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2 図微小要素の流体の流入出 方向の断面の流体の流入出の収支断面 Ⅰ から微小要素に流入出する流体の流量 Q 断面 Ⅰ は 以下のように定式化できる Q 断面 Ⅰ 流量 密度 流速 断面 Ⅰ の面積 微小要素の断面 Ⅰ から だけ移動した断面 Ⅱ を流入出する流体の流量 Q 断面 Ⅱ は以下のように

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// //( ) (Helmholtz, Hermann Ludwig Ferdinand von: ) [ ]< 35, 36 > δq =0 du

3.2 [ ]< 86, 87 > ( ) T = U V,N,, du = TdS PdV + µdn +, (3) P = U V S,N,, µ = U N. (4) S,V,, ( ) ds = 1 T du + P T dv µ dn +, (5) T 1 T = P U V,N,, T

また単分子層吸着量は S をすべて加えればよく N m = S (1.5) となる ここで計算を簡単にするために次のような仮定をする 2 層目以上に吸着した分子の吸着エネルギーは潜熱に等しい したがって Q = Q L ( 2) (1.6) また 2 層目以上では吸着に与える表面固体の影響は小さく

: (a) ( ) A (b) B ( ) A B 11.: (a) x,y (b) r,θ (c) A (x) V A B (x + dx) ( ) ( 11.(a)) dv dt = 0 (11.6) r= θ =

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6 6.1 B A: Γ d Q S(B) S(A) = S (6.1) T (e) Γ (6.2) : Γ B A R (reversible) 6-1

07 年度センター試験物理 問 5 ウ 気温が低くなるほど音速は遅くなるので, 上空より地表のほうが音速は遅い エ 地表から斜め上方に出た音波は, 屈折の法則より音速が大きいと屈折角も大きくなるの で, 大きく地表に向かって曲がっていく したがって, 遠くの地表面上に届きやすくなる ( 答 ) 5

では 例えば理想気体が状態 A にあるときの状態を A A =nr A としよう この気体を温度が A 以上の熱源に接触させると 当然温度が上がり もそれに比例して増加する そ して気体が外界に仕事をして状態 B になり B B =nr B に変化したとしよう このとき 理想気体はどれだけの熱量 を

木村の理論化学小ネタ 熱化学方程式と反応熱の分類発熱反応と吸熱反応化学反応は, 反応の前後の物質のエネルギーが異なるため, エネルギーの出入りを伴い, それが, 熱 光 電気などのエネルギーの形で現れる とくに, 化学変化と熱エネルギーの関

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2017 年佐賀大学入試 物理熱力学問題 を解いてみよう

授業計画 1) 熱現象と熱力学 2) 状態量と状態方程式 3) 熱力学第 1 法則と内部エネルギー 4) 等温過程と断熱過程 5) カルノーサイクルと熱力学第 2 法則 6) 可逆効率とクラウジウスの不等式 8) 中間試験過程と不可逆過程 7) 熱機関の 9) エントロピーの定義 10) エントロピーの計算方法 11) 不可逆性とエントロピーの確率論的意味 12) エントロピーと微視的状態 13) 熱力学関数 14) 熱平衡と相平衡 15) まとめ 16) 定期試験 熱力学 熱現象を巨視的に研究 基礎熱力学 國友正和 共立出版

1) 熱現象と熱力学 熱とは何だろうか 熱力学 1.1 熱力学の成立 物体間の摩擦や衝突で熱が発生 熱の運動説 熱い物体と冷たい物体の接触 物質 ( 熱素 ) 説 化学反応で発熱

物体間の摩擦や衝突で熱が発生 熱の運動説 熱い物体と冷たい物体の接触 物質 ( 熱素 ) 説 ランフォード ( ベンジャミン トンプソン ) 1753 年 3 月 26 日 - 1814 年 8 月 21 日 ) はイギリス植民地時代のアメリカに生まれた科学者である 大砲の砲身の中をえぐる工程で大量に発生続ける摩擦熱がカロリック説 ( 熱素説 ) では説明しきれないことを示しカロリック説を否定して 熱力学に先駆的な業績をあげたことで知られる

温度の定義 温冷感覚の客観化 : 温度計の発明教科書表 1.1 温度と熱の違い e.g., 冷蔵庫中の缶とペットボトル 温度の定義 : 熱力学の前提! 第 1 種永久機関 第 2 種永久機関 熱力学第 1 法則 熱力学第 2 法則 熱力学第 3 法則

1.4 熱平衡と温度 熱力学 温度計の発明だけでは 単に容積変化等の物質の変化を温度の変化と言い直したにすぎない 二つの物体を接触させると やがて互いの容積等の変化が無くなる これを熱平衡状態という このとき両物体の温度が等しいということにすれば良いと考えられる この考えは熱力学の第 0 法則によって保障される 系 Aと系 Bが熱平衡にあり 系 Bと系 Cが熱平衡にあれば系 Aも系 Cと熱平衡にある

この経験的な法則は自明なことと思えるが 熱力学上もっとも基本的な法則である これによって温度を定義できる 熱平衡 = 同じ温度 熱現象は 物質を構成している分子や原子の微視的な乱雑な運動 熱運動エネルギーの目安 : 温度 熱運動エネルギーの変化量 : 熱量

