June 11, 2007

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6. 開いた系と化学ポテンシャル ここまでは粒子数は一定に保たれた系を考えたが 本章では粒子の出入りを考えて平衡を考える Jue 0 6- 化学ポテンシャル 粒子の出入りを考慮するために 化学ポテンシャルという概念を導入する 粒子数が変わる系の熱平衡 つの領域の間で粒子が行き来するとする (6.) 各領域の自由エネルギーを とおくと 全系の自由エネルギーは (6.) + = ( 一定 ) 図 6- 粒子数が変わる系 熱平衡は 自由エネルギー最小で決まる 粒子数はマクロ量なので を変数として の最小化を行うと 0 (6.) ( ここで 粒子数は十分マクロな量なので 連続変数と見做す ) 化学ポテンシャル以前既に用いたが 直観的にはその粒子が存在する事により増加するエネルギー 温度と体積が一定の場合 =========================== 注 : d Sd d (.8) ===========================

(6.4) とおく これを用いると 粒子数についての熱平衡の条件 (6.) を書き直すと (6.5) 温度と圧力が一定の場合 ================================== G の自由エネルギー -5 節 或いは熱力学で既に習っている様に ギブスの自由エネルギーは G (.68) よって dg d d d d d Sd (.69) d 即ち 温度 圧力一定の時 G free eergy が定まる ==================================== という訳で 領域 に含まれる物質の G free eergy を考える 全系では G G G G G (6.6) これを粒子の配分により最小化すると (6.) 同様 ここに G して G G だが G (6.7) と と変数が異なるので G を考える よって 温度 圧力一定で 粒子数による偏微分を行うと G ここに (.8) より なので 上式は G よって 熱平衡の条件 (6.7) は Ref. (6.8) (6.9) (6.5) と

化学ポテンシャルの性質 理想気体の化学ポテンシャルを考える 理想気体の並進運動に関する自由エネルギーは (.48) で求まっており これに 分子当りの回転運動の自由エネルギー 化学ポテンシャルの定義 (6.4) より r r r を加え r r 分子当りの回転運動の自由エネルギー r ところで z r r r は 4 章で求めており (4.57) より I (6.0) r (6.0) を温度と圧力の関数に書き換えると より r (6.) この値は粒子数に依存しない ところで G の自由エネルギーは示量変数なので 一定 の下で粒子数 を倍にすれば G も倍になる筈で g G (6.) よって (6.8) より G g (6.)

となり 化学ポテンシャルは 粒子当りの G の自由エネルギーに等しい 同様に 粒子当りの自由エネルギーを と記述できる v (6.4) 体積を v とすれば 熱力学の関係 化学ポテンシャルについての微小変化を考える G の自由エネルギーに関する微分式は dg Sd d (.84) で与えられており 上で求めた様に 化学ポテンシャルは 粒子当りの G の自由エネルギーに相 当するので (.84) において エントロピー 体積についても 粒子当りのものを考える ( 注 : S で定義するが 無論 本当に粒子 個でエントロピーを求めている訳ではない ) よって d d vd (6.5) v (6.6) 一方 化学ポテンシャルは (6.4) で定義しており d Sd d (.8) であるが Helholtz 自由エネルギーを温度 体積 粒子数 の関数 とみると 同様に d Sd d d (6.7) dg Sd d d (6.8) 一方 S d d ds Sd ds d d よって S Sd d d (6.0) 更に d ds d d ds d d d (6.) すると S (6.) ds Sd (6.9) 4

6- G の相律相 : 均一な物質が占めている領域 eg. 液体と気体右図では 水と水蒸気の 相液体と気体で熱平衡 水蒸気 水 相平衡の条件 一定の温度 圧力 熱平衡にあるとする の下で 種類の粒子からなる 成分系 が 個の相に分かれて 番目の相にある 番目 ( 種類 ) の粒子の数を とすると 全系の G の自由エネルギ ー G は各相の G の自由エネルギー G の和として G G (6.) G G : 相 : 液相 気相 固相 等 : 分子の種類 等 = = = = で与えられる 熱平衡で粒子が各相にどの様に配分されるかを定めるには 粒子数についてG を最小化すればよい 但し 種類毎の粒子数は一定 即ち (6.4) (6.4) の条件下で (6.) の最小を求める というのは以前やった Lgrge の未定係数法を利用 を未定係数として ~ G G の最小を求める ~ G 0 (6.5) より G 0 ここで ; G j (6.6) 5

