518 蛍光酵素免疫測定法による Thyroglobulin 測定試薬の基礎的検討 山本晶子 1) 矢野美沙紀 1) 江藤恭紀 1) 太田希美 1) 丸田淳子 1) 医療法人野口記念会野口病院 1) はじめに Thyroglobulin(Tg) は甲状腺ホルモン合成に関わ るタンパクで濾胞細胞にて合成される そのため甲状腺分 化癌の腫瘍マーカーや再発および転移の指標として測定さ れており感度の向上が求められている 今回 蛍光酵素免 疫測定法 (FEIA) を測定原理とする Tg 測定試薬について基礎 的検討を行ったので報告する 対象および方法 当院患者 250 例の残余検体を対象とし た 測定機器は AIA-2000ST( 東ソー ) 試薬には E テスト TOSOH II サイログロブリン (AIA-Tg) を用いた 比較対照には測定機器 cobas 8000 e602 ( ロシュ ) とエクルーシス試 薬 Tg(ECL-Tg) を用いた 結果 1. 再現性 :3 濃度のプール血清を用いて求めた同時 再現性 (n=10) の CV は 2.4~2.7% 日差再現性 (n=10) の CV は 3.1~3.6% であった 2. 希釈直線性 : 専用希釈液およ び生理食塩水を用いた希釈の結果 それぞれ 935.3ng/mL 969.1ng/mL まで直線性が認められた 3. 共存物質の影響 : 3 濃度のプール血清で干渉チェック A プラスを用いて確認 した結果 いずれも共存物質の影響を認めなかった 4. 実 効感度 :20 検体を各 2 重測定で 5 日間測定して求めた実効 感度は CV20% で 0.08ng/mL CV10% で 0.17ng/mL であっ た 5. 相関 :ECL-Tg との相関は TgAb 陰性 102 例では y=1.02x-3.0 r=0.99 TgAb 陽性 100 例では y=0.95x-1.9 r=0.99 であった 6. プロゾーン現象 : 甲状腺穿刺液 (11 10 6 ng/ml) を希釈測定した結果 AIA-Tg は 275 10 3 ng/ml 以上 ECL-Tg は 550 10 3 ng/ml 以上でプロゾーン現象を示した 7. 穿刺吸引細胞診と穿刺液 Tg: リン パ節転移確認のため実施された 23 例の細胞診判定をもとに その穿刺針の生食洗浄液中の Tg 値 ( 穿刺液 Tg) を両試薬で 比較した AIA-Tg では良性判定は 0.6ng/mL 以下 悪性判 定は 1.0ng/mL 以上を示した ECL-Tg では良性判定は 1.0~ 6.0ng/mL とばらつきを認め 悪性判定の最小値は 4.8 ng/ml で Tg 値による判別は困難であった まとめ 本試薬の基礎的検討結果は良好であった また 穿刺液 Tg の測定値が良 悪性判定の補助として有用であ る可能性が示唆された 連絡先 0977-21-2151(2400)
519 全自動化学発光酵素免疫測定装置 AIA-CL2400 による Tg 測定試薬の基礎的検討 早川明子 1) 山口ひろ子 1) 奥山恵理子 1) 大竹奈都子 1) 下坂浩則 1) 大久保滋夫 1) 矢冨裕 1) 東京大学医学部附属病院 1) はじめに サイログロブリン(Tg) は 甲状腺濾胞細胞で作られる甲状腺ホルモンの合成に関与している分子量約 66 万の糖蛋白質である 甲状腺腫瘍の良性 悪性に関わらず多くの甲状腺疾患で上昇するため甲状腺の腫瘍マーカーとなっており 特に甲状腺分化癌に対しては治療経過の判定において有用な検査である 今回 化学発光酵素免疫測定法 (CLEIA 法 ) を測定原理とする新たな Tg 測定試薬の基礎的検討を行ったので報告する 対象と方法 研究倫理審査において承認を受けた計画に基づき, 当検査部に測定依頼があった患者検体を対象とした 測定機器は全自動化学発光酵素免疫測定装置 AIA- CL2400( 東ソー ) を用い 測定試薬には専用サイログロブリン測定試薬 ( 以下 本試薬 ) を使用した 基礎的検討は同時 日差再現性 感度 希釈試験 共存物質の影響 添加回収試験 相関について評価した 相関試験の対照試薬は E テスト TOSOH Ⅱ( サイログロブリン )( 以下 従来法 ) 測定機器は AIA-2000( 東ソー ) を用いた 結果 1) 再現性 (3 濃度の血清試料 ): 同時再現性の CV は 1.5~2.9% 日差再現性の CV は 2.9~3.6% であった 2) 感度 :2SD 法による最小検出感度は 0.009 ng/ml 実効検出感度は CV10% で 0.091 