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要旨 平成 30 年 2 月 21 日新潟県福祉保健部 インターフェロンフリー治療に係る診断書を作成する際の注意事項 インターフェロンフリー治療の助成対象は HCV-RNA 陽性の C 型慢性肝炎又は Child-Pugh 分類 A の C 型代償性肝硬変で 肝がんの合併のない患者です 助成対象とな

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肝臓の細胞が壊れるる感染があります 肝B 型慢性肝疾患とは? B 型慢性肝疾患は B 型肝炎ウイルスの感染が原因で起こる肝臓の病気です B 型肝炎ウイルスに感染すると ウイルスは肝臓の細胞で増殖します 増殖したウイルスを排除しようと体の免疫機能が働きますが ウイルスだけを狙うことができず 感染した肝

1. ウイルス性肝炎とは ウイルス性肝炎とは 肝炎ウイルスに感染して 肝臓の細胞が壊れていく病気です ウイルスの中で特に肝臓に感染して肝臓の病気を起こすウイルスを肝炎ウイルスとよび 主な肝炎ウイルスには A 型 B 型 C 型 D 型 E 型の 5 種類があります これらのウイルスに感染すると肝細胞

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診療情報を利用した臨床研究について 虎の門病院肝臓内科では 以下の臨床研究を実施しております この研究は 通常の診療で得られた記録をまとめるものです この案内をお読みになり ご自身がこの研究の対象者にあたると思われる方の中で ご質問がある場合 またはこの研究に 自分の診療情報を使ってほしくない とお

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目次 1. 肝臓の病気 2. 肝炎ウイルスとは 3. ウイルス性肝炎とは 4. 急性肝炎 5. 慢性肝炎 6. 肝硬変 7.A 型肝炎 8.B 型肝炎 9.C 型肝炎 10.B 型肝炎の治療 11.C 型肝炎の治療 12. 予防方法 13. 肝炎の医療費助成制度 14. おわりに 1

2016 年 1 月 28 日 特別企画 C 型肝炎座談会 / 甲信越エリア 日時 :2015 年 11 月 10 日場所 : ホテルオークラ新潟 C 型肝炎治療の新時代 C 型肝炎治療における新規経口薬 (DAA 製剤 ) の将来展望と適正使用 C 型肝炎に対して経口の直接作用型抗ウイルス薬 (D

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日本肝臓学会肝炎診療ガイドライン作成委員会 ( 五十音順 ) 朝比奈靖浩 東京医科歯科大学消化器内科 大学院肝臓病態制御学 泉 並木 武蔵野赤十字病院消化器科 桶谷 眞 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科消化器疾患 生活習慣病学 熊田博光 虎の門病院肝臓センター 黒崎雅之 武蔵野赤十字病院消化器科 *

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始前に出生したお子さんについては できるだけ早く 1 回目の接種を開始できるように 指導をお願いします スムーズに定期接種を進めるために定期接種といっても 予防接種をスムーズに進めるためには 保護者の理解が不可欠です しかし B 型肝炎ワクチンの接種効果は一生を左右する重要なものですが 逆にすぐに効

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07 資料2-2 全国DAA不成功例の拠点実態と対策

06 資料2-1 SOF/VEL配合錠によるDAA不成功例の再治療と非代償性肝硬変治療(会議時口答修正反映4・5頁)

り感染し 麻薬注射や刺青なども原因になります 輸血の安全性や医療環境の改善によって 医原性の感染は例外的な場合になりました 日本では約 100 万人の B 型肝炎ウイルスキャリアがいます その大部分は成人で, 昔の母子感染を含む小児期の感染に由来します 1986 年から B 型肝炎ウイルスキャリアの

今さら聞けない C型肝炎の基礎知識

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2017 年 10 月改訂版 リツキシマブ投与後の B 型肝炎ウイルス再活性化について 監修 名古屋市立大学大学院医学研究科血液 腫瘍内科学講師楠本茂名古屋市立大学大学院医学研究科病態医科学ウイルス学教授肝疾患センター副センター長中央臨床検査部部長田中靖人 リツキサン注 10mg/mL( 一般名 :