分子が無秩序な熱運動 1827 年 (1828 年説も ) イギリスの植物学者ロバート ブラウンは 花粉を観察していた際 細かな粒子が不規則に動く現象 いわゆるブラウン運動を発見した 当初はロバートはこれを生命に由来する現象と考えたが のちに微細な粉末なら生物に由来しなくてもこの運動が生じることも発見した 1905 年にアインシュタインが媒 質の熱運動による物理学的事象だと説明した

1 回目宿題 絶対温度 (K) を基準に 摂氏温度 ( ) 及び 華氏 (F) 温度との変換関係を示せ T(K)=t( )+273.15 T(F)=9/5 t( )+32

全微分と偏微分の復習 例えば z=f(x,y) という z について x,y での偏導関数 ( 偏微分の結果の関数 ) がすべて連続ならば z の全微分 dz は dz = z/ x dx + z/ y dy と表せます 例 :z = xy の全微分は? もしも x,y がそれぞれ t の関数で表されるとき それぞれが t で微分可能であれば dz/dt = z/ x dx/dt + z/ y dy/dt となります 2 変数関数に限らず 例えば 3 変数関数 w=f(x,y,z) であれば dw = w/ x dx + w/ y dy + w/ z dz と表せます 例 :w = xyz の全微分は?

1.2 熱現象 熱量の単位 : カロリー 1 cal = 純水 1gの温度を1 気圧のもとで 14.5 から15.5 まで上げるのに必要な熱量 国際単位制 : ジュール 1 J =1 N m 1 cal = 4.19 J

エネルギー 熱膨張 熱振動の非調和性から生ずる 排他律による斥力エネルギー 全エネルギー 原子核間距離 静電引力エネルギー 正 負イオン間の静電引力で結合

熱膨張 線膨張率 体膨張率 α = 1 l(t 1 ) [ dl dt ] T=T 1 β = 1 V(T 1 ) [dv dt ] T=T 1 膨張率一定の場合 ( 温度によらない場合 ) l ( 1 T ) l( T 1){1 a( T T )} V ( 1 T ) V ( T 1){1 b( T T )} 例題 1.1 等方性固体では b = 3a

一般的に固体は等方的ではない 練習問題 1.2 練習問題 1.4

熱量の保存 二つの物体の接触により一方が失った熱量は他方が得た熱量に等しい 熱容量と比熱 Heat capacity, specific heat C mc おまけ : 熱測定は物性研究においても重要 例えば自分たちの下記データ (Google 検索で自分の論文を調べた ) https://www.google.co.jp/?gws_rd=cr&ei=4hteuoz_hcotkqw_p4cyaq#q=heat+capacity+x.g.+zheng 両物体接触 T1 T 2 とすると m c ( T 1T) m c ( T T 2) 1 1 2 2

例題 1.2 水当量 w の熱量計に質量 W で温度 T の水を入れておく ちょうど融解点 T m にある質量 M の液体状態の金属を入れたら最後に温度が T 0 になった 金属の固体の状態の比熱を c として金属の融解熱を求めよ 単位質量の融解熱を L とすると ML Mc( Tm T 0) ( w W )( T 0 T) 練習問題 1.5

熱の移動伝導 対流 放射実例を 熱伝導率 T 1 l T 2 単位時間伝わる熱量 Q S( T 1 T 2) / l 温度勾配 類似 : 電流密度 j = σe 単位時間伝わる電荷 Q: 電流 I S( V 1 V 2) / l 電位勾配 つまり電場

例題 1.3 厚さと熱伝導率それぞれ d 1, d 2, 1, 2 の 2 枚の板を接触させ 2 つの板の外側の温度をそれぞれ T 1,T 2 (T 1 > T 2 ) に保ったとき 接触面の温度と単位面積を単位時間に流れる熱量を求めよ Q 1 1 ) / 2( 2) / ( T T d T T d 1 2 練習問題 1.6 Q S( T 1T 2) / l 液体の温度が刻々変化していることに注意!

1.3 熱力学の対象 熱現象は 物質を構成している分子や原子の微視的な乱雑な運動 熱力学 Thermodynamics 熱現象を巨視的に研究 統計力学熱現象を微視的に研究 Statistical mechanics

巨視的体系の特徴 非常に多くの粒子からなる ~10 23 アボガドロ定数 = 6.02214129 10 23 mol -1 系の運動を解くことは不可能 多数粒子の平均から 熱を伴う現象の不可逆性 例えば :2 物体の熱接触 2 容器気体の拡散 摩擦熱等 熱力学と統計力学 : 力学と違った取り扱い

1.5 状態量と状態方程式 状態量 : 熱平衡状態を表す巨視的な物理量 力学的な量 : 体積 V 圧力 p 内部エネルギー U 等 熱的な量 : 温度 T エントロピー S 等 状態量は系の状態だけで決まるものである 熱や仕事は系が外部とのやりとりをするもので系の熱平衡状態をあらわすものではないから 状態量にあらず 状態方程式 : 状態量間の関係

理想気体の状態方程式 ( ボイルーシャルルの法則 ): pv nrt R=8.31J mol -1 K -1 理想気体 : 気体分子大きさ無く 分子間に力が働かないと仮定 低温や高圧力の場合は実際の気体では大きくずれる ファンデルワールスの考え方に基づく修正 : 教科書 p12 (p+a/v 2 ) (V-b) = nrt

宿題 絶対温度 (K) を基準に 摂氏温度 ( ) 及び 華氏 (F) 温度との変換関係を示せ T(K)=t( )+273.15 T(F)=9/5 t( )+32 練習問題 1.1

