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第11 源泉徴収票及び支払調書の提出

バーゼル4

平成19年度分から

Ⅰ 年の中途で行う年末調整の対象となる人 年末調整は 原則として給与の支払者に 給与所得者の扶養控除等 ( 異動 ) 申告書 ( 以下 扶養控除等申告書 といいます ) を提出している人について その年最後に給与の支払をする時に行うことになっていますので 通常は12 月に行うこととなりますが 次に掲

スライド 1

タイ財務省 (Ministry of Finance) は 2015 年 5 月 1 日付の官報にて勅令 (Royal Decree) No. 586, 587 を公布しました これは 国際地域統括本部 (International Headquarters IHQ ) 及び国際貿易センター (In

公共債の税金について Q 公共債の利子に対する税金はどのようになっていますか? 平成 28 年 1 月 1 日以後に個人のお客様が支払いを受ける国債や地方債などの特定公社債 ( 注 1) の利子については 申告分離課税の対象となります なお 利子の支払いを受ける際に源泉徴収 ( 注 2) された税金

2018年度改正 相続税・贈与税外国人納税義務の見直し

[2] 株式の場合 (1) 発行会社以外に譲渡した場合株式の譲渡による譲渡所得は 上記の 不動産の場合 と同様に 譲渡収入から取得費および譲渡費用を控除した金額とされます (2) 発行会社に譲渡した場合株式を発行会社に譲渡した場合は 一定の場合を除いて 売却価格を 資本金等の払戻し と 留保利益の分

13. 平成 29 年 4 月に中古住宅とその敷地を取得した場合 当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から 1/2 に相当する額が減額される 14. 家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合 当該改築により増加した価格を課税標準として不動産 取得税が課税される 15. 不動産取得税は 相続 贈与

ったと判断します なお 一時的に認定基準月額以上の収入がある月があっても 認定基準年額を超えるまでの間は認定できます また 勤務した月の給与が翌月以降に支払われる場合でも 原則 勤務月の収入として取扱います 継続して認定できる事例 認定基準月額未満であるので 継続して認定できます 認定基準月額以上の

退職金についての市県民税はどうなるの? 私は平成 28 年 4 月に退職しました 勤続 30 年で退職金は 2,100 万円ですがこの退職 金に対する市県民税はいくらですか 通常の市県民税の課税は前年中の所得に対し翌年課税されるしくみになっていますが 退職金に対する課税については 他の所得と分離して

中小企業の退職金制度への ご提案について

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源泉徴収票不交付の届出書 源泉徴収票不交付の届出書 源泉徴収票不交付の届出書 ( 英語版 ) 公的年金等の源泉徴収票 ( 及び同合計表 ) 平成 年分公的年金等の源泉徴収票 平成 年分公的年金等の源泉徴収票合計表 公的年金等の源泉徴収票 ( 及び同合計表 )( 平成 28 年 1 月 1 日以後提出

「公的年金からの特別徴収《Q&A

イ税務署へ確定申告書を提出し 所得税の住宅ローン控除の適用を受けている 退職所得 山林所得がある方 所得税の平均課税の適用を受けている方は 住宅ローン控除申告書を提出することにより控除額が大きくなる場合があります 申告書を提出される方は3 月 15 日 ( 月 ) までに申告してください 申告しなけ

上場株式等の譲渡益に係る課税 上場株式等の税金について 上場株式等の譲渡益に係る税率は以下の通りです 平成 25 年 1 月 1 日 ~ 平成 25 年 12 月 31 日 平成 26 年 1 月 1 日 ~ 平成 49 年 12 月 31 日 平成 50 年 1 月 1 日 ~ % (

株式等の譲渡(特定口座の譲渡損失と配当所得等の損益通算及び翌年以後への繰越し)編

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改正された事項 ( 平成 23 年 12 月 2 日公布 施行 ) 増税 減税 1. 復興増税 企業関係 法人税額の 10% を 3 年間上乗せ 法人税の臨時増税 復興特別法人税の創設 1 復興特別法人税の内容 a. 納税義務者は? 法人 ( 収益事業を行うなどの人格のない社団等及び法人課税信託の引

B 事例 1: 日本赤十字社と公益財団法人公益法人協会ともに 所得控除方式 を適用し ffff た場合に還付される税金について 前提 1 寄附先の名称等 ( 弊協会の他に 東日本大震災の義援金として日本赤十字社に寄附したものと仮定 ) 名称金額備考 日本赤十字社 ( 東日本大震災義援金 ) 30,0

