平成 19 年度修士論文 脊柱モデルモデルを用いたいた腰椎腰椎へのへの負荷負荷の評価 Evaluation of effect of posture by using spinal column model 指導教員井上喜雄教授 副指導教員芝田京子准教授 高知工科大学大学院工学研究科基盤工学専攻 ( 前期 ) 知能機械システム工学コース 1105206 大嶋康之
1 はじめに... 2 2 腰痛の現状... 3 2.1 ぎっくり腰... 3 2.2 変形性腰椎症... 3 2.3 腰椎椎間板ヘルニア... 3 3 腰痛と脊柱湾曲... 4 3.1 医療現場より (1)... 4 3.2 カイロプラクティック (2)(3)... 5 4 立位における脊柱と骨盤の関係... 6 4.1 立位における理想的姿勢... 6 4.2 骨格構造による骨盤回転... 7 5 モデリング... 8 5.1 骨格系... 8 5.1.1 脊椎 骨盤... 8 5.1.2 腰椎モデル... 10 5.1.3 胸椎モデル... 12 5.1.4 頚椎モデル... 13 5.1.5 骨盤モデル... 15 5.1.6 腕部 脚部 頭部モデル... 18 5.2 筋系... 20 5.2.1 筋の種類... 20 5.2.2 筋モデルの配置... 22 5.3 質量系モデル... 28 5.3.1 各モデルの質量定義... 28 6 シミュレーション... 30 6.1 シミュレーション条件... 30 6.2 シミュレーション結果... 31 6.3 考察... 34 7 おわりに... 35 参考文献... 37 1
1 はじめに近年高齢者の増加に伴い, 介護福祉業界の拡大が進んでいるが, それに伴って問題となっているのが, 介護者の負担の増大である. 介護を必要とする人を抱え, 持ち上げ, 支えるということは肉体的疲労だけでなく, 事故や怪我をさせてはならないという圧迫感から精神的ストレスもかかる. 介護施設のような福祉関係の職場では, 一般に使命感や奉仕の精神が優先して, 安全衛生や健康管理体制が十分でない所が多く, このような現場で人の手だけですべての介護を行おうとすれば, 様々な健康障害を引き起こす恐れがある. 中でも腰痛は介護者の大きな悩みとなっており, 介護施設だけでなくその他の多くの職場でも腰痛は職業病の一つとして認知されている. しかし腰痛の多くは姿勢の改善で痛みが引くことから, 治療法は姿勢を正すことであると言われている. ゆえに, 腰痛の治療や予防 防止, 改善には, 日常生活において正しい姿勢をとり, いかに背骨や骨盤に負担をかけないようにするかが課題となっており, 様々な対策が採られている. しかし, 種々の姿勢変化によって, どれだけの負荷が腰椎に加えられ, またどのような症状を引き起こすのかは詳しくは分かっておらず, 具体的な数値評価が示されていない. そこで本研究では姿勢の変化による脊椎系, 特に腰椎部の応答に注目し, 人体の腰痛を工学的に表現しうるモデルを構築し, モデルを用いて立位における姿勢変化での腰椎にかかる負荷を計算して, モデルの妥当性について検討した. 2
2 腰痛の現状一言に腰痛といっても様々な要因がある. 内臓疾患が起因するものや, 骨, 筋関節の障害によるもの, 加齢による変性によるものや, 椎間板の損傷によるもの, さらには心因性によるものなど多岐に渡る. 以下では腰痛の代表的なものをいくつか挙げる. 2.1 ぎっくり腰腰を曲げ, わずかに体をひねっただけで起こる事がある. もちろん, 重い物を持ち上げた直後の事もある. ヘルニアの脱出である場合もあり, はじめは腰全体が痛くて左右どちらが痛いのか判らなくても, やがて判明する. また靭帯や筋起始部の小部分の断裂の事もある. 腰の激痛のため身動きもできなくなり, 寝返りをうつのも辛くなる. 腰痛といっても初めて経験した人は慌てるが, 楽な姿勢で寝ていれば, それほど痛くないのが特徴である. 2.2 変形性腰椎症椎間板内の水分が減少することでクッションの役割が低下し, 椎対が刺激を受けて骨棘 ( とげ状の骨 ) が出てくる. これが神経を刺激し痛みやしびれを引き起こす. 四十代半ば以上の人であれば程度の差こそあれ普通に見られる. 2.3 腰椎椎間板ヘルニア二十代から三十代の人に多く, 椎骨と椎骨の間にある椎間板の中の髄核が後方に飛び出し, その為に神経が圧迫され, 腰痛や坐骨神経痛を起こすもの. 髄核が飛び出るのは第四, 第五腰椎の間か第五腰椎と仙骨の間がほとんどで, 刺激される神経は第五腰髄か第一仙髄である. 3
