感染と CRP
感染と CRP メニュー 1.Sepsis 1 診断的 価値 Intensive Care Med 2002 2 重症度 3 治療効果 予後判定 判定 Crit Care 2011 Infection 2008 2.ICU Patients 3.VAP Crit Care 2006 Chest 2003 Crit Care Med 2002 Heart & Lung 2011 Eur Respir J 2005 Crit Care Med 2008 4.CAP BMJ 2005 Crit Care2007 Eur Respir J 2008
1.Sepsis
1-1
1-2
目的 抗菌薬投与後の CRP の推移が 市中敗血症の予後を反映するかを前向き観察研究で評価 方法 ポルトガルを中心とした多施設の ICU に 2004 年から 1 年間に入室し 市中敗血症と診断された (ACCP/SCCM の定義 )891 例を対象に CRP を連日測定して解析した
Day5-CRP/Day1-CRP>0.8 0.4<Day5-CRP/Day1-CRP<0.8 Day5-CRP/Day1-CRP<0.4 Mortality 41% Mortality 30% Mortality 23% (P=0.001)
1-3 目的 敗血症患者において 初期投与抗菌薬の効果が CRP の推移で判定できるかを 前向き観察研究で評価 方法 ブリュッセルの 2 施設の ICU に 2005 年の 5 ヶ月間に入室した敗血症患者 (2001 ISC 基準 ) を対象とし 連日の C RP 測定を行った ( 最大 7 日間を解析 ) 臨床経過で患者を三群に分け グループ 1 は培養で検出された起因菌に対し感受性を有する抗菌薬が初期より投与され 変更不要であった ( もしくは Deescalatio n) もの グループ 2 は培養結果から初期投与抗菌薬が無効と判断 (2a) もしくは他の感染源が証明 (2b) 培養陰性ながら臨床上悪化 (2c) により 初期投与抗菌薬が変更 追加されたもの グループ 3 は感染源コントロールのため手術やドレナージが施行されたものとした
Day2 の CRP が Day0 の CRP より 2.2mg/dl 以上上昇した場合 初期投与抗菌薬が無効である感度は 77% 特異度は 67%(AUC 0.71)
1.Sepsis 1-1 CRP のカットオフ値を 10mg/dl 程度に設定した場合 診断感度 特異度とも 70% 程度で十分とはいえない 1-2 単回測定の CRP 値は重症度 (SOFA スコア ) を反映しないが 連続的に CRP を測定した場合 その推移が生命予後や重症度を反映しうる 1-3 初期投与抗菌薬が有効であるかは 投与後 Day2 以降の CRP 低下で判断しうる
2.ICU Patients
2-1
目的 CRP の連日測定を追跡して ICU で発生する感染を早期診断できるか前向き観察研究で評価 方法 ポルトガル アルマダの ICU に 2001 年から 1 年間に入室 (72 時間以上 ) した患者 181 例の内 感染症患者と非感染症患者に分けて解析した 感染症患者は Centers for Disease Control definition を用い 培養が陽性で 診断前の 5 日以上抗菌薬投与のないものとした 非感染症患者は感染徴候なく 抗菌薬投与を受けず 生存して退室したものとした 感染症診断の 5 日前までの CRP の推移を 4 パターンに分けて解析した ( 非感染症患者群は退室から 5 日前までの CR P を解析した ) 8.7mg/dl 8.7mg/dl
Maximum daily CRP variation >4.1mg/dl の感染予測感度は 92.1% 特異度は 71.4% さらに CRP >8.7mg/dl(Day0) の条件を加えると 感染の予測感度は 92.1% 特異度 82.1%
2-2 目的 ICU 入室時の CRP が死亡や臓器不全を反映するかを前向き観察研究で評価 方法 ブリュッセル大学病院の ICU に 1999 年の 4 ヶ月間に入室した (48 時間以上 ) 患者 313 例を対象とし ICU 入室時 (Day0) と Day2 の CRP 値を三群に分けて 死亡率と臓器不全 (S OFA スコア ) を解析した なお 感染 は臨床所見と検査所見 細菌培養検査から判断した
ICU 入室時の CRP 値より 48 時間後の CRP が低下していた群の死亡率は 15.4% 上昇していた群の死亡率は 60.9%(RR=0.25(0.07-0.91) p<0.05) で 有意差を認めた
2-3 目的 ICU 入室時の CRP 値が感染症の診断に有用か また その後の CRP 値の変化が治療効果を反映するかを 前向き観察研究で評価 Pneumonia 12, Mediastinitis 5, UTI 4, Bacteremia 3, Post cardiac&vascular op 15, ARDS 9, Heart failure 8, 方法 パリの大学病院関連施設のMedical ICUに4ヶ月の間に入室した (24 時間以上 )74 例を対象とし 入室時からDay4までのCRP を解析した 感染は 各種培養における有意な起因菌の検出 ( 挿管患者の肺炎疑いに関しては BALF の量的培養で診断 ) とした 感染症の軽快は SIRS が 0-1 項目となり (2 日間 ) 培養が陰性化することとした
