Polyoxometalateが有するcysteine検出能の検討及びジスルフィド結合形成反応への展開

Similar documents
Perl + α. : DNA, mrna,,

B0B820DFD845F9DE49256B7D0002B34

Microsoft PowerPoint 説明資料(きのこを活用してGABA富化素材を作る)林産試験場

PowerPoint プレゼンテーション

™·”õ/sec3_p63_84/fiü“eflÅ

ウェブ23Brev2

1_alignment.ppt

スライド 1

3. 生化学的検査 >> 3C. 低分子窒素化合物 >> 3C045. 検体採取 患者の検査前準備 検体採取のタイミング 記号添加物 ( キャップ色等 ) 採取材料採取量測定材料ネ丸底プレイン ( 白 ) 尿 9 ml 注 外 N60 セイカ 検体ラベル ( 単項目オーダー時 ) ホンハ

狂牛病調査第2巻1章,2章.doc

日本化学療法学会雑誌第57巻第1号


ナノの技術をバイオに応用

スライド 1

<4D F736F F F696E74202D20385F E096BE8E9197BF E95D395B691BE90E690B6816A8F4390B E>

37-4.indd

PowerPoint プレゼンテーション

<4D F736F F D B82C982C282A282C482512E646F63>

Microsoft PowerPoint - 2_(廣瀬宗孝).ppt

日本化学療法学会雑誌第66巻第2号

本日の内容 HbA1c 測定方法別原理と特徴 HPLC 法 免疫法 酵素法 原理差による測定値の乖離要因

首都圏北部 4 大学発新技術説明会 平成 26 年 6 月 19 日 オレフィン類の高活性かつ立体選択的重合技術 埼玉大学大学院理工学研究科 助教中田憲男

HOE901 A S S Gly Ile Val Glu Gln Cys Cys Thr Ser Ile Cys Ser Leu Tyr Gln Leu Glu Asn Tyr Cys Gly

<4D F736F F F696E74202D203692B98EE691E58A C946E8D758E74205B8CDD8AB B83685D>

スライド 1

ŁRŁ¸•ñŁŁŁ‘

シプロフロキサシン錠 100mg TCK の生物学的同等性試験 バイオアベイラビリティの比較 辰巳化学株式会社 はじめにシプロフロキサシン塩酸塩は グラム陽性菌 ( ブドウ球菌 レンサ球菌など ) や緑膿菌を含むグラム陰性菌 ( 大腸菌 肺炎球菌など ) に強い抗菌力を示すように広い抗菌スペクトルを

PowerPoint プレゼンテーション

日本食品成分表分析マニュアル第4章

Microsoft PowerPoint - protein1.ppt [互換モード]

新技術説明会 様式例

(1) GGT阻害剤

ヒトゲノム情報を用いた創薬標的としての新規ペプチドリガンドライブラリー PharmaGPEP TM Ver2S のご紹介 株式会社ファルマデザイン

スライド 1

練習問題

Microsoft Word - タンパク質溶液内酵素消化 Thermo

untitled

の活性化が背景となるヒト悪性腫瘍の治療薬開発につながる 図4 研究である 研究内容 私たちは図3に示すようなyeast two hybrid 法を用いて AKT分子に結合する細胞内分子のスクリーニングを行った この結果 これまで機能の分からなかったプロトオンコジン TCL1がAKTと結合し多量体を形

Microsoft Word - 14_LCMS_アクリルアミド

,328 C 6426 H 9900 N 1700 O 2008 S , ,

論文の内容の要旨 コエンザイム Q10 結合蛋白質の発見とその機能 氏名 金光植 緒論 コエンザイム Q10 は真核細胞のミトコンドリア呼吸鎖の電子伝達因子でエネルギー産生に必要 不可欠な成分である. その還元型である Ubiquinol は脂溶性の抗酸化剤として注目されている. 日 本では 197