を 相における粒子 の化学ポテンシャルとすると 条件は (6.7) これは 粒子 の化学ポテンシャルはどの相でも同じ という事 ( 平衡の条件 ) ( 水分子の化学ポテンシャルは 水 ( 液体 ) でも水蒸気でも同じ ) G の相律化学ポテンシャルは温度 圧力 粒子数の関数 一方 化学ポテンシャルは示強関数 変数も示強関数のみ 相の総粒子数は (6.8) (f. (6.4) ) よって 相における粒子 の濃度を (6.9) とすれば は と濃度 の関数 この時 (6.9) の濃度の定義より (6.0) 物理的には つの相にある 種の粒子の合計で規格化 これが 個の 相各々に 従って この系の熱平衡を定める変数は各相に共通な温度 圧力 但し 濃度には (6.0) の条件式 個がつくので 独立した変数の数は の他 個の濃度 熱平衡の条件自体は (6.7) の f 個あるので 全部では自由に変えうる変数の数 f は (6.) これを G の相律という 6- 成分系の相平衡 成分系の相図 成分系における G の相律は (6.) より f (6.) 6

全体が均一な 相であれば よって f 基本的に これは温度 圧力 の 変 数の関数となっている事を示している しかし 温度 圧力 これを相図 (he dgr: 図 6-) で表す の変化により 物質の状態が変化する場合がある 相 ( ) 共存では f 温度 圧力 は独立でなく 自由度は 相共存曲線 相 ( ) 共存では f 0 温度 圧力 の自由度は0 点 重点 相共存曲線 : 重点で終了 または途切れる 液体と気体は共に対称性がなく 高温 高圧領域では区別できない 臨界点 液体と気体の様に連続的な変化の場合 ( 液体と固体の場合 対称性が異なり連続的な変化ではないので 臨界点はない ) 相平衡の熱力学 () 圧力一定の時の化学ポテンシャル 化学ポテンシャルの温度依存性は (6.6) より よって 粒子当りの定圧比熱を考えると (.88) より (6.) 物理的な意味と定義より 0 0 なので 化学ポテンシャルの温度変化は 0 0 0 0 (6.4) 即ち 化学ポテンシャルは圧力一定の条件化では 温度 に対し 上に凸の単調減尐関数 つの相 の化学ポテンシャルがある圧力の下で温度の関数 として 図 6-( 右図 ) の様に得られたとする 熱平衡は G のエネルギーの最小として求まるので 交点 0 より低温で 相 高温で 相 交点では (6.5) 0 で 0 で 相が共存 7

粒子当りのエントロピーは (6.6) で定義した通り なので 図 6- の曲線の勾 配の符号を反転したもの 交点 0 で 相のエントロピーを比較すると (6.6) 即ち 低温で安定な相より 高温で安定な相の方がエントロピーが大きい 低温より 昇温していくと 温度 0 で物質は の相転移を起こす この時 粒子当りのエントロピーは 0 (6.7) だけ増加 これは 相転移の際に熱の吸収が 粒子当り q 0 0 (6.8) だけ起こっている事に相当 ( 逆に の相転移の際は この熱量を放出 ) この熱量を 潜熱 (ltet het) という 潜熱の吸収 放出を伴う相転移を 次の相転移 () 温度一定の時の化学ポテンシャル (6.6) より v ここに v 0 なので 0 等温圧縮率は (.6) 再度 粒子当りで考えると v v ここに v より すると v 0 0 (6.9) C D v 0 0 (6.40) 0 図 6-4 温度一定 化学ポテンシャルは圧力 に対し 上に凸の単調増加関数 交点 0 より低圧で C 相 高圧で D 相が安定 交点では C D 8

9 v なので 傾きは 粒子の体積 v を表し よって 相共存の交点 0 で C v D v (6.4) 従って 温度一定の下で 圧力を上げて 相 C D の相転移を起こさせると 体積の減尐を伴う Cleyro-Cluu の関係 (6.5) は 相と 相が共存する時の条件 この共存曲線に従い 温度 圧力 を変化させたとする と変化させた場合 両辺を で展開して 更に (6.6) v より v v は微小量なので は共存曲線の微係数 これを d d と書けば v v なので v q v d d (6.4) v v v (6.4) これを Cleyro-Cluu の式という ( 以下の教科書の議論は省略 )

