2 I. 手指衛生を確実に実施する 背景手洗い 手指衛生は すべての院内感染から医療従事者及び患者を護るための基本的な手段である 人の手を媒介した病原菌の水平伝播が 人工呼吸器関連肺炎 (ventilator-associated pneumonia: VAP) をはじめとする病院内感染の一要素とな

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Transcription:

1 人工呼吸関連肺炎予防バンドル 2010 改訂版 ( 略 :VAP バンドル ) 日本集中治療医学会 ICU 機能評価委員会

2 I. 手指衛生を確実に実施する 背景手洗い 手指衛生は すべての院内感染から医療従事者及び患者を護るための基本的な手段である 人の手を媒介した病原菌の水平伝播が 人工呼吸器関連肺炎 (ventilator-associated pneumonia: VAP) をはじめとする病院内感染の一要素となりえる 確実な手洗い 手指衛生の履行により これを回避する 実施方法 (1) すべての医療従事者及び患者家族は 以下の場合に手洗いを行う 1) 患者診療区域に入る前 2) 患者に接触する前 3) 患者体液 分泌物に触れたあと 4) 患者から離れたあと 5) 患者診療区域から出たあと (2) 医療従事者は呼吸回路の接触前後にも手洗いを行う (3) 目に見える汚れがなければ 流水と石けんの代わりに速乾式アルコール製剤を使用する (4) 目に見える汚れがある場合 流水と石けんを用いた手洗いを行う (5) 患者ベッドサイドの利用しやすい位置に 手洗い製剤を配備する 1. Boyce JM, Pittet D: Guideline for Hand Hygiene in Health-Care Settings: Recommendations of the Healthcare Infection Control Practices Advisory Committee and the HICPAC/SHEA/APIC/IDSA Hand Hygiene Task Force. Infect Control Hosp Epidemiol 2002; 23:S3 40. 2. Garner JS: Guideline for isolation precautionsin hospitals. The Hospital Infection Control Practices Advisory Committee. Infect Control Hosp Epidemiol 1996; 17:53 80.

3 II. 人工呼吸器回路を頻回に交換しない 背景人工呼吸器回路を開放させると 回路内腔を通じた下気道汚染の危険性が高まる 定期的な回路交換は VAP 発生率を高くする 実施方法 (1) 回路は, 患者毎に交換する (2) 回路は 目に見える汚れや破損がある場合に交換する (3) 定期的な回路交換を禁止するものではないが 7 日未満での交換は推奨しない (4) 回路内にたまった水滴は 発見したとき あるいは体位交換前に無菌的な手技で除去する 1. Branson RD. The ventilator circuit and ventilator-associated pneumonia. Respir Care 2005; 50:774-85. 2. Han J, Liu Y. Effect of ventilator circuit changes on ventilator-associated pneumonia: a systematic review and meta-analysis. Respir Care 2010; 55:467-74.

4 III. 適切な鎮静 鎮痛をはかる 特に過鎮静を避ける 背景人工呼吸中には鎮静 鎮痛薬を適切に用いる 過鎮静は人工呼吸期間延長の原因となり VAP の発生頻度を増す 実施方法 (1) 鎮静スケールとしては Richmond Agitation-Sedation Scale (RASS) の使用を推奨する (2) RASS のスコアはー 3~0 となるように投与量を調節する (3) カルテ ( 看護記録など ) に 鎮静 鎮痛薬の使用状況と 鎮静評価の記載欄を設ける 評価は毎日数回行う (4) 日中の鎮静薬中断 減量を検討し RASS を用い鎮静レベルを評価する 必要時は 1/2 量での鎮静薬投与を再開する なお 鎮痛薬に関しては中断しない (5) 筋弛緩薬は特別な理由がある時以外には持続投与しない (6) 医療チームの中で鎮静の目的と目標スコアについての協議 評価を行い共通認識を持つ 鎮静中断の方法 (1) 前提条件 1) 痙攣 興奮がない 2) アルコール離脱症状がない 3) 麻痺がない 4) 冠虚血症状がない 5) 頭蓋内圧亢進症状がない (2) 評価基準 1) 不安興奮 痛みがない 2) 頻呼吸がない <35rpm 3) 低酸素血症がない SpO 2 90% 4) 呼吸窮迫のサインがない 5) 不整脈がない (3) 中断後の処置 1) 意識 応答を確認する 2) 鎮静が必要と判断した場合 持続鎮静を それまでの 1/2 量を目安として再開する 1. Fagon JY, Chastre J, Domart Y et al. Nosocomial pneumonia in patients receiving continuous mechanical ventilation. Prospective analysis of 52 episodes with use of a protected specimen brush and quantitative culture techniques. Am Rev Respir Dis 1989; 139:877-84.