3 腰痛と脊柱湾曲腰痛は 二本足で立って歩く人間の宿命的疾患 と言われ, また 腰痛は予防することも, 軽くすることもできる病気 とも言われている. 人類は, 四本足から二本足の起立走行へと進化し, この進化によって様々な能力を獲得した. 脳は発達し, 手も自由に使えるようになったわけであるが, 背骨も起立走行に適するように有利な形に変形してきたのである. この形を生理的脊柱湾曲というが, この形を出来るだけ損なわず, 維持するようにすれば, 腰痛を一生経験しないことも可能 といわれている. 3.1 医療現場より (1) 日本における医療現場では腰痛について 腰痛患者の九割は姿勢による筋肉の疲れが原因である と考えられている. 以下の図は腰痛患者の手術の割合を簡単にまとめたものである. 90% 以上手術不要 姿勢性腰痛症 姿勢の改善 骨のずれや 神経圧迫など 温熱治療, 牽引 腰痛 10% 以下手術必要 腰椎椎間板ヘルニア 腰椎椎間関節症 腰椎捻挫 骨折 悪性腫瘍の脊椎への移転 腰椎カリエス etc. 手術 図 3.1 腰痛の割合 上記のように, 腰痛は安静するだけで治るものが多く, 症状が重い場合のみに手術が必要だと考えられる. 以上によって姿勢の改善で痛みが引くことから, 姿勢と腰痛の関係はかなり密接な関係がある. この姿勢による腰痛を 姿勢性腰痛症 といい, 筋の疲れが原因と考えられている. このことから医療現場では, 正しい姿勢を 腰の筋を疲労させないような姿勢 と定義している. 4
3.2 カイロプラクティック (2)(3) カイロプラクティックの カイロ はギリシャ語で 手 を, プラクティック は 技術 を意味する. カイロプラクティックはそのふたつの合成語になる. カイロプラクティックは時代や立場によって変遷があり, 現在に至っても一定した定義が確率されていないが, 代表的な見解の一つとして, 脊柱その他の人体構造に手技や矯正を施し, 補助的に他の機械的, 物理的, 食療的, 保健衛生的諸手段 ( 薬物や外的諸手段を除く ) を用いて, 人間の疾病を治療する科学である, というものがある. また, 発祥の地であるアメリカを含む世界六十ヶ国以上で医師資格, もしくは公的な資格として認められている. 人体の基本概念として, 人間の身体は地面に対して垂直に立っている. これは人類の進化の過程で, 二本の腕を自由に使うために四足歩行から二足歩行へと進化してきた結果である. そして, この過程で人間の背骨は S 字に曲げられてきた. そのおかげで, 頭からの重量を分散でき, 骨盤への負担を和らげるようになった. 人類の脳がこれほど大きく発達できたのもこの恩恵に他ならない. よって人間の本来あるべき姿は, 背骨が S 字を描いている状態であると定義する. この S 字の湾曲を生理湾曲という. また周知の通り, 背骨の中には脊髄という脳の一部である大切な神経が通っている. もし姿勢が悪くなり背骨が歪んだ場合, この中に通っている神経を直接圧迫しないまでも, 脊髄から枝分かれしている神経を圧迫し, 痛みや痺れを感じる. 場合によっては坐骨神経痛や内臓疾患になり, その痛みから逃げるために, 身体が自然と曲がり始め身体のバランスを崩し, 筋肉の疲れや, 骨の変形などを引き起こすなどといった, 思わぬ事態に成りかねない. このように, 背骨のずれによる神経圧迫が病気の源であると考える. これを 神経圧迫論 という. カイロプラクティックでは, この背骨とそれを支える土台となる骨盤の矯正をすることにより, 結果的に痛みが取り除かれ, 本来人間が持つ 自分で病気を治す力 = 自然治癒力 が発揮することで, 様々な病気が治ると考えている. また生理湾曲, 骨盤の歪みというものは, 姿勢のくずれも大きく関係しているが, 姿勢のくずれと一口に言っても, それは多種多様であり, 素人目には良いか悪いかの判断しかつかない. しかし, カイロプラクティックの分野ではこの姿勢のくずれも, 湾曲のゆがみと, 骨盤の傾きから骨盤の前後回転, 骨盤の左右傾斜と脊柱の横湾曲, 体のねじれの大きく三つに分類している. さらには人間の骨の形状, 関節の動きなど, ありとあらゆる側面から考え, 科学的根拠に基づいて治療する. この考え方は非常に理にかなっており, 工学的に考えやすいため, 生理湾曲と神経圧迫論を踏まえつつ, 本研究ではこのカイロプラクティックの考え方を参考に研究を進めていく. 5
4 立位における脊柱と骨盤の関係 4.1 立位における理想的姿勢直立姿勢の理想的状態を述べる. 直立姿勢における理想的な姿勢というものは 3 章で述べた脊柱湾曲と骨盤が理想の状態にある姿勢を言う. 次に, 理想の状態とはどのような状態なのかを述べる. 立位において理想とされる姿勢時の脊柱湾曲の湾曲半径と骨盤の傾き角, そして, 重心線が統計的に求められている. まず, 脊柱湾曲の湾曲半径はそれぞれ, 頚椎カーブは体の前方に向かって凸部の半径約 17cm, 胸椎カーブは体の後方に向かって凸部の約 32~33cm, 腰椎カーブは体の前方に向かって凸部の 19~24cm とされている. この値は, 平均椎骨長と関節の角度から計算しても大体この値になる. つまり統計的に見ても, 解析的に見てもほぼ同じ値と言ってよい. 次に骨盤の傾斜角度であるが, 正確に言うと骨盤に付く仙骨と第五腰椎との接している角度のことである. この傾斜角度は 30~35 とされている. そして重心線は様々な説があるが, 本研究では耳 肩 腸骨頂上 膝関節 くるぶしを通る線を重心線とする. この脊柱湾曲があるおかげで, 骨盤にかかる重量を分散することができる. そのため人間は重い頭を支えることができ, 直立歩行が可能となった. しかし, 腰で体重を支えているために腰痛とは切っても切れない縁なのである. 図 4.1 生理湾曲 (2) 6
