者における XO 阻害薬の効果に影響すると予測される 以上の議論を背景として 本研究では CKD にともなう FX および尿酸の薬物体内動態 ( PK ) 変化と高尿酸血症病態への影響を統合的に解析できる PK- 薬力学 (PD) モデルを構築し その妥当性を腎機能正常者および CKD 患者で報告さ

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TDM研究 Vol.26 No.2

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

解析センターを知っていただく キャンペーン

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

添付文書の薬物動態情報 ~基本となる3つの薬物動態パラメータを理解する~

(別紙様式1)

CQ1: 急性痛風性関節炎の発作 ( 痛風発作 ) に対して第一番目に使用されるお薬 ( 第一選択薬と言います ) としてコルヒチン ステロイド NSAIDs( 消炎鎮痛剤 ) があります しかし どれが最適かについては明らかではないので 検討することが必要と考えられます そこで 急性痛風性関節炎の

薬物動態開発の経緯 特性製品概要臨床成績副作用 mgを空腹時に単回経口投与副作用また 日本人及び白人健康成人男性において アピキサバン 薬物動態薬物動態非臨床試験に関する事項非臨床試験に関する事項1. 血中濃度 (1) 単回投与 (CV185013) 11) 日本人健康成人男性

<4D F736F F D E39208D8190EC C814096F295A889F090CD835C D C A975E90DD8C7695D D815B F B A2E646F6378>

オクノベル錠 150 mg オクノベル錠 300 mg オクノベル内用懸濁液 6% 2.1 第 2 部目次 ノーベルファーマ株式会社

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抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

Ⅰ One-compartmentmodel( 静脈内急速投与 ) [ シミュレーション実験上の全般的注意点 ] 実習書をよく読み 適切な器具 ( フラスコ, メスシリンダー ) を使用する の流速を 実際の実験状態に近い位置で 別々にしっかりと合わせる ( 最低 3 回 ) 精製水の補給用のチュー


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腎薬ニュース第 5 号 (2007 年 6 月 ;2012 年 1 月加筆修正 ) 熊本大学薬学部臨床薬理学分野平田純生 添付文書どおり腎機能に基づいた投与量にしても起こるアシクロビル中毒の原因は? 1. アシクロビル中毒の症状は? 慢性腎臓病 (CKD) 患者に頻発するアシクロビル バラシクロビル

(2) 健康成人の血漿中濃度 ( 反復経口投与 ) 9) 健康成人男子にスイニー 200mgを1 日 2 回 ( 朝夕食直前 ) 7 日間反復経口投与したとき 血漿中アナグリプチン濃度は投与 2 日目には定常状態に達した 投与 7 日目における C max 及びAUC 0-72hの累積係数はそれぞれ

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2006 年 3 月 3 日放送 抗菌薬の適正使用 市立堺病院薬剤科科長 阿南節子 薬剤師は 抗菌薬投与計画の作成のためにパラメータを熟知すべき 最初の抗菌薬であるペニシリンが 実質的に広く使用されるようになったのは第二次世界大戦後のことです それまで致死的な状況であった黄色ブドウ球菌による感染症に

( 様式甲 5) 学位論文内容の要旨 論文提出者氏名 論文審査担当者 主査 教授 花房俊昭 宮村昌利 副査副査 教授教授 朝 日 通 雄 勝 間 田 敬 弘 副査 教授 森田大 主論文題名 Effects of Acarbose on the Acceleration of Postprandial

ン (LVFX) 耐性で シタフロキサシン (STFX) 耐性は1% 以下です また セフカペン (CFPN) およびセフジニル (CFDN) 耐性は 約 6% と耐性率は低い結果でした K. pneumoniae については 全ての薬剤に耐性はほとんどありませんが 腸球菌に対して 第 3 世代セフ

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Cpk=36.5 μg/ml =0.99 meq/l Cav=27.9 μg/ml =0.75 meq/l Ctr=20.7 μg/ml = 0.56 meq/l 4) 躁病治療の有効血中濃度は 0.3~1.2mEq/L であるが この投与量で治療効果が得られるか? Li は 2 分子含まれているの

