腎機能を有効かつ安全な薬物療法に活かす

Similar documents
スライド タイトルなし

スライド タイトルなし

BSA(m 2 )= 体重 (kg) 身長 (cm) =1.27m 2 となり 173.6mL/min/1.73m 2 を 1.27m 2 である患者個人の腎機能に換算 ( で補正を外すと ) すると 127.4mL/min になりますが これでも実測 CCr

スライド タイトルなし

スライド タイトルなし

を用いる必要があります Du Bois の式を用いて体表面積を計算すると 3) BSA(m 2 )= 体重 (kg) 身長 (cm) =1.27m 2 となり 173.6mL/min/1.73m 2 を 1.27m 2 である患者個人の腎機能に換算 ( で補正

院外処方箋の検査値活用法につ??

腎機能を正確に見積もるコツと理論 ~ 投与設計のすべてがここから始まる ~ 阿蘇の雲海 熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター 臨床薬理分野平田純生

<4D F736F F D E B40945C82F090B382B582AD955D89BF82B782E982BD82DF82CC313082CC935391A58DC C5>

はじめに イヌリンクリアランス (GFR) で用いるイヌリンは生体内で代謝されず タンパクと結合せず 完全に糸球体濾過され 尿細管で全く再吸収も分泌もされないため糸球体濾過量の gold standard になります チオ硫酸 Na や造影剤のイオヘキソールなどでもほぼ GFR に近い値が得られます

福岡大学薬学部薬学疾患管理学教授

腎機能を正しく評価するための 10 の鉄則改訂 5 版 熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター 臨床薬理学分野平田純生 標準化 egfr(ml/min/1.73m 2 ) は CKD 重症度分類に使うためのものであり 薬物投与設計には使わない 薬物投与設

egfr(ml/min/1.73 m2 ) が標準体形に補正してある意義は何か? 小柄な体格の方は体格なりの小さな GFR で十分なのに 体表面積未補正値を用いると腎機能を過小評価して分類されてしまうことを防ぐためです かつては日本人の体表面積は 1.49m 2 が用いられていましたが 国際的に 1

総論 2 腎不全患者に特徴的な薬物動態の変化 薬効 薬物名 商品名 尿中排泄率 (%) 副作用 リバビリン レベトール 50 骨髄抑制, 意識障害 禁忌 アマンタジン シンメトレル 90 不穏, せん妄, 幻視 禁忌 抗ウイルス薬 オセルタミビル タミフル 70( 活性代謝物 99 悪心, 嘔吐,

本文1-5.indd

PowerPoint プレゼンテーション

第 Ⅰ 部 総論 11 第 Ⅰ 部 総論

第43号(2013.5)

(Microsoft PowerPoint - ASC-WTQ[\223\307\202\335\216\346\202\350\220\352\227p] [\214\335\212\267\203\202\201[\203h])

メディカルスタッフのための腎臓病学2版

Microsoft PowerPoint 中津2テキスト

(Microsoft PowerPoint -

フレイルのみかた

糖尿病性腎症に合併したネフローゼ症候群の治療

1治療 かっていたか, 予想される基礎値よりも 1.5 倍以上の増加があった場合,3 尿量が 6 時間にわたって 0.5 ml/kg 体重 / 時未満に減少した場合のいずれかを満たすと,AKI と診断される. KDIGO 分類の重症度分類は,と類似し 3 ステージに分けられている ( 1). ステー

Microsoft Word - cjs63B9_ docx

第1 総 括 的 事 項

障害程度等級表 級別じん臓機能障害 1 級 じん臓の機能の障害により自己の身辺の日常生活活動が極度に制限されるもの 2 級 3 級 じん臓の機能の障害により家庭内での日常生活活動が著しく制限されるもの 4 級 じん臓の機能の障害により社会での日常生活活動が著しく制限されるもの

小児におけるCKD活動

2006 PKDFCJ

<4D F736F F D E39208D8190EC C814096F295A889F090CD835C D C A975E90DD8C7695D D815B F B A2E646F6378>

生理学 1章 生理学の基礎 1-1. 細胞の主要な構成成分はどれか 1 タンパク質 2 ビタミン 3 無機塩類 4 ATP 第5回 按マ指 (1279) 1-2. 細胞膜の構成成分はどれか 1 無機りん酸 2 リボ核酸 3 りん脂質 4 乳酸 第6回 鍼灸 (1734) E L 1-3. 細胞膜につ

解剖・栄養生理学

デベルザ錠20mg 適正使用のお願い

添付文書の薬物動態情報 ~基本となる3つの薬物動態パラメータを理解する~

14栄養・食事アセスメント(2)