2) 熱力学第 1 法則熱と力学的仕事を含めたエネルギー保存則 2.1 熱力学過程 : ある熱平衡状態から別の熱平衡状態へ変化する過程 準静的過程 : 熱平衡状態を保ちながら変化する仮想過程 可逆的である変化過程で系の状態を状態量で表せるので 種々の計算ができる 例 :( 準静的 ) 等温過程 断熱過程 循環過程 ( サイクル ) 等

2.2 熱力学第 1 法則熱と力学的仕事を含めたエネルギー保存則ジュールの羽根車実験 : 仕事が熱量を作り出す W=JQ 熱の仕事当量 J=4.19J/cal 内部エネルギーの変化量 DU=Q+W 微小変化の場合 :du=dq+dw Q W 系に与える時は正 状態量の変化と区別するために δ を使用

2.3 エネルギーの移動 図 2.3 のように 準静的過程において dw= -pdv 第 1 法則 :du=dq ー pdv 図 2.4 のように W= - VA V B pdv

例題 2.1 水が水蒸気になった時の体積変化に注意 練習問題 2.2 練習問題 2.3 練習問題 2.4

2.4 内部エネルギー 代表的な実験自由膨張 : 教科書図 2.5 真空への自由膨張で仕事 W=0 断熱で Q=0 内部エネルギーの変化 DU=0 温度変化が観測されず 内部エネルギーは温度のみに依存する しかし 実験精度に大きな問題点がある

細孔栓の実験ージュール トムソン膨張多孔質壁を介して気体の入る 2 つの部屋をつなぎ多孔質壁の両側の圧力を一定にしながら (P A >P B ) 一方の部屋から他方へと気体を押し出すというものである 図 2.6 のように多孔質壁を通して圧力差を保ちながら膨張させた時に温度の変化を調べる 膨脹において W p A V A p B V B,Q=0 D U U( TB, VB) U( TA, VA) W p A V A p B V B いろんな気体について実験すると 分子の小さい気体では温度変化が小さく 分子の大きい気体では温度変化が大きい また 圧力が小さいと温度変化が小さく大きいと温度変化が大きい

小さい分子 圧力が小さい ( 密度が低い ) 温度変化が小 推論 : 大きさが無く 分子間引力が 無い理想気体 温度変化しない 理想気体 : T cons tan t, RT p A V A p B V B DU U ( TB, VB) U( TA, VA) W pava pbvb 0 理想気体の内部エネルギーは温度だけの関数と言える 実際の気体では自由膨張で温度が変化 ジュール トムソン効果 気体を液化できる

気体の液化 1908 年 Heike Kamerlingh Onnes 1913 年ノーベル物理学賞

復習 : 偏微分と全微分 2.5 熱容量と比熱 熱容量 heat capacity (d C Q / dt) x x 単位量あたりの熱容量は比熱 (dq / dt) cx x おまけ : 熱測定は物性研究においても重要 例えば自分たちの下記データ (Google 検索で自分の論文を調べた ) https://www.google.co.jp/?gws_rd=cr&ei=4hteuoz_hcotkqw_p4cyaq#q=heat+capacity+x.g.+zheng

定積比熱 定圧比熱 c V d ( Q / dt) V c (dq / dt) p p 理想気体では U は温度のみの関数 ( du du / dt) c V V dt dq du pdv c dt V pdv c p ( dq / dt) c p( p V V/ T) p c p c V R 1 モルマイヤーの式 問題 2.5 c p / cv

断熱膨張で温度が下がる生活例スプレーで傷口消毒や筋肉を冷やす等断熱圧縮で温度が上がるディーゼルエンジンの始動等 2.6 理想気体の等温過程と断熱過程 断熱 dq du pdv c dt pdv 0 V cvdt / T RdV / V 0 c dt / T ( c c ) dv / V V V p dt / T (1 ) dv / V log T (1 )logv cons tan TV -1 = 一定 pv = 一定 t

例題 2.2 2.3 問題 2.8 2.9 2.11

2.7 理想気体のカルノーサイクル熱を 100% 仕事に交換できるか? カルノーが熱機関の研究のために思考実験として 1820 年代に導入 これによって本格的な熱力学が始まり 熱力学第二法則 エントロピー等の重要な概念が導き出されることになった カルノーサイクル : 等温膨張 断熱膨張 等温圧縮 断熱圧縮 捨て熱 Q L 吸収した熱 Q H を 100% 仕事に交換できない

カルノーサイクルが外部にする仕事 1 等温膨張 : V W ApdV B 1 =V pv RT 1 V B V A VdV RT 1 / RT 1log / VB VA 理想気体の内部エネルギーは温度のみに依存するので DU 0; W Q 1 1

2 断熱膨張 : pv k( 一定 ) V W = C pdv 2 V B V C V B k /VdV k /( 1 ) 1 1 (V - V ) C B 1/( 1) ( p V p VB) C C B R /( 1) ( T T 2) 1

カルノーサイクルが外部にする仕事 3 等温圧縮 :1 と同じく計算 W 3 RT 2 log / VD VC W 3 Q2 4 断熱圧縮 :2 と同じく計算 W R /( 1)( T T ) 4 2 1