4.2 骨格構造による骨盤回転図 4.2 を見ると分かるように, 体の重心線は脚の付け根 ( 股関節 ) の後ろを通ることになる. つまり骨盤はこの重心と股関節の回転軸の関係で テコの原理 で後方に回ることになる. したがって, 骨盤回転は人間の構造上どうしても起きてしまう現象といえる. また立位での腰屈曲と, 骨盤の前傾斜という調整された活動の具体例を腰部骨盤律動という. これは一般的に言われる前屈で, 膝を真っ直ぐにしたまま爪先に触る前かがみの活動は腰部骨盤律動に属する ( 図 4.3). これは, 前屈を行う際には腰椎のみの屈曲だけでは不可能なため, 前屈の際に骨盤の傾斜は必ず起こるものである. また, 直立姿勢に戻るには股関節の後方傾斜の後に腰椎を伸展しなければならないため, 重心線の影響と骨盤律動は密接な関係にあると言える. この研究では, 立位とこの前屈の姿勢における腰椎にかかる負荷を求めていく. 図 4.2 股関節の軸に対する重心線の位置 (4) 図 4.3 腰部骨盤律動 (4) 7
5 モデリング立位における理想的姿勢を基に, 人体をモデリングする. 生理湾曲の維持はカイロプラクティックにおいて重要な事象であるため, 脊柱, 骨盤は動作機構をよく理解したうえでモデリングし, シミュレーションに用いる. また, モデリングの際に人体の構造をよく理解するよう努める. 人体の構成を見るとモデル化を考える場合, 骨格系, 筋系, その他内臓などの質量系と三つに分けられるこれらを Pro ENGINEER で作成していく. 図 5.1 骨格系 (5) 図 5.2 筋系 (5) 5.1 骨格系 5.1.1 脊椎 骨盤骨格系において特に注目すべきところが, 脊椎 骨盤周辺である. 先に述べてきたように, 本研究では, 特にこの脊椎 骨盤に特に注目しているため, 脊柱 骨盤モデルに関しては, 機構に注意してモデル化していく必要がある. まず, 脊柱についてモデル化をはかる. 脊椎を図 5.3 に示す. 脊椎は頚椎, 胸椎, 腰椎の三つの種類の椎骨から構成され, また脊椎全体の特徴として 3 章で述べたように生理湾曲というものがある. これは人間が直立するためにかかせないものである. そしてこの生理湾曲にはそれぞれの椎の湾曲半径が決まっており, その半径は 4 章で前述したように, 8
頚椎 : R=17cm 胸椎 : R=32~33cm 腰椎 : R=19~22cm とカイロプラクティックにおいて定めてある ( 図 4.1). そしてもう少し詳しく見てみると, 頚椎と胸椎は水平方向から約 30 度の角度で接しており, 胸椎と腰椎は約 20 度の角度で接している. そして腰椎と骨盤との接点は約 30~35 度の角度で接しているとされている. 図 5.3 脊柱 (3) 脊柱それぞれには役割がある. 頚椎は主に頭を前後左右に動かすためにあり, 一番上にある頚椎一番 (C1) は頭を上下左右前後に動かすことが出来る. 胸椎には肋骨がついているために前後へはほとんど動くことが出来ず, 体をねじる運動を担う. 腰椎は前後に大きく動き, 体の前屈後屈を担う重要な要素である. 本研究では腰椎部の応答に注目するため, 体の前後方向のみを考慮する. 胸椎部は前後方向にはほとんど動くことがないが, 脊椎の構造を理解するため, また後の研究のためにも, これもひとつひとつ胸椎や腰椎と同じようにモデリングしていく. 9
5.1.2 腰椎モデルまず初めに, 腰椎モデルを製作していく. 図 5.4-(a) に腰椎のレントゲン写真と, それを基にしたイラストの図 5.4-(b) を載せる. このレントゲン写真とイラスト, そして脊柱モデルを参考にして腰椎モデルを作る. 今回の研究では, 腰椎の動きの特徴を捉えるためのモデル作りが望まれるので, 胸椎の動きを再現するため, 椎骨一つ一つを剛体としてモデリングし, 五つのピンジョイントで腰椎を作り上げる. また腰椎を作るに当たって, 以下のような条件でモデルを作成した. モデルの特徴 腰椎の横断面図は長方形とし, 椎間板が乗る部分 ( 椎体 ) は椎骨同士が干渉しないよう大きさに注意して, 長方形にモデリングする. 椎間関節部分となるピンジョイントは, 中心から後ろにずれた位置に配置する. 第一腰椎 (L1) から第五腰椎 (L5) 下の椎間板までの長さは図 5.5 に示すように 17.15cm とする. 腰椎の脊柱湾曲半径を 22cm( 腰椎の中心を通る ),17.15cm を湾曲の弧の長さとし計算した結果湾曲中心角度 45 とする. 腰椎は L1~L5 まで同じものを用い, 上記の数値に適合するように配置する. 以上の条件で作成した腰椎モデルを図 5.6 に示す. (a) 腰痛レントゲン写真 (6) (b) 詳細イラスト (7) 図 5.4 実際の椎骨 10
