添付文書の薬物動態情報 ~基本となる3つの薬物動態パラメータを理解する~

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ピルシカイニド塩酸塩カプセル 50mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにピルジカイニド塩酸塩水和物は Vaughan Williams らの分類のクラスⅠCに属し 心筋の Na チャンネル抑制作用により抗不整脈作用を示す また 消化管から速やかに

(2) 健康成人の血漿中濃度 ( 反復経口投与 ) 9) 健康成人男子にスイニー 200mgを1 日 2 回 ( 朝夕食直前 ) 7 日間反復経口投与したとき 血漿中アナグリプチン濃度は投与 2 日目には定常状態に達した 投与 7 日目における C max 及びAUC 0-72hの累積係数はそれぞれ

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

抗菌薬の殺菌作用抗菌薬の殺菌作用には濃度依存性と時間依存性の 2 種類があり 抗菌薬の効果および用法 用量の設定に大きな影響を与えます 濃度依存性タイプでは 濃度を高めると濃度依存的に殺菌作用を示します 濃度依存性タイプの抗菌薬としては キノロン系薬やアミノ配糖体系薬が挙げられます 一方 時間依存性

3. 安全性本治験において治験薬が投与された 48 例中 1 例 (14 件 ) に有害事象が認められた いずれの有害事象も治験薬との関連性は あり と判定されたが いずれも軽度 で処置の必要はなく 追跡検査で回復を確認した また 死亡 その他の重篤な有害事象が認められなか ったことから 安全性に問

添付文書情報 の検索方法 1. 検索条件を設定の上 検索実行 ボタンをクリックすると検索します 検索結果として 右フレームに該当する医療用医薬品の販売名の一覧が 販売名の昇順で表示されます 2. 右のフレームで参照したい販売名をクリックすると 新しいタブで該当する医療用医薬品の添付文書情報が表示され

目次 生物薬剤学試験及び関連する分析法 背景及び概観 製剤開発過程 バイオアベイラビリティ メマンチン塩酸塩の絶対バイオアベイラビリティ メマン

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

あった AUCtはで ± ng hr/ml で ± ng hr/ml であった 2. バイオアベイラビリティの比較およびの薬物動態パラメータにおける分散分析の結果を Table 4 に示した また 得られた AUCtおよび Cmaxについてとの対数値

医薬品の添付文書等を調べる場合 最後に 検索 をクリック ( 下部の 検索 ボタンでも可 ) 特定の文書 ( 添付文書以外の文書 ) の記載内容から調べる場合 検索 をクリック ( 下部の 検索 ボタンでも可 ) 最後に 調べたい医薬品の名称を入力 ( 名称の一部のみの入力でも検索可能

2006 年 3 月 3 日放送 抗菌薬の適正使用 市立堺病院薬剤科科長 阿南節子 薬剤師は 抗菌薬投与計画の作成のためにパラメータを熟知すべき 最初の抗菌薬であるペニシリンが 実質的に広く使用されるようになったのは第二次世界大戦後のことです それまで致死的な状況であった黄色ブドウ球菌による感染症に

者における XO 阻害薬の効果に影響すると予測される 以上の議論を背景として 本研究では CKD にともなう FX および尿酸の薬物体内動態 ( PK ) 変化と高尿酸血症病態への影響を統合的に解析できる PK- 薬力学 (PD) モデルを構築し その妥当性を腎機能正常者および CKD 患者で報告さ

薬物動態開発の経緯 特性製品概要臨床成績副作用 mgを空腹時に単回経口投与副作用また 日本人及び白人健康成人男性において アピキサバン 薬物動態薬物動態非臨床試験に関する事項非臨床試験に関する事項1. 血中濃度 (1) 単回投与 (CV185013) 11) 日本人健康成人男性

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Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

TDMを活用した抗菌薬療法

PowerPoint プレゼンテーション

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より詳細な情報を望まれる場合は 担当の医師または薬剤師におたずねください また 患者向医薬品ガイド 医療専門家向けの 添付文書情報 が医薬品医療機器総合機構のホームページに掲載されています

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医療用医薬品最新品質情報集 ( ブルーブック ) 初版有効成分リトドリン塩酸塩 品目名 ( 製造販売業者 ) 後発医薬品 品目名 ( 製造販売業者 ) 先発医薬品 効能 効果用法 用量添加物 1) 解離定数 (25 ) 1) 溶解度 (37 ) 1 ウテロン錠 5mg サンド 2

