労働需要 労働力を雇う側の意思決定 労働力を雇うのは企業と仮定 企業は利潤を最大化する 利潤最大化する企業は どのように労働力を需要するか? まず 一定の生産量を生産する際の 費用最小化問題から考察する
企業の費用最小化 複数の生産要素を用いて生産活動を行なう企業を想定 min C( w, r; y) = wl + rk LK, subject to FKL (, ) y Cwr (, ; y) 費用関数
生産関数と等量曲線 企業は 2 生産要素を用いて生産活動を行なうとする 生産関数を以下であらわす : これから 等量曲線を導出 : 以下を満たす ( LK, ) FLK (, ) の組み合わせ FLK (, ) = y
等量曲線 K
等量曲線の性質 右下がり 2 本の等量曲線は交わらない 右上方に位置する等量曲線のほうが 生産量が多い 等量曲線は原点に対して凸 効用関数との相違点 : 生産関数は基数的概念
生産要素投入と生産量 規模に関する収穫 生産要素 K,L を α 倍 ((1) については α>0 (2) と (3) については α>1) したとき y が (1)α 倍になる 規模に関する収穫一定 (2)α 倍より多くなる 規模に関する収穫逓増 (3)α 倍より少なくなる 規模に関する収穫逓減
費用最小化 等費用曲線
費用最小化の条件 (1) 技術的限界代替率と生産要素価格比率が一致する 技術的限界代替率と生産関数の関係 MRTS K F / L w = = = L F / K r 上記の条件は 支出 1 円あたりの限界生産物が労働と資本の間で均等化することを示す ( 練習問題 : なぜそれが最適なのか?)
費用最小化の条件 (2) また 等費用曲線の傾きは 市場の交換比率であり 客観的交換比率といえる 限界代替率は個別企業の交換比率であるので 費用最小化の条件は 客観的交換比率と個別的交換比率が等しくなるところに要素投入量を設定することになる
限界費用と平均費用 限界費用 (Marginal Cost): 生産量 (y)1 単位の増加の際に 費用がどれだけ上昇するか? MC( y) = Cwr (, ; y) y 平均費用 (Average Cost): 生産量 (y)1 単位あたりの費用 AC( y) = C( y) y
長期と短期 長期にはすべての生産要素 (K と L) の水準を調整できる 短期には L のみが調整可能なので 短期に生産量を増やす場合には L のみを増やすことで対応 LMC ( 長期限界費用 ), LAC ( 長期平均費用 ), SMC( 短期限界費用 ), SAC( 短期平均費用 ) の表記を使う
長期の総費用曲線 ( 短期の総費用曲線の包絡線 ) C 点線 : それぞれの資本投入量に応じた 短期の総費用 K=K 3 K=K 1 実線 : 長期の総費用 y
長期と短期 : 限界費用と平均費用 MC, AC SMC 2 (K=K 2 ) SAC 1 (K=K 1 ) SMC 1 (K=K 1 ) SAC 2 (K=K 2 ) LMC LAC ( 包絡線 ) y 1 y 2 y
短期の平均費用と長期の平均費用 K の水準が異なる総費用曲線の包絡線が 長期の総費用曲線になる 同様の理由で 長期の平均費用は 短期の平均費用の包絡線となる 長期の限界費用は 短期の限界費用の包絡線にはならない 長期の限界費用は 短期の限界費用よりも 傾きが緩やかである それは 資本の投入量を調整することができるためである
長期と短期 : 限界費用と平均費用 MC, AC SMC 2 (K=K 2 ) SAC 1 (K=K 1 ) SMC 1 (K=K 1 ) SAC 2 (K=K 2 ) LMC LAC ( 包絡線 ) y 1 y 2 y
短期の平均費用と限界費用 短期には資本の投入量 (K の水準 ) が固定されている 生産量 (y) の調整は 労働投入 (L) を変えることによってのみ行われる 長期において 生産量 y 1 を生産するために最適な資本の投入量を K 1 であるとき ( y=y 1 における短期平均費用の水準が平均費用の包絡線に一致するとき ) K=K 1 であるような短期の限界費用が y=y 1 の生産量に対応する長期の限界費用になる
平均費用と限界費用 平均費用が最小になる点で 平均費用と限界費用が一致する : 微分して求める方法 ( 公式を用いる ) AC( y) C( y) = [ ] = y y y 上昇率が等しい性質を使う方法 ( 弾力性の時 の考え方の応用 ) C( y) + MC( y) y y+ y = C( y) y
企業の利潤最大化 利潤 π ( y) = py C( y) y が内生変数 最適解の条件は p = MC( y)
限界費用と生産量の決定 MC, p y