(a) 各椎骨と椎間板の長さ (3) (b) 腰椎 ( 椎骨 ) (8) 図 5.5 椎骨と椎間板 (a) 腰部椎骨モデル (3) (b) 腰椎モデル (3) 図 5.6 腰椎 11
5.1.3 胸椎モデル次に胸椎領域をモデリングしていく. 図 5.7 から分かる通り, 胸椎は肋骨と関節を含み胸部の一部をなすので, 実際の運動は大きく制限される. これにより, 前後の運動には, 胸椎はほとんど関与しないが, 胸椎も椎骨を一つずつ以下の条件でモデル化していく. 第一胸椎から第十二胸椎下の椎間板までの長さは, 図 5.5(a) に示すように 280.5mm とする. 胸椎の湾曲半径は 32~33cm, 弧の長さは 28.05cm とし, 各椎骨間をおよそ 3 度ずつずらして配置する. 胸椎は T1~T12 まで同じものを用い, 上記の数値に適合するように配置する. 以上の条件で作成した腰椎モデルを図 5.8-(a)(b) に示す. 図 5.7 胸椎 (9) (a) 胸部椎骨モデル 図 5.8 胸椎 (b) 胸椎モデル 12
5.1.4 頚椎モデル次に頚椎についてモデリングする. 図 5.9 に示したのが頚椎解剖図である. 頚椎は七つの椎骨からなり, その椎骨は腰椎に比べると大変薄いものである. しかし, 基本的構造は腰椎と似ている. 最も異なる点は第一頚椎 ( 環椎 ) で, これは頭をあらゆる方向へ自由自在に動かすための関節である. したがって, 人が頭を回す運動をする際前後の動き以外はこの関節と軸椎が担っているが, 本研究では前後方向のみ考慮するため, この機構は意味を成さない. しかし今後のためにも, この椎骨も他の椎骨と同様に前後方向を考慮しながら, 以下の条件でモデル化する. 第一頚椎から第七頚椎下の椎間板までの長さは図に示すように 85mm とする. 頚椎の湾曲半径は 17cm, 湾曲の弧の長さを 8.5cm とし, 各椎骨間を 4 度ずつずらして配置する. 頚椎は C3~C7 まで同じものを用い, 上記の数値に適合するように配置する. 軸椎, 環椎は今後のためにも機構を理解してモデリングする. 以上の条件で作成した頚椎モデルを図 5.10-(a)(b)(c)(d) に示す. 図 5.9 頚椎解剖図 (10) (a) 軸椎モデル (b) 環椎モデル 13
(c) 頚部椎骨モデル 図 5.10 頚椎 (d) 頚椎モデル 14
5.1.5 骨盤モデル 続いて脊柱の土台となる骨盤のモデルを考える. まず, 医学的見地から骨盤を見ると図 5.11 のようになる. 図 5.11.1 男女の骨盤の差異 (5) 図 5.11.2 骨盤の基準線 (10) 15
骨盤のモデリングの際には表 5.1 の値を参考にしてモデル化していく. 表 5.1 各基準船平均長 女性 男性 骨盤高 [ mm ] 190.8±0.48 204.5±0.74 最大骨盤幅 [ mm ] 255.3±0.77 259.9±0.82 外矢状径 [ mm ] 170.8±0.63 166.4±0.61 恥骨下角度 [ ] 81.2±2.5 [70~90] 58.6±1.9 [50~60] 真結合線径 [ mm ] 115.6±0.60 103.9±0.61 入口横径 [ mm ] 123.3±0.49 117.7±0.43 前腸骨棘間径 [ mm ] 224.83±0.83 腸骨稜間径 [ mm ] 267.69±0.68 大転子間径 [ mm ] 286.51±0.61 外結合線 [ mm ] 190.00±0.44 上後腸骨棘間径 [ mm ] 95.56±0.51 そして, 図 5.12( 図 4.2 再掲 ) は骨盤と脚の関節との関係を示す. 4.2 でも述べたよう に, 股関節は重力線よりも前に着いていることが分かる. よって, 骨盤には後方に回転さ せられる力が生じる. 図 5.12 骨盤と重力線の関係 (3) さらに, 骨盤の大部分を成す腸骨は片足を上げる, 歩くといった動作のときにわずかではあるがねじれの運動が生じるが, 本研究では脊柱について取り上げ, 前後方向のみを考慮するため, ねじれは生じないものとする. よって, 骨盤は一つの剛体と考える. 図 5.13-(a)(b) に今回作成した骨盤モデルを示す. 16
(a) 骨盤モデル (b) 骨盤周り 図 5.13 骨盤 17
5.1.6 腕部 脚部 頭部モデル次に腕部, 脚部モデルと頭部モデルであるが, ここは大まかなモデリングにとどめておく. ただし, 脚部においては後に筋肉による運動関係を考慮する. 腕部, 脚部と頭部のモデルをそれぞれ図 5.14, 図 5.15 に示す. なお, 足や手が通常より大きくなっているが, これはそれぞれの寸法を計測して長方形にモデリングしているため, 長さの比として問題は無い. (a) 腕部モデル 図 5.14 四肢モデル (b) 脚部モデル 図 5.15 頭部モデル 18
以上の各骨格モデルを組み合わせて, 図のような全身骨格モデルを作り上げる. 図 5.16 人体立位モデル 19