I 2 ESI - Ion Trap


Amino Acid Analysys_v2.pptx

生物有機化学

新技術説明会 様式例

PowerPoint プレゼンテーション

1 抗体に代るペプチドを用いた分子認識材料 ( ペプチドアプタマー ) の迅速な創製 埼玉大学 大学院理工学研究科物質科学部門 准教授根本直人

セリン OH 基は極性をもつ 親水的である トレオニン OH 基は極性をもつ 親水的である チロシン OH 基は極性をもつ 親水的である 解離してマイナスの電荷を帯びる 4 側鎖 アラニン 疎水的である グリシンの次に単純 グリシン もっとも単純な構造のアミノ酸 α 炭素が不斉炭素でないので唯一立体


Microsoft PowerPoint - 4_河邊先生_改.ppt

がんを見つけて破壊するナノ粒子を開発 ~ 試薬を混合するだけでナノ粒子の中空化とハイブリッド化を同時に達成 ~ 名古屋大学未来材料 システム研究所 ( 所長 : 興戸正純 ) の林幸壱朗 ( はやしこういちろう ) 助教 丸橋卓磨 ( まるはしたくま ) 大学院生 余語利信 ( よごとしのぶ ) 教

表紙.indd

平成27年度 前期日程 化学 解答例

近畿中国四国農業研究センター研究報告 第7号

研究の背景と経緯 植物は 葉緑素で吸収した太陽光エネルギーを使って水から電子を奪い それを光合成に 用いている この反応の副産物として酸素が発生する しかし 光合成が地球上に誕生した 初期の段階では 水よりも電子を奪いやすい硫化水素 H2S がその電子源だったと考えられ ている 図1 現在も硫化水素

2004 年度センター化学 ⅠB p1 第 1 問問 1 a 水素結合 X HLY X,Y= F,O,N ( ) この形をもつ分子は 5 NH 3 である 1 5 b 昇華性の物質 ドライアイス CO 2, ヨウ素 I 2, ナフタレン 2 3 c 総電子数 = ( 原子番号 ) d CH 4 :6

2. 背景タンパク質を構成するアミノ酸には L-アミノ酸と D-アミノ酸の 2 つの鏡像異性体が存在します ( 図 1) これまで生物は L-アミノ酸のみを選択的に利用していると考えられてきました ところが分析技術の進歩と共に 生物の体内に少量ながらも D-アミノ酸が存在することが分かってきました

DA RA

新規な金属抽出剤

SEC (SEC) SEC SEC SEC 2

研究成果報告書

平成 29 年度大学院博士前期課程入学試験問題 生物工学 I 基礎生物化学 生物化学工学から 1 科目選択ただし 内部受験生は生物化学工学を必ず選択すること 解答には 問題ごとに1 枚の解答用紙を使用しなさい 余った解答用紙にも受験番号を記載しなさい 試験終了時に回収します 受験番号

Microsoft PowerPoint 熊大 城野.ppt

i ( 23 ) ) SPP Science Partnership Project ( (1) (2) 2010 SSH

Agilent BioHPLC HPLC/UHPLC /

図 B 細胞受容体を介した NF-κB 活性化モデル

PowerPoint プレゼンテーション

小角散乱を用いて多機能タンパク質の 機能発現の分子機構を探る

柿渋由来ゲルを用いたカフェンの選択的除去

014E83AC26AFE ACA001C23F

基質溶液 ( 脂質成分を含む製品では 本手順はデータの精度に大きく影響します 本手順の記載は特に厳守ください ) 添付の基質溶液は希釈不要です 融解し室温に戻した後 使用直前に十分に懸濁してください (5 分間の超音波処理を推奨いたします ) 解凍後の基質溶液の残りは 繰り返しの凍結融解を避けるため

遺伝子発現データの クラスタリングの理論的背景

高 1 化学冬期課題試験 1 月 11 日 ( 水 ) 実施 [1] 以下の問題に答えよ 1)200g 溶液中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 整数 ) 2)200g 溶媒中に溶質が20g 溶けている この溶液の質量 % はいくらか ( 有効数字 2 桁 ) 3) 同じ