<4D F736F F D E39208D8190EC C814096F295A889F090CD835C D C A975E90DD8C7695D FE18A D816A2E646F6378>

3 章 透析まで行かせないためにどうする 2 CKD と高尿酸血症 尿酸をどうコントロールする 高尿酸血症の分類を以下に示します 平和伸仁 まとめ & ス アドバイ 尿酸産生過剰型 尿酸排泄低下型 上記 2 つの混合型 腎機能の低下とともに尿酸排泄が低下して高尿酸血症の頻度は高まる 腎機能が低下する

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目次 生物薬剤学試験及び関連する分析法 背景及び概観 製剤開発過程 バイオアベイラビリティ メマンチン塩酸塩の絶対バイオアベイラビリティ メマン

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

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ストレスが高尿酸血症の発症に関与するメカニズムを解明 ポイント これまで マウス拘束ストレスモデルの解析で ストレスは内臓脂肪に慢性炎症を引き起こし インスリン抵抗性 血栓症の原因となることを示してきました マウス拘束ストレスモデルの解析を行ったところ ストレスは xanthine oxidored

(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

数理システムユーザーコンファレンス (Fri) 医薬品の臨床薬理試験におけるモデリング & シミュレーションー S-PLUS とほかのソフトウェアの連携ー サターラ合同会社笠井英史

添付文書情報 の検索方法 1. 検索条件を設定の上 検索実行 ボタンをクリックすると検索します 検索結果として 右フレームに該当する医療用医薬品の販売名の一覧が 販売名の昇順で表示されます 2. 右のフレームで参照したい販売名をクリックすると 新しいタブで該当する医療用医薬品の添付文書情報が表示され

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られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として

本資料は 2001 年 4 月に作成者らが NONMEM の入門的な解説として 母集団薬物動態解析法の応用例を紹介する目的で行ったセミナーで使用したスライドを元に修正を加えたものである 本来であれば 説明文による解説を必要とするが ご容赦願いたい 説明のために使用したデータは全て シミュレーションに

総論 2 腎不全患者に特徴的な薬物動態の変化 薬効 薬物名 商品名 尿中排泄率 (%) 副作用 リバビリン レベトール 50 骨髄抑制, 意識障害 禁忌 アマンタジン シンメトレル 90 不穏, せん妄, 幻視 禁忌 抗ウイルス薬 オセルタミビル タミフル 70( 活性代謝物 99 悪心, 嘔吐,

BSA(m 2 )= 体重 (kg) 身長 (cm) =1.27m 2 となり 173.6mL/min/1.73m 2 を 1.27m 2 である患者個人の腎機能に換算 ( で補正を外すと ) すると 127.4mL/min になりますが これでも実測 CCr

別紙様式 (Ⅱ)-1 添付ファイル用 商品名 : イチョウ葉脳内 α( アルファ ) 安全性評価シート 食経験の評価 1 喫食実績による食経験の評価 ( 喫食実績が あり の場合 : 実績に基づく安全性の評価を記載 ) 弊社では当該製品 イチョウ葉脳内 α( アルファ ) と同一処方の製品を 200

学術委員会学術第 1 小委員会 慢性腎臓病(CKD) 患者への適正な薬物療法に関する調査 研究 ~ 腎機能低下患者への投与に関係する添付文書記載の問題点の調査 ~ 委員長東京薬科大学薬学部医療実務薬学教室竹内裕紀 Hironori TAKEUCHI 委員白鷺病院薬剤科和泉智 Satoshi IZUM

2012 年 2 月 29 日放送 CLSI ブレイクポイント改訂の方向性 東邦大学微生物 感染症学講師石井良和はじめに薬剤感受性試験成績を基に誰でも適切な抗菌薬を選択できるように考案されたのがブレイクポイントです 様々な国の機関がブレイクポイントを提唱しています この中でも 日本化学療法学会やアメ

