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糖尿病経口薬 QOL 研究会研究 1 症例報告書 新規 2 型糖尿病患者に対する経口糖尿病薬クラス別の治療効果と QOL の相関についての臨床試験 施設名医師氏名割付群記入年月日 症例登録番号 / 被験者識別コード / 1/12

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九州支部卒後研修会症例

血糖変動を読み解く vol.1

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2010 年 6 月 25 表 身体所見 134 cm 31 kg /60 mmhg 83/ ,


医学教育用基準範囲 JCCLS 共用基準範囲に基づく 医学部学生用基準範囲設定についてのパブリックコメント公募 JCCLS 基準範囲共用化委員会 JCCLS 共用基準範囲は一般的な臨床検査 40 項目の基準範囲であり 日本臨床検査医学会 日本臨床化学会 日本臨床衛生検査技師会 日本検査血液学会の共同

3 スライディングスケール法とアルゴリズム法 ( 皮下注射 ) 3-1. はじめに 入院患者の血糖コントロール手順 ( 図 3 1) 入院患者の血糖コントロール手順 DST ラウンドへの依頼 : 各病棟にある AsamaDST ラウンドマニュアルを参照 入院時に高血糖を示す患者に対して 従来はスライ

糖尿病の治験から CRC 業務を考える ~ 糖尿病治験を経験して ~ JASMO 第 11 回 CRC 継続研修会 2010 年 2 月 27 日 ノイエス株式会社 畑中かおる

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BMI BMI

2009年8月17日

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387 ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( ) ( )

高齢者におけるサルコペニアの実態について みやぐち医院 宮口信吾 我が国では 高齢化社会が進行し 脳血管疾患 悪性腫瘍の増加ばかりでなく 骨 筋肉を中心とした運動器疾患と加齢との関係が注目されている 要介護になる疾患の原因として 第 1 位は脳卒中 第 2 位は認知症 第 3 位が老衰 第 4 位に

< 糖尿病療養指導体制の整備状況 > 療養指導士のいる医療機関の割合は増加しつつある 図 1 療養指導士のいる医療機関の割合の変化 平成 20 年度 8.9% 平成 28 年度 11.1% 本糖尿病療養指導士を配置しているところは 33 医療機関 (11.1%) で 平成 20 年に実施した同調査

News Release 報道関係各位 2015 年 6 月 22 日 アストラゼネカ株式会社 40 代 ~70 代の経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんと 2 型糖尿病治療に従事する医師の意識調査結果 経口薬のみで治療中の 2 型糖尿病患者さんは目標血糖値が達成できていなくても 6 割が治療

-3- Ⅰ 市町村国保の状況 1 特定健康診査受診者の状況 平成 23 年度は 市町村国保 (41 保険者 )98,439 人の特定健康診査データの集計を行った 市町村国保の診者数は男性 女性ともに 歳の割合が多く 次いで 歳 歳の順となっている 男性 女性 総数

(3) 摂取する上での注意事項 ( 該当するものがあれば記載 ) 機能性関与成分と医薬品との相互作用に関する情報を国立健康 栄養研究所 健康食品 有効性 安全性データベース 城西大学食品 医薬品相互作用データベース CiNii Articles で検索しました その結果 検索した範囲内では 相互作用

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佐賀県肺がん地域連携パス様式 1 ( 臨床情報台帳 1) 患者様情報 氏名 性別 男性 女性 生年月日 住所 M T S H 西暦 電話番号 年月日 ( ) - 氏名 ( キーパーソンに ) 続柄居住地電話番号備考 ( ) - 家族構成 ( ) - ( ) - ( ) - ( ) - 担当医情報 医

(検8)05資料4 門脇構成員 随時血糖値の判定基準について

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学位論文審査結果報告書

複製 転載禁止 The Japan Diabetes Society, 2016 糖尿病診療ガイドライン 2016 CQ ステートメント 推奨グレード一覧 1. 糖尿病診断の指針 CQ なし 2. 糖尿病治療の目標と指針 CQ なし 3. 食事療法 CQ3-2 食事療法の実践にあたっての管理栄養士に