使用上の注意 1. 慎重投与 ( 次の患者には慎重に投与すること ) 1 2X X 重要な基本的注意 1TNF 2TNF TNF 3 X - CT X 4TNFB HBsHBcHBs B B B B 5 6TNF 7 8dsDNA d

スライド 1

TDMを活用した抗菌薬療法

PowerPoint プレゼンテーション

SpO2と血液ガス

H29_第40集_大和証券_研究業績_C本文_p indd

心房細動1章[ ].indd

腎薬ニュース第 5 号 (2007 年 6 月 ;2012 年 1 月加筆修正 ) 熊本大学薬学部臨床薬理学分野平田純生 添付文書どおり腎機能に基づいた投与量にしても起こるアシクロビル中毒の原因は? 1. アシクロビル中毒の症状は? 慢性腎臓病 (CKD) 患者に頻発するアシクロビル バラシクロビル

(別紙様式1)

検査項目情報 トータルHCG-β ( インタクトHCG+ フリー HCG-βサブユニット ) ( 緊急検査室 ) chorionic gonadotropin 連絡先 : 基本情報 ( 標準コード (JLAC10) ) 基本情報 ( 診療報酬 ) 標準コード (JLAC10)

問 85 慢性腎不全による透析導入基準について正しいのは次のうちどれか 1 透析導入基準の点数が 60 点以上になれば透析導入の判断となる 2 腎機能評価ではクレアチニンが評価項目である 3 血管合併症があれば基準点に加算される 4 視力障害は透析導入基準の評価には含まれない 5 日常生活の障害に関

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

2017 年度茨城キリスト教大学入学試験問題 生物基礎 (A 日程 ) ( 解答は解答用紙に記入すること ) Ⅰ ヒトの肝臓とその働きに関する記述である 以下の設問に答えなさい 肝臓は ( ア ) という構造単位が集まってできている器官である 肝臓に入る血管には, 酸素を 運ぶ肝動脈と栄養素を運ぶ

プラザキサ服用上の注意 1. プラザキサは 1 日 2 回内服を守る 自分の判断で服用を中止し ないこと 2. 飲み忘れた場合は 同日中に出来るだけ早く1 回量を服用する 次の服用までに 6 時間以上あけること 3. 服用し忘れた場合でも 2 回量を一度に服用しないこと 4. 鼻血 歯肉出血 皮下出

減量・コース投与期間短縮の基準

Microsoft PowerPoint - 薬物療法専門薬剤師制度_症例サマリー例_HP掲載用.pptx

輸液製剤

2 CKD 1. 不適当な食事 2. 感染症 : 尿路感染, 肺炎, 敗血症など 3. 急激な循環状態の変動 : 高血圧, 低血圧 4. 水 電解質異常 : 脱水, 溢水, アシドーシス 5. 尿路疾患 : 尿路結石 狭窄 感染 6. 腎毒性薬剤 : 造影剤, 抗生物質,NSAIDs 7. 手術およ

者における XO 阻害薬の効果に影響すると予測される 以上の議論を背景として 本研究では CKD にともなう FX および尿酸の薬物体内動態 ( PK ) 変化と高尿酸血症病態への影響を統合的に解析できる PK- 薬力学 (PD) モデルを構築し その妥当性を腎機能正常者および CKD 患者で報告さ

<4D F736F F D E39208D8190EC C814096F295A889F090CD835C D C A975E90DD8C7695D FE18A D816A2E646F6378>

P001~017 1-1.indd


糖尿病経口薬 QOL 研究会研究 1 症例報告書 新規 2 型糖尿病患者に対する経口糖尿病薬クラス別の治療効果と QOL の相関についての臨床試験 施設名医師氏名割付群記入年月日 症例登録番号 / 被験者識別コード / 1/12

Microsoft Word - 茬çfl�宛玺0618第1å‘·_æŠ¥èŒ¬é•£å®łã†¦é•ıç�¥ï¼‹ã…¡ã…‹ã…łã…«ã…�ㅳ;.doc

学術委員会学術第 1 小委員会 慢性腎臓病(CKD) 患者への適正な薬物療法に関する調査 研究 ~ 腎機能低下患者への投与に関係する添付文書記載の問題点の調査 ~ 委員長東京薬科大学薬学部医療実務薬学教室竹内裕紀 Hironori TAKEUCHI 委員白鷺病院薬剤科和泉智 Satoshi IZUM

2018 年 5 に 総論編 が発出

検査項目情報 6475 ヒト TARC 一次サンプル採取マニュアル 5. 免疫学的検査 >> 5J. サイトカイン >> 5J228. ヒトTARC Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital Ver.6 thymus a