HPLC 1M KH 2 PO 4 ph ml Anthranilic acid: AnA 600 ml ml AnA 1.0 ml / min Anthranilic acid= PRESSURE 140 kgf / cm 2

Taro-化学3 酸塩基 最新版

(12・6No.3)予稿集資料(福岡大学 福田)-1

FMO法のリガンド-タンパク質相互作用解析への応用

島津ジーエルシー総合カタログ2017【HPLCカラム】

IC-PC法による大気粉じん中の六価クロム化合物の測定

プロトコル 細胞 増殖 / 毒性酸化ストレス分子生物学細胞内蛍光プローブ細胞染色ミトコンドリア関連試薬細菌研究用試薬膜タンパク質可溶化剤ラベル化剤二価性試薬イオン電極 その他 機能性有機材料 タンパク質を定量したい 使用製品 -Proteostain- Protein Quantification

問 1. 次の文章を読み 以下の設問 (1)~(3) に答えよ タンパク質 X の N 末端にヒスチジンタグを付加し これを大腸菌で大量発現して精製する実験を計画している (1) その準備として 遺伝子 x を PCR で増幅し T7 プロモーターを持つベクター (pet28a) の NdeI と

10 高分子化学 10.1 高分子序論炭素分子が共有結合で結びついていると 高分子化学物という 例えば ポリエチレンや PET ナイロン繊維などの人工物やセルロース たんぱく質などの生体化合物である 黒鉛は高分子に数えないのが普通である 多くの高分子は 小さな繰り返しの単位が 結びつき 高分子となっ

まえがき

色覚(初組4).pm

肝クッパ 細胞を簡便 大量に 回収できる新規培養方法 農研機構動物衛生研究所病態研究領域上席研究員山中典子 2016 National Agriculture and Food Research Organization. 農研機構 は国立研究開発法人農業 食品産業技術総合研究機構のコミュニケーショ

平成26年度 化学物質分析法開発報告書

新技術説明会 様式例


Microsoft Word - Dr. Abe.doc

平成26年度 化学物質分析法開発報告書

石井研雑誌会 No M2 小倉一将 構造学的に見た Electron bifurcation はじめに Electron bifurcation は酵素反応の一種であり 酸化還元的な発エルゴン反応と吸エルゴン反応が共役するシステムのことを指す フラビンや鉄硫黄クラスターなど様々な電子伝達

(Microsoft Word - \230a\225\266IChO46-Preparatory_Q36_\211\374\202Q_.doc)

< 研究の背景と経緯 > 半導体製造技術により 生体分子と親和性の高いマイクロチップが開発され それらを基盤とした革新的なバイオ分析技術が実現しています その中でも デジタルバイオ計測は マイクロチップを利用して 1 個の生体分子から機能や物性を高感度かつ定量的に計注測できる手法であり Digita

官能基の酸化レベルと官能基相互変換 還元 酸化 炭化水素 アルコール アルデヒド, ケトン カルボン酸 炭酸 H R R' H H R' R OH H R' R OR'' H R' R Br H R' R NH 2 H R' R SR' R" O R R' RO OR R R' アセタール RS S

<4D F736F F F696E74202D DB28B7690EC8BB38EF690E096BE8E9197BF5F8CDD8AB B C83432E >


質量分析計を用いて腸内細菌叢が産生するD-アミノ酸を新発見―高感度ハイスループット・キラルアミノ酸解析でD-アミノ酸研究に新展開―

目次 緒論 1 第一章 アミノ酸メタボロミクスの開発 プレカラム誘導体化 HPLC- 蛍光検出法 基準操作 クロマトグラム バリデーション 非誘導体化 LC-MS/MS 法 基準操作 クロマト

従来のペプチド免疫療法の問題点 樹状細胞 CTL CTL CTL CTL CTL CTL CTL CTL 腫瘍組織 腫瘍細胞を殺す 細胞傷害性 T 細胞 (CTL) の大半は 腫瘍の存在に気づかず 血管内を通り過ぎている! 腫瘍抗原の提示を考えると それは当然! 2

Transcription:

