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Transcription:

生物学的製剤治療を実施する関節リウマチ患者に対する 下肢のリウマチ体操の併用について 堤智妃呂 米良隼紀要旨本研究では,A 病院リウマチ 膠原病内科受診中の関節リウマチ患者 3 名を対象に生物学的製剤投与を実施する患者に下肢のリウマチ体操を実施し, 生物学的製剤投与中のリウマチ患者に対するリハビリテーションの有効性について検討した. 自宅にて 1 か月間,1 日 1 回リウマチ体操を行ってもらい, 実施前と 1 か月後に圧痛 腫脹関節数, 疼痛 VAS,CRP,DAS28-CRP,HAQ, 下肢関節可動域, 筋力,TUG,TST-5 を評価した. その結果,3 例中 3 例で圧痛関節数, 疼痛 VAS, 握力 ピンチ力,DAS28-CRP,TUG で改善がみられた.3 例中 2 例で腫脹関節数,TST-5 で改善がみられた. 生物学的製剤に加え, リウマチ体操を併用することで, より疼痛や筋力の改善を得られた. リウマチ体操を行うには疼痛を抑制しておく必要があり, 生物学的製剤を投与しても変形による疼痛が残存する進行例においてはリウマチ体操の効果は得にくかった. このことから, 関節変形が進行する前に炎症症状を抑えて, 患者の状態に応じた運動療法を実施する必要があると考えられる. で握力も改善され, 有効性を増すこ はじめに関節リウマチ (Rheumatoid arthritis:ra) とは両側性の小及び大関節の多発性関節炎をきたす全身性の自己免疫疾患である. 罹患関節では腫脹, 疼痛といった炎症所見のみならず, 滑膜細胞増殖や破骨細胞誘導に伴う骨 軟骨の破壊が認められ, 進行した症例においては, 関節の変形や機能障害による ADL 制限が様々な程度で出現する. RA に対する主な治療方法としては, 基礎療法 薬物療法 リハビリテーション 手術療法が行われている 1). 一方薬物治療においては, 生物学的製剤の登場によって RA 治療のパラダイムシフトが起きた. 生物学的製剤は, 最先端のバイオテクノロジー技術で開発された医薬品であり, 従来の抗リウマチ薬と比較して, 格段に有効性が期待できる薬剤である. 炎症性サイトカインを標的としており, 疼痛緩和に加えて関節破壊を抑制する効果が高く 2), これまでの治療で十分な効果が得られなかった患者にも有効とされている. また, 村川ら 3) の研究により, 関節リウマチに対するリハビリテーションが疾患活動性と上肢障害の改善に有効であり, さらに, 生物学的製剤を併用すること とが明らかになっている. しかしながら, 下肢の関節リウマチに対するリハビリテーションと生物学的製剤を併用することの有効性については具体的な研究は少ない. そこで今回, 生物学的製剤投与中の患者に下肢リウマチ体操を実施し, 介入前後で圧痛関節数, 関節数, 疼痛 VAS,CRP,DAS28-CRP, HAQ, 関節可動域, 筋力, リーチ動作を評価することにより, 生物学的製剤投与中の RA 患者に対するリハビリテーションの有効性について検討した. 対象と方法 1. 対象者対象者は A 病院リウマチ 膠原病内科に生物学的製剤による治療を受けるために入院した RA 患者 3 名 ( 女性 2 名 : 年齢 60 歳代 2 名, 男性 1 名 : 年齢 50 歳代 1 名 ) で,Steinbrocker 分類の stage 分類はⅠ 期 :1 例,Ⅱ 期 :1 例,Ⅳ 期 : 1 例,class 分類は class1:1 例,class2:1 例, class3:1 例であった. なお, 本研究は長崎大学病院臨床研究倫理委員会にて承認を得て行った. -41-