現況解析2 [081027].indd

虎ノ門医学セミナー

3 病床数 施設 ~19 床 床 床以上 284 (3 施設で未回答 ) 4 放射線専門医数 ( 診断 治療を含む ) 施設 ~5 人 226 6~10 人 人

3 章 透析まで行かせないためにどうする 2 CKD と高尿酸血症 尿酸をどうコントロールする 高尿酸血症の分類を以下に示します 平和伸仁 まとめ & ス アドバイ 尿酸産生過剰型 尿酸排泄低下型 上記 2 つの混合型 腎機能の低下とともに尿酸排泄が低下して高尿酸血症の頻度は高まる 腎機能が低下する

資 料 臨床現場におけるクレアチニンとシスタチン C から算 出した推算 GFR の乖離 古川 通山 聡子 1) 薫 1) 河口 勝憲 1) 佐々木 環 2) 1) 川崎医科大学附属病院中央検査部 ) 川崎医科大学附属病院腎臓内科 要 岡崎希美恵 1) 辻岡 貴之 1) 岡山県倉

Microsoft Word - Ⅰ-4.用法用量(2013)

PowerPoint プレゼンテーション

「  (会の名称)     」のご案内

(2) 健康成人の血漿中濃度 ( 反復経口投与 ) 9) 健康成人男子にスイニー 200mgを1 日 2 回 ( 朝夕食直前 ) 7 日間反復経口投与したとき 血漿中アナグリプチン濃度は投与 2 日目には定常状態に達した 投与 7 日目における C max 及びAUC 0-72hの累積係数はそれぞれ

TDM研究 Vol.26 No.2

透析看護の基本知識項目チェック確認確認終了 腎不全の病態と治療方法腎不全腎臓の構造と働き急性腎不全と慢性腎不全の病態腎不全の原疾患の病態慢性腎不全の病期と治療方法血液透析の特色腹膜透析の特色腎不全の特色 透析療法の仕組み血液透析の原理ダイアライザーの種類 適応 選択透析液供給装置の機能透析液の組成抗

Amino Acid Analysys_v2.pptx

負荷試験 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 検体ラベル ( 単項目オーダー時 )

ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

日本医薬品安全性学会 COI 開示 筆頭発表者 : 加藤祐太 演題発表に関連し 開示すべき COI 関連の企業などはありません

尿試験紙を用いたアルブミン・クレアチニン検査の有用性

2017 年 9 月 画像診断部 中央放射線科 造影剤投与マニュアル ver 2.0 本マニュアルは ESUR 造影剤ガイドライン version 9.0(ESUR: 欧州泌尿生殖器放射線学会 ) などを参照し 前マニュアルを改訂して作成した ( 前マニュアル作成 2014 年 3 月 今回の改訂

15 検査 尿検査 画像診断などの腎障害マーカーの異常が3ヶ月以上持続する状態を指すこととしている その病期分類方法は成人と小児では若干異なり 成人では糖尿病性腎障害が多い事からこれによる CKD 患者ではアルブミン尿を用い その他の疾患では蛋白尿を用いてそのリスク分類をしている これに対し小児では

PowerPoint プレゼンテーション

検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号 添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料 採取量 測定材料 F 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 青 細 ) 血液 3 ml 血清 H 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( ピンク ) 血液 6 ml 血清 I 凝固促進剤 + 血清分離剤 ( 茶色 )

基準範囲の考え方 ph 7.35~ mmHg pco2 mmhg po2 mmhg HCO3 mmol/l BE mmol/l 35~45 85~105 60> 呼吸不全 21~28-2~+3 so2(%) 95~99% 静脈 pco2=45mmhg po2=40mmhg 動脈 pco

④資料2ー2

検査項目情報 1174 一次サンプル採取マニュアル 4. 内分泌学的検査 >> 4F. 性腺 胎盤ホルモンおよび結合蛋白 >> 4F090.HCGβ サブユニット (β-hcg) ( 遊離 ) HCGβ サブユニット (β-hcg) ( 遊離 ) Department of Clinical Lab

別紙様式 (Ⅱ)-1 添付ファイル用 商品名 : イチョウ葉脳内 α( アルファ ) 安全性評価シート 食経験の評価 1 喫食実績による食経験の評価 ( 喫食実績が あり の場合 : 実績に基づく安全性の評価を記載 ) 弊社では当該製品 イチョウ葉脳内 α( アルファ ) と同一処方の製品を 200

葉酸とビタミンQ&A_201607改訂_ indd

市民公開講座(2011/04/16)

検査項目情報 P-ANCA Department of Clinical Laboratory, Kyoto University Hospital 一次サンプル採取マニュアル 免疫学的検査 >> 5G. 自己免疫関連検査 >> 5G552.P-ANCA Ver.7 perinucl