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平成 24 年 ₇ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 555 号付録 ) 免疫血清部門 尿一般部門 病理部門 細胞診部門 血液一般部門 生化学部門 先天性代謝異常部門 細菌部門 B 型肝炎に関する最近の話題 ~ 免疫抑制によるB 型肝炎ウイルスの再活性化 を中心に~ 検査 1 科血清係 1

血液疾患治療における B 型肝炎ウイルス再活性化 = がん治療 = Hepatitis B virus : HBV HBV 再活性化とは HBVを有する患者に化学療法薬や免疫抑制薬での治療を施行すると これらが誘引となってHBVの増殖が生じること

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感染 発症 ALT 血清 IgG 抗体 糞便中 HAV 血液中 HAV 糞便中 IgA 抗体 血清 IgM 抗体 月 A 型肝炎ウイルス感染時の各指標の変動 B 型急性肝炎の経過 HBc 抗体陽性 14 7 HBV-DNA 陽性 HBs 抗原陽性 HBc 抗体

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都道府県単位での肝炎対策を推進するための計画を策定するなど 地域の実情に応じた肝炎対策を推進することが明記された さらに 近年の状況等を踏まえ 平成 28 年 6 月に基本指針の改正を行い 肝炎対策の全体的な施策目標を設定すること等が追記された 都は 肝炎をめぐる都内の状況や基本指針の改正を踏まえ

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B型肝炎ウイルスのキャリアで免疫抑制・化学療法を受ける患者さんへ

遡及調査にて77日前の献血時のHBVウイルス血症が確認できた急性B型肝炎の一例

審査結果 平成 26 年 2 月 7 日 [ 販売名 ] 1 ヘプタバックス-Ⅱ 2 ビームゲン 同注 0.25mL 同注 0.5mL [ 一般名 ] 組換え沈降 B 型肝炎ワクチン ( 酵母由来 ) [ 申請者名 ] 1 MSD 株式会社 2 一般財団法人化学及血清療法研究所 [ 申請年月日 ]

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平成20 年9月平成 20 年 ₉ 月 15 日発行広島市医師会だより ( 第 509 号付録 ) その結果がまとめられたことから 同月 17 日付けで 輸血療法の実施に関する指針 の一 部改正を行い通知しています 輸血前後の感染症マーカー検査の必要性 ( 指針改正箇所を抜粋 ) 本症は早ければ輸血

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第 4 章感染患者への対策マニュアル ウイルス性肝炎の定義と届け出基準 1) 定義ウイルス感染が原因と考えられる急性肝炎 (B 型肝炎,C 型肝炎, その他のウイルス性肝炎 ) である. 慢性肝疾患, 無症候性キャリア及びこれらの急性増悪例は含まない. したがって, 透析室では HBs

資料集 1 肝がんや重度肝硬変患者への制度の説明フロー ( 都民の方の場合 ) 1 制度の概要の説明 まず B 型 C 型肝炎ウイルスによる肝がんや重度肝硬変の入院 通院患者さんがいらっしゃいましたら 医療費の助成を受けることができる制度がある旨を伝えてください 伝えていただくことは次のとおりです


1. 今回の変更に関する整理 効能 効果及び用法 用量 ( 添付文書より転載 ) 従来製剤 ( バイアル製剤 ) と製法変更製剤 ( シリンジ製剤 ) で変更はない 効能 効果 用法 容量 B 型肝炎の予防通常 0.5mL ずつ4 週間隔で2 回 更に 20~24 週を経過した後に1 回 0.5mL

「肝がん研究の推進及び肝がん患者等への支援のための最適な仕組みの構築を目指した研究」 成果報告

ロタウイルスワクチンは初回接種を1 価で始めた場合は 1 価の2 回接種 5 価で始めた場合は 5 価の3 回接種 となります 母子感染予防の場合のスケジュール案を示す 母子感染予防以外の目的で受ける場合は 4 週間の間隔をあけて2 回接種し 1 回目 の接種から20~24 週あけて3 回目を接種生

肝炎治療 ( 核酸アナログ製剤治療 ) 医療費助成制度の概要 この事業は B 型ウイルス性肝炎に係る核酸アナログ製剤治療の医療費を助成することにより 肝硬変や肝がんを予防し 患者の皆さまをはじめ県民の健康保持 増進を図るために行うものです 1 助成の対象となる医療 B 型肝炎患者に対する核酸アナログ

