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Genotype1 高ウイルス量症例で Peg-IFNα2b+Ribavirin+ Telaprevir 併用療法の適応 ( 注意事項 ) 1. Peg-IFNα2b+Ribavirin +Telaprevir3 剤併用療法では IFN+Ribavirin2 剤併用治療に比べ重度の貧血の発現する傾向があることから注意を要する 貧血への対応は Hb の絶対値及び減少量の両方を考慮した Ribavirin の減量を基本とする 貧血のリスクは高齢者 Hb 量低値 女性例において高いことから これらの 3 剤併用療法非適応例と予測される場合 Genotype1 高ウイルス量の初回治療例では Peg-IFNα または IFNβ+Ribavirin 併用療法を選択することが望ましい 2. Peg-IFNα2b+Ribavirin +Telaprevir3 剤併用療法では Stevens-Johnson 症候群 薬剤性過敏症症候群等の重篤な皮膚障害が発現するおそれがあることから皮膚科医との連携のもとで使用し これら重篤な皮膚障害の発現した場合には 3 剤すべてを直ちに中止する なお 皮膚症状発現時は早期に適切な処置を行い 皮膚科医との連携のもとでリスク & ベネフィットの観点から治療方針を決定し必要に応じて経口ステロイド剤等の投与も考慮する 3. Peg-IFNα2b+Ribavirin +Telaprevir3 剤併用療法では 投与初期 (1-7 日間以内 ) より尿酸値 及びクレアチニンの上昇する症例が存在することから 尿酸値が異常値になったの場合 早期に高尿酸血症治療剤の投与が必要である

Peg-IFNα2b+Ribavirin+Telaprevir 3 者併用療法のヘモク ロヒ ン値からみた開始時の両薬剤の減量の目安 開始時 Hb 値 (g/dl) 14.0 以上 13.0~14.0 未満 Ribavirin 通常用量 女性のみ 200mg 減量 Telaprevir 通常用量 (2250mg) 女性のみ減量 (1500mg) 12.0~13.0 未満 200mg 減量 減量 (1500mg) 12.0 未満 3 者併用療法の安全性は保たれていない 上記の Hb 値からみた Ribavirin および Telaprevir の開始使用量はあくまでも臨床試験からの推定量であって 年齢 体重などを考慮して専門医が判断し決定する必要がある

Genotype1 高ウイルス量症例の初回治療で Telaprevir を含む 3 剤併用療法を開始にあたってのホスト側の因子 (IL28B) およびウイルス側の因子 (ISDR 及び Core aa70) からみた治療適応 ( 初回治療例 ) 1.IL28B の遺伝子 rs8099917 が TT の症例は Telaprevir を含む 3 剤併用療法の治療効果が高いことから 3 剤併用療法が治療の基本である なお 治療開始時の年齢 Hb 値 性別等から Telaprevir を含む 3 剤併用療法が困難と予測される場合は Peg-IFNα または IFNβ +Ribavirin 併用療法の選択を考慮する 2. IL28B の遺伝子 rs8099917 が TG, GG で ISDR が wild(0-1) Core aa70 が mutant の症例は IFN+Ribavirin 併用療法での治療効果が低いことから Telaprevir を含む 3 剤併用療法の行なうのも選択支のひとつである

平成 24 年の C 型慢性肝炎に対する再治療ガイドライン 高ウイルス量 5.0 Log IU/mL 300 fmol/l 1 Meq/mL 以上低ウイルス量 5.0 Log IU/mL 300 fmol/l 1 Meq/mL 未満 Genotype 1 Peg-IFNα2b+Ribavirin(24 週間 ) +Telaprevir(12 週間 ) 併用療法 Genotype 2 Peg-IFNα2b+Ribavirin(36 週間 ) Peg-IFNα2a+Ribavirin(36 週間 ) IFNβ+Ribavirin (36 週間 )

