過渡応答 定常応答 線形時不変のシステムの入出力関係は伝達関数で表された. システムに対する基本的な 入力に対する過渡応答と定常応答の特性を理解する必要がある.. 伝達関数の応答. 一般的なシステムの応答システムの入力の変化に対する出力の変化の様相を応答 ( 時間応答, 動的応答 ) という. 過渡応答 システムで, 入力がある定常状態から別の定常状態に変化したとき, 出力が変化後の定常状態に達するまでの応答. 定常応答 システムで, 過渡応答が消えて定常状態に達したときの応答. 通常, 安定なシステムについて考える. 基本的な入力とそれに対する応答は以下のとおりである. インパルス応答 インパルス入力に対するシステムの応答. 単位インパルス関数 ( デルタ関数 ) の入力 ( 単位インパルス入力 ) に対する応答を単位インパルス応答という. ステップ応答 ステップ入力に対するシステムの応答. 単位ステップ関数 (Heave 関数 ) の入力 ( 単位ステップ入力 ) に対する応答を単位ステップ応答 ( インディシャル応答 ) という. ランプ応答 ランプ入力に対するシステムの応答. 単位ランプ関数の入力 ( 単位ランプ入力 ) に対する応答を単位ランプ応答という. y ().9 p. ( または.5).98 ( または.95).63.5. T T T T T e T T r T p T 図 過渡応答の性能評価
周波数応答 システムで, 正弦波入力に対するシステムの出力の振幅比及び位相差が, 入力の角周波数とともに変化する様相. 後に取り上げる. 一般的なシステムにステップ入力を加えると, 逆応答 ( アンダーシュート ) したり, 定 常値を行き過ぎ ( オーバーシュート ) たり, 定常値まわりで振動 ( ハンチング ) しながら 収束する応答を示す. このような過渡応答の評価尺度として以下が挙げられる. むだ時間 遅れ時間 ( 遅延時間 ) T 時定数 ( 相当時定数 ) T e 立ち上がり時間 T r ピーク到達時間 ( 行き過ぎ時間 ) T p 行き過ぎ量 ( オーバーシュート量 ), 最大行き過ぎ量 p 整定時間 T. 一般的な伝達関数の応答 線形システムの伝達関数 G () は以下のような有理多項式で表された. m b + b + + b+ b m G () = a + a + + a+ a m- m- - - () 伝達関数 G () への基本的な入力 U () として, ìï U ( ) = ï í / ïïïïî / 単位インパルス入力単位ステップ入力単位ランプ入力 が考えられ, このときの出力 Y () の時間応答 y () は Y() = G() U() () y - ( ) [ Y ( )] = L (3) と求められる. また, 定常値 y ( ) ( = lm y ( ) ) は以下のようである. y( ) = lm Y( ) = lm G( ) U( ) (4)
.3 伝達関数の極, 零点伝達関数の分母多項式はシステムの特性多項式に等しかった. これを零とする特性方程式の根 ( 特性根 ) を極, また, 分子多項式を零とする方程式の根を零点とよぶ. 極, 零点はそれぞれ, 実数または複素数とその共役複素数からなる. 極 p ( =,,, ), 零点 z ( =,,, m) をもつ伝達関数は以下のように因数分解される. b ( -z )( -z ) ( -z ) m m G () = a ( -p )( -p ) ( -p ) (5).4 伝達関数の基本要素とその応答 () 比例要素 G () = K (6) y() = Ku() (7) () むだ時間要素 G () = e - (8) y () = u ( - u) (9) (3) 微分要素 G() = T () y() = Tu () () (4) 積分要素 G () = T () y () = u( u) u T ò (3) (5) 次遅れ要素 G () = T + (4) 3
. /T.8.63.6 y().368/t y().4. 3 4 5 /T 3 4 5 /T 図 次遅れ要素の単位インパルス応答と単位ステップ応答 単位インパルス応答 Y () = (5) T + -(/ T) y () = e (6) T 単位ステップ応答 Y () = T (7) + y () e - (/ T) = - (8) 単位ランプ応答 Y () T + (9) (/ T) y ( ) = -T( - e - ) () (6) 次遅れ要素 w G () = () + + zw w 減衰係数と極の関係は, z > のとき, =- zw ± w z - () 過減衰 ( 過制動 ) 4