表 2 解析対象患者の背景因子 ( 解析対象因子 その 1) 透析時間 ( 時間 / 回 ) < 小計 記載なし 合計 患者数 ( 人 ) 14,161 13, ,219 9,977 9,057 1, , ,6

Microsoft Word - JAID_JSC 2014 正誤表_ 原稿

STEP 1 検査値を使いこなすために 臨床検査の基礎知識 検査の目的は大きく 2 つ 基準範囲とは 95% ( 図 1) 図 1 基準範囲の考え方 2

カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

「血液製剤の使用指針《(改定版)

CKD 平成 25 年度厚生労働科学研究費補助金による難治性疾患克服研究事業の成果として, 小児慢性腎臓病 ( 小児 CKD) 診断時の腎機能評価の手引き が完成したことをこころからお慶び申し上げます.CKD という概念ははじめ欧米からわが国の成人の腎臓学に持ち込まれた概念で, 日本腎臓学会にて深化

佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

添付文書がちゃんと読める 薬物動態学 著 山村重雄竹平理恵子城西国際大学薬学部臨床統計学

1 ムを知ることは, 治療介入時の注意点を知る上で重要である. つまり, 臓器の組織還流を維持するために腎での水と Na 保持作用は重要な代償機構である. 利尿薬投与によって体液量を減少させれば, 浮腫は減少するが, 同時に組織還流も減少するため, その程度によっては臓器障害をきたしうることをよく理

Ⅰ. 改訂内容 ( 部変更 ) ペルサンチン 錠 12.5 改 訂 後 改 訂 前 (1) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本剤の作用が増強され, 副作用が発現するおそれがあるので, 併用しないこと ( 過量投与 の項参照) 本剤投与中の患者に本薬の注射剤を追加投与した場合, 本

Transcription:

熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター 臨床薬理分野平田純生 SAJP.SA.18.03.0746

血中濃度 腎機能と腎排泄型薬物の血中濃度の関係 5 4 3 2 尿中排泄率 80~88% の場合尿中排泄率 50~56% の場合 1 0 GFR ml/min) 100 60-90 30-60 10-30 正常腎機能 軽度腎障害 中等度腎障害 重度腎障害 10> 末期腎障害

血中濃度 腎機能と腎排泄型薬物の血中濃度の関係 5 4 3 2 尿中排泄率 80~88% の場合尿中排泄率 50~56% の場合 1 0 GFR ml/min) 尿中排泄率 80~90% と高い薬物では軽度 ~ 中等度腎障害でも 100 1/2~1/3 60-90 に減量する必要があるが 尿中 30-60 10-30 10> 排泄率 50~60% の薬物では中等度 ~ 軽度腎障害でも厳密な減量は必要ない 正常腎機能 軽度腎障害 中等度腎障害 重度腎障害 末期腎障害

CKD の重症度分類 (CKD 診療ガイド 2012)

CKD の重症度分類 (CKD 診療ガイド 2012) egfr(ml/min/1.73m 2 ) は CKD の重症度分類には有用だが 薬物投与設計には使えない

egfr の弱点は筋肉量 の少ない高齢者の腎機能 を過大評価すること

小柄な高齢者には egfr は要注意 有料老人ホームに長期入居の男性 年齢 90 歳 体重 37.7kg 身長 150cm 血清 Cr 0.34mg/dL BUN 15.1mg/dL 血清アルブミン 1.7g/dL の MRSA 敗血症患者に対し バンコマイシンの投与設計を行った場合 1 日本人向け GFR 推算式によると egfr (ml/min/1.73m 2 )=194 Cr -1.094 Age -0.287 =173.6mL/min/1.73m 2 のような高値が算出されるが 上記 egfr の値の単位は ml/min/1.73m 2 であり 体表面積補正されているため Du Bois の式を用いて体表面積補正を外すと BSA(m 2 )= 体重 (kg) 0.425 身長 (cm) 0.725 0.007184=1.27m 2 となり 173.6mL/min/1.73m 2 を 1.27m 2 で割ると 127.4mL/min となり バンコマイシンの目標トラフ濃度を 15μg/mL に設定しても 実測血清バンコマイシンのトラフ濃度は 28μg/mL と高値になり バンコマイシンによる腎障害により 血清 Cr 値が 7.6mg/dL に上昇し透析導入が必要となった

バンコマイシン腎症の悪循環 高齢者 最低濃度を 10μg/mL 未満を目標に 長期臥床 フレイル血清 Cr 低下 免疫能低下 MRSA 低感受性株の増加 院内感染 最低濃度を 10~20μg/mL を目標に 腎機能の過大評価 ハ ンコマイシンの投与量増加 介入可能 腎障害が増加? 腎機能の低下 VCM 濃度がさらに上昇