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JMP による 2 群間の比較 SAS Institute Japan 株式会社 JMP ジャパン事業部 2008 年 3 月 JMP で t 検定や Wilcoxon 検定はどのメニューで実行できるのか または検定を行う際の前提条件の評価 ( 正規性 等分散性 ) はどのメニューで実行できるのかと

未承認薬 適応外薬の要望に対する企業見解 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 会社名要望された医薬品要望内容 CSL ベーリング株式会社要望番号 Ⅱ-175 成分名 (10%) 人免疫グロブリン G ( 一般名 ) プリビジェン (Privigen) 販売名 未承認薬 適応 外薬の分類

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ルグリセロールと脂肪酸に分解され吸収される それらは腸上皮細胞に吸収されたのちに再び中性脂肪へと生合成されカイロミクロンとなる DGAT1 は腸管で脂質の再合成 吸収に関与していることから DGAT1 KO マウスで認められているフェノタイプが腸 DGAT1 欠如に由来していることが考えられる 実際

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薬物動態学の最初の発展期である 1960 年代中頃から 1970 年代初めになると Metzler が NONLIN という名の非線形解析プログラムを紹介し ( [Metzler, 1969]) Benet は線 形マミラリーモデル ( 図 8-1) の一般化した解法を初めて発表した ( [Bene

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使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

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満 ) 測定系はすでに自動化されている これまで GA を用いた研究は 日本 中華人民共和国 (PRC) および米国で実施され GA 値が糖尿病の診断に有用という結果が日本とアメリカで報告された 本研究ではその普遍性を追求するため 台湾人での検討を行った 同時に台湾における GA の基準範囲を新規に

120 ており,10 代の発生頻度は16.3% であると報告されている 1) 高尿酸血症と密接に関係する痛風も年々増加している 国民生活基礎調査によると痛風による通院中の者が2013 年には106.3 万人に達しており, その94% が男性である 2) 高尿酸血症は痛風の要因になるだけでなく, 尿酸

トリアムシノロンアセトニド マキュエイド硝子体内注用 40mg 医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請書 添付資料 CTD 第 2 部 ( 資料概要 ) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表 薬物動態試験の概要文 わかもと製薬株式会社 1

ファーマコメトリクス研究に 要求されるスキル及び そのための教育 (Sun) 第 1 回ファーマコメトリクス研究会 株式会社ベルシステム 24 医薬関連サービス事業本部生物統計局薬物動態解析グループ笠井英史

症患者における検討は全く行われていない そこで本研究では VPA 服用中の統合失調症患者における高アンモニア血症に関するメカニズムを検討するために当該患者 37 名の朝食前空腹時血液サンプル ( 10mL) を採取し 血清アンモニアおよび VPA 濃度 尿素サイクルに関連する 40 種類の血中アミノ

本調査の実施背景 目的 背景 承認申請データの電子的提出に向けた制度面又は技術面での課題について 昨年より審査 WG SWG で検討中 本年度前半には承認申請時の電子データ提出に関する基本通知 その後実務通知が発出される予定 目的 今後発出予定の実務通知に盛り込むべき内容等の検討に際し 以下の事項に

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

本書の読み方 使い方 ~ 各項目の基本構成 ~ * 本書は主に外来の日常診療で頻用される治療薬を取り上げています ❶ 特徴 01 HMG-CoA 代表的薬剤ピタバスタチン同種同効薬アトルバスタチン, ロスバスタチン HMG-CoA 還元酵素阻害薬は主に高 LDL コレステロール血症の治療目的で使 用

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わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

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グルコースは膵 β 細胞内に糖輸送担体を介して取り込まれて代謝され A T P が産生される その結果 A T P 感受性 K チャンネルの閉鎖 細胞膜の脱分極 電位依存性 Caチャンネルの開口 細胞内 Ca 2+ 濃度の上昇が起こり インスリンが分泌される これをインスリン分泌の惹起経路と呼ぶ イ