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1. 医薬品リスク管理計画を策定の上 適切に実施すること 2. 国内での治験症例が極めて限られていることから 製造販売後 一定数の症例に係るデータが集積されるまでの間は 全 症例を対象に使用成績調査を実施することにより 本剤使用患者の背景情報を把握するとともに 本剤の安全性及び有効性に関するデータを

はじめに 日 本 肝 臓 学 会 では 2013 年 4 月 に B 型 肝 炎 治 療 ガイドライン( 第 1 版 ) を 公 表 し 2013 年 8 月 にはこれを 改 訂 した 第 1.2 版 を 学 会 ホームページ 上 で 公 表 いたしました このガイドラ インは B 型 肝 炎 治

どのような人に治療をするか? 他の疾患で生存年数が 1 年未満と予想される人を除いて 慢性 C 型肝炎 (HCVPCR が 6 ヵ月以上陽性 ) すべてに対して治療は考慮すべき Hepatology 2015; 62(3): 治療目標は? SVR (sustained virologi

審査報告 (1) 別紙 平成 29 年 11 月 28 日 本申請において 申請者が提出した資料及び医薬品医療機器総合機構における審査の概略等は 以下 のとおりである 申請品目 [ 販売名 ] ハーボニー配合錠 [ 一般名 ] レジパスビルアセトン付加物 / ソホスブビル [ 申請者 ] ギリアド

目次 1. 地域医療連携パスとは 肝疾患医療連携パスの運用方法について... 3 (1) 特長 (2) 目的 (3) 対象症例 (4) 紹介基準 (5) 肝疾患医療連携パスの種類 (6) 運用 3. 肝疾患医療連携パス... 7 (1) 肝疾患診断医療連携パス ( 医療者用 : 様式

<4D F736F F F696E74202D208ACC919F8BB38EBA313089F196DA814096F28DDC89C B8CDD8AB B83685D>

Transcription:

市民公開講座 あべのハルカス 25 階 2017/02/11 ウイルス性肝炎 (B 型 C 型 ) について 大阪市立大学医学部附属病院肝胆膵病態内科学小塚立蔵

肝癌による死亡者数 ( 人 ) 40000 全体 肝癌の原因の 75% は B C 型肝炎! 肝癌の年間死亡数 30000 20000 10000 男性 女性 HBV (11%) HBV (15%) HCV (60%) 0 1960 1965 1970 1975 1980 1985 1990 1995 2000 2005 2010 ( 年 ) 国立がん研究センター : がんの統計 2014 より改変日本肝臓学会 : 肝がん白書平成 27 年度

トピックス B 型肝炎 ユニバーサルワクチン B 型肝炎の治療 C 型肝炎 C 型肝炎治療の変遷 DAA 治療

トピックス B 型肝炎 ユニバーサルワクチン B 型肝炎の治療

B 型肝炎ウイルスキャリアの臨床経過 母子感染 垂直感染 約 10% 約 90% 70 80% 臨床的治癒臨床的治癒 慢性肝炎肝硬変肝癌 20~30% 約 5%/ 年 年齢 0 10 20 30 40 50 60 70 歳 ) 成人期水平感染 急性肝炎 約 10% 慢性肝炎 肝硬変 肝癌 約 90% 臨床的治癒

日本での B 型肝炎ウイルスの遺伝子型の分布 慢性肝炎 急性肝炎 慢性化 約 10% A 型 数 % B 型 12% A 型 14% B 型 14% C 型 85% C 型 67% Ozaki, et al. Hepatplogy 2006; 44: 326-34 Orito, et al. Hepatplogy 2001; 34: 590-4

B 型急性肝炎の遺伝子型の分布 ( 首都圏 ) 100% 6.0 80% 56.3 52.6 35.2 14.0 遺伝子型の分布 60% 40% 20% 10.6 9.3 34.4 36.8 10.9 51.9 78.0 0% 1994-1998 1999-2002 2003-2006 2007-2010 A B C その他 Yano, et al. Intervirology 2010; 53: 70-5

ユニバーサルワクチン接種 すべての 0 歳児を対象として B 型肝炎ワクチンを 3 回接種する方針を決めた 2016 年 10 月から予防接種法に基づく定期接種として 公費で接種が受けられるようになった