T O P I C S 食後高血糖改善薬を用いた BOT の有効性 SMBG のデータを治療へのモチベーションとして活かす 東大介先生 関西労災病院糖尿病内分泌内科 < 略歴 > 2002 年香川医科大学医学部医学科卒業香川医科大学医学部附属病院研修医 2005 年香川県済生会病院内科 2007 年

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わが国における糖尿病と合併症発症の病態と実態糖尿病では 高血糖状態が慢性的に継続するため 細小血管が障害され 腎臓 網膜 神経などの臓器に障害が起こります 糖尿病性の腎症 網膜症 神経障害の3つを 糖尿病の三大合併症といいます 糖尿病腎症は進行すると腎不全に至り 透析を余儀なくされますが 糖尿病腎症

はじめに この 成人 T 細胞白血病リンパ腫 (ATLL) の治療日記 は を服用される患者さんが 服用状況 体調の変化 検査結果の経過などを記録するための冊子です は 催奇形性があり サリドマイドの同類薬です は 胎児 ( お腹の赤ちゃん ) に障害を起こす可能性があります 生まれてくる赤ちゃんに

BUN, CRP K mg/ cm, 49.6 kg, BMI /72 mmhg, 92/ Hb 6.7 g/dl PT-INR CT 1 MRI 2a, b T1 T2 T1 MRI

Sample2 g/dl Target1 : 6.01 g/dl TP Target2 : 8.39 g/dl

説明書

(1) ) ) (2) (3) (4) (5) (1) (2) b (3)..

Ⅰ. 糖尿病について Ⅱ. 患者教育の基本 Ⅲ. 血糖自己測定 Ⅳ. 指導の実際 Ⅴ. 日本糖尿病療養指導士制度 Ⅵ. 当院での取り組み

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第43号(2013.5)

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脂質異常症を診断できる 高尿酸血症を診断できる C. 症状 病態の経験 1. 頻度の高い症状 a 全身倦怠感 b 体重減少 体重増加 c 尿量異常 2. 緊急を要する病態 a 低血糖 b 糖尿性ケトアシドーシス 高浸透圧高血糖症候群 c 甲状腺クリーゼ d 副腎クリーゼ 副腎不全 e 粘液水腫性昏睡

1. 趣旨 目的 香川県糖尿病性腎症等重症化予防プログラム 香川県医師会香川県糖尿病対策推進会議香川県国民健康保険団体連合会香川県 本県では 糖尿病患者の人口割合が全国上位にあり 糖尿病対策が喫緊 の課題となっている 糖尿病は放置すると網膜症や腎症 歯周病などの合 併症を引き起こし 患者の QOL

J Hospitalist Network Journal Club! DKAの輸液は生食と乳酸リンゲル液では どちらがいいのか! Fluid management in diabetic-acidosis! Ringer s lactate versus normal saline:! a ran

NEW版下_健診べんり2016_01-12

血糖自己測定をめぐる諸問題 リブレシステムの基本データ センサー ( 使いすて ) Reader 医師の指示に従って正しく血糖自己測定している患者さんは / ) 直径 mm 厚さ mm メッセージ メモの追加 /の患者さんは 生活の妨げになるため血糖自己測定をスキップしていることが報告されています

1 2 2 ANCA pouci immune IgG C3 ANCA 68 '01 '02 7 UN 14mg/dl, Cr 0.7 mg/dl, -, - ' UN 45mg/dl, Cr 2.4 mg/dl, Ht 29.5%, 4+, cm 61

125 2 P 1st washout 2 PB P mg/dL nd washout 2 P 5.5mg/dL< mg/dL <2.5mg/dL P P 2 D D 3 Ca 10

/12/28 UP 3+, TP 4.2g/dl, Alb 1.9g/dl PSL 50mg/day 1/17 PSL 45mg/day PSL 2006/4/4 PSL 30mg/day mpsl mpsl1000mg 3 2 5/ :90 / :114/64 mmhg

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症例報告書の記入における注意点 1 必須ではない項目 データ 斜線を引くこと 未取得 / 未測定の項目 2 血圧平均値 小数点以下は切り捨てとする 3 治験薬服薬状況 前回来院 今回来院までの服薬状況を記載する服薬無しの場合は 1 日投与量を 0 錠 とし 0 錠となった日付を特定すること < 演習