1 サイクルが外部にする仕事 W W W W W W W 1 2 3 4 1 3 Q Q Q I 2I Q 1 2 1 教科書 p29 IQ I/ Q T /T 2 1 2 1

熱機関の効率 ηc η = w Q 1 = Q 1 Q 2 Q 1 η C = T 1 T 2 T 1 η=100% は達成されない 逆カルノーサイクルさて カルノーサイクルは逆向きに動作させることで 低温源から高温源へと熱を移動させるヒートポンプのモデルとして使うこともできます ( 逆カルノーサイクル ) w Q c T h T c T c Q 2 Q 1 = T 2 T 1

ジュール トムソン効果 pv nrt 第 1 法則 :du=dq ー pdv 断熱過程 TV -1 = 一定 pv = 一定 マイヤーの式 c p c V R c p / c V カルノーサイクル I Q I/ Q T /T 2 1 2 1 熱機関の効率 η 1IQ I/ Q 1T / T 2 1 2 1

問題 2.13-15

3) 熱力学第 2 法則第 1 はエネルギーの量エネルギーの質について 3.1 可逆と不可逆過程 : 熱を伴う過程はすべて不可逆だが 準静的過程は可逆過程 3.2 第 2 法則 : 経験則 クラウジウス Clausius の表現 例えば 電気と温水 低温の熱源から高温の熱源に正の熱を移す際に 他に何の変化もおこさないようにすることはできない トムソン ( ケルビン ) の表現 同等性の証明は教科書を参照 一つの熱源から正の熱を受け取り これを全て仕事に変える以外に, 他に何の変化もおこさないようにするサイクルは存在しない

3.3 熱機関の効率 教科書を参照 第 2 法則より 熱機関の効率が可逆機関の効率を超えない 3.4 熱力学温度 可逆サイクルの効率が作業物質によらないから高温熱源と低温熱源の比を決めることができる 理想気体を作業物質とするカルノーサイクルにおいて成り立つので熱力学温度と理想気体温度計温度と一致する 3.5 Clausius の不等式ーー第 2 法則の数式化 エントロピーという重要な概念へ

3.5 Clausius の不等式ーー第 2 法則の数式化 η = Q 1 Q 2 Q 1 η C = T 1 T 2 T 1 1 Q 2 Q 1 1 T 2 T 1 Q 2 Q 1 T 2 T 1 Q 1 T 1 Q 2 Q 1 0 Q 1 T 1 + Q 2 Q 1 0

Q 1 T 1 + Q 2 Q 1 0 可逆サイクルのとき等号 不可逆サイクルのとき不等号 熱源が 2 つある場合の第 2 法則の数式化 熱源が多数の場合でも同様? i Q i T i 0

i Q i T i 0 熱源 R 1,R 2, R n を温度が連続的に変化する熱源で置き換え 温度 T Clausius の不等式 C W δq T 0 可逆サイクルのとき等号 不可逆サイクルのとき不等号

4 エントロピー 4.1 エントロピーの定義 第 2 法則より 熱機関の効率が可逆機関の効率を超えない エントロピーという重要な概念へ 第 1 法則 du = δq + δw = δq pdv 状態量ではない δw が状態量 p と V で表されている 同じく状態量ではない熱 δq を 状態量を使って表したい! Clausius の不等式 δq T 0

可逆サイクルの場合 : δq T = 0 δq T という量を p-v 面における閉曲線に沿って一周積分すれば 0 になる これは力学における保存力 F についての積分と類似 保存力 : 重力 弾性力 静電気力等非保存力 : 摩擦力 空気抵抗等 Fdr = 0 保存力のする仕事 Fdr の積分は出発点と到着点だけで決まり 経路によらない 基準点を決めて任意の点 P のポテンシャルを U P = 0 P Fdr 点 P だけの関数 保存力の場

Fdr = 0 δq T = 0 基準点を決めて位置だけで決まる ポテンシャル U P = 0 P Fdr 基準点を決めて状態だけで決まる状態 A のエントロピー S A = 0 A δq T エントロピーという新しい状態量を導入!

エントロピーという新しい状態量を導入すると 状態量ではないδWが状態量 pとvで表されたように熱を状態量で表すことができる! p B A O V 二つの状態のエントロピーの差 δq A T = δq B O T + δq O A T + δq B T A δq B = O T + δq B A T δq O T B δq = S(A) + T S(B) S B S A = A A B δq T

A から B への過程が微小過程の場合 S B S A = ds とすると ds = δq T 可逆過程について δq = TdS 状態量ではない δw が状態量 p と V で表されたように 熱 δq を状態量で表すことができた! 可逆過程について熱力学第一法則 : du = δq + δw = TdS pdv

4.2 エントロピー増大の法則 エントロピーは物理学的に何を意味するか まずこの量の性質を見よう 状態 A から状態 B への過程が断熱可逆過程の場合 S B S A = S B =S A A B δq T = 0 状態 A から状態 B への過程が微小過程の場合 ds = δq T = 0 断熱可逆過程の場合はエントロピーは変化しない

次に状態 C から状態 D への不可逆過程と D から C への可逆過程から成るサイクルを考える p D 可逆 δq D T = C( 不 ) δq C T + D( 可 ) δq T 不可逆 C = D C( 不 ) δq T + {S C S D } < 0 V S D S C > D C( 不 ) δq T 微小過程の場合 ds> δq T 断熱不可逆過程の場合は常にδQ=0 D S D S C > C( 不 ) δq T =0 断熱不可逆過程の場合はエントロピーは増加する