定期ワクチン接種 HB ワクチン = 能動免疫 出生時 2 ヶ月 3 ヶ月 7~8 ヶ月 (4 週以上 ) (20 週以上 ) 生後 2 か月からヒブ 小児用肺炎球菌 ロタワクチンとの同時接種が行われている

母子感染予防のワクチン接種 抗 HB 免疫グロブリン = 受動免疫 HB ワクチン = 能動免疫 出生時 1 ヶ月 6 ヶ月 (12h 以内 ) 1986 年以降は抗 HBs ヒト免疫グロブリンと HB ワクチンの投与により B 型肝炎の母子感染は約 95% 以上防止できている

B 型肝炎の自然経過 免疫寛容期 免疫応答期 低増殖期 ( 非活動期 ) 再燃期 HBsAg HBe 抗原陽性 無症候性キャリア 慢性肝炎 HBe 抗体陽性 無症候性キャリア

B 型肝炎治療の変遷 インターフェロン インターフェロン 4 週間 インターフェロン 24 週間 ペグインターフェロン 48 週間 2000 1986 2002 2004 2006 2011 2014 2017 ラミブジン アデホビル エンテカビル テノホビル テノホビル ( ゼフィックス ) ( ヘプセラ ) ( バラクルード ) ( テノゼット ) ( ベムリディ ) 抗ウイルス薬

インターフェロン (IFN) の働き IFN IFN 肝炎ウイルス 受容体 IFN 関連遺伝子 抗ウイルス蛋白 肝細胞

抗ウイルス薬の働き Receptor に結合し肝細胞へ感染 脱殻 Dane 粒子 中空粒子 Dane 粒子 HBe 抗原 p22cr 分泌 放出 放出 HBs 抗原 不完全環状二本鎖 DNA HBe 抗原 被核集合 不完全環状二本鎖 DNA p22cr プラス鎖 DNA 合成 cccdna 肝細胞 核 修復転写 翻訳 HBs 抗原 PregenomicRNA 抗ウイルス薬 逆転写 コア粒子 mrna (4 種の mrna で HBsAg, HBcAg, HBeAg, 逆転写酵素 (X 蛋白 ) を翻訳 ) モダンメディア 54 巻 12 号,2008[ 新しい検査法 ] より

B 型肝炎の治療ガイドライン (35 歳未満 ) HBe 抗原陽性 HBe 抗原陰性 HBe 抗原陽性 / 陰性肝硬変 治療開始基準 HBV-DNA 量 4 log copies/ml 4 log copies/ml 2.1 log copies/ml ALT 値 31 IU/L 31 IU/L - 治療戦略 1 ペグインターフェロンまたはインターフェロン投与 (24 48 週 ) 特に ALT 値 >5ULN は第一選択 ただし HBV-DNA が 7 log 以上の症例は エンテカビルまたはテノホビルの先行投与も考慮する 線維化進行例 ( 血小板 15 万未満 or F2 以上 ) には エンテカビルまたはテノホビルが第 1 選択 2 エンテカビルまたはテノホビル ALT 低値例に適応 1 ペグインターフェロン (48 週 ) HBV DNA が 7 log 以上の症例は エンテカビルまたはテノホビルの先行投与を考慮する 線維化進行例 ( 血小板 15 万未満 or F2 以上 ) には エンテカビルまたはテノホビルが第 1 選択 2 エンテカビルまたはテノホビル 1 エンテカビルまたはテノホビル ( 代償性 非代償性 ) HBV-DNA 量が 2.1 log 以上の状態が持続する場合は ALT 値が 31 IU/L 未満でも治療対象となる 平成 28 年度厚生労働科学研究費肝炎等克服緊急対策研究公開報告会