37 4

,995,972 6,992,875 1,158 4,383,372 4,380,511 2,612,600 2,612, ,433,188 3,330, ,880,573 2,779, , ,

データの取り扱いについて (原則)

日本の糖尿病患者数は増え続けています (%) 糖 尿 25 病 倍 890 万人 患者数増加率 万人 690 万人 1620 万人 880 万人 2050 万人 1100 万人 糖尿病の 可能性が 否定できない人 680 万人 740 万人

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神緑会学術誌 平成24年度 第29巻 2013年 神緑会研究事業年間報告書 糖尿病発症におけるインクレチン効果の疫学的研究 第2報 ー妊娠糖尿病のスクリーニングからのアプローチー 研究代表者 社会医療法人愛仁会 研究協力者 社会医療法人愛仁会 社会医療法人愛仁会 社会医療法人愛仁会 産婦人科 概 要

られる 糖尿病を合併した高血圧の治療の薬物治療の第一選択薬はアンジオテンシン変換酵素 (ACE) 阻害薬とアンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) である このクラスの薬剤は単なる降圧効果のみならず 様々な臓器保護作用を有しているが ACE 阻害薬や ARB のプラセボ比較試験で糖尿病の新規

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練馬区国保における糖尿病重症化 予防事業について 平成 29 年 3 月 6 日練馬区区民部国保年金課 1 東京都糖尿病医療連携協議会配布資料

糖尿病がどんな病気なのか 病気を予防するためにどんな生活が望ましいかについて解説します また 検診が受けられるお近くの医療機関を検索できます 健康診断の結果などをご用意ください 検査結果をご入力いただくことで 指摘された異常をチェックしたり 理解を深めたりすることができます 病気と診断され これから

満 ) 測定系はすでに自動化されている これまで GA を用いた研究は 日本 中華人民共和国 (PRC) および米国で実施され GA 値が糖尿病の診断に有用という結果が日本とアメリカで報告された 本研究ではその普遍性を追求するため 台湾人での検討を行った 同時に台湾における GA の基準範囲を新規に

肥満者の多くが複数の危険因子を持っている 肥満のみ約 20% いずれか 1 疾患有病約 47% 肥満のみ 糖尿病 いずれか 2 疾患有病約 28% 3 疾患すべて有病約 5% 高脂血症 高血圧症 厚生労働省保健指導における学習教材集 (H14 糖尿病実態調査の再集計 ) より

小松市医師会 糖尿病連携推進協議会 の取り組み 小松市医師会糖尿病連携推進協議会湯淺豊司

No. 2 2 型糖尿病では 病態の一つであるインスリンが作用する臓器の慢性炎症が問題となっており これには腸内フローラの乱れや腸内から血液中に移行した腸内細菌がリスクとなります そのため 腸内フローラを適切に維持し 血液中への細菌の移行を抑えることが慢性炎症の予防には必要です プロバイオティクス飲

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カテゴリー別人数 ( リスク : 体格 肥満 に該当 血圧 血糖において特定保健指導及びハイリスク追跡非該当 ) 健康課題保有者 ( 軽度リスク者 :H6 国保受診者中特定保健指導外 ) 結果 8190 リスク重なりなし BMI5 以上 ( 肥満 ) 腹囲判定値以上者( 血圧 (130 ) HbA1

( 様式甲 5) 氏 名 忌部 尚 ( ふりがな ) ( いんべひさし ) 学 位 の 種 類 博士 ( 医学 ) 学位授与番号 甲第 号 学位審査年月日 平成 29 年 1 月 11 日 学位授与の要件 学位規則第 4 条第 1 項該当 Benifuuki green tea, containin

Ⅲ 章推奨 4 便秘 下剤は, がん患者の便秘を改善させるか? 関連する臨床疑問 9 1 浸透圧性下剤 ( 酸化マグネシウム, ラクツロース ) は, がん患者の便秘を改善させるか? 9 2 大腸刺激性下剤 ( センナ, ピコスルファート ) は, がん患者の便秘を改善させるか? 9 3 ルビプロス

study のデータベースを使用した このデータベースには 2010 年 1 月から 2011 年 12 月に PCI を施行された 1918 人が登録された 研究の目的から考えて PCI 中にショックとなった症例は除外した 複数回 PCI を施行された場合は初回の PCI のみをデータとして用いた