CRP が Day4 までに 50mg/L 以上減少すると 感染症の軽快を感度 89% 特異度 79% で表す
2.ICU Patients 2-1 CRP のカットオフ値を 10mg/dl 程度に設定した場合 診断感度 特異度とも十分とはいえないが 連続的に CRP を測定した場合 その変化 (4.1mg/dl/day 以上 ) を加えることで診断精度は上昇する 2-2 ICU 入室時の CRP が 10mg/dl 以上だと 感染症の有無に関わらず 重症度 (SOFA スコア ) が高く 死亡率が高い さらに 48 時間後の CRP の推移も死亡率に関与する 2-3 初期投与抗菌薬が有効であるかは 投与後 Day4 の CRP 低下 (5mg/dl/4days 以上 ) で判断しうる
3.Ventilator-associated Pneumonia
3-1
3-2 Fast response Nonresponse Slow response Biphasic response 目的 VAP 患者において CRP の推移が予後を反映するかを 前向き観察研究で評価 方法 ポルトガル アルマダの病院の IC U に 2001 年から 14 ヶ月の間に入室し 72 時間以上の人工呼吸器管理を受けた 237 例の内 VAP と診断された 47 例を対象とした (VAP の診断は 体温 WBC 膿性痰 BALF で 1x10 4 cfu/ml 以上の量的培養陽性で行った ) CRP の推移で患者を四群に分け fast response 群は Day4/Day0-CRP<0.4 slow response 群は fast 群に当てはまらないが持続的に CRP が低下したもの non response 群は常に Day0-CRPx0.8 を超えていたもの biphasic response 群は CRP が一度 Day0-CRPx0.8 以下に低下したが再上昇したものとした これらの CRP 推移の違いにより生命予後を予測できるかを検証した
3-3 目的 VAP 患者において 気管吸引物の量的培養 (quantitative tracheal aspirate; QTA) による細菌量と CRP が相関するかを前向き観察研究で評価 方法 ブラジルとスペインの 2 施設の ICU に入室し 人工呼吸器管理を受け VAP と診断された 68 例を対象とした ( 初回 QTA で単一の起因菌が同定されたもの ) QTA と CRP を VAP 診断時 (baseline) と 96 時間後 (follow-up) で比較した 検出された起因菌が感受性を有する抗菌薬が投与されていた場合は適切 (appropriate) と判断された
96 時間後の CRP が診断時の 0.8 倍以下なら 適切な抗菌薬が投与されていることを 感度 77% 特異度 87% AUC0.86 で示す
3.VAP 3-1 研究が少ないが 診断感度 特異度とも十分とはいえないだろう 3-2 診断時の CRP 値は生命予後を反映しないが 連続的に CRP を測定した場合 その推移が生命予後や重症度 (SOFA スコア ) を反映しうる 3-3 初期投与抗菌薬が有効であるかは 投与後 Day4 の CRP 低下 ( 診断時の 0.8 倍以下 ) で判断しうる CRP の変動は菌量と相関する
4.Community-acquired Pneumonia
4-1
4-2
目的 抗菌薬投与後の CRP の推移が 重症市中肺炎の予後を反映するかを前向き観察研究で評価 方法 ポルトガル アルマダの ICU に 2001 年から 14 ヶ月間に入室し 重症市中肺炎と診断された (ATS ガイドライン 2001 による )53 例を対象に CRP を連日測定して解析した
抗菌薬投与 Day3 の CRP がそれ以前の CRP の 0.31 倍以下の場合 生存に対する感度は 75% 特異度は 85%
4-3 目的 重症市中肺炎患者において 抗菌薬投与後の CRP 値の変化が治療効果を反映するかを 前向き観察研究で評価 方法 オランダの多施設の病院に 2000 年から 3 年間に入院し 重症市中肺炎と診断された (ATS ガイドラインもしくは PSI>90)289 例の内 喀痰培養で起因菌が同定された 137 例を対象に 入院時と Day3 Day7 の CRP を解析した 検出された起因菌が感受性を有する抗菌薬が投与されていた場合は適切 (appropriate) と判断された
4.CAP 4-1 CRP のカットオフ値を 10mg/dl 程度に設定した場合 診断感度 特異度とも十分とはいえない 3-2 診断時の CRP 値は生命予後や重症度 (PSI) を反映しないが 連続的に CRP を測定した場合 その推移が生命予後を反映しうる 3-3 抗菌薬投与後 Day3 の CRP が十分低下 ( 診断時の 0.4 倍以上 ) していなければ 有効な抗菌薬が投与されていないことを示す
感染と CRP まとめ CRP の単回測定による感染症の診断的価値と予後判定能は十分とはいえないが 連続的な測定による CRP の推移は 診断能と予後判定能を高める 感染症に対する治療 ( 抗菌薬 ) の効果判定には Day2~4 の CRP の低下をもって判断することが有用である