熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター 臨床薬理分野平田純生 SAJP.SA.18.03.0746
血中濃度 腎機能と腎排泄型薬物の血中濃度の関係 5 4 3 2 尿中排泄率 80~88% の場合尿中排泄率 50~56% の場合 1 0 GFR ml/min) 100 60-90 30-60 10-30 正常腎機能 軽度腎障害 中等度腎障害 重度腎障害 10> 末期腎障害
血中濃度 腎機能と腎排泄型薬物の血中濃度の関係 5 4 3 2 尿中排泄率 80~88% の場合尿中排泄率 50~56% の場合 1 0 GFR ml/min) 尿中排泄率 80~90% と高い薬物では軽度 ~ 中等度腎障害でも 100 1/2~1/3 60-90 に減量する必要があるが 尿中 30-60 10-30 10> 排泄率 50~60% の薬物では中等度 ~ 軽度腎障害でも厳密な減量は必要ない 正常腎機能 軽度腎障害 中等度腎障害 重度腎障害 末期腎障害
CKD の重症度分類 (CKD 診療ガイド 2012)
CKD の重症度分類 (CKD 診療ガイド 2012) egfr(ml/min/1.73m 2 ) は CKD の重症度分類には有用だが 薬物投与設計には使えない
egfr の弱点は筋肉量 の少ない高齢者の腎機能 を過大評価すること
小柄な高齢者には egfr は要注意 有料老人ホームに長期入居の男性 年齢 90 歳 体重 37.7kg 身長 150cm 血清 Cr 0.34mg/dL BUN 15.1mg/dL 血清アルブミン 1.7g/dL の MRSA 敗血症患者に対し バンコマイシンの投与設計を行った場合 1 日本人向け GFR 推算式によると egfr (ml/min/1.73m 2 )=194 Cr -1.094 Age -0.287 =173.6mL/min/1.73m 2 のような高値が算出されるが 上記 egfr の値の単位は ml/min/1.73m 2 であり 体表面積補正されているため Du Bois の式を用いて体表面積補正を外すと BSA(m 2 )= 体重 (kg) 0.425 身長 (cm) 0.725 0.007184=1.27m 2 となり 173.6mL/min/1.73m 2 を 1.27m 2 で割ると 127.4mL/min となり バンコマイシンの目標トラフ濃度を 15μg/mL に設定しても 実測血清バンコマイシンのトラフ濃度は 28μg/mL と高値になり バンコマイシンによる腎障害により 血清 Cr 値が 7.6mg/dL に上昇し透析導入が必要となった
バンコマイシン腎症の悪循環 高齢者 最低濃度を 10μg/mL 未満を目標に 長期臥床 フレイル血清 Cr 低下 免疫能低下 MRSA 低感受性株の増加 院内感染 最低濃度を 10~20μg/mL を目標に 腎機能の過大評価 ハ ンコマイシンの投与量増加 介入可能 腎障害が増加? 腎機能の低下 VCM 濃度がさらに上昇
バンコマイシン腎症の悪循環 高齢者 最低濃度を 10μg/mL 未満を目標に 長期臥床 フレイル血清 Cr 低下 免疫能低下 MRSA 低感受性株の増加 院内感染 最低濃度を 10~20μg/mL を目標に 腎機能の過大評価 ハ ンコマイシンの投与量増加 腎障害が増加? 介入可能透析導入治療断念腎機能の低下 VCM 濃度がさらに上昇
小柄な高齢者は egfr が高く推算されることがある MRSA 感染症に罹患しやすい症例は長期臥床の筋肉量が少ない高齢者が多い バンコマイシンの投与設計ではこのような症例では過量投与になる危険性がある
egfr および CCr 推算式の問題点 血清クレアチニン値 0.6mg/dL 未満の高齢者では egfr または推算 CCr が大きな値になりがちである もともと egfr または推算 CCr ともに高齢者や小児には適応しにくい式であり 腎機能がよくて血清 Cr 値が低いのか? 栄養状態が悪くて血清 Cr 値が低いのか? 上記の見極めは数値のみでは困難であり 症例ごとに対応していくしかない 血清 Cr 値が 0.6mg/dL 未満であり 明らかに筋肉量の減少した症例では血清 Cr 値 0.6 を代入して補正するとほとんどの場合 予測精度が向上するが 可能な限り実測 CCr 値 0.715 またはシスタチン C により egfr を算出して投与設計する