バンコマイシン腎症の悪循環 高齢者 最低濃度を 10μg/mL 未満を目標に 長期臥床 フレイル血清 Cr 低下 免疫能低下 MRSA 低感受性株の増加 院内感染 最低濃度を 10~20μg/mL を目標に 腎機能の過大評価 ハ ンコマイシンの投与量増加 腎障害が増加? 介入可能透析導入治療断念腎機能の低下 VCM 濃度がさらに上昇

小柄な高齢者は egfr が高く推算されることがある MRSA 感染症に罹患しやすい症例は長期臥床の筋肉量が少ない高齢者が多い バンコマイシンの投与設計ではこのような症例では過量投与になる危険性がある

egfr および CCr 推算式の問題点 血清クレアチニン値 0.6mg/dL 未満の高齢者では egfr または推算 CCr が大きな値になりがちである もともと egfr または推算 CCr ともに高齢者や小児には適応しにくい式であり 腎機能がよくて血清 Cr 値が低いのか? 栄養状態が悪くて血清 Cr 値が低いのか? 上記の見極めは数値のみでは困難であり 症例ごとに対応していくしかない 血清 Cr 値が 0.6mg/dL 未満であり 明らかに筋肉量の減少した症例では血清 Cr 値 0.6 を代入して補正するとほとんどの場合 予測精度が向上するが 可能な限り実測 CCr 値 0.715 またはシスタチン C により egfr を算出して投与設計する

イヌリンクリアランス測定プロトコール 1% イヌリン投与開始 投与前 300mL/hr 100mL/hr 30 分 45 分 60 分 75 分 90 分 105 分 120 分 飲水 500mL 飲水 180mL 採血 1 完全排尿 採血 2 採尿 1 1) 投与前に飲水 500mL 2) 希釈したイヌリンを静脈内注入する 輸液ポンプを用いて 開始 30 分は 300mL/hr その後は 100mL/hr で 90 分間投与する 3)60 分蓄尿を目安に尿意があった時点で採尿 採尿時に採血 4) 蓄尿時間を正確に記録

CG 式作成に用いられた 249 名の年齢 腎機能と血清 Cr 値 年齢の範囲平均年齢 n 平均血清 Cr 濃度 (mg/dl) 平均実測 CCr (ml/min) 平均 Cr 排泄量 (mg/kg/24hr±sd) 18-29 24.6 22 0.99 114.9 23.6±5.0 30-39 34.6 21 1.08 98.6 20.4±5.1 40-49 46.2 28 1.17 95.4 19.2±5.8 50-59 54.4 66 SCr 1.49 は上がらずCCr 77.9 は低下 16.9±4.6 60-69 64.6 53 1.39 57.6 15.2±4.0 70-79 74.4 42 1.78 38.6 12.6±3.5 80-92 85.1 17 1.39 37.4 12.1±4.1 推算 CCr(mL/min)= (140 年齢 ) 体重 (kg) 0.85( 女性 ) 72 血清 Cr(mg/dL) Cockcroft DW, Gault MH: Nephron 16: 31-41, 1976 より引用

予備能力 フレイル (Frailty) は介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が含まれる ( 老年医学会のステートメント ) Aging ( 加齢 ) フレイル 疾患 ストレス No Frailty ( 健康 ) Frailty ( 虚弱 ) 健康寿命 要支援 要介護の危険が高い状態 生物学的寿命 Disability ( 身体機能障害 ) 要支援 要介護状態 看取り 出典 : 長寿医療研究センター病院レター第 49 号虚弱 ( フレイル ) の評価を診療の中に http://www.ncgg.go.jp/hospital/pdf/news/hospitalletter49.pdf

フレイルサイクル 加齢に伴う食欲不振 歯の喪失 食事量低下 慢性的な低栄養 サルコペニア 加齢に伴う筋肉量低下 疾患 エネルギー消費量低下 筋力低下 活動量低下 身体機能低下 Fried L.P et al: J Gerontology 56: M146-157, 2001 を改変

年齢とサルコペニアの割合 70 歳以下の高齢者の 13-24% 男性 女性 60 割 合 ( % ) 50 40 30 20 10 0 70 以下 70 ~ 74 75 ~ 80 80 以上 年齢 ( 歳 ) Baumgartner RN, et al. Am J Epidemiol 147 : 755-763, 1998

ハイリスク薬もあれば安全な薬もある CKD 患者のハイリスク薬抗がん薬 : シスプラチン カルボプラチン TS-1 など糖尿病治療薬 : インスリン SU 薬などオピオイド : モルヒネ トラマドールなど抗凝固薬 : ダビガトラン ワルファリンなど高カリウム血症の原因薬物 : 抗アルドステロン薬 ST 合剤と RAS 阻害薬の併用など 比較的安全性の高い薬ペニシリン セフェムなどの β ラクタム系抗菌薬は一般的に安全で 怖いのはペニシリンショック 間質性腎炎などのアレルギー性副作用

理想体重も体表面積も計算可能日本腎臓病薬物療法学会 http://jsnp.org/egfr/

腎機能って何?