所得税算出の流れ Q&A 通信の所得税の流れを詳しく教えてください 改めて以下の図版を見てください は収入から引かれる金額です 引かれる金 額の算出の計算方法をこれから解説します 1 支払金額 ( 給料 賞与 ) 2 給与所得控除後の金額 A 給与所得 所得税算出の流れ B 課税所得 D 所得税 E

海外財産の相続 : 事例研究 ~ 米国の財産の相続手続き ( 第 4 回 ) 三輪壮一氏三菱 UFJ 信託銀行株式会社リテール受託業務部海外相続相談グループ米国税理士 これまで 海外に財産を保有する場合の 海外相続リスク の存在 特にプロベイト手続き等の相続手続きの煩雑さについて 米国の例を基に説明

配当所得 配当所得の金額 = 収入金額 - 元本取得のための ( 源泉徴収前 ) 借入金の利子 原則 支払い時に源泉徴収 確定申告によって精算 総合課税 申告不要あり 株式の配当 株式投資信託の収益分配金 保険会社から受け取る基金利息など 申告分離課税あり 例外 非課税株式投資信託の特別分配金 (

投資法人の資本の払戻 し直前の税務上の資本 金等の額 投資法人の資本の払戻し 直前の発行済投資口総数 投資法人の資本の払戻し総額 * 一定割合 = 投資法人の税務上の前期末純資産価額 ( 注 3) ( 小数第 3 位未満を切上げ ) ( 注 2) 譲渡収入の金額 = 資本の払戻し額 -みなし配当金額

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株式等の譲渡(前年からの繰越損失を譲渡所得及び配当所得から控除)編

年末調整のしくみ

株式等の譲渡(上場株式の譲渡損失の繰越し)編

2. 配偶者控除等申告質問回答 配偶者控除等の適用 ( 収入 ) 範囲がわからない 配偶者控除等の適用となる収入範囲は 以下のとおりです ご本人の当年の合計所得金額が1,000 万円以下かつ配偶者の当年の合計所得金額が123 万円以下 申告書に証憑を添付しなければいけないのか? 配偶者の合計所得が

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Transcription:

の基礎 マネジャーアソシエイトディレクター 星谷浩一柴田智以 2010 KPMG Phoomchai Audit Ltd. And KPMG Phoomchai Tax Ltd., a Thailand member firm of KPMG International, a Swiss cooperative. All rights reserved.

1. 納税義務者と課税の範囲 2. 申告 納税手続 3. 課税対象の算定 4. 給与所得のグロスアップ計算 5. 税率について 6. 個人所得税の事例 2

課税対象所得個人所得税 1. 納税義務者と課税の範囲 (1/2) 1 月 1 日 180 日 ( 通算 ) 12 月 31 日 非居住者 ( 居住者以外の者 ) タイ国内源泉所得 居住者 ( タイ国内の滞在日数が 180 日以上となる者 ) タイ国外源泉所得のうち同年度中にタイ国内に持ち込んだ金額 課税期間は暦年のみ 1 月 1 日 ~12 月 31 日 タイ国内源泉所得とは タイ国内における職位 職務から得た所得 タイ国内の事業所又は事業からの所得 タイ国内に所在する資産からの所得 所得の受領地や 居住者か非居住者かは問わない 合算申告 日本からタイへの出張であっても タイで労働する限り タイで課税であるが 日タイ租税条約第 14 条に基づく短期滞在者免税規定 1 暦年の累計滞在日数が 180 日を超えないこと 2 日本法人が給与を支払うこと 3 タイ法人が給与を負担しないこと 3 条件全て充足すれば免税 出向者 ( タイ現地法人と雇用関係を有する 駐在員 ) には適用がないことに留意 3

1. 納税義務者と課税の範囲 (2/2) 金額 タイ国内源泉所得 給与所得 タイ払い給与 日本払い給与 1,000 千バーツ 2,000 千バーツ タイ現法の駐在員 かつ シンガポール現法の役員 タイ国外源泉所得 シンガポールの関連会社から支払われた給与 ( タイの銀行口座に送金 ): シンガポールの役員の給与として支払 日本にあるマンションの賃貸収入 ( 賃借人が日本の銀行口座へ入金し タイ国内への送金無し ) 国内源泉所得国外源泉所得 タイ払い給与 1,000 日本払い給与 2,000 シンガポールから支払われた給与 2,000 課税所得 5,000 千バーツ 金額 2,000 千バーツ 1,500 千バーツ合算申告 4