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2. 時系列分析 プラットフォームの使用法 JMP の 時系列分析 プラットフォームでは 一変量の時系列に対する分析を行うことができます この章では JMP のサンプルデ ータを用いて このプラットフォームの使用法をご説明します JMP のメニューバーより [ ヘルプ ] > [ サンプルデータ ]

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よる感染症は これまでは多くの有効な抗菌薬がありましたが ESBL 産生菌による場合はカルバペネム系薬でないと治療困難という状況になっています CLSI 標準法さて このような薬剤耐性菌を患者検体から検出するには 微生物検査という臨床検査が不可欠です 微生物検査は 患者検体から感染症の原因となる起炎

57巻S‐A(総会号)/NKRP‐02(会長あいさつ)

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2004年 vol.16-2/1      目次・広告

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3 病床数 施設 ~19 床 床 床以上 284 (3 施設で未回答 ) 4 放射線専門医数 ( 診断 治療を含む ) 施設 ~5 人 226 6~10 人 人

2-2 需要予測モデルの全体構造交通需要予測の方法としては,1950 年代より四段階推定法が開発され, 広く実務的に適用されてきた 四段階推定法とは, 以下の4つの手順によって交通需要を予測する方法である 四段階推定法将来人口を出発点に, 1 発生集中交通量 ( 交通が, どこで発生し, どこへ集中

1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

EBNと疫学

要望番号 ;Ⅱ-286 未承認薬 適応外薬の要望 ( 別添様式 ) 1. 要望内容に関連する事項 要望者 ( 該当するものにチェックする ) 学会 ( 学会名 ; 特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会 ) 患者団体 ( 患者団体名 ; ) 個人 ( 氏名 ; ) 優先順位 33 位 ( 全 33 要望

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フェブキソスタットの尿酸低下効果を腎機能と高尿酸血症の個人差を考慮にいれて予測するモデル & シミュレーション法の検討 Modeling and Simulation for E stimating the In fluence of Renal D ys function on the H yp ouricemic Eff ect of Febuxostat in H yp eru ricemic Patients Due to Overproduction or Underexcretion of Uric Acid 平成 24 年度入学平井利典 (Hirai, Toshinori) 指導教員越前宏俊 高尿酸血症は痛風発作の危険因子のみならず慢性腎臓病 ( CKD ) や心血管系イベントの危険因子として注目を集めている しかし CKD 患者の高尿酸血症治療は正常腎機能患者よりも困難であることが多い 尿酸合成に関わるキサンチン酸化酵素 ( XO) 阻害薬であるアロプリノールは活性代謝物のオキシプリノールが CKD 患者で蓄積するため副作用発現リスクが高く 尿酸排泄促進薬のプロベネシドは 腎機能低下に伴い治療効果が低下するため効果が不十分となりがちである 一方 新規 XO 阻害薬のフェブキソスタット ( FX ) は 代謝消失が主体である薬物であるため重度 CKD 患者において 血中薬物濃度時間下面積 (AUC) が 76% 程度増加するものの投与量 補正は不要とされているため今後は CKD 患者の高尿酸治療の中心となると推測される また 高尿酸血症の病態は尿酸合成過剰型と排泄低下型に分類され XO 阻害薬は作用機序から前者に良い適応であるとされる しかし 尿酸は主に腎消失であるため高尿酸血症を有する CKD 患者の尿酸 PK は正常人患者と異なっており CKD 患 1

