ヨード系の血管造影剤使用時 外科手術時には休薬する 吐気や下痢などの腹部副作用が 特に服用開始直後に 出現することがある
食事 脳 血糖 筋肉 脂肪 肝臓 インスリン 脂肪 膵臓
糖尿病治療のエッセンス 2012 日本糖尿病対策推進会議
チアゾリジン薬 インスリン抵抗性を改善する 水分貯留をきたす傾向があり 副作用として浮腫が出現することがある また 心不全患者 心不全の既往のある患者には使用しない 服用により体重が増加しやすいので 食事療法や運動療法をしっかり行い体重を管理するよう指導する
食事 脳 血糖 筋肉 脂肪 肝臓 インスリン 脂肪 膵臓
糖尿病治療のエッセンス 2012 日本糖尿病対策推進会議
DPP-4 阻害薬 小腸から分泌され 膵 β 細胞に作用してインスリン分泌を促進するインクレチンを分解するDPP-4の作用を阻害し インクレチンの濃度を高めることで インスリン分泌を促進する SU 薬と異なり血糖依存的に働く ( 血糖が下がると作用が弱まる ) ので 単独投与では低血糖の可能性は低く 体重増加もきたしにくい SU 薬と併用する場合には低血糖が起きる可能性があり S U 薬を減量してからDPP-4 阻害薬を併用する
糖尿病治療のエッセンス 2012 日本糖尿病対策推進会議
インスリン以外の注射薬 DPP-4による分解を受けにくくしたインクレチン (GLP-1) アナログ製剤が使用可能になった 膵 β 細胞に作用してインスリン分泌を促進するが SU 薬と異なり血糖依存的に働く ( 血糖が下がると作用が弱まる ) ので 単独投与では低血糖の可能性は低く 体重増加もきたしにくい
インスリン治療 生存のためにインスリン治療が必要なインスリン依存状態の存 1 型糖尿病患者はもちろん 2 型糖尿病であっても著名な高血糖 ( 空腹時血糖値が 250mg/dl 以上 随時血糖値が 350mg/dl 以上 ) が見られる場合 経口血糖降下薬で良好な血糖コントロールが得られない場合 重症の肝機能障害や腎機能障害の合併 重症感染症 外傷 外科手術時 糖尿病合併妊婦 などでは インスリン治療の適応となる インスリン製剤には ペン型注射器に装着して使用するカートリッジ製剤 製剤 注入器一体型のキット製剤 バイアル製剤がある 作用発現時間や作用持続時間により 超速効型 速効型 混合型 中間型と持効型の5 種類がある
インスリン治療 インスリン治療の基本は健常な人の血中インスリン値の変動パターンを再現することである 人では常に少量のインスリンが分泌されており これを 基礎分泌 という 食事の有無に関わらず分泌されているインスリンである 一方 食事をすることによって血糖値が上昇するが これに伴ってインスリン分泌も上昇し 食後の高血糖を防いでいる このときに分泌されるインスリンが 追加分泌 である 作用発現時間や作用持続時間の異なるインスリン製剤を組み合わせて 基礎分泌 と 追加分泌 を再現し できるだけ健常者のインスリン分泌パターンに近づくように治療を行う 1 型糖尿病患者でインスリン依存状態の患者では インスリン注射はどのインスリン注射はどのような場合でも中止してはいけない
インスリンの発見者
ンスリンの発見者ノーベル賞受賞賞受賞イ
インスリンの発見者誕生日は 11 月 14 日
11 月 14 日 11 月 14 日世界糖尿病デー
Unite 11 月 14 日 For 世界糖尿病デー Diabetes バッジ
11 月 14 日世界糖尿病デー Unite For Diabetes バッジ Wii fit ではありません地下鉄東西線でもありません
11 月 14 日 11 月 14 日世界糖尿病デー
インスリン製剤 速効型 皮下注 静注 透明 食前 30 分 中間型 皮下注 白濁 混和して注射 超速効型 皮下注 透明 食直前 / 食直後 持続 ( 持効 ) 型 皮下注 透明 混合製剤 皮下注 白濁 混和して注射 混和して注射
インスリン注射とは不足しているインスリンを体外から補い血糖をさげる治療法 作用時間インスリン製剤には 効き目のあらわれる時間 効き目のピーク 効き目の持続時間 の点からつぎのような種類がある. それぞれの山のピークは効果が最大にあらわれる時間を示し, すその長さが作用時間を示す. ノホ リンR 注フレックスヘ ンノホ リンN 注フレックスヘ ン速効型中間型ヒューマロク ノホ リン 30R 注フレックスヘ ンノホ ラヒ ット ランタス レベミルノホ ラヒ ット 30Mix 超速効型ヒューマログミックス50 中間型持効型混合型 0 注射後 6 12 16 24 時間
血中中インスリリン値 (pm mol/min) 800 600 400 200 健常者と糖尿病患者のインスリン分泌パターン 健常者 2 型糖尿病患者の 1 例 1 型糖尿病患者の1 例 基礎インスリン分泌 6am 10am 2pm 6pm 10pm 2am 6am
ご清聴ありがとうございました
ご清聴ありがとうございました