記述統計 ( 代表値 ) 結果と Sophia Cognitive Psychology Lab. 総合人間科学研究科博士後期課程 4 年田根健吾 記述統計とはある集団の身長 165 cm 150 cm 160 cm 175 cm 145 cm 180 cm 165 cm 1: 記述統計 平均身長 162.5 cm 身長の標準偏差 5.0 代表値 散布度 ( 後で説明します ) データの傾向や性質をわかりやすくまとめる 代表値 平均値 (Mean) 1: 記述統計 ( 代表値 ) 全部足して 個数で割る 全てのデータを結果に反映させることができる 中央値 (Median) 大きさ順に並べた時の真ん中の値 外れ値を除外するときなどに役に立つ 最頻値 (Mode) 最も登場する回数が多い値 どれも立派な代表値! 1, 1, 2, 3, 4 (1 + 1 + 2 + 3 + 4) / 5 = 2.2 1, 1, 2, 3, 4 1, 1, 2, 3, 4 2: 推測統計とは 研究法の実験 = 上智大学の心理学科 2 年生を対象 記述統計 ( 代表値 ) 上智大学の心理学科 2 年生について知りたいわけではない サンプル (2 年生のデータ ) から母集団 ( 人類全体 ) を推測する サンプル 推測 母集団 ( 人類全体 ) 1
2: 推測統計の前提 2: 統計検定 得られたデータから母集団を推測する サンプルが人類全体を反映するために サンプルが偏っていないことが推測統計の前提!! 母集団と同じ構造 割合を保つように サンプル ( 皆さんのデータ ) 無作為抽出 母集団 ( 人類全体 ) 無作為抽出 : 選り好みしないで テキトウ に抜き出す さらに 各条件にも無作為に振り分ける 統計検定の考え方得られた差は 偶然によるもの? それとも何らかの原因によるもの? 例 :2つのクラスの試験の平均点 Aクラスの平均 :12 点 6 点差 Bクラスの平均 :18 点 統計検定の考え方 実力の差? 誤差? 心理学は人間のやることを扱うので必ず誤差がある 2 つの条件で平均値がピッタリ同じでした ということは まずない 得られた差が偶然に起こる確率 (=p 値 ) を統計的に計算して一定基準 (5%) 以下であれば 偶然じゃない と言う 有意水準 有意 記述統計 ( 中央値 ) 本研究の仮説と 予測される結果 仮説深い処理をしたものは浅い処理をしたものよりも記憶に残りやすい 予測される結果 深い処理条件の方が浅い処理条件より単語の正再生率が高い 予測通りの結果かどうかを調べる予測される結果 深い処理条件の方が浅い処理条件より単語の正再生率が高い t 検定の注意点 t 検定には2 種類ある 対応のあるt 検定 同じが 2 つの条件のどちらにも参加している 実際のデータ 深い処理条件の正再生率と浅い処理条件の正再生率について t 検定を行う ( 偶然とは言えないくらい差があるか調べる ) 対応のない t 検定 同じは 1 つの条件にしか参加していない 今回は対応のない t 検定 2
結果の分析の流れ (1) 各の正再生率と 各条件の平均値と標準偏差を算出する (2) 差が有意かどうかを 対応のないt 検定によって検定する各の正再生率浅い処理条件 散布度 同じ条件の中でも 偶然の要因 ( 個人差など ) によって成績はばらつく その指標として求めるもの 偶然のばらつきの指標として t 検定では標準偏差を用いる A 10% B 40% C 35% 深い処理条件 各条件の平均値と標準偏差浅い処理条件 =20.83% 11.18 深い処理条件 =40.00% 12.31 この標準偏差を用いて 各条件の平均値の差が 偶然で生じる程度のものか調べる a 30% b 45% c 50% t 検定の結果浅い処理条件の平均正再生率 ( 標準偏差 ) 20.83% (11.18) 深い処理条件の平均正再生率 ( 標準偏差 ) 40.00% (12.31) t (66) = 6.73, p <.001 統計値の解釈 p 値 ( 危険率 ) が.001 未満得られた差の値が誤差で生じる確率は0.1% 未満 5% という基準 ( 有意水準 ) より低い得られた差の値が誤差によって偶然生じた可能性は極めて低い t 値 p 値 ( 危険率 = 差が誤差で生じる確率 ) 浅い処理条件と深い処理条件で正再生率の差は意味のある差 (= 有意な差 ) と言える!! ただし 統計はあくまで確率 p 値が 5% 水準 (.05) より低く 差は有意だったとしても 記述統計 ( 中央値 ) p 値が 0.001 差が誤差で偶然生じる確率は 0.001=0.1% つまり 1000 回に 1 回は誤差で偶然生じる とも言える 統計検定は差があることを 証明 しているわけではない 3