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ロペラミド塩酸塩カプセル 1mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにロペラミド塩酸塩は 腸管に選択的に作用して 腸管蠕動運動を抑制し また腸管内の水分 電解質の分泌を抑制して吸収を促進することにより下痢症に効果を示す止瀉剤である ロペミン カプセル

糖尿病予備群は症状がないから からだはなんともないの 糖尿病予備群と言われた事のある方のなかには まだ糖尿病になったわけじゃないから 今は食生活を改善したり 運動をしたりする必要はない と思っている人がいるかもしれません 糖尿病予備群の段階ではなんの症状もないので そう考えるのも無理はないです しか

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資料 3 1 医療上の必要性に係る基準 への該当性に関する専門作業班 (WG) の評価 < 代謝 その他 WG> 目次 <その他分野 ( 消化器官用薬 解毒剤 その他 )> 小児分野 医療上の必要性の基準に該当すると考えられた品目 との関係本邦における適応外薬ミコフェノール酸モフェチル ( 要望番号

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宗像市国保医療課 御中

当院人工透析室における看護必要度調査 佐藤幸子 木村房子 大館市立総合病院人工透析室 The Evaluation of the Grade of Nursing Requirement in Hemodialysis Patients in Odate Municipal Hospital < 諸

ータについては Table 3 に示した 両製剤とも投与後血漿中ロスバスタチン濃度が上昇し 試験製剤で 4.7±.7 時間 標準製剤で 4.6±1. 時間に Tmaxに達した また Cmaxは試験製剤で 6.3±3.13 標準製剤で 6.8±2.49 であった AUCt は試験製剤で 62.24±2

日本呼吸器学会雑誌第47巻第6号

厳格な血圧コントロールは 高血圧関連合併症を予防するか

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インスリン治療は良好な血糖値の維持に有効であり 早期に投与を開始することで糖尿病の進行を遅らせるとともに 合併症のリスクを抑制する重要な治療法です 近年様々な新規製剤が登場したことにより 積極的な治療が可能となった一方 それに伴う 低血糖 リスクの増加が未だ課題として懸念されています 今日のインスリ

チーム医療(新注射箋試験運用)

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糖尿病薬の保険調剤 留意事項など

Transcription:

インスリン非使用 2 型糖尿病患者における自己血糖測定の血糖コントロールへの影響 慶應義塾大学医学部腎臓内分泌代謝内科 目黒周 はじめに現在わが国では簡易血糖測定器を用いた自己血糖測定 (Self monitoring of blood glucose 以下 SMBG) はインスリン治療を行っていない糖尿病患者において保険適用になっておらず ほとんど行われていない 非インスリン投与 2 型糖尿病患者におけるSMBGの意義は現在でも一致した見解が得られていないが (1, 2) 昨今体系化された血糖測定(Structured Testing 以下 ST-SMBG) が従来のSMBGと比較してむしろ有意に少ない血糖測定回数でHbA1c の低下が大きかったという報告がなされ (3) その原因としてSMBGを行うことやその回数以上に 測定を行う時間帯や得られた情報の評価とそれによる適切な治療修正が重要であると考えられている このため我々は非インスリン治療の 2 型糖尿病患者におけるST-SMBGの効果を検証するため本研究を企画した 研究方法 : 無作為化非盲検比較試験 (RCT) 結果の指標主要評価項目 (Primary endpoint): 半年後および1 年後のHbA1cの改善度 副次的評価項目 (Secondary endpoint) 半年後および1 年後のグリコアルブミンの改善度 グリコアルブミン HbA1c 比 BMIの変化 半年後および 1 年後のQOL 指標の改善度 重度の低血糖発生有無とその頻度 および出現パターン 空腹時 食前高血糖の有無とその頻度 および出現パターン 専用の記録用紙に対する医療従事者 患者の意見 治療介入治療介入は体系化された血糖測定の有無である 研究協力者を無作為にST-SMBG 群とコントロール群に登録する ST-SMBGとは 単に血糖測定紙を患者に渡して任意に血糖測定を指示したり 毎日頻回の血糖測定を指示する従来の方法と異なり 次回の連続 3 日間 各食前 各食後 2 時間 就寝前の 1 日 7 回測定を行うことで より少ない測定回数で血糖推移を把握するための情報をより多く得ることを目的とした測定法とする ST-SMBG 群では定期通院前 3 日間 1 日 7 回の血糖測定を実施し Accu-Chek 360 View に記入する 3 日間の食事記録 食事写真 Accu-Chek 360 Viewの結果を基に栄養士よ 53