2. 方法生物学的製剤投与を受ける RA 患者 3 名に下肢のリウマチ体操を実施前評価時に指導した. また次回来院する 4 週間後まで 1 日 1 回疼痛の生じない範囲で行うよう注意を行った. リウマチ体操実施前と実施 1 か月後の両時点において圧痛関節数, 腫脹関節数,CRP, 疼痛 Visual analog scale (VAS), 疾患活動性として Disease Activity Score28-CRP (DAS28-CRP), health assessment questionnaire(haq), 握力, ピンチ力, 下肢関節可動域,Timed up &Go(TUG), Timed stands test 5(TST-5) を測定した. DAS28-CRP は圧痛関節数, 腫脹関節数, 疼痛 VAS,CRP の値から計算する RA の疾患活動性の指標である. 算出された値が,2.3 以上 2.7 未満は低疾患活動性,2.7~4.1 は中等度疾患活動性,4.1 より大きい場合は高疾患活動性と分類される.2.3 未満の場合は寛解状態にあると判断される. 下肢の関節可動域は, 股関節屈曲 股関節伸展 膝関節屈曲 膝関節伸展の計 4 ヶ所を測定した. 股関節屈曲 膝関節屈曲 ( 股関節屈曲位 ) 膝関節伸展の測定時は被験者をベッド上背臥位にて, 股関節伸展 膝関節屈曲 ( 股関節伸展位 ) の測定時は被験者をベッド上腹臥位にて, 角度計を用いて実施した. 下肢筋力は徒手筋力計 Mobie MT-110( 酒井医療 ) を用い, 股関節屈曲筋 股関節伸展筋 膝関節屈曲筋 膝関節伸展筋の計 4 ヶ所を測定した. 股関節屈曲 膝関節屈曲 膝関節伸展の測定時は被験者をベッド上端座位にて, 両腕を胸部前方で交差させ, 下肢は膝関節を 90 屈曲位に固定して測定した. 股関節伸展の測定時は, 被験者をベッド上腹臥位にて, 膝関節を 90 屈曲位に固定して測定した. また, より再現性の高い測定を行うため, ベルト付きのプルセンサー MT-110( 酒井医療 ) を使用し, ハンドヘルドダイナモメーターのベルト固定法と同様に片方のベルトを被験者に, もう片方のベルトを検者の下肢に固定する方法で実施した. 測定は左右 2 回ずつ行い, 最大値を採用した. TST-5 は被験者の両腕を胸部前方で交差させ, 背中を伸ばした状態で椅子に浅く腰かけてもらい, 合図とともに椅子から立ち上がって直立 姿勢をとり, 再び椅子に腰かける動作を可能な限り速く,5 回繰り返すように指示した. 合図してから 5 回目の着座姿勢をとるまでの時間を 0.01s 単位で 2 回計測し, より速い方の結果を採用した. TUG は被験者が椅子に着座した状態で合図とともに立ち上がり,3 m 先に接地した目印まで直進した後, 目印を半周して再び椅子まで直進し着座するまでの動作を, 走らない程度で可能な限り速く行うように指示した. 椅子から立ち上がって往復し再び椅子に着座するまでの時間を 0.01s 単位で 2 回計測し, より速い方の結果を採用した. HAQ はリウマチ患者が現在の身体機能の障害度を自己申告する評価方法である.ADL に関する 8 領域,20 項目からなり, 何の困難もなくできるが 0 点, できないが 3 点というように 4 段階評価を行い, 合計を 20 で割って平均を算出する. 値が高いほど日常生活が困難であることを示す. リウマチ体操実施記録表に体操を行った日にチェックをつけてもらい, 実施状況の把握も行った. なお, 本研究は長崎大学病院臨床研究倫理委員会にて承認を得て行った. 結果 1. 症例 1 症例 1は 60 歳代女性, 罹患期間は 2 年で, Steinbrocker 分類は stage2/ class1 であった. 抗 IL-6 受容体抗体であるトシリズマブを使用し, リウマチ体操はほぼ毎日実施していた. 生物学的製剤の投与前の関節炎と疾患活動性は, 圧痛関節数 7 か所, 腫脹関節数 4 か所, 疼痛 VAS 65(mm),CRP 値 0.62(mg/dl),DAS28 CRP 4.62 であった. 関節可動域は, 計測したすべての関節に著明な可動域制限は見られなかった. 握力 ( 右 / 左 ) は 114/154(mmHg), ピンチ力 ( 右 / 左 ) は 1.6/2.8(kg) であった. また, 下肢筋力 ( 右 / 左 ) は, 股関節屈曲 20.89/24.37 (kg/wt*100), 股関節伸展 18.80/19.22 (kg/wt*100), 膝関節屈曲 16.16/14.07 (kg/wt*100), 膝関節伸展 28.97/39.28 (kg/wt*100) であった. パフォーマンステストで -42-

