運動負荷試験としての 6 分間歩行試験の特徴和賀大坂本はるか < 要約 > 6 分間歩行試験 (6-minute walk test; 6MWT) は,COPD 患者において, 一定の速度で歩く定量負荷試験であり, この歩行試験の負荷量は最大負荷量の約 90% に相当すると報告されている. そこ

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ともあきいいはた
5 years ago
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1 運動負荷試験としての 6 分間歩行試験の特徴和賀大坂本はるか < 要約 > 6 分間歩行試験 (6-minute walk test; 6MWT) は,COPD 患者において, 一定の速度で歩く定量負荷試験であり, この歩行試験の負荷量は最大負荷量の約 90% に相当すると報告されているそこで, 6MWT は一定負荷試験であるか, 高負荷運動であるかを検証するため, 研究 1 は, 高齢者 22 名, 若年者 13 名を対象に 6MWT を実施, 歩行速度と脈拍数を調べた全ての被験者で歩行速度は常に一定で, 脈拍も歩行開始 3 分後から定常状態となった研究 2 は, 研究 1 の対象者に加え,COPD 患者 10 名,IPF 患者 10 名に 6MWT を実施, 最大脈拍数から運動強度を推定した推定運動負荷量 [ 中央値 (25 ~75 パーセンタイル )%] はそれぞれ, 若年者 [682(567~745)%], 高齢者 [852(800~972)%], COPD 患者 [468(800~972)%],IPF 患者 [656(460~738)%], であり, どの群も個人差が大きく, 高齢者群を除き, 高負荷運動ではなかった以上より,6MWT は一定負荷運動であるが, その程度は個人差と疾患差があり, 決して高負荷運動ではない Ⅰ はじめに 6 分間歩行試験 (6-minute walk test; 6MWT) は, 患者の運動能力評価だけではなく, 医療介入効果を判定する簡易な検査法として広く実施されている 1~4 ) 6MWT は 30m 廊下を往復し, その距離を測定するものである被験者は 1 分毎にきめられた言葉で声かけされ,6 分間に出来るだけ長い距離を歩くよう努力する 1 ) なお, 本試験は 2012 年 4 月から社会保険適用となり, 多くの施設で理学療法士がおこなっているところで,6MWT は,COPD 患者では一定の速度で歩く負荷試験であり 5 ),6MWT の負荷量は最大負荷量の約 90% に相当するとの報告もある 6,7) そこで, 本研究では,6MWT は本当に一定負荷試験であるのかを研究 1 で, 本当に高負荷運動であるのかを研究 2 で検討した Ⅱ 研究 1 1 目的 6MWT が一定負荷試験であるかを調べる 2 対象呼吸機能が正常な健常高齢者 22 名 ( 男性 12 名, 女性 10 名, 年齢 709±45 歳 ) と健常若年者 13 名 ( 男性 6 名, 女性 7 名, 年齢 225±1 歳 ) を対象とした ( 表 1) なお, 呼吸機能は [% 肺活量 > 80% かつ 1 秒率 >70%, スパイロメーター (AS307, ミナト医科学 )] を正常としたなお, 歩行に影響する整形外科疾患, 脳血管障害, 過度の肥満 (BMI>30), コントロール不良の高血圧症や糖尿病を有する者は除外した 3 方法本研究では 30m ではなく,25mの直線廊下を使用した具体的には, 日本呼吸ケアリハビリテーション学会発行の呼吸リハビリテーションマニュアル ( 8) に記載された手技で 6MWT を施行した声かけは常に同じ言葉で行った ( 表 2)

2 (2) 脈拍数脈拍数の推移を図 1 に示す試験開始 3 分後から試験終了時までの脈拍数はほぼ一定であり, 若年者と高齢者ともに有意差はなかった表 3:6 分間歩行時の歩行速度若年者高齢者開始直後 721 ± ± 070 * 1 分 721 ± ± 064 * 2 分 698 ± ± 062 * 3 分 699 ± ± 060 * 4 分 700 ± ± 061 * 5 分 699 ± ± 065 * 6 分 692 ± ± 066 * 歩行速度は km/h 平均値 ± 標準偏差 *: 同じ時間で若年者に比べて有意に低下 (p<001) 歩行速度は, 往路の直線廊下 25mを歩行するたびにその時間を計測し, 求めた脈拍は, 被験者に携帯型パルスオキシメーターを装着させ試験開始時から終了 2 分後まで 1 分間隔で求めた 4 統計解析解析ソフト (Statview,StatmateⅣ) を使用し, 分散分析を行った Post hoc テストは Bonferroni/Dunn で,p<005 を有意とした 5 結果 (1) 歩行速度試験中の歩行速度の推移を表 3 に示す若年者, 高齢者ともに, 歩行速度は 6 分間通してほぼ一定であり有意差はなかったしかし, 群全体の平均速度は若年者の方が速かった (p<001) 図 1:6 分間歩行試験中の脈拍数の推移脈拍数は試験開始直後から 1 分ごとの脈拍数と試験終了直後の脈拍数の差を示す若年者高齢者いずれも歩行後半の 3 分は一定であった