z = のとき, =- w (3) 臨界減衰 ( 臨界制動 ) z < のとき, =- zw ± jw - z (4) 減衰振動 ( 不足制動 ), 固有 ( 角 ) 周波数 w - z z = のとき, =± jw (5) 単位インパルス応答 不減衰振動 ( 単振動 ), 固有 ( 角 ) 周波数 w w -zw z > のとき, y ( ) = e h w z - z - - z = のとき, y() = w e w (7) w -zw z < のとき, y ( ) = e w -z - z (6) (8) 単位ステップ応答 ì -zw ü e z > のとき, y ( ) ï h( w z F) ï - z - = í - - + ý, F = ah z - ïî z ïþ (9) z = のとき, { - y = - e ( ) } w + (3) ì -zw ü e z < のとき, y ( ( ï ( w z F ï - - z = í - - + ) ý, F = a - z ïî z ïþ (3)..8 y().8.6.4.. -. z =.5 z =.3 z =.6 z = z =.8 z = 3. y().6.4...8.6.4 z =.5 z =.3 z =.6 z = z =.8 z = 3. -.4. -.6 5 5 w. 5 5 w 図 3 次遅れ要素の単位インパルス応答と単位ステップ応答 5
- z Im w - z w -zw Re 図 4 平面における極の位置と減衰率, 固有周波数の関係. 伝達関数の応答の性質. 極と応答特性及び安定性の関係式 (5) の伝達関数は以下のように部分分数展開できる. G A A A = + + + (3) -p -p -p () A= ég ( )( -p) ù êë úû = p ( =,,, ) (33) よって, 単位インパルス応答は以下のように表される. p p p y () = Ae + Ae + + Ae (34) とくに, 極 p が, 実数 l, 複素数 j k ± jw からなるとすると, k A c+ G () = + - - + å å (35) j j k k lj k ( ) w k k のように部分分数展開できるため, 単位インパルス応答は以下のように表される. å l j å k k k (36) j k j k y( ) = Ae + B e ( w + F ) 式 (3),(35) の右辺の各部分分数またはそこから得られる式 (34),(36) の各応答をモード, 式 (3),(34),(35),(36) のように各モードに展開することをモード展開と呼ぶ. 定理ある伝達関数で表されるシステムが安定であることの必要十分条件は, その伝達関数のすべての極の実部が負である ( 複素平面の開左半面 ( 虚軸を含まない左半面 ) に存在する ) ことである. 極の実部が であれば安定限界となる. 6
安定な極, 不安定な極, 安定な伝達関数, 不安定な伝達関数といういい方をする. 応答波形 ( 減衰特性, 速応性 ) は複素平面 ( 平面 ) 上の極と零点の位置によって決まる. 虚軸から左に遠く離れている極のモードは速く収束する. よって, システムの応答は虚軸に近い極のモードで近似することができ, 最も虚軸に近い極を代表極と呼ぶ.. 零点が応答に及ぼす影響 () 逆応答ステップ応答が零でない定常値に落ち着くが, 当初それとは反対方向に向かって動き始め, やがて引き返して定常値の方へと向かう現象を逆応答 ( アンダーシュート ) という. これは, 伝達関数のすべての極の実部が負 ( 安定な伝達関数 ) であり, 原点に零点がなく, 実部が正の零点 ( 不安定な零点という ) が奇数個存在する場合に現れる. 安定な伝達関数で, 不安定な零点をもたない ( すべての零点が安定な零点である ) システムを最小位相系 という. そうでない系を非最小位相系という. () ダイポール 伝達関数の極と零点を複素平面上にプロットしたとき, 接近した位置に極と零点が存在 し, かつ, その極と零点が他の極や零点と離れた位置にある場合, このような極と零点の ペアをダイポールと呼ぶ. 式 (5) の伝達関数 G () にダイポールとみなせる極 p と零点 z を加え, 次のような伝達関数.4.4.... y().8.6.4. -. G () G () + = + +. = + + y().8.6.4. -. G () = + + G () = + + -.4 3 4 5 6 7 8 9 -.4 3 4 5 6 7 8 9 図 4 逆応答の例 ゲイン特性が同一の周波数応答をもつ線形系の中で, 位相の遅れが最も小さい系. 7
b ( -z )( -z ) ( -z )( -z ) ˆ( ) m m = a ( -p )( -p ) ( -p )( -p ) G (37) を考える. このインパルス応答は式 (34) の y () から次のy ˆ( ) へと変化する. y ˆ( ) Ae ˆ Ae ˆ Ae ˆ Ae = + + + + (38) p p p p p - z A A p p ˆ = - ( =,,, ) (39) A = Gp ( )( p - z) (4) もし極 p と零点 z がダイポールとみなせるならば, Aˆ» A, A» (4) より, y ˆ( )» y () となる. すなわち, ダイポールは過渡応答にほとんど影響を与えない. 8