(2) 次に これを従業員規模別にみると 100 人以上の企業と 100 人以下の企業とでは傾向が大きく違っている 総じて言えば 規模の大きい企業では減らしているとする企業の割合が多く 規模の小さな企業では増やすか 減らすとしても 減らすと回答する企業は非常に少なくなる傾向にある (4) 総じて言え

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3. 無期労働契約への転換後の労働条件無期労働契約に転換した後の職務 勤務地 賃金 労働時間等の労働条件は 労働協約 就業規則または個々の労働契約等に別段の定めがない限り 直前の有期労働契約と同一になるとされており 無期転換に当たって職務の内容などが変更されないにもかかわらず 無期転換後の労働条件を

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平成25年版 大阪における労働時間等の現状 ー仕事と生活の調和の実現に向けてー

調査結果のポイント 従業員採用状況について 平成 28 年度 (H28.4 ~ H29.3) は 計画どおり もしくは計画より多く採用した と回答した企業が69% 採用計画について 29 年度 (H29.4 ~ H30.3) は 28 年度実績と比較し 増やす と回答した企業と 減らす と回答した企

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第 3 章 非正規労働者の活用理由 今後の活用予定 1 企業が非正規労働者を採用する理由 企業が非正規労働者を採用する主要な理由は すでに述べたように 基本的には経営上の費用削減と雇用調整のリスクを軽減するためである しかし その他にも様々な理由が考えられる たとえば 業務経験や知識のある労働者を雇いたい とりわけ定年退職後の高齢者雇用についてはこの傾向が強いであろう 中小企業の中には新卒者の市場で新卒を正社員として採用することが難しいので非正規でつないでいくという企業もあろう 調査では非正規労働者を採用する理由は以下のとおりである 人件費が割安 というのが 32.9% で最も多い回答であるが 経験 知識 技能のある人を採用したい も 20.7% であり 積極的に外部の人材を採用するようにも行動している その他には 1 日の忙しい時間帯に対処 が 18.4% 定年社員の再雇 用 が 18.2% 一時的な繁忙に対処 が 16.6% 簡単な仕事内容のため が 15.0% 仕事量が減ったときに雇用調整が容易 が 10.8% 人を集めやすい が 7.1% 退職した女性正社員の再雇用 が 5.3% その他 が 4.2% そして 学卒等の一般の正社員の採用 確保が困難 が 3.9% である 2 非正規労働者の増減 : 最近と将来 最近 企業は非正規労働者を増やしたのか それとも減らしたのか そして今後は増やすのか 減らすのか 一般的な傾向をみてみよう そのために次のようなポイントを計算して比較することとする ポイントの計算は以下の通り すなわち 調査票の 増加 増減なし 減少 に対して恣意的であるが次のようなポイントを与える ポイント= 5 増加 の割合(%)+3 増減なし の割合(%) +1 減少 の割合(%) したがって ポイントはすべての企業が 増加 なら 5ポイント すべてが 減少 ならポイントは1である そして 増加 と 減少 が同じであれば ポイントは3 点になる さらに変化の様子を直感的に理解できるようにポイントの3 点を基準にしてそれぞれのポイント数から3 点を引いた値で増減をみてみる こうすると マイナスであれば 減少 という企業が 増加 という企業よりも多く プラスの場合には逆に 増加 させている企業が多いことを意味している 1 最近 非正規労働者を増やしたか 減らしたか ( 1) 調査結果全体では 増加 15.4% 減少 17.9% そして 増減なし 66.7% である これをポイントの点数にすると 2.95 点であり ここから基準の 3 点を差し引くと全体の点数は -0.05 であるから 減少させている企業の方が少し多いことを示している 13