5 2. Ely EW, Shintani A, Truman B et al. Delirium as a predictor of mortality in mechanically ventilated patients in the intensive care unit. JAMA 2004; 291:1753-62. 3. Sessler CN, Gosnell MS, Grap MJ, et al. The Richmond Agitation-Sedation Scale: validity and reliability in adult intensive care unit patients. Am J Respir Crit Care Med 2002; 166:1338-44. 4. Dries DJ, McGonigal MD, Malian MS, et al: Protocol-driven ventilator weaning reduces use of mechanical ventilation, rate of early reintubation, and ventilator-associated pneumonia. J Trauma 2004; 56:943-51. 5. Girard TD, Kress JP, Fuchs BD, et al: Efficacy and safety of a paired sedation and ventilator weaning protocol for mechanically ventilated patients in intensive care (Awakening and Breathing Controlled trial): a randomised controlled trial. Lancet 2008; 371:126-34. 資料 1.Richmond Agitation-Sedation Scale(RASS) スコア用語説明 +4 好戦的 : 明らかに好戦的 暴力的 スタッフに対する差し迫った危険 +3 非常に興奮した : チューブ類またはカテーテル類を自己抜去 +2 興奮した : 頻繁な非意図的な運動 人工呼吸器ファイティング +1 落ち着きのない : 不安で絶えずそわそわしている しかし動きは攻撃的でも活発でもない 0 意識清明 : 落ち着いている -1 傾眠状態 : 完全に清明ではないが 呼びかけに 10 秒以上の開眼およびアイコンタクトで応答 -2 軽い鎮静状態 : 呼びかけに 10 秒未満の開眼およびアイコンタクトで応答 -3 中等度鎮静状態 : 呼びかけに動きまたは開眼で応答するがアイコンタクトなし -4 深い鎮静状態 : 呼びかけに無反応 しかし 身体刺激で動きまたは開眼 -5 昏睡 : 呼びかけにも身体刺激にも無反応

6 IV. 人工呼吸器からの離脱ができるかどうか 毎日評価する 背景気管挿管は VAP のリスク因子である 気管挿管期間を短縮するために 1) 人工呼吸器からの離脱の手順 ( プロトコル ) を定めて定期的に評価を行う 2) 自発呼吸トライアル (spontanenous breathing trial: SBT) を用いて 1 日 1 回離脱の可能性を検討する 実施方法 (1) 個々の施設に応じた人工呼吸離脱プロトコルを作成し 適用する (2) 毎日 人工呼吸器装着患者一人一人について モーニングカンファレンスや申し送りなどで SBT が実施可能か協議 評価し その結果を医療スタッフで共有する (3) 開始基準を満たした場合に SBT を実施する その結果は カルテ ( 看護記録など ) に記録する SBT 実施の判断 (1) 前提条件 1) 原疾患が治癒または改善傾向にある 2) 気道分泌物の除去 ( 咳 喀出など ) が可能である (2) 開始基準 1) 酸素化が十分である :PEEP 8cmH 2 O PaO 2 /FIO 2 150mmHg 2) 血行動態が安定している :HR 140/ 分 循環作動薬が使用されていないか 少量のみ ( ドパミン 5μg/kg/min 程度 ) 致死的な不整脈がない 心筋虚血のサインがない 3) 意識状態が安定している : 持続鎮静している場合 鎮静中断が問題なく行える 指示動作可能である 施設で用いている鎮静スコアで覚醒状態である 4) 電解質 酸塩基平衡に異常がない : 例重度の呼吸性 / 代謝性アシドーシス カリウム値の異常がない SBT の進め方 (1) 人工呼吸中と同じ酸素濃度とする (2) 設定 : 下記のいずれか 1) T ピース下での自発呼吸 2) 5cmH 2 O の PEEP +pressure support 5-7 cmh 2 O (3) まず 5 分間観察する ここで頻呼吸などの呼吸負荷による変化が見られることが多いので この間は必ずベッドサイドで患者の状態を頻繁に観察し 問題があれば SBT の施行を中止する (4) 問題なければ 本試験に移行する :30~120 分間観察する (5) 以下の条件を満たすときに合格と判断する 1) バイタルサイン 1 呼吸数 <35rpm