腎臓は何をやっている? 腎臓とは 体液の恒常性維持 (Homeoatasis) を司る臓器である 水 塩分 電解質 栄養素などの摂取量 (in) は毎日 大きく変動しうるが 尿の組成を変化させることによって (out) 体液量, 体液の組成をほぼ一定で 狭い正常範囲に調節される 1 老廃物の排泄 2 体内水分を一定に保つ ( 抗利尿ホルモンによる水分保持 ) 3 体内電解質濃度を正常に保つ ( アルドステロンによる Na 保持 ) 4 血液を ph7.4( 弱アルカリ性 ) に保つために HCO 3- を産生 5 造血ホルモン ( エリスロポエチン ) の産生 6 ビタミン D の活性化 7 血圧の調節 ( 血圧低下時のレニン分泌による )

血漿中の主な物質の排泄量 再吸収率 クリアランス

血漿中の主な物質の排泄量 再吸収率 クリアランス 腎臓はグルコースなど必要なものはすべて 再吸収し 不要なものはすべて排泄している

腎臓は何をやっている? 血清中で濾過できるものはすべて濾過し必要なものはすべて再吸収する 不要な物質は尿細管で分泌もされる 不要な老廃物 過剰なミネラルを濃縮して排泄することによって生体の恒常性を保っている 腎不全になれば不要な老廃物 ミネラルの血中濃度が 上昇する 尿素 尿酸 クレアチニン インドキシル硫酸 カリウム リン 何を測定すれば腎臓の機能を正確に評価できる?

イヌリンクリアランス (Cin) は gold standard 体内で代謝されない :CLtotal= 腎 CL 蛋白と結合しない 糸球体で 100% 濾過 イヌリン 輸入細動脈 ボーマン嚢 個人内では産生速度が一定体内で代謝されない :CLtotal= 腎 CL 蛋白と結合しないため100% 糸球体濾過され生理活性がない生体内物質クレアチニン 輸出細動脈 糸球体 糸球体で 100% 濾過 尿細管で分泌されない ヘンレのループ 尿細管でわずかに分泌される 尿細管で再吸収されない Cin 正常値 100mL/min 集合管 尿細管で再吸収されない CCr 正常値 120~130 ml/min

心拍出量 5L/min 腎臓の機能 = 生体の恒常性維持 1 血液を無選択にすべて濾過 腎血流 1.0L/min ( 循環血の 20%) 3 不要なものをすべて排泄 尿量 1.5L/ 日 99% の水が尿細管で再吸収 2 必要なものをすべて再吸収 これが腎機能! 原尿産生速度 100mL/min (GFR)

腎機能とは? BUN 腎機能が低下すると上昇しますが ごちそうを食べても上がる 脱水になっても消化管出血でも上がるので正確に腎機能を評価できない 血清クレアチニン男性の正常値は0.6~1.2mg/dL 女性の正常値は 0.4~1.0mg/dL 筋肉量の影響を受けるが腎機能が低下すると確実に上昇する 糸球体濾過量 (GFR) 腎臓の最も重要な機能である単位時間当たりの血液を濾過する量で規定した腎機能評価の指標 腎臓は糸球体という場所でごみを濾過している 100mL/min が正常値のため 60mL/min 未満は CKD 成績で 60 点未満は不可と考えると覚えやすいし 評価しやすい BUN/Cr は 10 が正常 20 以上は脱水を疑う

血清 Cr による 腎機能の判断は もう終わりにしよう

腎機能に何が使われているか? 2012 年仙台市内の開業医向けアンケートでは 23 名の回答者のうち 腎機能の評価に何を使うかとの問いに対し 血清 Cr が 59% egfr36% が CCr は 5%( 腎専門医 ) 処方監査に利用している腎機能評価方法については, 血清 Cr,CG 式 CCr,eGFR の順に多い ( 和泉智, 他 : 日病薬誌第 46 巻 8 号 (989 1008)2010 年 ) ではこの患者の腎機能は正常ですか? 20 歳男性 180cm 70kg 血清 Cr 値 1.2mg/dL 80 歳女性 155cm 50kg 血清 Cr 値 1.2mg/dL

