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目次 経済学 [ 模擬講義 ] 身近なことを経済学で考える 1. 可処分所得と消費 2. ケインズ型の消費関数 3. ライフサイクル仮説 (1) 生涯所得と消費 (2) ライフサイクル仮説の図解 中村学園大学吉川卓也 1 2 1. 可処分所得と消費 1. 可処分所得とは 現在の所得から税金を差し引いた税引後所得である ( 可処分所得 = 所得 - 税金 ) 2. 消費とは モノやサービスを購入して使うことである 3. 消費関数とは 消費は現在の所得水準に依存して決まる ということ数式で表したものである 消費 = 所得ゼロでも支出される消費 ( 基礎消費 ) + 所得の増加分のうち消費に支出される割合 ( 限界消費性向 ) 可処分所得 3 消費関数は 所得と消費の関係を定式化したものである 所得 Y 消費 C のように所得が消費を決めると考える 消費は所得とともに増加する ( はずである ) ただし 所得が1 万円増加しても消費は1 万円以下しか増加しない ( はずである ) なぜなら 所得の増加ほどには消費を増加させず 貯蓄に回されるからである 4 所得増 消費増 所得増 貯蓄増 所得がゼロでも消費はプラス ( 所得がなくても生存するために消費が必要だから ) 以上のことを ( 数学を使って ) 表したものが消費関数である 所得が Y 円増加したとき 所得の増加により増加した消費の大きさ Cとする このとき 消費の増加分を所得の増加分で割った比率 C/ Y=c を限界消費性向と呼ぶ 消費と所得の比率 C/Yを平均消費性向と呼ぶ 5 貯蓄の増加分 (Y-C) を所得の増加分で割った比率 (Y-C) / Y=1-cを限界貯蓄性向と呼ぶ 一般的に 消費をC 所得をYと表すと 消費関数 C=A+cY ここでAは基礎消費と呼ばれる 貯蓄をSと表すと Y=C+Sという関係がある 消費関数がC=10+0.6Yと表されるとする このとき 限界消費性向 c=0.6 所得がゼロ(Y=0) でも10の消費をすることを意味している この消費関数を所得と消費のグラフで書くと図のようになる 6 1

消費関数 消費 C 40 消費関数 C= 10+0.6Y 消費関数 C=10+0.6Yは 切片 A=10 傾きc=0.6 の直線として描かれる 所得が50なら 消費は40と計算される 限界消費性向は消費関数の傾きであり 所得 Yに対して一定の値をとる 一方 平均消費性向は 消費関数上の一点における原点 O からの傾きで表される A=10 c=0.6 平均消費性向 したがって 平均消費性向は所得の増加とともに減少する O 40 50 所得 Y このタイプの消費関数は ケインズ型消費関数と呼ばれる 7 8 2. ケインズ型の消費関数 図 1 ケインズ型の消費関数 1. ケインズ型の消費関数 C は y 切片が基礎消費 A 傾きが限界消費性向 c の直線になる C = A + c Y d 2. A>0 0<c<1と考えられるので ケインズ型の消費関数は y 切片が正で 傾きが45 度より緩やかな ( 水平な ) 右上がりの直線である ( 図 1) 3. 平均消費性向とは 可処分所得のうち消費に支出する割合のことである 4. ケインズ型の消費関数では 平均消費性向は可処分所得が増加するにつれて減少する 9 消費 C A O c C 1 C 2 点での平均消費性向 C 1 点での平均消費性向 45 度線 C 2 B C = A + c Y d 可処分所得 Y d 10 練習問題 2.1 解答 次の一次関数のグラフを書きなさい (1)y=x (1)y=x y y/x y 0 1 2 3 4 y/x 1 1 1 1 (2)y=0.5x+1 (2)y=0.5x+1 y y/x 11 y 1 1.5 2 2.5 3 y/x 1.5 1 0.83 0.75 12 2