Cpk=36.5 μg/ml =0.99 meq/l Cav=27.9 μg/ml =0.75 meq/l Ctr=20.7 μg/ml = 0.56 meq/l 4) 躁病治療の有効血中濃度は 0.3~1.2mEq/L であるが この投与量で治療効果が得られるか? Li は 2 分子含まれているの

腎薬ニュース第 5 号 (2007 年 6 月 ;2012 年 1 月加筆修正 ) 熊本大学薬学部臨床薬理学分野平田純生 添付文書どおり腎機能に基づいた投与量にしても起こるアシクロビル中毒の原因は? 1. アシクロビル中毒の症状は? 慢性腎臓病 (CKD) 患者に頻発するアシクロビル バラシクロビル

薬物動態開発の経緯 特性製品情報(3) 薬物動態に対する食事の影響 ( 外国人データ )(B66119)12) 品情報臨床成績臨床成績薬物動態薬物動態薬効薬理薬効薬理一般薬理 毒性一般薬理 毒性(2) 反復投与 (CV18546) 11) 日本人健康成人男性 6 例に アピキサバン 1 回 2.5

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オクノベル錠 150 mg オクノベル錠 300 mg オクノベル内用懸濁液 6% 2.1 第 2 部目次 ノーベルファーマ株式会社

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Ⅰ One-compartmentmodel( 静脈内急速投与 ) [ シミュレーション実験上の全般的注意点 ] 実習書をよく読み 適切な器具 ( フラスコ, メスシリンダー ) を使用する の流速を 実際の実験状態に近い位置で 別々にしっかりと合わせる ( 最低 3 回 ) 精製水の補給用のチュー

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学術委員会学術第 1 小委員会 慢性腎臓病(CKD) 患者への適正な薬物療法に関する調査 研究 ~ 腎機能低下患者への投与に関係する添付文書記載の問題点の調査 ~ 委員長東京薬科大学薬学部医療実務薬学教室竹内裕紀 Hironori TAKEUCHI 委員白鷺病院薬剤科和泉智 Satoshi IZUM

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減量・コース投与期間短縮の基準

使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

トリアムシノロンアセトニド マキュエイド硝子体内注用 40mg 医薬品製造販売承認事項一部変更承認申請書 添付資料 CTD 第 2 部 ( 資料概要 ) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表 薬物動態試験の概要文 わかもと製薬株式会社 1

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B型肝炎治療における      バラクルード錠R0.5mgの製品情報         【簡易版】

用法・用量DB

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葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

緒言

グリコペプチド系 >50( 常用量 ) 10~50 <10 血液透析 (HD) 塩酸バンコマイシン散 0.5g バンコマイシン 1 日 0.5~2g MEEK 1 日 4 回 オキサゾリジノン系 ザイボックス錠 600mg リネゾリド 1 日 1200mg テトラサイクリン系 血小板減少の場合は投与

Epilepsy2015

2. 改訂内容および改訂理由 2.1. その他の注意 [ 厚生労働省医薬食品局安全対策課事務連絡に基づく改訂 ] 改訂後 ( 下線部 : 改訂部分 ) 10. その他の注意 (1)~(3) 省略 (4) 主に 50 歳以上を対象に実施された海外の疫学調査において 選択的セロトニン再取り込み阻害剤及び

タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg タペンタ 錠 100mg に係る 販売名 タペンタ 錠 25mg タペンタ 錠 50mg 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 有効成分 タペンタ 錠 100mg 製造販売業者 ヤンセンファーマ株式会社 薬効分類 821 提出年月 平成 30 年

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デベルザ錠20mg 適正使用のお願い

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食欲不振 全身倦怠感 皮膚や白目が黄色くなる [ 肝機能障害 黄疸 ] 尿量減少 全身のむくみ 倦怠感 [ 急性腎不全 ] 激しい上腹部の痛み 腰背部の痛み 吐き気 [ 急性膵炎 ] 発熱 から咳 呼吸困難 [ 間質性肺炎 ] 排便の停止 腹痛 腹部膨満感 [ 腸閉塞 ] 手足の筋肉の痛み こわばり

本書の読み方 使い方 ~ 各項目の基本構成 ~ * 本書は主に外来の日常診療で頻用される治療薬を取り上げています ❶ 特徴 01 HMG-CoA 代表的薬剤ピタバスタチン同種同効薬アトルバスタチン, ロスバスタチン HMG-CoA 還元酵素阻害薬は主に高 LDL コレステロール血症の治療目的で使 用