イヌリンクリアランス測定プロトコール 1% イヌリン投与開始 投与前 300mL/hr 100mL/hr 30 分 45 分 60 分 75 分 90 分 105 分 120 分 飲水 500mL 飲水 180mL 採血 1 完全排尿 採血 2 採尿 1 1) 投与前に飲水 500mL 2) 希釈したイヌリンを静脈内注入する 輸液ポンプを用いて 開始 30 分は 300mL/hr その後は 100mL/hr で 90 分間投与する 3)60 分蓄尿を目安に尿意があった時点で採尿 採尿時に採血 4) 蓄尿時間を正確に記録
CG 式作成に用いられた 249 名の年齢 腎機能と血清 Cr 値 年齢の範囲平均年齢 n 平均血清 Cr 濃度 (mg/dl) 平均実測 CCr (ml/min) 平均 Cr 排泄量 (mg/kg/24hr±sd) 18-29 24.6 22 0.99 114.9 23.6±5.0 30-39 34.6 21 1.08 98.6 20.4±5.1 40-49 46.2 28 1.17 95.4 19.2±5.8 50-59 54.4 66 SCr 1.49 は上がらずCCr 77.9 は低下 16.9±4.6 60-69 64.6 53 1.39 57.6 15.2±4.0 70-79 74.4 42 1.78 38.6 12.6±3.5 80-92 85.1 17 1.39 37.4 12.1±4.1 推算 CCr(mL/min)= (140 年齢 ) 体重 (kg) 0.85( 女性 ) 72 血清 Cr(mg/dL) Cockcroft DW, Gault MH: Nephron 16: 31-41, 1976 より引用
予備能力 フレイル (Frailty) は介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が含まれる ( 老年医学会のステートメント ) Aging ( 加齢 ) フレイル 疾患 ストレス No Frailty ( 健康 ) Frailty ( 虚弱 ) 健康寿命 要支援 要介護の危険が高い状態 生物学的寿命 Disability ( 身体機能障害 ) 要支援 要介護状態 看取り 出典 : 長寿医療研究センター病院レター第 49 号虚弱 ( フレイル ) の評価を診療の中に http://www.ncgg.go.jp/hospital/pdf/news/hospitalletter49.pdf
フレイルサイクル 加齢に伴う食欲不振 歯の喪失 食事量低下 慢性的な低栄養 サルコペニア 加齢に伴う筋肉量低下 疾患 エネルギー消費量低下 筋力低下 活動量低下 身体機能低下 Fried L.P et al: J Gerontology 56: M146-157, 2001 を改変
年齢とサルコペニアの割合 70 歳以下の高齢者の 13-24% 男性 女性 60 割 合 ( % ) 50 40 30 20 10 0 70 以下 70 ~ 74 75 ~ 80 80 以上 年齢 ( 歳 ) Baumgartner RN, et al. Am J Epidemiol 147 : 755-763, 1998
ハイリスク薬もあれば安全な薬もある CKD 患者のハイリスク薬抗がん薬 : シスプラチン カルボプラチン TS-1 など糖尿病治療薬 : インスリン SU 薬などオピオイド : モルヒネ トラマドールなど抗凝固薬 : ダビガトラン ワルファリンなど高カリウム血症の原因薬物 : 抗アルドステロン薬 ST 合剤と RAS 阻害薬の併用など 比較的安全性の高い薬ペニシリン セフェムなどの β ラクタム系抗菌薬は一般的に安全で 怖いのはペニシリンショック 間質性腎炎などのアレルギー性副作用
理想体重も体表面積も計算可能日本腎臓病薬物療法学会 http://jsnp.org/egfr/
腎機能って何?