可逆 不可逆微小過程の場合 ds δq T 特に孤立系では熱の出入りがないので ds 0 これはエントロピー増大の法則と言われる 不可逆過程はエントロピーが増加する過程であり 熱平衡状態はエントロピーが最大の状態である エントロピーの法則が予想する宇宙の死

エントロピーという言葉を 物理学や化学以外の分野でも広く使うことができる 今では 統計力学 情報理論 生物学 哲学 その他多くの分野で この言葉が使われている 生活における使用例 : 1. 孤立系に近い日本の政治のエントロピーは急速に増大しており 混乱が増している 政治のエントロピーを小さくし 政治に秩序をもたらすために 国民の一人ひとりが 自分たちのエネルギーをもっと政治に注がなければならない 2. ゴミ屋敷の住民は 無秩序極まるエントロピー極大の状況下でも 平気で生活ができる ゴミを片づければ その部屋のエントロピーは小さくなる 本人にそれができないならば ゴミ屋敷報道に興味のあるテレビ局が 本人に代わってひとを手配し ( エネルギーを供給し ) 部屋の片づけをすればいい 3. 金目当てで男を殺す女のニュースが続いている こういう女は 最も身近な人間に実害をもたらすばかりか このニュースに接する多くの人々に心理的な動揺をもたらし 社会のエントロピーを大きくしてしまう 警察はエネルギーを注いで事件を解明し 社会のエントロピーを小さくしなければならない

4.3 エントロピーの計算例 理想気体 du = TdS pdv より ds = 1 T du + p T dv = c V T dt + R V dv 状態 A(T A, V A ) と状態 B(T B, V B ) のエントロピーの差は c V を一定とすると S B S A = c V log T B T A + Rlog V B 第 1 法則に可逆過程 δq=tds を適応して得た式であるが S が状態量なので上の式は過程と関係なく成立する V A

例題 4.1 状態 A 状態 B V A V B 理想気体が断熱自由膨張する場合のエントロピーの変化 : S B S A = c V log T B T A + Rlog V B =Rlog V B V A V A この不可逆過程でエントロピーが増大していることは分かる

例題 4.2 固体や液体が温度 T 1 から T 2 に変化するときのエントロピーの変化 : 比熱 c を一定とする S = T 1 ds = δq T = cdt T 2 cdt T = c T T 2 dt T = clog T 2 T 1 T 1 温度が高い方はエントロピーが大きいことは分かる

カルノーサイクルを T-S 面で描くと 図 4.7 1 S B S A = A B δq T = Q 1 > 0 T 1 T A 1 R 1 Q 1 B 2 S C S B = S D S C = S A S D = B C C δq T = 0 D δq T = Q 2 < 0 T 2 D A δq T = 0 4 D Q 2 R 2 3 2 C S S = Q 1 T 1 + Q 2 T 2 = 0 エントロピーが 1 サイクルについて変化していないことがわかる

熱の自然な流れは不可逆的過程であることを図 4.8 により示せる 高温熱源 R 1 (T 1 ) Q 低温熱源 R 2 (T 2 ) 高温熱源 R 1 (T 1 ) Q Q 低温熱源 R 2 (T 2 ) 同じ結果を生じる可逆過程を用いて 例えば 図のような 1 等温膨張 2 断熱膨張 3 等温圧縮を用いる p A 1 Q R 1 R 1 のエントロピー変化 : Q T 1 R 2 のエントロピー変化 :+ Q T 2 作業物質エントロピー変化 0 S = Q T 1 + Q T 2 > 0 不可逆過程である D Q R 2 3 B 2 C V

4.4 不可逆性とエントロピーの確率的意味 不可逆過程においてエントロピーが増大 不可逆性の確率的意味 N 個の分子から気体を考える N 1 N 2 確率の計算の詳細は省略 図 4.11 のように N 1 = N 2 = N 2 の状態の起こる確率がもっとも高い 確率計算のモデル N 1 = N 2 = N 2 以外の状態の起こる確率は極めて小 さくなり N = 10 23 のような大きい N では実質上 0 である

気体の拡散と確率 N 気体が容器全体で一様に広がって平衡状態に達する 一旦平衡状態に達すると再び気体が左半分に集まってくるようなことは自然には決して起こらない 平衡状態は N 1 = N 2 = N 2 であり 確率がもっとも高い ここからずれた状態が起こる確率は N が大きいと実質上不可能

不可逆過程は起こる確率の低い状態から高い状態への変化であり 平衡状態は起こる確率の最も高い状態である 不可逆過程においてエントロピーが増大 なのでエントロピーは確率と関係がある エントロピーと確率の関係式

状態 A 状態 B V A V B 理想気体が断熱自由膨張する場合のエントロピーの変化 : S B S A = Rlog V B V A 状態 A の起こる確率は W A = C( V A V B ) N 状態 B の起こる確率は W B = C( V B V B ) N W B W A = V B V A N logw B logw A = Nlog V B V A S B S A = Rlog V B V A = R N (logw B logw A )

S B S A = Rlog V B V A = R N (logw B logw A ) S = R N logw = klogw N = 6.023 10 23 mol -1 k = 1.38 10 23 J K 1 ボルツマン定数, 分子 1 個あたりの気体定数

