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化学分析の一般的な流れ 試料採取 ( サンプリング ) 前処理 定量 標準物質機器分析検量線 報告値の計算 報告 3

化学分析の一般的な流れ 試料採取 ( サンプリング ) 前処理 定量 標準物質機器分析検量線 報告値の計算 報告 河川の水煙突からの排ガス品質管理のための製品の抜取り 4

化学分析の一般的な流れ 試料採取 ( サンプリング ) 酸分解 抽出 精製 濃縮 前処理 主な前処理 硝酸過塩素酸硫酸 液液抽出固相抽出 定量 標準物質機器分析検量線 報告値の計算 報告 試料をそのまま分析機器に導入できることはまれ 分離 ph 調整 希釈 蒸留再結晶クロマトグラフィ 5

化学分析の一般的な流れ 試料採取 ( サンプリング ) 前処理 標準物質の選択 JCSS メーカー保証 分析者調製 分析機器の選択 (ex GC,LC,IC etc) 試料の組成 成分 濃度に応じて選択 検量線の作成 定量 JCSS: 計量法トレーサビリティ制度 (Japan Calibration Service System) 1 標準物質を分析機器に導入 機器出力を得る 2 標準物質濃度と機器出力の関係 検量線を得る 3 試料を分析機器に導入 機器出力を得る 標準物質機器分析検量線 機器出力 4 試料の機器出力と検量線 試料濃度 ( 報告値 ) を算出する 報告値の計算 報告 試料濃度 標準物質濃度 6

化学分析の一般的な流れ 試料採取 ( サンプリング ) 前処理 定量 標準物質機器分析検量線 報告値の計算 報告 不確かさ要因 u s1 不確かさ要因 u p1 不確かさ要因 u m1 不確かさ要因 u r1 不確かさ要因 u s2 不確かさ要因 u p2 不確かさ要因 u m2 不確かさ要因 u r2 不確かさ要因 u sn 不確かさ要因 u pn 不確かさ要因 u mn 不確かさ要因 u rn 不確かさ 7

試料採取 ( サンプリング ) 前処理 定量 標準物質機器分析検量線 報告値の計算 報告 不確かさ要因 u s1 不確かさ要因 u p1 不確かさ要因 u m1 不確かさ要因 u r1 不確かさ要因 u s2 不確かさ要因 u p2 不確かさ要因 u m2 不確かさ要因 u r2 不確かさ要因 u sn 不確かさ要因 u pn 不確かさ要因 u mn 不確かさ要因 u rn Q1. 不確かさ要因を書き出して見るとかなりの数がある 不確かさ要因の評価はどこまで行う必要があるか? 8

Q1. 不確かさ要因を書き出して見るとかなりの数がある 不確かさ要因の評価はどこまで行う必要があるか? 最終的な不確かさの値に ほとんど影響がないと考えられる不確かさ要因は 必ずしも評価する必要はない 一度は評価し 影響しないという確認をすることが望ましい 目安 : 最大の不確かさ要因の 1/10 不確かさ要因 u max = 1.0 u 1 = 0.1 u c = u u1 2 2 = max 1.02 0.1 2 = 1.01 = 1.00499 1.0 9

Q1. 不確かさ要因を書き出して見るとかなりの数がある 不確かさ要因の評価はどこまで行う必要があるか? 注意点 化学分析では不確かさ要因が多い 不確かさ要因 u max = 1.0 u 1 = 0.1 u 2 = 0.1 u 10 = 0.1 u 11 = 0.1 u c = u max 2 2 u1 u11 2 = 1.11 = 1.05356 1.1 不確かさ要因の数が多いと影響がでることも 10

試料採取 ( サンプリング ) 前処理 定量 標準物質機器分析検量線 報告値の計算 報告 Q2. サンプリングに起因する不確かさ評価はどのように行えばよいか? 11

Q2. サンプリングに起因する不確かさ評価はどのように行えばよいか? 河川水のサンプリング 場所 : 上流 中流 下流 位置 : 右岸 左岸 中央 時間 : 朝 昼 夜 気候 : 晴れ 雨 雪 不確かさになりうる要因が非常に多い 不確かさ評価が難しい 12