査を実施し 必要に応じ適切な措置を講ずること (2) 本品の警告 効能 効果 性能 用法 用量及び使用方法は以下のとお りであるので 特段の留意をお願いすること なお その他の使用上の注意については 添付文書を参照されたいこと 警告 1 本品投与後に重篤な有害事象の発現が認められていること 及び本品

福岡大学薬学部薬学疾患管理学教授

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別紙様式 (Ⅱ)-1 添付ファイル用 商品名 : イチョウ葉脳内 α( アルファ ) 安全性評価シート 食経験の評価 1 喫食実績による食経験の評価 ( 喫食実績が あり の場合 : 実績に基づく安全性の評価を記載 ) 弊社では当該製品 イチョウ葉脳内 α( アルファ ) と同一処方の製品を 200

審査報告 (1) 別紙 平成 29 年 4 月 3 日 本申請において 申請者が提出した資料及び医薬品医療機器総合機構における審査の概略等は 以下 のとおりである 申請品目 [ 販売名 ] ジャドニュ顆粒分包 90 mg 同顆粒分包 360 mg [ 一般名 ] デフェラシロクス [ 申請者 ] ノ

審査結果 平成 23 年 4 月 11 日 [ 販 売 名 ] ミオ MIBG-I123 注射液 [ 一 般 名 ] 3-ヨードベンジルグアニジン ( 123 I) 注射液 [ 申請者名 ] 富士フイルム RI ファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 22 年 11 月 11 日 [ 審査結果

2.6.4 薬物動態試験の概要文 目次 略語 略号一覧 薬物動態試験の概要文 まとめ 吸収 分布 代謝 ( 動物種間の比較 ) 排泄

SpO2と血液ガス

D961H は AstraZeneca R&D Mӧlndal( スウェーデン ) において開発された オメプラゾールの一方の光学異性体 (S- 体 ) のみを含有するプロトンポンプ阻害剤である ネキシウム (D961H の日本における販売名 ) 錠 20 mg 及び 40 mg は を対象として

1)~ 2) 3) 近位筋脱力 CK(CPK) 高値 炎症を伴わない筋線維の壊死 抗 HMG-CoA 還元酵素 (HMGCR) 抗体陽性等を特徴とする免疫性壊死性ミオパチーがあらわれ 投与中止後も持続する例が報告されているので 患者の状態を十分に観察すること なお 免疫抑制剤投与により改善がみられた

医薬品の誤飲

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注意欠陥 / 多動性障害治療剤 ( 選択的ノルアドレナリン再取り込み阻害剤 ) アトモキセチン塩酸塩カプセル 22100AMX AMX AMX AMX

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DRAFT#9 2011

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審査結果 平成 25 年 9 月 27 日 [ 販売名 ] アナフラニール錠 10 mg 同錠 25 mg [ 一般名 ] クロミプラミン塩酸塩 [ 申請者名 ] アルフレッサファーマ株式会社 [ 申請年月日 ] 平成 25 年 5 月 17 日 [ 審査結果 ] 平成 25 年 4 月 26 日開

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④資料2ー2

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モビコール 配合内用剤に係る 医薬品リスク管理計画書 (RMP) の概要 販売名 モビコール 配合内用剤 有効成分 マクロゴール4000 塩化ナトリウム 炭酸水素ナトリウム 塩化カリウム 製造販売業者 EA ファーマ株式会社 薬効分類 提出年月 平成 30 年 10 月 1.1. 安全


薬物動態学の最初の発展期である 1960 年代中頃から 1970 年代初めになると Metzler が NONLIN という名の非線形解析プログラムを紹介し ( [Metzler, 1969]) Benet は線 形マミラリーモデル ( 図 8-1) の一般化した解法を初めて発表した ( [Bene

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まれに過度の血圧低下を起こし ショック症状や一過性の意識障害 脳梗塞があらわれることがあるので そのような場合には投与を中止し 適切な処置を行うこと 3) 降圧作用に基づくめまい等があらわれることがあるので 高所作業 自動車の運転等危険を伴う機械を操作する際には注意させること 3. 相互作用本剤は主