5.2 筋系 5.2.1 筋の種類筋といっても人体には様々な種類があり, 形状, 機能, 役割などによって分け方は様々である. 図 5.17 において, 簡単にその種類と各筋について説明する. 形状による分類 紡錘筋 二頭筋 三頭筋 四頭筋 半羽状筋 1 機能による分類 随意筋( 横紋筋 ) 不随意筋( 平滑筋 ) 特殊な筋( 心筋 ) 羽状筋 多腹筋 鋸筋 2 役割による分類 骨格を支えるための筋 骨格を動かすための筋 図 5.17 筋の分類 1において人の意思で動かせる筋を随意筋という. 腕を曲げ, 脚を上げるなど人が何か動作をするときに使用される筋である. その逆に不随意筋は, 人間の意思とは関係無く働く筋である. これは主に内臓を動かすための筋や心筋, つまり心臓を動かしている筋などの事を指す. この筋は, 自動能をもつ特殊な横紋筋と位置付けられている. また横紋筋は別名赤色筋と呼ばれ, 実際の人体解剖図などを見ても赤い色をしている. この三種類の筋の特徴を表 5.2 に示す. 表 5.2 筋の機能による分類と特徴 随意筋 ( 横紋筋 ) 不随意筋 ( 平滑筋 ) 特殊な筋 ( 心筋 ) 骨格筋 内蔵筋 内蔵筋 随意筋 不随意筋 不随意筋 横紋あり 横紋なし 横紋無し 多核で長大 単核で紡錘型 単核で分岐 敏速な収縮 穏やかな持続的収縮 全体が敏速に収縮 疲労しやすい 疲労しにくい 疲労しにくい 20
最後に2の役割による分類であるが, これは人間モデルを作成するにあたって最も分かりやすい基準となる. 役割は大きく分けて, 神経を守るため脊柱や体幹を固定する働きをする筋と, 姿勢を直すために働く筋の二種類に分類される. そこで, 脊柱や体躯を固定する働きをする筋 ( 不随意筋 ) と, 姿勢を直すために働く筋 ( 随意筋 ) を, 共にバネ ダンパを組み合わせたモデルで表現し, 身体を動かす際には, 随意筋となるバネ ダンパのバネ定数を変化させることで, その役割を果たす. 本研究では, バネ ダンパを並列に並べた最も簡単な拘束を採用する ( 図 5.18-a). これが, 身体を安定させるために用いられる筋のモデルとなる. また, 椎骨の間に存在する椎間板も同様にバネ ダンパを並べたもので表す. 図 5.18 筋モデル 21
5.2.2 筋モデルの配置どちらの筋をどこに用いればよいか探るため, また, 体の各セグメント ( 体節 ) の運動関係を見出すために, あらゆる筋における解剖図を基にモデル化する. なお, モデル化する際, 体の前後方向の運動に関係するものだけを取り上げることとし, その他のセグメントやねじる動作のための筋肉などは無視する. はじめに, 脊椎を守るために付着している筋について述べる. 脊柱付近の筋の様子を図 5.19 に示す. 図 5.19 脊柱を取り巻く筋 (14) 脊椎を取り巻く筋は数多く存在し, 腰椎付近だけ取り上げてもその周辺のセグメント ( 体節 ) 全てと繋がっていることが分かる. 例えば, 腰椎一番 (L1) ならばその筋は骨盤と肋骨, 胸椎, そして,L2,L3,L4,L5 と繋がっている. これらのことから, 腰椎を取り巻く筋のモデルでは, 腰椎周辺の各セグメントにバネ ダンパの筋モデルを配置する. この筋モデル配置により, 腰椎は単独の動きをするのではなく, その周りとの運動関係が生まれる. しかし本研究では, シミュレーションを円滑に進めるために, 背筋モデルは一つ飛ばしに筋を接続して再現し, 椎骨の間に存在する椎間板もクッションの代表的な表し方であるため, 椎間板もバネ ダンパとして配置する. このようにして作成した筋モデルの配置を図 5.20,5.21 に示す. 図 5.20 は腰椎の筋モデル配置を横から見た図 5.21 は脊柱全体の筋モデル配置を横から見たものである. 22
図 5.20 腰椎筋モデル 図 5.21 脊柱筋モデル 23
次に背骨や脚部, 骨盤付近の筋の付き方をみる. 運動関係を見出すきっかけとなるので, 各筋についてそれぞれ見ることにする. そこで, 各筋とそのモデル化について表 5.3 にまとめた. ここで, 表の見方を説明する. 実物欄には実際の解剖図を載せる.E~K の分類方法は, 代表的な関節, 又はセグメント ( 体節 ) 間をつなぐ筋群としてまとめた. 次にモデル欄には本研究において考慮すべきものである場合にのみモデル化した図を載せる. 抵抗欄には, 立位姿勢において人間が体を動かそうとしたとき, 抵抗となりうるものには, 抵抗成分とみなさない場合は をつける. 最後の用途 特徴欄には筋の動き, そして筋の付着位置などを記す. 以上のことに留意し, 脊柱の安定や骨盤の回旋に関わる筋を見つけていく. 表 5.3 各筋とそのモデル (12) 24