平成 24 年の C 型慢性肝炎に対する再治療ガイドラインー 1 A) 新規に治癒目的の再治療を行う症例に対する治療法の選択 1.Genotype1 で IFN 療法 (Peg 製剤 Ribavirin との併用含む ) 再燃例への再投与は Peg- IFNα2b+Ribavirin +Telaprevir3 剤併用療法の 24 週間 (T12/PR24) の治療効果が極めて高い ( 治癒率 88%) ことから T12/PR24 の投与を基本とする 2.Genotype1 で IFN 療法 (Peg 製剤 Ribavirin との併用含む ) 無効例への再投与は 前治療で 12 週後に HCV RNA 量が前値の 2 Log IU/mL 以下に低下した症例にはホスト側及びウイルス側因子を考慮して 3 剤併用療法の治療期間を 48 週間 (T12/PR48) にすることも選択肢のひとつである しかし前治療で 12 週後に HCV RNA 量が前値の 2 LogIU/mL 以下に低下しなかった症例では Peg-IFNα2b+Ribavirin +Telaprevir3 剤併用療法の効果が低いことから次世代治療を待つことが望ましい 3.Genotype1 症例にて Hb 値を考慮してTelaprevirを含む3 剤併用療法を行うことが困難と予測される場合は Peg-IFNαまたはIFNβ + Ribavirin 併用療法 72 週間を選択することが望ましい 4.Genotype2でIFN 再燃 無効例への再投与は IFN+Ribavirin 併用療法 36 週間投与が基本である 5. うつ病 うつ状態など IFNα が不適応および Peg-IFNα+ Ribavirin 併用療法でうつ状態が出現した症例に対しては IFNβ+Ribavirin 併用療法を選択する

平成 24 年の C 型慢性肝炎に対する再治療ガイドライン -2 B) 現在 治癒目的でIFN 療法 (Peg 製剤 Ribavirinとの併用含む ) にて再治療中の患者に対する治療法の選択 1.Genotype 1 高ウイルス量症例で IFN 再燃 無効例への再投与は IFN(α または β)+ Ribavirin 併用療法で治療後 12 週以内に HCV RNA が陰性化している症例は 48 週間投与を完遂することが 治療の基本である また 治療期間 HCV RNA の陰性化状況等に応じて Telaprevir を含む 3 剤併用療法への切替も選択肢のひとつである 2.Genotype 1 高ウイルス量症例で IFN 再燃 無効例への再投与は IFN(α または β)+ Ribavirin 併用療法で治療後 13 週以降に HCV RNA が陰性化している症例 あるいは HCV RNA が陰性化していない症例は副作用を考慮して Telaprevir を含む 3 剤併用療法への切替も選択肢のひとつである

平成 24 年の C 型慢性肝炎に対する再治療ガイドライン -3 C) 進展予防 ( 発癌予防 ) の治療 1. Telaprevir を含む 3 剤併用療法および Ribavirin 併用療法の非適応例あるいは Ribavirin 併用療法で無反応例の中で発癌リスクの高い症例 (50 歳以上 F2 以上 ) では IFN の副作用の素因を考慮し 発癌予防目的の IFN の長期投与が選択肢となる なお IFN-α 製剤は 300 万単位 / 日を 3 回 / 週を原則とし 在宅自己注射 (Peg 製剤を除く ) も可能である また Peg-I FNα2a 製剤を使用する場合は 90μg/ 日を 1 回 /1~2 週を使用する 2. IFN 非適応例および IFN で ALT 値 AFP 値の改善が得られない症例は肝庇護剤 (SNMC UDCA) 瀉血療法を単独あるいは組み合わせて治療する 3. 進展予防 ( 発癌予防 ) を目指した治療の ALT 目標値は stage 1 (F1) では 持続的に基準値の 1.5 倍以下に control する stage 2-3 (F2~F3) では 極力正常値 ALT 30IU/L に control する

肝炎の治癒および 発癌抑制を目指した血清 ALT 正常 C 型肝炎例への抗ウイルス治療ガイドライン 血小板数 ALT 値 30IU/L 31-40IU/L 15 10 4 /μl 2-4 ヵ月毎に血清 ALT 値フォロー ALT 異常を呈した時点で完治の可能性 発癌リスクを評価し 抗ウイルス療法を考慮 65 歳以下は抗ウイルス療法の考慮 <15 10 4 /μl 線維化進展例がかなり存在する 可能なら肝生検を施行し F2A2 以上の例に抗ウイルス療法を考慮 肝生検非施行例は 2-4 ヵ月毎に血清 ALT 値を測定し 異常を示した時点で抗ウイルス療法を考慮 慢性肝炎治療に準じる 遺伝子型 ウイルス量 年齢などを考慮し 通常の C 型慢性肝炎治療に準じて 治療法を選択する