平均費用と限界費用 : 利潤最大化 ( 長期の均衡 ) MC, AC 限界費用 MC 長期に実現する価格 y
可変費用 可変費用とは 生産量が変化するときに変化する費用である 一方 生産量がゼロであってもかかる費用のことを 固定費用と呼ぶ
損益分岐点と操業停止点 短期には 利潤がマイナスであっても操業したほうがよい場合がある それは 収入が可変費用を上回る場合である 操業しない場合の利潤 : 操業した場合の利潤 : rk < py wl rk < 0であっても py wl > 0 にできる範囲で 操業したほうがよい 0 py wl rk
平均費用と限界費用 : 利潤最大化 MC, AC, AVC y
平均費用と限界費用 : 供給曲線 P 供給曲線 y
短期の労働需要 短期の労働需要量の決定 max py ( wl + rk) Ly, 書き直して subject to FKL (, ) max pf( K, L) ( wl + rk) L y
利潤最大化の一階条件 ( 短期 ) L で微分してゼロと置くと 短期の最適な労働需要量 L * は以下で表すことができる : pf L K w ( *, ) 0 L =
操業停止条件 以下の比較をし もし後者のほうが大きければ操業 rk( < 0) py wl rk その条件は py wl > 0 書き換えて p > wl / y
操業停止条件 ( 続き ) 平均可変費用 ( 労働への費用 ) が生産物価格を下回れば操業する p > wl / y 同じ条件を書き換えて y/ L> w/ p ( 実質賃金が平均生産性より低い )
労働の限界生産性 平均生産性 106 MPL, APL 104 102 100 APL 98 96 94 92 MPL 90 1 2 3 4 5 6 7 8 L
労働の限界生産性 平均生産性 w/p 90 100 110 APL 0 2 4 6 L APL MPL LD MPL
市場均衡と効率性 競争市場均衡は効率的 労働市場の場合に この点を確認 ( 余剰分析を用いる ) 政府の規制や税金がある場合 市場均衡はどのような影響を受けるか?
労働需要と供給 均衡 w
生産者余剰 ( 企業の余剰 ) 賃金 雇用量
労働者余剰 賃金 労働供給量
総余剰 賃金 生産者余剰 労働者余剰 雇用量
総余剰 ( 雇用量が L 1 のとき ) 賃金 生産者余剰 労働者余剰 L 1 雇用量
総余剰 競争市場均衡では総余剰が最大化されている 競争市場均衡以外の生産量であると 余剰が最大になっていない ( 競争市場均衡の場合との差は 厚生損失と呼ばれる ) これは 取引の機会がある ( 取引によって効率を向上させる余地がある ) にもかかわらず それが実現していないことによるものである
課税や規制と総余剰 課税のある時の均衡は それが無い時の競争市場均衡とは異なるのが一般的 競争市場均衡で総余剰が最大になっているので 課税された均衡では それが最大になっていないのが一般的 規制は もしそれが有効な制約になっていると 競争市場均衡で達成できている余剰の最大化を実現できない
総余剰 ( 課税のとき ) 賃金 生産者余剰 税収 労働者余剰 L 1 雇用量
総余剰 ( 最低賃金のとき ) 賃金 生産者余剰 W m 最低賃金 労働者余剰 L 1 数量
税の負担割合 : 弾力性の逆数の比 (1) 間接税の負担は 弾力性の逆数の比に比例することが知られている 弾力性の大きい経済主体は 税の負担を 避ける ことができる反面 それが小さい主体は避けることができず 結果として税を負担することになる
税の負担割合 : 弾力性の逆数の比 (2) 無税のとき 無税のときの均衡価格 W * 無税のときの均衡数量 L * 無税のところから 税を課した結果 均衡は 以下へ変化するとする : 需要側の価格 ( 企業の支払賃金 ): W d 1 供給側の価格 ( 消費者の手取り賃金 ):W s 1 均衡数量 L 1
税の負担割合 : 弾力性の逆数の比 (3) 需要曲線上の価格の変化を ΔW d 供給曲線上の価格の変化を ΔW s とする とする W + W = W W = 税額 1 1 d s d s Wd Wd = ( L) L Ws Ws = ( L) L
税の負担割合 : 弾力性の逆数の比 (4) 前ページの式を変形する * * * Wd L W 1 W Wd = { }{ }( L) = { }( L) L W L ε L * * * d * * * Ws L W 1 W Ws = { }{ }( L) = { }( L) L W L ε L * * * s W W s d = 1/ ε s 1/ ε d ( 弾力性の逆数の比 )
負担割合 ( 均衡付近の拡大図 ) W * L 1