り栄養指導を受けたのち 医師が診察を行う 医師は通常の採血データ 食事記録 Accu- Chek 360 Viewなどをもとに診察を行う SMBG 群では定期通院前 3 日間の食事記録 食事写真の結果を基に栄養士より栄養指導を受けたのち 医師が診察を行う 医師は通常の採血データ 食事記録などをもとに診察を行う 両群とも栄養指導は最初の半年間に 3 回行うこととし 栄養指導を行わない場合はST-SMBG 群では医師は通常の採血データ Accu-Chek 360 Viewなどをもとに診察を行う 非 SMBG 群では医師は通常の採血データをもとに診察を行う 試験開始半年後以降 ST-SMBG 群では定期通院前 3 日間 1 日 7 回の血糖測定を実施し Accu-Chek 360 Viewに記入する 医師は通常の採血データ Accu-Chek 360 Viewなどをもとに診察を行う 非 SMBG 群では医師は通常の採血データをもとに診察を行う 研究対象者 20 歳以上の慶應義塾大学病院に通院中の2 型糖尿病患者で研究に参加する事に同意した患者 直近 2カ月のHbA1c(NGSP 基準 )7% 以上除外基準インスリン治療を行っている者 現在すでに自己血糖測定を行っている者認知症など何らかの理由で自己血糖測定を行うことが困難な者 妊娠している者 腎 肝 甲状腺 血液疾患など HbA1cのデータに影響を及ぼす可能性のある者 その他研究の参加に不適切と判断された場合 結果 2013 年 10 月 15 日までに20 名に試験への同意を得 試験を開始した コントロール群のうち6 名 ST-SMBG 群の4 名が24 週まで経過しており 40 週まで経過したものは各群 3 名である ST-SMBG 群のうち1 名が試験開始後 2か月で脱落している 試験開始時の臨床データを表に示す 現時点では症例数が十分ではないが 試験開始時の各指標に関して両群間で有意な差を認めていない 試験開始後のHbA1cの推移を図に示す 全体では 0 週と比較して 24 週でHbA1cは有意に低下している (7.59±0.86% 6.86±0.57%, p<0.05) が 現時点では症例数が少ないため各群において検討すると統計学的な有意差は生じなかった また コントロール群とST-SMBG 群でも各観察時のHbA1cに有意差は認めなかった コントロール群では 3 例で薬剤の追加および増量が行われ ST-SMBG 群では 1 例で薬剤の追加が行われていた 54