(2) 次に これを従業員規模別にみると 100 人以上の企業と 100 人以下の企業とでは傾向が大きく違っている 総じて言えば 規模の大きい企業では減らしているとする企業の割合が多く 規模の小さな企業では増やすか 減らすとしても 減らすと回答する企業は非常に少なくなる傾向にある (4) 総じて言えば この地域の企業は非正規雇用を現状の水準で維持しようとしているようであり 正社員と非正規労働者の割合は安定的な水準に達したのではないか ちなみに 全国の調査 労働力調査特別集計 をみると 正規職員 従業員 の比率は男女ともに長期的に減少傾向にあったが 最近数年間の動きをみると この比率が下げ止まっているようである (3) 業種別にみると 増加傾向が顕著な業種は 鉱業は調査企業数が3 社と極端に少ないので考察対象からはずして見てみると 医療 福祉 建設業 不動産業などである 逆に 減少させている業種は金融 保険 飲食店 宿泊業 製造業などである この地域で就業する人の多い業種で減少する傾向が見られる 資料総務省 労働力調査特別集計 注 1: データは季節調整していない 注 2:1988 年から 1998 年までは 2 月のみの調査 1999 年から 2001 年は2 月と8 月の調査 2002 年からは毎月で四半期毎の平均値である ここで は 1999 年から 2001 年までは 2 月だけ 2002 年からは 1 3 月平均のデータである 2 今後非正規労働者を増やすのか 減らすのか 今後非正規労働者を増やす予定はあるのかどうかをみてみる 調査項目には 増加 増減なし 減少 に加えて 未定 がある 未定 は全体では 44.5% である 将来のことであること 非正規労働者の雇用は現場に近いところで採否の決定がなされること 非正規労働者を採用する理由のひとつが仕事の繁閑に会わせて行われることなどを考えれば 未定 が多くなるのは当然である そこで 前の項で行ったポイント計算と同じように 集計結果をポイントに変換して一般的な傾向を知りたい そこでポイント計算は 未定 を除いて計算することにする ポイント= 5 増加 の割合(%)+3 増減なし の割合(%) +1 減少 の割合(%) とする 以下 ポイント3 点を基準にして計算した結果を見てみる 14

(1) 全体ではプラス 0.04 であり 今後非正規労働者 を増やすとする企業が少し多くなっているが 点数は 非常に小さく 増加 と 減少 の差はほとんどない (3) 業種別にみると 減らすとする企業の割合の方が多いのは建設業 製造業 電機 ガス 熱供給 水道業 金融 保険業 情報通信業であり 増やすとする企業が多いのは運輸業 卸売 小売業 飲食店 宿泊業 医療 福祉 教育 学習支援業 サービス業である (2) 企業規模別にみると 500 ~ 999 人と 1000 人以上 10 ~ 29 人の規模の企業では減らす企業の割合が多く その他の規模の企業では増やすとする企業の割合が多くなっている 3 雇用管理上の問題点 雇用管理上の問題点として最も多くの企業があげたのは 帰属意識 モチベーション (27.6%) である 次に多いのが 通常の労働者と比較しての処遇 の 17.5% 技能の継承 の 15.9% である その後に続くのが 雇用期間の更新 の 10.3% 雇用期間 10.0% 職場の人間関係 9.7% 評価方法 8.9% である 15

第 4 章 聞き取り調査結果と提言 : 正社員登用制度 この章では はじめに正社員への登用制度に関す るアンケートの結果からこの制度がどの程度普及して いるのかを報告し 次に個別企業への聞き取り調査お よび平成 21 年度と 22 年度に行われた 雇用安定 活 用セミナー での事例報告の結果を整理する 最後に この制度の普及に関する提言を試みる 1 正社員登用制度 正社員への登用制度は不本意に非正規労働者になっている者にとっては願ってもない制度である この制度が広く普及すれば 子育てや介護でキャリアを中断することなく働き方を自由に選択できるし 卒業時に正社員への就職に失敗し非正規労働者にならざるを得なかった若者が将来に希望をもちながらキャリアを形成することもできる そこでこの節ではこの制度がどの程度普及しているのか アンケートの結果を見てみることにしよう (1) この制度は回答のあった 2,802 社のうち正社員への登用制度を採用している企業は 1,170 社 割合にして 41.8% である 残る 58.2% は採用していない 採用率 41.8% という数字を高いとみるか 低いとみるかは意見の分かれるところであろう 正規と非正規の間を自由に移動しながら人生のライフステージに応じて働き方を選択できるような社会にしたいという観点からすれば非常に厳しい数字であろう しかし 一歩引いて 理想からはかけ離れているとしても世情で非正規労働者から正社員への移行は非常に難しいと言われるにしては意外に高い数字と解釈してもよいのではないか いずれに解釈するにせよ この制度をさらに普及させる必要がある (2) 企業規模別にこの制度の採用率をみると 1 ~ 9 人の企業で 27.8% 10 ~ 29 人で 42.1% 30 ~ 99 人 で 49.6% 100 ~ 299 人で 56.7% と規模が増加する につれて採用率は増加する そして 300 人を超えると 300 ~ 499 人が 67.1% 500 ~ 999 人が 61.8% そし て 1,000 人以上が 62.8% であり いずれも 60% 以上 の企業が採用している (3) 正社員への登用制度を採用している企業を産業 別にみると 医療 福祉が 61.5% 複合サービス事 業が 56.0% 金融 保険業が 55.6% 教育 学習支 援業が 47.8% 情報通信業が 45.6% 製造業が 44.6 % サービス業 ( 他に分類されないもの ) が 44.2% 建設業が 39.3% 運輸業が 38.5% 電気 ガス 熱 供給 水道業が 35.7% 卸売 小売業が 34.8% 飲 食店 宿泊業が 34.5% そして不動産業が 24.7% である 採用率は医療 福祉の 61.5% から不動産業 の 24.7% まで業種によって大きく異なっている ち なみに最近 産業別の非正規労働者を 増加させた 企業の割合との相関係数は 0.569 であり 非正規労 働者に積極的な産業ほどこの制度を積極的に導入す る傾向があるといえよう ( 図 22 参照 ) (4) 総じて言えば 正社員への登用制度を採用して いる企業の割合は現在約 4 割である 企業規模でいえ 16