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< 別紙 1: 検査値等略称 > 略称 名称 A/G 比 アルブミン / グロブリン比 ADI 一日摂取許容量 ALT アラニンアミノトランスフェラーゼ ATPase adenosine triphosphatase アデノシントリフォスファターゼ AUC 血中薬物濃度 時間曲線下面積 Cmax E

スイッチ OTC 医薬品の候補となる成分についての要望 に対する見解 1. 要望内容に関連する事項 組織名日本消化器病学会 要望番号 H28-11 H28-12 H28-16 成分名 ( 一般名 ) オメプラゾール ランソプラゾール ラベプラゾールオメプラゾール : 胸やけ ( 胃酸の逆流 ) 胃痛

2 成分が同一の剤形変更 例 タケプロンOD 錠 15mg タケプロンカプセル 15mg ユリーフOD 錠 4mg ユリーフ錠 4mg コカールドライシロップ 40% カロナール細粒 20% ( 粉砕 ) レボフロキサシン錠 500mg レボフロキサシン細粒 10% 患者に説明 ( 価格 服用方法等

グリコペプチド系 >50( 常用量 ) 10~50 <10 血液透析 (HD) 塩酸バンコマイシン散 0.5g MEEK バンコマイシン 1 日 0.5~2g 1 日 4 回 オキサゾリジノン系 ザイボックス錠 600mg リネゾリド 1 日 1200mg テトラサイクリン系 血小板減少の場合は投与

2.0 概要治験情報 : 治験依頼者名 : 武田薬品工業株式会社 大阪市中央区道修町四丁目 1 番 1 号 治験課題名 : 健康成人男性を対象に TAK-536TCH の最終製剤を単回経口投与したときの食事の影響を検討する第 1 相無作為化非盲検クロスオーバー試験 治験課題名の短縮

肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

2 成分が同一の剤形変更 例 タケプロンOD 錠 15mg タケプロンカプセル 15mg ユリーフOD 錠 4mg ユリーフ錠 4mg コカールドライシロップ 40% カロナール細粒 20% ( 粉砕 ) レボフロキサシン錠 500mg レボフロキサシン細粒 10% 患者に説明 ( 価格 服用方法等

2012 年 1 月 25 日放送 歯性感染症における経口抗菌薬療法 東海大学外科学系口腔外科教授金子明寛 今回は歯性感染症における経口抗菌薬療法と題し歯性感染症からの分離菌および薬 剤感受性を元に歯性感染症の第一選択薬についてお話し致します 抗菌化学療法のポイント歯性感染症原因菌は嫌気性菌および好

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301226更新 (薬局)平成29 年度に実施した個別指導指摘事項(溶け込み)

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(2) レパーサ皮下注 140mgシリンジ及び同 140mgペン 1 本製剤については 最適使用推進ガイドラインに従い 有効性及び安全性に関する情報が十分蓄積するまでの間 本製剤の恩恵を強く受けることが期待される患者に対して使用するとともに 副作用が発現した際に必要な対応をとることが可能な一定の要件

総論 2 腎不全患者に特徴的な薬物動態の変化 薬効 薬物名 商品名 尿中排泄率 (%) 副作用 リバビリン レベトール 50 骨髄抑制, 意識障害 禁忌 アマンタジン シンメトレル 90 不穏, せん妄, 幻視 禁忌 抗ウイルス薬 オセルタミビル タミフル 70( 活性代謝物 99 悪心, 嘔吐,

TDM研究 Vol.26 No.2

Transcription:

SAJP.SA.18.02.0496(2) 添付文書の薬物動態情報 基本となる 3 つの 薬物動態パラメータを理解する 城西国際大学薬学部 臨床統計学研究室山村重雄

医療用医薬品添付文書とは 目的 : 患者の安全を確保し 適正使用を図るために必要な情報を医師 歯科医師および薬剤師などの医療関係者に提供する 法的規制 : 医薬品医療機器等法第 52 条で記載内容が定められ 医薬品の製造販売業者は医薬品には情報を付与することが義務

薬物動態学 (Pharmacokinetics) とは 薬物血中濃度 ( あるいは推移 ) に着目 血中濃度が高ければ 薬の作用は強い と考える 血中濃度推移の変化を記述する 腎機能 肝機能に伴う変化 年齢に伴う変化 薬物相互作用による変化 など

添付文書に見られる薬物動態パラメータ 最高血中濃度 (C max ) 最高血中濃度到達時間 (t max ) 血中濃度 - 時間曲線下面積 (AUC) 生物学的利用率 ( バイオアベイラビリティー ) 消失半減期 (t 1/2 ), 消失速度定数 (k el ) 分布容積 (V d ) クリアランス (CL)