平成 24 年の C 型慢性肝炎に対する治療の中止基準 1. Peg-IFNα2b+Ribavirin +Telaprevir3 剤併用療法の場合 治療開始 12 週後に HCV RNA が陰性化しない症例は治療を中止する また 治療期間中に HCV RNA が Breakthrough(2 回連続して HCV RNA の最低値から 2 Log IU/mL を超えて増加 ) した場合は治療を中止する 2. Peg-IFNα または β+ribavirin 2 剤併用療法の場合 Peg-IFNα2b+Ribavirin 併用療法を行っても投与開始 12 週後に HCV RNA 量が前値の 2 Log IU/mL 以下に低下がなく HCV RNA が陽性 (Real time PCR 法 ) で 36 週までに陰性化がなく かつ ALT AST が正常化しない症例は 36 週で治癒目的の治療は中止する しかし 投与開始 12 週後に HCV RNA 量が前値の 2 Log IU/mL 以下に低下し ALT 値が正常化例は 48 週まで継続治療を行い 治療終了後の長期 ALT 値正常化維持を期待する 3. IFN 単独投与の場合 進展予防 ( 発癌予防 ) の治療で IFN 製剤投与開始 6 か月以内に ALT 値 and/or AFP 値の有意な低下が見られない場合は発癌抑制効果が期待出来ないため治療を中止する

B 型慢性肝炎治療ガイドラインの基本指針 B 型慢性肝炎の治療は 35 歳未満は drug free 最終的には HBs 抗原陰性化を目指して IFN 単独治療あるいは核酸アナログ IFN の sequential 療法を基本とする 35 歳以上は HBV DNA の持続的陰性化および ALT 値の持続正常化を目指して核酸アナログ製剤 ( 初回核酸アナログ製剤 Entecavir Lamivudine および Entecavir の耐性症例は Lamivudine+Adefovir 併用療法 ) を長期投与あるいは核酸アナログと IFN を使用し HBs 抗原陰性化を目指す IFN sequential 治療とは核酸アナログ治療で HBe 抗原が陰性化した ( または陰性 ) 症例で drug free を目指し IFN と核酸アナログを 1 ヵ月間併用後 5 ヵ月間 あるいは核酸アナログ終了後連続して IFN を 24 週間 (48 週間 ) 使用し治療を中断する治療と定義する

35 歳未満 B 型慢性肝炎の治療ガイドライン 治療対象は ALT 31IU/Lで : HBe 抗原陽性例は HBV DNA 量 5 log copies/ml 以上 HBe 抗原陰性例は 4 log copies/ml 以上肝硬変では 3 log copies/ml 以上 HBV DNA 量 HBe 抗原 e 抗原陽性 e 抗原陰性 7 log copies/ml 1 Peg-IFNα2a(48 週 ) または IFN 長期投与 (24~48 週 ) 2Sequential 療法 3Entecavir 1Sequential 療法 2Entecavir < 7 log copies/ml 1 Peg-IFNα2a(48 週 ) または IFN 長期投与 (24~48 週 ) 2Entecavir 1 経過観察またはEntecavir 2 Peg-IFNα2a(48 週 ) 血小板 15 万未満または F2 以上の進行例には最初から Entecavir

35 歳以上 B 型慢性肝炎の治療ガイドライン 治療対象は ALT 31IU/Lで : HBe 抗原陽性例は HBV DNA 量 5 log copies/ml 以上 HBe 抗原陰性例は 4 log copies/ml 以上肝硬変では 3 log copies/ml 以上 HBe 抗原 e 抗原陽性 HBV DNA 量 7 log copies/ml 1 Entecavir 2 Sequential 療法 < 7 log copies/ml 1 Entecavir 2 Peg-IFNα2a(48 週 ) または IFN 長期投与 (24~48 週 ) e 抗原陰性 1Entecavir 2Peg-IFNα2a(48 週 ) 1 Entecavir 2Peg-IFNα2a(48 週 )