同じ血清 Cr 値 1.2mg/dL でも実際の腎機能は違う (Cockcroft & Gault 法による ) クレアチニンクリアランス (ml/min) 140 120 100 80 60 40 20 補正必要 20 歳男性 70kg では 97mL/min 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 血清 Cr 値 80 歳女性 50kg では 29mL/min

年齢別の CKD 頻度 頻度 (%) 50 40 30 20 10 男性 (n=240.594) GFR(ml/ 分 /1.73 m2 ) 50~59 40~49 <40 女性 (n=333.430) GFR(ml/ 分 /1.73 m2 ) 50~59 40~49 <40 0 20 ~ 29 30 ~ 39 40 ~ 49 50 ~ 59 60 ~ 69 70 ~ 79 80 ~ ( 歳 ) 年齢 日本腎臓学会編 : CKD 診療ガイド 2012 を改変

(%) 50 40 年齢別の CKD 頻度 高齢者を見たら腎機能低下を疑え! 腎機能が不明のまま腎排泄性 男性 (n=240.594) GFR(ml/ 分 /1.73m2) 50~59 40~49 <40 ハイリスク薬を投与してはならない! 頻度 30 20 10 女性 (n=333.430) GFR(ml/ 分 /1.73 m2 ) 50~59 40~49 <40 0 20 ~ 29 30 ~ 39 40 ~ 49 50 ~ 59 60 ~ 69 70 ~ 79 80 ~ ( 歳 ) 年齢 日本腎臓学会編 : CKD 診療ガイド 2012 を改変

血清クレアチニン値が 4mg/dL だから 透析導入はたいてい血清クレアチニン値 が 8mg/dL 以上になってから 私の血清クレアチニン値は 4mg だから 透析になる患者さんの半分の腎機能が 残っている

推算 CCr(mL/min) 血清 Cr 値 (mg/dl) 血清 Cr 値が急に上昇した? 80 60 40 20 推算 CCr 40 ヶ月 20 ヶ月 血清 Cr 値 血清 Cr 値 8mg/dL 以上 ( 透析導入ライン ) 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0 10 ヶ月 0 10 20 30 40 50 60 70 時間推移 ( 月 ) 170cm 体重 63kg 発症当時 50 歳の男性を想定し CG 法によって推算 CCr を算出した

血清 Cr 値を基に した腎機能推算式 の問題点

ダビガトランによる中毒性副作用症例 80 歳代女性で ワルファリンカリウムから切り替えを行い 1 日 220mg/ 日を投与 投与開始から 12 日目で血痰 鼻出血を認め 15 日目 ( 投与中止日 ) に血痰 呼吸困難を認め 救急外来に搬送され 翌日に死亡している 発症した副作用は 肺胞出血 呼吸不全 鼻出血 喀血 貧血 血尿 タール便 臨床検査値は 血清 Cr が投与開始 50 日前に 2.21mg/dL 投与中止日は 4.2mg/dL BUN は投与中止日に 53.8mg/dL ダビガトランの尿中排泄率は 85% と高く 70 歳以上の患者では 1 回 110mg を 1 日 2 回を考慮する 本症例は 38.9kg の体重だが 85 歳と仮定すると 血清 Cr2.21mg/dL であれば CCr は 11.4mL/min なので明らかに投与禁忌の症例 Cockcroft & Gault 法推算 CCr(mL/min)= (140 年齢 ) 体重 (kg) 0.85( 女性 ) 72 血清 Cr(mg/dL) 安全性速報 : プラザキサによる重篤な出血について. 2011 年 8 月, 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社より引用

ダビガトランの添付文書からわかること 尿中排泄率 : 85% Cockcroft & Gault 法による推算 CCr を用いて腎機能を評価する 推算 CCr(mL/min)= (140 年齢 ) 体重 (kg) 0.85( 女性 ) 72 血清 Cr(mg/dL) 透析患者を含む高度の腎障害 (CCr<30) では腎排泄性であり 出血の危険性が増大するため禁忌 常用量は 1 回 150mg を 1 日 2 回 ただし中等度の腎障害患者 ( CCr30-50 ) 70 歳以上の患者では 1 回 110mg を 1 日 2 回を考慮する 過量投与により出血死を起こすハイリスク薬!