血中濃度推移と薬物動態パラメータ最高血中濃度 (C max), 最高血中濃度到達時間 (t max), AUC 血中濃度 最高血中濃度 (C max ) 血中濃度 - 時間曲線下面積 Area Under the Curve AUC 最高血中濃度到達時間 (t max ) 時間

薬物動態パラメータの意味 最高血中濃度 (C max ): 高くなれば効果が強くなる 高くなりすぎると副作用のおそれ 最高血中濃度到達時間 (t max ): 短くなると作用が速く発現 AUC: 血液中に入った薬物の割合 ( 吸収率 : 生物学的利用率 ) を表す 指標大きくなると効果が強くなったり 作用が持続

生物学的利用率

生物学的半減期 t 1/2 と 消失速度定数 k el t 1/2 は血中濃度が半分になるまでの時間 一次消失過程の場合 定常状態では投与量に依存しないはずの値 t 1/2 が 8 時間といえば 8 時間後に血中濃度は半分に 16 時間後にはさらに半分になる t 1/2 =0.693/k el t 1/2 値が長ければ消失速度定数は小さい k el が大きいと血中からの消失が速い

薬物動態パラメータの分類 投与量に比例する ( はずの ) 薬物動態パラメータ (C max, AUC) 投与量に依存しない ( はずの ) 薬物動態パラメータ (t max, t 1/2, k el, 生物学的利用率 ) 知りたいのはそうなっていないときの理由!!

オルメサルタンメドキソミル の薬物動態パラメータ 投与量 t max (hr) C max (ng/ml) t 1/2 (hr) AUC (ng hr/ml) 5mg 1.8±0.4 152±31 8.7±1.2 892±191 10mg 1.7±0.5 277±46 10.2±1.8 1576±244 20mg 2.2±0.4 482±117 11.0±3.8 2903±915 40mg 1.7±0.5 1006±152 10.6±4.7 5807±1142 n=6 Mean±SD

オルメサルタンメドキソミルと ロサルタンカリウム オルメサルタンメドキソミル : 腎機能障害患者に投与した時のオルメサルタンの AUC は 腎機能正常者と比較して 軽度 中等度 重症腎機能障害患者でそれぞれ 1.6 倍 1.8 倍 2.8 倍であった ロサルタンカリウム : 透析患者に ロサルタンカリウム 50mg を空腹時に 1 回経口投与した場合 ロサルタンの C max 及び AUC は 健康成人男子及び高血圧症患者と比較して C max 及び AUC はそれぞれ約 2 及び 3~4 倍の値を示した

生物学的利用率の記載例 エピナスチン塩酸塩 : 健康成人に経口投与した場合 吸収率は約 40% であり 生物学的利用率は約 39% である アレンドロン酸ナトリウム水和物 : 非高齢女性 ( 閉経後 60 歳未満 ) に経口及び静脈内点滴投与し 投与後 48 時間までの尿中排泄量を測定したとき 生物学的利用率は 2.49% だった ( 一部改変 ) 溶けにくい 吸収が悪い 血中に入る前に肝臓で一部代謝された ( 初回通過効果 )

生物学的半減期の使い方 一般に 投与を繰り返すと血中濃度は徐々に上がっていって 定常状態 ( 血中濃度が同じ濃度範囲を上下する ) になる 定常状態になるまでに t 1/2 の 4-5 倍の時間が必要 ( 投与間隔や投与量に依存しない ) t 1/2 が長い (k el が小さい ) と定常状態に達するまでに時間がかかる 安定な効果が得られるまで時間がかかる

生物学的半減期を使ってみる ジゴキシンの場合 ジゴキシンの生物学的半減期 : 約 40 時間 (48 時間とする ) ジゴキシン0.125 mgを1 日 1 回投与 生物学的半減期が投与間隔よりも長い場合 ジゴキシンの分布容積 :10 L/kg 体重 60kg として 分布容積は 600 L とします 吸収は速やかと考える

ジゴキシンの血中濃度推移 定常状態 2

生物学的半減期の長い薬物 安定な効果が現れるまで時間がかかる 作用発現までの時間を予測 血中濃度は高い値で定常状態になります 血中濃度が下がるのにも時間がかかる 服用を中止しても t 1/2 の 4~5 倍程度の時間は薬物が血中に残っている可能性 思わぬ相互作用に注意