4.5 エントロピーと微視的状態 統計力学 気体の微視的状態は 個々の構成分子について位置と運動量を指定した状態である 物理量の統計的平均値 分子の位置は 3N 個の位置座標で指定し x 1, y 1, z 1, x 2, y 2, z 2, x N, y N, z N 分子の運動は 3N 個の運動量 p 1x, p 1y, p 1z, p 2x, p 2y, p 2z, p Nx, p Ny, p Nz で指定する 1 つの微視的状態は 6N 個の変数 x 1, y 1, z 1, x 2, y 2, z 2, x N, y N, z N, p 1x, p 1y, p 1z, p 2x, p 2y, p 2z, p Nx, p Ny, p Nz で指定することができる e この 6N 次元の空間を位相空間という

等重率の原理 すべての微視的状態は等しい確率で実現する エルゴード仮説 ergodic hypothesis 長い時間尺度 (time scale) でみると 微小状態からなる位相空間内で同じエネルギーをもった領域に費やされる時間は位相空間でしめる体積に比例するというもの すなわち そのようなすべての実現可能な微小状態は長い目で見ると等しい確率で起こるということ 物理量 A の観測値は A の時間平均であり これは位相空間にわたる平均 すなわち A の位相平均に等しい

以上の議論によってエントロピーの式を修正 状態の起こる確率は微視的状態の数に比例するので S = klogw W: 巨視的な状態に対応する微視的状態の数とし エントロピーを正とすることができた 熱力学の第 3 法則 : 絶対 0 度では すべての分子が静止していて位相空間における位置は決まっているので 微視的状態の数は 1 であり エントロピーは 0 となる

統計力学に有名なアイス ルール H 位置!:2 close 2 far 絶対零度でも自由度を持ち熱力学第 3 法則が破れる?!

実験値の氷の残留エントロピー 3.4 J K -1 Mol -1 とぴったり一致 2-close 2-far Ice Rule 一つの H 原子の位置が 2 通り ( 一つの H 2 O 分子では 4 通り ) あるため これらを H 原子が無条件で占めたとすると N 個の H 2 O 分子につき水素の位置の組合わせは 4 N 通りある したがって W =4 N エントロピー S= k B logw = 2N k B log2 4 つの H 原子の位置の並べ方 2 4 通りのうち アイス ルールを満たす組合わせは 4C 2 = 4! /(2! 2!) = 6 より 6 通りある したがって アイスルールを満たす確率は 6/16=3/8 である W=(4 3/8 ) N S= k B logw = N k B log(3/2)

http://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/physrevlett.97.24 7204#fulltext Coexisting Ferromagnetic Order and Disorder in a Uniform System of Hydroxyhalide Co2(OH)3Cl X. G. Zheng, T. Kawae, H. Yamada, K. Nishiyama, and C. N. Xu Phys. Rev. Lett. 97, 247204 Published 13 December 2006 Citing Articles (22)

S/Rln2 15 1 0.8 10 C p (J/mol K) 5 C(H=0) 0.6 0.4 C(H=10 koe) C(lattice) 0.2 S/Rln2(H=0) 0 S/Rln2(H=10 koe) 0 0 5 10 15 20 25 30 T (K)

5 熱力学関数 いろんな化学反応 過程 物理過程 ( 相平衡や相転移 磁化等 ) において状態量の新しい関数を定義すると便利 内部エネルギー 可逆過程第 1 法則独立変数は S,V du dq pdv TdS pdv

エンタルピー 独立変数を S,V から S,p に変えてみる d( U pv ) TdS pdv pdv Vdp TdS Vdp H U pv; enthalpy 物理学的意味 : 等圧過程 : dh TdS Vdp TdS dq 等圧過程において出入りした熱量である 化学 物理 生物過程において等圧での環境とのエネルギーやり取り 物質の発熱 吸熱挙動にかかわる状態量である 名称が似ているエントロピー (entropy) とは全く異なる物理量である

enthalpy とは - 空調用語 Weblio 辞書 www.weblio.jp/content/enthalpy enthalpy とは? 空調用語 熱力学で用いる物理量の一 圧力と体積との積に内部エネルギーを加えた量 圧力一定の条件のもとで, 系に出入する熱量はエンタルピーの変化量に等しい 熱関数

ヘルムホルツの自由エネルギー d( U TS) TdS pdv TdS SdT 独立変数をT,V SdT pdv F U TS Helmholtz free energy 物理学的意味 : 等温過程において df du TdS SdT du TdS du dq dw df dw 等温過程において外部に対する仕事に変換できる最大エネルギー内部エネルギーには 仕事として取り出せる部分とそうでない部分があるというわけだ ヘルムホルツの自由エネルギーというのは等温可逆過程において自由に仕事に変えることができるエネルギーである

ギブスの自由エネルギー d( U TS pv ) TdS pdv pdv Vdp SdT Vdp 独立変数をT,p TdS SdT G U TS pv Gibbs free energy 物理学的意味 : dg du du TdS TdS 等温等圧過程において pdv SdT du pdv dq Vdp pdv 0 等温等圧過程にギブスの自由エネルギーは増加しない 可逆等温等圧系はギブスの自由エネルギーが極小の場合は安定な平衡である相平衡や相転移を調べる時便利シャレで憶えよう : ギブス嵌めてヘルムホルツから仕事できる分を奪った