腎臓は何をやっている? 腎臓とは 体液の恒常性維持 (Homeoatasis) を司る臓器である 水 塩分 電解質 栄養素などの摂取量 (in) は毎日 大きく変動しうるが 尿の組成を変化させることによって (out) 体液量, 体液の組成をほぼ一定で 狭い正常範囲に調節される 1 老廃物の排泄 2 体内水分を一定に保つ ( 抗利尿ホルモンによる水分保持 ) 3 体内電解質濃度を正常に保つ ( アルドステロンによる Na 保持 ) 4 血液を ph7.4( 弱アルカリ性 ) に保つために HCO 3- を産生 5 造血ホルモン ( エリスロポエチン ) の産生 6 ビタミン D の活性化 7 血圧の調節 ( 血圧低下時のレニン分泌による )
血漿中の主な物質の排泄量 再吸収率 クリアランス
血漿中の主な物質の排泄量 再吸収率 クリアランス 腎臓はグルコースなど必要なものはすべて 再吸収し 不要なものはすべて排泄している
腎臓は何をやっている? 血清中で濾過できるものはすべて濾過し必要なものはすべて再吸収する 不要な物質は尿細管で分泌もされる 不要な老廃物 過剰なミネラルを濃縮して排泄することによって生体の恒常性を保っている 腎不全になれば不要な老廃物 ミネラルの血中濃度が 上昇する 尿素 尿酸 クレアチニン インドキシル硫酸 カリウム リン 何を測定すれば腎臓の機能を正確に評価できる?
イヌリンクリアランス (Cin) は gold standard 体内で代謝されない :CLtotal= 腎 CL 蛋白と結合しない 糸球体で 100% 濾過 イヌリン 輸入細動脈 ボーマン嚢 個人内では産生速度が一定体内で代謝されない :CLtotal= 腎 CL 蛋白と結合しないため100% 糸球体濾過され生理活性がない生体内物質クレアチニン 輸出細動脈 糸球体 糸球体で 100% 濾過 尿細管で分泌されない ヘンレのループ 尿細管でわずかに分泌される 尿細管で再吸収されない Cin 正常値 100mL/min 集合管 尿細管で再吸収されない CCr 正常値 120~130 ml/min
心拍出量 5L/min 腎臓の機能 = 生体の恒常性維持 1 血液を無選択にすべて濾過 腎血流 1.0L/min ( 循環血の 20%) 3 不要なものをすべて排泄 尿量 1.5L/ 日 99% の水が尿細管で再吸収 2 必要なものをすべて再吸収 これが腎機能! 原尿産生速度 100mL/min (GFR)
腎機能とは? BUN 腎機能が低下すると上昇しますが ごちそうを食べても上がる 脱水になっても消化管出血でも上がるので正確に腎機能を評価できない 血清クレアチニン男性の正常値は0.6~1.2mg/dL 女性の正常値は 0.4~1.0mg/dL 筋肉量の影響を受けるが腎機能が低下すると確実に上昇する 糸球体濾過量 (GFR) 腎臓の最も重要な機能である単位時間当たりの血液を濾過する量で規定した腎機能評価の指標 腎臓は糸球体という場所でごみを濾過している 100mL/min が正常値のため 60mL/min 未満は CKD 成績で 60 点未満は不可と考えると覚えやすいし 評価しやすい BUN/Cr は 10 が正常 20 以上は脱水を疑う
血清 Cr による 腎機能の判断は もう終わりにしよう
腎機能に何が使われているか? 2012 年仙台市内の開業医向けアンケートでは 23 名の回答者のうち 腎機能の評価に何を使うかとの問いに対し 血清 Cr が 59% egfr36% が CCr は 5%( 腎専門医 ) 処方監査に利用している腎機能評価方法については, 血清 Cr,CG 式 CCr,eGFR の順に多い ( 和泉智, 他 : 日病薬誌第 46 巻 8 号 (989 1008)2010 年 ) ではこの患者の腎機能は正常ですか? 20 歳男性 180cm 70kg 血清 Cr 値 1.2mg/dL 80 歳女性 155cm 50kg 血清 Cr 値 1.2mg/dL
同じ血清 Cr 値 1.2mg/dL でも実際の腎機能は違う (Cockcroft & Gault 法による ) クレアチニンクリアランス (ml/min) 140 120 100 80 60 40 20 補正必要 20 歳男性 70kg では 97mL/min 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4 1.6 血清 Cr 値 80 歳女性 50kg では 29mL/min