は TST-5:10.03( 秒 ),TUG:5.88( 秒 ) であった. HAQ は 0.375( 点 ) であった. 治療後における関節炎と疾患活動性は, 圧痛関節数 疼痛 VAS CRP 値に減少が見られ, DAS28-CRP 3.33 となった ( 図 1-1). 関節可動域は治療前後で変化は見られなかった ( 表 1). 握力 ピンチ力に関しては, 両側ともに増加が見られた ( 図 1-2,1-3). 下肢筋力に関しては, 両側股関節屈曲, 右側膝関節屈曲, 左側膝関節伸展で増加が見られた ( 図 1-4,1-5). パフォーマンステストでは,TST-5 TUG ともに時間が短縮する結果がみられた ( 図 1-6).HAQ は 靴ひもを結び, ボタンかけも含め自分で身支度できますか. 自分で洗髪できますか. 皿の肉を切ることができますか. 新しい牛乳のパックの口を開けられますか. 蛇口の開閉ができますか. 掃除機をかけたり, 庭掃除などの家事ができますか. の 6 項目で改善し,0.125( 点 ) となった ( 図 1-7). 図 1-2 症例 1 握力 図 1-3 症例 1 ピンチ力 図 1-1 症例 1 DAS28-CRP 図 1-4 症例 1 筋力 ( 右 ) 表 1 症例 1 関節可動域 図 1-5 症例 1 筋力 ( 左 ) -43-

に関しては, 両側ともに増加が見られた ( 図 2-2, 2-3). 下肢筋力に関しては, 股関節屈曲以外で増加が見られた ( 図 2-4,2-5). パフォーマンステストでは, 著明な変化はみられなかった ( 図 2-6).HAQ は 13 項目で改善し,0.125( 点 ) となった ( 図 2-7). 図 1-6 症例 1 パフォーマンステスト 図 2-1 症例 2 DAS28-CRP 図 1-7 症例 1 HAQ 2. 症例 2 症例 2は 50 歳代男性, 罹患期間は 2 年で, Steinbrocker 分類は stage1/class3 であった.T 細胞阻害薬であるアバタセプトを使用し, リウマチ体操はほぼ毎日実施していた. 生物学的製剤の投与前の関節炎と疾患活動性は, 圧痛関節数 1 か所, 腫脹関節数 1 か所, 疼痛 VAS75 (mm),crp 値 0.07 (mg/dl),das28 CRP2.44 であった. 関節可動域は, 左側の股関節屈曲で 105 と制限がみられた. 握力 ( 右 / 左 ) は 278/180(mmHg), ピンチ力 ( 右 / 左 ) は 6.0/1.7 (kg) であった. また, 下肢筋力 ( 右 / 左 ) は, 股関節屈曲 55.81/43.19(kg/Wt*100), 股関節伸展 46.01/40.86(kg/Wt*100), 膝関節屈曲 26.08/33.72(kg/Wt*100), 膝関節伸展 60.13/39.04(kg/Wt*100) であった. パフォーマンステストでは TST-5:9.78( 秒 ),TUG:6.79( 秒 ) であった.HAQ は 1.0( 点 ) であった. 治療後における関節炎と疾患活動性は, 圧痛関節数 疼痛関節数 疼痛 VAS CRP 値に減少が見られ,DAS28-CRP2.18 となった ( 図 2-1). 関節可動域は治療後で左側の股関節屈曲が 120 と改善がみられた ( 表 2). 握力 ピンチ力 表 2 症例 2 関節可動域 図 2-2 症例 2 握力 -44-