熱力学関係式 熱力学関数より状態量 T,V,p,S 間の関係式が導出される 内部エネルギーの式 ( 第 1 法則 ) により du TdS pdv U は独立変数 S,V の関数

dh TdS Vdp

df TdS pdv TdS SdT SdT pdv

dg TdS pdv TdS SdT pdv Vdp SdT Vdp

Maxwell 関係式

熱平衡 熱力学過程における変化の向きはすべて ds d Q / T ( du dw ) / T 熱的にも力学的にも孤立した系において dq 0, dw 0 ds 0 エントロピーは減少しない 熱平衡状態では系の仮想的微小変化に対するエントロピーの変化 DS=0 となる (S がそれ以上増えないから ) エントロピーが極大のとき ( 孤立 ) 系は安定な平衡である

断熱系においては ds dq / T 0 エントロピーは減少しない 等温系においては df d( U TS) du TdS du dq d W 外部からの仕事がない化学変化のような場合は dw =0 であるから df 0 それ以上減らないから 等温等積系の場合 安定な熱平衡状態はヘルムホルツの自由エネルギーが極小となる状態である

等温等圧系においては dg d ( U TS pv ) du TdS pdv du d Q pdv 0 dg 0 それ以上減らないから 等温等圧系の場合 安定な熱平衡状態はギブスの自由エネルギーが極小となる状態である

相平衡二つの相が共存して平衡になる相平衡の条件 n モルの系のギブスの自由エネルギー :G=ng (5.33) dg = ndg + gdn (5.34) 1 モルあたりのエントロピー :g dg d( U TS pv ) TdS pdv TdS SdT SdT Vdp より pdv Vdp dg = -sdt + vdp (5.35) 35 を 34 に代入 dg = n(-sdt+vdp) + gdn = -SdT+Vdp + gdn (5.36) (5.37)

それぞれの量 ( モル数 ) が変化する二つの相の平衡を考える (5.36) より dg = d(g 1 +G 2 )= -(S 1 +S 2 )dt + (V 1 +V 2 )dp + g 1 dn 1 + g 2 dn 2 = -SdT + Vdp + g 1 dn 1 + g 2 dn 2 (5.38) 2 つの相の温度が等しくなった時相平衡が成り立つのであり また両相の圧力も等しくなければ力学的な平衡が成り立たないから 等温等圧の場合を考えれば良い dg = g 1 dn 1 + g 2 dn 2 (5.39) 等温等圧の下での平衡条件は dg d( U TS pv ) du TdS pdv 0 一方 dn=d(n 1 +n 2 )= 0 dg =0= g 1 d(n 1 + n 2 ) + (g 2 -g 1 )dn 2

g 1 = g 2 2 相が共存して平衡状態にあるときは 両相の 1 モルあたりのギブスの自由エネルギーが等しい

クラペイロンークラウジウスの式 水は点線 相図 ( 状態図 ) 純物質の熱力学的自由度は最大でも 2 なので 温度と圧力によって, 全ての相を表すことができる 物質の三態と温度 圧力の関係を示す相図の例 横軸が温度 縦軸が圧力 緑の実線が融解曲線 赤線が昇華曲線 青線が蒸発曲線 三つの曲線が交わる点が三重点

クラペイロンークラウジウスの式 図 5.1 のような 2 相共存の境界線を考える L = nl,l は相 1 から相 2 に移る時加える熱量

証明 g 1 (T, p) = g 2 (T, p) g 1 (T+dT, p+dp) = g 2 (T+dT, p+dp) g 1 (T+dT, p+dp) - g 1 (T,p) = g 2 (T+dT, p+dp) - g 2 (T,p) dg 1 の全微分 dg 2 の全微分 dg 1 = dg 2 dg = -sdt + vdp を代入 -s 1 dt + v 1 dp = -s 2 dt + v 2 dp

dp / dt = (s 2 -s 1 ) / (v 2 -v 1 )

水の蒸発曲線 水から水蒸気へ V2>V1 熱を吸収 dp/dt > 0 気圧の低い高山では沸点が下がり 高圧鍋では沸点が上がる 水の融解曲線 圧力が上がると 体積を減らす方に作用 蒸発しにくくなる 他の物質と異なる wiki 相図の点線 氷から水へ V2<V1 熱を吸収 dp/dt < 0 スケート靴のエッジで氷を押すと 圧力が上がって氷点が下がり 氷が融けて滑りやすくなる 圧力が上がると 体積を減らす方に作用 融けやすくなる

マクスウェルの直線 図 5.3 温度の低いときのファンデルワールスの状態方程式のグラフについて 補足説明 :PQ の部分は液相 直線 QR は液相 気相共存線 RS は完全な気相 直線 QR の部分は液相 気相が共存するので ファンデルワールス式のような QTUVR を実際辿らない

6 分子運動論 分子の運動という微視的な立場から理想気体の状態方程式 エネルギーの等分配則 気体分子の速度分布を導く

6.1 気体分子運動論 密封容器内相互作用しない 1 モルの気体の圧力を考える 分子の速度 υ (u,v,w) ニュー 速度の x 成分が u u+du 間にある確率を f(u)du とする z l y 面積 S x 体積 Vの容器に1モル (N 個の分子 ) 速度の x 成分が u の分子 1 個が x 軸に垂直な壁に衝突した時 壁に力積 2mu を与える 速度の x 成分が u u+du 間にある分子の数 : Nf(u)du 確率分布 1 秒間に x 軸に垂直な壁に分子が u/2l= u/(2v/s)=us/2v 回衝突