7 2 SpO 2 90% 3 高血圧 低血圧 ( 収縮期圧 :>180mmHg <80mmHg) 頻脈 徐脈 (>140/min <60/min 20% 以上の変化 ) の出現がない 危険な不整脈の出現がない 2) 患者のアセスメント 1 意識状態の変化 : 不穏状態の出現 不安の悪化がない 2 循環不全のサイン : 末梢の冷感 冷汗の出現がない 3 呼吸負荷のサイン : 呼吸パターンの悪化 呼吸補助筋の使用 奇異呼吸の出現がない SBT 合格と判断した場合 (1) SBT で離脱可能と判断された場合には 気管チューブの抜去の手順に進む (2) 抜去までしばらく時間がある場合には 抜管するまで呼吸補助を再開する 尚 本稿では気管チューブ抜去の基準や手順については示さない SBT 不合格の場合 (1) 試験前の呼吸補助のレベルまで戻す (2) 翌日以降に SBT を再企図する 1. MacIntyer NR. Evidence-based guidelines for weaning and discontinuing ventilatory support. Chest 2001; 120:375S-95S. 2. Robertson TE, MD, Mann HJ, HyzyR et al; Partnership for Excellence in Critical Care. Multicenter implementation of a consensus-developed, evidence-based, spontaneous breathing trial protocol. Crit Care Med 2008; 36:2753-62. 3. Girard TD, Kress JP, Fuchs BD, et al: Efficacy and safety of a paired sedation and ventilator weaning protocol for mechanically ventilated patients in intensive care (Awakening and Breathing Controlled trial): a randomised controlled trial. Lancet 2008; 371:126-34.

8 V. 人工呼吸中の患者を仰臥位で管理しない 背景仰臥位で患者を管理すると 胃内容物が口腔咽頭に逆流し VAP の発症率が増加する ベッドの頭位を上げる体位は 仰臥位と比較して VAP 発生率を低下させる 実施方法禁忌でないかぎり 頭位を上げる 30 度を一つの目安とする 医療スタッフがベッドの頭位を定期的に観察する (1) 担当看護師は決められた時間に頭位挙上状況をカルテ ( 看護記録など ) に記録する (2) 定期的に頭位挙上実施状況を医療スタッフ全員で協議 評価し 共有する (3) 経管栄養剤の注入中は確実に実施する 1) 経胃栄養の場合 胃の残渣量が増えないような栄養剤投与計画を考慮する 2) 胃の残渣が多い場合や逆流の危険性が高い場合 経十二指腸あるいは経小腸栄養を行う 1. Torres A, Serra-Batles J, Ros E, et al. Pulmonary aspiration of gastric contents in patients receiving mechanical ventilation: the effect of body position. Ann Intern Med 1992; 116:540-543. 2. Orozco-Levi M, Torres A, Ferrer M, et al. Semirecumbent position protects from pulmonary aspiration but not completely from gastroesophageal reflux in mechanically ventilated patients. Am J Respir Crit Care Med 1995; 152:1387-1390. 3. Drakulovic MB, Torres A, Bauer TT, et al. Supine body position as a risk factor for nosocomial pneumonia in mechanically ventilated patients: a randomised trial. Lancet 1999; 354:1851-1858. 4. van Nieuwenhoven CA, Vandenbroucke-Grauls C, van Tiel FH, et al: Feasibility and effects of the semirecumbent position to prevent ventilator-associated pneumonia: a randomized study. Crit Care Med 2006; 34:396-402.