2. 申告 納付手続 課税年度 ( 暦年 ) 1 月 1 日毎月末翌月 7 日 12 月 31 日 2 月 15 日 2 月末 3 月末 1 2 3 4 5 1 毎月徴収した給与等に係る源泉税を 翌月 7 日までに申告 納税 ( 会社 ) 2 年末の最後に支給される給与で過不足調整 ( 会社 ) 日本の人事部に日本払い給与のデータ明細依頼 3 翌年の 2 月 15 日までに各従業員に対して源泉徴収証明書の発行 ( 会社 ) 年明後 早い時期に日本払い給与のデータ収集 4 翌年の 2 月末までに税務署に源泉徴収の年次報告書の提出 ( 会社 ) 5 翌年の 3 月末までに税務署に確定申告 追加納税 ( 各個人の義務 ) 会社が所得税負担する場合は日本人分をまとめて納付 5

3-1. 課税対象の算定 累進課税 35% 30% 総所得 25% 20% 15% 10% 5% 0% 15 万 30 万 50 万 75 万 100 万 200 万 配偶者控除 扶養控除 その他所得控除 400 万 (Baht) 課税所得 基礎控除 :3 万バーツ 配偶者控除 :3 万バーツ 扶養控除 :1 人 1.5 万バーツ (3 人まで ) 父母扶養控除 :1 人 3 万バーツ 生命保険料 : 年間 10 万バーツまで 教育費 : 年間 2 千バーツまで プロビデントファンド RMF LTF 社会保険料 寄付金等 経費控除 給与所得控除 :40% (6 万バーツまで ) その他の控除 非課税所得 赴任 帰任旅費 ( 実費 ) など 6

3-2. 課税対象の算定 非課税所得 以下の所得は 個人所得税計算上 非課税所得として対象外となる (Revenue Code Sec.42) 1 任務を遂行するために必要な交通費実費又は交通費手当 2 出張旅費実費及び公務員の出張手当と同額の出張手当 3 赴任旅費又は任務終了時の帰任旅費 4 普通預金利息 ( 年間 10,000B 以下 届出により 20,000B 以下 ) 5 相続又は贈与によって取得した動産又は事業や利益を目的とせず取得した動産の譲渡益 6 損害賠償金 保険金 香典 7 社会保険からの保険金 8 普通パートナーシップ及び法人格のない組合からの分配金 9 所得税の還付に伴う受取利息 ( 還付加算金 ) 10その他 従業員とその家族に対する医療補助 相続によって取得した不動産又は相続人に対する贈与により取得した不動産の譲渡益 国公債の利子 タイ証券取引所上場株式の売買益 プロビデントファンドから給付された退職金 etc. 7

4. 給与所得のグロスアップ計算 日本人駐在員給与の手取り保証 (NET 保証 ) 日本人駐在員給与について 日本と同等の手取り額を保証するために タイにおける個人所得税を会社が負担する契約となっている場合 当該会社負担部分も課税対象所得に含まれる 年間額面給与 個人所得税 年間手取り給与 課税対象所得 自己負担の場合 5,000,000B 1,315,000B 3,685,000B 5,000,000B 会社が負担 会社負担の場合 5,000,000B + X X 5,000,000B 5,000,000B + X ( 注 ) 計算の便宜上 所得は給与所得のみで かつ所得諸控除がないケースを前提としている 方程式によるグロスアップ計算が必要 X=(X+5,000,000) 35%-435,000 X=2,023,077B 会社負担の個人所得税が課税対象所得の対象になるのはいつか?(RC Sec 40 ) 7,023,077Bと算定 コスト40% アップとなる 当該個人所得税の対象となった給与と同一年度の課税対象所得に加算する 当該税額が支払われた年度の課税対象所得に加算するのではない 税率は所得層を推測し 決定 8

5-1. 税率表 所得税の税率表 課税所得 ( バーツ ) 税率 速算用控除額 0 ~150,000 0% 0 150,001 ~300,000 5% 7,500 300,001 ~500,000 10% 22,500 500,001 ~750,000 15% 47,500 2013 年及び 2014 年に適用される個人所得税率であったが 当該税率の適用期間を 1 年延長し 2015 年も適用される旨が公表された 750,001 ~1,000,000 20% 85,000 1,000,001 ~2,000,000 25% 135,000 2,000,001 ~4,000,000 30% 235,000 4,000,001 ~ 35% 435,000 9

