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赤血球造血刺激因子製剤 (ESA) EPO 製剤 エポエチンアルファ ( エスポー ) エポエチンベータ ( エポジン ) ESA ( 赤血球造血刺激因子製剤 ) エポエチンベータペゴル ( ミルセラ ) ダルベポエチンアルファ ( ネスプ ) エリスロポエチン製剤 ヒト体内で産生されるエリスロポエチンと同じ構造のもの ( 糖鎖は若干異なる ) ESA( erythropoiesis stimulating agent ) エリスロポエチンレセプターに作用し 赤血球造血刺激を行うものの総称

ESA 製剤の半減期 ミルセラ ミルセラ 137 133 ネスプ ベポエチンアルファ 25 48 エポエチン β エポジン 8.8 24.2 subcutaneous エポエチン α エスポー 24.2 8.8 intravenous 0 50 100 150 (hr)

EPO 抵抗性貧血の定義 日本 ( 厳密な定義なし, 通例 ) 血液透析患者 :rhuepo 最高投与量 9,000 IU/ 週 CAPD 患者 :rhuepo 最高投与量 6,000 IU/ 週 を投与しても Ht 値 25% に維持できない高度の貧血を有する者 ( 血液透析患者 : 最高投与量 9,000 IU/ 週 CAPD 患者 : 最高投与量 6,000 IU/ 週 を投与しても Ht 値 6%[Hb 値 2 g/dl] の上昇がみられない者 )

EPO 反応性低下の原因 赤血球の産生低下 鉄欠乏状態 ( 最多の原因 ) 慢性感染症 (IL-1 TNF) 悪性腫瘍の合併 骨髄線維症 高度の二次性副甲状腺機能亢進症 アルミニウム蓄積 ( 治療初期の抵抗性に関与 ) 透析量の不足 栄養不足 ( 特に葉酸 ビタミン B 6 B 12 の欠乏 ) 骨髄機能抑制作用のある薬剤使用 赤血球の喪失 出血 ( 顕性 潜在性 ) 多量の採血 高度の脾機能亢進症 ( 肝硬変などに合併 ) 溶血亢進状態 ( 人工弁など ) ダイアライザー再利用時の残留物

鉄欠乏状態 ( 最多の原因 )

鉄の体内動態 摂取 10 貯蔵鉄 1,000 1 1 血漿 4 赤 血 球 組織鉄 200 骨 髄 100 2,500 ( 単位 :mg) 排泄 10

鉄欠乏症の病態 正常状態 貯蔵鉄欠乏 潜在性鉄欠乏状態 鉄欠乏性貧血 貯蔵鉄 ( フェリチン ) 血清鉄 赤血球 骨髄可染鉄 トランスフェリン鉄飽和率血清トランスフェリンレセプター 貧血 MCV 正常 正常 軽度減少 著減 35-40% 35-40% 30-35% 30%> 正常 正常 軽度上昇 上昇 なし なし なし あり 正常 正常 正常 低下

血液透析患者の鉄動態の特徴 1 鉄喪失の亢進透析操作に由来する失血や回路内残血 血液検査のための採血 消化管出血などの出血性疾患の合併が多い 2 消化管における鉄吸収の低下 鉄を多く含有する食物の摂取不足 鉄吸収を促進する食物の摂取不足 ( ビタミン C など ) 鉄吸収を抑制する薬剤の服用 ( リン吸着剤 制酸剤など ) 3 鉄需要の亢進 EPO 投与による赤血球造血の亢進

EPO 投与と鉄欠乏の関係 EPO 投与により 赤血球造血が亢進し鉄が消費される 必要鉄量 (Ht 値 5% 改善体重 50kgの患者約 150mg) この鉄需要は 消化管からの吸収では間に合わない 貯蔵鉄を取り崩す 貯蔵鉄は急速に消費され鉄欠乏が起こりやすい

鉄動態の指標 貯蔵鉄 血清フェリチン可染性骨髄鉄 肝臓鉄 機能鉄 ヘモグロビン血清鉄 総鉄結合能トランスフェリン鉄飽和率赤血球恒数 (MCV, MCH, MCHC) 低色素性赤血球比率網状赤血球ヘモグロビン含量赤血球亜鉛プロトポルフェリン赤血球フェリチン血清トランスフェリンレセプターフェロカイネティクス

鉄補給の指標 TSAT 20% 以下 血清フェリチン 100ng/mL 以下 TSAT : トランスフェリン鉄飽和率 = 血清鉄 TIBC 100 (%)