ジゴキシンとフロセミドの作用 項目ジゴキシンフロセミド 用法 用量 1 日 1 回 1~2 錠 1 日 1 回 1~2 錠 生物学的半減期 安定な効果が現れるまでの期間 36 時間 ( 投与間隔よりも長い ) 約 1 週間 0.35 時間 ( 投与間隔よりも短い ) 数時間 吸収が良ければフロセミドはすぐに効果が現れそうであるが ジゴキシンは生物学的半減期の 4~ 5 倍の時間 ( 約 1 週間 ) がたつと効果が安定する しばらく飲み続けてもらう必要がある

ニルバジピンとフェロジピンの ニルバジピン 薬物動態パラメータ 投与量 t max (h) C max (ng/ml) t 1/2 (h) 2mg 1.5±0.84 1.48±0.47 10.7±2.3 4mg 1.08±0.49 3.48±0.53 10.9±2.4 フェロジピン 投与量 C max (ng/ml) t max (hr) t 1/2 (hr) t max と t 1/2 は投与量に依存しない C max と AUC は投与量に比例するはず そうならない理由は何? AUC 0-72 (ng hr/ml) 2.5mg 2.4±1.1 1.2±0.3 1.9±0.3 7.7±5.7 5mg 7.3±4.3 1.0±1.0 2.3±0.3 14.1±7.7 10mg 12.2±3.4 1.4±0.6 2.7±0.3 48.6±13.7

薬物動態の変化を理解するのに 必要な薬物動態パラメータ 分布容積とクリアランス

分布容積とは 投与量 ( 体内薬物量 :X ) と血中濃度 (C p ) の比例定数 V d = X / C p X = C p V d 体内において薬物の分布する実体積を示す数値ではない

体の外での分布容積の概念 ビーカーに V (ml) の水が入っている ( 血液量に相当 ) X (mg) の薬物を入れて溶かします ( 投与量に相当 ) 濃度 C(mg/mL) を測定すると ビーカーに入った水容積不明 ビーカーの中の水の容積 (V ) は :V =X/C で求まります

しかし 血液の容積 = 分布容積ではない!! 薬物は血液の中だけに存在するとは限らない

体の中の水分の分布 全体重 ( 成人 60kg) 水分 (60%: 36 kg = 36 L) 骨等水分以外 (24 kg) 細胞内液 (2/3:24 L) 細胞外液 (1/3:12 L) 間質液 (8 L) 血液 (4 L)

分布容積の意味を考える 主に血中だけに存在する薬物 4000 ml/60kg =67 ml/kg 細胞外液に存在して細胞内へ移動しない薬物 12000 ml/60kg = 200 ml/kg 細胞内と細胞外に均等に存在する薬物 36000 ml/60kg = 600 ml/kg 薬物が血液以外の組織に分布して 血中にあまり存在しない場合 (= 血中濃度 :C p が低い ) もっと大きな値 ( ジゴキシン : 約 10 L/kg)

分布容積とは 薬物が体のどこに分布しているかを示すパラメータ 小さければ (200 ml/kg): 主に血中 ( 細胞外液 ) に存在する薬物 大きければ ( 数 L/kg 以上 ): 主に組織に分布し 血中にわずかしか存在しない薬物

薬物の分布容積 主な分布範囲薬物名分布容積 主に血中だけに分布 主に細胞外液に分布 体内の体液全体に分布 特定の細胞内に分布 ( 血中にはわずか ) ヘパリン ワルファリン アスピリン アルベカシン フェニトイン リチウムジゴキシンアミトリプチリンハロペリドールアミオダロン 70 ml/kg 140 ml/kg 100-200 ml/kg 200 ml/kg 600-700 ml/kg 840 ml/kg 9.51 L/kg 15±3 L/kg 15~20 L/kg 106 L/kg

薬効の同じ薬物の分布容積 薬物名分布容積投与回数 ケトプロフェン 110 ml/kg 1 日 3 回 ナプロキセン 110 ml/kg 1 日 3 回 イブプロフェン 140 ml/kg 1 日 3 回 インドメタシン 200 ml/kg 1 日 3 回 セレコキシブ 335±33.5 L (5600 ml/kg) 1 日 1 回