図 2-3 症例 2 ピンチ力 図 2-7 症例 2 HAQ 図 2-4 症例 2 筋力 ( 右 ) 図 2-5 症例 2 筋力 ( 左 ) 図 2-6 症例 2 パフォーマンステスト 3. 症例 3 症例 3は,60 歳代女性, 罹患期間は 15 年, Steinbrocker 分類は stage4/ class2 であった. 抗 IL-6 受容体抗体であるトシリズマブ使用し, リウマチ体操は 3 日に1 回程度実施していた. 生物学的製剤の投与前の関節炎と疾患活動性は, 圧痛関節数 24 か所, 腫脹関節数 22 か所, 疼痛 VAS 22 (mm),crp 値 0.19 (mg/dl), DAS28 CRP5.71 であった. 関節可動域は, 計測したすべての関節に著明な可動域制限は見られなかった. 握力 ( 右 / 左 ) は 180/140 (mmhg), ピンチ力 ( 右 / 左 ) は 2.2/1.9 (kg) であった. また, 下肢筋力 ( 右 / 左 ) は, 股関節屈曲 17.5/20.6 (kg/wt*100), 股関節伸展 8.5/6.5 (kg/wt*100), 膝関節屈曲 8.3/4.2 (kg/wt*100), 膝関節伸展 24.7/13.9 (kg/wt*100) であった. パフォーマンステストでは TST-5:8.25( 秒 ),TUG:6.44( 秒 ) であった.HAQ は 0.875( 点 ) であった. 治療後における関節炎と疾患活動性は, 圧痛関節数 疼痛 VAS CRP 値に減少が見られ, DAS28-CRP1.9 となった ( 図 3-1). 関節可動域は治療前後で変化は見られなかった ( 表 3). 握力 ピンチ力に関しては, 両側ともにわずかな増加が見られた ( 図 3-2,3-3). 下肢筋力に関しては, 両側股関節屈曲, 右側股関節伸展, 両側膝関節屈曲, 右側膝関節伸展で増加が見られた ( 図 3-4,3-5). パフォーマンステストでは,TST- 5 TUG ともに時間が短縮する結果がみられた ( 図 3-6).HAQ は 自分で洗髪できますか. ひじ掛けのない垂直な椅子から立ち上がれますか. 皿の肉を切ることができますか. トイレに座ったり立ったりできますか. 広口のビンの -45-

蓋を開けられますか. の 5 項目で改善し,2 項 目で悪化し,0.75( 点 ) となった ( 図 3-7). 図 3-4 症例 3 筋力 ( 右 ) 図 3-1 症例 3 DAS28-CRP 図 3-5 症例 3 筋力 ( 左 ) 表 3 症例 3 関節可動域 図 3-6 症例 3 パフォーマンステスト 図 3-2 症例 3 握力 図 3-7 症例 3 HAQ 図 3-3 症例 3 ピンチ力 考察 以上の結果を分析しフローチャートとしてまと -46-

めた. 1. 症例 1 この症例は罹患期間が 2 年と比較的短く, Steinbrocker 分類の stage2 であり関節破壊はあまり進行していなかったが, 腫脹 疼痛が生じていた. 治療後では, 炎症が緩和し,DAS28-CRP の改善, 疼痛関節数の減少, 疼痛 VAS の減少がみられた. また, 上肢および下肢機能で改善が見られた.HAQ は 6 項目で改善していた. その理由として, 生物学的製剤の投与により炎症が緩和したことで疼痛が軽減したことが考えられる. 疼痛が抑制されたことによる直接的な ADL の改善に加え, 疼痛軽減に伴う筋出力の増加が ADL 改善につながったと考えられる. またリウマチ体操を実施することにより, 筋力の低下を抑えることができた. 山田ら 4 ) の報告によると筋力の低下は炎症性サイトカインの増加に起因することが示唆されており, 今回生物学的製剤により炎症性サイトカインの量が減少したことで筋力低下が抑制されたのではないかと考えられる. これもまた ADL の改善につながったのではないかと考えられる ( 図 4). 図 4 症例 1 フローチャート 2. 症例 2 この症例は罹患期間が 2 年と比較的短く, Steinbrocker 分類の stage1 であり関節破壊は進行していなかったが, 腫脹 疼痛は生じていた. 治療後では, 腫脹関節数や疼痛関節数の減少, 疼痛 VAS の減少がみられた. また, 上肢および下肢機能で改善が見られた.HAQ は 13 項目で改善していた. その理由として, 疼痛改善により, 筋出力が増加したことで筋力改善につながったと考えられ る. また, 今回生物学的製剤により炎症性サイトカインの量が減少したことで筋力低下が抑えられたと考えられる. 田中ら 5) は 明らかな関節破壊が生じる前から関節破壊の進行を予防しつつ, 患者の状態に応じたリハ治療プログラムやライフプランの作成も含めた介入が必要である と報告している. 本症例では関節破壊が生じる前から, 腫脹 疼痛の軽減をしつつリウマチ体操による運動療法を行えたことで, 活動量が増加し, より ADL の改善が見られたと考えられる ( 図 5). 図 5 症例 2 フローチャート 3. 症例 ➂ この症例は罹患期間が 15 年と長く, Steinbrocker 分類の stage4 であり, 関節破壊が進行しており, 腫脹 疼痛も生じていた. 治療後では, 炎症が緩和し,DAS28-CRP の改善, 腫脹関節数や疼痛関節数の減少, 疼痛 VAS の減少がみられた. また, 上肢および下肢機能でわずかな改善が見られた.HAQ は 5 項目で改善し, 2 項目で悪化していた. 症例 3では, 生物学的製剤の効果により炎症症状の緩和は見られたものの, 生物学的製剤は既存の変形を改善することはできないため, 変形による疼痛は抑制できなかったのではないかと考えられる. 今回の研究では疼痛がある場合リウマチ体操を自制するように指導していたため, 他の 2 症例と比較して体操の頻度が少なかったのだと考えられる. これにより活動量の増加が得られず,ADL の改善が乏しかったと考えられる ( 図 6). -47-