Q2. サンプリングに起因する不確かさ評価はどのように行えばよいか? 河川水のサンプリング 場所 : 上流 中流 下流 位置 : 右岸 左岸 中央 時間 : 朝 昼 夜 気候 : 晴れ 雨 雪 サンプリングする ということだけしか決められていないと 全てが不確かさ要因に 定義の曖昧さ 不確かさ 13 現実的に評価は難しい

Q2. サンプリングに起因する不確かさ評価はどのように行えばよいか? < 定義の曖昧さの解消 > 目的 手法 手順を明確にする 目的 : 何が知りたいのか手法 : 目的を達成できるものを適切に選択手順 : できるだけ具体的に定める 例 6 時 12 時 18 時 24 時に採取した試料の平均を 河川の成分 a の濃度とする 定義の明確化 不確かさ評価がしやすくなる不確かさが小さくなる 14

試料採取 ( サンプリング ) 前処理 定量 標準物質機器分析検量線 報告値の計算 報告 Q3. 前処理に起因する不確かさ評価はどのように行えばよいか? 繰返し行うこともある 目的に合わせて組み合わせることもある 同じ目的でも異なる操作を行うこともある 前処理操作の組合せは数限りない 2014 年の本セミナーで添加回収試験と分散分析を使った事例を紹介 NMIJ 不確かさ Web HP からダウンロード可能 NMIJ: 国立研究開発法人産業技術総合研究所計量標準総合センター 不確かさ評価の手法も多種多様 化学分析における不確かさ評価 考え方と手法 - 山澤賢 (CERI) 15

試料採取 ( サンプリング ) 前処理 定量 標準物質機器分析検量線 報告値の計算 報告 Q4. 化学分析 ( 機器分析 ) の手順は様々だが 共通となる不確かさ要因はあるか 機器分析では 標準物質を用いて分析機器を校正し 試料を測定する 標準物質 校正 ( 分析機器 ) 測定 ( 試料 ) 16

Q4. 化学分析 ( 機器分析 ) の手順は様々だが 共通となる不確かさ要因はあるか 標準物質校正 ( 分析機器 ) 測定 ( 試料 ) トレーサビリティの確保 トレーサビリティが確保された標準物質 JCSS 標準物質 金属標準液 有機化合物標準液 ph 標準液 標準ガス 17

Q4. 化学分析 ( 機器分析 ) の手順は様々だが 共通となる不確かさ要因はあるか <JCSS について > 国際単位系 (SI) 濃度 ( 標準物質 ) 分野における指定校正機関 ( 標準ガス 標準液 ) 国家 ( 特定 ) 標準ガス 特定二次標準ガス 実用標準ガス ( 市販品 ) 校正 ( 値付け ) 校正 ( 値付け ) JCSSトレーサビリティ体系不確かさ 18 ( 標準ガス ) 特定標準ガス 保存安定性の不確かさ 均質性に関する不確かさ 測定の不確かさ 調製濃度の不確かさ 原料純度 ( 不純物 ) の

Q4. 化学分析 ( 機器分析 ) の手順は様々だが 共通となる不確かさ要因はあるか <JCSS について > 国際単位系 (SI) JCSS 実用標準ガスを使うと 国家 ( 特定 ) 標準ガス 特定二次標準ガス 実用標準ガス ( 市販品 ) JCSS トレーサビリティ体系 ( 標準ガス ) 校正 ( 値付け ) 校正 ( 値付け ) 国家標準へのトレーサビリティを確保 測定結果の信頼性が向上 証明書記載の不確かさを引用可能 JCSS ロゴマーク付き標準物質は欠かせない 19

試料採取 ( サンプリング ) 前処理 定量 標準物質機器分析検量線 報告値の計算 報告 Q5. 測定の ( 繰り返し性の ) 不確かさ評価のためのデータ数はどの程度必要か? データ数多い 信頼性コスト データ数少ない 信頼性 コスト データ ( 測定 ) の価値とコストのバランスを考える 20

Q5. 測定の ( 繰り返し性の ) 不確かさ評価のためのデータ数はどの程度必要か? 事例 < 特定標準ガスの開発 > 不確かさ 校正 ( 値付け ) 国家 ( 特定 ) 標準ガス 特定二次標準ガス 特定標準ガス 特定二次標準ガス 実用標準ガス ( 市販品 ) 測定の繰り返し回数 特定標準ガスの開発では 20 回が目安 JCSSトレーサビリティ体系 ( 標準ガス ) 21