体重と CCr GFR の関係 85 歳女性血清 Cr 値 1.0mg/dL 身長 150cm の場合 50 50 eccr (ml/min) 40 40 egfr (ml/min/1.73m 2 ) egfr (ml/min) 30 30 ダビガトラン禁忌領域 30 40 50 60 70 80 体重 (kg)

体重と CCr GFR の関係 85 歳女性血清 Cr 値 1.0mg/dL 身長 150cm の場合 eccr (ml/min) 50 40 50 40 egfr (ml/min/1.73m 2 ) egfr (ml/min) 30 30 ダビガトラン禁忌領域 本症例の体重が30~40kgであればCG 式によるCCrではダビガトランは禁忌のはずだが 30 40 50 60 50kg 70 以上であれば投与 80 可能になるが 出血のリスクも増大する 体重 (kg)

患者個々の腎機能を正確に予測するには? 標準化 egfr 推算式 : Cr 年齢性別 egfr (ml/min/1.73m 2 ) =194 Cr -1.094 Age -0.287 0.739 ( 女性 ) Cr 年齢性別体重 Cockcroft & Gault 法推算 CCr(mL/min)= (140 年齢 ) 体重 (kg) 0.85( 女性 ) 72 血清 Cr(mg/dL) ただし体表面積 (m 2 )= 体重 (kg) 0.425 身長 (cm) 0.725 0.007184 Du Bois D, Du Bois EF; Nutrition, 5(5), 303-313, 1989 未補正 GFR 推算式 (ml/min) Cr 年齢性別体重身長 標準化 egfr は CKD の診断指標であり薬物投与設計には使えない 推算 CCr は肥満患者で過大評価し 高齢者で過小評価する

血清 Cr 値を基に した腎機能推算式 の問題点

体重と CCr GFR の関係 85 歳女性血清 Cr 値 1.0mg/dL 身長 150cm の場合 eccr (ml/min) 50 40 50 40 egfr (ml/min/1.73m 2 ) egfr (ml/min) 30 30 ダビガトラン禁忌領域 30 40 50 60 70 80 体重 (kg) 標準化 egfrはckdの診断指標であり薬物投与設計には使えない 推算 CCrは肥満患者で過大評価する

年齢と eccr egfr の関係体重 40kg の女性血清 Cr 値 1.0mg/dL 身長 150cm の場合 CG 式による eccr (ml/min) 50 40 50 40 egfr (ml/min/1.73m 2 ) egfr (ml/min) 30 30 20 ダビガトラン禁忌領域 30 40 50 60 70 80 年齢 egfr はやせた高齢者の腎機能を過大評価する

クレアチンとクレアチニンの関係 NH 2 + C NH 2 HN C NH PO 3 クレアチン N ATP ADP N 主に骨格筋に貯蔵平均約 100g/body だが筋肉量に比例する H 3 C CH 2 O C クレアチン OH C K H 3 C CH 2 C O OH クレアチンリン酸 クレアチニン 1 日約 1g が尿中に排泄 H 2 O NH H 3 C C N 非可逆反応 少量一定の割合で生成 H N C H 2 C Cr は骨格筋由来で尿中に排泄されなかった最終代謝産物 ( 老廃物 ) の血清 Cr 値として測定し腎機能評価に用いている O 約 1% 合成

血清シスタチン C と 血清クレアチニン値の反応性 (mg/dl mg/l) 15 血清シスタチン C 濃度 (mg/l) 血清クレアチニン値 (mg/dl) 血清濃度 10 血清シスタチン C はクレアチニンよりも早期に上昇する 5 血清 Cr 値のブラインド領域 血清シスタチン C 値のブラインド領域 0 0 30 60 90 120 GFR (ml/ 分 /1.73m2)

シスタチン C の利点 シスタチン C は分子量 13,000Da の低分子蛋白で全身の有核細胞から常に同じ速度で産生される 血中のシスタチン C は腎糸球体から 100% 濾過され 近位尿細管で 99% 以上が再吸収されてアミノ酸に異化され シスタチン C として血中には戻らないため血漿濃度は GFR と相関する クレアチニンのように筋肉量や性差はなく年齢 食事 運動による影響も小さい 血清濃度は 0.5-1.0mg/L で約 10 倍で血清 Cr 値に近似し GFR のマーカーになり 尿中濃度は尿細管再吸収障害のマーカーになる 男性で 1mg/L 女性で 0.85mg/L 以上では異常 クレアチニンに比し腎機能低下の初期から上昇するため早期腎機能障害が診断できる 24 時間蓄尿も不要で血清 0.3mL で測定可能

Tanaka A, et al: J Pharmacol Sci 2007; 105: 1-5 より引用 血清クレアチニン値およびシスタチン C 濃度の加齢に伴う変化 *:p<0.01(tukey s test) (mg/dl) 血清クレアチニン値 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 (mg/l) 血清シスタチン C 値 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 * * 0 <65 (n=50) 65~80 (n=55) 80< (n=50) 0 <65 (n=50) 65~80 (n=55) 80< (n=50) 年齢 年齢

血清クレアチニン値およびシスタチン C による実測バンコマイシン濃度と予測バンコマイシン濃度の相関性 Tanaka A, et al: J Pharmacol Sci 2007; 105: 1-5 より引用