結果の構造 (1) 分析対象 (2) データ処理 (3) 記述統計 (4) 推測統計 (1) 分析対象について 分析対象を明示する 対象から外した データについて 69 名のうち 課題を誤った 1 名を分析対象外とした 浅い処理条件 36 名 深い処理条件 32 名 データ 系列位置効果のお話 (2) データ処理について 得られた状態のままのデータ (raw data) に対する処理について (3) 記述統計について (2) をもとに どんなまとまりで記述統計をし 何を算出したのか 今回の raw data が再生した単語の数 行った処理 ごとに正再生率を算出 どんなまとまり 各条件ごと 何を算出 平均値と標準偏差 ただし その実際の数値までは書かなくていい (4) 推測統計について 推測統計の 目的 対象 手法 結果 結論 を書く 目的 処理の深さによって記憶の残りやすさに違いが生じたかを検討する 対象 各条件の平均正再生率 手法 対応のない t 検定 (4) 推測統計について 推測統計の 目的 対象 手法 結果 結論 を書く 結果 条件間の差は有意で { あり or なく }(t( 自由度 ) =, p = ) 結論 ( 大小関係等 ) 条件 (M =, SD =) の方が 条件 (M =, SD =) よりも正再生率が高かった 4
結果の書き方の諸注意 (1) 統計記号は半角イタリック体 (t, p, SD etc ) (2) 有効数字に注意それぞれの数値によって 小数点以下をどこまで書くかが違う 今回はパワポの表記にしたがって書けば良い (3) 半角スペースを入れる場所に注意 (p =.001) (4) 数値の上限が 1 の場合は.1 (p 値など ) それ以外は 0.1 (t 値など ) 表とグラフの見本 ( ダミーデータ ) 表 1 各朝食条件における平均正再生率 (%) と標準偏差 朝食の有無 正再生率 標準偏差 あり (N = 50) 44.82 23.91 なし (N = 51) 41.43 21.39 結果の書き方はルールが厳密な部分 ただ 逆に言えばルールに従いさえすれば良いので 頑張って書きましょう! 数値や説明を今回のものに直し 形式はできるだけ真似する 結果の本文中で 図表に関わるデータの話の最後に ~~( 表 1) のように 見るべき図表を指示する そしてへ結果では 事実 のみを書く それ以上のことは書かない 事実 深い処理条件の方が浅い処理条件よりも正再生率が高かった 解釈深い処理は一段階処理が多いから記憶に残りやすい! そしてへ 結果では 事実 のみを書く それ以上のことは書かない 事実 次は サバイバル条件の方が引越条件よりも正再生率が高かった 結果の解釈 = についてです 解釈 生存に関する処理をした方が記憶に残りやすい そうかもしれないし そうじゃないかもしれない あくまで これは解釈 の基本構造 実験の目的の簡潔なまとめ 結果の簡潔なまとめ 仮説の支持 / 不支持について 結果の解釈 研究の改善点や今後の展望について の基本構造 実験の目的の簡潔なまとめ 結果の簡潔なまとめ 仮説の支持 / 不支持について 結果の解釈 研究の改善点や今後の展望について 5
結果の解釈 本研究の結果から 何が示唆されたのか 仮説の支持 不支持からどんなことが言えるのか それを先行研究と照らし合わせると どんな新しい可能性が考えられるか 結果の解釈 解釈の注意点!! 読んだ人が なるほどな と納得できるように 論理的な理由づけをする 論理の飛躍に気をつけて 丁寧に説明する 他の先行研究などで補強できるとなお良い ここでの自分の主張には常に反論が来ることを想定し 論理的口げんか に負けないように書く!! 英語で は Discussion 客観的な目を持ち 自問自答してみよう! の基本構造 実験の目的の簡潔なまとめ 結果の簡潔なまとめ 仮説の支持 / 不支持について 結果の解釈 研究の改善点や今後の展望について 研究の改善点や今後の展望について 研究の改善点 研究の目的 と 結果の解釈 で述べた内容に考慮しつつ 本研究に加えるべき改善について書く 改善点と反省点は似て非なるもの ここが悪かった これのせいでこんな結果になった こういう可能性があるので こう改善することでこのような議論が可能になる 研究をより素晴らしいものにするためのポジティブな指摘を! 今後の展望 ( 発展の可能性 ) 今回の研究にどのような意義があるか この先どんなことに役立っていくかを書く 注意点 断定表現は避ける ( 明らかになった わかった などは NG) いくつもの発見やそれに対する反論などがあり 知見が積み重なってやっと こういうことらしい と認識してもらえる 示唆された という可能性が考えられる といったように ある考えを支持する手がかりを提供するという心構えで はその人の理解度や論文への真剣さが如実に現れます 今回はあえて具体的な内容を説明していないので 自分なりに一生懸命考えて執筆してみましょう!! 次のレポートも 皆さんの頑張りを期待しています!! 6