分布容積が変化するとき 薬物の特徴を示す場合 薬物の組織移行性の指標 薬物間相互作用 ( 例 : タンパク結合 ) 患者の特徴を示す場合 分布容積が大きくなる場合 やけど 腹水 妊娠など 加齢 : 脂肪割合が高くなり脂溶性 ( 分布容積が大きい ) 薬物の分布容積がさらに大きくなる 血中濃度は低くなる 分布容積が小さくなる場合 脱水状態 ( 影響が出ることは少ない )

クリアランスは 血中から薬物を処理 ( 除去 ) する能力 単位時間あたりに処理した血液量 ( 薬物量でないことに注意 ) 血液中の薬物

クリアランスと分布容積 薬物の多くが血中に分布していれば (V d が小さい ) 同じ処理能力でも多くの薬物が処理されるので 薬物の血中からの消失は速い 薬物が血液以外に分布していれば (V d が大きい ) 血中濃度は低いのでクリアランスが大きくても薬物の血中からの消失は遅い 組織に分布している薬物が血中に移行する

血中からの薬物の消失 分布容積が小さい場合 血液中の薬物 の濃度が高い 消失 消失 クリアランスが大きい血中の薬物を速く処理する血中からの薬物の消失は速い クリアランスが小さい血中の薬物はゆっくり処理される血中からの薬物の消失は遅い

血中からの薬物の消失 分布容積が大きい場合 血液中の薬物 の濃度が低い 薬 消失 消失 組織 クリアランスが大きい血中薬物濃度が低いので薬物はゆっくり処理される血中からの薬物の消失は遅い クリアランスが小さい血中薬物濃度が低ので薬物はゆっくり処理される血中からの薬物の消失はさらに遅い

消失速度定数と クリアランスの関係 CL = V d k el k 消失速度定数 = el クリアランス分布容積 分布容積が同じ場合 : クリアランスが大きい方が血中からの薬物の消失が速い (k el が大きい ) 分布容積が異なる場合 : 血中からの薬物の消失はクリアランスだけでは比較できない = CL V d

血中からの薬物の消失は 分布容積が大きい薬物は血中薬物濃度が低いので クリアランスが大きくても ( 血液を処理する能力が高くても ) 血液からの消失は遅い ( 処理される薬物量が少ない ) クリアランスの値で血中からの薬物の消失速度を直接比較できるのは分布容積が同じ場合

血中からの薬物消失が速いのは? 薬物 クリアランス テオフィリン 0.04 L/hr/kg リドカイン 0.6 L/hr/kg イミプラミン 0.9 L/hr/kg 分布容積 0.5 L/kg 0.5 L/kg 20 L/kg

薬物消失速度と生物学的半減期 薬物 消失速度定数 (/hr) 生物学的半減期 (hr) テオフィリン 0.04/0.5=0.08 0.693/0.08=8.6 リドカイン 0.6/0.5=1.2 0.693/1.2=0.58 イミプラミン 0.9/20=0.045 0.693/0.045=15.4

クリアランスは クリアランスの大きさをそのまま比較していいのは薬物が変わらないとき 患者のクリアランスの変化を見ている 薬物間で比較するときは分布容積と一緒に考える k el とつなげることでクリアランスは実感できるイメージとなる 血中に多く存在する薬物 ( 分布容積の小さい ) のクリアランスは 血液からの消失速度を見積もるのに利用 組織移行性の高い薬物 ( 分布容積の大きい ) のクリアランスは 蓄積性の指標として利用

薬効の同じ医薬品の 薬物動態パラメータ 薬物名 クリアランス (ml/kg/min) 分布容積 (L/kg) 消失速度定数 (/hr) イトラコナゾール 6 12 0.03/hr ミコナゾール 3.5 21 0.01/hr フルコナゾール 0.38 0.71 0.032/hr アムホテリシン B 0.13 4.0 0.002/hr ミカファンギン 0.11 0.228 0.03/hr

クリアランスが重要になる場合 腎排泄型の薬物 : 腎機能が低下するとクリアランスが低下する 肝代謝型の薬物 : 肝機能が低下するとクリアランスが低下する 高齢者は腎機能 肝機能も低下する 処理能力が低下すると血中濃度が上昇して副作用の可能性