図 6-5 相共存曲線 () (d/d) > 0 () (d/d) < 0 d 上図で () は 0 d d () は 0 d で かつ 0 v 0 ( 相転移の際 エントロピーは増加 ) で かつ 0 v 0 準安定平衡状態 図 6-( 定圧変化 ) において : 液相 : 気相 として 気体を高温 0 からゆっくり冷却 する事を考える 単純には 0 気体 0 液化 ( 気体 液体 ) 0 液体 だが 実際にはそれ程簡単ではない 今 液化のプロセスが 0 でも起こると考えると そ の時の 相の化学ポテンシャルの差を 0 とする 液化が始まると 気体中に小さな液滴が発生 個の液滴に 個の分子が集まったとする これによる G の自由エネルギーの変化は G r である この議論だけでは 液化が進めば進む程自由エネルギーは減尐するので 全ての気体が液体に変わる事になる しかし 実際には 系の表面 界面を考慮する必要がある 右図で分かる通り 表面の原子数を 表面積を とすると 4 r 4r r 4 4 4 0

表面に原子 分子が存在する事で生じる表面自由エネルギーは 個当り 0 であり 液滴の形成 による G の自由エネルギーは G (6.44) これは 図 6-6 の様な関数であり x で極大値 G x で G 0 図 6-6 となる よって 液滴形成のためには でなくてはならない ( 表面エネルギーが増える以上に 化学ポテンシャル ( の総和 ) を減らさなくてはならない ) ところで 再び 図 6- を考えると 0( 但し 0 ) では 0 で 0 即ち 0 においては は極めて大きくなる 液滴は 先ず小さいものが出来てから 大きくなる という事を考えると これは 物理的には 十分に冷えていないと 液滴が出来ない 事を意味する ( 言い換えると 0 では殆ど液滴は出来ない という事 ) 液滴の形成初期には 表面エネルギーによる自由エネルギー増加の 効果が大きく 十分に冷えないと化学ポテンシャルでこれを埋め合 わせる事ができない 0 つまり 0 においては 気体の G の自由エネルギーは 均一な液体の状態に比べると高 いが 局所的には極小となっている これを準安定平衡状態という ( 図 6-7) が 0 より十分小さくなると は大きくなり は十分小さくなる そのため 液滴は出来易くなる 注 : 実際には 液化は容器の壁や気体中の塵 イオンの周囲で始まる 引力が働くため

6-4 成分系の相平衡 混合気体 溶液 等の場合 混合理想気体の化学ポテンシャル 種の分子 からなる混合理想気体を考える 各々分子数 個 体積 とする 理想気体の Hlto は H U r (4.7) ここに U 0 r : er r (4.8) r : outer 要は 各粒子の Hlto の和 これを 分子種に分けて記述すると H H H (6.45) ここで 粒子の識別は 同種の粒子では出来ないが 異種粒子 間では出来るので 分配関数は (4.9) より! H H ddqddq (6.46) ex! 但し の運動量と座標をまとめ q で表した また q! H ex d dq (6.47) なので (6.48) (.8) より S すると 番目の式より (6.49) この を分圧という 各成分の濃度を とおくと (6.50)

(6.5) 各成分の化学ポテンシャルは (6.) r より 成分 の化学ポテンシャルは r (6.5) ここに 混合気体でなく 00% 成分 の気体を考え 同じ温度で 全圧を同じ とすると r 0 0 (6.5) 混合気体のうち 成分 が希薄 だとすると 0 0 (6.54) 0 (6.55) 混合のエントロピー 種の気体が容積 の容器に入っていて これを混合する 混合前の両気体の濃度は等しいものとする 混合による自由エネルギーの変化は (.48) より t