チオールを特異的に酸化し 発色する 山形大学理工学研究科バイオ化学工学専攻准教授今野博行

金属酸化物クラスターアニオン ポリオキソメタレート Polyoxometalate (POM) 金属元素に酸素が6個配位した MO6を基本骨格とする金属酸化物 1 nm クラスターアニオン MO6 (octahedron) ( PxMyOz )n 構造 構成元素 対カチオン等を 制御することで 様々な機能性を 付与できる可能性 酸触媒 ナノマテリアル 酸化剤 フォトクロミック材料 医薬品 (癌 HIV アルツハイマー病) Putaj, P., et al., Coordination Chemistry Reviews 2011, 255 (15-16), 1642-1685

本研究の背景 2013 年 POM の細胞膜破壊作用を並河らが発見 * POM の抗菌活性試験を行った結果 グラム陽性菌のブドウ球菌に対し MIC ( 最小阻害濃度 ) = 100 μg/ml の抗菌活性 ブドウ球菌培養液が青色に呈色 After 3 h 0 25 50 75 100 150 200 Concentration of α-k 6 [P 2 W 18 O 62 ] nh 2 O (μg/ml) * Nabika, H., et al., RSC Adv. 2013, 3, 21271-21274

本研究の背景 ブドウ球菌表面上で酸化還元反応が進行したと仮定 Red. [P 2 W 18 O 62 ] 6- [P 2 W 18 O 62 ] 7- Ox. チオール含有アミノ酸である cysteine 水溶液に POM を添加したところ 青色に呈色 POM L-cysteine この呈色反応は速やかに進行し 極めて視覚的であるにも関わらず 先行研究はほとんど行われていない

本研究の目的 1 POM の cysteine 検出能の検討 2 ジスルフィド結合形成反応への展開

本実験で使用したPOM Keggin type POM1. POM2. POM3. POM4. POM5. メタタングステン酸アンモニウム (NH4)6[H2W12O40] nh2o ケイタングステン酸 H4[SiW12O40] nh2o リンタングステン酸 H3[PW12O40] nh2o リンモリブデン酸 H3[PMo12O40] nh2o リンモリブデン酸アンモニウム (NH4)3[PMo12O40] nh2o Dawson type POM6. リンタングステン酸カリウム α-k6[p2w18o62] nh2o POM7. 1欠損リンタングステン酸カリウム α-k10[p2w17o61] nh2o POM8. 3欠損リンタングステン酸ナトリウム α-na12[p2w15o56] nh2o Keggin type Dawson type Blue octahedrons : W or Mo Red dots : O [PW12O40]3- [P2W18O62]6-

POM の作製法 85% H 3 PO 4 KCl Na 2 WO 4 H 2 O reflux 100, 8h Na + P 2 W 18 O 62 6-1) recrystallization 100, H 2 O 2) cooling 5, 1 day XRD pattern of POM6 washing K 6 [P 2 W 18 O 62 ] 10H 2 O

Absorbance POM を用いた cysteine の検出 (1) POM1 8 を用いた cysteine の検出 After 24 h POM1 Mixture of 10 mg/ml L-cysteine (500 µl) and 10 mg/ml POM1-8 (100 µl) 3 2 1 POM2 POM3 POM4 POM5 POM6 POM7 POM8 After 24 h, 700 nm 0 POM1 POM2 POM3 POM4 POM5 POM6 POM7 POM8 Fig. 1. Absorbance of L-cysteine and POM1-8 mixture Cysteine に対して H 3 [PMo 12 O 40 ] nh 2 O (POM4) が最も高い反応性

POM を用いた cysteine の検出 (2) H 3 [PMo 12 O 40 ] nh 2 O (POM4) を用いた cysteine の検出 After 10 min Gly Ala Val Leu Ile Phe Cys Ser Pro Met Asn Gln Thr Tyr Trp Asp Glu His Arg Lys Mixture of 10 mg/ml L-amino acid (100 µl) and 10 mg/ml H 3 [PMo 12 O 40 ] nh 2 O (20 µl) H 3 [PMo 12 O 40 ] nh 2 O は cysteine のみを選択的に検出