クリアランスが下がると 消失速度定数 = クリアランス分布容積 分布容積が変わらなければ消失速度定数は小さくなる 血中からの薬物の消失が遅くなる ( 特に分布容積の大きな薬物では ) 次の投与時間までに血中濃度が下がらないので蓄積する

t 1/2 の長い (k el の小さい ) 薬物 安定な効果が現れるまで時間がかかる 作用発現までの時間を予測 血中濃度は高い値で定常状態になります 血中濃度は下がるのにも時間がかかる 服用を中止しても t 1/2 の 4~5 倍程度の時間はある程度血中に残っている可能性 思わぬ相互作用に注意

プレガバリンの薬物動態の変化 投与量に伴う変化 投与量 (mg) C max (μg/ml) t max (h) AUC 0- (μg h/ml) t 1/2 (h) CL/F(L/h) 50 2.03 (0.40) 0.67 (-0.26) 10.7 (1.1) 5.98 (0.65) 4.72 (0.44) 100 3.56 (0.67) 0.75 (0.27) 20.4 (1.3) 5.66 (0.59) 4.93 (0.35) 200 6.35 (0.73) 1 (0.32) 43.2 (3.0) 5.93 (0.32) 4.64 (0.32) 250 7.18 (1.43) 1.17 (0.52) 49.2 (6.1) 5.57 (0.72) 5.15 (0.61) 300 8.25 (1.36) 1.08 (0.38) 61.7 (6.3) 5.8 (0.62) 4.91 (0.52) クレアチニンクリアランスに伴う変化 ( 投与量 50mg) 平均値 ( 標準偏差 ) クレアチニンクリアランス ( ml/min) C max (μg/ml) t max (h) AUC 0- (μg h/ml) 60 ml 1.86 (0.39) 1 (0.224) 15.9 (4.4) 9.11 (2.83) 30-<60 ml 1.53 (0.29) 1.29 (0.393) 28.2 (5.0) 16.7 (4.1) 15-<30m 1.9 (0.62) 1.93 (1.48) 52.3 (11.7) 25 (6.7) t 1/2 (h) CL/F ( ml/min) 56.5 (17.6) [3.39 L/h] 30.6 (7.3) [2.16L/h] 16.7 (3.9) [1.00 L/h] CLr ( ml/min) 44.9 (23.6) 15.4 (7.7) 9.23 (3.37) 平均値 ( 標準偏差 )

分布容積 クリアランス以外に 血中濃度の推移の変化を 説明するのに利用できるパラメータは k el または t 1/2

腎機能の変化に伴う t 1/2 の変化 プラミペキソール塩酸塩 レボフロキサシン水和物 CCr(mL/min) t 1/2 (hr) CCr(mL/min) t 1/2 (hr) >80 11.3±2.72 健常人 7.89±1.04 50-79 15.3±3.82 >50 9.17±1.28 30-49 36.3±18.8 20-50 15.88±3.79 5-29 38.4±12.7 <20 33.69±14.57 ミチグリニドカルシウム水和物 セチリジン塩酸塩 CCr(mL/min) t 1/2 (hr) CCr(mL/min) t 1/2 (hr) >91 1.48 >90 7.4±3.0 31-50 3.22 31-60 19.2±3.3 <30 11.70 7-30 20.9±4.4 平均値 ( 標準偏差 )

まとめ

薬物動態の情報を生かす 投与量に比例するはずのパラメータ (C max や AUC) が比例しない場合はその理由を考える 投与量に依存しないはずのパラメータ (t max, t 1/2, k el ) が変化する場合は理由を考える 理論からのずれの程度を医療従事者は注目しています それが 薬物 ( 製剤 ) の特徴を示しています

理論と合わなかったら 何が起こったかを考えるために重要な 3 つの薬物動態パラメータ 分布容積 クリアランス t 1/2 または k el 実際は分布容積とクリアランスなのだか t 1/2 または k el で考えると理解しやすくなる

薬物動態パラメータの意味 薬物の効果の強さ (AUC, C max ) 薬物の効果の発現時間 (t max, t 1/2 ) 病態 高齢者への投与 ( 投与量とAUC, C max の線形性 ) 薬物の組織移行性 (V d ) 副作用 相互作用予測 (t 1/2, AUC, CL の変化 )

薬物動態情報の使い方 薬物動態の使い方は様々です 血中濃度上昇 作用の増強 副作用の増加 生物学的半減期の延長は 蓄積性がまして副作用の発現 ( 特に分布容積が大きい薬物 ) 腎機能 肝機能の低下や高齢者では薬物動態の変化に注目 すべては患者さんの安全を守るため