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以上の表からどの筋をモデリングに考慮するかを決める. この時点で脊柱周りの随意筋の働きをする筋は, 背中 ( 後ろに付く力 ) につく背筋だけである. しかし姿勢を変える際に, 僅かに頭を動かすことから, 後頭部にも随意筋を用いる. これで, 今回の人体モデルでは, 二つの随意筋を使用することになる. しかし, 実際の人体においては様々な筋の制御によって地面に対して垂直に立つことを可能とし, その制御は計り知れないものである. 加えて今回は, 腰椎部の応答について要求するため, 筋の制御は脊柱の自立と生理湾曲の維持を考え, その他の筋は回転モーターによって姿勢を変化させることとするため, 省略する. また, 胸椎は胸郭の影響によって, 前後の稼動域が著しく制限されることから全て固定するものとする. 筋を配置した人体モデルを図 5.22 に示す. 26
図 5.22 全身人体モデル 27
5.3 質量系モデル 5.3.1 各モデルの質量定義最後に質量を定義する. 今回人体に備わる臓器などの質量は骨格モデルの質量として定義することとする. ここで, 日本人の平均体重を 65kg とおいて, 次に人体の各セグメントの全体重に対する重量比を図 5.23-a のように設定する. 図中の数値は全体重に対するパーセンテージを示している. 図 5.23-b. は身体各部の重心位置を示したものである. (a) 相対重量比 (b) 重心位置 図 5.23 身体各部の相対重量と重心位置 (13) この相対重量比より, 各骨格モデルの質量を定義することが出来る. 例えば, 頭部モデ ルであるならば, 日本人平均体重 65kg に 7% を掛け,4.55kg と定義することが出来る. これより, 図 5.23-a から体重 65kg としたときの各部の重量を表 5.4 に示す. 表 5.4 身体各部の重量 (13) 骨格名 相対重量比 [%] 重量 [ kg ] 頭部 7 4.55 上半身 ( 頭部 腕を除く ) 43 27.95 片腕 ( 上腕 前腕 手 ) 6.5(3.6 2.2 0.7) 4.225(2.34 1.43 0.455) 片脚 ( 大腿 下腿 足 ) 18.5(11.4 5.3 1.8) 12.025(7.41 3.455 1.17) 28
今回, モデル化において最も重要な役割を成す骨盤の質量を決定する. そこで, 図 5.23(b) の重心位置から, 上半身モデルを胸部付近と腰部付近とに分ける. 頭を含めた上半身重量は 65kg (7+43)[%] = 32.5kg となる. 図 5.23(b) より上半身の重心位置は上部が 60, 下部が 40 の割合の位置にある. そこで重心計算法から腰部付近の重量 MP を求めると MP = 32.5 60 / 40+60 = 19.5[kg] となる. 同様に上半身 ( 腕以外 ) の重量 MB を求めると MB = 32.5 40 / 60+40 = 13[kg] となる. これで上半身の重量を腰部と腕以外の上半身とに分けることが出来た. これらの値から, 作成した各モデルの質量を定義していくと, 骨盤の質量は 19.5kg となり, 頭部の質量は 4.55kg, 上半身の質量が 8.55kg となる. 上半身の質量は, 各椎骨モデルに均等に割り振ることにする. 骨格モデルの質量定義を表 5.5 に示す. 表 5.5 各骨格モデルの質量定義 骨格モデル 質量 [ kg ] 頭部モデル 4.55 胸部モデル 8.45 骨盤モデル 19.5 肩甲骨モデル 0.623 片腕 ( 上腕 前腕 手 ) モデル 4.225(2.34 1.43 0.455) 片脚 ( 大腿 下腿 足 ) モデル 12.025(7.41 3.445 1.17) 29
6 シミュレーション 6.1 シミュレーション条件人体モデルの姿勢変化を見るために MSC.visualNastran 4D を使用した. まず Pro/ENGINEER を用いて作成した人体モデルを MSC.visualNastran 4D に移し, 質量は表 5.5 のように決める. 次に筋モデルのバネ ダンパ係数を決めていく. 頚椎, 胸椎, 腰椎の椎間板や背筋のバネ係数については, 具体的な指標となる数値が無かったため, 検証を繰り返し, 靭帯の最大引っ張り応力等を参考に数値を表 6.1 のように決定した. 表 6.1 筋のバネ ダンパ係数 バネ係数 減衰力 椎間板 676 N/mm 0.2 N s/mm 背筋 880 N/mm 0.2 N s/mm 腹筋 50 N/mm 0.2 N s/mm 背筋 50 N/mm 0.2 N s/mm これらの値は試行錯誤的にシミュレーションを繰り返し行った上で決定した数値であり, 実際の筋の値とは異なる. これは, 実際の人体がさまざまな要素から成り立っているために, それらをまとめてまずは単純な系としてモデル化した試みからである. 次に, 実際に人体モデルの姿勢を変化させ, 腰痛の原因として最も症例が多いと言われる第四腰椎と第五腰椎間の椎間板の負荷について調べる. 求める姿勢は以下の五つである. 通常の立位姿勢 骨盤を約 50 度前傾させた腰部骨盤律動 ( 前屈 ) 手に 5kg の荷重を持たせた立位姿勢 手に 5kg の荷重を持たせた腰部骨盤律動 ( 前屈 ) 背筋のバネ定数を変えたときの腰部骨盤律動 ( 前屈 ) この姿勢を選択した理由は姿勢変化の推移において, 腰にかける負担を最も比較しやすいからである. また, 手に荷重を持たせることで, 荷重が腰に与える具体的な数値評価を求めることが出来る. また, 随意筋の働きをする背筋のバネ定数を変えることで, 随意筋がどの程度腰に影響を与えるのかを見る. 姿勢を変える際には, 骨盤と大腿骨を拘束する回転モーターに, 平均 5deg/s. 下腿骨と踵を拘束する回転モーターに-1deg/s の回転速度を与え,10 秒間の間に身体を 50 度前傾させる. 30