年齢別の CKD 頻度 頻度 (%) 50 40 30 20 10 男性 (n=240.594) GFR(ml/ 分 /1.73 m2 ) 50~59 40~49 <40 女性 (n=333.430) GFR(ml/ 分 /1.73 m2 ) 50~59 40~49 <40 0 20 ~ 29 30 ~ 39 40 ~ 49 50 ~ 59 60 ~ 69 70 ~ 79 80 ~ ( 歳 ) 年齢 日本腎臓学会編 : CKD 診療ガイド 2012 を改変
(%) 50 40 年齢別の CKD 頻度 高齢者を見たら腎機能低下を疑え! 腎機能が不明のまま腎排泄性 男性 (n=240.594) GFR(ml/ 分 /1.73m2) 50~59 40~49 <40 ハイリスク薬を投与してはならない! 頻度 30 20 10 女性 (n=333.430) GFR(ml/ 分 /1.73 m2 ) 50~59 40~49 <40 0 20 ~ 29 30 ~ 39 40 ~ 49 50 ~ 59 60 ~ 69 70 ~ 79 80 ~ ( 歳 ) 年齢 日本腎臓学会編 : CKD 診療ガイド 2012 を改変
血清クレアチニン値が 4mg/dL だから 透析導入はたいてい血清クレアチニン値 が 8mg/dL 以上になってから 私の血清クレアチニン値は 4mg だから 透析になる患者さんの半分の腎機能が 残っている
推算 CCr(mL/min) 血清 Cr 値 (mg/dl) 血清 Cr 値が急に上昇した? 80 60 40 20 推算 CCr 40 ヶ月 20 ヶ月 血清 Cr 値 血清 Cr 値 8mg/dL 以上 ( 透析導入ライン ) 10.0 8.0 6.0 4.0 2.0 0 10 ヶ月 0 10 20 30 40 50 60 70 時間推移 ( 月 ) 170cm 体重 63kg 発症当時 50 歳の男性を想定し CG 法によって推算 CCr を算出した
血清 Cr 値を基に した腎機能推算式 の問題点
ダビガトランによる中毒性副作用症例 80 歳代女性で ワルファリンカリウムから切り替えを行い 1 日 220mg/ 日を投与 投与開始から 12 日目で血痰 鼻出血を認め 15 日目 ( 投与中止日 ) に血痰 呼吸困難を認め 救急外来に搬送され 翌日に死亡している 発症した副作用は 肺胞出血 呼吸不全 鼻出血 喀血 貧血 血尿 タール便 臨床検査値は 血清 Cr が投与開始 50 日前に 2.21mg/dL 投与中止日は 4.2mg/dL BUN は投与中止日に 53.8mg/dL ダビガトランの尿中排泄率は 85% と高く 70 歳以上の患者では 1 回 110mg を 1 日 2 回を考慮する 本症例は 38.9kg の体重だが 85 歳と仮定すると 血清 Cr2.21mg/dL であれば CCr は 11.4mL/min なので明らかに投与禁忌の症例 Cockcroft & Gault 法推算 CCr(mL/min)= (140 年齢 ) 体重 (kg) 0.85( 女性 ) 72 血清 Cr(mg/dL) 安全性速報 : プラザキサによる重篤な出血について. 2011 年 8 月, 日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社より引用
ダビガトランの添付文書からわかること 尿中排泄率 : 85% Cockcroft & Gault 法による推算 CCr を用いて腎機能を評価する 推算 CCr(mL/min)= (140 年齢 ) 体重 (kg) 0.85( 女性 ) 72 血清 Cr(mg/dL) 透析患者を含む高度の腎障害 (CCr<30) では腎排泄性であり 出血の危険性が増大するため禁忌 常用量は 1 回 150mg を 1 日 2 回 ただし中等度の腎障害患者 ( CCr30-50 ) 70 歳以上の患者では 1 回 110mg を 1 日 2 回を考慮する 過量投与により出血死を起こすハイリスク薬!