ば 従業員規模が大きくなるほどこの制度を導入する 企業が増加する 産業別には 61.5% が採用している 医療 福祉から 24.7% の不動産業まで業種によって 大きな格差があるが 非正規労働者を現在増やして いる企業ほどこの制度を導入する企業の割合も増加 する傾向がある 2 正社員への登用制度の活用に向けて この節では個別企業への聞き取り調査の結果と 雇用安定 活用セミナー での事例報告に基づきながら正社員への登用制度の運用の実態とこの制度がもっている課題を整理しておこう 1 正社員への登用制度とキャリア形成 正社員への登用制度において非正規労働者から正社員に移行するルートにはいくつかあることが聞き取り調査を通じて明らかになった 1 契約社員 ( なお 企業によっては準社員という名称を使うところもある ) から正社員へ 2パートタイムから契約社員を経て正社員へ 3アルバイトから正社員へ 4 派遣社員から正社員へ という4つのコースが一般的に行われている どのコースをとるかは企業によって異なるが アルバイトから正社員への移行はコンビニ業界で行われているようである 介護の事業所では契約社員として働く人が多く 企業としても厳しい人材難から積極的に教育や訓練を行って正社員への移行を進めている 一部の企業では派遣が長期化するにつれて 派遣労働法に規定されているからということではなくて 派遣労働者が継続して勤続することによって仕事上のノウハウが蓄積されて短期間での労働者の交代は著しく生産効率を引き下げるので正社員への移行を積極的に進めるというところもある しかし 最も一般的なコースは2の契約社員を経て正社員へというコースである パートタ イムから契約社員への移行は 労働時間が正社員並みになるので短時間労働を希望する人は契約社員になりたがらない 2 正社員への登用制度の目的 調査結果で見たように正社員への登用制度をもつ企業は約 4 割ある なぜこのような登用制度を設けるのか その理由は次のようである 1 非正規労働者のモチベーションを高めたいことである 非正規労働者の管理上の問題でこのモチベーションの向上に悩む企業が多いことはすでに見たとおりであり 正社員への登用制度はモチベーションを高めるひとつの有効な手段である 2 長く勤めて欲しいからという企業も少なくない 特に 介護や医療の世界あるいは運送業でも資格を取得し経験を重ねた社員は貴重な戦力として確保したいという希望が強い 3 人材の発掘のためという企業もある 新規学卒や中途採用では期待通りの人材を確保できないことがあるが 非正規労働者として働いている人の中から選抜することによって採用の際の不確実性を緩和できる また 人材確保ということから契約社員あるいは準社員を WEB 求人 紹介予定派遣 社会人登用など幅広い媒体を通じて採用することができるという点にメリットを見る企業もある 4 正社員と契約社員あるいは準社員は仕事内容が同じで処遇だけが異なるということもあるが これは従業 17