B 型肝炎の治療ガイドライン (35 歳以上 ) 治療開始基準 HBV-DNA 量 ALT 値 治療戦略 HBe 抗原陽性 4 log copies/ml 31 IU/L 1 エンテカビルまたはテノホビル 2 ペグインターフェロンまたはインターフェロン長期投与 (~48 週 ) ゲノタイプ A, B ではインターフェロンの感受性が高く 投与可能な症例にはインターフェロン ( ペグインターフェロン ) 製剤の投与が好ましいが 7 log copies/ml 以上の症例ではエンテカビルまたはテノホビル単独あるいはこれらを先行投与後にインターフェロン ( ペグインターフェロン ) を選択 HBe 抗原陰性 4 log copies/ml 31 IU/L 1 エンテカビルまたはテノホビル 2 ペグインターフェロン (48 週 ) ゲノタイプ A, B ではインターフェロンの感受性が高く 投与可能な症例にはインターフェロンの投与が好ましい HBe 抗原陽性 / 陰性肝硬変 2.1 log copies/ml - 1 エンテカビルまたはテノホビル ( 代償性 非代償性 ) HBV-DNA 量が 2.1 log copies/ml 以上の状態が持続する場合は ALT 値が 31 IU/L 未満でも治療対象となる 平成 28 年度厚生労働科学研究費肝炎等克服緊急対策研究公開報告会

インターフェロンと抗ウイルス薬の比較 インターフェロン 抗ウイルス薬 投与経路 注射 経口 副作用 多 少 価格 ++ + ウイルス学的効果 低率 (~20%) 高率 (70%~) 投与終了後の再燃 低 高 投与期間 短期 (~1 年 ) 長期 (1 年 ~) 耐性 - +

治療効果 HBs 抗原 (log IU/mL) HBV-DNA (log copies/ml) HBe 抗原陽性例 HBe 抗原陰性例 エンテカビル (n=37) 0 エンテカビル (n=33) 0 0.10 0.38 0.56-1 0.94-1 ペグインターフェロン (n=69) ペグインターフェロン (n=61) -2-2 0 12 24 36 48 0 12 24 36 48 Week Week 0 0-1 ペグインターフェロン (n=61) -1-2 2.2-2 ペグインターフェロン (n=69) -3-3 エンテカビル (n=33) 3.7-4 -4 4.5 エンテカビル (n=37) 4.2-5 -5 0 12 24 36 48 0 12 24 36 48 Week Week Reijnders et al. J Hepatol 2011; 54: 449-54

抗ウイルス薬 ラミブジン アデホビル エンテカビル テノホビル

抗ウイルス薬の耐性変異率 (%) ラミブジン ( ゼフィックス ) アデホビル ( へプセラ ) エンテカビル ( バラクルード ) テノホビル ( テノゼット ) EASL Clinical Practice Guidelines. J Hepatol 2012.

テノホビル テノホビル ジソプロキシルフマル酸塩 TDF:Tenofovir Disoproxil Fumarate 商品名 : テノゼット 用法 :300 mg/ 日 テノホビル アラフェナミドフマル酸塩 TAF:Tenofovir Alafenamide Fumarate 商品名 : ベムリディ 用法 :25 mg/ 日 TDF TAF

治療効果 ( 第 Ⅲ 相臨床試験 ) Study 108 (HBeAg 陰性例 ) Proportion of Patients, % (95% CI) P atients, % (95% C I) 100 80 60 HBV DNA <29 IU/mL (%) Treatment difference +1.8% (-3.6, +7.2); p=0.47 TAF: 94% (Wk 48) TDF: 93% (Wk 48) 40 20 0 0 8 16 24 32 40 48 P rop ortion of P atien ts, % 100 80 60 40 20 0 ALT 正常化 P<0.001 0 8 16 24 32 40 48 TAF TDF 50% 32% Study W eek Study W eek Study 110 (HBeAg 陽性例 ) Proportion of Patients, % (95% CI) P roportion of P atien ts, % 100 80 Treatment difference -3.6% (-9.8, +2.6); p=0.25 60 40 TAF: 64% (Wk 48) TDF: 67% (Wk 48) 20 0 0 8 16 24 32 40 48 Study W eek P rop ortion of P atien ts, % 100 80 60 40 20 0 0 8 16 24 32 40 48 Study W eek P=0.014 TAF TDF 45% 36%

安全性 ( 第 Ⅲ 相臨床試験 ) 骨への影響 腰椎骨密度の変化 腎機能への影響 TAF TDF P<0.001 Mean egfr Change from Baseline, ml/min 0-1 -2-3 -4-5 腎機能の変化 (egfr (ml/min)) -0.6-4.7 P<0.001 TAF TDF Mean (SD) % Change Mean (SD) % Change from Baseline from Baseline Mean (SD) % Change from Baseline 2 0-2 -4-6 0 2 0-2 -4-0.57-2.37 24 48 寛骨密度の変化 P<0.001-0.16-1.86-6 0 24 48 Week