試料採取 ( サンプリング ) 前処理 定量 標準物質機器分析検量線 報告値の計算 報告 Q6. 技能試験で不確かさは小さいが報告値が参照値からはずれるケースはどのように考えたらよいか? 22

IPQ INMETRO NMISA VSL SMU LNE NIST VNIIM NPL NIM CERI KRISS MKEH 参加機関の値 - 参照値 (vol ppm) Q6. 技能試験で不確かさは小さいが報告値が参照値からはずれるケースはどのように考えたらよいか? 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0-0.5-1.0-1.5-2.0 A B C D E F G H I J K L M 参加機関 23

IPQ INMETRO NMISA VSL SMU LNE NIST VNIIM NPL NIM CERI KRISS 参加機関の値 - 参照値 (vol ppm) MKEH Q6. 技能試験で不確かさは小さいが報告値が参照値からはずれるケースはどのように考えたらよいか? 2.0 1.5 1.0 0.5 0.0-0.5-1.0-1.5-2.0 A B C D E F G H I J K L M 参加機関 1 不確かさ要因の見落とし 精確な測定結果が得られていない 不確かさが過小評価になるだけでなく 見落とした要因は報告値に対して偏りとして影響を及ぼすこともある 24

2.0 1.5 1.0 0.5 0.0-0.5-1.0-1.5-2.0 IPQ INMETRO NMISA VSL SMU LNE NIST VNIIM NPL NIM 参加機関の値 - 参照値 (vol ppm) Q6. 技能試験で不確かさは小さいが報告値が参照値からはずれるケースはどのように考えたらよいか? CERI A B C D E F G H I J K L M 参加機関 CERI KRISS MKEH エタノール 120 vol ppm の基幹比較 (13 カ国 ) ( 各国の標準ガス調製能力を比較 ) 標準ガス分野 : 日本からは NMIJ 又は CERI が参加 25

2.0 1.5 1.0 0.5 0.0-0.5-1.0-1.5-2.0 A B C D E F G H I J K L M 参加機関 1 不確かさ要因の見落とし 精確な測定結果が得られていない 高圧ガス容器内面への吸着 ガス充填時の揮発等を十分に考慮しなかった可能性が高い IPQ INMETRO NMISA VSL SMU LNE NIST VNIIM NPL 参加機関の値 - 参照値 (vol ppm) Q6. 技能試験で不確かさは小さいが報告値が参照値からはずれるケースはどのように考えたらよいか? 適切な手法でないと不確かさ評価の価値が損なわれる NIM CERI KRISS MKEH 26

Q6. 技能試験で不確かさは小さいが報告値が参照値からはずれるケースはどのように考えたらよいか? 2 計算ミス ~ 単位の混同 記号 不確かさ要因値 ± 確率分布 除数 標準不確かさ u(1) 測定の繰り返し性 0.122 mg/l - 1 0.122 mg/l 合成できない u(2) u(3) u(4) 原料純度天びんメスフラスコ 0.017 % 0.040 mg 0.340 ml 矩形 3 正規 2 矩形 3 0.010 % 0.020 mg 0.200 ml 感度係数による換算 相対標準偏差を求める等の対応が必要 6.78 mg/l ± 0.47 mg/l (k=2) u(c) U 0.2353 0.47 単位はしっかりと書き混同を防ぐ 27

試料採取 ( サンプリング ) 前処理 定量 標準物質機器分析検量線 報告値の計算 報告 Q7. 内部で実施した同じ測定の不確かさ評価で 不確かさの範囲を考慮しても 分析者により測定結果に大きな差が出た どのように考えればよいか? 社内で同じ測定を実施 先輩職員 後輩職員 28

2 人の差を不確かさとして見積もろうと考える事も大事だが 教育訓練の実施 まずは分析者の技術差を埋める 認識できる偏り要因はなくす (GUM) 操作手順書の導入 手順の明確化 知識や経験の差を埋める 不確かさを小さくできる 不確かさ評価はその後 29

Q7. 内部で実施した同じ測定の不確かさ評価で 不確かさの範囲を考慮しても 分析者により測定結果に大きな差が出た どのように考えればよいか? 事例 先輩職員 社内で同じ測定を実施操作手順書に従った 後輩職員 教育訓練中 30