( 表 ) コントロール群 STSMBG 群 合計 年齢 63.0 ± 8.4 67.4 ± 9.8 65.2 ± 9.2 性別 男 6 女 4 男 5 女 5 男 11 女 9 発症年齢 51.1 ± 6.0 51.6 ± 10.9 51.3 ± 8.4 体重 72.0 ± 19.9 65.3 ± 14.2 68.8 ± 17.3 BMI 26.4 ± 4.8 26.1 ± 3.7 26.3 ± 4. 2 SBP 124.3 ± 16.7 137.1 ± 9.9 130.4 ± 15.0 DBP 76. 2 ± 11.9 75.7 ± 16.3 75.9 ± 13.7 脈拍数 78.6 ± 9.9 85.3 ± 14.7 81.6 ± 12.3 随時血糖 167.1 ± 41.1 145.5 ± 17.4 156.3 ± 32.6 HbA1c 7.7 ± 0.8 7.6 ± 0.5 7.6 ± 0.7 GA 19.1 ± 2.9 20. 2 ± 4.7 19.6 ± 3.8 scpr 3.4 ± 1.5 2. 2 ± 1.0 2.8 ± 1.4 BUN 14.0 ± 4.0 16.8 ± 5.5 15.4 ± 4.9 scr 0.8 ± 0. 2 0.8 ± 0.3 0.8 ± 0. 2 UA 5.6 ± 1.9 5.6 ± 1.0 5.6 ± 1.5 egfr 69.3 ± 15.4 65.8 ± 20.7 67.5 ± 17.8 TC 199.6 ± 38.5 190.1 ± 24. 2 194.9 ± 31.6 HDL 49.3 ± 11.5 51.4 ± 13.8 50.4 ± 12.4 LDL 111.1 ± 28.6 98.4 ± 22.3 104.8 ± 25.8 TG 161.7 ± 82.9 159.9 ± 116.1 160.8 ± 98. 2 AST 40.5 ± 32.0 29.9 ± 15.3 35. 2 ± 25.0 ALT 42.1 ± 40.3 28.9 ± 16.6 35.5 ± 30.7 GGTP 70.6 ± 71.9 53.3 ± 42. 2 62.0 ± 58.1 CK 127.8 ± 61.0 116.9 ± 92.9 122.4 ± 76.7 Na 141.3 ± 2.0 140.4 ± 0.9 140.9 ± 1.6 K 4.4 ± 0.4 4.5 ± 0.4 4.5 ± 0.4 Cl 102.7 ± 3.1 103.8 ± 1.4 103.3 ± 2.4 CRP 0.1 ± 0.1 0. 2 ± 0.3 0.1 ± 0. 2 WBC 6. 2 ± 1.1 5.9 ± 1.3 6.0 ± 1. 2 RBC 4.8 ± 0.4 4.6 ± 0.5 4.7 ± 0.4 Hb 14.6 ± 1.3 14.3 ± 1.5 14.5 ± 1.4 Ht 43.3 ± 3.3 42.4 ± 4.6 42.8 ± 3.9 Plt 205.5 ± 50.5 222. 2 ± 40.7 213.9 ± 45.5 尿中 Alb 17.7 ± 10.8 470.2 ± 1131.4 244.0 ± 812.5 55

( 図 ) 考察インスリン非使用 2 型糖尿病患者における自己血糖測定の血糖コントロールへの影響を検討する試験を開始した 現在までに 20 名の試験参加者があり 1 名の脱落者を除き試験継続中である 現時点では症例数が十分ではないが 試験開始後の食事指導を中心とした生活習慣指導によって両群ともに血糖コントロールは改善してきている コントロール群の方で薬剤が追加されている症例が多いため ST-SMBG 群ではより少ない薬剤量で同等の血糖コントロールを維持している可能性がある また 24 週以降 ST-SMBG 群でより良好な血糖コントロールを維持できるかどうか注目している いずれにせよ 現時点では症例数が十分ではないため 今後更に症例を蓄積できるように努力していく必要がある 要約インスリン非使用 2 型糖尿病患者における自己血糖測定の血糖コントロールへの影響を検討するため 体系的血糖測定群とコントロール群での無作為化比較試験を開始した 現在までに 20 名の試験参加者があり 1 名の脱落者を除き試験継続中である 両群ともに生活習慣指導の結果試験開始後半年間で 0.8% 程度のHbA1cの改善を認めている 現時点では症例数が十分ではないこともあり 両群間で有意な血糖コントロールの差を認めてはいない コントロール群の方で薬剤が追加されている症例が多いため ST-SMBG 群ではより少ない薬剤量で同等の血糖コントロールを維持している可能性がある 今後症例数の充実を図ると同時に 24 週以降の血糖コントロールの維持に両群間で差を認めないかどうか観察していく予定である 56

文献 1. Malanda UL,Welschen LMC, Riphagen II, Dekker JM, Nijpels G, Bot SDM. Self-monitoring of blood glucose in patients with type 2 diabetes mellitus who are not using insulin. Cochrane Database of Systematic Reviews, Issue 1. Art. No.: CD005060, 2012 2. International Diabetes Federation, Clinical Guidelines Task Force, Global Guideline for Type 2 Diabetes http://www.idf.org/webdata/docs/idf%20ggt2d.pdf, 2012 3. Polonsky WH. et al. Structured self-monitoring of blood glucose significantly reduces A1C levels in poorly controlled, noninsulin-treated type 2 diabetes: results from the Structured Testing Program study. Diabetes Care.34:262-7, 2011 57