変化はみられなかった. 全症例を通して, 下肢と比較し上肢でより改善がみられた. これは治療前に上肢の方が腫脹関節数や圧痛関節数が多く, 治療後でそれらの関節数の減少が多くみられたことが理由として考えられる ( 表 4). 図 6 症例 3 フローチャートまとめ症例 1は罹患期間が 2 年と短く,Stage 分類は stage2 と中等期であり, 骨破壊はあるが, 変形はない状態であった.IL-6 受容体抗体であるトシリズマブを使用したところ, 疾患活動性は高値から中等度になり, 安静時痛も減少していた. リウマチ体操はほぼ毎日実施されていた. 運動時の疼痛に関しては関節ごとに異なっていたためか下肢筋力の改善はばらつきがみられた.HAQ においては改善がみられた. 症例 2は罹患期間が 2 年と短く,Stage 分類は stage1 と初期で, 関節破壊はなかった.T 細胞阻害薬であるアバタセプトを使用したところ, 安静時痛 運動時痛はともに減少した. リウマチ体操はほぼ毎日実施されており, 下肢筋力では大幅に改善がみられた. また,HAQ も大きく改善した. 症例 3は罹患期間が 15 年と他の 2 症例と比較して長く,Stage 分類も stage4 と関節変形が進行していた. トシリズマブを使用したところ, 治療前の疾患活動性は高値を示していたが, 治療後では低くなっていた. 変形による運動時痛が残っていたためか, リウマチ体操は 3 日に 1 回程度の実施であり, 下肢筋力,HAQ においてもあまり 症例 1 症例 2 症例 3 罹患期間 2 年 2 年 15 年 Stage 分類 Ⅱ Ⅰ Ⅳ 生物学的製剤 トシリズマブ アバタセプト トシリズマブ 疾患活動性 高 中 低 低 高 低 リウマチ体操 毎日 毎日 3 日に1 回 疼痛 ( 安静時 ) 疼痛 ( 運動時 ) / 筋力改善 HAQ ( 改善 ) ( 改善 ) 表 4 3 症例のまとめ結論 3 症例の評価結果より, 生物学的製剤とリウマチ体操を併用することで, 炎症を緩和し, 腫脹 疼痛 筋力低下を抑えることが出来た. リウマチ体操を行うには疼痛を抑制しておく必要があり, 生物学的製剤を投与しても変形による疼痛が残存する進行例においてはリウマチ体操の効果は得にくかった. 関節変形が進行する前に炎症症状を抑えて, 患者の状態に応じた運動療法を実施する必要があると考えられる. 謝辞最後に, 本研究を進めるにあたり, 検査にご協力頂いた A 病院リウマチ 膠原病内科受診中の患者様をはじめ, ご指導 ご協力頂いた長崎大学運動障害リハビリテーション学研究室の先生方に厚く御礼申し上げます. 参考文献 1) 前田眞治, 上月正博, 他 : 内科学 ( 第 3 版 ). 医学書院, 東京,2014,pp. 309. 2) 彌山峰史, 内田研造, 他 : 生物学的製剤使用下における関節リウマチ滑膜組織の組織学的, 生物学的特徴. 日関病誌.2013; 32: 121-128. -48-

3) 村川美幸, 高木理彰, 他 : 関節リウマチ患者に対する生物学的製剤とリハビリテーションの効果. 臨床リウマチ.2009; 21: 235-242. 4) 山田崇史 : 関節リウマチに伴う筋弱化のメカニズム. 理学療法学.2015; 42: 819~820. 5) 田中一成, 佐浦隆一 : 生物製剤時代の RA リハビリテーション. 臨床リウマチ.2011; 23: 16~21. ( 指導教員 : 折口智樹 ) -49-