6.2 シミュレーション結果以下にシミュレーションの計算結果をそれぞれ示す. 通常, 人体の第四第五椎間板は, 立位の時, 身体の重心であるため, 体重の 60% の重さが加わる. 体重 65kg の人の椎間板にかかる体重負荷は,65kg 0.6=39kg となり, 理想の値は 382.2N となる. 以上を踏まえて図 6.1 を見ると負の値を示しているが, これは椎間板を表すバネ ダンパが荷重を受けていることを示しており, 通常の立位では椎間板に一定の負荷が加わっていることが分かる. しかし, 算出した値を近似曲線で示すと, その値は約 110N の負荷しかかっておらず, 理想値とはかけ離れている. これは椎間板や背筋のバネ ダンパの反力が関係していると考えられる. 次に腰部骨盤律動 ( 前屈 ) を行った際の値は図 6.2 のようになった. 図から姿勢の角度が深くなるにつれて, 椎間板にかかる負荷は次第に大きくなっていることが分かる. 最大値にもなるとその値は立位の約九倍の 900N にもなり, その影響が伺える. ) N ( n i o s n e t 200 100 0-100 -200-300 -400-500 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 time(s) 図 6.1 立位状態で椎間板にかかる荷重 ) N ( n i o s n e t 200 0-200 -400-600 -800-1000 -1200 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 time(s) 図 6.2 腰部骨盤律動で椎間板にかかる荷重 31
次に手に 5kg の荷重を持った際の結果を見る. 立位姿勢では, 荷重がない時と同じように安定しており, 近似曲線でも安定していることが分かるが, 負荷を示す値は 30N ほど増加している. これは手に加算された 5kg の荷重が, 腰椎に大きな影響を与えているからだと考えられる. また前屈の時の負荷も見てみると, 荷重を持っていない時に比べて, 最大で約 300N も負荷が増大していることが分かる. これらの結果から, 第四椎間板と第五椎間板には, 僅かな荷重と姿勢の変換によって, 非常に大きな負荷が腰椎部にかかることを示している. これによって理想値には届かなかったが, 腰の姿勢変化における腰椎の負荷の測定が可能であることが分かった. ) N ( n io s n e t 200 100 0-100 -200-300 -400-500 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 time(s) 図 6.3 手に 5kg の荷重を持った状態での立位状態 ) N ( n i o s n e t 400 200 0-200 -400-600 -800-1000 -1200-1400 -1600 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 time(s) 図 6.4 手に 5kg の荷重を持った状態での腰部骨盤律動 32
最後に, 背筋のバネ定数を変えた時の腰椎にかかる負荷について見る. 背筋は随意筋の役割を果たし, 随意筋はバネ定数と自然長を変えられるバネと考えることができると言われている. つまりバネ定数を強くするということは, 随意筋を意識して使うということであり, 弱くすることは随意筋をほとんど使わないことになる. これを踏まえて, 手に 5kg の荷重を抱えた際に, ばね定数を変えた場合の腰部骨盤律動における椎間板にかかる負荷を見ると, 随意筋を意識して使っている場合, つまりばね定数が高いときは腰椎間にかかる負荷は通常時よりも 200N ほど負荷が少なくなっている. また随意筋を使っていない場合, つまりばね定数が低いときに同等の姿勢を取ると, 値は通常時よりも比べて 300N も負荷が多くかかっている. これによって, 随意筋を有効に使うことで腰椎間にかかる負荷を軽減できることが分かった. 400 200 0-200 ) N ( -400 n i o -600 s n e -800 t -1000-1200 -1400-1600 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 time(s) 図 6.5 背筋ばね定数 =200N の腰部骨盤律動 200 0-200 -400 ) N ( -600 n io -800 s n e-1000 t -1200-1400 -1600-1800 0 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 time(s) 図 6.6 背筋ばね定数 =10N の腰部骨盤律動 33