(thousandths) 0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 POM を用いたジスルフィド結合の形成 4.084 4.076 4.068 4.060 abundance 3.941 3.930 3.385 3.323 3.315 3.293 3.285 3.244 3.129 3.113 3.100 3.082 3.038 3.026 3.007 2.995 2.953 2.945 2.923 2.915-52.15u 0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 2 [PMo 12 O 40 ] 3- [PMo 12 O 40 ] 4-4.2 4.1 4.0 3.9 3.8 3.7 3.6 3.5 3.4 3.3 3.2 3.1 3.0 2.9 2.8 X : parts per Million : Proton 1 チオールの酸化に伴うジスルフィド結合の形成 2 酸化還元状態の変化に伴う POM の呈色反応 4.2 4.1 4.0 3.9 3.8 3.7 3.6 3.5 3.4 3.3 3.2 3.1 3.0 2.9 2.8 Fig. 2. 1 H-NMR spectra of L-cysteine and POM mixture (3 days) X : parts per Million : Proton

Absorbance POM を用いた cysteine の検出範囲 After 2 h 100 mm 10 mm 1 mm 100 μm 10 μm 1 μm control Mixture of L-cysteine (500 µl) and 20 mm H 3 [PMo 12 O 40 ] nh 2 O (500 µl) 2 After 2 h, 700 nm 1.5 1 0.5 0 Detection limit 100 mm* 10 mm* 1 mm 100 μm 10 μm 1 μm Control Final concentration of L-cysteine Fig. 3. Transition of absorbance by concentration of L-cysteine

POM を用いた保護 cysteine の検出 After 24 h Fmoc-Cys-OH Boc-Cys-OH Z-Cys-OH H-Cys-OBn H-Cys-OMe Mixture of 10 mg/ml protected cysteines (1 ml, DMSO) and 10 mg/ml H 3 [PMo 12 O 40 ] nh 2 O (200 µl) 保護基の立体障害が POM との反応性に大きく影響する

mv mv 1 6.12 1 5.72 2 9.8 POM を用いた glutathione の検出 GSH H 3 [PMo 12 O 40 ] nh 2 O H 2 O, r.t., 24 h After 10 min GSH GSSG GSSG 287 187 389 t R = 5.72 t R = 9.80 289 189 Addition of H 3 [PMo 12 O 40 ] nh 2 O (1.8 mg) to 10 mm glutathione aqueous solution (1 ml) 87-13 4 9 Time (min) 89-11 4 9 Time (min) Fig. 4. HPLC profile of glutathione and POM mixture

Absorbance POM を用いた pentapeptide の検出 Table 1. Reaction of pentapeptides with POM entry sequence with POM 3 After 24 h, 700 nm 2 1 Ac-Ser-Cys-Ala-Phe-Ile-NH 2 2 Ac-Ser-Gly-Ala-Cys-Ile-NH 2 3 Ac-Ser-Phe-Cys-Phe-Ile-NH 2 4 Ac-Ser-Gly-Cys-Gly-Ile-NH 2 1 0 13 42 53 64 Cys Fig. 5. Absorbance of pentapeptides and POM mixture Mixture of 10 mg/ml pentapeptides (800 µl) and 10 mg/ml H 3 [PMo 12 O 40 ] nh 2 O (200 µl) ペプチドのアミノ酸配列により POM との反応性は大きく異なる

Oxytocin の合成 (1) H 3 [PMo 12 O 40 ] nh 2 O DMSO, r.t., 24 h Oxytocin

mv 2 14.74 1 13.39 mv 5 13.56 6 13.98 Oxytocin の合成 (2) Oxytocin linear peptide 950 t R = 13.98 [M+H] + = 1009.4436 450-50 Oxytocin 12 12.5 13 13.5 14 14.5 15 Time (min) 950 t R = 13.39 [M+H] + = 1007.2919 450-50 12 13 14 15 Time (min) Fig. 6. HPLC profile of oxytocin and POM mixture Fig. 7. ESI-MS of oxytocin