者における XO 阻害薬の効果に影響すると予測される 以上の議論を背景として 本研究では CKD にともなう FX および尿酸の薬物体内動態 ( PK ) 変化と高尿酸血症病態への影響を統合的に解析できる PK- 薬力学 (PD) モデルを構築し その妥当性を腎機能正常者および CKD 患者で報告された FX の尿酸低下効果と比較して検討した 方法 1. FX の PK モデルの構築 FX の PK-PD 情報は Medline を用いて収集した 重症 CKD 患者 を含む PK 研究で報告された FX の時間 - 血中濃度データは文献中 の画像データを U ngraph 5 で数値化し WinNonlin を用いて CKD 患者の FX 濃度時間データ予測に必要な PK パラメータを算出した 経口投与後の FX の血中濃度推移は 2-コンパートメントモデル (CM) を採用した 遊離型分率 ( f u ) は CKD の腎機能に影響されるため CKD 重症度で層別化された平均値 ( 0.9~ 1.2% ) を用いた 吸収速度定数 ( k a ) は 2.18 h - 1 と仮定した 経口バイオアベイラビリティ ( F ) はヒトのマスバランス試験の結果から 65% と仮定し k a と F は腎機能によらず一定とした 2. 内因性尿酸の PK モデルの構築 内因性尿酸の体内動態パラメータは健常人被験者に 14 C 尿酸を 静注投与して得た PK 値を文献から採用した CK D 患者における 尿酸の腎クリアランス ( CLR(UA) ) は Tykarski の報告に基づき作成 した予測式 [ CL R(UA) = 1.23 CL 0.433 cr ] を用いて予測した 尿酸の非腎クリ アランス ( CLN R ( U A ) ) は腎機能によらず一定と仮定した 定常状態 の尿酸合成速度 (UAsyn) は 尿酸消失速度と等しいと仮定した 文献 2

的にキサンチンの PK データは得られなかったため キサンチンの体内動態は 1-CM に従い 分布容積は尿酸の分布容積と等しいと仮定した 大部分のキサンチンは XO を介して尿酸に代謝されるので キサンチン合成速度は UAsyn と等しいと仮定した FX 投与前の平均キサンチン濃度は文献値の 0.29mg/L で CKD によらず一定とした 3. FX の XO 阻害モデルヒト XO に対する FX の阻害データは報告がないため bovine XO 阻害実験で得られた阻害様式と阻害定数を用いて阻害動態モデルを構築した 血漿中の FX 遊離型濃度は XO 近傍と平衡状態にあると仮定し FX の全身 PK モデルと XO 阻害モデルを統合した さらに FX 投与後に XO の基質であるキサンチンの血中濃度が投与前値から約 5 倍増加し XO の K m 値を超えるため後述の方法でキサンチン濃度変化も XO 阻害モデルに組み込んだ 4. FX の尿酸低下効果のモンテカルロ シミュレーション ( MCS) FX の PK-PD モデルは上記の説明に基づき構築した ( 図 1 ) このモデルを用いて体重 CLcr 治療前血清尿酸値を患者変動因子と し 任意の FX 投与量 に対する 10 日間連日 内服後の尿酸低下効果 を STELLA ver. 9.0.3 を用いて MCS し 平均 図 1.PK- P D モデル 3

値と 95% 信頼区間を算出した 予測に際して各 PK- PD パラメータ の変動係数 ( CV) は 30% と設定した ただし FX の吸収は速やかで あるため F と k a の CV はそれぞれ 7.7% と 10% とした FX の尿酸低下効果に対する CK D および高尿酸血症の病型の影 響は合成過剰または排泄低下の病型を有する仮想の正常および CKD 高尿酸血症患者集団を構築して検討した まず 典型的な体重 60kg の正常腎機能と尿酸値 (CL cr 100ml/min, 6.0mg/dL ) の内因性尿酸の PK パラメータを算出した その後 得られた UAsyn を 1.5 倍に増加させ さらに治療前血清尿酸値が典型的な高尿酸血症の 9.0mg/dL として仮想合成過剰型患者を 尿酸消失速度を 2/3 となるよう CLR ( U A ) を低下させて排泄低下型患者を構築した さらに同様の方法で重度 CKD( CLcr 30ml/min ) においても合成過剰および排泄低下型の高尿酸血症患者の尿酸 PK モデルを作成した これらの仮想患者に対して低用量 FX( 10mg/day ) を 10 日間連日内服した場合の血清尿酸値の時間経過 MC S し 多くの高尿酸血症治療ガイドラインで推奨している治療目標血清尿酸値 6.0mg/dL 以下への到達率を腎機能および高尿酸病型別に予測した 本研究で構築した PK-PD モデルの変動因子の最終的効果に対する影響は感度分析で評価した 具体的には前述の仮想の腎機能正常かつ合成過剰型の高尿酸血症患者に対して低用量 FX( 10mg/day ) を 10 日間連日内服した場合の尿酸低下効果が患者変数 K i,ki,km,fu それぞれの標準値から 0.5~ 2 倍の変動に対して生じる効果を評価した 統計解析は JMP Pro (v.12.0.1, SAS Institute Inc.) を用い 予測値と実測値の対応は直交回帰分析を用いた 統計 4