3 6 結論健常者において 6MWT は一定負荷試験である Ⅲ 研究 2 1 目的 COPD 患者だけでなく, 健常者や他疾患において,6MWT が本当に高負荷運動であるかを確かめる 2 対象研究 1 の対象者に加え, 他施設で 6MWT を行った慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 患者 10 名 ( 男性 10 名, 年齢 708±43 歳,% 肺活量 98±174%, 1 秒率 432±136%) と特発性肺線維症 (IPF) 患者 10 名 ( 男性 9 名, 女性 1 名, 年齢 731±116 歳,% 肺活量 83±159%,1 秒率 848±82%) を対象に加えた ( 表 4) 4 統計解析研究 Ⅰと同じ解析手法を用いた 5 結果各群の歩行終了時の運動負荷量の関係を図 2 に示す運動強度は高齢者群 [852(800~ 972)%], 若年者群 [682(567~745)%] であり, 高齢者群は有意に運動強度が高かった (p <001) また, 高齢者群は COPD 患者群 [468 (800~972)%] と IPF 患者群 [656(460 ~738)%] のどちらに対しても運動強度が有意に高かった (p<001) しかし, いずれの群でも負荷量は個人間のばらつきが大きかった図 2: 予測最大心拍数から見た運動負荷量の比較縦軸は運動強度 (%) を示す COPD: 慢性閉塞性肺疾患 IPF: 特発性肺線維症 3 方法研究 1 と同じ手技で 6MWT を実施した試験終了時の運動強度は下記の式で求め,% 表記した運動強度, % =( 試験終了時脈拍数 / 予測最大心拍数 )x100 ただし, 予測最大心拍数 = 年齢とした 6 結論 6MWT は年齢差個人差疾患差などがあり, 一様に高負荷運動ではない Ⅳ 考察本研究から 6MWT は一定負荷運動であるが, その程度には個人差と疾患差があり, 決して一様に高運動負荷ではないことを明らかにした研究 1 では, 被験者の歩行速度が一定となっていたことから,6MWT は一定負荷運動であった

4 これは COPD 患者を対象として報告と一致していた 6,7) その理由の一つは, 運動療法マニュアルに記載されている声かけ ( 励まし ) の文言が, 被検者に一定負荷を要請するようになっていることも関係していると思われる ( 表 2) つまり, 歩行開始 2 分と 4 分にその調子を維持してくださいと患者を励ますが, その誘導で歩行していた被検者は, 無意識下に歩行速度を一定にしていた可能性がある研究 2 では,6MWT の運動強度は, 個人差と疾患差があり, 決して高負荷運動ではないことがわかったその要因として, 呼吸器疾患患者は脈拍数が上昇する前に息切れによって歩行が制限されてしまった可能性があるしかしながら, 自覚的運動強度はデータとして収集していないため, 被験者がそれぞれどの程度の運動強度を感じていたのかが不明である健常者は本学で, 呼吸器疾患患者は共同研究施設で実施したしかしながら実施施設の違いが今回の結果に影響した可能では少ないと思われるなぜなら,6MWT は学会のガイドラインにしたがい正確に実施したからであるつまり, 患者に対する声かけ ( 励まし ) の程度が異なる可能性はなく, 運動強度がそれぞれ異なったことに影響はしていない今回, 運動強度を求める式として, 予測最大心拍数 =220 - 年齢としたこの式からわかる様に年齢が若いほど運動強度が弱く計算されやすいこのため, 若年者に比較し, 高齢者の運動強度が強くなっている可能性もあるまた, 本研究では VO 2 の測定を行っていないため, 運動強度の推定が不十分である患者の運動能力を評価する手段として 6MWT は患者の努力依存性の検査であるが, 患者自身の歩行速度でおこなう安全な一定負荷試験である現在多くの施設で 6MWT が実施されているが, 今回の研究成果, つまり, 一定負荷運動であるが, 負荷強度は患者毎に異なる, ということを充分理解したうえで, 実施すべきである謝辞本研究では, 検査の実施, データ解析を指導してくださった本学修士課程, 栗本俊明氏, 及び, 呼吸器疾患患者データを提供してくださった共同研究者の KKR 札幌医療センター福家聡氏と荒谷隆氏に深謝します引用文献 1) ATS statement: guidelines for the six-minute walk test Am J Respir Crit Care 166: , ) Sciubra F,et al:six-minute walk distance in chronic obstructive pulmonary disease:reproducibility and effect of walking course layout and length Am J Respir Crit Care Med167: ) Forman DE, et al:6-min walk test provides prognostic utility comparable to cardiopulmonary exercise testing in ambulatory outpatients with systolic heart failure JACC 60: ,2012 4) Butland RJ, et al:two-,six-,12-minute walking tests in respiratory disease BMJ 284: ,1982 5) Troosters T,et al:physiological responses to the 6-min walk test in patients with chronic obstructive pulmonary disease Eur Respir J 20: , ) Casas A, et al Encouraged 6-min walking test indicates maximum sustainable exercise in COPD patients Chest 128:55-61, ) Hill K,et al:comparing peak and submaximal cardiorespiratory responses during field walking tests with incremental cycle ergometry in COPDRespirology 17: ) 日本呼吸ケタリハビリテーション学会他編呼吸リハビリテーションマニュアルー運動

5 療法第 2 版日本呼吸ケアリハビリテーション学会照林社, 東京,2012 年 11 月発行 ( 担当教員 : 宮本顕二 )

スライド 1

スライド 1 感染と CRP 感染と CRP メニュー 1.Sepsis 1 診断的価値 Intensive Care Med 2002 2 重症度 3 治療効果予後判定判定 Crit Care 2011 Infection 2008 2.ICU Patients 3.VAP Crit Care 2006 Chest 2003 Crit Care Med 2002 Heart & Lung 2011