体重と CCr GFR の関係 85 歳女性血清 Cr 値 1.0mg/dL 身長 150cm の場合 50 50 eccr (ml/min) 40 40 egfr (ml/min/1.73m 2 ) egfr (ml/min) 30 30 ダビガトラン禁忌領域 30 40 50 60 70 80 体重 (kg)
体重と CCr GFR の関係 85 歳女性血清 Cr 値 1.0mg/dL 身長 150cm の場合 eccr (ml/min) 50 40 50 40 egfr (ml/min/1.73m 2 ) egfr (ml/min) 30 30 ダビガトラン禁忌領域 本症例の体重が30~40kgであればCG 式によるCCrではダビガトランは禁忌のはずだが 30 40 50 60 50kg 70 以上であれば投与 80 可能になるが 出血のリスクも増大する 体重 (kg)
患者個々の腎機能を正確に予測するには? 標準化 egfr 推算式 : Cr 年齢性別 egfr (ml/min/1.73m 2 ) =194 Cr -1.094 Age -0.287 0.739 ( 女性 ) Cr 年齢性別体重 Cockcroft & Gault 法推算 CCr(mL/min)= (140 年齢 ) 体重 (kg) 0.85( 女性 ) 72 血清 Cr(mg/dL) ただし体表面積 (m 2 )= 体重 (kg) 0.425 身長 (cm) 0.725 0.007184 Du Bois D, Du Bois EF; Nutrition, 5(5), 303-313, 1989 未補正 GFR 推算式 (ml/min) Cr 年齢性別体重身長 標準化 egfr は CKD の診断指標であり薬物投与設計には使えない 推算 CCr は肥満患者で過大評価し 高齢者で過小評価する
血清 Cr 値を基に した腎機能推算式 の問題点
体重と CCr GFR の関係 85 歳女性血清 Cr 値 1.0mg/dL 身長 150cm の場合 eccr (ml/min) 50 40 50 40 egfr (ml/min/1.73m 2 ) egfr (ml/min) 30 30 ダビガトラン禁忌領域 30 40 50 60 70 80 体重 (kg) 標準化 egfrはckdの診断指標であり薬物投与設計には使えない 推算 CCrは肥満患者で過大評価する
年齢と eccr egfr の関係体重 40kg の女性血清 Cr 値 1.0mg/dL 身長 150cm の場合 CG 式による eccr (ml/min) 50 40 50 40 egfr (ml/min/1.73m 2 ) egfr (ml/min) 30 30 20 ダビガトラン禁忌領域 30 40 50 60 70 80 年齢 egfr はやせた高齢者の腎機能を過大評価する
クレアチンとクレアチニンの関係 NH 2 + C NH 2 HN C NH PO 3 クレアチン N ATP ADP N 主に骨格筋に貯蔵平均約 100g/body だが筋肉量に比例する H 3 C CH 2 O C クレアチン OH C K H 3 C CH 2 C O OH クレアチンリン酸 クレアチニン 1 日約 1g が尿中に排泄 H 2 O NH H 3 C C N 非可逆反応 少量一定の割合で生成 H N C H 2 C Cr は骨格筋由来で尿中に排泄されなかった最終代謝産物 ( 老廃物 ) の血清 Cr 値として測定し腎機能評価に用いている O 約 1% 合成
血清シスタチン C と 血清クレアチニン値の反応性 (mg/dl mg/l) 15 血清シスタチン C 濃度 (mg/l) 血清クレアチニン値 (mg/dl) 血清濃度 10 血清シスタチン C はクレアチニンよりも早期に上昇する 5 血清 Cr 値のブラインド領域 血清シスタチン C 値のブラインド領域 0 0 30 60 90 120 GFR (ml/ 分 /1.73m2)
シスタチン C の利点 シスタチン C は分子量 13,000Da の低分子蛋白で全身の有核細胞から常に同じ速度で産生される 血中のシスタチン C は腎糸球体から 100% 濾過され 近位尿細管で 99% 以上が再吸収されてアミノ酸に異化され シスタチン C として血中には戻らないため血漿濃度は GFR と相関する クレアチニンのように筋肉量や性差はなく年齢 食事 運動による影響も小さい 血清濃度は 0.5-1.0mg/L で約 10 倍で血清 Cr 値に近似し GFR のマーカーになり 尿中濃度は尿細管再吸収障害のマーカーになる 男性で 1mg/L 女性で 0.85mg/L 以上では異常 クレアチニンに比し腎機能低下の初期から上昇するため早期腎機能障害が診断できる 24 時間蓄尿も不要で血清 0.3mL で測定可能
Tanaka A, et al: J Pharmacol Sci 2007; 105: 1-5 より引用 血清クレアチニン値およびシスタチン C 濃度の加齢に伴う変化 *:p<0.01(tukey s test) (mg/dl) 血清クレアチニン値 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 (mg/l) 血清シスタチン C 値 2.5 2.0 1.5 1.0 0.5 * * 0 <65 (n=50) 65~80 (n=55) 80< (n=50) 0 <65 (n=50) 65~80 (n=55) 80< (n=50) 年齢 年齢
血清クレアチニン値およびシスタチン C による実測バンコマイシン濃度と予測バンコマイシン濃度の相関性 Tanaka A, et al: J Pharmacol Sci 2007; 105: 1-5 より引用