ng/ml CV20% で 0.041 ng/ml であった 3) 希釈試験 ( 自動希釈 10,100,625 倍 ): 回収率は 91~103% であった 4) 共存物質の影響 : 溶血ヘモグロビン 遊離型ビリルビン 抱合型ビリルビン 乳びの影響は見られなかった 5) 添加回収試験 (3 濃度の血清試料 ): 回収率は 97~103% であった 6) 相関 : 従来法 (x) と本法 (y) との相関は n=244,y=0.98x+1.51,r=1.00 であった また 抗サイログロブリン抗体陰性群と陽性群による差は見られなかった まとめ AIA-CL2400 を用いた Tg 測定試薬の基礎的検討において良好な結果が得られた 本試薬は従来法と比較して検体量の少量化および高感度化が図られ 測定時間においては約 15 分と短縮されており 甲状腺疾患の診察前検査を含めた日常検査に有用性が高い試薬と考えられた 連絡先 :03-3815-5411( 内線 35023)
520 炎症像を伴う甲状腺の病理組織学的特徴と抗サイログロブリン抗体との関連性 前田幸子 1) 猪俣啓子 1) 安藤朋子 1) 花田和子 1) 山下弘幸 2) 覚道健一 3) 医療法人福甲会やましたクリニック臨床検査科 1) 同外科 2) 近畿大学医学部病理学 3) はじめに 甲状腺自己抗体である抗サイログロブリン抗 体 (TgAb) は 橋本病をはじめとする自己免疫性甲状腺疾 患の診断 鑑別に有用である また 炎症像を伴う甲状腺 疾患の組織では リンパ球浸潤 リンパ濾胞形成 線維化 などの組織変化を認める 今回われわれは 測定原理の異 なる 2 種類の TgAb 診断薬を検討する機会を得 炎症像を 伴う甲状腺の病理組織学的特徴と TgAb 濃度との関連性に ついて検索を行ったので報告する 対象および機器 試薬 対象は当院受診の橋本病 バセ ドウ病および甲状腺腫瘍性疾患の各患者 136 名であった 測定試薬は 1 エクルーシス試薬 Anti-Tg(E-TgAb) 2 アーキテクト Tg 抗体 (A-TgAb) で それぞれの専用分析器を用いて測定した 方法 1)E-TgAb と A-TgAb との相関 : 両測定法にて TgAb を測定し 相関性を確認した 2) 病理組織学的特徴 ( 組織所見 ) と TgAb の関係性 : 手術により摘出した甲状腺組 織の特徴を 1 リンパ球浸潤 2 リンパ濾胞形成 3 線維化 の 3 項目に分類し その進行度と TgAb 濃度を比較した 結果 1) 両測定法による TgAb 濃度を比較すると 相関性のある症例群 ( 相関群 ) と乖離する群 ( 乖離群 ) とに分かれていた 2) 相関群と乖離群における 組織所見と TgAb 濃度との関係性では 3 項目ともに有意な差はみられなかった 次に 各組織所見と E-TgAb A-TgAb 各濃度の関係性をみると リンパ濾胞形成においては濾胞形成数の増加に伴い抗体濃度が上昇する傾向が認められたが リンパ球浸潤および線維化と抗体濃度との間に有意な関係性は認められなかった また E-TgAb が 4,000IU/mL 以上を示した 2 症例では 甲状腺機能低下が認められた 考察 今回検討した 2 種類の TgAb 測定方法間では TgAb 濃度に相関群と乖離群とが存在することが分かったが 組織所見と各症例群との関連性は認められなかった 組織所見のうち リンパ濾胞形成数の増加に伴い TgAb 濃度の上昇が認められたことから リンパ濾胞形成により抗体産生能が上昇していると考えられ 血中の TgAb 濃度の推移から組織炎症の進行度を推察できる可能性が示唆された 連絡先 092(281)1300
521 CLEIA 法を用いた抗 dsdna 抗体キット ステイシア MEBLux テスト dsdna の基礎的性能評価 宮原悠太 1) 岡山直子 1) 小島奈緒美 1) 水野秀一 1) 山口大学医学部附属病院 1) 目的 抗 dsdna 抗体は 全身性エリテマトーデス (SLE) の診断基準の 1 つで 診断及び経過観察に用いられている 現在当院では 用手法による ELISA 法で測定しており結果報告まで長時間を要している 化学発光酵素免疫測定法 (CLEIA 法 ) を用いた抗 dsdna 抗体測定試薬 ステイシア MEBLux テスト dsdna ( 以下ステイシア dsdna) が発売され約 19 分での測定が可能になった 今回 本試薬について検討の機会を得たので報告する 方法 対象は 2014 年 5~9 月に当院で抗 dsdna 抗体測定依頼があった 69 検体とし 