4.5 4 3.5 3 2.5 2 練習問題 2.2 消費関数 (1) 家賃 食費等が月 8 万円 限界消費性向が0.8 の学生の消費関数を求めなさい 所得税率は 10% とする (2) アルバイト所得が月 10 万円から10 万円ずつ増えたとき 消費はそれぞれいくらになるか また 平均消費性向はどのように変化するか 1.5 1 0.5 0 0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5 4 4.5 13 14 練習問題 2.2 解答 (1)C=8+0.8 Y d Y d =(1-0.1) Y=0.9Y (2) 下の表 基礎消費 8 8 8 8 8 所得 10 20 30 40 50 税金 1 2 3 4 5 可処分所得 9 18 27 36 45 限界消費性向 0.8 0.8 0.8 0.8 0.8 消費 15.2 22.4 29.6 36.8 44 平均消費性向 1.689 1.244 1.096 1.022 0.978 15 一次関数 消費関数 ケインズ型消費関数と一次関数 一次関数 0.5 1 0のとき 1 1のとき 1.5 2のとき 2 消費関数 1 0.5 0のとき 1 1のとき 1.5 2のとき 2 3. ライフサイクル仮説 ライフサイクルとは 個人の一生涯にわたる変化の過程のことである 17 3.(1) 生涯所得と消費 1. 限界効用とは 追加的な消費から得られる満足度のことである 2. 限界効用は 消費量が小さいときは大きいが 消費量が大きいときは小さい 3. したがって 消費量は一定の水準に保った方がよい 4. 可処分所得が多い時期は ( 消費量を増やさずに ) 貯蓄をし 所得が少ないときにその貯蓄を取り崩して消費にまわすことで 消費量を一定に保つことが望ましい 18 3

3.(2) ライフサイクル仮説の図解 5. ライフサイクル仮説とは 消費は 一生の間に稼ぐことのできる可処分所得総額 ( 生涯所得 ) によって決定される というものである 6. 各年齢での消費量は 生涯所得を寿命で割った平均生涯所得に等しくなると考える 7. ライフサイクル仮説は モディリアーニ ブランバーグ 安藤によって提案された 1. A 歳で就職し B 歳で退職 D 歳まで生きる個人のライフサイクルを考える 2. 若年期 (0 歳からA 歳まで ) と退職後 (B 歳からD 歳まで ) は所得ゼロ 壮年期 (A 歳からB 歳まで ) にEF 線で表される所得を得る 3. 生涯所得は 台形 AEFBで表される 4. 消費は 生涯 (0 歳からD 歳まで ) を通じて 毎年常にOCだけおこなう 19 20 3.1 ライフサイクル仮説の図解 5. 1 年間の消費額 OCは その年の所得額ではなく生涯所得で決まり 生涯所得をD 年で割った金額である 6. 若年期は 長方形 OAGCに相当する額を借金し 全額消費する 7. 壮年期は 台形 AEFBに相当する額の所得があり 長方形 ABHGに相当する額を消費し 残った台形 EFHGに相当する額を若年期の借金の返済と老後に備えて貯蓄にまわす 8. 退職後は 貯蓄を取り崩し長方形 BDC Hに相当する額の消費をおこなう 21 図 2 ライフサイクル仮説に基づく消費パターン 所得 消費量 C O 借金 E G 借金の返済と貯蓄 A B D 若年期壮年期退職後 F H C 貯蓄の食いつぶし 年齢 ( 歳 ) 22 例題 1 21 歳から60 歳まで働いて 毎年 600 万円の所得を得る人がいる この人が生まれたときに親から遺産を4000 万円相続しているとする この人は80 歳で死亡すると想定して 以下の問いに答えなさい 1. ライフサイクル仮説に基づいて消費した場合 死亡時にまったく遺産を残さないとしたら 毎年の消費額はいくらか 2. 死亡時に遺産を4000 万円残すとしたら 毎年の消費額はいくらか 例題 1 解答 1. 生涯所得 =4000 万円 +600 万円 40=28000 万円 2800 万円 80=350 万円 2. 生涯所得 =4000 万円 +600 万円 40-4000 万円 =24000 万円 2400 万円 80=300 万円 23 24 4