< 測定と評価の内容 > ヘリウム (He) 中の窒素 (N 2 ) 濃度を精確に値付ける ( 校正する ) 校正 ( 値付け ) 上位の標準ガス 9.999 vol ppm N 2 /He 試料 呼称濃度 :9.9 vol ppm N 2 /He 窒素濃度 9.9 vol ppm ( ヘリウム中 ) 例 9.87 vol ppm ± 0.31 vol ppm (k = 2) 31

ヘリウム (He) 中の窒素 (N 2 ) 濃度を精確に値付ける ( 校正する ) ガスを減圧させる 圧力調整器 分析機器 :GC-MS( ガスクロマトグラフ質量分析計 ) 高圧ガス容器内のガスで圧力調整器内をガス置換し 分析機器に導入 高圧ガス容器内のガスで 導入 排気 作業を繰り返し 元々ある大気から高圧ガス容器内のガスに置換する作業 32

ヘリウム (He) 中の窒素 (N 2 ) 濃度を精確に値付ける ( 校正する ) 分析機器 :GC-MS 標準ガス 導入 9.999 vol ppm N 2 /He 機器出力 試料濃度 9.999 標準ガス濃度 vol ppm 試料呼称濃度 :9.9 vol ppm N 2 /He 33

ヘリウム (He) 中の窒素 (N 2 ) 濃度を精確に値付ける ( 校正する ) 試料濃度 = 試料の機器出力 標準ガス濃度 標準ガスの機器出力 機器出力 操作を 10 回繰り返す 算出した試料濃度の 試料濃度 9.999 標準ガス濃度 vol ppm 平均値を報告値とする 34

先輩職員 9.92 vol ppm ± 0.32 vol ppm (k=2) 後輩職員 9.01 vol ppm ± 0.32 vol ppm (k=2) 9.92 9.01 不確かさの範囲を含めても一致しない ~~ 先輩職員 後輩職員 35

< 差異が生じた原因の検証 > 操作 2 人共に操作手順書に従って操作した 知識や経験の差は埋められているはず バジェットシート 計算ミスはない 各不確かさ要因の大きさに ほとんど違いはない 操作手順書では埋めきれない熟練度による差が原因? 36

< 実作業の詳細な再現と検証 > 2 人が使用した圧力調整器が異なっていることが判明 先輩職員試料 機種 A 標準ガス 機種 A 使用した圧力調整器 後輩職員試料 機種 A 標準ガス 機種 B ガス置換が進みにくい構造で 本測定での使用には適さない 圧力調整器の機種は気にせずに使用していた 37

< 操作手順書の内容 > 使用する機種の指定がない操作手順書の記載 標準ガス及び試料に圧力調整器を取り付け それぞれガス置換を20 回行う 知識や経験の差を埋める目的が果たせず 手法が不適切なものに 操作手順書の記載の不完全さが 測定結果に影響を与えた 手法が適切でなく測定結果が不精確 苦労して算出した 不確かさ評価が台無しに 38

< 操作手順書 ( 文書 ) 作成時の教訓 ( ポイント )> 信頼できるものとして取り扱われるということを肝に銘じる 誰でも同様に読み取れるよう 具体的に記載する 測定結果に影響を与えやすい要因や最終的な不確かさへ の寄与が大きな要因は 特に詳細に記載する 39

まとめ ~ 化学分析における不確かさ評価のポイント 1 最大の不確かさ要因の 1/10 が 不確かさを見積もる目安 2 化学分析 ( 機器分析 ) で見積もる共通の不確かさ要因は 3 つ標準物質 分析機器の校正 試料の測定 3 バジェットシートには単位をしっかりと書く 4 定義 目的 手法 手順を明確にする 5 作業手順書等の文書はできるだけ具体的にする 精確な測定結果を得るためのポイント 40

おわりに 分析手法が適切であり 精確な測定結果が得られていることは不確かさ評価を行う上での大前提です 3.45 mg/l ± 0.12 mg/l (k=2) 重要 この前提なしでは 苦労して求めた不確かさの 価値は大きく損なわれ 本末転倒になります 本セミナーの中に小さくとも気付きのきっかけがあれば幸いです 41

JASIS ブースのご案内 JCSS 標準物質 ( 一財 ) 化学物質評価研究機構化学標準部 研究機関コーナー 8Hall ブース No.R-13 カラム ( 一財 ) 化学物質評価研究機構クロマト技術部 8Hall ブース No.8A-003 42