鉄欠乏の治療 鉄剤補充療法 経口鉄剤 静注用鉄剤 アスコルビン酸投与

鉄剤の静脈内投与による効果 報告者 / 発行年 例数 鉄剤の投与量 / 投与頻度 Nyvad/1994 1) 34 50~200mg/HD 7 (1,150mg) 鉄剤投与前 Ht/Hb 値 (rhuepo 投与量 ) Ht34.3% (6,353IU/ 週 ) 鉄剤投与後 Hb 濃度 (g/dl) (rhuepo 投与量 ) Ht34.5% (4,586IU/ 週 ) Sunder Plassmann /1995 2) 52 100mg/HD (2,523±810mg) Hb9.4g/dL (217IU/kg/ 週 ) Hb11.1g/dL (62.6IU/kg/ 週 ) Sepandj/1996 3) 50 100mg 2/ 週 Hb8.8g/dL Hb10.0g/dL (rhuepo 使用 19) (100~200μ g/l まで ) (96IU/kg/ 週 ) (63IU/kg/ 週 )

鉄欠乏の治療 静注用鉄剤 静注用鉄剤は 経口鉄剤に比べて効果は確実 血清フェリチン値 100ng/mL 未満では絶対的適応 非生理的投与であるのでアナフィラキシー反応と鉄過剰などの副作用に十分な注意が必要 鉄過剰に惹起される低分子鉄による活性酸素 フリーラジカル生成とそれによる傷害 還元剤 キレート剤フリーラジカル 酸化還元酵素 貯蔵鉄 低分子鉄 ( 自由鉄 ) 活性酸素 脂質過酸化 細胞死 脂質過酸化産物 発癌 遺伝子障害 老化免疫力低下能動脈障害 タンパク質障害 動脈硬化白内障

経口鉄剤と静注鉄剤の比較 組成静注用含糖酸化鉄グルコン酸鉄デキストラン鉄経口用硫酸鉄グルコン酸鉄フマル酸鉄 欠点毒性アナフィラキシー頻回少量投与には不向き消化器障害コンプライアンス生物学的利用率

EPO の鉄補給に関するまとめ 鉄状態 フェリチン <50 50-100 >100 トランスフェリン飽和率や低色素性赤血球にかかわらず トランスフェリン飽和率 (TSAT) 低色素性赤血球 %(HRC) ( 可能な場合 ) デキストラン鉄 (6mL) をフェリチンが 100 以上になるまで 2 週毎に静脈内投与 TS<20% または HRC>10% TS>20% または HRC<10% 静注鉄の考察 TS<20% または HRC>10% TS>20% または HRC<10% 鉄欠乏の見込みはない

鉄欠乏の治療 アスコルビン酸 VC 経口剤 腸管における鉄の吸収促進 経口鉄剤と同時投与で吸収を高める VC 静注 rhuepo 治療抵抗性の機能的鉄欠乏症に有効 ( 大量になるとオキサローシスを引き起こす可能性があるので注意が必要 )

炎症 感染症

慢性の炎症 感染症 炎症 感染症 免疫担当細胞活性化 炎症性サイトカイン放出 網内の鉄取り込み亢進 赤血球造血阻害 脾機能亢進

感染症と貧血 特徴 1 血清鉄 鉄結合能 トランスフェリン飽和率低下 2 フェリチン増加 機序 1 造血予備能低下 血清鉄低下 赤血球前駆細胞の EPO 感受性低下 2 網内系鉄ブロック 網内系の貯蔵鉄増加 放出障害 3 赤血球寿命の短縮 網内系による赤血球破壊

炎症 感染にみられる臨床所見 突然のEPO 反応性低下 ヘマトクリット値を維持するのに必要なrHuEPOの増量 トランスフェリン飽和率と血清鉄の減少 ( 血清フェリチンは正常もしくは増加 ) 炎症 / 感染症を示す所見 : 発熱 紅斑 疼痛 浮腫 圧痛 感染部からのドレナージ 呼吸困難 関節痛 患者は無症候であることも多い

造血を阻害するサイトカインの関与 敗血症患者へのEPO 治療における反応性に対する抗 TNF 抗体 IL-1 受容体拮抗薬及びプラセボの影響 EPO(250IU/kg 週 3 回 ) への Hb 値 (g/dl) 輸血量 追加治療 処置前 2 週間後 抗 TNF 抗体 (n=5) 9.0±1.3 10.9±1.2 a 2.2±1.3 IL-1 受容体拮抗薬 (n=8) 8.9±1.4 11.1±1.3 a 2.1±1.4 プラセボ (n=10) 9.2±1.5 9.3±1.5 5.2±2.2 b Mean±S.D. a:p<0.05(vs Baseline) b:p<0.05(vs 抗 TNF 抗体及び IL-1 受容体拮抗薬 )

二次性副甲状腺機能亢進症

PTH による貧血の発症機序 1. 直接的作用 1) 内因性 EPO 産生抑制 2)BFU-E 形成の抑制 3) ヘム合成の阻害 4) 赤血球寿命の短縮 溶血 2. 間接的作用 1) 骨髄線維化による造血の場の減少

PTH による貧血の発症機序 EPO(mU/mL) 1,000 PTx 後の血清 EPO 濃度の変化 *2,590 100 10 1 PTx 前 PTx 後 7 日 PTx 後 14 日