4 f t f 混合前の密度が等しいという条件は なので (6.56) とおく事ができ (6.57) Helholtz の自由エネルギーの定義は S で 今 内部エネルギーと温度不変なので 変化は全てエントロピー S (6.58) これを混合のエントロピーという 混合気体のうち 成分 が希薄 だとすると S (6.59) (6.54) (6.55) の第 項は混合のエントロピー由来 ( 体積が大きい容器への移行由来 ) 希薄溶液 成分液相系で 片方の液体の量が他方より遥かに尐ない場合 前者 ( 尐ない方 ) を溶質 (olute) 後者 ( 多い方 ) を溶媒 (olvet) 個の溶媒分子 個の溶質分子からなる希薄溶液を考える 古典統計力学が成り立つとし 溶媒 溶質分子の運動量 座標 質量を各々 M Q P q j j とすると 全系の Hlto は q Q M P H j j (6.60)

但し Q q は分子間の相互作用ポテンシャルで 全ての分子間の総和である これは液相で は求める事は難しいが 希薄溶液においては 以下の様な近似で考える 溶質分子 : 個 ( j q j ) 影響を受ける領域 溶媒 : 分子 個 (P Q ) 図 6-9 希薄溶液 : 溶媒と溶質分子 溶質分子を空間的な配置で静止しているものとし その間を溶媒分子が動き回っていると考える この時の Hlto は P H Q q (6.6) M 溶質分子は低濃度なので 溶媒分子が 個以上の溶質分子から同時に相互作用を受ける事がないと考えられる この様な場合 系の自由エネルギーへの影響は 溶質分子の数に比例し ( する部分がある ) その比例係数は溶媒の局所的な性質のみに依存 よって 溶質分子を空間的に止めた時の G の自由エネルギーは 化学ポテンシャルとして q G (6.6) 0 となり 溶質分子の座標 を純粋な溶媒の q に依存しない が上に述べた溶質分子の数に比例す j j る部分の比例係数である ( 溶質 - 溶媒の相互作用で決まる ) 0 ところで (6.46) (6.47) の様に分配関数を求めるにあたり 実際には溶質分子は動き回るので 運動量 位置座標に関する積分を考えてやらなくてはならない しかし (6.6) は既に位置座標には依存していないので 運動量に関する積分だけ考えれば良く これは理想気体の計算に相当 実際 図 6-9 で 溶質の周囲は十分隙間があると見れば 理想気体の状態を調べているのと同等である事が見て取れる 更に 簡単のため 溶質に 原子分子を考え内部自由度を無視すると 化学ポテンシャルは (6.0) の回転自由度を除いた項 (6.0) 5

が (6.6) に加わる ( この様な分子が 個 ) ここに よって G 0 0 0 (6.6) (6.64) である (6.6) に 化学ポテンシャルの定義 化学ポテンシャル は G (6.5) を用い 溶媒 溶質の各々に対する を と無関係な関数と見做して G 0 0 (6.65) G (6.66) 但し ここで (6.67) なので 0 として (6.66) で 第 項の を無視した (6.65) (6.66) は基本的に混合理想気体のエントロピー ( この時片方の成分が希薄と仮定した ) (6.54) (6.55) と同じである ( 当たり前と言えば当たり前の結果 (6.60) (6.6) で Hlto にポテンシャル項が出てきて いるが 結果的に これが化学ポテンシャルの中に取り込まれていると思えば良い ) 浸透圧 図 6-0 の様に 同種の溶媒 溶質を用い 濃度のみ異なる希薄溶液 を半透膜で仕切る この時 半透膜の存在により 平衡を決めるのは圧力ではなく化学ポテンシャルである 6

溶液 半透膜 溶液 図 6-0 半透膜で仕切られた 濃度の異なる溶液 溶液の濃度 圧力を図の通り とおくと ( 温度は何れも同じとする ) (6.68) ここに (6.65) 0 を代入して 0 0 0 0 (6.69) 濃度差 圧力差 のどちらも小さいとすると (6.69) を展開し 0 0 0 ところで (6.6) より v なので ( 但し v は溶質 分子当りの占める体積 ) v (6.70) v この時生じる圧力差を浸透圧 (oot reure) と呼ぶ 希薄な 成分系の 相平衡省略 成分 で が希薄に混合されているとし これが の 相 (eg. 液相と気相 ) に分かれていて 平衡状態にあるとする ( 半透膜はない ) 媒質 ( 溶媒 : 例えば成分 ) のみの純粋な系が温度 圧力 で 相平衡にあるとすれば (6.7) = = = = ここに 微小量の成分 を加えたとして 各々の相における成分 の濃度を とおく 同じ圧力の下で平衡の温度が に変わったとすると (6.65) より 7