5-2. 税率表 - 速算用数値の使い方 速算用は 課税所得に当該課税所得の範囲のランクの税率を乗じ そこから速算用数値を差引き算定する たとえば 課税所得が 5 百万バーツとすると 5,000,000 35%-435,000 =1,315,000 バーツと算定する % 35 30 200,000 バーツ 100,000 バーツ 25 20 50,000 バーツ 37,500 バーツ 15 10 25,000 バーツ 15,000 バーツ 5 7,500 バーツ 15 万 30 万 50 万 75 万 1 百万 2 百万 4 百万 5 百万バーツ 10

5-3. 税率表 ケーススタディ (1/2) 以下の例について個人所得税の年税額を算定してください 月給は額面 250,000B 社会保険加入 ( 月額 750B) 年初よりタイ国会社に在籍 配偶者あり ( 所得なし ) 子供 2 人 (1 歳と 3 歳 ) 日本での留守宅手当として年間 120 万円 (400,000B) 支払われた 指定団体を通じて 11,000B を寄付した 1. 給与総額 2. 各種控除 3. 年税 11

5-3. 税率表 ケーススタディ (2/2) 解答 1. 給与総額 250,000 12 + 400,000 = 3,400,000B 留守宅手当ては タイでの就労の対価であり タイ国内源泉所得としてタイで課税される 逆に日本では日本の非居住者の日本国外源泉所得であるため 課税されない 2. 各種控除 60,000+30,000+30,000+15,000 2+9,000+11,000 = 170,000B 60,000= 給与所得に係る経費控除 (3,400,000 40%>60,000) 30,000= 基礎控除 30,000= 配偶者控除 15,000= 扶養控除 9,000= 社会保険料 (750 12) 11,000= 寄付金控除 ( 寄付金以外を全て控除した後のネット所得の 10% よりも小さい為 全額控除対象 ) 3. 年税 (3,400,000-170,000) 30%-235,000 = 734,000B TIPS 給与所得の範囲 住宅家賃補助 社宅の無償提供 教育費 帰任及び着任以外の日本への帰国費用 社有車 給与所得の範囲外 12

6-1. 個人所得税の事例 - 出向者給与 Headquarters 1 タイ払い給与 (Thai Co. 個人 ) タイ個人所得税の課税対象 現法は毎月源泉徴収義務がある 2 (Japan) (Thailand) 2 日本払い給与 ( 本社 個人 ) タイ個人所得税の課税対象 現法は本来は毎月源泉徴収すべきであるが 実務上は個人所得税の確定申告時に納付 3 日本払い給与の付替払い (Thai Co. 本社 ) 3 人件費名目での請求の場合 支払時に個人所得税の源泉徴収 1 Thai Co. 出向者 13

6-2. 個人所得税の事例 - 出向者給与 ( 役員 ) 前提 Headquarters タイ現地役員及び日本非常勤役員兼務 1 タイ払い給与 (Thai Co. 個人 ) 2 (Japan) (Thailand) タイ個人所得税の課税対象 現法は毎月源泉徴収義務がある 2 日本払い給与 ( 本社 個人 ) 日本の国内源泉所得であり 日本で源泉課税 タイ国内に持ち込まない限りタイにおいては課税対象とならない 租税条約 ( 日タイ租税条約第 15 条 ) 上 まず日本に課税権がある 1 Thai Co. 現地役員日本非常勤役員 14

6-3. 個人所得税の事例 - タイ現法の役員報酬 前提 タイ現法の非常勤役員 日本従業員兼務 Headquarters 1 本社の従業員としての給与 ( 本社 個人 ) 1 (Japan) (Thailand) タイ現法非常勤役員 日本個人所得税の課税対象 タイ国外源泉所得であるため タイ個人所得税の課税はない 2 タイ現法役員報酬 (Thai Co. 個人 ) RC Sec 50 及び租税条約 ( 日タイ租税条約第 15 条 ) により 15% 源泉課税 タイ非居住者であるため 個人所得税の確定申告は原則必要だが ルーリングにより源泉徴収にて終了 Thai Co. 2 日タイ租税条約第 15 条 日本の居住者が タイ居住法人の役員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては タイにおいて租税を課することができる 15

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