PTH による造血阻害 (in vitro) PTH のヒト末梢血 BFU-E に対する作用 ヒト末梢血 B F U E ( VS コントロール ) (%) 100 80 60 40 20 0 1 * 3.75 7.5 1-84PTH (U/mL) * 10-11 日培養 mean±se *p<0.01(vs コントロール ) * 10 * 30

PTH による貧血の発症機序 2. 間接的作用 1) 骨髄線維化による造血の場の減少 高反応群 (n=11) 低反応群 (n=7) 血清 PTH 濃度 (pg/ml) 266±322 800±648 線維組織量 (%) 1.1±1.1 15.6±16.4 破骨細胞面 (%) 3.1±2.6 8.7±7.8 eroded surface(%) 5.0±2.6 10.2±5.2 EPO(U/kg, 3 /w) 56±18 174±33 アルカリフォスファターセ (U/L) 130±132 296±220 :p=0.06 :p=0.04 :p=0.03 :p=0.009 Mean±S.D.

骨髄線維化 2 HPT の代表的病変は線維性骨炎である

栄養不足

MCV 葉酸の補給による反応性の上昇 MCV および Ht 値の推移 (fl) n=8 130 (%) n=8 35 * 120 110 100 90 Ht 値 30 25 20 23±3.3 30±4.2 80 葉酸 10mg/ 日 15 葉酸 10mg/ 日 EPO 投与 時間 EPO 投与 時間 * p<0.01 mean±sd, Student s t 検定

カルニチンのホメオスタシスと体内分布 組織 ( 骨格筋 心筋 肝臓 腎臓 ) 50,000 μ mol 食事からの摂取 3 00 μ mol/day 小腸 生合成 ( 肝 腎 脳 ) 血漿 300 μ mol 糸球体 OCTN2 尿中排泄 400 μ mol/day 100 μ mol/day 再吸収

カルニチンの役割 1) 長鎖脂肪酸のミトコンドリアマトリックス内への輸送 エネルギー代謝に重要 (β 酸化 ATP 産生 ) 2) ミトコンドリア内のCoA/ アシルCoA 比率の調整 遊離 CoAプール維持に重要 3) アシル化合物の細胞内からの排除 細胞毒の排除に重要 4) 赤血球膜などの生体膜安定性維持 赤血球の寿命 ターンオーバーに重要 5) 抗炎症作用

赤血球に対するカルニチンの役割 貧血 赤血球膜リン脂質リモデリング 赤血球 ESA 数 質 C 造血 RBC PS exposure アポトーシス A カルニチン B 弾粘性 PS exposure: Phosphatidylserine exposure( マクロファージが赤血球を除外する歳のシグナル )

Hb 濃度 (g/dl) Hb 濃度 (g/dl) 13 Hb 濃度,ESA 投与量の推移 非投与群投与群 32000 13 32000 12 11 28000 24000 12 11 * * * * 28000 24000 10 9 8 7 ** ** ** * 20000 16000 12000 8000 ESA 投与量 (IU/ 週 ) 10 9 8 7 ** ** ** ** 20000 16000 12000 8000 ESA 投与量 (IU/ 週 ) 6 4000 6 4000 5 0 4 8 0 12 16 20 24 ( 週 ) 5 0 4 8 0 12 16 20 24 ( 週 ) Hb ESA 投与量 *p<0.05(vs 0 週 ) **p<0.01(vs 0 週 ) Hb 値 :: 対応のある t- 検定を実施し 投与前と比較した ESA 投与量 :Wilcoxon signed rank test 定を実施し 投与前と比較した ESA 投与量は median (interquartile range) を表示

薬剤性

薬剤性血液障害 巨赤芽球性貧血を来す可能性がある薬剤 溶血性貧血を来す可能性がある薬剤 1. 葉酸欠乏性抗けいれん薬ー肝臓における microsome での酵素誘導経口避妊薬 尿中葉酸排泄の増加葉酸代謝拮抗剤 メソトレキセート 2. ビタミン B 12 欠乏症 1. ペニシリン系 2. セファロスポリン系 3. キニジン同じ機序の薬剤 : スチボフェン キニーネ パラアミノサリチル酸 フェナセチン スルフォナミド クロルプラマジン イソニアジド 4.α - メチルドパ同じ機序の薬剤 L- ドパ メフェナム酸 クロルジアゼポキシド

まとめ

EPO 抵抗性の原因と検査 rhuepo 低反応 rhuepo 投与 不適正 改善 検 査 不十分鉄状態 OK CRP 網状赤血球 LDH ビリルビン 改善 ( 静注鉄剤を考慮 ) 原因 ( 可能性 ) 感染 / 炎症悪性腫瘍 赤血球膜 溶血出血 FOB s 3 赤血球寿命 PTH 生検 B 12 / 葉酸血清アルミニウム Hb 電気泳動 骨髄線維化骨髄機能不全 ( 例 )MDS 造血性因子欠乏アルミニウム蓄積異常血色素症