員のモチベーションを低下させるので 正社員と契約社員の業務区分を明確にしてモチベーションの低下を防止する企業もある 結論として言えば 非正規労働者を有効に活用するためには非正規労働者のなかでも仕事のノウハウを蓄積した人を人材として確保し そのモチベーションをあげるために正社員への登用制度は有効な手段とみなす企業がかなりあるということである 3 正社員への登用の条件をみてみる 最も一般的に行われるのは面談 筆記試験 上司の推薦状である その他には勤務状況や人柄を重視する企業もある また 本人の希望ややる気を重視する企業もある その他の条件としては勤務期間が1 年とか 3 年という企業もある 企業の採用の姿勢を表すものとしては次のようなものがある 1 毎年一定数を採用する 2パートタイムの 20 ~ 30% を登用する 3 勤務に必要な資格 ( 介護士 金融関連の資格など ) を取得した時点で受験資格を与えるなどがある また この制度を正規の制度として明確に文書化している企業もあれば 慣行としてこれまでやってきたという企業もある 総じて言えば 介護や運転といった現場の仕事では資格ややる気や本人の希望を重視する傾向があり 事務職では筆記試験 面談 上司の推薦を重視する傾向がある 4 正社員への登用の条件 正社員への登用制度の課題 正社員への登用制度を活用するとしてもそこにはいくつかの課題が指摘されている 社員の希望として 1 正社員にはなりたいが 長時間労働はできないので 移行できない人がいる 2パートタイムから契約社員そして正社員へと資格が上昇するにつれて責任が重くなるので それを嫌う人がいる 3 103 万円の範囲内で働きたい人がいる 4 土日勤務は避けたい人がいる また 企業側からの課題として 5 正社員化すると給与を上げなければならず 社会保険料や退職金積立費用なども発生して人件費が上昇する 6 正社員への登用試験に失敗した人のモチベーションが著しく低下して 中には退職していく人もいる 5 非正規労働者の雇用安定のための提言 多くの企業は非正規労働者 とりわけパートタイム労働者や契約社員の仕事への意欲を高めるために昇給や福利厚生などの制度を導入している 教育訓練制度や人事評価システムを導入する企業は半数程度であるが これらの制度は非正規労働者に長期の勤続とより高い能力を期待するためである 長期パート とか 基幹パート と言われる非正規労働者のなかでも定型的な単純作業者ではなく判断業務を伴う非定型の業務に携わる非正規労働者がグループとしてひとつの層を形成している この人たちの処遇をどうするのか これが非正規労働者の新たな活用の新たな課題となっている 課題解決のひとつの方法が正社員への登用制度である これは労働者にとっては地位の向上であり 企業にとっては優秀な人材確保の方法であると言う意味において労使ともにメリットがある したがって 今後この制度を活用して人材育成をしていくことは企業の成長と安定にも貢献することになる しかし この制度の運用にはいくつか課題がある それに対する完全な解決策はないが 今後運用のノウハウを蓄積することで企業内の雇用管理に伸縮性を加えることができる この制度の運用に際して 多くの企業は契約社員とか準社員などの正社員ではないが非正規労働者とも一線を画する地位の社員制度を作っている 一般には 1 業務の範囲は正社員ほど広くない 2 給与は正社員よりも低く設定しているが パートタイム労働者よりは高い 3 所定内労働時間は正社員と同じであるが 基本的には超過勤務はない などの特徴をもっている 企業内の雇用システムとの関係で言えば 賃金水準と雇用期間という2つの基準を基礎に区別するとすれば 参考図に示すように賃金水準は高く 雇用期間も長い正規雇用と賃金水準は低く雇用期間も短い非正規雇用を2つの極とすれば 前者は図の右上に位置し 非正規労働者は左下に位置する それに対してこれら2つの極の中間にもうひとつ新しい就業形態としての契約社員や準社員制度を作り 非正 18

規労働者から正社員への移行の間の飛び石として位置づける パートタイム労働者から正社員への登用は勤務時間や勤務地などで労使の希望の不一致のために移行のハードルが高くなっていたが 新しい就業形態を中間の踏み台にすることによってこのハードルを低くすることができる この新しい就業形態は新たに外部労働市場から直接採用してもよいし 既存のパートタイム労働者の中から一定の条件のもとに移行させてもよい そして新しい就業形態で働く人には正社員への登用の条件を明示して移動の経路を透明にする 度のなかに整備し 少なくとも一人の労働者が経済的に自立できるような処遇をする必要がある しかし こうした相場作りに関しては行政による情報の収集と普及活動が求められる 企業内の就業構造を多様化すれば 人事管理が複雑になる そのなかでも深刻になるのは非正規雇用と新しい就業形態と正規雇用という3 者のバランスをどのようにとるのかという問題である 企業とすれば 非正規労働者をすべて正社員にするという訳にはいかないだろう 非正規労働者のより多くの部分が正社員への移行を希望するとき このバランスはどのように維持すればよいであろうか 完全な正解はないであろうが ひとつの方法としていくつかの企業で行われている定員方式であろう すなわち あらかじめ正社員の枠を決めて欠員に応じて登用するというやり方である 最後に 新しい就業形態として契約社員や準社員の制度を採用する企業は少なくないが その処遇は企業によって大きな違いがある ある企業ではほとんど正社員に近い処遇をしているし 他の企業では時間給制度でパートタイム労働者に近い処遇をしている 新しい就業形態が社会的に認知され 安心して働ける就業形態として社会に浸透していくためには 新しい就業形態の処遇の社会的な相場を形成することである すなわち どの会社の契約社員になっても最低限ここまでは保証されているというように処遇を社会常識化させる必要がある 企業は新しい就業形態を人事管理制 19