6.3 考察人体モデルが重力下にある場合, 立位の状態でも椎間板には絶えず負荷がかかっているが, その負荷は生理湾曲によって分散させられ, その影響を少なくさせている. しかし姿勢を変化させること, 特に骨盤から距離を大きく引き離すほど, 椎間板に大きな負荷がかかることが分かる. その値は角度と距離によって変化するが, 通常の立位に比べると, 数倍の負荷がかかっている. また, 手に荷重を持つことでも椎間板に大きな負荷が加わることも分かったが, その大きさは立位状態で 50N, 腰部骨盤律動で 500N と姿勢変化による負荷と比較すると小さいが, それでも腰には無視できないほどの負荷がかかる. また自分の意思で動かせる随意筋は, 意識して使うことで腰にかかる負荷を軽減させることができることが分かった. つまり, 物を持ち上げたり人を支えたりする時は, 背筋等の随意筋を意識して使うことで, 腰痛の症状を減らせることが出来ると言える. このことから, 腰痛の症例が多いと言われる第四腰椎と第五腰椎間の椎間板にかかる負荷は, 姿勢の変化と手に持つ荷重の大きさ, そして随意筋の強さによって大きく変化することが分かった. 34
7 おわりに本研究ではカイロプラクティックの考えを元に, 介護労働者や肉体労働者の腰痛防止の研究として, 腰椎の応答に注目した人体立位モデルを製作した. また二つの姿勢にそれぞれ荷重を持たせることで腰にかかる負荷を比較し, 姿勢の変化や荷重が腰に与える影響について検討した. 加えて身体を動かす際には非常に重要な働きをする随意筋の強さを計算上において変化させることで, 腰椎間にかかる負荷に大きな違いが出ることが分かった. これらのことから, 理想値とはかけ離れたが, 姿勢変化と荷重の変化における腰痛評価の可能な人体モデルを作成することができた. 今後の展望としては, パラメータと立位時の姿勢の更なる安定を目指し, 前後運動のみの応答だけではなく, 左右の運動や捩れの動きを考慮した上での, 腰椎の応答について更に詳細に求めていきたい. そしてゆくゆくは, この人体モデルを用いて腰痛に悩む人達の助けとなるシミュレーションモデルとして成立させたい. 35
謝辞本研究を進めるにあたり, 井上喜雄教授ならびに芝田京子准教授には多大なご指導を賜り, 心から感謝の意を表したいと思います. また, 共に悩み, 励ましあい, 有意義な学生生活を送らせてくれた研究室の方々に感謝致します. 最後に, 長い学生生活を影から支えて下さった両親や, 祖母に心からのお礼と感謝の意を表して, この論文を締めくらせて頂きたいと思います 36
参考文献 (1) 腰痛の予防と治し方 : 中野昇南江堂 1980 (2) 痛みは体の SOS : 桑岡敏文西日本法規出版 2000 (3) カイロプラクティック概論 : 鈴木正教たにぐち書店 2001 (4) JOINT 関節の構造と機能 :CYNTHIA C.NORKIN PAMELA K.LEBANGIE[ 著 ][ 監 訳 ] 若松武 [ 監訳 編集 ] 桑岡敏文西日本法規出版 2000 (5) Digital Design Office アイリス アイリス http://web.kyoto-inet.or.jp/people/irisiris/freestuff/freestuff.html (6) ESSENTIAL CLINICAL ANATOMY :Keith L.Moore Anne M.R.Agur, LIPPINCOTT WILLIAMS&WILKINS, 1995 (7) Anatomy PALPATION&SURFACE MARKINGS Third Edition : DEREK FIELD/BUTTERWORTH HEINEMANN/2001 (8) 人体解剖学 : 木村邦彦大修館書店 1976 (9) 人体のなりたち : 坂井建雄 佐藤達夫岩波書店 1998 (10) 日本人体解剖学第 1 巻 : 金子丑之助南山堂 1966 (11) 目で見る動きの解剖学 : ロルフ ヴィルへード著 金子公宥 松本迪子訳 大修館書店 1996 (12) 村野次郎 : 腰痛防止姿勢制御装置付き車椅子の開発研究成蹊大学大学院工学研究科 物理情報工学専攻修士論文 2002 (13) 目で見る動きの解剖学 : ロルフ ヴィルヘード著 金子公宥 松本迪子訳大 修館書店 1996 (14) 設計のための人体寸法データ集 : 生命工学工業技術研究所編 (15) 芝田京子, 村野次郎, 川口忠雄 : 腰痛防止姿勢制御装置付き車椅子の開発研究 ( 第 1 報 ) - 腰痛評価を考慮した人体等価モデルの構築 -, 精密工学会誌,Vol68,No11,1441-1446 37