Lamivudine 投与中 B 型慢性肝炎患者に対する核酸アナログ製剤治療ガイドライン HBV DNA 量 治療法 < 2.1 log copies/ml 持続 1) 2.1 log copies/ml 2) VBT なし VBT あり 原則 Entecavir 0.5mg/ 日に切り替え Entecavir 0.5mg/ 日に切り替え可 Adefovir 10mg/ 日併用 1) 持続期間は 6 ヵ月を目安とする 2) VBT: viral breakthrough(hbv DNA 量が最低値より 1 log copies/ml 以上の上昇 )

B 型慢性肝炎の治療 ( ガイドラインの補足 -1) 1.B 型肝炎は HBV genotype により治療効果が異なるため genotype を測定して治療法を決定する 特に genotype A, B は 35 歳以上でも IFN の効果が高率であることから 可能なかぎり Peg-IFNα2a(48 週間 ) あるいは IFN(24 週間 ~48 週間 ) を第一選択にすることが望ましい 2.IFN 自己注射可能な症例は QOL を考慮して在宅自己注射を推奨する 3.Lamivudine 及び Entecavir 耐性株に対しては Lamivudine+Adefovir 併用療法を基本とする しかし Lamivudine+Adefovir 併用療法を行って 3 年以上経過しても HBV DNA が 4 log copies/ml 以上でかつ ALT 値 31IU/L の症例は Entecavir+Adefovir 併用療法も選択肢のひとつとなる 4.Lamivudine Adefovir Entecavir のいずれの薬剤にも耐性株が出現した症例に対しては Entecavir+Adefovir 併用療法あるいは Tenofovir も選択肢のひとつとなる

B 型慢性肝炎の治療 ( ガイドラインの補足 -2) 5.Sequential 療法を行う場合は 核酸アナログ治療で HBe 抗原が陰性化 ( または陰性 ) 症例で核酸アナログを十分投与し HBV DNA の陰性化期間が 1 年以上経過し Core 関連抗原 (HBcrAg) も 3.0 Log U/mL 以下 HBsAg 1000 IU/mL 以下の症例に行うのが望ましい 6.Adefovir 併用療法を長期に行い 腎機能が悪化する症例では Adefovir は隔日投与にする 7. 抗ウイルス療法は ALT 値が 31IU/Lの場合に考慮する 35 歳以上でF2 以上の進行例にはALT 値 <31IU/Lでもウイルス増殖が持続する場合は抗ウイルス療法の対象となる しかし 高齢者やHBe 抗原陰性例 抗ウイルス剤の投与が難しい例では肝庇護療法 (SNMC UDCA 等 ) で経過をみることも可能である 8.HIV 合併症例は Entecavirの使用によりHIV 耐性ウイルスが出現する可能性があるため Entecavirは原則として使用すべきでない 従ってEntecavir 開始時にはインフォームドコンセントを取得した上でHIV 抗体の測定を行うことが望ましい

免疫抑制 化学療法により発症する B 型肝炎対策 ( 補足 -4) 1.HBV DNA 量が低値 ALT 値が正常であっても免疫抑制剤や抗がん剤投与時には HBV DNA 量が上昇して重度の肝障害をきたすことがあるため注意が必要である 2.HBs 抗原が陰性例でも HBc 抗体 あるいは HBs 抗体陽性例に免疫抑制剤や抗がん剤投与中 あるいは投与終了後に HBV DNA 量が上昇して重度の肝障害をきたすことがあるため経時的に HBV DNA 量を測定し HBV DNA が陽性化した症例には核酸アナログ製剤を早期に使用することが望ましい ( 難治性の肝 胆道疾患に関する調査研究班の免疫抑制 化学療法により発症する B 型肝炎対策ガイドラインの基準と同様とする )

免疫抑制 化学療法により発症する B 型肝炎対策ガイドライン (2011.9.26 改訂版 ) 注 2) スクリーニング ( 全例 ) HBs 抗原 HBs 抗原 (+) HBs 抗原 (-) 注 1) HBe 抗原 HBe 抗体 HBV DNA 定量 注 6) HBc 抗体 (+) and/or HBs 抗体 (+) (+): 検出感度以上 HBV DNA 定量 HBc 抗体 HBs 抗体 注 4) (-): 検出感度未満 HBc 抗体 (-) and HBs 抗体 (-) 通常の対応 注 3) 核酸アナログ投与 注 2), 8), 9), 10) 注 6) 注 7) モニタリング HBV DNA 定量 1 回 / 月 (AST/ALT 1 回 / 月 ) 治療終了後少なくとも 12 ヶ月まで継続 (+): 検出感度以上 注 5) (-): 検出感度未満 難治性の肝 胆道疾患に関する調査研究班肝硬変を含めたウイルス性肝疾患の治療の標準化に関する研究班日本肝臓学会 http://www.jsh.or.jp/medical/index.html