Bactenecin の合成 (1) H 3 [PMo 12 O 40 ] nh 2 O 0.1M HCl aq./dmso (1:2) r.t., 24 h Bactenecin

mv 3 10.34 4 11.47 2 10.12 3 10.38 Bactenecin linear peptide 4 10.59 5 11.48 mv Bactenecin の合成 (2) 170 t R = 10.38 120 70 20 10 10.5 11 11.5 12 Time (min) [M+H] + = 1485.7446 Bactenecin 170 t R = 11.47 [M+H] + = 1483.6105 120 70 20 10 10.5 11 11.5 12 Time (min) Fig. 8. HPLC profile of Bactenecin and POM mixture Fig. 9. ESI-MS of Bactenecin

POM の cysteine 検出能 結論 Keggin 型 Polyoxometalate の H 3 [PMo 12 O 40 ] nh 2 O が cysteine と選択的に反応し 青色に呈色 POM の cysteine 検出能は保護基の有無やペプチドのアミノ酸配列により大きく変化 ジスルフィド結合形成反応への展開 POM を用いたチオールの酸化によるジスルフィド結合性環状ペプチドの生成を確認

従来技術とその問題点 グルタチン システイン ホモシステインなどに代表とされる生体チオールは 生体酸化還元ホメオスタシスを維持し 代謝を司る重要物質の一つである 酸化ストレスや疾患への関与が示唆されている特定のチオールを検出する手法として分光学的な方法が用いられる エルマンズ試薬 (DTNB 法 ) DTNB (λ max = 325 nm) 難水溶性チオール以外の攻撃を受けやすい 5-Mercapto-2-nitro benzoic acid (λ max = 412 nm) Mixed disulfide On/off シグナル比が低い洗浄 単離を必要とする

新技術の特徴 従来技術との比較 エルマンズ試薬 POM 水溶性低い高い 有機溶媒溶解性高い低い 安定性 様々な求核攻撃を受ける加水分解を受けやすい チオール特異的 >ph9 で分解する 後処理洗浄 単離が必要必要としない 価格 5,200 円 /1 g ( 同仁化学 ) 7,600 円 /100 g ( 東京化成 )

想定される用途 本技術の特徴はその手軽さにある 市販の高額な試薬と比較して感度 ( シグナル比 ) が十分でないため その効果的な用途を模索中である 生体内検査試薬のみならず 水質検査など環境測定分野への応用も視野に入れて検討している チオールの架橋反応を基盤にしているので バイオコンジュゲート ( 蛋白質と蛍光分子等 ) 試薬としての用途を想定している

実用化に向けた課題 現在 アミノ酸 ペプチドについて集中して検討している さらに蛋白質中のチオールの検出 蛋白質のバイオコンジュゲート試薬としての可能性を追求する 今後 他の生体分子 ( 核酸 糖鎖 脂質など ) チオール系低分子への検討が必要である POM の構造改変による感度の向上にも取り組み必要がある

企業への期待 本方法論を適用可能フィールドの提供 講演者は大学 創薬研究 有機合成などの狭い世界しか知らないため 本技術が真に活躍できる場所がどこにあるかはっきりと見定めができていない

本研究に関する知的財産権 発明の名称 : チオール検出剤及びチオール検出方法 出願番号 : 2017-042821 出願人 : 国立大学法人山形大学 発明者 : 今野博行 並河英紀 鵜浦啓

産学連携の経歴 2006 年 2007 年地域イノベーション創出事業 重点地域研究開発プログラムシーズ発掘試験に採択 2011 年 -2012 年第 2 回 A-STEP FS 探索タイプに採択 2017 年 -2018 年地域産学バリュープログラムに採択 : セルスペクト社と共同研究

お問い合わせ先 山形大学国際事業化センター知的財産部門事務担当馬場 TEL 0238-26-3024 FAX 0238-26-3633 Mail yu-chizai@jm.kj.yamagata-u.ac.jp