( 参考 ) 理論と現実クロスセクション データの結果 1. 総務省 家計調査 による年間収入階級別データから得られる可処分所得と消費支出のクロスセクション データによれば 収入が高い ( 可処分所得が多い ) 階級ほど平均消費性向が低くなっている 2. したがって 日本のクロスセクション データでは ケインズ型の消費関数の性質が良くあてはまっている 長期の時系列データの結果 1. 内閣府 国民経済計算 による時系列データから得られる約 40 年間にわたる長期の消費関数は 原点を通る直線となる 2. したがって 平均消費性向は可処分所得が増加しても変わらず ケインズ型の消費関数はあてはまらない 25 26 短期の時系列データの結果 1. 同じ国民経済計算から得られる短期の消費関数は 正のy 切片をもつ右上がりの直線となる 2. したがって 可処分所得が増加するにしたがって平均消費性向は減少し ケインズ型の消費関数があてはまる 3. 短期の消費関数の傾きは 長期の消費関数の傾きよりも小さくなっている 矛盾する推計結果 1. ケインズ型の消費関数に関して 短期と長期では矛盾した結果が得られる 2. クズネッツは米国の消費関数について 同様の結果を明らかにした 3. この矛盾を合理的に説明する必要がある 27 28 統計的事実の説明 1. ライフサイクル仮説が成立するなら 経済全体の平均的な消費額は 平均的な個人の生涯所得に等しい 2. 生涯所得は 短期的に所得が変動してもほとんど変化しないと考えられる 3. したがって 平均的な消費額は変わらない 4. 分子の消費額は変わらないので 短期的に分母の所得が増えれば 平均消費性向は減少する 5. したがって ライフサイクル仮説に基づく消費は 短期的にはケインズ型の消費関数になる 29 統計的事実の説明 6. 一方 長期的にみれば 長期間にわたる所得の変化により 生涯所得も変化する 7. したがって 平均的な消費額は 所得の変化と同じように変化すると考えられる 8. その場合 分子分母が同じように変化すれば 平均消費性向は変わらない 9. つまり 長期的な消費関数は 原点を通る直線となる 10. 以上のように ライフサイクル仮説は 短期の消費関数も 長期の消費関数も説明できる 30 5

例題 2 次の貯蓄に関する説明のうち その動機がライフサイクル仮説で説明できないものはどれか 1. 老後に年金がどれだけもらえるか不安なため 年金がなくても生活ができるよう資産を蓄えておく 2. 日本人の平均寿命は80 歳程度だが 何歳まで生きられるかは不確実である そこで 100 歳まで生きても生活が困らないように 若いうちに多めに貯蓄しておこうとする 3. 昔の日本では 家 という概念が重要であり 親は家の跡継ぎである長男に多くの資産を残すために貯蓄していた 4. 老後の楽しみは 子どもや孫と遊ぶことである しかし 子や孫に残せる資産がないと寄りついてくれないので 貯蓄を残そうとする 31 例題 2 解答正解 3. 1. 老後のために貯蓄する動機の説明であり ライフサイクル仮説で説明できる 2. 予想以上に長生きした際の予備的動機による貯蓄といえる 生涯の消費 貯蓄計画なので ライフサイクル仮説と矛盾せず説明できる 3. 利他主義に基づく遺産動機 と呼ばれるものの1つといえる この例のように 親が 家 ( 系 ) の存続を考えて資産を残そうとする行動は王朝主義と呼ばれ ライフサイクル仮説とは異なる行動原理である 4. 戦略的遺産動機 と呼ばれるものである 子どもに老後の世話をしてもらうことなどと同様に自分自身の老後のための貯蓄といえるので ライフサイクル仮説で説明できる 32 例題 3 21 歳から60 歳まで働いて 毎年 600 万円の所得を得る人がいる この人が生まれたときに親から遺産を4000 万円相続しており 80 歳で死亡すると想定する また この人は流動性制約に直面し 借入をまったくできないとする ライフサイクル仮説に基づいて消費した場合 死亡時にまったく遺産を残さないとしたら 毎年の消費額はいくらか 33 例題 3 解答 20 歳までは 遺産 4000 万円を使って消費する 毎年の消費額 =4000 万円 20=200 万円 21 歳から80 歳までは 総所得 =600 万円 40=24000 万円を均等に消費する よって 毎年の消費額 =2400 万円 60=400 万円 34 練習問題 2.4 ライフサイクル仮説 現在 20 歳の学生 Aさんが 30 歳までに1000 万円の資産を保有しているとする その後 毎年 400 万円の勤労所得が退職するまであり 60 歳で退職し 80 歳で死亡するものとする Aさんがライフサイクル仮説に従って行動した場合 毎年の消費額 平均消費性向 限界消費性向はいくらになるか 35 練習問題 2.4 解答 30 歳以降の消費がライフサイクル仮説に従うと考える 毎年の消費額をC 毎年の勤労所得をY 30 歳時点の資産額をW 退職時点をN 歳 死亡時点をL 歳とする 30 歳以降の所得は Y (N-30)+W 一方 30 歳から死亡時までの消費総額は C (L-30) 両者が等しくなると考えるのがライフサイクル仮説であるから C (L-30)=Y (N-30)+W 30 30 30 36 6

N=60 L=80 W=1000を代入すると 以下のように消費関数が求まる 30 30 30 60 30 1000 80 30 80 30 30 50 1000 50 0.6 20 Yに400を代入すれば 毎年の消費額 Cは C=0.6 400+20=240+20=260 限界消費性向は 消費関数の傾きだから0.6 平均消費性向は 260 400 0.65 37 38 7