平成 24 年 B 型 C 型慢性肝炎 肝硬変治療のガイドラインの主な改正点 1.C 型慢性肝炎に対する Peg-IFN+Ribavirin+Telaprevir 3 者併用療法の位置付け 2.B 型慢性肝炎に対する Peg-IFN 単独療法の位置付け 3.C 型肝硬変に対する Peg-IFN+Ribavirin 2 者併用療法の位置付け

ウイルス性肝硬変に対する包括的治療のガイドライン -1 A) 治癒目的のIFN 療法 (C 型肝硬変 ) 1.C 型代償性肝硬変に対する治療法は治癒率が考慮して PegIFNα+Ribavirin 併用療法を選択することが望ましい 2.Genotype1かつ高ウイルス量のC 型代償性肝硬変症例へのPegIFNα+Ribavirin 併用療法の投与期間延長 (72 週間投与 ) の基準として 投与開始 12 週後にHCV RNA 量が前値の2 LogIU/mL 以下に低下するが HCV RNAが陽性 (Real time PCR 法 ) で 36 週までに陰性化した症例ではプラス24 週 ( トータル72 週間 ) に投与期間を延長する 3. Genotype1かつ高ウイルス量症例以外で 投与前にうつ病 うつ状態やHb 値低下などの副作用の出現が予測される症例に対しては IFN 療法 (IFNβ:FeronあるいはIFNα:Sumiferon) 療法を選択することが望ましい ( なお IFNα 自己注射可能な症例は QOLを考慮して在宅自己注射も可能である )

ウイルス性肝硬変に対する包括的治療のガイドライン -2 B) 治癒目的の核酸アナログ治療 (B 型肝炎 ) 1. HBV DNA 量が 3 log copies/ml 以上の状態が持続する場合は ALT 値が 31IU/L 未満でも核酸アナログ製剤の治療対象となる 2. B 型肝硬変 ( 代償性 非代償性 ) 症例への初回核酸アナログ製剤は Entecavir を 一方 Lamivudine または Entecavir 耐性株出現例では Lamivudine + Adefovir 併用療法とする 3. B 型肝硬変 ( 代償性 非代償性 ) 症例への核酸アナログ投与は HBs 抗原が陰性化するまで長期投与する C) 発癌予防および肝癌再発予防目的の治療 1. C 型肝硬変で治癒目的の IFN 無効例には ALT, AFP 値の低下を目指し IFN(IFNα:Sumiferon) の少量長期療法を行う (IFN 自己注射可能な症例は QOL を考慮して在宅自己注射を推奨する ) または ALT 値改善を目指し SNMC UDCA などの肝庇護療法を行う 2. B 型肝硬変および肝細胞癌治癒後の症例で HBV DNA 3log copies/ml 以上を示す例では核酸アナログ製剤で HBV DNA を低下させ再発予防を目指す 3. 肝硬変症例には血清アルブミン値を考慮して分岐鎖アミノ酸製剤 (Livact) を使用して発癌抑制を目指す

肝硬変に対するガイドライン補足 1. Peg-IFNα+Ribavirin 併用療法が行えない C 型代償性肝硬変に対する IFN の単独療法は HCV RNA が 12 週以内に陰性化した症例はその後慢性肝炎同様 48 週間 ~72 週間の長期投与が望ましい 2. C 型代償性肝硬変に対する IFN 投与 (Ribavirin 併用療法を含む ) で 12 週以上経過しても HCV RNA が陰性化しない症例は 発癌予防を目指した 3MU/ 日, 週 3 回投与の長期投与を行うが投与開始 6 か月以内に ALT 値や AFP 値の有意な低下が見られない場合は発癌抑制効果が期待できないため 治療を中止する 3. 血小板値が 5 万以下の C 型肝硬変では IFN の治療効果を十分検討の上 脾摘手術あるいは脾動脈塞栓術を施行後 IFN(Ribavirin 併用を含む ) 治療を行うことが可能である