分子の速度 υ(u,v,w) z 速度の x 成分が u u+du 間にある確率 : f(u)du 速度の x 成分が u の分子 1 個が x 軸に垂直な壁に衝突した時 壁に力積 2mu を与える 速度の x 成分が u u+du 間にある分子の数 : Nf(u)du 面積 S x 体積 Vの容器に1モル (N 個の分子 ) 1 秒間に x 軸に垂直な壁に分子が u/2l= u/(2v/s)=us/2v 回衝突 1 秒間の力積の総和 : 2mu Nf(u)du us/2v l y 全体の分子が壁 S に及ぼす圧力 :

_ υ 2 _ υ 2 /3 υ υ

υ υ e υ 絶対温度は気体分子の平均運動エネルギーに比例することが分かる 相互作用しない気体の内部エネルギー υ 分子量を M とすると 分子の速度の 2 乗平均は υ

気体の比熱 定積比熱 理想気体 マイヤーの関係式により 比熱比 r = c p c V = 5 3 表 6.1 と比較 : 単原子分子でよく合う

6.2 エネルギー等分配の法則 υ υ 1 つの自由度に対して 1/2kT ずつエネルギーが分配される

2 原子分子 : 質点の自由度 3+ 回転自由度 2=5 軸を中心とした回転は位置が変わらないため自由度計上せず 表 6.1 と比較 :2 原子分子でよく合う 3 原子分子は? 振動は?

固体の場合 : 原子 1 個あたりの運動エネルギーと結合エネルギーの和 K は弾性係数 ばねの様に原子と原子を結合 比熱は c = 3R デュロンープティの法則 ただし 低温では合わない 三年生授業 : 量子統計

6.3 速度の分配則 気体分子が一定温度 ( 熱運動エネルギー ) での速度分布 マクスウェルの分布関数 : 確率分布 f(u) の関数形を求めよう 速度 υの1つの分子の速度のx 成分がu u+du 間にある確率 : f(u)du y 成分がv v+dv 間にある確率 : f(v)dv ニュー z 成分がw w+dw 間にある確率 : f(w)dw とする 重力を無視すれば気体には方向性は無く x,y,z 同等で関数形は同じ 気体分子の速度が u u+du v v+dv w w+dw 間にある確率 : F(uvw)dudvdw とし f(u),f(v),f(w) は互いに独立と仮定する F(uvw) =f(u)f(v)f(w) F(υ) =f(u)f(v)f(w) 気体に方向性が無いから F は速さ ( 速度の大きさ ) υ のみの関数となる

log F(υ) =log f(u) + log f(v) + log f(w) それぞれ偏微分 υ = u 2 + v 2 + w 2 を利用 υ u = 1 2 (u2 + v 2 + w 2 ) 1 2 1 (u2 + v 2 + w 2 ) u = u υ u υ v υ w υ F (υ) F(υ) = f (u) f(u) F (υ) F(υ) = f (v) f(v) F (υ) F(υ) = f (w) f(w) F (υ) υf(υ ) = f (u) uf(u ) = f (v) vf(v ) = f (w) wf(w)

u,v,w は独立であるから 上の式が常に成立するには それぞれが定数でなければならない F (υ) F(υ ) = f (u) uf(u ) = f (v) vf(v ) = f (w) wf(w) =const.= -2A f (u) = Bexp(-Au 2 ) f (v) = Bexp(-Av 2 ) f (w) = Bexp(-Aw 2 ) F (u,v,w) = B3 exp[-a(u 2 +v 2 +w 2 )]

確率の定義により F (u,v,w) = B 3 exp[-a(u 2 +v 2 +w 2 )] 付録 1

A で微分 これを利用して速度の 2 乗平均を計算

エネルギーの等分配の法則により 図 6.4 その意味 気体分子が一定温度 ( 熱運動エネルギー ) での速度確率分布

気体分子が一定温度 ( 平均熱運動エネルギー ) での速度分布 Maxwell-Boltzmann の分布関数 仮定を使っていたが この結果は厳密に正しい 統計物理などで使う

速さ ( 速度の絶対値 ) の分布 v υ dυ u w 球殻体積 =4p υ 2 dυ 速さが υ υ+dυ 間にある確率 g(υ)dυ

速さが υ υ +dυ 間にある確率 g(υ)dυ g(υ)dυ = F(υ)4πυ 2 dυ = 4π m 2πkT 3 υ 2 exp mυ2 2kT dυ もっとも多くの分子がもつ速さ ( 最多速度 )υ m は dg(υ) dυ = 0 υ m = 2kT m = 2RT M

平均速さ υ = υg(υ)dυ 0 = 4π 0 m 2πkT 3 υ 3 exp m 2kT υ2 dυ = 2 π 2kT m = 1.1284υ m 速さ 2 乗平均 υ 2 = 0 υ 2 g υ dυ = 3kT m = 3RT M υ 2 = 3 2 2kT m = 1.2247υ m

問題 6.3 6.4 揺らぎの意味 Δx = x x) 2 Δx = x x) 2 = x 2 2x x + x 2 = x 2 2 x x + x 2 = x 2 x 2 速度の揺らぎ Δu = u u) 2 = u 2 u 2 = u 2

速さの揺らぎ 平均速さはゼロではないので速度の揺らぎと異なる Δυ = υ υ) 2 = υ 2 υ 2