B 型肝炎の治療目標 短期 治療目標 肝臓の炎症を正常化する ALT 持続正常化 ウイルスの量を減らす HBV-DNA の持続陰性化 ウイルスの増殖を抑える HBe 抗原陰性 +HBe 抗体陽性化 長期 治療目標 肝炎の活動性抑制による肝不全回避 HBs 抗原陰性化 肝癌の発生の抑制および生命予後改善

トピックス C 型肝炎 C 型肝炎治療の変遷 DAA 治療

インターフェロン治療の変遷 ゲノタイプ 1 IFN 24 週間 IFN/RBV 24 週間 PEG-IFN 48 週間 PEG-IFN/RBV 24 週間 テラプレビル PEG-IFN/RBV 24 週間 シメプレビル PEG-IFN/RBV 24 週間 バニプレビル PEG-IFN/RBV 24 週間 1992 2001 2003 2004 2005 2011 2013 2014 ゲノタイプ 2 PEG-IFN/RBV 24 週間 テラプレビル PEG-IFN/RBV 24 週間 IFN: インターフェロン PEG-IFN: ペグインターフェロン RBV: リバビリン

インターフェロンフリー治療の変遷 ゲノタイプ 1 アスナプレビルダクラスビル 24 週間 ソホスブビルレジパスビル 12 週間 パリタプレビルオムビタスビルリトナビル 12 週間 グラゾプレビルエルバスビル 12 週間 アスナプレビルダクラスビルベクラブビル 12 週間 ABT493 2014 2015 2016 2017 2018 ABT530 ゲノタイプ 2 ソホスブビルリバビリン 12 週間 パリタプレビルオムビタスビルリトナビルリバビリン 16 週間

大阪市立大学病院における抗 HCV 療法導入数の推移 400 ( 人 ) IFN-free 350 IFN-based 307 344 300 250 200 196 150 100 50 108 127 114 147 95 102 53 92 66 0 2 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 ( 年 ) 期間 2004 年 ~2016 年治療総数 1,753 例 ( ゲノタイプ 1 1,243 例 ゲノタイプ 2 510 例 )

大阪市立大学病院における抗 HCV 療法導入数の推移 400 ( 人 ) IFN-free 350 IFN-based 307 344 300 250 200 196 150 100 50 108 127 114 147 95 102 53 92 66 0 2 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 ( 年 ) 期間 2004 年 ~2016 年治療総数 1,753 例 ( ゲノタイプ 1 1,243 例 ゲノタイプ 2 510 例 ) IFN-based IFN-free

大阪市立大学病院における SVR 24 数の推移 400 350 300 ( 人 ) IFN-based IFN-free 185/97 250 200 150 100 50 0 1/0 47/0 46/27 44/34 32/21 25/25 22/24 14/13 33/25 12/29 138/20 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 ( 年 ) 期間 2004 年 ~2016 年 SVR 総数 1,034 例 ( ゲノタイプ 1 700 例 ゲノタイプ 2 334 例 ) 101/19 ゲノタイプ 2 ゲノタイプ 1

C 型肝炎ウイルスを標的とした 薬剤の開発 Direct Acting Antivirals (DAA)

DAA の分類と作用機序 C 型肝炎ウイルスのゲノム C E1 E2 p7 NS2 NS3 NS4A NS4B NS5A NS5B NS3/4A プロテアーゼ阻害薬 NS5A 複製複合体阻害薬 NS5B 阻害薬 第 1 世代プロテアーゼ阻害薬 第 2 世代プロテアーゼ阻害薬 テラプレビル シメプレビルアスナプレビルバニプレビルパリタプレビルグラゾプレビル ダクラタスビルレジパスビルオムビタスビルエルバスピルベルパタスビル 非核酸型ポリメラーゼ阻害薬 ベクラブビル ABT-333 核酸型核酸アナログ ソホスブビル プロテアーゼ活性を阻害 複製複合体形成を阻害 核酸合成酵素活性を阻害 HCV RNA に取り込まれ伸長を阻害 Nakamoto S. et al, World J Gastroenterol. 2014:20(11):2902-2012 Esperance A. et al, Gastroenterology. 2012(142):1340 1350 Pelosi LA. et al, Antimicrob Agents Chemother. 2012 ;56(10):5230-5239