8 両辺の第 項では は何れも微小項なので 両方が掛け合わさった部分を無視し (6.7) であれば (6.6) を用いて 但し は成分 の分子 個当りのエントロピー よって (6.7) に留意しつつ (6.7) を変形すると (6.7) ここで例えば を低温で安定な相 (eg. 固体 ) を高温で安定な相 (eg. 液体 ) とすれば q は 6- 節で定義した相転移の際の 分子当りの潜熱 すると q を用い (6.7) は q q (6.74) 固体 () と液体 () が相平衡のある時 液体には溶けるが固体には溶けない ( 例えば 塩は水には溶けるが 氷には溶けない ) 物質を加えると で 0 とおくと q (6.75) で 液体 () に固体を溶かすと 相平衡温度 ( 融点 ) が下がる 以上の考察から分かるのは 凝固点以下で溶けにくい溶質を溶媒に溶かせば融点が下がる という事である 原理的には 液体には溶けにくく固体に溶け易い溶質を溶かせば融点が上がる事になる

9 6-5 化学平衡粒子数が変化する時を考える 化学平衡の条件 分子と 分子が化学結合して C 分子になる化学反応 C (6.76) ある瞬間の各分子の数を C とする 反応速度が十分遅いとすると 部分平衡にあると考えられる この状態での G の自由エネルギーを C G G ; (6.77) とすれば 熱平衡はこれを分子数について最小にするもの 一方 反応による質量保存より C C C C G G G d dg (6.6) j G より 上式右辺は C 分子の化学ポテンシャル よって 0 d C dg より 化学平衡の条件は C (6.78) 気体の化学平衡反応にかかわる分子が全て気体とする (6.76) で は 原子分子 C は 原子分子 であるとする (6.5) より 分子の化学ポテンシャルは (6.79) (6.79) 分子の結合エネルギーを 回転エネルギー式 (4.57) と併せ I z (4.57)

0 r I (6.80) これらを (6.78) に代入し I I I I I I I ex (6.8) この右辺を化学平衡定数という の低温では ex なので 分子増大 の高温では ex なので 分子減尐

6-6 グランドカノニカル分布第 章での議論 ミクロカノニカル分布 は孤立系 カノニカル は熱浴中の部分系 グランドカノニカル は開いた系: エネルギーだけでなく粒子のやりとりがある 開いた系の統計分布図 6- に示す様に 対象とする系を 外界をとする とを併せたものを全系とし 粒子数 エネルギーの保存則は (6.8) (6.8) 但し ととの相互作用は無視 全系の量子状態は と 各々の量子状態を指定する事で定まる ここに 等確率の原理を適用 が粒子数 エネルギー の一つの状態にある確率を P とおく すると は粒子数 エネルギー の量子状態の何れかにある この場合の数を W P のエントロピーは よって W とすれば (6.84) W S (6.85) W ex S W ex S P ex S (6.86) 外界 が に比べ十分大きいとすると すると S (6.87) S S S

外界の温度を 化学ポテンシャルを とすれば d ds (.44) S (6.) より S S S (6.88) 外界は十分に大きく 微小変化に関し 化学ポテンシャルを は一定とする (6.88) を (6.86) に代入し S が定数である事に留意すると P ex (6.89) これを規格化して 係数を定めると P ex (6.90) Grd ol 分布 ( 大きな正準分布 ) ex (6.9) : 粒子数が の量子状態 のエネルギー : 大分配関数 ( グザイ ) 粒子数 が与えられている時の分配関数は ex (6.9) で 大分配関数との関係は e (6.9)

粒子数のゆらぎ開いた系では粒子数も変化 粒子数が である確率は e P P ex (6.94) よって 粒子数の平均値は e P (6.95) ところで 大分配関数 (6.9) を で微分すると e よって (6.96) 粒子の揺らぎは ( 以下 参考まで 余り拘る必要ない ) (6.95) より e e e e e 系の体積を 平均の粒子密度を とすれば (6.97)