全検体の自己免疫疾患診断及び治療の有無を調査した 試薬はステイシア dsdna(mbl 社 ) 機器は全自動臨床検査システム STACIA( 三菱化学メディエンス ) を用いた 検討内容は 1 添付陽性コントロールによる同時再現性及び日差再現性 2400IU/mL 以上の高値を示した検体を用いた希釈直線性 3 現行法である MESACUP DNA-Ⅱテスト ds (MBL 社 ) との相関性及び一致率の検討を行った 結果 同時再現性及び日差再現性(n=5) の CV は 3.9% 3.5% と良好な結果だった 希釈直線性は 2 n 倍の希釈系列を作製して測定を行い 343 IU/mL まで直線性を認めた 相関性は相関係数 r=0.7769 回帰式 y=0.8125x - 18.052 で ステイシア dsdna が低値傾向を示した 全検体の一致率は 52.2 %(36 / 69 検体 ) 陽性一致率 34.0 %(17 / 50 検体 ) 陰性一致率 100.0%(19 / 19 検体 ) であった 陽性検体の中で SLE と診断されている 28 検体について両法の詳細な比較を行ったところ ステイシア dsdna の陰性化が 21 検体で認められた その 71.4%(15 / 21 検体 ) は CRP の増加が無く CH50 C3 C4 の低下を認めなかったため 安定期の状態と考えられた さらに治療経過観察として ステイシア dsdna が現行法よりも早期に低値化していた症例があった 考察 ステイシア dsdna を用いた本法は大幅な時間短縮が可能であり 診療前検査が可能になれば早期診断 早期治療に繋がると思われた さらに現行法よりも SLE の疾患活動性をより反映し 病態の変化を早期に捉えられる可能性が示唆された 連絡先 :0836-85-3753
522 CLEIA 法を用いた抗 DNA 抗体測定におけるプロゾーン様現象 小原丈裕 1) 菊池良枝 1) 豊巻和司 1) 谷藤えみ子 1) 諏訪部章 2) 岩手医科大学附属病院中央臨床検査部 1) 岩手医科大学医学部臨床検査医学講座 2) はじめに 抗 dsdna 抗体 ( 以下 dsdna) および抗 ssdna 抗体 ( 以下 ssdna) は 全身性エリテマトーデス (SLE) の診断や病態把握に有用な指標として用いられて いる 当検査部では平成 26 年 5 月に これらの院内検査項 目について 従来の ELISA 法を原理とした方法に替えて CLEIA 法による方法を導入した 導入前の基礎検討時およ び導入後に 一部の高値検体においてプロゾーン ( 以下 PZ) 様現象が疑われる検体を認めた ここでの PZ 様現象 とは 希釈測定において測定上限以上の高値であるにもか かわらず 原液測定では測定範囲内の偽低値を示す現象を いう 今回これらの検体を解析することにより PZ 様現象 の見逃し防止策について検討を行ったので報告する 対象 当院にて dsdna および ssdna の検査依頼があ った患者血清のべ 2,555 検体を対象とした 測定機器 試薬 測定機器は 全自動臨床検査システム STACIA (( 株 )LSI メディエンス ) 測定試薬は ステイシア MEBLux テスト dsdna および ステイシア MEBLux テスト ssdna ( ともに ( 株 ) 医学生物学研究所 ) を用いた 方法 測定値が dsdna で 100 IU/mL 以上 ssdna で 100 AU/mL 以上の検体において 10 倍および 100 倍希釈測定を行った また BF 洗浄後の粒子濁度 BF 測光 OD 値 2( 以下 OD 値 ) のデータも併せて解析を行った 結果 dsdna:1 例 ssdna:7 例において 希釈測定値が測定上限以上で 原液測定値が測定範囲内の偽低値を示した これらの検体は dsdna では原液測定値が 200 IU/mL 以上 ssdna では原液測定値が 25.0 AU/mL 以上かつ OD 値が 0.012 以下であった また いずれも OD 値が 97% 信頼区間下限以下となった まとめ dsdna は測定値が 200 IU/mL 以上 ssdna は測定値が 25.0 AU/mL 以上かつ OD 値が 0.012 以下 あるいは測定値が 25.0 AU/mL 以上かつ OD 値が 97% 信頼区間下限以下を 当検査部での要希釈再検領域と設定した この条件設定により PZ 様現象に起因する偽低値の見逃しを防止することが可能であると考えられた 連絡先 019-651-5111( 内線 3739)