今 日本で受けることができる DAA 治療 NS3/4A プロテアーゼ阻害薬 2014 年 09 月 アスナプレビル ( スンベブラ ) (ASV) NS5A 阻害薬 ダクラタスビル ( ダクルインザ ) (DCV) NS5B 阻害薬 2015 年 05 月 ソホスブビル ( ソバルディ ) (SOF) 2015 年 09 月 レジパスビル (LDV) ソホスブビル (SOF) ハーボニー配合錠 2015 年 11 月 パリタプレビル (PTV) オムビタスビル (OBV) ヴィキラックス配合錠 2016 年 11 月 パリタプレビル (PTV) オムビタスビル (OBV) ヴィキラックス配合錠 併用薬 リバビリン リトナビル リトナビルリバビリン 2016 年 11 月 ~ グラゾプレビル ( グラジナ ) (EBR) 2016 年 12 月 ~ アスナプレビル (ASV) エルバスビル ( エレルザ ) (GZR) ダクラタスビル (DCV) ジメンシー配合錠 ベクラブビル (BEC)

インターフェロンフリー治療選択時の アルゴリズム 肝癌の合併なし かつ慢性肝炎あるいは代償性肝硬変 HCV セロタイプ セロ 2 セロ 1 HCV ゲノタイプ 2a, 2b 1a, 1b 1a, 1b 腎機能 (egfr) 30 ml/ 分 /1.73m 2 以上 30 ml/ 分 /1.73m 2 未満 ヘモグロビン 10 g/dl 以上? 制限なし 薬剤耐性変異 NS5B: S282T NS5B: S282T NS3/4A: D168E 併用薬 NS5A: L31M+Y93H NS5A: L31M, Y93H SOF + RBV SOF + LDV EBR +GZR OBV + PTV/r

各薬剤の臨床治験成績 ゲノタイプ 1 型 ゲノタイプ 2 型 100 91% 99% 100% 100% 99% 93% 98% 92% 96% 94% HCV RNA 持続陰性化率 (%) 80 60 40 20 43% 83% 70% 0 ASV/DCV OBV/PTV/r SOF/LDV EBR/GZR ASV/DCV/BEC SOF/RBV NS5A 耐性なしありなしありなしありなしありなしあり OBV/PTV/r/RBV ゲノタイプ 2a 2b

各薬剤の大阪市立大学病院での成績 ゲノタイプ 1 型 ゲノタイプ 2 型 HCV RNA 持続陰性化率 (%) 100 80 60 40 20 96% 88% 100% 100% 94% 99% 0 ASV/DCV OBV/PTV/r SOF/LDV SOF/RBV NS5A 耐性なしありなしありなしあり

肝炎治療医療費助成 B 型 C 型肝炎治療 ( インターフェロン治療 インターフェロンフリー治療および核酸アナログ製剤治療 ) にかかる医療費が助成されます 自己負担額治療費が高額になっても医療費の助成を受けることができます 自己負担額は世帯収入によって月額 1 万円または 2 万円までに軽減されます 世帯全員の市町村民税 ( 所得割 ) 課税年額の合計額 自己負担限度額 ( 月額 ) 申請の流れ申請から受給者証が交付されるまで約 1~2 ヶ月かかります 1 申請 申請者 約 1~2 ヶ月 235,000 円以上 20,000 円 2 審査 3 受給者証の交付 235,000 円未満 10,000 円 保健所 ( 都道府県 ) 申請に必要なもの申請には下記の書類が必要です 1 肝炎医療費助成の申請書 ( 保健所に用意されています ) 2 医師の診断書 ( 医師が記入します ) 3 世帯全員の住民票の写し ( 市町村など自治体から交付 ) 4 世帯全員の住民税の証明書 ( 市町村など自治体から交付 ) 5 健康保険証の写し

まとめ ユニバーサルワクチンにより B 型肝炎が今後さらに減少することが期待される B 型肝炎の進行を防ぐには ウイルスを抑える治療が必要であり インターフェロンと抗ウイルス薬を使い分けることが重要である さまざまな DAA 治療薬が開発されており 患者さん個々の病状合った治療法を選んで C 型肝炎を克服しましょう