Estimated UA level (mg/dl) 検定は p<0.05 で有意と評価した 結果と考察 1. PK-PD モデルの予測検証文献検索により FX 投与前の患者変動因子と投与前後の尿酸値が 5 報 (735 名 ) 得られた FX の投与量は 10-240mg/ 日 腎機能は CLcr で 19 から 112mL/min であっ 8 6 4 2 0 C i r c l e s s i z e d e p i c t s s a m p l e s i z e y = 0.73 x + 0.19 r = 0.89, p<0.001 0 2 4 6 8 Observed UA level (mg/dl) 図 2. 予測尿酸値と文献値の相関関係 た 本研究で構築した FX の PK-PD モデルは CKD の重症度に応じた FX の血中濃度推移を正確に予測した また FX 濃度の時間推移に対応した XO における UAsyn 阻害とキサンチン血中濃度変化も予測できた これらの文献値に対して本研究の PK-PD モデルを適応したところ FX による尿酸低下の予測値は実測値を 20% 程度過大評価するものの上記の患者変数の変動範囲の中で FX の尿酸低下効果をかなり良い精度で予測できた ( 図 2) 感受性分析の結果 予測に最も影響の大きかった PK 因子は f u であった 同一の FX 総血中濃度のもとで f u を基準値を中心に 2 倍増減させると治療後尿酸値は 7.0mg/dL から 5.2 mg/dl に変動した PD 因子では XO 阻害の K i の影響が最も大きく 基準値を中心に 2 倍増減させると治療後尿酸値は 5.4mg/dL から 6.7 mg/dl に変化した 2. 腎機能と高尿酸血症病型の F X の治療効果に対する影響典型的な尿酸合成過剰および排泄低下病態の高尿酸血症患者に 5

Serum UA levels (mg/dl) 対して低用量 FX( 10mg/day) を繰り返し服用した際の血清尿酸濃度を MCS した結果 FX の CKD 患者における尿酸低下効果は腎機能正常者より大きかった 治療目標値 6.0mg/dL 以下の到達率は仮想の重度 CKD と腎機能正常者でそれぞれ 90% と 55% であった この理由は感度分析の結果から CK D 患者における FX 蓄積が原因と想定された 一方 同等の腎機能患者における FX の尿酸低下効果は高尿酸血症の病型に影響されなかった この理由は FX 濃度が腎機能に規定され XO 阻害率は FX 濃度に規定されるため高尿酸血症の病態により異なる治療前の XO 活性を有していても XO の阻害率は同一であるた 10 Overproduction Undersecretion めである 結論として 8 Normal renal function 今後の観察研究でモデル 6 の妥当性検証が必要であるものの 本研究で構築した腎機能と尿酸の体内動態を考慮した FX の PK-PD モデルは高尿酸 4 2 CKD 0 0 24 48 72 96 120 144 168 192 216 240 time (hr) 図.3 F X 1 0 m g / d a y 連日内服時の尿酸の経時的変化 血症病態による治療効果への影響と CKD 患者での低用量 FX 投与の妥当性を示唆するなど 臨床上意義のある結果を見いだしたと考える 参考文献 Hirai T., Kimura T., Echizen H., B iol. Pharm. Bull.,39,1013-1021 (2016). 6